説明

温度履歴管理装置

【課題】被検知物の形に沿って直接装着でき、充電により再利用可能な電源を内蔵した、マイナス温度環境下でも利用可能な温度履歴管理装置を提供することにある。
【解決手段】少なくとも温度センサ13と電源とを有する温度履歴管理装置において、前記電源として有機ラジカル電池が内蔵されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料、生花、血液製剤、薬品、精密機器などの輸送あるいは保管中の温度履歴を記憶し管理する温度履歴管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、飲料、薬品、精密機器等の物流品の温度履歴を記憶し、輸送あるいは保管中の温度管理が行われるようになっている。特許文献1及び2には、このような物流時の温度履歴を管理する装置が開示されている。また、倉庫から運搬トラックへの積み込み等で、屋外などの温度管理が不徹底な場所に被検知物が置かれる際の温度変化の把握も求められている。
【0003】
特に、近年ではRFID(Radio Frequency Identification)タグを利用した商品管理システムの構築が進んでいる。例えば、肉や魚介類など生鮮食品の流通分野では食品または包装にRFIDタグを貼り付け、生鮮食品が運搬されたコンテナの温度を測定してRFIDタグに記憶し、記憶結果に基づいて生鮮食品を管理することが提案されている。特許文献3では、温度センサを備え、該温度センサで測定した温度情報をRFIDタグに対し書き込むリーダーライタ(読み取り/書き込み)装置が開示されている。
【0004】
RFIDタグは、外装体と、この外装体に内蔵されたICモジュール及びアンテナとを基本構造とするが、電源を内蔵しているものもある(例えば特許文献4参照)。このように電源を内蔵したRFIDタグは、電源を内蔵していないRFICタグに比べ、長い距離での情報送信(数十m)が可能であるという利点を備える。そのような電源としては、一次電池である薄型リチウムコイン電池や、充電が可能な電池(二次電池)であるリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、鉛蓄電池などが考えられていた。
【特許文献1】特開2004−108703号公報
【特許文献2】実用新案登録第3069949号公報
【特許文献3】特開2006−23963号公報
【特許文献4】特開2002−304996号公報
【特許文献5】特許第3687736号公報
【特許文献6】特開2002−304996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物流品に対する正確な温度管理を行なう場合、物流品ごとに温度履歴管理装置を直接貼り付けることが想定される。この場合、装置の回収や別の物流品への再装着などの点で、温度履歴管理装置に電源を内蔵することが考えられる。ところが、上記に挙げられた薄型リチウムコイン電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池などは1mm以上の厚さを要し、また固く折り曲げることができない。そのため、これらの電池を内蔵した温度履歴管理装置は薄型化に限界があり、また薄くしても折り曲げることはできない。したがって、それらの電池を内蔵した場合は、凹凸などの曲面を有する物流品に対して温度履歴管理装置を直接貼り付けることが難しかった。その場合、温度履歴管理装置を運搬容器や保管容器に取り付けるか、コンテナや倉庫全体の温度履歴の測定で代用しなければならず、物流品の温度履歴を正確に測定することはできなかった。また、物流品やその容器に直接貼り付けるために装置の外装をそれらの表面形状に合わせて成形した場合、装置の外形に凹凸ができ、整頓しにくい、あるいは持ちにくいものになる。
【0006】
また、温度履歴管理装置の電源に一次電池を使用する場合には、充電して再利用することができないため、使い捨て、または電池の交換が必要であった。
【0007】
また、上記に挙げられた電池は低温特性が悪い。例えばマイナス温度環境下では駆動に必要な電流が得られない。そのため、温度管理が必要な食品、飲料、生花、血液製剤、薬品、精密機器などの物流品を冷蔵または冷凍する場合には、上記電池の温度履歴管理装置への利用が難しかった。
【0008】
なお、仮に温度履歴管理装置自体にRFIDタグを利用することを想定した場合、リーダーライタ装置からの電磁波による電力供給時のみならず、RFIDタグ自身が時時刻刻と変化する品物温度を測定しなければならない。そのため、温度履歴管理装置に利用するRFIDタグには温度センサと電源がさらに必要になる。また、測定した温度履歴情報を遠く離れた外部装置へ出力したい場合も、電源を内蔵したRFIDタグが要求される。しかし、RFIDタグ用電源として考えられる上記の電池はこれまで説明した課題を有している。そのため、様々な形状の物流品に直接貼り付けて使用する温度履歴管理装置に対し、従来の電池内蔵型RFIDタグを利用することはできなかった。
【0009】
