説明

温度応答性ゾル−ゲル転移を示す生分解性ポリマー及びその製造方法

【課題】生体適合性、十分な力学強度、そしてゲル内部での細胞増殖性を持った、温度応答性ゾル−ゲル転移を示す生分解性ポリマー及びその製造方法、及び該生分解性ポリマーを用いた医療用材料を提供する。
【解決手段】親水性ポリエーテルと疎水性ポリエステルとから構成される共重合体に、共有結合でメソゲン基が導入されてなる温度応答性生分解性ポリマーであり、具体的には、ポリグリセリンとポリアルキレングリコールとを縮合させたポリエーテルと、ヒドロキシ酸の重合体であるポリエステルに、コレステロール誘導体を含むメソゲン基を導入することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性に優れ、温度応答性ゾル−ゲル転移を示す生分解性ポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度、pH、電界、及び化学物質の変化に対する刺激感受性ポリマーの物理化学的応答に焦点を合わせた多くの研究がなされてきた。特に、外部の温度変化に応じた相転移現象を示す熱感受性ポリマーは、薬物担体などの医療用材料として広く研究されてきた。
【0003】
非特許文献1及び2によって開示されたN-イソプロピルアクリルアミド (NIPAAm) のホモポリマーまたはコポリマーは、1つの類である。もう1つの類は、例えば、非特許文献3によって開示されたプルロニック(ポロキサマー, Poloxamer, 商標)のような、ミドルブロックとしてポリ(プロピレンオキシド)およびサイドブロックとしてポリ(エチレンオキシド)からなるトリブロック共重合体である。このトリブロック共重合体は、温度に応答して溶液状態(ゾル)から溶媒を含んだゲル状態へ転移する挙動(以下,ゾル-ゲル転移と表記)を示す。これは、特定の分子量および組成範囲を有する共重合体水溶液が、ゾル−ゲル転移温度より低い温度では水溶液として存在するが、温度が転移温度より高いとき(例えば体温まで上昇するとき)共重合体間の相互作用によって固体ゲルを形成するという現象である。
【0004】
外部からの添加物なしに(in situ)ゾルからゲルへの変化が可能なこれらのポリマーは、体内へ注射による投与が可能な医療用材料として用いることができる。投与後は、外科的処置の必要が無く、生体内において低侵襲的に任意の希望の形状のインプラントを形成できるという利点を有する。つまり、生理(薬理)活性物質とポリマー溶液を体内に注射することで容易に生理(薬理)活性物質を内部に取込んだゲルが調製でき,それをリザーバーとした生理(薬理)活性物質の徐放が可能である。また,適した細胞をポリマー溶液に懸濁させたものを体内に注射することで、容易に細胞を内部に取込んだゲルが調製できる。
【0005】
この様に、in situでゲル化する材料は、注射によって生体内に埋植可能な埋め込み型ドラッグデリバリーシステムや生体組織工学 (tissue engineering) 用マトリックスとして注目を集めている。理想的な注射可能な系として機能するため、重合体の水溶液は、調製条件では注射可能な程度の低い粘性を示し、そして生理条件下(37℃付近)で迅速にゲル化する必要がある。医用材料として考慮する場合、重合体の生体適合性および安全性も重要な問題である。このため、その材料は生分解性で代謝可能あるいは毒性を発現することなく体外へ排泄される程度の分子量にまで分解される必要がある。また,その分解中、含水性に富んだヒドロゲルの性質を保持することにより、生体組織の刺激を誘起しないようでなければならない。
【0006】
しかしながら、ポロキサマー型コポリマー(プルロニック)は非生分解性であり、そして動物実験で、ポロキサマーの水溶液を腹腔内に注射するとトリグリセリドとコレステロールが増加することが示されている(非特許文献4)。
【0007】
最近、Jeongらは、生分解性で、in situでゲル化するポリ(エチレングリコール‐block‐(DL‐乳酸‐random‐グリコール酸)‐block‐エチレングリコ−ル); (PEG‐PLGA‐PEG)トリブロック共重合体を報告している(特許文献1)。
【0008】
また、非特許文献5では、同様な性質を有する(PLGA‐PEG‐PLGA)トリブロック共重合体を報告している(図1)。
【0009】
しかし、これらのポリマーは,分子量が低いためこのヒドロゲルの力学的強度は低く、生体組織との力学的適合性に乏しい。また,最初透明であったこれらのゲルは、加水分解に伴って不透明になりひいてはゲルが崩壊してしまう。ポリマーの分解に伴う構造変化と界面または相の発生は、生体内のタンパク質を変性する可能性があり、または生体組織工学での細胞損壊の原因になる可能性が指摘されている。
【0010】
医療分野では、通常、生体内の臓器と異なる力学的な特性を有する人工材料を埋植すると、生体内で力学的性質の違いに起因する生体反応が起こることが知られており、そのため、生体内の臓器と同様の力学的な特性を有する材料の開発が求められている。
【0011】
しかしながら、今まで開発されたin situでゲル化する生分解性ポリマーでは、生体内に埋植後十分な力学強度、生体適合性を併せ持ったものは存在しない。
【0012】
最近、Ouchiらは分岐構造を有するポリエチレングリコール‐block‐ポリ(L‐乳酸)8ブロック共重合体を報告している。この分岐ブロック共重合体は、直鎖型のポリ(エチレングリコール)‐block‐ポリ(L‐乳酸)2ブロック共重合体と比較して、多点でポリ乳酸ブロックの凝集が起こるために、フィルムの引っ張り時破断伸びが効果的に増大する(非特許文献6)。このポリマーは親水部(ポリエチレングリコール)と疎水部(ポリ(L‐乳酸))の比率によっては温度応答性を示すが,その挙動はゾル-ゲル転移ではなく,ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)と同様な溶解-不溶の転移である。しかし,この知見に基づき、ポリ乳酸ブロックの分岐構造に起因した凝集性をさらに強めることができれば、ゾル-ゲル転移の発現や生じたゲルの力学強度を効果的に増大できると考えられる。
【特許文献1】米国特許第6117949号明細書
【非特許文献1】Baeら Makromol. Chem. Rapid Commun., 8, 481-485 (1987)
【非特許文献2】Chenら Nature, 373, 49-52 (1995)
【非特許文献3】Malstonら Macromolecules, 25, 5440-5445 (1992)
【非特許文献4】Wout et. al, J. Parenteral Sci. & Tech., 46, 192-200 (1992)
【非特許文献5】Doo Sung Lee, Macromol. Rapid Commun. 2001, 22, 587.
【非特許文献6】Ouchiら, Polymer J. 2006, 38, 852.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、生体適合性、十分な力学強度、そしてゲル内部での細胞増殖性を持った、温度応答性ゾル−ゲル転移を示す生分解性ポリマー及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該生分解性ポリマーを用いた医療用材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、所定のポリエーテルセグメントと所定のポリエステルセグメントから構成される生分解性共重合体に、メソゲン基を含む基を導入して得られるポリマーが、温度に応答してin situで高い力学強度のゲルを形成し得ることを見出した(図2)。かかる知見に基づきさらにこれを発展させて本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は以下の生分解性重合体及びその製造方法を提供する。
【0016】
項1. 親水性ポリエーテルと疎水性ポリエステルとから構成される共重合体に、共有結合でメソゲン基が導入されてなる温度応答性生分解性ポリマー。
【0017】
項2. 前記親水性ポリエーテルが、ポリグリセリンとポリアルキレングリコールとを縮合して得られるポリエーテルである項1に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【0018】
項3. 前記疎水性ポリエステルが、ヒドロキシ酸の重合体である項1又は2に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【0019】
項4. 前記疎水性ポリエステルの末端水酸基と前記メソゲン基が共有結合してなる項1、2又は3に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【0020】
項5. 前記メソゲン基が、コレステロール誘導体を含む基である項4に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【0021】
項6. 一般式(A):
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、Rは同一又は異なって水素原子又はメソゲン基を示し、全てのRのうち13〜100%がメソゲン基であり、mは同一又は異なって5〜112の整数を示し、nは同一又は異なって3〜20の整数を示し、pは0〜28の整数を示す。)
で表される化合物である請求項1に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【0024】
項7. 一般式(A)においてRで示されるメソゲン基が一般式(C1’):
【0025】
【化2】

