説明

温度伝導率測定装置、皮膚組織血液循環評価装置及び褥瘡診断装置

【課題】何処でも、誰でも、簡単に使用できる温度伝導率測定装置を提供する。
【解決手段】温度伝導率測定装置11は、生体に所定時間だけ熱刺激を付与する熱刺激発生部24と、熱刺激発生部24によって熱刺激を付与された生体の温度の時間的変化を測定する温度測定部25と、生体熱伝導方程式に基づいて、温度測定部25の測定結果から生体の温度伝導率を算出する温度伝導率算出部331,332とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体の温度伝導率を測定する装置、さらに、温度伝導率から生体の血液流量を評価する装置及び褥瘡危険度を判定する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
褥瘡とは、患者が長期にわたり同じ体位で寝たきり等になった場合に、ベッドとの接触部分が圧迫されて阻血状態となり、周辺組織が壊死する皮膚疾患である。褥瘡の発生を予測診断する方法としては、OHスケールや、褥瘡好発部位の形状から褥瘡危険度を評価する褥瘡診断装置等が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
OHスケールは、自力体位変換、病的骨突出、浮腫、関節拘縮から褥瘡発生危険を評価する尺度である。各項目0〜3点からなり、得点が高いほど褥瘡発生危険が高いとされる。また、従来の褥瘡診断装置は、人体表面における殿筋部、仙骨部、腰部、背中部といった各部位相互において、殿筋部を基準としてこれに対する他の各部位の高低を測定することによって、褥瘡の診断を行っている。
【特許文献1】特開2000−51181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
OHスケールは、自力体位変換、病的骨突出、浮腫、関節拘縮の各項目について主観的な評価を行うので、予測診断には高度な専門性が必要となる。したがって、経験の少ない看護師や在宅介護者等には、正確な予測診断が困難である。
【0005】
また、特許文献1には、褥瘡好発部位の形状から褥瘡発生を予知することにより、診断者の技量に左右されない診断結果が得られると記載されている。しかしながら、この褥瘡診断装置は、褥瘡好発部位の形状測定を自動化したことに留まり、外見から褥瘡の発生を予測診断するOHスケールと本質的に異なるところがない。
【0006】
他方、褥瘡発生の内的要因としては、皮膚組織内の血流状態が考えられる。従来の血液流量を測定装置するとしては、レーザードップラー方式、超音波ドップラー方式の血流量測定装置、皮膚表面温度の測定により皮膚組織血液循環状態を評価するためのサーモグラフィー等が知られている。しかしながら、これらは、装置構成が複雑、大型で、操作が難しい上、非常に高価であるので、基礎研究等で使用されているに留まり、臨床もしくは一般家庭での使用は困難な状況である。
【0007】
そこで、この発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、何処でも、誰でも、簡単に使用できる温度伝導率測定装置、温度伝導率を利用して血液流量を評価する皮膚組織血液循環評価装置及び褥瘡診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る温度伝導率測定装置は、生体に所定時間だけ熱刺激を付与する熱刺激発生部と、前記熱刺激発生部によって熱刺激を付与された生体の温度の時間的変化を測定する温度測定部と、生体熱伝導方程式に基づいて、前記温度測定部の測定結果から生体の温度伝導率を算出する温度伝導率算出部とを備え、生体の温度伝導率を測定する。
【0009】
上記構成の温度伝導率測定装置は、熱刺激発生部と温度測定部とを測定部位に接触させるだけで温度伝導率を測定できるので、人体への侵襲がない。また、操作が簡単なので、専門知識を有さない一般の看護師や在宅介護者でも簡単に患者の皮膚の温度伝導率を測定することができる。
【0010】
なお、本明細書中の「生体熱伝導方程式に基づいて生体の温度伝導率を算出する」とは、温度伝導率測定装置に記憶した生体熱伝導方程式に温度測定部の測定結果を代入して温度伝導率を算出することに限らず、下記のように生体熱伝導方程式を利用して得られた温度伝導率推定テーブルに基づいて温度伝導率を算出することも含まれる。
【0011】
熱刺激を付与する前の生体の温度をt1、前記所定時間を経過した時点での生体の温度をt2、前記所定時間を経過した時点からt1/t2が予め定められた値に達するまでの時間を時定数と定義する。そして、前記温度伝導率算出部は、生体熱伝導方程式に基づいて予め算出された時定数と温度伝導率との関係を保持する温度伝導率推定テーブルを記憶する記憶部と、前記温度測定部の検出結果に基づいて時定数を算出する時定数算出部と、前記温度伝導率推定テーブルに基づいて、前記時定数から生体の温度伝導率を推定する温度伝導率推定部とを備える。これにより、即座に生体の温度伝導率を得ることができる。
【0012】