そこで本発明の目的は、薄くてやわらかいために被検知物に直接装着でき、充電により再利用可能な電源を内蔵した、マイナス温度環境下でも利用可能な温度履歴管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の温度履歴管理装置は、温度履歴を把握したい被検知物に装着し、マイナス温度環境下でも利用する、少なくとも温度センサと電源とを有する温度履歴管理装置であって、前記電源として有機ラジカル電池を用いたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の温度履歴管理装置は、厚みが1mm以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明において用いられる有機ラジカル電池は、活物質である有機ラジカル化合物の酸化還元反応を用いる電池である。特許文献5には、ニトロキシドラジカル化合物、アリールオキシラジカル化合物及び特定のアミノトリアジン構造を有する高分子化合物などのラジカル化合物を正極材料として用いる有機ラジカル電池が開示されている。特許文献6に記載されている有機ラジカル化合物の酸化還元反応を用いる電池では、ニトロキシル高分子と炭素(導電付与剤)を混合した正極が用いられている。
【0013】
このような有機ラジカル電池を用いることで、厚さを0.4mm以下に薄くでき、折り曲げも可能で、かつ再充電可能な温度履歴管理装置用の電源が提供できる。有機ラジカル電池はマイナス温度環境下での利用も可能であり、温度履歴を測定・管理するための電源としては最適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、マイナス温度環境下でも利用可能で、かつ物流品に直接装着して温度検知する温度履歴管理装置を提供することができる。また、この温度履歴管理装置は、電源が二次電池であるため繰り返し利用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
[1]温度履歴管理装置(RFIDタグ)
図1Aは、本実施形態の温度履歴管理装置の平面図である。図1Bは図1AのA−B線での断面図、図1Cは図1AのC−D線での断面図である。図1Dは図1AのE−F線での断面図である。
【0017】
本実施形態の温度履歴管理装置は、有機ラジカル電池1、これによって駆動されるICモジュール2と温度センサ13と温度情報出力手段14、ならびにアンテナ3を具備したRFIDタグから構成されている。なお、図1Aでは温度情報出力手段14として表示デバイスを示している。
【0018】
このRFIDタグはオーバーレイ9a、コアシート8a、コアシート8b及びオーバーレイ9bをこの順に重ね合わせ互いに接着した構造を有する。
【0019】
最上層となるオーバーレイ9bは、PVC、ABS、PET−Gなどの樹脂からなる、厚さ0.1mm程度の透明性のあるプラスチックフィルムである。オーバーレイ9bには有機ラジカル電池1用の充電端子7が露出している。
【0020】
オーバーレイ9bの下層となるコアシート8bは、PVC、ABS、PET−Gなどの樹脂からなる厚さ0.25〜0.35mmのプラスチックシートである。コアシート8bには充電端子7を有機ラジカル電池1の配線に接続するスルーホール6が形成されている。
【0021】
コアシート8bの下層となるコアシート8aは、PVC、ABS、PET−Gなどの樹脂からなる厚さ0.25〜0.35mmのプラスチックシートであり、その上に、温度センサ13、温度情報出力手段14、有機ラジカル電池1、ICモジュール2、およびアンテナ3などが配置され、配線15で互いに接続されている。これにより、ICモジュール2は有機ラジカル電池1で駆動されるとともに、温度センサ14、温度情報出力手段15およびアンテナ3を用いて温度の測定、温度履歴の記憶、通信などを実行する。アンテナ3は、ICモジュール2と接続される平面コイルアンテナとして設けられている。なお、温度センサ13はコアシート8bに覆われているが、温度情報出力手段14はオーバーレイ9bに設けられた穴から露出している(図1C,1D)。
【0022】
最下層となるオーバーレイ9aは、PVC、ABS、PET−Gなどの樹脂からなる厚さ0.1mm程度の透明性のあるプラスチックフィルムである。
【0023】
図2Aは、有機ラジカル電池1を内蔵したシール層100の断面図であり、図2Bは、シール層100を下方から見た図である。シール層100は裏面の外周部分102は接着性がある。また、有機ラジカル電池1は電池カバー101内に収納されており、有機ラジカル電池1からは金属もしくは炭素からなるタブ11が出ている。タブ11は、電池1の各電極に対して電気的に接続するものである。
【0024】
このようなシール層100は、その裏面の外周の接着性を有する部分102により、コアシート8bに接着することができる。シール層100を装着するときに、図1Bに示すように、電池1のタブ11はICモジュール2の端子12と重なり合うようになる。これにより、電池1がICモジュール2と電気的に接続する。また、オーバーレイ9bとコアシート8bには、シール層100の接着時にタブ11及び電池1が入る開口が設けられている。
【0025】
このシール層100を剥がすことで電池1の交換が可能になる。この場合、防水性を高めるため、電池が設置される空間部及び電池1に相対するシール層100の表面に、30〜200nm厚程度のシリコン(SiOx;x=1〜2)層あるいは窒化シリコン(SiOxN;x=0.5〜1.5)層を蒸着などで形成するのが良い。
【0026】
本実施形態では有機ラジカル電池1を交換可能にしたが、シール層100及び電池カバー101を使用せずにコアシート8a上に電池1を固定してオーバーレイ9bで覆った構成も考えられる。
【0027】
なお、上記のように温度センサおよび有機ラジカル電池を含む温度履歴管理装置の形状は図示した形状に限定されず、様々な形状をとることができる。例えば、シール状、カード状、コイン状、シート状、あるいはシール状やシート状の装置を組み込んで袋状、箱状など、様々な形状をとることができる。
