説明

温水熱源機

【課題】省スペースで容易にタンクと配管接続が可能で、接続部からの循環液漏れ等がなく、濾過器の清掃性を向上させた温水熱源機を提供する。
【解決手段】循環液を貯えるタンクをタンク本体21とタンク蓋31から構成し、タンク本体21に接続される温水利用側端末からの戻り配管5および温水利用側端末への温水供給配管から分岐されるバイパス配管6について、それらの配管の頂部を∩型の形状とし、∩型の曲部を上面が開放されたタンク本体21の上端に備えたU型形状の開口部に引掛け嵌合により接続し、タンク本体21とタンク蓋31で挟み込んで固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水を生成してそれを利用端末に供給する温水熱源機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
暖房用等の温水を生成する温水熱源機には、循環液を加熱する熱交換器、循環液を端末放熱器に搬送するためのポンプ、循環液を貯留するタンクが組み込まれている。タンクと配管の接続構造としては、ゴム等の屈曲自在な材料で製造された配管をタンクの円筒形状に突起した配管接続部に挿入し、バンドで固定する方法や金属製の配管をタンクに溶接あるいはネジで固定する方法等がある。
タンクには、温水回路中の異物を捕獲し、熱交換器やポンプへ異物が侵入することを防止するための濾過器が備えられており(例えば、特許文献1参照)、また循環液の漏れや蒸発等による水位低下を検知するための水位センサが備えられている。水位センサは通常タンク上面から挿入され固定される(例えば、特許文献2参照)。
濾過器は、円筒状の形状でタンクに備えられた循環液給水口より挿入され、清掃の際は、循環液給水口より引き出し清掃される。
【特許文献1】特開平08−285295号公報
【特許文献2】特開平03−182994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来の暖房用等の温水熱源機におけるタンクと配管の接続構造においては、接続部に加わる熱ストレスにより接続部が緩み、循環液が漏れるおそれがある。また、温水熱源機筐体内に配管接続作業のための空間が必要であり、このため装置が大型化する。また、配管接続に手数も掛かる。
さらに、濾過器が循環液給水口から抜き差しされ脱着されるため、清掃時には濾過器がタンクの給水口と接触し、捕獲した異物がタンク内部に落下する。
また、水位センサ固定部がタンク上面に設けられているため、空間効率が悪く、タンクが大型化するという問題もある。
【0004】
本発明は、上述のごとき従来の問題点を解決するためになされたものであって、省スペースで容易にタンクと配管接続が可能で、タンクと配管の接続部からの循環液漏れ等のおそれのないタンクと配管の構造による温水熱源機を得ること、並びに濾過器の清掃性を向上させ、タンクの小型化を実現した温水熱源機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、循環液を加熱する熱交換器、循環液を温水利用側端末に搬送するためのポンプ、循環液を貯留するタンクを備えた温水熱源機であって、前記タンクをタンク本体とタンク蓋から構成し、温水利用側端末からタンク本体への戻り配管を該配管の頂部を∩型の形状とし、一端に温水利用側端末との接続口を備え、且つ前記∩型の曲部を上面が開放されたタンク本体の上端に備えたU型形状の開口部に引掛け嵌合により接続し、タンク本体とタンク蓋で挟み込み固定していることを特徴とする。
また、循環液を加熱する熱交換器、循環液を温水利用側端末に搬送するためのポンプ、循環液を貯留するタンクを備えた温水熱源機であって、前記タンクをタンク本体とタンク蓋から構成し、熱交換器から温水利用側端末への温水供給配管から分岐されて前記タンクに接続されるバイパス配管を備え、該バイパス配管の頂部を∩型の形状とし、且つ前記∩型の曲部を上面が開放されたタンク本体の上端に備えたU型形状の開口部に引掛け嵌合により接続し、タンク本体とタンク蓋で挟み込み固定していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、省スペースで容易にタンクと配管接続が可能であり、しかもタンクと配管の接続部からの循環液漏れのないタンク配管構造を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図を参照しながら本発明を詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態1における温水熱源機の構成を示す模式図、図2は本実施の形態1におけるタンク部分の斜視外観図、図3は図2の外観図からタンク蓋を除いた状態を示す斜視外観図、図4は図3から配管および濾過器を除いた状態を示す斜視外観図、図5は図4のタンクの平面図である。