また、前記熱刺激発生部は、生体に冷却刺激を付与する冷却刺激発生部であってもよい。本明細書中の「熱刺激」とは、冷却刺激及び加温刺激の両方を含むが、高精度の温度伝導率測定を行う観点からは、加温刺激よりも冷却刺激の方が優れている。
【0013】
例えば、前記熱刺激発生部は、ペルチェ素子によって構成されていてもよい。これにより、ペルチェ素子に流れる電流の向きを変えるだけで、冷却刺激と加温刺激とを簡単に切り替えることができる。
【0014】
また、この発明に係る温度伝導率測定装置は、前記熱刺激発生部と前記温度測定部とを保持し、かつ生体の表面に貼付される貼付部材、前記熱刺激発生部及び前記温度測定部を含む測定器と、前記温度伝導率算出部、前記測定器の動作を制御する測定器制御部及び前記温度伝導率算出部によって算出された生体の温度伝導率を表示する表示部を含み、前記測定器とデータの送受信可能な状態で接続される操作端末とで構成されていてもよい。
【0015】
また、前記貼付部材は、生体の表面に沿って変形可能な材料で形成されており、前記温度測定部は、前記貼付部材の生体表面に対面する面から突出するように配置されていてもよい。これにより、測定部位がどのような形状であっても、高精度の測定結果を得ることができる。
【0016】
また、前記測定器と前記操作端末とは、無線接続されているのがよい。これにより、配線を気にすることなく、温度伝導率の測定を行うことができる。
【0017】
この発明に係る皮膚組織血液循環評価装置は、上記のいずれかに記載の温度伝導率測定装置と、予め算出された温度伝導率と血液流量との関係を保持する血液流量評価テーブルを記憶する記憶部と、前記血液流量評価テーブルに基づいて、前記温度伝導率算出部の算出結果から生体の血液流量を評価する血液流量評価部とを備える。上記構成の皮膚組織血液循環評価装置は、温度伝導率という客観的な数値に基づいて血液流量を評価しているので、評価者の技量に左右されず高精度の診断が可能となる。
【0018】
この発明に係る褥瘡診断装置は、上記のいずれかに記載の温度伝導率測定装置と、予め算出された温度伝導率と褥瘡危険度との関係を保持する褥瘡危険度判定テーブルを記憶する記憶部と、前記褥瘡危険度判定テーブルに基づいて、前記温度伝導率算出部の算出結果から生体表面の褥瘡の危険度を判定する褥瘡危険度判定部とを備える。上記構成の褥瘡診断装置は、温度伝導率という客観的な数値に基づいて褥瘡の危険度を評価しているので、評価者の技量に左右されず高精度の診断が可能となる。
【0019】
この発明に係るプログラムは、所定時間だけ熱刺激を付与する熱刺激発生部と、前記熱刺激発生部によって熱刺激を付与された生体の温度の時間的変化を測定する温度測定部とを備える温度伝導率測定装置で実行されるものであって、生体熱伝導方程式に基づいて、前記温度測定部の測定結果から生体の温度伝導率を算出する温度伝導率算出ステップを含む。
【0020】
本発明は、温度伝導率測定装置、皮膚組織血液循環評価装置及び褥瘡診断装置として実現することができるだけでなく、これらの装置に含まれる特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)等の記録媒体やインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、専門知識を有しない一般の看護師や在宅介護者でも簡単に温度伝導率を測定できる温度伝導率測定装置を得ることができる。また、この温度伝導率測定装置を応用することにより、何処でも、誰でも、簡単に使用できる皮膚組織血液循環評価装置及び褥瘡診断装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1〜図3を参照して、この発明の一実施形態に係る温度伝導率測定装置11を説明する。なお、図1は温度伝導率測定装置11の構成を示す概略図、図2は温度伝導率測定装置11の構成を示すブロック図、図3は測定器21の構造を示す断面図である。
【0023】
まず、図1及び図2に示されるように、温度伝導率測定装置11は、生体の温度伝導率を簡単に測定できる装置であって、患者の体に取り付ける測定器21と、測定時に看護師等が操作する操作端末31とで構成されており、両者は相互にデータの送受信可能な状態で接続されている。
【0024】
測定器21は、操作端末31に接続するための通信部22と、生体の表面に貼付される貼付部材23と、生体に熱刺激を付与する熱刺激発生部24と、生体の温度変化を測定する温度測定部25とを主に備える。この測定器21は、操作端末31の指示に基づいて、生体に熱刺激を付与すると共に生体の温度変化を測定し、測定結果を操作端末31に送信する。
【0025】
通信部22は、操作端末31の通信部32(後述)との間でデータの送受信を行うための通信インターフェースである。この実施形態における測定器21と操作端末31とは、無線接続されている。具体的な接続形態は特に限定されないが、例えば、赤外線やBluetooth等で接続される。なお、後述する通信部32も同様であるので、説明は省略する。
【0026】