【0028】
また、本実施形態の温度履歴管理装置に適用したRFIDタグ内のICモジュールの一例を説明する。図3はこのICモジュールの概念図である。ICモジュール2は、メモリ2a(ROM、RAM)、制御用マイクロプロセッサ2b、変調器2c、コマンド2d、クロック2e、フロントエンド2fを用いて構成されている。そして、有機ラジカル電池1からICモジュール2に供給される電力は、温度センサ13による温度検知、その検知された温度データのメモリ2aへの記憶、温度履歴の表示またはデータ送信などに用いられる。
【0029】
[2] 温度センサ
本実施形態の温度履歴管理装置に使用される温度センサ13としては、接触式の熱電対、測温抵抗体、サーミスタ、バイメタル、非接触式の放射温度計などが利用できる。本発明では、温度履歴管理装置を被検知物に直接装着することから、接触式の温度センサを用いることが望ましい。
【0030】
[3] 温度情報を出力する手段
本実施形態に使用される温度情報出力手段14としては、高周波無線通信、光通信などのワイヤレス通信によってコンピュータに情報を送信する手段が考えられる。あるいは、液晶ディスプレイ、有機または無機のELディスプレイ、電気泳動式ディスプレイなどの表示デバイスでもよい。また、メモリカードなどの記憶媒体ごと装置から取出す方法で温度情報を出力してもよい。また、コンピュータと温度履歴管理装置の間をケーブルで接続したり、プリントアウトしたりする方法で温度情報を出力してもよい。
【0031】
中でも、温度履歴管理装置を薄く作製できる効果を生かすには、ワイヤレス通信による出力を利用することが望ましい。
【0032】
[4] 警報を発する手段
また、本実施形態の温度履歴管理装置には、温度情報が所定の閾値を超えた場合に警報を発する手段を備えることができる。この警報手段としては、光によるもの、音によるもの、ワイヤレス通信によってコンピュータへ送信するもの、などを利用できる。また、温度情報が所定の閾値を超えた場合に、コンテナや倉庫の温度調節装置と通信することで、温度設定の変更を行うこともできる。
【0033】
[6] 有機ラジカル電池
次に、本実施形態の温度履歴管理装置に用いられる有機ラジカル電池について説明する。図4は有機ラジカル電池の斜視図であり、図5は、有機ラジカル電池の内部構成を示す分解斜視図である。
【0034】
有機ラジカル電池は、その厚さが0.7mm以下である薄型の有機ラジカル電池のことである。薄型有機ラジカル電池の基本構成は、安定ラジカル化合物を正極活物質としたラジカル正極202と、多孔質ポリプロピレンやセルロースなどからなるセパレータ203と、金属リチウムなどからなる負極204がこの順に積層されたものである。この積層体はセパレータ203に電解液を浸透させ両側から外装用フィルム201で挟んで封止される。また、正極202及び負極204は、それぞれ正極リード205及び負極リード206に接続されており、これらのリードを介して電力を取り出せるように構成されている。外装用フィルム201としては、水蒸気透過性の低いアルミラミネートフィルムなどが使用される。
【0035】
以下、本発明に用いられる有機ラジカル電池の各構成部分について説明する。
【0036】
(1)ラジカル正極
ラジカル正極202における正極活物質として、還元状態において下記式(1)で表わされるニトロキシドラジカル、酸化状態において下記式(2)で表わされるオキソアンモニウム(ニトロキシドカチオン)を部分構造として分子中に有するニトロキシドラジカルポリマーを用いることができる。
【0037】
有機ラジカル電池を一次電池として用いた場合、その放電時には下記式(1)で表されるニトロキシドラジカル基と、下記式(2)で表されるオキソアンモニウム基の間で電荷の授受を行っているものと考えられる。また、二次電池として用いた場合、その充放電時には、下記式(1)で表されるニトロキシドラジカル基と、下記式(2)で表されるオキソアンモニウム基の間で可逆的に電荷の授受を行っているものと考えられる。ここで、ニトロキシドラジカル基は、酸素原子と窒素原子を結合してなるニトロキシド基を構成する酸素原子が不対電子を有する置換基のことを表す。このニトロキシドラジカル基は、窒素原子の電子吸引性によって酸素上にある不対電子(ラジカル)が安定化されている。
【0038】
このようなニトロキシドラジカルポリマーを用いることにより、安定して高エネルギー密度の電池を作動させることができる。
【0039】
【化1】

【0040】
ニトロキシドラジカルポリマーの代表的な構造の例を下記式(3)〜(7)に示す。
【0041】
【化2】

【0042】
これら式(3)〜(7)で表されるラジカルポリマーは、正極活物質として、還元状態において上記式(3)〜(7)で表されるニトロキシドラジカル、酸化状態においてそれぞれ下記式(8)〜(12)で表されるオキソアンモニウム(ニトロキシドカチオン)となっている。そして、電池の作動時には上記式(3)〜(7)のニトロキシドラジカルと、下記式(8)〜(12)のオキソアンモニウムとの間で電荷の授受を行っているものと考えられる。
【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
【化5】

【0046】
なお、これらのニトロキシドラジカルポリマーの重量平均分子量は、500以上であることが好ましく、さらには5000以上であることがより好ましい。これは、重量平均分子量が500以上であると電池用電解液に溶解しづらくなり、さらに分子量5000以上になるとほぼ不溶となるからである。重合体のポリマーは、鎖状、分岐状、網目状のいずれでもよい。また、架橋剤で架橋したような構造でもよい。
