説明

温感ヘアジェル組成物

【課題】抗酸化力が高く、且つ毛髪補修能や各種消臭機能、ツヤ感が高い温感ヘアジェル組成物を提供する。
【解決手段】本発明の温感ヘアジェル組成物は、少なくともセリシンまたは溶液中において加熱処理を施したセリシンを配合したものであり、必要によって更に(a)シリル化加水分解蛋白質、(b)プラチナと結合した加水分解蛋白質、(c)加水分解果実エキス混合物、等を配合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪の損傷を抑制し、毛髪を思い通りのヘアスタイルに形成するための温感ヘアジェル組成物に関するものであり、特に(1)紫外線曝露により発生するフリーラジカルの消去能や、(2)カラー処理やパーマネントウェーブ処理を受けた毛髪の補修能、(3)パーマネントウェーブ施術後の特異臭とカラー施術後の刺激臭抑制能、等の特性を向上させるために使用される温感ヘアジェル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの若い女性や男性では、様々な整髪料(ヘアワックス、ヘアフォーム、ヘアスプレー、ヘアジェル等)を用いて毛髪に動きをつけるスタイルが一般化している。一方、ヘアカラー処理の併用により、「毛髪内部」および「毛髪表面」が損傷を受けやすくなっている。昨今、これら若年層は一種類のヘアスタイルに固執することなく、季節または気分によりヘアスタイルを変化させる傾向がある。その結果、ヘカラーの度重なる繰り返しやヘアスタイルの変更によって、損傷が蓄積し、ツヤ感が失われると共に、スタイルを保てなくなるという問題がある。従って、これらの課題を改善し得る整髪料が望まれている。
【0003】
パーマネントウェーブ処理等のヘアスタイルの変化を楽しむために、毛髪の損傷を抑制または補修するためのヘアケアを重視した毛髪化粧料は、これまで数多く開発されてきている(例えば、非特許文献1、2)。ところが、これらの毛髪化粧料の多くは、パーマネントウェーブ処理後、すぐに使用すると、パーマネントウェーブ処理の特異臭が毛髪に残るという問題があり、特異臭が低減できていないという課題がある。
【0004】
また、若い女性や男性の多くは、ヘアカラーを楽しんでいる。ヘアカラーを繰り返すと、毛髪は損傷する。その結果、「ヘアカラー用ヘアケア組成物」や「傷んだ毛髪をケアするためのヘアフォーム用組成物」もこれまで多々開発されてきた(非特許文献3)。ヘアカラーは、メラニン色素を過酸化水素とアルカリ剤により破壊することで、脱色機能を有し、それにより毛髪の明度が上がる(毛髪の黒味がなくなる)。つまり、過酸化水素のような反応性の高い物質が毛髪の内部に残留することが考えられる。そして、その残留が毛髪損傷につながることも判明している。しかしながら、毛髪中の過酸化水素を除去するような温感ヘアジェル組成物を開発するヘアケア技術にまで、現在のところ至っていないことが現状である。
【0005】
アルカリ剤を含有したヘアカラーでは毛髪損傷が起こりやすく、これらの問題を解決するべく、平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチンや、羊毛またはヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物を配合したものであることを特徴とする化粧料も開発されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
この化粧料を用いれば、ダメージを受けたヒト毛髪の損傷を修復・回復させ、まとまり感を向上することもできる。しかしながら、この化粧料は、紫外線の影響に関して言及しておらず、フリーラジカルによる毛髪損傷を抑制することができないという僅かな問題を有している。昨今、様々なライフスタイルを楽しむ女性は、行動的であり、帽子等を被らず、屋外での時間を楽しむ機会が多く、これまでの温感ヘアジェル組成物よりも優れた紫外線防止効果(フリーラジカル消去能)が望まれている。
【0007】
シルクの構成物であるフィブロインやセリシン等の蛋白質を加熱することによる手法に関しては既に報告されている(例えば、特許文献2、3)。このうち特許文献2では、フィブロインの高熱処理に関しては記載されているが、セリシンについては記載されていない。また、特許文献3で示しているセリシンの加熱処理に関しては、工程の中にアルカリ処理を含んでいるため、製造上の簡便性が悪く、分子量が広範囲に分布していることにも起因して、効率よく毛髪内部へ浸透しにくいものと考えられていた。
【0008】
温感ヘアケア組成物に関しては、これまでも開発されている(例えば、特許文献4〜6)。このうち、特許文献4には、温感作用を有することで、ヘアケア製品、スカプルケア製品等の頭髪化粧料の効果を高める技術が記載されている。また特許文献5には、使用時に水と混合して皮膚・毛髪に適応することにより優れたコンディショニング効果を付与できることが記載されている。特許文献6には、高粘度の温感ヘアジェルを調製することで、長時間持続して発熱できる技術が記載されている。
【0009】
しかしながら、これらの従来技術は、「パーマネントウェーブ処理後の特異臭」や「ヘアカラー処理後の刺激臭」を抑制することができないという課題を有している。更には、ヘアカラー処理直後に使用しても、毛髪に残留した過酸化水素を除去できないという課題も有していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「springヘア&ビューティー’10年春号」株式会社宝島社発刊、2010年3月23日発行、第96〜103頁
【非特許文献2】「SweetMyベストヘア2009年春号」株式会社宝島社発行、2009年2月23日発行、第106〜113頁
【非特許文献3】「大人の愛されヘアカタログvol.10」株式会社ネコパブリック発刊、2010年2月23日発行、第78〜83頁
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−248986号公報
【特許文献2】特開平08−27186号公報
【特許文献3】特許第4112291号公報
【特許文献4】特許第3110203号公報
【特許文献5】特許第3817053号公報
【特許文献6】特許第3660560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のように、紫外線防止効果(抗酸化力)が高く、毛髪補修能や各種消臭機能、ツヤ感が高い温感ヘアジェル組成物が求められているが、これらの諸課題を解決するような温感ヘアジェル組成物は実現されていないのが実情である。即ち、フィブロインやセリシンの加熱処理により抗酸化力を上げる技術(前記特許文献2,3)や、温感ヘアジェル組成物の開発に関する技術(前記特許文献4〜6)については、これまで様々な技術が提案されているが、抗酸化力が高く、且つ毛髪補修能や各種消臭機能、ツヤ感が高い温感ヘアジェル組成物については、実現されていない。