【0026】
(式中、qは1〜10の整数を示す。)
で表される基である項6に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【0027】
項8. 濃度20wt%の水溶液としたときの、温度37℃において形成されるヒドロゲルの貯蔵弾性率が50〜50,000Paである項7に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【0028】
項9. 数平均分子量(Mn)が8,000〜100,000である項1〜8のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【0029】
項10. 数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が1.0〜2.0である項1〜9のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【0030】
項11. 生分解挙動が、37℃に調整したpH=7.4のリン酸緩衝液中に浸漬した場合に、20日で数平均分子量が20〜100%減少する項1〜10のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【0031】
項12. 一般式(A):
【0032】
【化3】

【0033】
(式中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、Rは同一又は異なって水素原子又はメソゲン基を示し、全てのRのうち13〜100%がメソゲン基であり、mは同一又は異なって5〜112の整数を示し、nは同一又は異なって3〜20の整数を示し、pは0〜28の整数を示す。)
で表される化合物の製造方法であって、一般式(B):
【0034】
【化4】

【0035】
(式中、R、m、n及びpは前記に同じ。)
で表される化合物と、一般式(C):
X−R (C)
(式中、Xは脱離基を示し、Rは前記に同じ。)
で表される化合物とを反応させることを特徴とする製造方法。
【0036】
項13. 前記Rで示されるメソゲン基が一般式(C1’):
【0037】
【化5】