【0047】
また、これらのニトロキシドラジカルポリマーは、単独で用いることができるが、二種類以上を組み合わせて用いても良い。また、他の活物質と組み合わせて用いても良い。
【0048】
また、ニトロキシドラジカルポリマーを用いて電極を形成する場合に、インピーダンスを低下させる目的で、導電付与剤を混合させることもできる。導電付与剤の材料としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子が挙げられる。
【0049】
また、ニトロキシドラジカルポリマーと導電付与剤の結びつきを強めるために、結着剤を用いることもできる。このような結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、各種ポリウレタン等の樹脂バインダーが挙げられる。
【0050】
ラジカル正極202は、上記の正極活物質としてのニトロキシドラジカルポリマーを正極集電体上に形成してなり、正極集電体としては、ニッケルやアルミニウム、銅、金、銀、アルミニウム合金、ステンレス、炭素等からなる箔または平板を用いることができる。特に、電池の折り曲げを容易にするためには、箔状の集電体材料にゲル状のニトロキシドラジカルポリマーを形成した正極を作製することが好ましい。
【0051】
(2)負極
負極204における活物質としては、リチウム金属やリチウム合金を用いることができる。リチウム合金としては、LiAl合金、LiAg合金、LiPb合金、LiSi合金、Li−Bi−Pb−Sn−Cd合金、Li−Ga−In合金などが挙げられる。これらの形状としては特に限定されるものではなく、例えば、薄膜状、粉末を固めたもの、繊維状のもの、フレーク状のもの等であっても良い。また、これらの負極活物質を単独、もしくは組み合わせて使用できる。
【0052】
負極204は、上記の活物質を集電体上に形成してなり、この集電体としては、正極を構成する集電体と同じ材料を用いることができる。勿論、活物質および集電体は電池の折り曲げを容易にする材料・厚みに選定される。
【0053】
また、負極204の各構成材料間の結びつきを強めるために、結着剤を用いることもできる。このような結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、部分カルボキシ化セルロース、各種ポリウレタン等が挙げられる。
【0054】
(3)セパレータ
ラジカル正極202、および負極204が接触しないようにポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質フィルム、セルロース膜、不織布などのセパレータ203を用いることができる。
【0055】
(4)電解質
図5に示す電池1は、電解液が浸透したセパレータ203を有している。
【0056】
セパレータ203の電解液は、負極204と正極202の両極間の荷電担体輸送を行うものであり、一般には20℃で10-5〜10-1S/cmのイオン伝導性を有していることが好ましい。電解液としては、例えば電解質塩を溶剤に溶解した電解液を利用することができる。
【0057】
この電解質塩として、例えばLiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiC(CF3SO23、LiC(C25SO23等が挙げられる。
【0058】
このような電解質塩を溶解させる溶剤としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒を用いることができる。これらの溶剤を単独もしくは2種類以上混合して用いることもできる。
【0059】
また、電池はセパレータ203の替わりに固体電解質を有するものでもよい。この固体電解質としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体や、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリルニトリル系重合体、さらにポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、これらのアクリレート体やメタクリレート体の重合体などが挙げられる。これらの固体電解質としては、上記高分子物質に電解液を含ませてゲル状にしたものを用いたり、上記高分子物質の状態のものをそのまま用いたりすることができる。電池を折り曲げ易くするためには、ゲル状の電解質を用いるのが望ましい。
【0060】
有機ラジカル電池を例えばマイナス温度環境下で利用する場合、電解液には凝固温度が低く、かつ、誘電率の高いものを利用することが好ましい。一般に、誘電率の高い電解液は粘性も高く、マイナス温度環境下ではさらに粘性が上がるため電気伝導度が低下する。そのため、従来の二次電池では、高誘電率の電解液と、低粘性だが誘電率も低い電解液とを混合して用いることが多い。一方、有機ラジカル電池の場合は、粘性の高い電解液を単独で用いても高い低温特性が見られる。この理由は定かではないが、おそらくはラジカル電池の正極が電解液を含んでゲル化することで、充放電反応に伴う活物質内のイオン拡散が速くなり、そのことが粘性の高さを補うものと推測される。
【0061】
そのため、本発明の温度履歴管理装置をマイナス温度環境下で使用する場合に用いる有機ラジカル電池には、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンなどの、誘電率が20以上の溶剤を単独で、あるいは重量比で50%以上含む比率で他の溶剤と混合させて用いることが望ましい。