【0013】
本発明はこうした状況の下でなされたものであり、その目的は、抗酸化力が高く、且つ毛髪補修能や各種消臭機能、ツヤ感が高い温感ヘアジェル組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成することができた本発明の温感ヘアジェル組成物とは、手のひらで複数回混ぜることにより、温度が高まるようにされた温感ヘアジェル組成物であって、少なくともセリシンまたは溶液中において加熱処理を施したセリシンを配合したものである点に要旨を有するものである。
【0015】
本発明の温感ヘアジェル組成物においては、前記溶液中において加熱処理を施したセリシンの配合量が、温感ヘアジェル組成物全体に占める割合で0.005〜1.1質量%であることが好ましい。この配合量であれば、紫外線防止能に優れ、ベタつき感の少ない仕上り感が得られる。
【0016】
本発明の温感ヘアジェル組成物には、必要によって、更にシリル化加水分解蛋白質を配合することもでき、その配合量は、0.005〜1.0質量%であることが好ましい。この配合量であれば、毛髪への補修効果能を高くすることができる。
【0017】
本発明の温感ヘアジェル組成物には、プラチナと結合した加水分解蛋白質を配合することもでき、その配合量は、温感ヘアジェル組成物全体に占める割合で0.001〜1.0質量%であることが好ましい。こうした要件を満足させることによって、各種消臭機能とカラー処理後の過酸化水素消去能を高くすることができる。
【0018】
本発明の温感ヘアジェル組成物においては、加水分解果実エキス混合物を配合することが好ましい。これの配合により、毛髪に適度なツヤ感を付与することができる。
【0019】
本発明の温感ヘアジェル組成物に、噴射剤を配合することによって、エアゾール式の温感ヘアジェル組成物とすることも有用であり、こうしたエアゾール式の温感ヘアジェル組成物として用いる場合の形態として、前記噴射剤は、液化石油ガスおよび/またはジメチルエーテル等が挙げられる。また噴射剤の配合割合は、温感ヘアジェル組成物全体に対して占める割合で1〜90質量%であることが好ましい。この配合割合は、より好ましくは2.5〜10質量%程度である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、少なくともセリシンまたは溶液中において加熱処理を施したセリシンを配合することによって、優れた抗酸化力向上効果が発揮されると共に、必要によって、シリル化加水分解蛋白質、プラチナと結合した加水分解蛋白質、加水分解果実エキス混合物等を含有することにより、毛髪破断強度低下抑制や過酸化水素消去能等の毛髪補修能や各種消臭機能、ツヤ感が高い温感ヘアジェル組成物が実現できた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、様々な角度から検討を加えた。その結果、セリシンまたは溶液中において加熱処理を施したセリシン(以下、これらを総括して「セリシン」と呼ぶことがある)を含有する温感ヘアジェル組成物を毛髪へ塗布して使用することにより、優れた「抗酸化力」が付与できることを見出し、本発明を完成した。
【0022】
セリシンは、生繭からシルクを製造する際に得られる副産物であり、シルク生産時には廃棄されていたが、現在ではその保湿感等により有効利用され始めている原料である。セリシンは、特殊な加圧器具により加工する技術が報告されているが、産業上簡易的な手法により加工される技術は未だ開発されていなかった。また、理・美容施術中での抗酸化力向上効果に着目した技術は、未だ見出されていなかった。
【0023】
この様なセリシンについて、本発明者らが検討したところによれば、市販されているセリシン溶液を用い、化粧品の製造段階における加温工程(溶液中で加熱処理する工程)と、理・美容施術中での抗酸化力を向上させる方法を発見した。特に、理・美容施術では、ドライヤーを用いることがあり、これらの使用で大きく抗酸化力が向上することを見出し、その技術的意義が認められたので先に出願している(特願2009−61803号、同2009−61804号)。これらの技術では、加温式ヘアアイロン等を用いて熱処理することによって、抗酸化力を向上させるものであり、こうした処理においてはその抗酸化力が有効に発揮されたものである。
【0024】
本発明者らは、上記のような技術が完成された後においても、加温式ヘアアイロンを使用しない温感ヘアジェル組成物への適用可能性について検討した。その結果、加温式ヘアアイロン等を用いて熱処理しない場合であっても(即ち、加温式ヘアアイロンを使用しない温感ヘアジェル組成物に適用した場合であっても)、抗酸化力を向上させるためにセリシンが有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0025】
尚、「溶液中において加熱処理を施したセリシン」とは、水やブチレングリコール等の溶液でセリシンを常圧若しくは加圧下で70〜90℃程度の温度により加熱処理したものであり、こうした処理を施すことによって、セリシンが低分子化し、毛髪へ浸透しやすくなったものと考えられる。加熱処理前のセリシンの分子量の範囲は5500〜40000であり、加熱処理によって、分子量が5500〜40000以下になっているものと考えられる。
【0026】
上記のような効果を有効に発揮させるためには、溶液中において加熱処理を施したセリシンを使用する場合で、その配合量が0.005質量%以上(温感ヘアジェル組成物全体に占める割合)であることが好ましい。しかしながら、セリシンの配合量が過剰になると、ベタついてしまうため、1.1質量%以下(温感ヘアジェル組成物全体に占める割合)とすることが好ましい。尚、上記配合量は、0.0055質量%以上、0.55質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
溶液中において加熱処理を施したセリシン中には、完全に分解できていないセリシンを含むことから、適宜、適切な量を配合すれば良い。尚、市販されているセリシン溶液そのものは、溶液中において加熱処理を施したセリシンに比べて、その効果は若干劣るものとなるが、その後のドライヤー等などの加熱処理によって、同等の効果を発揮するものとなる。
【0028】