【0038】
(式中、qは1〜10の整数を示す。)
で表される基である項12に記載の温度応答性生分解性ポリマーの製造方法。
【0039】
項14. 前記項1〜11のいずれかに記載の温度応答性生分解性ポリマーを含む医療用材料。
【発明の効果】
【0040】
本発明の生分解性ポリマーは、温度応答性ゾル−ゲル転移を示し、室温と体温の間の温度でゲル化させることができるという特徴を有している。しかも、生体内で十分に高い力学強度を有した安定な生分解性ヒドロゲルを形成する。そのため、優れたin situゲル化システムを提供でき、外科的処置の必要無く、任意の希望の形状のインプラントを形成することができる。また、生理(薬理)活性物質等を安定に内包し,それらを体内で徐放できるため、注入可能な(インジェクタブル)ドラッグデリバリーシステムを提供できる。さらに、注射可能な組織修復および器官再生用の足場として、また、適した生細胞を内包させることにより,注射投与で生体内組織の欠損部位に細胞を移植する細胞デリバリーシステム等に用いることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
1.温度応答性生分解性ポリマー
本発明の温度応答性生分解性ポリマーは、親水性ポリエーテルと疎水性ポリエステルとから構成される共重合体に、共有結合を介してメソゲン基が導入された化合物である。
【0042】
親水性ポリエーテル(以下、「Aセグメント」とも呼ぶ)としては、ポリグリセリンの水酸基にアルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等)が脱水縮合したポリエーテルが挙げられる。ポリグリセリンは、グリセリンが3〜28個縮合したものが挙げられ、ポリアルキレングリコールは、アルキレンオキシ基が5〜112個縮合したものが挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0043】
疎水性ポリエステル(以下、「Bセグメント」とも呼ぶ)としては、ヒドロキシ酸が重合したポリエステルが挙げられる。ヒドロキシ酸としては、例えば、グリコール酸、(D−、L−、又はDL−)乳酸、メバロン酸、リンゴ酸、カプロン酸、クエン酸、等が挙げられ、好ましくはグリコール酸、(D−、L−、又はDL−)乳酸等のα−ヒドロキシカルボン酸である。疎水性ポリエステルは、これらのうち一種からなるホモポリマーであっても、二種以上からなるコポリマーであっても良い。
【0044】
上記の親水性ポリエーテル(Aセグメント)と疎水性ポリエステル(Bセグメント)との共重合の結合様式は特に限定ないが、Aセグメント及びBセグメントは共にブロック状で結合していることが好ましい。例えば、ABジブロック、ABAトリブロック、BABトリブロック、BABAテトラブロック、マルチブロック、AB分岐ブロック(xは3〜32の整数を示す。)、ABグラフト(yは3〜50の整数を示す。)等が例示される。
【0045】
ここで、メソゲン基とは、配向して会合する性質を有し、その構造を含む分子が(適当な条件下において)液晶を形成しうる原子団を意味し、例えば、コレステロール誘導体(コレステロールを含む)を含む基、ビフェニル骨格を含む基、アゾベンゼン骨格を含む基などが例示される。そのうち、生体由来成分でかつ生体内で毒性を示さないという点から、コレステロール誘導体を含む基が好ましい。該メソゲン基は、上記のAセグメント及び/又はBセグメントからなる共重合体の官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基)と共有結合している。このうち、該共重合体のBセグメントの末端水酸基と共有結合したものが好ましい。該メソゲン基の数は、本発明の温度応答性生分解性ポリマー中に、少なくとも1個以上有しており、好ましくは2〜8個、より好ましくは2〜4個である。
【0046】
本発明の温度応答性生分解性ポリマーの具体例として、例えば、一般式(A):
【0047】
【化6】

【0048】
(式中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、Rは同一又は異なって水素原子又はメソゲン基を示し、全てのRのうち13〜100%がメソゲン基であり、mは同一又は異なって5〜112の整数を示し、nは同一又は異なって3〜20の整数を示し、pは0〜28の整数を示す。)
で表される化合物が挙げられる。
【0049】
は同一又は異なって水素原子又はメチル基であるが、全て水素原子が好ましい。
【0050】
は同一又は異なって水素原子又はメソゲン基であるが、好ましくは全てのRのうち14〜100%がメソゲン基であり、より好ましくは14〜52%である。この範囲であると、所望の温度応答性が発揮されると共に、ゲル状態において充分な力学強度が発揮されるからである。メソゲン基の具体例としては、例えば、一般式(C1’):
【0051】
【化7】