貼付部材23は、測定部位に貼付される平板形状の部材であって、生体の表面に沿って変形可能な材料、例えばシリコン等で形成されている。これにより、起伏の激しい皮膚表面に貼付する場合でも、測定結果の信頼性が向上する。特に、仙骨部等の褥瘡好発部位は起伏が激しいので、後述する褥瘡診断に利用する場合には、有利な効果を奏する。また、貼付部材23は、熱刺激発生部24と温度測定部25とを保持している。
【0027】
図3に示されるように、熱刺激発生部24は、円筒形状のケース241と、ケース241の内部に積層配置される熱伝導プローブ242と、ペルチェ素子243と、ヒートシンク244と、熱放散ファン245とを主に備え、生体の表面に熱刺激を付与することによって生体に温度勾配を生じさせる。なお、この実施形態における熱刺激発生部は、生体に冷却刺激を付与する冷却刺激発生部であり、皮膚温度よりも約5℃程度低い温度(25℃〜30℃)の刺激を付与する。
【0028】
ペルチェ素子243は、直流電流を流すことによって一方の面が吸熱し、他方の面が発熱する半導体素子である。この実施形態におけるペルチェ素子243は冷却素子として使用するので、吸熱する側に熱伝導プローブ242を、発熱する側にヒートシンク244と熱放散ファン245とを配置している。
【0029】
熱伝導プローブ242は、熱伝導率の高い材料、例えば銅やアルミニウム等によって形成されており、一方側端部がペルチェ素子243の吸熱面に接し、他方側端部が貼付部材23の中央部を貫通している。また、熱伝導プローブ242には、温度制御用センサ242aが取り付けられている。ヒートシンク244及び熱放散ファン245は、ペルチェ素子243の発熱面に取り付けられ、発熱面の熱を放出する。
【0030】
温度測定部25は、熱電能の異なる2種類の金属を接合して構成される微細熱電対であって、生体の温度の時間的変化を測定する。この実施形態における温度測定部25は、熱伝導プローブ242の先端位置と、この位置から4mm離れた複数個所に同心円状に配置されている。また、この温度測定部25は、貼付部材23の生体表面に対面する面(図3の下面)から突出するように配置されている。これにより、生体表面に密着するので、高精度の温度測定が可能となる。
【0031】
操作端末31は、測定器21に接続するための通信部32と、操作端末31の制御を行うCPU33(Central Processing Unit)と、各種プログラム等を記憶するROM34(Read Only Memory)と、温度伝導率推定テーブルを記憶するRAM35(Random Access Memory)と、測定器21の操作画面や測定結果等を表示する表示部36とを主に備える。
【0032】
CPU33は、ROM34に記憶されている時定数算出プログラム、温度伝導率推定プログラム、測定器制御プログラム等を読み込み、時定数算出部331、温度伝導率推定部332、測定器制御部333等として動作する。
【0033】
時定数算出部331は、温度測定部25の検出結果に基づいて時定数を算出する。温度伝導率推定部332は、後述する温度伝導率推定テーブル351に基づいて、時定数から生体の温度伝導率を推定する。なお、時定数算出部331と温度伝導率推定部332とで温度伝導率算出部を構成する。
【0034】
測定器制御部333は、測定器21の動作を制御する。具体的には、熱刺激発生部24の冷却温度や冷却時間、温度測定部25の測定時間、さらには温度制御用センサ242aの検出結果に基づいて、熱刺激発生部24の温度調節等を行う。
【0035】
記憶部としてのRAM35は、温度伝導率推定テーブル351を記憶している。なお、RAM35に代えて、ハードディスクドライブ等の他の記憶装置を採用してもよい。温度伝導率推定テーブル351は、時定数と温度伝導率との関係を保持している。図5にグラフ化した温度伝導率推定テーブル351を示す。
【0036】
表示部36は、測定器21の操作画面や測定結果等の表示を行う液晶画面である。なお、液晶画面に代えて有機ELディスプレイを採用すれば、操作端末31をさらに小型化、薄型化できる。
【0037】
次に、式(1)〜(3)及び図4を参照して、温度測定部25の検出結果から生体の温度伝導率を算出する方法を説明する。なお、図4は生体に冷却刺激を付与した時の温度応答の理論値と測定値とをプロットした図である。また、式(1)〜(3)中のTは皮膚組織温度(℃)を、Tsは皮膚表面温度(℃) を、Tbは環境温度(℃)を、ρtは皮膚組織の密度(kg/m3)を、Ctは皮膚組織の比熱(J/K)を、ΔTは皮膚組織温度(T)と測定開始時の皮膚組織温度(T0)との温度差(℃)を、λtは皮膚組織の熱伝導率(m2/s)を、ρbは血液の密度(kg/m3)を、Cbは血液の比熱(J/K)を、Wbは組織単位体積あたりの血液流量(ml/s)を、λeは総合熱伝達率(m2/s)を、Qmは代謝による産熱(J)を、Qeは単位体積当たりの発熱量(J)を、αt=λt/ρttは温度伝導率(m2/s)をそれぞれ指している。
【0038】
まず、式(1)は、ペネスの生体熱伝導方程式(bioheat equation)である。なお、左辺は時間変化による皮膚組織への熱の蓄積を、右辺第1項は温度勾配に基づく熱伝導による熱の流れを、第2項は動脈血から皮膚組織への熱移動を、第3項は皮膚組織の代謝による産熱をそれぞれ表している。また、第3項はz=0における境界条件を与えている。