温感ヘアジェル組成物に、セリシンまたは溶液中において加熱処理を施したセリシンを含有させることによって、抗酸化力が向上する理由としては、紫外線により発生したフリーラジカルをセリシンが効果的に消去するということが考えられる。
【0029】
本発明の温感ヘアジェル組成物には、必要によって、更にシリル化加水分解蛋白質を配合することも好ましい。これにより、毛髪補修能やパーマスタイルを維持することができる。シリル化加水分解蛋白質を配合するときの配合量は、温感ヘアジェル組成物全体に占める割合で0.005〜1.0質量%であることが好ましい。この配合量が0.005質量%未満になると、シリル化加水分解蛋白質を配合した効果が発揮されず、1.0質量%を超えると、ベタつき感が発生する。
【0030】
温感ヘアジェル組成物に、シリル化加水分解蛋白質を配合することにより、毛髪補修能が発揮できる理由としては、毛髪内部でシリル化加水分解蛋白質と毛髪蛋白質が結合することにより効果的に毛髪を修復できると考えられる。
【0031】
本発明で対象とする温感ヘアジェル組成物は、手のひらで複数回混ぜることにより、温度が高くなる。その結果、毛髪内部において、セリシンは、シリル化加水分解蛋白質と重合することにより、毛髪内部へ保持されると考えられる。本発明者らが検討したところによると、上記のような推察が可能であった。
【0032】
セリシンおよび/またはシリル化加水分解蛋白質を含有する試料を調製し、そこに毛髪を30分間浸漬させた。その後、試料を加温することでの影響を確認した。これらの工程で得られた試料から、毛髪だけを取り除き、残液の蛋白質濃度をブラッドフォード法により確認した。セリシンのみを含有する試料を加温した場合、OD(吸光度)が595nmで1.25であった。シリル化加水分解蛋白質のみを含有する試料を加温した場合、OD(吸光度)が595nmで0.95であった。また、両試料を含有し、且つ加温した場合でのOD(吸光度)が595nmで0.72であった。両試料を含有し、加温しない場合でのOD(吸光度)が595nmで1.11であった。つまり、セリシンだけでは、残液の吸光度が高いことから、セリシンは加温しても毛髪内部に吸着しないことがうかがえた。しかし、シリル化加水分解蛋白質とセリシンを含有した試料を加温すると、残液の吸光度が低下することから、シリル化加水分解蛋白質だけでなく、セリシンも効果的に毛髪内部に吸着していることが推察できる。つまり、シリル化加水分解蛋白質が毛髪内部で重合する際、セリシンもシリル化重合での影響を受け、毛髪内部に吸着するものと考えられた。
【0033】
尚、本発明の温感ヘアジェル組成物で用いることのできるシリル化加水分解蛋白質は、代表的には下記の化学式で示されるものが挙げられるが(式中nは正の整数、Rはアミノ酸側鎖を夫々示す)、こうしたシリル化加水分解蛋白質としては、絹由来、羊毛由来、小麦由来、大豆由来、トウモロコシ由来、ジャガイモ由来、ゴマ由来等、様々なものがあり、本発明の温感ヘアジェル組成物ではそのいずれも使用できる。
【0034】
【化1】

【0035】
本発明の温感ヘアジェル組成物には、プラチナと結合した加水分解蛋白質を配合することも有用である。プラチナと結合した加水分解蛋白質を配合することによって、パーマネントウェーブスタイル後の特異臭やカラー後の刺激臭を効果的に低減できる。こうした効果を発揮させるためには、その配合量は、温感ヘアジェル組成物全体に占める割合で0.001質量%以上であることが好ましいが、1.0質量%を超えると、ゴワつきが生じ良好なコンディションが得られなくなる。尚、この配合量は、0.006質量%以上、0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0036】
プラチナと結合した加水分解蛋白質を配合することによって、上記の効果が得られる理由については、その全てを解明し得た訳ではないが、プラチナと結合した加水分解蛋白質は、毛髪蛋白質との親和性が強く、不快感を与えるニオイ成分を効果的に封鎖することができるものと推察される。
【0037】
本発明の温感ヘアジェル組成物は、上記成分の他、加水分解果実エキス混合物を配合することも有用であり、これによって良好なツヤ感やコンディションが達成される。温感ヘアジェル組成物に、加水分解果実エキス混合物を含有させることによって、上記のような効果が得られる理由については、その全てを解明し得た訳ではないが、おそらく次のように考えることができる。即ち、毛髪表面の損傷部位には、凹凸が発生し、ツヤ感やコンディションが低下することになる。上記成分が毛髪表面に吸着して毛髪の保湿性を高め、柔らかさを付与できると同時に、凹凸を平滑にすることでツヤ感やコンディションを回復させると考えられる。
【0038】
尚、本発明の温感ヘアジェル組成物で用いることのできる加水分解果実エキス混合物は、植物の果実を加水分解してえられるもので、代表的なものとしては、マンゴー、マンゴスチン、チェリモヤ等、様々なものがあり、本発明の温感ヘアジェル組成物ではそのいずれも単一成分、または混合物として使用できる。
【0039】
本発明の温感ヘアジェル組成物は、セリシンまたは溶液中において加熱処理を施したセリシンを必須成分として含み、必要によって、シリル化加水分解蛋白質、プラチナと結合した加水分解蛋白質、加水分解果実エキス混合物等を含有するものであるが、その他各種の添加剤を含むものであっても良い。
【0040】
本発明の温感ヘアジェル組成物に含有されることのある添加剤としては、保湿剤類、油脂類、ラノリン類、高級アルコール類、フッ素系化合物類、シリコーン類、カチオン化ポリマー類、界面活性剤類(陽イオン界面活性剤類・陰イオン界面活性剤類・非イオン界面活性剤類・両性界面活性剤類)、増粘・ゲル化剤類、防腐剤類、キレート剤類、pH調整剤・酸・アルカリ類、溶剤類、抗炎症剤類、香料、色素等を挙げることができ、これらを適宜配合することができる。
【0041】
これらの添加剤を例示すると、保湿剤類としては、1,3−ブチレングリコ−ル、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、コラーゲン分解ペプチド、エラスチン分解ペプチド、ケラチン分解ペプチド、シルク蛋白分解ペプチド、大豆蛋白分解ペプチド、小麦蛋白分解ペプチド、カゼイン分解ペプチド等の蛋白質・ペプチド類およびその誘導体、アルギニン、セリン、グリシン、グルタミン酸、トリメチルグリシン等のアミノ酸類、アロエ抽出物、ハマメリス水、ヘチマ水、カモミラエキス、カンゾウエキス等の植物抽出成分類、ヒアルロン酸ナトリウム、クエン酸塩、コンドロイチン硫酸、乳酸ナトリウム、2−ピロリドン−5−カルボン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0042】