【0052】
(式中、qは1〜10の整数を示す。)
で表される基、式(C2’):
【0053】
【化8】

【0054】
で表されるビフェニル骨格を含む基、式(C3’):
【0055】
【化9】

【0056】
で表されるアゾベンゼンを含む基等が挙げられる。このうち、生体由来成分でかつ生体内で毒性を示さないという点から、一般式(C1’)で表される基(特にqが4〜6)が好ましい。
【0057】
mは5〜112の整数であり、好ましくは14〜54の整数、より好ましくは14〜27の整数である。
【0058】
nは3〜20の整数であり、好ましくは6〜20の整数、より好ましくは6〜12の整数である。
【0059】
pは0〜28の整数であり,このましくは,2〜10の整数,より好ましくは4〜6の整数である。
【0060】
qは1〜10の整数であり、好ましくは4〜10の整数、より好ましくは4〜6の整数である。
【0061】
上記した本発明の温度応答性生分解性ポリマーは、温度応答性ゾル−ゲル転移を示し、良好な生体適合性、ゲル状態における十分な力学強度、そしてゲル内部での細胞増殖性を有している。
【0062】
ゾル−ゲル転移温度、分解速度、力学強度等は、該ポリマー中のポリエステルとポリエーテルの分子量及び分岐度、メソゲン基の導入率等を適切に選択することにより、また、ポリマーの濃度を調節することにより、容易に調整できる。
【0063】
本発明の温度応答性生分解性ポリマーの水液体は、ゲル化温度以下で貯蔵され、そして筋肉内、腹腔内、皮下又は類似の注射法により、非経口的に投与される。
【0064】
本発明のポリマーの数平均分子量(Mn)は8,000〜100,000、好ましくは10,000〜50,000、より好ましくは10,000〜20,000であり、重量平均分子量(Mw)は8,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000、より好ましくは10,000〜30,000である。また、分子量分布の指標である数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が1.0〜2.0、好ましくは、1.0〜1.5、より好ましくは1.0〜1.2であり、分子量分布が狭いという特徴を有している。数平均分子量及び重量平均分子量は、例えばGPC(eluent:DMF、standard : poly(ethylene glycol))等の公知の方法を用いて測定できる。
【0065】
本発明のポリマー生分解挙動として、37℃に調整したpH=7.4のリン酸緩衝液中に浸漬した場合に、20日における数平均分子量の減少割合が20〜100%、好ましくは60〜100%である。なお、数平均分子量の測定はGPC(eluent : DMF、standard : poly(ethylene glycol))を用いる。
【0066】
2.温度応答性生分解性ポリマーの製造方法
本発明のポリマーの典型例である一般式(A)で表される化合物は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0067】
【化10】

【0068】
(式中、Xは脱離基を示し、R、R、m、n及びpは前記に同じ。)
上記(1)で表される化合物は、当業者が容易に製造できるか、或いは市販されている。例えば、p=4、m=27である化合物としては、SUNBRIGHT HGEO-10000(日本油脂株式会社製)が挙げられる。
【0069】
上記(1)で表される化合物にアルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)を作用させて上記(2)で表される金属アルコキシド化合物とし、これに環状α−ヒドロキシ酸(α−ヒドロキシ酸の二量体)を反応させて、上記(B)で表される化合物を得る。
【0070】
次いで、上記(B)で表される化合物に、上記(C)で表されるメソゲン基を有する化合物を反応させて、本発明の上記(A)で表されるポリマーを得る。上記(C)で表される化合物における脱離基Xとしては、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。特に、RのXと結合する部位がカルボニル炭素の場合、脱離基Xとしては、水酸基;O-スクシンイミド基、O−p−ニトロフェニル基等の活性エステルの脱離基;アシルオキシ基(例えば、OAc基等)等の混酸無水物の脱離基などが挙げられる。上記(C)で表される化合物の代表的なものとしては、一般式(C1):
【0071】
【化11】