【0062】
(5)電池形状
本発明に使用する有機ラジカル電池の形状は、図4に示すシート型に限定されるものではない。シート型の電池形状の他には、円筒型、角型、コイン型等が挙げられる。このような電池は、上述した正極、負極、電解質、セパレータなどの電極積層体あるいは巻回体を、金属ケース、樹脂ケース、金属箔、ラミネートフィルム等によって封止することによって作製される。しかしながら、薄くしやすいという観点で言えば、電池形状は、ラミネートフィルムによって封止しされたシート型とすることが好ましい。ラミネートフィルムには合成樹脂フィルム単独、あるいはアルミニウム箔などの金属箔と合成樹脂フィルムを張り合わせたもの、合成樹脂フィルムにSiO2などの酸化物を蒸着したものを用いることができる。
【0063】
(ラジカルポリマーの合成例)
上記式(5)で表されるラジカルポリマーの合成例を以下に示す。
【0064】
まず、モノマー(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−ビニルオキシ−1−オキシル)を合成した。このモノマーの合成は、イリジウム触媒存在下、相当するラジカルを有するアルコールと酢酸ビニルを加熱還流する方法を用いて行った。具体的には、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティ(Journal of The American Society、124巻,1590〜1591頁(2002年)、石井康敬ら)や特開2003−73321号公報に記載の方法に従って、モノマーを合成した。
【0065】
次に、この2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−ビニルオキシ−1−オキシル(モノマー)の重合を、下記式(13)で表される反応により行った。その具体的な方法について以下に示す。
【0066】
【化6】

【0067】
アルゴン雰囲気下、200mLの3口丸底フラスコに、上記のようにして合成した2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−ビニルオキシ−1−オキシル(モノマー)10.0g(50.4mmol)、ジクロロメタン100mLを加え、−78℃に冷却した。さらに、三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体280mg(2mmol)を加えて均一にした後、−78℃で20時間、反応させた。反応終了後、室温に戻し、得られた固形物をろ過した後メタノールで数回洗浄し、真空乾燥を行うことで、赤色固体として式(5)で表されるラジカルポリマーを得た(収率70%)。
【0068】
得られたラジカルポリマーのIRスペクトルを測定したところ、上記モノマーの場合に観測されていたビニル基に由来するピーク966、674(cm-1)が消失していた。また、得られたラジカルポリマーは、有機溶媒等に不溶であった。ESRスペクトルにより求めたラジカルポリマーのスピン密度は、3.05×1021spin/gであった。これは、ポリマー中のすべてのラジカル基が重合によって失活せず、ラジカルのまま存在すると仮定した場合のスピン濃度とほぼ一致していた。
【0069】
(有機ラジカル電池の作製例)
次に、有機ラジカル電池の作製例について説明する。
【0070】
微粉化した式(5)で表されるラジカルポリマー1.68gと、炭素粉末(ケッチェンブラクEC300J;ライオン社製)0.6gと、カルボキシメチルセルロース(CMC:HB−9;日本ゼオン社製)96mgと、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:F−104;ダイキン社製)24mgと、水7.2mLをホモジナイザーにて攪拌し、均一なスラリー状に調整した。このスラリーを電極作製用コーターにてアルミ箔(厚さ20μm:正極の集電体)上に塗布し、さらに80℃で3分間乾燥して、厚さ50μmのラジカル正極層を形成した。
【0071】
次に、このようにして得られたラジカル正極を20×20mmの正方形に打ち抜いた。この正極のアルミ箔面に、長さ3cm、幅0.5mmのニッケルリードを溶接した。また、銅箔(負極集電体)上にリチウム箔(厚さ30μm)を張り合わせた後、20×20mmの正方形に打ち抜いて負極を形成した。この負極の銅箔面に、長さ3cm、幅0.5mmのニッケルリードを溶接した。
【0072】
次に、ラジカル正極のスラリーと負極のリチウム層とが対向するように、ラジカル正極、多孔質ポリプロピレンのセパレータ(25×25mmの正方形)、負極をこの順に積層してニッケルリード付電極対を作製した。
【0073】
この後、2枚の熱融着可能なアルミラミネートフィルム(縦40mm×横40mm×厚さ0.76mm)の三方を熱融着することにより袋状とし、この中に、上記のように作製したニッケルリード付電極対を入れた。さらに、電解液[1.0mol/LのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)の混合溶液(混合比EC:DEC=3:7)]を、アルミラミネートケースの中に0.5cc入れた。この際、ニッケルリード付電極のニッケルリードの端を、アルミラミネートケースの外に1cm出し、アルミラミネートケースの未溶着の一辺を熱融着した。これにより、電極と電解液をアルミラミネートケース中に完全に密閉した。
【0074】