油脂類としては、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、オリーブ油、アボカド油、ゴマ油、月見草油、小麦胚芽油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ローズヒップ油、メドウフォーム油、ティーツリー油、ハッカ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油、大豆油、落花生油、コメヌカ油、液状シア脂、ホホバ油等の植物油脂類、流動パラフィン、スクワラン、軽質流動パラフィン、セレシン、パラフィンロウ、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等の炭化水素等、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル等のエステル類、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナバロウ、ライスワックス、鯨ロウ、セラック、綿ロウ、モクロウ、水添ホホバ油等のロウ類が挙げられる。
【0043】
ラノリン類としては、液状ラノリン、還元ラノリン、吸着精製ラノリン等が挙げられる。高級アルコール類としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール類、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
【0044】
フッ素系化合物類としては、パーフルオロポリエーテル、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロヒドロキシエチル、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロメチルジステアリルアミド、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロエチルポリエチレングリコールリン酸等のフッ素化合物誘導体類が挙げられる。
【0045】
シリコーン類としては、低粘度ジメチルポリシロキサン、高粘度ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルシロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、カチオン変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0046】
カチオン化ポリマー類としては、カチオン化セルロース誘導体、カチオン化デンプン、カチオン化グアーガム、ジアシル4級アンモニウムの重合体または共重合体、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。
【0047】
陽イオン界面活性剤類としては、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0048】
陰イオン界面活性剤類としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、アシルN−メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩等が挙げられる。
【0049】
非イオン界面活性剤類としては、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルポリグリコシド、アルキルグリコシド、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0050】
両性界面活性剤類としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシイミダゾリニウムベタイン等を挙げることができる。
【0051】
増粘・ゲル化剤類としては、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸、トラガントガム、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂アルカノールアミン液等を挙げることができる。
【0052】
防腐剤類としては、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類、安息香酸塩類、フェノキシエタノール、4級アンモニウム塩類等を挙げることができる。
【0053】
キレート剤類としては、エデト酸塩、ホスホン酸類、ポリアミノ酸類等を挙げることができる。pH調整剤・酸・アルカリ類としては、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、炭酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、塩酸、硫酸、硝酸若しくはそれらの塩類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アルギニン、アンモニア水、アミノメチルプロパノール若しくはそれらの塩類等を挙げることができる。
【0054】
溶剤類としては、水(イオン交換水)、エタノールやデカメチルシクロペンタシロキサンの他にも、2−プロパノール等の低級アルコール類等を例示することができる。抗炎症剤類としては、グリチルリチン酸、カルベノキソロン二ナトリウムをはじめとする甘草誘導体、アラントイン、グアイアズレン、アロエ、α−ビサボロール等が挙げられる。
【0055】
本発明の温感ヘアジェル組成物は、その剤型として、エアゾール式のフォーム状が最適であるが、その他、溶液状、またノンエアゾール式のフォーム状等、種々のタイプへの技術的応用は可能であり、特に限定されるものではない。
【0056】
エアゾール式の温感ヘアジェル組成物として用いる場合には、液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)等のガス(温感ヘアジェルのガスとして、圧力を加えることによって液体状となるものも含む)を、上記温感ヘアジェル組成物に配合して用いられることになるが、これら以外にも炭酸ガス、窒素ガス、イソペンタン等のガスを用いても良い。尚、樹脂との相溶性や適度な噴霧感を考慮すると、液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)が好ましい。また、いずれのガスを用いるにしても、噴射剤としてのガスの配合割合は、温感ヘアジェル組成物全体に対して1〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは2.5〜10質量%程度である。