【0039】
次に、皮膚表面及び皮膚組織断面での熱伝導方程式を考える。つまり、式(1)でz=0、T=Tsとすると、皮膚表面の熱伝導方程式である式(2)を、式(1)でy=0とすると、皮膚組織断面での熱伝導方程式である式(3)を得ることができる。なお、式(2)及び式(3)では、代謝による産熱をないもの(式(1)の第3項=0)としている。
【0040】
【数1】

【0041】
【数2】

【0042】
【数3】

【0043】
上記式(2)及び式(3)において、Wb=0とすれば、非定常熱伝導方程式となる。これらを数値解析すれば、血液流量の影響を含んだ「見掛けの温度伝導率(αt)」を算出することができる。なお、本明細書では、これらを「局所皮膚組織熱伝導モデル」という。
【0044】
次に、上記の局所皮膚組織熱伝導モデルを用いて生体の温度伝導率を算出する一例を説明する。まず、冷却刺激による皮膚表面の温度応答を実際に測定する(測定値)。具体的には、60秒間(冷却刺激期間)に亘って冷却刺激を付与し、冷却開始直後から冷却刺激解放後120秒間に亘って刺激中心位置における温度応答を測定する。測定結果を図4に「*」で示す。一方、局所皮膚組織熱伝導モデルによって、同様の条件の下での温度応答を数値計算する(理論値)。計算結果を図4に「○」で示す。
【0045】
次に、測定値と理論値との積算誤差が最小値に収束するように式(2)のパラメータ(特にαt、λe)を調整することにより、温度伝導率を同定することができる。最後に、この温度伝導率に補正係数を乗じることにより、「見掛けの温度伝導率」を算出することができる。なお、「補正係数」は、温度伝導率が既知の物質(シリコンゴム等)で上記の測定を行い、実際の温度伝導率を実験で求めた温度伝導率で除することにより求めることができる。
【0046】
なお、上記の説明では、刺激中心位置における温度応答のみを測定した例を示したが、その他の部分(この実施形態では、刺激中心位置から4mm離れた位置)でも同様に測定を行う。複数個所で測定を行うことにより、結果の信頼性が向上する。
【0047】
上記の方法は、式(2)を繰り返し計算する必要があり、膨大な計算時間を必要とする。そこで、図5を用いて簡易に温度伝導率を推定する方法を説明する。なお、図5は見掛けの温度伝導率と対応する時定数との関係を示す図である。
【0048】
まず、上記の局所皮膚組織熱伝導モデルを利用して「見掛けの温度伝導率」と、それに対応する時定数とを算出する。なお、この実施形態においては、冷却刺激解放後(60秒)からt1/t2=0.63となるまでの時間を時定数としている。この手順を繰り返すことによって得られる結果(図5)を温度伝導率推定テーブル351とする。この温度伝導率推定テーブル351を用いれば、図4に示すような測定結果から時定数を算出し、その時定数から即座に温度伝導率を推定することが可能となる。
【0049】
次に、図6を参照して、温度伝導率測定装置11の動作を説明する。なお、図6は温度伝導率測定装置11による温度伝導率の測定手順を示す図である。また、RAM35の温度伝導率推定テーブル351には、図5に示すような関係が保持されている。
【0050】
まず、貼付部材23を温度伝導率の測定部位に貼り付ける。熱刺激発生部24は、測定器制御部333からの指示に基づいて、所定の時間だけ生体に熱刺激を付与する(S1)。これにより、生体に温度勾配が生じる。なお、熱刺激を付与する時間は任意に設定することができるが、この実施形態では60秒として説明する。このとき、測定器制御部333は、温度制御用センサ242aの検出結果をリアルタイムに受信し、一定の熱刺激を付与するように熱刺激発生部24を制御する。
【0051】
次に、温度測定部25は、熱刺激を付与するのと同時に生体の温度変化の測定を開始し、熱刺激解放後(60秒経過後)から所定の時間まで計測を続ける(S2)。なお、温度変化の測定は、温度勾配が安定する(熱刺激を付与する前の状態に戻る)まで継続するのが望ましいので、熱刺激解放後から120秒程度継続する。また、計測結果はリアルタイムに時定数算出部331に送信される。
【0052】
次に、時定数算出部331は、温度測定部25の検出結果に基づいて時定数を算出する(S3)。具体的には、熱刺激解放後(60秒経過後)からt1/t2=0.63となるまでの時間を算出する。
【0053】
次に、温度伝導率推定部332は、温度伝導率推定テーブル351に基づいて、時定数算出部331によって算出された時定数から生体の温度伝導率を推定する(S4)。そして、この結果が表示部36に表示される。例えば、時定数算出部331で算出された時定数が「16」であれば、「温度伝導率=2.9×10-7(m2/s)」等と表示される。
【0054】
上記構成の温度伝導率測定装置11は、貼付部材23を測定部位に貼り付けるだけでよいので、生体への侵襲がない。また、複雑な操作が必要ないので、専門知識を有さない一般の看護師や在宅介護者でも簡単に患者の皮膚の温度伝導率を測定することができる。
【0055】