以上のようにして有機ラジカル電池(縦40mm×横40mm×厚さ0.4mm)を作製した。この電池を100mAで30秒充電した後に、0.1mAの定電流で放電した。その結果、平均電圧3.5Vで5時間放電を行えた(エネルギー量1.8mWh)。
【実施例】
【0075】
以下に、図面を参照してこの発明に係る温度履歴管理装置について説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されない。
【0076】
(実施例1)
図6は、本発明の実施例1に係る温度履歴管理装置の概念図である。同図に示すように、本装置301は、温度センサ302と、温度センサ302が検知した温度情報を処理する情報処理部303と、情報処理部303で処理されたデータを外部に送信する高周波無線送信部304を備え、温度センサ302、情報処理部303、および高周波無線送信部304の電源として、有機ラジカル電池305を用いている。
【0077】
この温度履歴管理装置301は柔軟性のある材料を用いてカード状に、そして厚さが0.7mmに形成されている。また、この厚み内に有機ラジカル電池302を収容した温度履歴管理装置を、室温が−20℃に設定されたコンテナで被検知物を運搬する際に用いても、この有機ラジカル電池は、25mA,1msecのパルス電流を供給して300MHzの高周波無線を20m送信することが可能であった。
【0078】
また、折り曲げ可能な有機ラジカル電池を収容したカード状温度履歴管理装置であるので、被検知物やその容器に直接、その外形の凹凸に倣って装着することができる。その結果、被検知物の正確な温度を測定することが可能である。また、あらかじめ被検知物やその容器の曲面形状に合わせて温度履歴管理装置の外装を成形しておく必要がないので、装置使用後の持ち運びや整頓が容易である。
【0079】
なお、本装置を図1A〜1DのRFIDタグで構成する場合、ICモジュール2が情報処理部303を担い、温度情報出力手段14が高周波無線送信部304を担うことになる。
【0080】
この場合の使用方法および動作例を説明する。
【0081】
マイナス温度環境下のコンテナ室内の被検知物にカード状RFIDタグの温度履歴管理装置301が直接貼り付けられる。電磁波を用いて起動信号または測定開始信号が温度履歴管理装置301の情報処理部303に入力されると、温度履歴管理装置301が起動し、保管中または運搬中の被検知物の温度測定が温度センサ302を用いて開始される。測定された温度情報は情報処理部303に逐次記憶されていく。その後、温度履歴の読み出し信号が電磁波を用いて温度履歴管理装置301に入力されると、高周波無線送信部304は、情報処理部303にこれまで記憶された温度履歴データを外部へワイヤレス送信する。あるいは、測定した被検知物温度の記憶と同時に、高周波無線送信部304は、情報処理部303に一次記憶された温度データを外部にワイヤレス送信してもよい。
【0082】
保管期間終了後または運搬後は、被検知物から温度履歴管理装置301が取り外され、回収される。回収した温度履歴管理装置301の有機ラジカル電池302が再充電される。これにより、別の被検知物に再利用することができる。
【0083】
(実施例2)
図7は、本発明の実施例2に係る温度履歴管理装置の概念図である。同図に示すように、本装置401は、温度センサ402と、温度センサ402が検知した温度情報を処理する情報処理部403と、情報処理部403で処理されたデータを表示する液晶ディスプレイ404を備え、温度センサ402、情報処理部403、および液晶ディスプレイ404の電源として、有機ラジカル電池405を用いている。
【0084】
この温度履歴管理装置401は柔軟性のある材料を用いてシート状に、そして厚さが1mmに形成されている。
【0085】
本実施例の温度履歴管理装置401は、折り曲げ可能な有機ラジカル電池を使用しているので、被検知物やその容器に直接、その外形の凹凸に倣って装着することができる。その結果、被検知物の正確な温度を測定することが可能である。また、あらかじめ被検知物やその容器の曲面形状に合わせて温度履歴管理装置の外装を成形しておく必要がないので、装置使用後の持ち運びや整頓が容易である。勿論、本例の液晶ディスプレイ404は可撓性を有するものである。
【0086】
なお、本装置を図1A〜1DのRFIDタグで構成する場合、ICモジュール2が情報処理部403を担い、温度情報出力手段14が液晶ディスプレイ404を担うことになる。
【0087】
この場合の使用方法および動作例を説明する。
【0088】
マイナス温度環境下の倉庫内の被検知物にシート状RFIDタグの温度履歴管理装置401が直接貼り付けられる。電磁波を用いて起動信号または測定開始信号が温度履歴管理装置401の情報処理部403に入力されると、温度履歴管理装置401が起動し、保管中の被検知物の温度測定が温度センサ402を用いて開始される。測定された温度情報は情報処理部403に逐次記憶されていく。その後、温度履歴の読み出し信号が電磁波を用いて温度履歴管理装置401に入力されると、液晶ディスプレイ404に、情報処理部403にこれまで記憶された温度履歴データが表示される。あるいは、測定した被検知物温度の記憶と同時に、液晶ディスプレイ404に、情報処理部403に一次記憶された温度データを表示してもよい。液晶ディスプレイ404のサイズが小さいために一度に温度履歴を表示できない場合は、時系列に温度データを並べて連続表示すればよい。
【0089】