【実施例】
【0057】
次に、実施例によって本発明をより具体的に示すが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0058】
[実施例1]
(セリシン溶液の抗酸化力向上効果の検討)
この実施例で用いたセリシン溶液は、頭髪用医薬部外品および化粧品用原料として市販されているものとして、一丸ファルコス(株)製の「シルクゲンGソルブルS」(商品名:純分5.5%含有、平均分子量15000)である。
【0059】
上記セリシン溶液を用い、下記表1に示す実験No.2〜5の方法により、抗酸化力の向上効果を検討した。尚、実験No.2〜5は、夫々下記の加熱処理1〜4の工程を含んでいる。
加熱処理1…常圧下(0.1MPa)で80℃の熱を1時間加えた。
加熱処理2…耐熱瓶(メディウム瓶)にセリシン溶液を入れ、オートクレーブを用い、
加熱処理を行なった(0.2MPa、121℃、20分間)。
加熱処理3…密閉式高温高圧瓶にセリシン溶液を入れ、オートクレーブを用い、加熱処
理を行なった(0.6MPa、160℃、20分間)。
加熱処理4…密閉式高温高圧瓶にセリシン溶液を入れ、オートクレーブを用い、加熱処
理を行なった(1.5MPa、200℃、20分間)。
【0060】
実験No.1に関しては、加熱処理を行なわずに、下記のDPPH消去力(抗酸化力)の測定を行なった。上記4種類の加熱処理を含む実験No.2〜5の加熱処理を行い、夫々について下記のDPPH消去力(抗酸化力)の測定を行なった。
【0061】
(抗酸化力の測定:DPPH−VIS法)
DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)は、それ自体が安定な紫色(520nm付近に最大吸収をもつ)のラジカル物質であり、抗酸化物質(水素供与体)が存在すると、水素を奪って非ラジカル体(淡黄色)に変化し、紫色が次第に退色する。その退色度合いを分光光度計で測定し、ラジカル消去能を評価する方法がDPPH−VIS法である。DPPH−VIS法は、スーパーオキシド消去能(活性酸素消去能)と高い相関が認められる。
・A:各試料(実験No.1〜5で得られた各セリシン溶液)2mL(ミリリットル)と150μM・DPPHエタノール溶液2mLを混合し、30分反応後の吸光度を測定した(測定波長:520nm)。
・B:各試料(実験No.1〜5で得られた各セリシン溶液)2mLと溶媒であるエタノール2mLを混合し、30分反応後の吸光度を測定した(測定波長:520nm)。
・C:150μM・DPPHエタノール溶液2mLと超純水2mLを混合し、30分反応後の吸光度を測定した(測定波長:520nm)。
【0062】
吸光度の測定には、分光光度計「UV−2550」(商品名:(株)島津製作所製)を用いた。そして下記(1)式によって、DPPHに対するラジカル消去力を求めた。
DPPH消去力={C−(A−B)}/C×100 …(1)
但し、A:分析試料溶液の吸光度
B:分析試料溶液のブランクの吸光度
C:コントロール溶液の吸光度
【0063】
実験No.1(セリシン溶液)のDPPH消去力の実測値を100に換算し、各試料との比較を行なった。つまり、セリシン溶液のみのDPPH消去力をE(実測値)として、下記(2)式により各実験(試料)におけるDPPH消去力を算出した。
各試料のDPPH消去力=〔{C−(A−B)}/C×100〕/E×100…(2)
【0064】
(DPPH消去力の評価基準)
◎:120以上
○:110以上、120未満
△:100以上、110未満
×:100未満
【0065】
(加熱処理工程における簡便性の評価)
下記表1に示した「加熱処理工程の簡便性」とは、化粧品の製造レベルにおいて、応用できるかどうかを示している。設備投資の必要性も判断材料に下記の基準で評価したものである。
【0066】
(簡便性の評価基準)
○:生産設備への投資が必要なく、工程も簡易であり、非常に簡便性が良い。
×:生産設備への投資等が必要であり、また、各工程の処理が複雑で、非常に簡便性が悪い。
【0067】
これらの結果を、下記表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
この結果から、次のように考察できる。セリシン溶液に各種加熱処理を加えることによって、抗酸化力が向上することが分かる(実験No.2〜5)。但し、実際の化粧品の製造現場を考慮すると、オートクレーブを用いた高温高圧下での加熱処理を含む工程では、いずれも簡便性に欠けることになる(実験No.3〜5)。従って、セリシン溶液の抗酸化力向上効果と、製造工程の簡便性の両者を考慮すると、上記「加熱処理1」(実験No.2)が最も現実的である。
【0070】
[実施例2]
(毛髪への抗酸化力向上効果の検討)
実施例1で得られた実験No.2のセリシン溶液(以下、「試料A」とする)を毛髪に塗布し、抗酸化力向上の検討を行なった。化学的処理(ヘアカラー処理やパーマネントウェーブ処理等)を施していない毛髪0.2gに試料A:0.2gを塗布し、下記表2の実験No.6に示す工程を実施した。また、実験No.6に示す室温乾燥を以下に示す。
【0071】
室温乾燥…室温(20℃)で24時間放置
【0072】
上記の加熱処理を含む工程を実施し、DPPH消去力を下記の方法によって測定すると共に、「加熱処理工程における簡便性」について実施例1と同様に評価した。その結果を、下記表2に示す。
【0073】
(DPPH−VIS法:毛髪を測定する場合)
実験No.6で得られた毛髪を以下の工程により測定した。
・G:処理毛髪と150μM・DPPHエタノール溶液2mLと超純水2mLを混合し、30分反応後の吸光度を測定した(測定波長:520nm)。
・H:処理毛髪と溶媒であるエタノール2mLと超純水2mLを混合し、30分反応後の吸光度を測定した(測定波長:520nm)。
・C:150μM・DPPHエタノール溶液2mLと超純水2mLを混合し、30分反応後の吸光度を測定した(測定波長:520nm)。
このとき吸光度の測定には、分光光度計「UV−2550」(商品名:(株)島津製作所製)を用いた。
【0074】
下記(3)式より、DPPHに対するラジカル消去力を求めた。
DPPH消去力={C−(G−H)}/C×100 …(3)
但し、G:試料溶液の吸光度
H:試料溶液のブランクの吸光度
C:コントロール溶液の吸光度
【0075】
