説明

温水洗浄装置

【課題】温水洗浄便座の使用給水圧に応じたプレ洗浄時間を最適化することで、逸早く、人体局部洗浄に移行、かつ、人体局部洗浄時には最適な温水温度、洗浄流量を提供することのできる温水洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】洗浄水を人体局部に噴出するノズル手段と、前記ノズル手段に向けて洗浄水を供給する給水手段と、供給された洗浄水を加温する加熱手段と、前記加熱手段を通過した洗浄水の水圧、または、流量を検知する第一検知手段と、前記加熱手段を通過した洗浄水の温度を検知する第二検知手段と、人体局部洗浄前のプレ洗浄中に、前記第一検知手段により検知した水圧、または水量の値と、前記第二検知手段により検知した温度と、に応じて、前記加熱手段の加熱出力を調整することを特徴とする温水洗浄装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給水圧(給水流量)判断手段を備えた温水洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な温水洗浄装置においては、特許文献1または、特許文献2が知られている。具体的には、洗浄水を人体局部に噴出するノズル手段と、前記ノズル手段に向けて洗浄水を供給する給水手段と、洗浄水を加温する加熱手段で構成されており、洗浄時には流量調整手段の切替により人体局部に噴出する水勢の調節、温度検知手段により人体局部に噴出する洗浄水の温度を安定させるために加熱手段の出力の制御をするものが知られている。
【0003】
この種の温水洗浄装置に関しては、構成・制御手段が以下のような手法で知られている。給水の水圧判断手段や流量判断手段を設けることによって流量調整手段を調整し、使用者の使用したい水勢の切替や、加熱手段の調整によって温水温度を制御することのできるようになっている。
しかしながら、従来の温水洗浄装置においては、人体局部洗浄を開始するまでの動作として、使用者が温水洗浄装置に着座すると、前回使用後のノズル手段等における残水を排出させる。次に噴出開始のスイッチが押された後、使用者が設定している噴出温度を逸早く提供するために、ノズル手段までの流路を加熱する目的で給水手段より供給される洗浄水を加熱手段にて加熱しながら流路を暖める。そして、加熱手段により加熱した洗浄水の温度を検知する温度検知手段により、使用者の設定噴出温度に対して、温度検知手段により検知した温度がある一定の温度に安定したことを検知した後、ノズル手段が伸出して噴出を開始する構成となっている。
そのため、給水手段に供給される給水圧によって、使用者の設定噴出温度に対してある一定の温度まで加熱されるプレ洗浄時間にはばらつきがある。特に、給水手段に供給される給水圧が低い場合はプレ洗浄時間に遅れが生じる。このため、使用者に不快感を与える問題がある。この問題に対して、プレ洗浄時間を時間で区切ることも可能であるが、この手法を用いると、流路が暖まらず、温水洗浄装置使用者の意図しない噴出温度となってしまい、使用者に不快感を与える問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−235358号公報
【特許文献2】特開2003−247263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、温水洗浄便座の使用給水圧に応じたプレ洗浄時間を最適化することで、逸早く、人体局部洗浄に移行、かつ、人体局部洗浄時には最適な温水温度、洗浄流量を提供することのできる温水洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の温水洗浄装置は、洗浄水を人体局部に噴出するノズル手段と、前記ノズル手段に向けて洗浄水を供給する給水手段と、供給された洗浄水を加温する加熱手段と、前記加熱手段を通過した洗浄水の水圧、または、流量を検知する第一検知手段と、前記加熱手段を通過した洗浄水の温度を検知する第二検知手段と、人体局部洗浄前のプレ洗浄中に、前記第一検知手段により検知した水圧、または水量の値と、前記第二検知手段により検知した温度と、に応じて、前記加熱手段の加熱出力を調整することを特徴とする。
【0007】
この給水圧(給水流量)判断手段によれば、温水洗浄装置に供給される給水圧(給水流量)を検知することができる。前記第一検知手段により水圧、または水量の検知した値に応じて、前記加熱手段の加熱出力を調整し、逸早く、人体局部洗浄に移行するかつ、人体局部洗浄時には最適な温水温度、洗浄流量を提供することのできる温水洗浄装置を提供することができる。