なお、上記の各実施形態においては、温度伝導率推定テーブル351に基づいて温度伝導率を推定する例を示したが、これに限ることなく、他の方法で温度伝導率を算出してもよい。例えば、温度伝導率測定装置11が非常に高速なCPU33を搭載している場合には、上述の「局所皮膚組織熱伝導モデル」を利用して温度伝導率を算出してもよい。
【0056】
また、上記の各実施形態においては、測定器21と操作端末31とを無線接続した例を示したが、これに限らず、他のあらゆる接続形態を採用することができる。例えば、両者を有線で接続してもよいし、LAN(Local Area Network)やインターネット等のネットワークを介して両者を接続してもよい。
【0057】
また、上記の各実施形態においては、測定器21と操作端末31とを1対1で接続した例を示したが、これに限ることなく、1台の操作端末31で複数台の測定器21を制御するようにしてもよい。例えば、病院内において、患者に1台ずつ付与される複数の測定器21と、ナースステーション等に設置された操作端末31とを院内ネットワークを介して接続すれば、複数の患者の測定結果を集中管理することができる。
【0058】
また、上記の各実施形態においては、測定器21と操作端末31とで温度伝導率測定装置11を構成した例を示したが、これに限ることなく、両者の機能を含む一体型の温度伝導率測定装置であってもよい。これにより、通信部22,32が不要になるので、装置構成がさらに単純化される。
【0059】
皮膚組織内では、皮膚血管の血流が熱移動の調節に主導的な役割を果たしている。すなわち、温度伝導率測定装置11によって推定される温度伝導率から皮膚組織の血液循環状態を評価することができると考えられる。さらには、血液の循環不良に起因する疾患の診断にも応用することが可能であると考えられる。
【0060】
そこで、図7〜図14を参照して、温度伝導率と血液の循環状態との関係を検証すると共に、温度伝導率測定装置11の応用例としての皮膚組織血液循環評価装置11Aについて説明する。
【0061】
まず、図7〜図12を参照して、温度伝導率と血液の循環状態との関係を検証する。図7及び図10は、熱刺激を付与した後の皮膚組織の温度応答の時間変化を式(2)を用いて数値計算した結果を示す図である。具体的には、熱刺激解放後20秒(□)、40秒(◇)、60秒(△)、80秒(×)、100秒(*)、120秒(○)、140秒(+)、160秒(■)、180秒(◆)、200秒(▲)、220秒(●)経過後の温度を皮膚表面から深さ5mmの位置まで0.5mm間隔で数値計算している。なお、図7は所定時間だけ冷却刺激を付与した場合の温度応答を示す図、図10は所定時間だけ加温刺激を付与した場合の温度応答を示す図である。
【0062】
図7を参照して、冷却刺激を付与した場合、刺激解放直後(〜20秒後)は、皮膚表面付近(0mm〜1.5mm付近)の温度勾配が非常に高くなっている。その後、20秒〜100秒の間は、皮膚表面(0mm)の温度はほとんど変化せず、皮膚内部(特に0.5mm〜3.0mm)の温度が減少し、100後には直線に近い温度勾配となる。その後(100秒〜220秒)は、温度勾配がより直線に近づくと共に、その傾きが徐々に緩やかとなっていく。
【0063】
一方、図10を参照して、加温刺激を付与した場合、刺激解放直後(〜20秒)は、皮膚表面付近(0mm〜2.5mm)は負の温度勾配(深層部程温度が低くなる)、深層部(2.5mm〜5.0mm)は正の温度勾配(深層部程温度が高くなる)となっている。その後、20秒〜100秒の間は、皮膚表面(0mm)の温度はほとんど変化せず、皮膚内部(特に0.5mm〜2.0mm)の温度が上昇し、100秒後にはほぼ全域で負の温度勾配となる。その後、皮膚組織のほぼ全域(0mm〜4.5mm)で温度が低下するが、皮膚表面に近いほど温度低下率が高く、120秒後には平衡状態(皮膚組織全域で温度がほぼ一定)になり、それ以降は温度勾配が逆転(正の温度勾配になる)する。
【0064】
上記のように、冷却刺激を付与した場合と、加温刺激を付与した場合とでは、温度応答に差が生じる。これは、通常の環境下における外気温は体温より低いので、皮膚表面から深層部に向かって正の温度勾配が存在する。つまり、熱は体の深層部から皮膚組織を経て外環境に移動している。しかしながら、加温刺激を付与すると、この流れが一時的に逆転するので(皮膚表面付近に負の温度勾配が生じる)、途中で温度勾配が逆転する現象が観察される。
【0065】
次に、図8及び図11は、血液流量を変化させたときの皮膚表面の温度応答を式(2)を用いて数値計算した結果である。具体的には、血液流量が1000(ml/s)を基準とし、血液流量を基準値(□)、基準値の2倍(◇)、基準値の3倍(△)、基準値の4倍(×)、基準値の5倍(○)としたときの温度応答をそれぞれ数値計算している。なお、図8は所定時間だけ冷却刺激を付与した場合の温度応答示す図を、図11は所定時間だけ加温刺激を付与した場合の温度応答を示す図である。
【0066】
図8を参照して、冷却刺激を付与した場合、血液流量が多いほど温度応答が良くなっている。一方、図11を参照して、加温刺激を付与した場合、血液流量が少ないほど温度応答が良くなっている。また、図8と図11とを比較すると、冷却刺激を付与した場合(図8)の方が温度応答が良くなっているのが観察される。
【0067】