【0008】
本発明の実施形態に係る温水熱源機は、図1に示すように、循環液を貯留し循環液内の気体と液体を分離するためのタンク2と、循環液を加熱する熱交換器4と、循環液を熱交換器4を介して温水利用端末8に搬送するためのポンプ7とを配管で接続して、それらを温水熱源機筐体1に収めたものである。また、9は熱交換器4の出口から温水を温水利用端末8へ供給する温水供給配管、5は温水利用端末8からのタンク2への戻り側配管、6は温水供給配管9の途中からタンク2内へのバイパス配管を表している。
温水利用端末8から戻った温水は一旦タンク2に貯留され、ポンプ7により熱交換器4に搬送され、そこで加熱された後、温水供給配管9から温水利用端末8へ送られる。
【0009】
図2に示すように、タンク2は上面が開口したタンク本体21と、タンク本体21の上部に容易に脱着可能なタンク蓋31から構成される。また、タンク蓋31には循環液をタンク本体21内へ給水するための給水口32が設けられ、循環液の漏れや蒸発による水位低下を検知するための水位センサ38が取り付けられる。
また、図3に示すように、タンク本体21の内部には循環液中の異物を捕獲するための濾過器35が備えられている。なお、万が一タンク本体21内の流路で循環液中の気体が分離できなかった場合、濾過器35にて循環液中の気体は分離される。
【0010】
さらに、図4、図5に示すように、タンク本体21には往き側配管接続口22と、戻り側配管接続口23およびバイパス配管接続口24の接続口が設けられている。往き側配管接続口22はタンク本体21の下面または底面に設けられ、円筒形の突起形状を有し、循環ポンプ7の吸込側に配管接続される。戻り側配管接続口23は上面が開放されたタンク本体21の側壁面上部に設けられたU字型の開口形状であり、温水を利用する温水利用端末8からの戻り側配管が接続される。バイパス配管接続口24は戻り側配管接続口23と同様に上面が開放されたタンク本体21の側壁面上部に設けられたU字型の開口形状であり、温水供給配管9から分岐したバイパス配管6が接続される。これら戻り側配管接続口23とバイパス配管接続口24は、それらと戻り配管5又はバイパス配管6との嵌合部が、タンク本体21内に給水された循環液の水面より上部に位置するように、タンク本体21の上部に設けられている。
【0011】
実施の形態1
図6は本発明の実施の形態1で採用した戻り配管5の説明図である。図6に示されているように、戻り配管5はその頂部が∩型形状となっており、一端にタンク本体21内部に配置される吐出口を備え、他端に温水利用側端末との接続口51を備える。戻り配管5は、その∩型曲部52をタンク本体21上部の戻り側配管接続口23のU字型開口に引掛けて嵌合接続するとともに、タンク本体21とタンク蓋31により挟み込まれて固定されている。
【0012】
また、タンク本体21内部は往き側配管接続口22と戻り配管5の吐出口の間が流路仕切り壁25にて仕切られており、循環液中の気体と液体を分離するのに必要な流路距離が確保されている。上面から見た場合、戻り配管5の吐出口と往き側配管接続口22は流路仕切り壁25を中心に略対称となるように配置されている。
【0013】
実施の形態1によれば、タンク本体21と戻り配管5との接続が容易に可能となる。また、戻り配管5がタンク本体21とタンク蓋31により挟み込まれているため、タンク本体21と戻り配管5の接続部からの循環液漏れも防止される。
【0014】
実施の形態2
図7は本発明の実施の形態2で採用したバイパス配管6の説明図である。図7に示されているように、バイパス配管6も戻り配管5と同様にその頂部を∩型の形状としている。バイパス配管6の一端はタンク本体21内部に配置される吐出口となっており、その他端は接続口61を介して温水供給配管9と接続されている。バイパス配管6は、その∩型曲部62をタンク本体21の上部のバイパス配管接続口24に引掛けて嵌合接続するとともに、タンク本体21とタンク蓋31により挟み込まれて固定されている。
【0015】