【0008】
第2の発明は前記第一検知手段は、前記給水手段により洗浄水が供給開始されてから、前記給水手段により供給された洗浄水の水圧、または流量が安定するまでの時間を測定することができることを特徴とする。
【0009】
前記給水手段により供給された洗浄水の水圧、または流量が安定するまでの時間を測定することができれば、前記給水手段により給水された洗浄水の水圧、または水量が安定した時の水圧、または水量を、前期第一検知手段で検知した値に応じて、前記加熱手段の加熱出力を調整することにより、逸早く、人体局部洗浄に移行するかつ、人体局部洗浄時には最適な温水温度、洗浄流量を提供することのできる温水洗浄装置を提供することができる。
【0010】
第3の発明は、前記第一検知手段により、検知された洗浄水の水圧、または流量が一定値を下回る場合は、前記加熱手段の加熱出力を一定値より下げることを特徴とする。
【0011】
前記第一検知手段により、検知された洗浄水の水圧、または流量が一定値を下回る場合は、前記加熱手段の加熱出力を一定値より下げることができれば、前期給水手段により供給される洗浄水を、前期加熱手段にて加熱する時に加熱しすぎることがなくなり、前期第2検知手段により検知する温度が安定することで、逸早く、人体局部洗浄に移行するかつ、人体局部洗浄時には最適な温水温度、洗浄流量を提供することのできる温水洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかる温水洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
【図2】本実施形態にかかる温水洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
【図3】本実施形態にかかる温水洗浄装置の動作の全概要を例示するタイムチャートである。
【図4】本実施形態にかかる給水圧判定の詳細を例示するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる温水洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
【0014】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた温水洗浄装置100と、を備える。温水洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0015】
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などの人体局部洗浄を実現する人体局部洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えばリモコンなどの人体局部洗浄機能、温水温度、洗浄流量の設定手段464を操作すると、ノズル手段473を便器800のボウル801内に伸出させることができる。なお、図1に表した温水洗浄装置100では、ノズル手段473がボウル801内に伸出した状態を表している。
【0016】
ノズル手段473の先端部には、ひとつあるいは複数の吐水口474が設けられている。そして、ノズル手段473は、その先端部に設けられた吐水口474から洗浄水を噴出して、便座200に座った使用者の局部を洗浄することができる。
【0017】
図2は、本実施形態にかかる温水洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
本実施形態にかかる温水洗浄装置100は、水道や貯水タンクなどの水道端末(給水源)466から供給された洗浄水を導く流路463を有する。流路463の上流側には、電磁弁467a、調圧弁467b、入水温度検知手段467cが設けられている。電磁弁467aは、開閉可能な電磁バルブであり、制御手段465からの指令に基づいて開閉弁する。調圧弁467bは水道端末(給水源)より供給される洗浄水の水圧を減圧させ、温水洗浄装置100の仕様の水圧に調節する。入水温度検知手段467cは、水道端末(給水源)466から供給される洗浄水の温度(水温)を検知する。給水手段は、電磁弁467aと調圧弁467bと入水温度検知手段467cから構成されており、ノズル手段473に向けて洗浄水を供給する。
【0018】
電磁弁467aの下流側には、加熱手段468が設けられている。加熱手段468は、供給された水を加熱し所定の温水にする。なお、加熱手段468は、瞬間的に洗浄水を加熱することができる。