次に、図9は、式(2)に基づいて、図8の結果から温度伝導率と血液流量との関係を導き出した結果を示す図である。同様に、図12は、式(2)に基づいて、図11の結果から温度伝導率と血液流量との関係を導き出した結果を示す図である。
【0068】
図9及び図12を参照して、冷却刺激及び加温刺激のどちらを付与した場合でも、温度伝導率と血液流量との間には、線形の関係が存在することが明らかとなった。なお、血液流量をx、温度伝導率をyとすると、図9では、y=2.0×10-8x+2.0×10-7の関係が、図12では、y=1.0×10-8x+2.0×10-7の関係が成立することが明らかとなった。
【0069】
上記のように、温度伝導率と血液流量との間には、線形の関係が存在することが明らかとなったので、温度伝導率測定装置11を用いて患者の皮膚の温度伝導率を測定すれば、測定部位における血液流量を評価することができる。また、温度伝導率測定装置11の応用例として、図13及び図14に示すような皮膚組織血液循環評価装置11Aを得ることもできる。図13は皮膚組織血液循環評価装置11Aのブロック図、図14は皮膚組織血液循環評価装置11Aによる血液流量の評価手順を示す図である。なお、図13は図2の構成を含み、図14は図6の構成を含むので、共通部分には同一の参照番号を付し、説明は省略する。
【0070】
まず、図13を参照して、皮膚組織血液循環評価装置11Aは、温度伝導率測定装置11の構成に加え、操作端末31AのCPU33AがROM34Aに記憶されている血液流量評価プログラムを読み込んで血液流量評価部334として機能し、RAM35Aが血液流量評価テーブル352を記憶している。
【0071】
血液流量評価部334は、血液流量評価テーブル352に基づいて、温度伝導率推定部332の算出結果から生体の血液流量を評価する。血液流量評価テーブル352は、予め算出された温度伝導率と血液流量との関係を保持している。具体的には、冷却刺激を付与する場合には図9に示すような関係を、加温刺激を付与する場合には図12に示すような関係を保持している。
【0072】
次に、図14を参照して、皮膚組織血液循環評価装置11Aの動作を説明する。皮膚組織血液循環評価装置11Aは、温度伝導率測定装置11と同様の手順で生体の温度伝導率を測定する(S1〜S4)。次に、血液流量評価部334は、血液流量評価テーブル352に基づいて、温度伝導率推定部332によって算出された温度伝導率から生体の血液流量を評価する(S5)。そして、この評価結果が表示部36に表示される。例えば、算出された温度伝導率が2.7×10-7(m2/s)であれば、「血液流量=2」又は「血液流量=2000(ml/s)」等と表示される。
【0073】
上記構成の皮膚組織血液循環評価装置11Aによれば、温度伝導率という客観的な数値に基づいて血液流量を評価しているので、評価者の技量に左右されず高精度の診断が可能となる。
【0074】
次に、血液の循環不良に起因する疾患として褥瘡(床ずれ)を例に挙げ、図15〜図19を参照して、温度伝導率と褥瘡の発生危険度との関係を検証すると共に、温度伝導率測定装置11の応用例としての褥瘡診断装置11Bについて説明する。
【0075】
まず、図15〜図17を参照して、温度伝導率と褥瘡発生の危険度との因果関係を検証する。なお、図15は健康高齢者の温度伝導率を測定した結果を示すヒストグラム、図16は入院高齢者の温度伝導率を測定した結果を示すヒストグラム、図17はOHスケールによる褥瘡の危険度評価と評価部位の温度伝導率との関係を示す図である。なお、本明細書においては、自分で日常生活を行う能力のある65歳以上の高齢者を「健康高齢者」、多くの時間をベッドや車椅子で過ごし、介助等がなければ日常生活を行えない65歳以上の高齢者を「入院高齢者」と定義している。
【0076】
図15及び図16を参照して、健康高齢者の温度伝導率の平均値は2.443×10-7(m2/s)、標準偏差は0.557×10-7(m2/s)であったのに対し、入院高齢者の温度伝導率の平均値は2.004×10-7(m2/s)、標準偏差は0.695×10-7(m2/s)であった。また、ヒストグラム中の健康高齢者のピークは、入院高齢者のピークより高い位置にあることが認められた。
【0077】
次に、入院中の複数の高齢者等を対象として、OHスケールによる褥瘡の危険度評価と評価部位の温度伝導率とを測定すると、図17に示すように両者の間には強い負の相関あることが判明した。そこで、OHスケールによる褥瘡の危険度をx、温度伝導率をyとして図17の回帰直線を求めると、y=−0.2392x+2.9225となった。
【0078】
上記のように、温度伝導率と褥瘡危険度との間には、強い負の相関が存在することが明らかとなったので、温度伝導率測定装置11を用いて患者の皮膚の温度伝導率を測定すれば、測定部位における褥瘡の危険度を評価することができる。また、温度伝導率測定装置11の応用例として、図18及び図19に示すような褥瘡診断装置11Bを得ることもできる。図18は褥瘡診断装置11Bのブロック図、図19は褥瘡診断装置11Bによる褥瘡危険度の評価手順を示す図である。なお、図18は図2の構成を含み、図19は図6の構成を含むので、共通部分には同一の参照番号を付し、説明は省略する。
