説明

温浴式堀りコタツ

【課題】従来の電熱加熱式コタツより遙に低温で加熱して暖房効果(温浴の如き感じ)のある堀りコタツを提供する。
【解決手段】炉箱3の底板部5上に熱可塑性樹脂製の底部面状ヒーター7と蓄熱材8を積層配置すると共に、前記炉箱3の側壁部4に熱可塑性樹脂製の側壁面状ヒーター7aを設け、前記両面状ヒーターは50℃以下の温度で発熱するように温度制御されることを特徴とする温浴式堀りコタツ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電熱加熱による温浴式堀りコタツに関し、低温の加熱でありながら身体への熱を輻射熱エネルギーを主体として伝導することによって温浴に類似した加熱効果を与える電熱式の堀りコタツを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
木炭を使用するコタツは、現代においては木炭の確保や発熱量の調節が困難である上に燃焼ガスの発生の危険や火傷や火災の危険性があるなど、安全性に大きな問題がある。一方、発熱灯式のものは点灯・消灯、発熱量の調節が容易であると共に清潔かつ安全であり、このような特性は電熱式のものにも共通している。
【0003】
本格的で固定式なコタツとして堀りコタツがあるが、現在ではこのコタツは温泉地の旅館や寒冷地の別荘や高級料亭など落ちついた雰囲気を楽しむ場所の建造物における局部暖房手段として人気がある。しかし、この堀りコタツは、例えば、旅館のように女中さんなど火元の世話をする人がいる場合には使用する価値がある。しかし、通常は火元の世話人がいないので、炭火に代わって電熱式のものが使用される場合が多い。
【0004】
電気加熱式堀りコタツについては下記のように各種のものが提案されている。
【0005】
1)堀りコタツの底部にシーズヒーターとその周囲に蓄熱プレートを配置したものを使用して深夜電力料金時間帯の安価な電力により蓄熱して昼間時に放熱させる蓄熱型の堀りコタツが特許文献1に記載されている(蓄熱・対流伝熱型)。
【0006】
2)堀りコタツの使用時に使用者の脚部を任意の角度で保持して脚部を直接温めるように内部に電熱ヒーターを組み込んだ脚載せ台を使用した、脚直接加熱型の堀りコタツが特許文献2に記載されている(脚部接触伝熱型)。
【0007】
3)炉箱の底面、内側面の略全面に加熱部を設けると共に、炉箱の上方に配置される座卓の天板部の下面に至るまで加熱部を設けて加熱能力を高くした全面加熱型の堀りコタツが特許文献3に記載されている(全面加熱型)。
【0008】
4)部屋の床面より一段下方に、堀りコタツとその周囲にめぐらせた腰掛け部を形成し、更に、この腰掛け部の背当部に発熱体を配置した背当部加熱型の堀りコタツが特許文献4に記載されている(腰部伝熱加熱型)。
【0009】
5)堀りコタツ本体の内底面に底用面状ヒーターを設けると共に内側面にも側用面状ヒーターを設け、この側用面状ヒーターの温度を底用面状ヒーターの温度より高温に設定するようにした堀りコタツが特許文献5に記載されている(脚部高温加熱型)。
【特許文献1】特開平6−265160号公報
【特許文献2】特開平7−113524号公報
【特許文献3】特開平9−79580号公報
【特許文献4】特開平9−229378号公報
【特許文献5】特許第3206352号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(特許文献に記載された発明の評価)
特許文献1には、堀りコタツ用暖房装置の構造が記載されており、暖房装置の主体部を構成する蓄熱プレートに酸化マグネシウムを内蔵させたものを4個集合させて蓄熱プレートの集合体を形成し、その中央部に形成されている凹部にシーズヒータを内蔵させて発熱部を形成している。そしてこの発熱部を断熱板を使用した箱体の内部に収容し、その底板上に蓄熱プレートを支持し、その底板部の下面に配列された放熱フインを介して前記箱体の底部より加熱空気をコタツ内に放出・循環させてコタツ内を加熱するようにしている。
【0011】
このコタツは、固形の蓄熱材に顕熱として蓄熱させるもので、この蓄熱プレートに充分な熱量を蓄熱するためには、大きな体積を持ったものを使用する必要があり、大型で高価な装置となる欠点がある。また、コタツ内を加熱するのに暖房装置の下方の放熱フインを介してコタツ内の空気を加熱してコタツ内に循環させて対流熱伝達する方法を採用しているので暖房効果に劣り、従って、夜間電力を使用した場合でも蓄熱量が少なく、電気代が割高とならざるを得ない。