【0072】
(式中、X及びqは前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。
【0073】
例えば、Xが水酸基の場合には、上記(C1)で表されるカルボン酸化合物を、縮合剤(ジシクロヘキシルカルボジイミド及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール:DCC/DMAP等)の存在下、一般式(B)で表される化合物と反応させることにより、上記(A)で表されるポリマーを得る。
【0074】
本反応では、一般式(C1)で表されるカルボン酸化合物は、一般式(B)で表される化合物の水酸基に対し、通常0.2〜1.5倍等量モル用いることができる。反応性に応じて、全てのRのうち13〜100%がメソゲン基となるように調節することができる。反応溶媒は、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミドを用いることができ、反応温度は0〜40℃程度である。縮合剤については、例えば、上記(B)で表される化合物の水酸基に対し、DCCは0.2〜1.5倍等量モル程度、DMAPは触媒量である。
【0075】
3.温度応答性生分解性ポリマーの性質及び用途
本発明のポリマーは、上記したように、良好な生体適合性、生分解性及び温度応答性に加え、ゲル状態における十分な力学強度を有している。これにより、ヒドロゲルに生体内の臓器と同等の力学的強度を付与することができる点において有利である。本発明のポリマーはメソゲン基を有するため、メソゲン基の自己組織化(自己会合)により、溶液状態ではミセル状であり,加温することによりミセル間の物理的架橋が促進され力学的強度が高いゲルを形成すると考えられる。
【0076】
ここで温度応答性とは、一般に化合物の水溶液が下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution Temperature、LCST)を境にして、可逆的な溶解-不溶の現象を示す性質を言うが,本特許では特に不溶状態において溶媒を含み流動性を示さないゲル状態となり,ゾル−ゲル転移の相分離挙動を示すものを指す。具体的には、LCST以上の温度に加熱すると白濁しゲル状態となり、それ以下の温度に冷却すると再び溶解して透明のゾル状態に戻るという性質をいう。
【0077】
本明細書では、ポリマーのLCSTは、試験管倒置法によりポリマー水溶液の粘度変化を測定することにより求める。或いは、動的粘弾性試験により求めることもできる。
【0078】
本発明のポリマーは、通常、10〜56℃程度の範囲にLCSTが存在し、かかる範囲で容易にLCSTを調節できる。そのため、該ポリマーの応用範囲は極めて広範である。好ましくは、LCSTを25〜35℃の範囲に有するポリマーが挙げられ、この場合、室温(例えば10〜20℃程度)と体温(35〜37℃程度)の間にLCSTが存在するので、温度応答性を有する生分解性ハイドロゲルとして有用である。特に、一般式(A)で表される化合物の場合に、上記の性質が好適に発揮される。
【0079】
さらに、本発明のポリマーは、その分解物において細胞毒性がないか又は極めて低いことから、安全性の面からも優れている。
【0080】
本発明のポリマーは、上記のように医用材料として優れた特徴を有していることから、薬物と共に用いて医薬組成物とすることができる。本発明のポリマーの水溶液は、室温付近では溶液状態となるため、注射時における取扱が容易であり、一方、体温付近では不溶のゲル状態となるため、体内に投与後はゲルとなり薬物の早期拡散を抑制し特定部位での薬物の滞留性を向上させることができる。そのため、インジェクタブル製剤、特に持続性インジェクタブル製剤における生分解性ポリマー材料として好適に用いることができる。投与形態としては、例えば、皮下注射、筋肉内注射等が挙げられる。
【0081】
さらに、本発明のポリマーは、ゲル状態において良好な力学強度を有している。例えば、濃度20wt%のポリマー水溶液を、温度37℃にしたとき、生成するヒドロゲルの貯蔵弾性率は、50〜50,000Pa、好ましくは1,000〜50,000Paとなる。
【0082】
医薬組成物へのポリマーの配合量は、用いる薬物の種類などにより適宜選択することができ、例えば、医薬組成物の全重量に対し、80〜99.99重量%程度であればよい。
【0083】
該医薬組成物に用いられる薬物としては、特に限定されないが、生理活性を有するペプチド類、蛋白類、その他の抗生物質、抗腫瘍剤、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤、鎮咳去痰剤、鎮静剤、筋弛緩剤、抗てんかん剤、抗潰瘍剤、抗うつ剤、抗アレルギー剤、強心剤、不整脈治療剤、血管拡張剤、降圧利尿剤、糖尿病治療剤、抗凝血剤、止血剤、抗結核剤、ホルモン剤、麻薬拮抗剤などがあげられる。
【0084】
本発明の医薬組成物における薬物の配合量は、薬物の種類などにより適宜選択することができる。特に、持続性注射剤とした場合には、薬物の配合量は、薬物の種類、持続放出させる期間等によって定められる。例えば、薬物がペプチド類の場合、約1週間〜約1ケ月の徐放製剤とするためには、通常、医薬組成物全重量に対し、0.001重量%〜50重量%程度含有させればよい。
【0085】
また、本発明のポリマーは、温度応答性、生分解性、生体に対する安全性を有することから、手術後の組織癒着防止材として用いることができる。塗布またはスプレーなどにより術後の内臓組織などを被覆し、他の生体組織と一定期間、隔離することで癒着を防止することができる。
【0086】
