説明

温度計つき保温具

【課題】湯たんぽの温度を正確に把握できる温度計を設けることにより、所望する温度を長く維持することができる高品質の保温具を提供できるようにすることを目的とするものである。
【解決手段】可撓性を有する保温袋に保温材を充填して密封してなる本体部の少なくとも表面に温度計を設けてなり、当該温度計は感熱した温度を表示するシート状検温表示部を前記保温袋の表面に当接させた状態で配設し、保温材に配設されたシート状検温表示部の温度表示面を透明若しくは半透明な可撓性部材で覆った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として解熱のために頭部を冷却したり、身体の1部を暖めるのに使用される可撓性を有する保温シート及び可撓性を有する温度計つき保温具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、保温具としては、身体を温めるものとしては湯たんぽがあり、高熱の頭部を冷却する場合には、古くから氷嚢や氷枕が用いられている。
こうした保温材のうち、氷嚢や氷枕では水漏れが発生しやすく取扱いが面倒である上、中の氷がごつごつすることから使用感もよくないという問題があるうえ、氷嚢や氷枕は一旦、ボール等の容器に氷水を作り、これを氷嚢等の袋に入れる作業が必要であり、手間がかかる上、零れて周囲を濡らしたり汚したりしてしまうという問題があった。
【0003】
一方、湯たんぽは特許文献1に示すように1部に給湯口を設けた容器にお湯を注入して使用するので、そのお湯の注入時に熱湯がこぼれ周囲を汚すだけでなく、こぼれた熱湯が身体にかかると火傷をしてしまうという問題もある。
【0004】
そこでこうした問題に対処するために、高吸水率を有する高分子剤に吸水させてゲル状にした保温材を可撓性シートで形成した袋に密閉して形成された冷・温両用に使用することができる保温具が知られている。
【0005】
ところがこうしたものを例えば湯たんぽとして使用する場合、湯煎することにより、昇温させて蓄熱して使用するのであるが、湯煎する湯の温度と湯煎される湯たんぽ内の保温材の温度と必ずしも一致しない。
特に短時間で急速に加温する場合には湯専用の湯は熱くても、保温材は十分に蓄熱されたいない場合が生じ、湯たんぽの蓄熱した熱を放熱する機能を充分に発揮することができないという問題があった。
こうした原因は、湯たんぽの温度を正確に把握できないことにある。
【特許文献1】実登3047931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は上記問題点に鑑み提案されたもので湯たんぽの温度を正確に把握できる温度計を設けることにより、所望する温度を長く維持することができる高品質の保温具を提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかる温度計つき保温具は、可撓性を有する保温袋に保温材を充填して密封してなる本体部の少なくとも表面に温度計を設けてなり、当該温度計は感熱した温度を表示するシート状検温表示部を前記保温袋の表面に当接させた状態で配設し、保温材に配設されたシート状検温表示部の温度表示面を透明若しくは半透明な可撓性部材で覆ったことを最も主要な特徴とするものである。
【0008】
また、本発明にかかる温度計つき保温具では、流動性を有する蓄熱材と、保温袋の一部に荷重が作用したときに、当該荷重乃至押圧力が作用した部分の保温袋内の蓄熱材が周囲に散逸して偏るのを抑制する可撓性を備えた偏り抑制部材とで保温材を形成したことや、保温材を封入した保温袋の表裏を、偏り抑制部材を挟んだ状態で溶着することにより、保温袋内の偏り抑制部材の偏りを防止するように構成したこと、さらには、保温具が、温度計が設けられた本体部分と、この本体部を収納するカバーとからなる湯たんぽ若しくはアンカであることもを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可撓性を有する保温袋に保温材を充填して密封してなる本体部の少なくとも表面に温度計を設けてなり、当該温度計は感熱した温度を表示するシート状検温表示部を前記保温袋の表面に当接させた状態で配設し、保温材に配設されたシート状検温表示部の温度表示面を透明若しくは半透明な可撓性部材で覆うようにしてあるので、この保温具を例えば湯煎して保温材を蓄熱する場合、温度計は可撓性部材で覆われていることから、当接している保温袋の温度を正確に表示する。
これにより保温材に十分に蓄熱することができ、所望する温度を長く維持でき、高品質の保温具を提供することができる利点がある。
【0010】
流動性を有する蓄熱材と、保温袋の一部に荷重が作用したときに、当該荷重乃至押圧力が作用した部分の保温袋内の蓄熱材が周囲に散逸して偏るのを抑制する可撓性を備えた偏り抑制部材とで保温材を形成したものでは、上記効果に加えて、温度計で示される温度を、保温具の全体に均一な熱分布することができる利点がある。
【0011】
また、保温材を封入した保温袋の表裏を、偏り抑制部材を挟んだ状態で溶着することにより、保温袋内の偏り抑制部材の偏りを防止するように構成したものでは上記効果である保温具の全体に均一な熱分布することができる効果をよりいっそう向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかる温度計つき保温具の最も好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は温度計つき保温具である湯たんぽの分解斜視図、図2は温度計部分の分解図、図3は湯たんぽの温度計部分の縦断側面図であって、図中符号1はこの湯たんぽを全体的に示す。
この湯たんぽ1は、使用時には保温カバー2に入れて使用されるもので、ポリ塩化ビニル(PVC)シートを二枚合わせにし、その周囲の三辺を溶着して袋(保温袋)3に形成し、この袋3内に含水させ柔軟性を有する板状に形成され後述する超吸水剤を保温材4として封入することにより本体部5が形成されている(図3参照)。
【0013】
保温カバー2はその表面が起毛された布帛により袋状に形成されている。