実施の形態2によれば、省スペースで容易にタンクとバイパス配管6との接続が可能となり、またタンクと配管の接続部からの循環液漏れの恐れのないメンテナンス性に富む効率的な配管構造を有する温水熱源機を得ることができる。
【0016】
なお、タンク本体21内部に挿入された戻り配管5とバイパス配管6の吐出口位置は吐出流れの妨げとならいように、タンク本体21の底面からの距離と循環液水面からの距離が十分に確保されているものとする。
【0017】
実施の形態3
濾過器35は、図3〜図5に示されているように、タンク本体21に形成されたガイド溝26に沿って着脱できるようになっている。濾過器35は、図9に示されるように板状の形状で、樹脂製の濾過器枠36にメッシュ状の樹脂製の濾過器メッシュ37部分が一体成形されたものや、金属製の濾過器枠36に金網製の濾過器メッシュ37が溶接された構造からなる。従って、濾過器35は、着脱可能なタンク蓋31を取り外した後、タンク本体21のガイド26溝から容易に引き出して取り外すことができる。この濾過器35の取り外しの際には、濾過器35の枠36がタンク本体21のガイドに接触する構造となっており、メッシュ部37はタンク本体21とは直接接触しないため、濾過器35により捕獲した異物がタンク本体21内に落下することはない。
【0018】
また、図8に示されているように、タンク蓋31に備えられた給水口32は、給水口32から給水された循環液が濾過器35を通過するような位置に設けられている。これにより給水時に循環液に混入した異物の熱交換器4やポンプ7への侵入を防止できる。
これにより濾過器35のタンク本体21への着脱は容易となり、またこの濾過器35により循環液中の異物を捕獲し、熱交換器4やポンプ7への異物の侵入を防止することができる。
【0019】
実施の形態4
図5に示されているように、タンク本体21には、循環液が流れる流路と水位センサ38により水位検知が行われる水位検知部28との間を仕切る流路仕切り壁27を設けるのが好ましい。なお、流路仕切り壁27は実際に水位が検知される位置から離れた位置に切欠き27aが設けられている。このような流路仕切り壁27を採用したことで、循環液流れにより水位検知部28において循環液が波打つことが防止され、水位検知部28の循環液水位は安定する。
【0020】
また、図8に示すように、水位センサ38を固定しておく水位センサ固定部33はタンク蓋31上面より一段下がった面に設けるとともに、この一段下がった面からタンク蓋31の外縁まで排水溝34を設けている。これにより、万が一雨水等の侵入した場合も水位センサ固定部33には水が溜まらず、適正な水位検知が可能となる。
【0021】
戻り配管5およびバイパス配管6とタンク本体21との接続は上述のような構造となっており、その∩型曲部をタンク本体21に引掛けるとともに、その上からタンク蓋31を利用して挟み込み固定するため配管作業が容易となる。しかも、接続に必要なスペースが少なくて済み、温水熱源機が大型化することはない。なお、タンク本体21と配管5,6の嵌合部は、タンク本体21に給水された循環液の開放端より上部に位置させている。
これにより、熱ストレス等による配管接続部緩みから生じる配管接続部からの循環液漏れの発生を防止することができる。
【0022】
実施の形態5
ところで、戻り配管5およびバイパス配管6をタンク本体21とタンク蓋31との間に固定するに際しては、∩型の曲部52、62、特にその頂部に伸縮自在な材料で製造されたシール材53を挿入した状態で、戻り配管5やバイパス配管6をタンク本体21とタンク蓋31間に接続するのが好ましい。このようにすると、各配管5,6が密着安定して固定されるので、振動等に対しての配管の安全性を向上できるばかりでなく、接続部の密閉性も高まり、無用な循環液の蒸発を抑制できるからである。なお、シール材53としては、比較的耐熱性のよい反発弾性に優れた材料、例えば合成ゴム等で構成することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
上記本発明の実施の形態においては、暖房用等の温水熱源機を想定して記述されているが、例えば広域に対する空調用、温水プール用等の大型温水熱源機に対しても適用可能である。また、上記各実施の形態は適宜に組み合わせて採用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1における温水熱源機の構成を示す模式図である。
【図2】図1の温水熱源機を構成するタンク部分の斜視外観図である。