被検知物の温度履歴管理が必要な状態が終了する出庫の際に、被検知物からシート状温度履歴管理装置401が取り外され、回収される。回収した温度履歴管理装置401の有機ラジカル電池402が再充電される。これにより、他の被検知物に再度利用することができる。
【0090】
(実施例3)
図8は、本発明の実施例3に係る温度履歴管理装置の概念図である。同図に示すように、本装置501は、温度センサ502と、温度センサ502が検知した温度情報を処理する情報処理部503と、情報処理部503で処理されたデータを表示する電気泳動式ディスプレイ(Electrophoretic Display(EPD))504を備え、温度センサ502、情報処理部503、および電気泳動式ディスプレイ504の電源として、有機ラジカル電池505を用いている。
【0091】
この温度履歴管理装置501は柔軟性のある材料を用いてシート状に、そして厚さが0.9mmに形成されている。
【0092】
本実施例の温度履歴管理装置501は、折り曲げ可能な有機ラジカル電池を使用しているので、被検知物やその容器に直接、その外形の凹凸に倣って装着することができる。その結果、被検知物の正確な温度を測定することが可能である。また、被検知物やその容器の曲面形状に合わせて温度履歴管理装置の外装をあらかじめ成形しておく必要がないので、装置使用後の持ち運びや整頓が容易である。勿論、本例の電気泳動式ディスプレイ504は可撓性を有する電子ペーパーである。
【0093】
なお、本装置を図1A〜1DのRFIDタグで構成する場合、ICモジュール2が情報処理部503を担い、温度情報出力手段14が電気泳動式ディスプレイ504を担うことになる。この場合の使用方法および動作例は上記した実施例2と同じである。但し、図8では電気泳動式ディスプレイ504の一例として、時間経過に伴う温度変化を折れ線グラフで表示するものを示した。
【0094】
(実施例4)
図9は、本発明の実施例4に係る温度履歴管理装置の概念図である。同図に示すように、本装置601は、温度センサ602と、温度センサ602が検知した温度情報を処理する情報処理部603と、情報処理部603で処理されたデータが所定の閾値を超えた場合に警報音を鳴らす警報発生部604及び光ることで警報を発する警報発生部505とを備える。温度センサ602、情報処理部603、警報発生部604及び605の電源として、有機ラジカル電池606を用いている。
【0095】
この温度履歴管理装置601は柔軟性のある材料を用いてカード状に、そして厚さが0.8mmに形成されている。
【0096】
本実施例の温度履歴管理装置601は、折り曲げ可能な有機ラジカル電池を使用しているので、被検知物やその容器に直接、その外形の凹凸に倣って装着することができる。その結果、被検知物の正確な温度を測定することが可能である。また、あらかじめ被検知物やその容器の曲面形状に合わせて温度履歴管理装置の外装を成形しておく必要がないので、装置使用後の持ち運びや整頓が容易である。
【0097】
なお、本装置を図1A〜1DのRFIDタグで構成する場合、ICモジュール2が情報処理部603を担い、温度情報出力手段14の替わりに警報発生部604及び605が設けられることになる。
【0098】
この場合の使用方法および動作例を説明する。
【0099】
マイナス温度環境下のコンテナ内の被検知物にカード状RFIDタグの温度履歴管理装置601が直接貼り付けられる。このコンテナで生産工場から店舗まで被検知物を輸送するにあたって、電磁波を用いて起動信号または測定開始信号が温度履歴管理装置601の情報処理部603に入力されると、温度履歴管理装置601が起動し、輸送中の被検知物の温度測定が温度センサ602を用いて開始される。測定された温度情報は情報処理部603に逐次記憶されていく。情報処理部603は、記憶した温度データと所定の閾値とを比較され、該データが所定の閾値を超えた場合に警報発生部604及び605を用いて警報音や光を発生させる。
【0100】
被検知物の温度履歴管理が必要な状態が終了する店舗への被検知物の引渡しの際に、被検知物からカード状温度履歴管理装置601が取り外され、回収される。回収した温度履歴管理装置601の有機ラジカル電池602は工場へ戻る際に再充電される。これにより、次の被検知物を運搬する際に再度利用することができる。
【0101】
(比較例1)
図6の有機ラジカル電池305の部分に、有機ラジカル電池305と同等の体積のコイン型リチウム一次電池を用いる以外は、実施例1と同様に温度履歴管理装置を作製した。室温を−20℃に設定されたコンテナで被検知物を運搬する際に用いると、コイン型リチウム一次電池は実施例1のように25mAを1msec流すパルス電流を流すことができず、高周波無線送信が不可能であった。また、コイン型リチウム一次電池は固くて折り曲げられないため、これを内蔵させた温度履歴管理装置は被検知物の外形に沿って変形できなかった。そのため、被検知物に直接貼り付けることができず、また貼り付けるためには、被検知物の外形形状に合わせて成形しておく必要があった。
【0102】
(比較例2)
図6の有機ラジカル電池305の部分に、有機ラジカル電池305と同等の体積のマンガン一次電池を用いる以外は、実施例1と同様に温度履歴管理装置を作製した。室温を−20℃に設定されたコンテナで被検知物を運搬する際に用いると、マンガン一次電池は実施例1のように25mAを1msec流すパルス電流を流すことができず、高周波無線送信が不可能であった。また、マンガン一次電池も固くて折り曲げられないため、これを内蔵させた温度履歴管理装置は被検知物の外形に沿って変形できなかった。そのため、被検知物に直接貼り付けることができず、また貼り付けるためには、被検知物の外形形状に合わせて成形しておく必要があった。