【0079】
まず、図18を参照して、褥瘡診断装置11Bは、温度伝導率測定装置11の構成に加え、操作端末31BのCPU33BがROM33Bに記憶されている褥瘡危険度判定プログラムを読み込んで褥瘡危険度判定部335として機能し、RAM35Bが褥瘡危険度判定テーブル353を記憶している。
【0080】
褥瘡危険度判定部335は、褥瘡危険度判定テーブル353に基づいて、温度伝導率推定部332の算出結果から生体表面の褥瘡の危険度を判定する。褥瘡危険度判定テーブル332は、温度伝導率と褥瘡危険度との関係を保持している。具体的には、図17に示すような関係を保持している。
【0081】
次に、図19を参照して、褥瘡診断装置11Bの動作を説明する。褥瘡診断装置11Bは、温度伝導率測定装置11と同様の手順で生体の温度伝導率を測定する(S1〜S4)。次に、褥瘡危険度判定部335は、褥瘡危険度判定テーブル353に基づいて、温度伝導率推定部332によって算出された温度伝導率から生体の血液流量を評価する(S5)。そして、この評価結果が表示部36に表示される。例えば、算出された温度伝導率が2.0×10-7(m2/s)であれば、「褥瘡危険度=4(OHスケール)」等と表示される。
【0082】
また、上記の変形例として、図17に示すような関係に代えて、温度伝導率についての少なくとも1つの閾値を褥瘡危険度判定テーブル353に保持しておいてもよい。そして、算出された温度伝導率とこの閾値とから、褥瘡危険度を簡易的に評価してもよい。具体的には、第1の閾値として1.5×10-7(m2/s)を、第2の閾値として2.0×10-7(m2/s)を褥瘡危険度判定テーブル353に記憶しておく。そして、温度伝導率推定部332によって算出された温度伝導率が、第1の閾値未満であれば「褥瘡危険度大」と、第1の閾値以上、第2の閾値未満であれば「褥瘡危険度中」と、第2の閾値以上であれば「褥瘡危険度小」と表示部36に表示するようにしてもよい。
【0083】
上記構成の温度伝導率測定装置11Bによれば、温度伝導率という客観的な数値に基づいて褥瘡の危険度を評価しているので、評価者の技量に左右されず高精度の診断が可能となる。
【0084】
なお、上記の実施形態においては、血液の循環不良に起因する疾患として褥瘡の例を説明したが、これに限ることなく、他の疾患の診断にも応用することができる。例えば、レイノウ病や白蝋病等の末梢循環系の血行障害の他、脳梗塞等の診断にも応用できる。
【0085】
また、上記の各実施形態においては、熱刺激として冷却刺激を付与した例を示したが、これに限ることなく、温熱刺激を付与しても温度伝導率を推定することができる。ただし、図7及び図10を用いて検証したように、加温刺激を付与した場合には、途中で熱の流れが逆転するので、測定精度の観点からは、冷却刺激を付与することが望ましい。
【0086】
さらに、本発明は、上記のような温度伝導率測定装置11、皮膚組織血液循環評価装置11A及び褥瘡診断装置11Bとして実現することができるだけでなく、これらの装置に含まれる特徴的な構成部をステップ(つまり、図6,図14及び図19に記載のステップ)とする温度伝導率測定方法、皮膚組織血液循環評価方法及び褥瘡診断方法として実現したり、これらの装置に含まれる特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体やインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができる。
【0087】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
この発明は、生体の温度伝導率を測定する温度伝導率測定装置に有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】この発明の一実施形態に係る温度伝導率測定装置の構成を示す概略図である。
【図2】温度伝導率測定装置のブロック図である。
【図3】図1の測定器の断面図である。
【図4】生体に冷却刺激を付与した時の温度応答の理論値と測定値とをプロットした図である。
【図5】見掛けの温度伝導率と対応する時定数との関係を示す図である。
【図6】温度伝導率測定装置による温度伝導率の測定手順を示す図である。
【図7】冷却刺激を付与した後の皮膚組織の温度応答の時間変化を示す図である。
【図8】血液流量を変化させたときの冷却刺激に対する皮膚表面の温度応答を示す図である。
【図9】冷却刺激を付与したときの温度伝導率と血液流量との関係を示す図である。
【図10】加温刺激を付与した後の皮膚組織の温度応答の時間変化を示す図である。
【図11】血液流量を変化させたときの加温刺激に対する皮膚表面の温度応答を示す図である。
【図12】加温刺激を付与したときの温度伝導率と血液流量との関係を示す図である。
【図13】この発明の一実施形態に係る皮膚組織血液循環評価装置のブロック図である。
【図14】皮膚組織血液循環評価装置による血液流量の評価手順を示す図である。
【図15】健康高齢者の温度伝導率を測定した結果を示すヒストグラムである。