さらに、本発明のポリマーは、再生医療用のスカフォールド(足場)、細胞培養基材などとしての応用も可能である。スカフォールドとしては、細胞、本発明のポリマーと培養液などを低温でゾル状態で混合し、この混合物を高温で所定の形状にゲル化することでスカフォールドとして用いることができる。細胞培養基材としては、所定の3次元の形状を持つ繊維質又は多孔質の基材に、細胞、本発明のポリマー及び培養液を含む液状混合物を含浸させ、所定温度でゲル化させて、基材中に再生細胞を保持することも可能である。なお、繊維質又は多孔質の基材としては、コラーゲン、ハイドロキシアパタイトなどの生体親和性の高い材料を使うことが可能で、軟骨組織や骨組織の再生などに特に有効である。さらに、細胞、本発明のポリマーと培養液などを低温でゾル状態で混合し、組織欠損(損傷)部位に注射し,その部位でゲル化させ,細胞を移植し(細胞デリバリー),組織再構築するシステムを提供することが可能である(図12)。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
ポリ(エステル−エーテル)共重合体 (AB8分岐ブロック共重合体)-コレステロールコンジュゲイトの合成
(1)化合物(B)の例として,ポリ(エステル−エーテル)共重合体 (AB8分岐ブロック共重合体)は、以下のように非特許文献6の方法に準じて合成することができる。
【0088】
1,000mg(200μmol)の8-arms PEG(SUNBRIGHT HGEO-10000(日本油脂株式会社製))をナス型フラスコに入れ、60℃で9時間、減圧乾燥した。それとは別に2,300mg(16.0mmol)のL-lactideをナス型フラスコに入れて、常温で減圧乾燥した。重合操作は窒素ガスを満たしたグローブボックス内で行った。4mlのTHFに512mg(4mmol)のナフタレンを溶解し、そこに少量の金属カリウムを加え、深緑色になるまで攪拌しカリウムナフタレンを調製した。
【0089】
4mlのTHFに溶解した8-arms PEGに、その末端水酸基の5倍等量モルのカリウムナフタレンを加え15分間攪拌し、8-arms PEGの末端水酸基をアルコキシドに変換した。
【0090】
その後、8mlのTHFに溶解したL-lactideをアルコキシド化された8-arms PEG/THF溶液に加え、15分間重合を行った。
【0091】
その後、96μl(1.6mmol)の酢酸を加え、反応を停止した。反応混合物を冷ジエチルエーテル中で沈殿させた。沈殿物を回収した後に、48時間減圧乾燥を行い、目的物である2,650 mgの8-arms PEG-block-PLLA(AB8分岐ブロック共重合体)を得た(図3)。8-arms PEG-block-PLLA中のラクチドユニットの重合度は1H NMR (CDCl3)から算出することができる。
【0092】
1H NMR (CDCl3)、δ (ppm); 1.56 (3H, CHCH3 )、3.64 (2H, CH2CH2O)、5.18 (2H, OCH(CH3)CO)。
【0093】
この方法で,8-arms PEG末端水酸基に対するL-lactideの仕込み比を変化させることにより,種々のラクチドユニット重合度を有する共重合体を得ることが可能である。
(2)640mg(1.3mmol)のこはく酸コレステロールモノエステルを10mlのクロロホルムに溶解した後、330mg(1.3mmol)のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を固体で加え、氷零下で2 時間攪拌した。その後5mlの塩化メチレンに溶解した2,000mg(110μmol)の8-arms PEG-block-PLLAと12 mg(0.60mmol)のジメチルアミノピリジン(DMAP)を加え、室温で24時間攪拌した。
【0094】
生じたDCUreをろ過により除去した後、回収したろ液をn-ヘキサン/エタノール(7/3)に滴下し、沈殿を生成させた。回収した沈殿物を24時間減圧乾燥し、2,015 mgの8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトを得た(例えば、模式図として図3)。コレステロール基の導入量は1H NMR (CDCl3)における積分値から算出することができる。
【0095】
同様にして,8-arms PEG-block-PLLA末端水酸基に対するこはく酸コレステロールモノエステルの仕込み比を変化させることにより,種々のコレステロール導入率を有するコンジュゲートを得ることが可能である。
【0096】
化合物[8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイト(単に「コンジュゲイト」とも略記する)の分子量,溶解性などを表1に、1H NMR(CDCl3)チャートを図4に示す。
【0097】
1H NMR (CDCl3)、δ (ppm); 0.68 (3H, C-18 H of cholesterol)、1.56 (3H, CHCH3 )、2.19-2.42 (2H, C-4 H of cholesterol)、3.64 (2H, CH2CH2O)、5.18 (2H, OCH(CH3)CO)、5.37 (1H, C-6 H of cholesterol)。
【0098】
以上の結果よりこの実施例で得られたポリマーの構造式(A)におけるpは4であり,mは平均14であり,nは平均6であり,Rはメチル基であり、Rのコレステロール置換割合は25%であった。
【0099】
[試験例1]
分子量測定
実施例1のコンジュゲイトの数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)をゲルろ過クロマトグラフィー(GPC;TOSOH製、Tosoh GPC-8020 series system)により測定した。その結果を表1に示す。ポリマー3mgをDMF0.5mlに溶かし、これを0.2μm孔のフィルターに通すことでゴミ等の固体を除去し、その後装置にシリンジを用いて打ち込んだ。
【0100】
【表1】