【0103】
(比較例3)
図8の有機ラジカル電池505の部分にニッケル水素電池を用いる以外は、実施例3と同様に温度履歴管理装置を作製した。ニッケル水素電池は6mm程度の厚さがあり、しかも固くて折り曲げられない。その故、これを内蔵させた温度履歴管理装置は厚く、被検知物の外形に沿って変形できないものとなった。その結果、被検知物に直接貼り付けることができず、また貼り付けるためには、被検知物の外形形状に合わせて成形しておく必要があった。さらに、温度履歴管理装置は厚いため、被検知物の外形に装着された際に凹凸ができ、倉庫内で被検知物の整頓がしくくなった。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1A】本発明の一実施形態による温度履歴管理装置の平面図である。
【図1B】図1AのA−B線での断面図である。
【図1C】図1AのC−D線での断面図である。
【図1D】図1AのE−F線での断面図である。
【図2A】有機ラジカル電池を内部に有するシール層の断面図である。
【図2B】図2Aに示すシール層を下方から見た図である。
【図3】本発明の実施形態による温度履歴管理装置に適用したRFIDタグ内部のICモジュールの概念図である。
【図4】本発明に適用可能な薄型有機ラジカル電池の斜視図である。
【図5】図4の有機ラジカル電池の構成を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の実施例1に係るカード状温度履歴管理装置を模式的に示した平面図である。
【図7】本発明の実施例2に係るシート状温度履歴管理装置を模式的に示した平面図である。
【図8】本発明の実施例3に係るシート状温度履歴管理装置を模式的に示した平面図である。
【図9】本発明の実施例4に係るシート状温度履歴管理装置を模式的に示した平面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 有機ラジカル電池
2 ICモジュール
2a メモリ(ROM、RAM)
2b 制御用マイクロプロセッサ
2c 変調器
2d コマンド
2e クロック
2f フロントエンド
3 アンテナ
6 スルーホール
7 充電用端子
8a,8b コアシート
9a,9b オーバーレイ
11 タブ
12 端子
13 温度センサ
14 温度情報出力手段
15 配線
100 シール層
101 電池カバー
102 接着性を有する部分
201 外装用フィルム
202 ラジカル正極
203 セパレータ
204 負極
205 正極リード
206 負極リード
301 カード状温度履歴管理装置
302 温度センサ
303 情報処理部
304 高周波無線送信部
305 有機ラジカル電池
401 シート状温度履歴管理装置
402 温度センサ
403 情報処理部
404 液晶ディスプレイ
405 有機ラジカル電池
501 シール状温度履歴管理装置
502 温度センサ
503 情報処理部
504 電気泳動式ディスプレイ
505 有機ラジカル電池
601 カード状温度履歴管理装置
602 温度センサ
603 情報処理部
604 警報発生部(音)
605 警報発生部(光)
606 有機ラジカル電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度履歴を把握したい被検知物に装着し、マイナス温度環境下でも利用する、少なくとも温度センサと電源とを有する温度履歴管理装置であって、前記電源として有機ラジカル電池を用いた温度履歴管理装置。
【請求項2】
厚みが1mm以下である、請求項1に記載の温度履歴管理装置。
【請求項3】
前記温度センサで検知した温度情報を出力する手段を有する、請求項1または2に記載の温度履歴管理装置。
【請求項4】
前記温度センサで測定した温度情報が所定の閾値を超えた場合に、警報を発する手段を有する、請求項1から3のいずれかに記載の温度履歴管理装置。
【請求項5】
外装体と、
前記外装体に設置された、温度センサ、該温度センサが検知した温度情報を処理する情報処理部、該情報処理部で処理されたデータを外部に出力する出力手段、及びこれらを駆動する電源を備え、
前記電源が有機ラジカル電池よりなることを特徴とする請求項1に記載の温度履歴管理装置。
【請求項6】
前記外装体が厚さ1mm以下であり、
少なくとも前記情報処理部と前記有機ラジカル電池が前記外装体の中に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の温度履歴管理装置。
【請求項7】
前記出力手段が、前記情報処理部で処理されたデータを外部に送信する無線送信手段であることを特徴とする請求項5または6に記載の温度履歴管理装置。
【請求項8】
前記出力手段が、前記情報処理部で処理されたデータを外部に表示する表示手段であることを特徴とする請求項5または6に記載の温度履歴管理装置。
【請求項9】
前記出力手段が、前記情報処理部で処理されたデータが所定の閾値を超えた場合に音および光の少なくとも一方で外部に警報する警報発生手段であることを特徴とする請求項5または6に記載の温度履歴管理装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−185446(P2008−185446A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19072(P2007−19072)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】