【図16】入院高齢者の温度伝導率を測定した結果を示すヒストグラムである。
【図17】温度伝導率とOHスケールによる褥瘡の危険度評価との関係を示す図である。
【図18】この発明の一実施形態に係る褥瘡診断装置のブロック図である。
【図19】褥瘡診断装置による褥瘡危険度の評価手順を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
11 温度伝導率測定装置
11A 皮膚組織血液循環評価装置
11B 褥瘡診断装置
21 測定器
22,32 通信部
23 貼付部材
24 熱刺激発生部
25 温度測定部
33,33A,33B CPU
34,34A,34B ROM
35,35A,35B RAM
36 表示部
241 ケース
242 熱伝導プローブ
242a 温度制御用センサ
243 ペルチェ素子
244 ヒートシンク
245 熱放散ファン
331 時定数算出部
332 温度伝導率推定部
333 測定器制御部
334 血液流量評価部
335 褥瘡危険度判定部
351 温度伝導率推定テーブル
352 血液流量評価テーブル
353 褥瘡危険度判定テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の温度伝導率を測定する温度伝導率測定装置であって、
生体に所定時間だけ熱刺激を付与する熱刺激発生部と、
前記熱刺激発生部によって熱刺激を付与された生体の温度の時間的変化を測定する温度測定部と、
生体熱伝導方程式に基づいて、前記温度測定部の測定結果から生体の温度伝導率を算出する温度伝導率算出部と
を備える温度伝導率測定装置。
【請求項2】
熱刺激を付与する前の生体の温度をt1、前記所定時間を経過した時点での生体の温度をt2、前記所定時間を経過した時点からt1/t2が予め定められた値に達するまでの時間を時定数と定義すると、
前記温度伝導率算出部は、
生体熱伝導方程式に基づいて予め算出された時定数と温度伝導率との関係を保持する温度伝導率推定テーブルを記憶する記憶部と、
前記温度測定部の検出結果に基づいて時定数を算出する時定数算出部と、
前記温度伝導率推定テーブルに基づいて、前記時定数から生体の温度伝導率を推定する温度伝導率推定部と
を備える請求項1に記載の温度伝導率測定装置。
【請求項3】
前記熱刺激発生部は、生体に冷却刺激を付与する冷却刺激発生部である
請求項1又は2に記載の温度伝導率測定装置。
【請求項4】
前記熱刺激発生部は、ペルチェ素子によって構成される
請求項1〜3のいずれか1項に記載の温度伝導率測定装置。
【請求項5】
前記熱刺激発生部と前記温度測定部とを保持し、かつ生体の表面に貼付される貼付部材、前記熱刺激発生部及び前記温度測定部を含む測定器と、
前記温度伝導率算出部、前記測定器の動作を制御する測定器制御部及び前記温度伝導率算出部によって算出された生体の温度伝導率を表示する表示部を含み、前記測定器とデータの送受信可能な状態で接続される操作端末と
で構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の温度伝導率測定装置。
【請求項6】
前記貼付部材は、生体の表面に沿って変形可能な材料で形成されており、
前記温度測定部は、前記貼付部材の生体表面に対面する面から突出するように配置されている
請求項5に記載の温度伝導率測定装置。
【請求項7】
前記測定器と前記操作端末とは、無線接続されている
請求項5又は6に記載の温度伝導率測定装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の温度伝導率測定装置と、
予め算出された温度伝導率と血液流量との関係を保持する血液流量評価テーブルを記憶する記憶部と、
前記血液流量評価テーブルに基づいて、前記温度伝導率算出部の算出結果から生体の血液流量を評価する血液流量評価部と
を備える皮膚組織血液循環評価装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の温度伝導率測定装置と、
予め算出された温度伝導率と褥瘡危険度との関係を保持する褥瘡危険度判定テーブルを記憶する記憶部と、
前記褥瘡危険度判定テーブルに基づいて、前記温度伝導率算出部の算出結果から生体表面の褥瘡の危険度を判定する褥瘡危険度判定部と
を備える褥瘡診断装置。
【請求項10】
所定時間だけ熱刺激を付与する熱刺激発生部と、前記熱刺激発生部によって熱刺激を付与された生体の温度の時間的変化を測定する温度測定部とを備える温度伝導率測定装置で実行されるプログラムであって、
生体熱伝導方程式に基づいて、前記温度測定部の測定結果から生体の温度伝導率を算出する温度伝導率算出ステップを含む
プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−22723(P2010−22723A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190325(P2008−190325)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(508222070)アソート株式会社 (1)
【Fターム(参考)】