【図3】図2のタンクからタンク蓋を除いた状態を示す斜視外観図である。
【図4】図3のタンクから配管および濾過器を除いた状態を示す斜視外観図である。
【図5】図4の平面視外観図である。
【図6】本発明の実施の形態1における戻り側配管を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態2におけるバイパス配管を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態1〜3におけるタンク蓋の斜視外観図である。
【図9】本発明の実施の形態3における濾過器の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1:温水熱源機筐体、2:タンク、4:熱交換器、5:戻り配管、6:バイパス配管、7:ポンプ、8:温水利用端末、9:温水供給配管、21:タンク本体、22:往き側配管接続口、23:戻り側配管接続口、24:バイパス配管接続口、25:流路仕切り壁、26:ガイド溝、27:水位センサ仕切り壁、28:水位検知部、31:タンク蓋、32:給水口、33:水位センサ取付け部、34:排水溝、35:濾過器、36:濾過器枠、37:濾過器メッシュ、38:水位センサ、51:温水利用側端末との接続口、52:戻り配管の頂部、53:シール材、61:熱交換器出口配管の接続口、62:バイパス配管の頂部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環液を加熱する熱交換器、循環液を温水利用側端末に搬送するためのポンプ、循環液を貯留するタンクを備えた温水熱源機であって、
前記タンクをタンク本体とタンク蓋から構成し、
温水利用側端末からタンク本体への戻り配管を該配管の頂部を∩型の形状とし、一端に温水利用側端末との接続口を備え、且つ前記∩型の曲部を上面が開放されたタンク本体の上端に備えたU型形状の開口部に引掛け嵌合により接続し、タンク本体とタンク蓋で挟み込み固定していることを特徴とする温水熱源機。
【請求項2】
循環液を加熱する熱交換器、循環液を温水利用側端末に搬送するためのポンプ、循環液を貯留するタンクを備えた温水熱源機であって、
前記タンクをタンク本体とタンク蓋から構成し、
熱交換器から温水利用側端末への温水供給配管から分岐されて前記タンクに接続されるバイパス配管を備え、該バイパス配管の頂部を∩型の形状とし、且つ前記∩型の曲部を上面が開放されたタンク本体の上端に備えたU型形状の開口部に引掛け嵌合により接続し、タンク本体とタンク蓋で挟み込み固定していることを特徴とする温水熱源機。
【請求項3】
循環液を加熱する熱交換器、循環液を温水利用側端末に搬送するためのポンプ、循環液を貯留するタンクを備えた温水熱源機であって、
前記タンクをタンク本体とタンク蓋から構成し、
前記タンク本体はその内部に濾過器を着脱自在に装着するガイド溝を、前記タンク蓋は循環液の給水口をそれぞれ備え、
前記濾過器は異物を除去するためのメッシュ部とメッシュ部の周囲を囲う枠からなる板状の形状になっており、且つタンク本体とタンク蓋を嵌合させた状態でタンク蓋の上面中央部分に設けられた前記給水口とタンク本体のコーナー部に設けられた往き配管接続口の間にくるように配置されていることを特徴とする温水熱源機。
【請求項4】
循環液を加熱する熱交換器、循環液を温水利用側端末に搬送するためのポンプ、濾過器、循環液を貯留するタンクを備えた温水熱源機であって、
前記タンクをタンク本体とタンク蓋から構成し、
前記タンク蓋は、タンク内の循環液量を検知する水位センサを取り付けるための水位センサ固定部を有し、該水位センサは流路と仕切壁で仕切った形で、タンク蓋の上面より一段下がった面に取り付けられており、前記タンク蓋の一段下がった面からタンク蓋外縁まで水抜き用の流路が形成されていることを特徴とする温水熱源機。
【請求項5】
タンク本体とタンク蓋の間の配管挟み部にシール材を配設したことを特徴とする請求項1または2に記載の温水熱源機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−226648(P2006−226648A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43617(P2005−43617)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】