【0101】
[試験例2]
8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイト水溶液の温度応答性挙動
(1)実施例1の8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトの水溶液の温度応答性ゲル化挙動を異なる濃度で検討した。試験管転倒法により、工程当たりの温度上昇1℃で、ゾル−ゲル転移を測定した。
【0102】
サンプル管(内径が15mm)中でコンジュゲイト水溶液を調製し、5〜25wt%のコンジュゲイト水溶液の粘度変化を10℃〜60℃の温度範囲で観察した。このサンプル管を、15分間、オイルバス中に浸漬した。このバイアルを転倒することにより、そのゾル−ゲル転移温度を監視し、そして30秒流動しなかったら、それはゲルと見なした。この転移温度は、±1℃の精度で測定された。
【0103】
温度とコンジュゲイト濃度の関数としての8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトの相図を作成した(図5)。温度変化に応答したゲル化挙動が明確となった。生理学的に関連する温度(例えば37℃)でのゲル化が確認されたため、薬剤や細胞デリバリー目的のための基材として有用であることが明らかとなった。
【0104】
[試験例3]
8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイト水溶液の動的粘弾性試験
(1)このコンジュゲイト水溶液(20 wt%)のゾル−ゲル転移現象を、動機械的レオメータを用いて調べた。このコンジュゲイト溶液を、直径25 mmそして間隙間隔0.5 mmの平行板の間に入れた。応力(4.0dyne/cm2)および周波数(1.0rad/sec)を制御しながらデータを収集した。加熱速度は0.5℃/minであった。
【0105】
室温でゾル状態であったコンジュゲイト水溶液の貯蔵弾性率は7Pa程度であったが、温度上昇に伴ってその貯蔵弾性率は顕著に増大した。そして生体内温度である37℃では、5,200Pa程度の貯蔵弾性率を有するヒドロゲルとなった。
【0106】
これは、コレステロールを含まない8-arms PEG-block-PLLAの水溶液の貯蔵弾性率(0.025Pa)の約140,000倍、そして非特許文献5にあるPLGA-PEG-PLGA(40Pa)の約120倍にも及ぶ弾性率を有する強いハイドロゲルであることが明らかとなった(図6)。
【0107】
本発明のコンジュゲイトから形成されるヒドロゲルは高い貯蔵弾性率を示しており、in situゲル化型ドラッグデリバリーや細胞デリバリー目的のための基材として有用であることが確認された。
【0108】
[試験例4]
8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトの生分解性試験(分子量変化)
50mgの8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトをあらかじめ37℃に調整したPBS(pH=7.4, I=0.14)中に浸漬した。所定時間後(1、2、4、7、10、14、21、28日)にコンジュゲイトを取り出し、超純水で洗浄して凍結乾燥を行った。回収したコンジュゲイトのGPC測定(溶媒:DMF)を行ない、分子量変化を調べた。結果を図7に示す。
【0109】
これより、コンジュゲイトの分子量減少は10日後から起こり始め、28日後には分子量減少が70%程度進行していることがわかった。
【0110】
[試験例5]
8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトの生分解性試験(重量変化)
50mgの8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトをあらかじめ37℃に調整したPBS(pH=7.4, I=0.14)中に浸漬した。28日後まで毎日コンジュゲイトを取り出し、重量を測定することで重量変化を決定した。結果を図8に示す。
【0111】
コンジュゲイトは徐々に水を吸収することで重量が増加し、21日後には乾燥状態の約4倍の重量に達した。また、分子量減少が60%程度進行している21日後においてもハイドロゲルの形状を維持した。その後重量は徐々に減少し、最終的にはハイドロゲルの形状が崩壊し、PBSに分散した。
【0112】
これより、8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトは生分解性を有し,インプラント型バイオマテリアルとして応用可能であることが示された。
【0113】
[試験例6]
8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトのインジェクタブルスキャホールドとしての検討
コンジュゲイト水溶液(10wt%、20wt%)から調製したゲル内部にL929マウス由来繊維芽細胞を封入し、所定時間後の細胞増殖率を評価し、インジェクタブルスキャホールドとしての検討を行なった。
【0114】
あらかじめ10wt%、20wt%に濃度調整したコンジュゲイト水溶液と細胞懸濁液を室温にて混合した。このコンジュゲイト含有細胞懸濁液を96wellマイクロプレートに分注し、5%CO2存在下、37℃でインキュベイトした。またコントロール実験としてコンジュゲイトを含まない細胞懸濁液のみを96wellマイクロプレートに分注し、同様な培養操作を行なった(図9)。本試験は5000 cells/wellの細胞濃度で行なった。MTTアッセイ法を用いて、所定時間後にヒドロゲル内部で生存する細胞数を決定した(図10)。
【0115】
また20%ヒドロゲル内部で生存しているL929繊維芽細胞の形態を位相差顕微鏡にて観察した。96wellから取り出したコンジュゲイト・ヒドロゲルをスライドガラス上で室温まで冷却し、透明なゲル状態に戻した後に顕微鏡観察を行なった(図11)。
【0116】
コンジュゲイトを含まない細胞懸濁液(TCPS,細胞培養用ポリスチレンシャーレ)の場合は、細胞が2次元平面でしか生育できないため,7日後で増殖率が飽和状態に達するのに対して、コンジュゲイトでは10%、20%ヒドロゲルともに7日目以降も良好な細胞増殖性を示した。これはL929繊維芽細胞がヒドロゲル内部で三次元的に増殖した結果であると考えられる。ヒドロゲル内部に細胞を封入した2日後から繊維芽細胞の伸展が始まり、7日後には多くの伸展した細胞が観察されたことから、コンジュゲイトの凝集体を足場として細胞の接着が起こったものと考えられる。
【0117】
以上の結果、この生分解性を有する8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトは、生体内の局所に細胞を注入しその部位での固定化が可能な細胞デリバリーシステムや組織再生用スキャホールドとして応用可能な特性を有していることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】(PLGA‐PEG‐PLGA)トリブロック共重合体のヒドロゲルの問題点を示す。
【図2】8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイト設計のコンセプトを示す図である。
【図3】実施例1における、8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトの合成方法を示す。
【図4】実施例1における、8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトの1H NMR (CDCl3)を示す。
【図5】試験例2における、8-arms PEG-block-PLLA -cholesterol・コンジュゲイト水溶液の温度応答性ゾル−ゲル転移現象を示すグラフである。
【図6】試験例3における、8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイト水溶液(20wt%)が示す貯蔵弾性率の温度依存性応答性を示すグラフである。
【図7】試験例4における、8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトの生分解性試験の結果(分子量変化)を示すグラフである。
【図8】試験例5における、8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトの生分解性試験の結果(重量減少)を示すグラフである。
【図9】試験例6の実験手順を示す図である。
【図10】試験例6における、8-arms PEG-block-PLLA-cholesterol・コンジュゲイトハイドロゲル(10wt%、20wt%)内部に封入したL929繊維芽細胞の増殖率を示すグラフである。
【図11】試験例6における、20%ヒドロゲル内部で生存しているL929繊維芽細胞の形態を位相差顕微鏡にて観察した写真である。
【図12】損傷組織に細胞を移植する(細胞デリバリー)システムの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリエーテルと疎水性ポリエステルとから構成される共重合体に、共有結合でメソゲン基が導入されてなる温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項2】
前記親水性ポリエーテルが、ポリグリセリンとポリアルキレングリコールとを縮合して得られるポリエーテルである請求項1に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項3】
前記疎水性ポリエステルが、ヒドロキシ酸の重合体である請求項1又は2に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項4】
前記疎水性ポリエステルの末端水酸基と前記メソゲン基が共有結合してなる請求項1、2又は3に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項5】
前記メソゲン基が、コレステロール誘導体を含む基である請求項4に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項6】
一般式(A):
【化1】