また、上記保温材4は、例えば水溶性ポリアクリル酸ソーダを原料とする超吸水高分子合成樹脂に多量の水を含水させてこんにゃく状にゲル化し、若しくは硬めのゼリー状に形成したものである。
そして、本体部5の袋3の表面の1部(隅部)には透明な可撓性部材7で覆われたシート状の温度計8が設けてある。
【0014】
この温度計8の詳細の図示は省略したが、テープ状基材に例えば本例のように湯たんぽ1の場合には、36℃から50℃までの温度数字を等間隔に印刷した基材の上面に当該温度に対応して色が暗色から透明色に変化するサーモクロミズム層設けてなる公知のシート状温度計である。
温度計8を覆う可撓性部材7は透明で、断熱性を有するものが望ましい。
【0015】
上記のように形成された湯たんぽ1を使用する手順を次に説明する。
先ず、保温カバー2から湯たんぽ1を就寝前の入浴時に浴槽(図示せず)につけて暖める。
入浴時の浴槽内の湯の一般的な温度は、42℃前後であることから、当該温度になるまで湯たんぽ1は徐々に暖められて袋3内の保温材4に蓄熱されてゆく。
このとき、本体部5の袋3の表面に設けられた温度計8は、これを覆う可撓性部材7を介して浴槽の湯に接してはいるが、温度計8の温度表示には袋3内の保温材4からの温度影響が大きく、温度計8は湯たんぽ1の温度として袋3内の保温材4の温度を表示することになる。
【0016】
仮に、上記温度計8が可撓性部材7の断熱性が低い場合は、この可撓性部材7を通して浴槽内の湯の温度の影響を受けて、袋3内の保温材4の温度より高温の温度を表示するような場合がある。この場合、温度計5部分が湯面より露出させる。
すると、可撓性部材7が浴槽の湯より低い周囲の温度で冷却されるので、保温材4の温度により温度計8は湯たんぽ1の温度として袋3内の保温材4の温度を正確に表示する。
次に、浴槽の湯で所定の温度例えば、上記の42℃前後の温度が表示されると、浴槽の湯から取り出し、水気を十分に拭き取って、保温カバー2に入れて湯たんぽ1として使用する。
【0017】
尚、上記実施の形態では、本体部5の袋3内の保温材4を、水溶性ポリアクリル酸ソーダを原料とする超吸水高分子合成樹脂に多量の水を含水させてこんにゃく状にゲル化し、若しくは硬めのゼリー状に形成したものにしてあるが、こうしたものに限られず、例えば図4に示すようにしても良い。
この図4に示すものは、二枚の合成樹脂製薄膜の間に複数の気泡を点在させた軽量の緩衝材、いわゆる「エアーキャップ」として知られているシート状のものを偏り抑制部材9として袋3内にいれ気泡間の空間部分10に上記実施例と同様の水溶性ポリアクリル酸ソーダを原料とする高吸水高分子合成樹脂に多量の水を含水させてゼリー状にしたものを充填したものである。
【0018】
こうしたものでは、シート状の「エアーキャップ」からなる偏り抑制部材9自身が袋3内で縒れたり、偏ったりするのを防止するために、保温材4を封入した袋3の表裏を、前記偏り抑制部材9を挟んだ状態で溶着11することにより、袋3内の偏り抑制部材9の偏りを防止するように構成することが望ましい。
その他の構成は上記実施の形態と同様になっている。
また、上記実施の形態では、本発明の温度計つき保温具として湯たんぽ1を例示したが、こうしたものに限られず、冷却して使用する氷嚢や氷枕として使用することができるのは勿論のことである。
【0019】
上記実施の形態では、本体部5の袋3の表面の1部(隅部)には透明な可撓性部材7で覆われたシート状の温度計8を設けるようにしてあるが、本体部5の袋3の表面にも設けるようにすることもできるのはいうまでもないことである。
また、温度計8を覆う可撓性部材7は透明なものに限られず、半透明であってもよく、つまるところ温度計8の表示が視認できるものであれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】は本発明にかかる温度計つき保温具の分解斜視図である。
【図2】は本発明にかかる温度計つき保温具の温度計部分の分解斜視図である。
【図3】は本発明にかかる温度計つき保温具の温度計部分の縦断側面図である。
【図4】は本発明にかかる温度計つき保温具の袋内の変形例を示す温度計部分の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・保温具(湯たんぽ)
3・・・保温袋(袋)
4・・・保温材
5・・・本体部
7・・・可撓性部材
8・・・温度計
9・・・偏り抑制部材
11・・・溶着

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する保温袋に保温材を充填して密封してなる本体部の少なくとも表面に温度計を設けてなり、当該温度計は感熱した温度を表示するシート状検温表示部を前記保温袋の表面に当接させた状態で配設し、保温材に配設されたシート状検温表示部の温度表示面を透明若しくは半透明な可撓性部材で覆ったことを特徴とする温度計つき保温具。
【請求項2】
流動性を有する蓄熱材と、保温袋の一部に荷重が作用したときに、当該荷重乃至押圧力が作用した部分の保温袋内の蓄熱材が周囲に散逸して偏るのを抑制する可撓性を備えた偏り抑制部材とで保温材を形成したことを特徴とする請求項1に記載の温度計つき保温具。
【請求項3】
保温材を封入した保温袋の表裏を、偏り抑制部材を挟んだ状態で溶着することにより、保温袋内の偏り抑制部材の偏りを防止するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の温度計つき保温具。
【請求項4】
保温具が、温度計が設けられた本体部分と、この本体部を収納するカバーとからなる湯たんぽ若しくはアンカであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の温度計つき保温具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−125114(P2010−125114A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303817(P2008−303817)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(391034776)京岐株式会社 (6)
【Fターム(参考)】