実験No.1(セリシン溶液)のDPPH消去力の実測値を100に換算し、試料との比較を行なった。つまり、セリシン溶液のみのDPPH消去力をE(実測値)として、下記(4)式により実験(試料)におけるDPPH消去力を算出した。DPPH消去力の評価基準は上記と同じである。
試料のDPPH消去力=〔{C−(G−H)}/C×100〕/E×100…(4)
尚、未処理毛の抗酸化力(DPPH消去力)は70であった。
【0076】
【表2】

【0077】
この結果から、次のように考察できる。加熱処理を施したセリシン溶液を毛髪に塗布し、室温乾燥して使用することによって、毛髪に抗酸化力を付与できることが分かる。
【0078】
[実施例3]
(ブリーチ処理毛の作製)
化学的処理を全く受けていない毛髪に下記のブリーチ処理を施して処理毛を作製し、その毛髪について、下記表3に示す温感ヘアジェル組成物(処方例1〜7)を用いて処理したときの毛髪の抗酸化力(DPPH消去力)を評価した。
【0079】
(ブリーチ処理)
トーナーブリーチパウダーEX(粉末ブリーチ剤:中野製薬株式会社製)とキャラデコオキサイドEX06(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)を1:3(質量比)となるように混合したブリーチ剤を、毛髪に質量比1:1の割合で塗布し、30℃、30分間の条件で処理した後、10質量%のSDS溶液(ドデシル硫酸ナトリウム溶液)によって洗浄し、その後、乾燥した。この工程を3回実施した試料を以下の実験に用いた。
【0080】
下記表3において、試料Bはプラチナ結合加水分解蛋白質[20質量%含有物:「プラチナケラチン」(株)ジョーゼン製]である。この「プラチナケラチン」は、ナノ粒子のプラチナ(配合濃度50ppm)の周りに低分子のケラチン(配合量20%)が局在し、毛髪への浸透性が非常に高い成分である。また試料Cは分子量が10000の蛋白質組成物[20質量%含有物:「プロモイスWK−GB」(株)成和化成製]であり、試料Dはゴマ由来シリル化加水分解蛋白質組成物(10質量%含有物)であり、試料Eは加水分解果実エキス混合物[加水分解マンゴー液汁エキス1.57質量%含有物、加水分解マンゴスチン果実エキス0.31質量%含有物、加水分解チェリモヤ果実エキス0.62質量%含有物:「ビューティーフルーツ」(株)テクノーブル製]である(後記表4〜7においても同じ)。
【0081】
(セリシン溶液の抗酸化力向上効果とコンディションへの影響)
下記表3に示す温感ヘアジェル組成物(処方例1〜7)0.2gを、上記ブリーチ処理毛0.2gに塗布し、ドライヤーで乾燥後に実施例2と同様に毛髪の抗酸化力(DPPH消去力)を評価した。その結果を下記表3に併記する。
【0082】
(コンディションの官能評価方法)
上記ブリーチ処理を施した毛髪0.2gに、下記表3に示した各温感ヘアジェル組成物(処方例1〜7)を0.2g塗布し、ドライヤーで乾燥後に毛髪表面のコンディションを評価した。その際、毛髪表面のコンディション(手触り感、指通り感、すべり感等の総合)を、専門のパネラー10名で以下の3段階(評価点:1〜3点)で官能評価し、その合計を求め下記の基準で評価した。その結果を下記表3に併記する。
【0083】
3点…処理前と比較し、明らかにコンディションが良くなった。
2点…処理前と比較し、コンディションが変わらなかった。
1点…処理前と比較し、コンディションが悪くなった。
【0084】
[コンディションの評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0085】
【表3】

【0086】
この結果から明らかな様に、試料Aを0.1〜20.0質量%(純分換算濃度:0.0055〜1.1質量%)で配合した温感ヘアジェル組成物を用いた場合(処方例2〜6)には、毛髪に抗酸化力が付与されており、且つ良好なコンディションが得られることが分かる。また、試料Aの配合量が0.01質量%以下(純分換算濃度:0.00055質量%以下)の場合(処方例1)は、十分な抗酸化力を毛髪に付与できず、逆に40質量%以上(純分換算濃度:2.2質量%以上)の場合(処方例7)、ベタつきが生じ、良好なコンディションが得られないことが分かる。
【0087】
[実施例4]
(毛髪破断強度の測定)
実施例3と同様にブリーチ処理した毛髪について、下記表4、5に示した各温感ヘアジェル組成物(処方例2、8〜14)を塗布した毛髪の破断強度について下記の方法によって測定した。その際の毛髪表面のコンディションを実施例3と同様にして評価した。
【0088】
ここでは、手のひらで複数回(約20回)混ぜることで30〜37℃の温感効果が得られる温感ヘアジェル組成物において、ゴマ由来シリル化加水分解物である試料Dによる毛髪破断強度回復効果と毛髪コンディションを評価した。また、30〜37℃の温感効果が得られる温感ヘアジェル組成物(処方例2、8〜13)と温感効果が得られない温感ヘアジェル組成物(処方例14)において、毛髪破断強度と毛髪表面のコンディションを比較し、更に、温感効果が得られない温感ヘアジェル組成物を塗布後の乾燥工程(室温(20℃)とドライヤー(40〜60℃)の使用)においても、毛髪破断強度を比較した。
【0089】
(破断強度測定用毛髪の作製)
実施例3と同様にブリーチ処理を施した毛髪0.2gに対し、各温感ヘアジェル組成物0.2gを塗布し、表5の実験No.8の温感ヘアジェル組成物塗布毛髪以外は室温(20℃)にて乾燥後、シャンプー処理(10%SDS溶液:ドデシル硫酸ナトリウム溶液)による付着物の除去を行い乾燥した。表5の実験No.8の温感ヘアジェル組成物塗布毛髪は、ドライヤーを用いて乾燥後、同様に、シャンプー処理以降の工程を施した。こうした一連の手順を一工程として3回(三工程)の処理を行った毛髪について、破断強度を測定した。このときの破断強度測定方法は下記の通りである。
【0090】
(破断強度測定方法)
上記処理を施した毛髪を任意に選び、「毛髪直径計測システム」(カトーテック(株)製)により毛髪の直径[長径(mm)および短径(mm)]を計測し、横断面積(mm2)を下記(5)式より求めた。次に、卓上型材料試験機「テンシロン STA−1150」(株)オリエンテックス製)を用い、上記試料毛髪の水中における引張り破断値(cN)の測定を行った。その後、横断面積(mm2)当りの引張り破断値(cN)を算出することによって、破断強度(cN/mm2)を求めた(n=20)。このときの評価基準は下記の通りである。その結果を、下記表4、5に併記する。
横断面積(mm2)=(π/4)×長径(mm)×短径(mm) …(5)
【0091】
[毛髪の破断強度の評価基準]
◎:破断強度が0.94×104cN/mm2以上
○:破断強度が0.92×104cN/mm2以上、0.94×104cN/mm2未満