【0019】
加熱手段468の加熱出力調整は、加熱手段468を通過した洗浄水の水圧、または、流量を検知する第一検知手段469と、加熱手段468を通過した洗浄水の温度を検知する第二検知手段470と、人体局部洗浄前のプレ洗浄中に、第一検知手段469により検知した水圧、または水量の値と、第二検知手段470により検知した温度と、に応じて、加熱手段468の加熱出力を調整する。
この説明は後に詳述する。
【0020】
加熱手段468の下流側には、脈動発生装置471が設けられている。この脈動発生装置471は、流路463内の水の流れに脈動を与え、ノズル手段473の吐水口474から噴出される水に脈動を与えることができる。
脈動発生装置471の下流側には、ノズル手段473が設けられている。ノズル手段473は、温水洗浄装置100の使用者の設定手段464の操作における設定を制御手段465からの指令に基づいて、人体局部洗浄機能、洗浄流量の調整が流量調整手段472によって行われた洗浄水が吐水口474より噴出する。
【0021】
次に、本実施形態にかかる温水洗浄装置100の動作の全概要について説明する。
図3は、本実施形態にかかる温水洗浄装置100の動作の全概要を例示するタイムチャートである。
図1、図2、図3を参照しつつ説明する。
着座検知センサ404が使用者の着座を検知すると、制御手段465が指令を受けて、電磁弁467aが開弁し、前回使用後のノズル手段等における残水を排出させ、使用者の人体局部洗浄前の温水準備動作へ移行する。この時、第一検知手段469がある一定値を検知した後、加熱手段468が加熱を開始する。また、この時、第一検知手段469において、給水手段467より流れてくる洗浄水の水圧、または水量を判定する(給水圧判定)。
温水準備動作後、一度電磁弁467aは閉弁し、使用者が用を足している間に、温水準備動作中に加熱手段468で加熱された洗浄水を冷めさせないよう保温動作へ移行する。
【0022】
続いて、リモコンなどの設定手段464より、局部洗浄開始の実行を制御手段465が指令を受けて、再度、電磁弁467aを開弁する。その後、使用者が設定している噴出温度を逸早く提供するために、ノズル手段473までの流路を加熱する目的で給水手段467より供給される洗浄水を加熱手段468にて加熱しながら流路を暖める前洗浄へと移行する。この温水準備動作と前洗浄によりプレ洗浄が構成されている。前洗浄中に加熱手段468により加熱された洗浄水温度がある一定温度で安定したことを第二検知手段470により検知された後(ノズル伸出開始決定判定)、ノズル手段473が伸出し始め、ノズル手段外部を洗浄する胴体洗浄を実施しながら、人体局部を洗浄する本洗浄へと移行し、使用者が設定手段464にて設定した位置までノズル手段473が伸出した後、人体局部洗浄を開始する。
【0023】
リモコンなどの設定手段464より、局部洗浄開始の停止を制御手段465が指令を受けて、胴体洗浄へ移行し、ノズル手段473を収納し始める。その後、人体局部洗浄後の汚れを落とす後洗浄へ移行し、一定時間経過後、電磁弁467aを閉弁して、再度待機状態となる。ただし、待機状態においても、第二検知手段470がある一定温度以下を検知した場合、加熱手段468はONとなり、第二検知手段が一定温度昇音を検知するまで加熱する。
その他は、前述と同様の動作を繰り返す。
【0024】
次に、本実施形態にかかる給水圧判定の方法を説明する。
図4は、本実施形態の給水圧判定の詳細を例示するタイムチャートである。
電磁弁467aの開弁と同時に第一検知手段469が給水手段467より供給される洗浄水の水圧、または、水量を検知し始める。水道端末(給水源)466から供給される給水圧の違いで、給水手段467下流の洗浄水の水圧、または流量が安定する時間は差が生じる。
【0025】
具体例として、水道端末(給水源)466から供給される給水圧が0.2MPaの時、調圧弁467bが温水洗浄装置100に適した水圧に調節して、給水手段467の下流側の洗浄水の水圧、または水量が0.13MPa(430cc/min)にて流れるとする(通常給水圧)。また、調圧弁467bにより減圧効果のない給水圧0.05MPaの時、給水手段467の下流側の洗浄水の水圧、または水量が0.05MPa(270cc/min)にて流れるとする(低給水圧)。この時、洗浄水の水圧、または水量が安定するまでの時間を、通常給水圧時をt1とし、低給水圧時をt2とすると、t1=0.5秒に対して、t2=1.0秒要するような時間差が生じる。
【0026】