(式中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、Rは同一又は異なって水素原子又はメソゲン基を示し、全てのRのうち13〜100%がメソゲン基であり、mは同一又は異なって5〜112の整数を示し、nは同一又は異なって3〜20の整数を示し、pは0〜28の整数を示す。)
で表される化合物である請求項1に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項7】
一般式(A)においてRで示されるメソゲン基が一般式(C1’):
【化2】

(式中、qは1〜10の整数を示す。)
で表される基である請求項6に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項8】
濃度20wt%の水溶液としたときの、温度37℃において形成されるヒドロゲルの貯蔵弾性率が50〜50,000Paである請求項7に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項9】
数平均分子量(Mn)が8,000〜100,000である請求項1〜8のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項10】
数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が1.0〜2.0である請求項1〜9のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項11】
生分解挙動が、37℃に調整したpH=7.4のリン酸緩衝液中に浸漬した場合に、20日で数平均分子量が20〜100%減少する請求項1〜10のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項12】
一般式(A):
【化3】

(式中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、Rは同一又は異なって水素原子又はメソゲン基を示し、全てのRのうち13〜100%がメソゲン基であり、mは同一又は異なって5〜112の整数を示し、nは同一又は異なって3〜20の整数を示し、pは0〜28の整数を示す。)
で表される化合物の製造方法であって、一般式(B):
【化4】

(式中、R、m、n及びpは前記に同じ。)
で表される化合物と、一般式(C):
X−R (C)
(式中、Xは脱離基を示し、Rは前記に同じ。)
で表される化合物とを反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項13】
前記Rで示されるメソゲン基が一般式(C1’):
【化5】

(式中、qは1〜10の整数を示す。)
で表される基である請求項12に記載の温度応答性生分解性ポリマーの製造方法。
【請求項14】
前記請求項1〜11のいずれかに記載の温度応答性生分解性ポリマーを含む医療用材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−120886(P2008−120886A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304549(P2006−304549)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年5月10日 社団法人 高分子学会発行の「高分子学会年次大会予稿集 55巻1号 2006」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年8月1日 社団法人 高分子学会発行の「第35回医用高分子シンポジウム講演予稿集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年11月1日 社団法人 高分子学会発行の「第15回ポリマー材料フォーラム予稿集」に発表
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【Fターム(参考)】