△:破断強度が0.90×104cN/mm2以上、0.92×104cN/mm2未満
×:破断強度が0.90×104cN/mm2未満
【0092】
【表4】

【0093】
【表5】

【0094】
表4に示した温感ヘアジェル組成物(処方例2、8〜13)は、手のひらで複数回(約20回)混ぜることにより、30〜37℃の温感が得られ、且つゴマ由来シリル化加水分解蛋白質である試料Dを配合したものである。30〜37℃の温感効果により、試料Dが活性化し、毛髪破断強度が回復していることが分かる(処方例2、9〜12)。試料Dの配合量が少なすぎる場合(処方例8)、十分な毛髪破断強度の回復は得られず、逆に多すぎる場合(処方例12)、ベタつきが生じ、良好なコンディションが得られないことが分かる。また、ポリエチレングリコールとグリセリンの配合量が異なる場合(処方例13)でも、温感が得られれば、毛髪破断強度が回復していることが分かる。
【0095】
表5に示したす温感ヘアジェル組成物(処方例14)は、手のひらで複数回(約20回)混ぜても、水和熱等の反応がなく、温感効果を得られないものである(15〜20℃)。その際にも、試料塗布後にドライヤーを用いて乾燥した場合(実験No.8)、毛髪破断強度は回復した。これは、毛髪表面において40〜60℃になるドライヤーの熱が試料Dを活性化させたためだと考察できる。逆に、試料塗布後に室温(20℃)で乾燥した場合には(実験No.7)、十分な毛髪破断強度の回復は得られないことが分かる。
【0096】
[実施例5]
(パーマ特異臭、カラー刺激臭の抑制)
下記に示す方法により、プラチナ結合加水分解タンパク質によるパーマ特異臭、カラー刺激臭の抑制能について評価した。
【0097】
(パーマ特異臭抑制能の評価方法)
化学的処理を施していない毛髪(0.2g)を直径12mmのロッドに巻き付けて、輪ゴムで固定した。カールエックス チオポジットノーマル第1剤(チオグリコール酸系還元剤:中野製薬株式会社製)に30秒間塗布(浴比1:1)し、その溶液から取り出した後、30℃で15分間放置した。その後、十分に水洗した後、カールエックス チオポジットノーマル第2剤(臭素酸系酸化剤:中野製薬株式会社製)に30秒間塗布(浴比1:1)し、その溶液から取り出し、30℃で10分間放置した。引き続き、水洗し、ロッドから毛髪を外し、乾燥後、下記表6の各温感ヘアジェル組成物(処方例2、15〜19)を0.2g塗布し、臭気箱に処理した毛髪を入れ、特異臭を測定し、パーマ特異臭抑制能の評価を実施した。特異臭測定に際しては、(株)ガステック製の検知管(GASTEC 気体検知管H2S用)を使用し、下記の基準で評価した。
【0098】
[評価基準]
◎:検知管の値が0.5未満
○:検知管の値が0.5以上、1.0未満
△:検知管の値が1.0以上、2.0未満
×:検知管の値が2.0以上
【0099】
また、パーマ特異臭抑制能については、専門のパネラー10名により下記の評価基準でも判断した(パネラー評価)。
[パネラーによるパーマ特異臭抑制能]
3点…特異臭を感じなかった。
2点…特異臭を少し感じた。
1点…特異臭を感じた。
【0100】
[パーマ特異臭抑制能の評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0101】
(カラー刺激臭抑制能の評価結果)
キャラデコ TN−UP−High(クリーム状脱色剤:中野製薬株式会社製)とキャラデコ オキサイド 06(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)を1:3(質量比)となるように混合したブリーチ剤を、化学的処理を施していない毛髪に質量比1:1の割合で塗布し、30℃、30分間の条件で処理した後、10質量%のSDS溶液(ドデシル硫酸ナトリウム溶液)によって洗浄し、乾燥した処理毛髪0.2gに、下記表6の各温感ヘアジェル組成物(処方例2、15〜19)を0.2g塗布し、臭気箱に入れ、刺激臭を測定し、カラー刺激臭抑制能の評価を実施した。刺激臭測定に際しては、(株)ガステック製の検知管(GASTEC 気体検知管、NH3用)を使用し、下記の基準で評価した。
【0102】
[評価基準]
◎:検知管の値が5未満
○:検知管の値が5以上、10未満
△:検知管の値が10以上、20未満
×:検知管の値が20以上
【0103】
また、カラー刺激臭抑制能についても、専門のパネラー10名により下記の評価基準でも判断した(パネラー評価)。
[パネラーによるカラー刺激臭抑制能]
3点…刺激臭を感じなかった。
2点…刺激臭を少し感じた。
1点…刺激臭を感じた。
【0104】
[カラー刺激臭抑制能の評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0105】
その結果を、表6に併記する。
【0106】
【表6】

【0107】
表6から次のように考察できる。プラチナケラチンを0.005〜5.0質量%[純分換算:0.001〜1.0質量%]配合した場合(処方例2、16〜18)、パーマ特異臭およびカラー刺激臭が抑制でき、且つ良好なコンディションが得られることがわかる。これに対し、プラチナケラチンの配合量が少なすぎる場合(処方例15)、パーマ特異臭およびカラー刺激臭が十分に抑制できず、配合量が多い場合(処方例19)、ベタつきが生じ、良好なコンディションが得られない傾向にある。
【0108】
[実施例6]
(ツヤ感とコンディションの向上)
実施例3と同様にブリーチ処理を施した毛髪0.2gに下記表7の各温感ヘアジェル組成物(処方例2、20〜24)を0.2g塗布し、室温(20℃)で乾燥し、下記の方法により毛髪のツヤ感を評価した。その際の毛髪表面のコンディションを実施例3と同様にして評価した。
【0109】
尚、下記表7において、試料FとGは下記のものである。
試料F:植物混合エキス[センブリエキス0.156質量%含有物、オタネニンジンエキス0.344質量%含有物、ヒキオコシエキス0.137質量%含有物、クララエキス0.123質量%含有物:「エムエスエキストラクト<HS>」丸善製薬(株)製]
試料G:フルーツ混合エキス[サンザシエキス0.31質量%含有物、タイソウエキス0.31質量%含有物、グループフルーツエキス0.31質量%含有物、リンゴエキス0.31質量%含有物、オレンジ果汁0.02質量%含有物、レモン果汁0.01質量%含有物、ライム果汁0.03質量%含有物:「フルールリンクルプロテクトエッセンス」丸善製薬(株)製]
【0110】
(毛髪表面のツヤ感の評価方法)
上記の方法により各試料を処理した毛髪のツヤ感を、専門のパネラー10名により、以下の3段階(評価点:1〜3点)で評価し、その合計を求め下記の評価基準で評価した。