ここでの洗浄水の水圧(水量)は、調圧弁467bの形態や温水洗浄装置100の設置形態等において決まる値であり、洗浄水の水圧、または水量が安定するまでの時間は、第一検知手段469の形態で決まる値であり、例に限定されないものとする。
前述の洗浄水の水圧、または水量が安定するまでの時間を第一検知手段469にて測定する。前述の安定時間測定は、洗浄水の水圧、または、水量の瞬間値(移動平均値)を第一検知手段469で検知する、または、通常給水圧時の安定時間を正として、低給水圧時の安定時間との差分から判定しても良いものとする。
【0027】
前述の安定時間の違いにおいて(t1=0.5秒、t2=1.0秒)、給水手段467より供給される洗浄水の水圧、または水量を判定し、制御手段465が前洗浄における加熱手段468の加熱出力を、給水手段より供給される洗浄水の水圧、または流量に応じて補正した加熱出力にて洗浄水を加熱するものとする。(補正出力)
【0028】
前述の具体例を踏まえて説明する。
通常給水圧時、0.13MPa(430ml/min)で加熱手段468の加熱出力が1200W要したとすると、低給水圧時には、0.05MPa(270ml/min)で750W要する。低給水圧時の加熱手段468の加熱出力は、洗浄水の水圧(水量)比にて算出されるものである。
ここで、加熱手段468の出力(1200W)は、記載しない加熱手段の抵抗、電圧などによって決まる値であり、例に限定されないものとする。
【0029】
前述の補正出力により、本実施形態は、特に、水道端末(給水源)466から供給される給水圧が低い場合において、750W要する洗浄水の水圧、または水量に対して、1200Wにて加熱することなく、加熱手段468が加熱しすぎることがなくなる。
これにより、第2検知手段470にて検知する温度が安定することで、逸早く、ノズル手段473伸出開始決定判定をすることができ、人体局部洗浄に移行するかつ、人体局部洗浄時には最適な温水温度、洗浄流量を提供することのできる温水洗浄装置を提供することができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらも記述に限定されるものではない。前述の実施形態に関して、当業者が適宣設計変更を加えたもの、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、温水洗浄装置100の設置形態などは、例示したものに限定されるわけでなく適宣変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0031】
100 温水洗浄装置、 200 便座、 300 便蓋、 400 ケーシング、
401 ケースプレート、 402 ケースカバー、 404 着座検知センサ、
464 設定手段、 465 制御手段、 466 水道端末(給水源)、
467 給水手段、 467a 電磁弁、 467b調圧弁、 467c入水温度検知手段
468 加熱手段、 469 第一検知手段、 470 第二検知手段、
471 脈動発生装置、 472 流量調整手段、 473 ノズル手段、 474 吐水口800 便器、 801 ボウル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を人体局部に噴出するノズル手段と、前記ノズル手段に向けて洗浄水を供給する給水手段と、供給された洗浄水を加温する加熱手段と、前記加熱手段を通過した洗浄水の水圧、または、流量を検知する第一検知手段と、前記加熱手段を通過した洗浄水の温度を検知する第二検知手段と、
人体局部洗浄前のプレ洗浄中に、前記第一検知手段により検知した水圧、または水量の値と、前記第二検知手段により検知した温度と、に応じて、前記加熱手段の加熱出力を調整することを特徴とする温水洗浄装置。
【請求項2】
前記第一検知手段は、前記給水手段により洗浄水が供給開始されてから、前記給水手段により供給された洗浄水の水圧、または流量が安定するまでの時間を測定することを特徴とする、請求項1記載の温水洗浄装置。
【請求項3】
前記第一検知手段により、検知された洗浄水の水圧、または流量が一定値を下回る場合は、前記加熱手段の加熱出力を一定値より下げることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の温水洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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