3点…処理前と比較し、明らかにツヤ感がでた。
2点…処理前と比較し、少しツヤ感がでた。
1点…処理前と比較し、ツヤ感が変らなかった。
[ツヤ感の評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0111】
その結果を、表7に併記する。
【0112】
【表7】

【0113】
これらの結果から、次のように考察できる。各種フルーツ混合エキス(試料E〜G)について、ツヤ感とコンディションの向上効果について評価した。夫々単独で配合した場合(処方例2、21、22)、加水分解果実エキス混合物(試料E)を配合した試料(処方例2)が最もツヤ感の向上、良好なコンディションが得られた。また、試料Eと試料Fまたは試料Gを組み合わせて配合した場合(処方例23、24)も、ツヤ感とコンディションが向上した。
【0114】
[実施例7]
温感へアジェル組成物が持つ過酸化水素消去力に関する影響を調査した。上記実施例6のカラー処理により得られた毛束0.2gに、処方例2および処方例25(下記表8)の温感へアジェル組成物を0.2g塗布し、30分後に10質量%のSDS溶液にて洗浄した後、水洗、乾燥するという工程を1工程(1日相当分)とし、下記測定を実施した。
【0115】
(過酸化水素測定方法)
1工程(1日相当分)毎に毛髪を100mLのイオン交換水に1時間浸漬させ、その浸漬溶液に1.0gヨウ化カリウムを加え、密栓し、暗所に30分放置した。その後、デンプン溶液3mLを添加し、0.1N−Na2SO3で透明になるまで滴定した。
a:0.1N−Na2SO3の滴定量(mL)
f:0.1N−Na2SO3のファクター
M:過酸化水素の分子量
過酸化水素濃度(ppm)=[(M×a×f)/0.2]×100
X:カラー処理直後の毛髪の過酸化水素濃度(ppm)
Y:各ヘアスプレー用組成物を処理した毛髪の過酸化水素濃度(ppm)
過酸化水素残存率(%)=Y/X×100
【0116】
[過酸化水素消去力の評価基準]
◎:7工程(7日相当分)までに、過酸化水素を全て消去できた。
×:7工程(7日相当分)までに、過酸化水素を全て消去できなかった。
【0117】
その結果を、下記表8に示すが、プラチナケラチン(試料B)を0.03質量%[純分換算濃度:0.006質量%]配合した場合(処方例2)、過酸化水素消去力が発揮できていることが分かる。
【0118】
【表8】

【0119】
[実施例8]
上記実施例3〜6に示した温感ヘアジェル組成物は、温感ヘアジェル組成物の原液そのものであるが、この温感ヘアジェル組成物に噴射剤を配合することによってエアゾール状にした場合に、その配合割合が噴射適性に与える影響について調査した。このとき、温感ヘアジェル組成物の処方例として前記表7に示した処方例2を用いて、温感ヘアジェル組成物(原液):ガス(DME、LPG)の配合割合を変え、毛髪をセットし、下記の方法によって、スプレーの噴射適性(適度な噴霧状態の有無)を評価した。
【0120】
(温感ヘアジェル組成物の噴射適性に関する評価方法)
上記実施例3と同様にブリーチ処理を施した毛髪に、下記表9に示す各温感ヘアジェル組成物(処方例26〜35)を適量塗布し、実施例5と同様に、パーマネントウェーブ処理してウェーブ状態を形成し、各温感ヘアジェル組成物の噴射適性を専門のパネラー10名により、下記に示す3段階(評価点:1〜3点)で評価し、その合計点によって下記の基準で評価した。
3点…カールをしっかりと包み込み、ほどよいフォームの状態であった。
2点…カールを包み込むが、やや潰れてしまうようなフォームの状態であった。
1点…カールを包み込むことができず、潰れてしまうようなフォームの状態であった。
【0121】
[温感ヘアジェル組成物の噴射適性の評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0122】
その結果を、各温感ヘアジェル組成物と共に下記表9(処方例26〜35)に示すが、これらの結果から、次のように考察できる。まず、ガスの配合量が少なくなると、起泡力が不足し、フォームを形成することができないことが分かる(処方例26)。また、ガスの配合割合が多くなると、原液の量が不足し、フォームが形成することができない(処方例33)。これに対して、原液:ガスの配合割合が、99:1〜10:90の範囲(処方例27〜32、34、35)において、好ましくは97.5:2.5〜90:10の範囲(処方例28〜30、34、35)において、良好な噴射適性が得られていることが分かる。
【0123】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
手のひらで複数回混ぜることにより、温度が高まるようにされた温感ヘアジェル組成物であって、少なくともセリシンまたは溶液中において加熱処理を施したセリシンを配合したものであることを特徴とする温感ヘアジェル組成物。
【請求項2】
前記溶液中において加熱処理を施したセリシンの配合量が、温感ヘアジェル組成物全体に占める割合で0.005〜1.1質量%である請求項1に記載の温感ヘアジェル組成物。
【請求項3】
更に、シリル化加水分解蛋白質を配合したものである請求項1または2に記載の温感ヘアジェル組成物。
【請求項4】
前記シリル化加水分解蛋白質の配合量が、温感ヘアジェル組成物全体に占める割合で0.005〜1.0質量%である請求項3に記載の温感ヘアジェル組成物。
【請求項5】
更に、プラチナと結合した加水分解蛋白質を配合したものであり、その配合量が、温感ヘアジェル組成物全体に占める割合で0.001〜1.0質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の温感ヘアジェル組成物。
【請求項6】
更に、加水分解果実エキス混合物を配合したものである請求項1〜5のいずれかに記載の温感ヘアジェル組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の温感ヘアジェル組成物に、噴射剤として液化石油ガスおよび/またはジメチルエーテルを配合したもので、前記噴射剤の配合割合が、温感ヘアジェル組成物全体に対して占める割合で1〜90質量%であることを特徴とするエアゾール式のフォーム状温感ヘアジェル組成物。


【公開番号】特開2012−56849(P2012−56849A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198332(P2010−198332)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000213482)中野製薬株式会社 (57)
【Fターム(参考)】