【0012】
特許文献2には、板状の脚載せ台にヒーターを内蔵させてその上に直接、脚部を載せて温めるようにしたものであるが、この脚載せ台の熱が直接に脚部の裏側に伝達されることから脚部の表裏に大きく温度差が発生することになり、脚部の血行に支障をきたすことになり、医学的にも問題がある。
【0013】
特許文献3は、コタツの底面と周壁面、更に座卓の天板部の下面の六面に加熱部を設けたものである。このコタツは、その内部を全体的に対流伝熱や輻射伝熱により温めることができるので、たとえ掛け蒲団を用いなくもと、炉箱内の温度の均一化を図ることができる可能性がある。しかし、この堀りコタツは、座卓部分まで多数のヒーターを設ける必要があることから、電気関係の装置が複雑化して設備費が高る上に、暖房経費が高価になる欠点がある。
【0014】
特許文献4は、床面より一段下に位置するコタツ本体の周囲に腰掛け面と背もたれ面を形成し、この背もたれ面にも発熱体を設けたものである。しかし、この堀りコタツは大型の装置で設置面積が大幅に広くなり、一般家屋には到底設置が困難である。
【0015】
特許文献5は、コタツ本体の底面と周面に面状ヒーターを配置したものであるが、実施例に見るとヒーター線を蛇行させて配置して面状に発熱するように構成したものである。このヒーターは空気を加熱して対流を発生させたコタツ本体内を加熱するもので、従来の電気式の堀りコタツに比較すると熱効率が改良されているかも知れないが、足湯のような温浴効果、つまり、低温でありながら脚部を緩やかに、心地よく加熱し、この加熱を身体全体に行き渡らせるような加熱方法や暖房効果については記載されていない。
【0016】
(堀りコタツの暖房温度)
前記のように、堀りコタツには炉箱の底部に電熱ヒーターを設けたもの、あるいは座卓の天板の裏面に電熱ヒーターを設けたもの、あるいは炉箱の底部と座卓の天板部の裏面の両方にに電熱ヒーターを設けたものが一般的である。しかもこれに使用される熱源としてニクロム線のヒーターあるいは発熱灯が使用されている。
【0017】
そしてこれらの電熱ヒーターや発熱灯などのヒーターを熱源とする発熱温度は一般に、135℃〜150℃程度の高温に発熱しており、そのために炉箱や座卓などの受熱面が常時高温で焼損したり木自体が劣化したり、コタツ部材の塗装が劣化する欠点がある。また、このような電熱ヒーターなどを使用したコタツ内の温度は70℃〜90℃程度の高温に加熱されている。従って、このコタツの中に脚部や膝部を入れて採暖すると、体温よりかなり高温の加熱空気に接触しながら輻射熱も受けて、短時間にチリチリ・ヒリヒリとするような熱い感じを受けることが多く、幼児や老人には採暖の際の注意が必要である。
【0018】
確かに、外気で冷えた体を高温のコタツ内で温める時、当初は高温の加熱空気などより急速な受熱より快い暖かさを感ずる。しかし、肌がある程度温まった時には必要以上の加熱となり、電熱ヒーターに対面する肌が局部的に昇温されて遂には暑すぎて不快感を感じることになる。
【0019】
例えば、コタツを囲んで長時間、会談する場合を想定して見ると、脚部から膝部が前記のような高温にさらされると身体が必要以上に受熱し、場合によっては下半身が火照ってもはや会談ができる状態ではなくなり、多くの場合、眠気を催してしまうことになる。
【0020】
そこで、例えば電熱ヒーターの温度を45℃程度の低温に調節した場合は、脚先から脚部を温めるのに時間がかかり、実質的に温かさを感じられない。従って、実際にこのような温度で使用される場面は少なく、通常は前記のように高温に制御しなけれぱならなかったのである。
【0021】
(新しい試み)
そこで本発明者らは、面状ヒーターの温度が50℃以下ないし40℃程度の低温、好ましくは体温に近い温度でも十分に採暖することが可能であること、更に、その低温化に応じて使用電力量も従来の堀りコタツより遙かに少なく、半分程度以下のものを得ることを目的として下記の実験を行なった。
【0022】
ア.暖かさを感ずるのは身体のどの部分か、その部分を低温でも十分に加熱できる手段 がないかどうか、従来のように高温加熱が必要かどうか
イ.低温加熱するとすれば、どの程度の低温まで温度を低下でき、果して実用化できる のか
オ.熱源よりの受熱方法として下記の要件が考えられる。
a.加熱空気を媒体とする対流伝熱、b.加熱された部分と身体との接触熱伝導、
c.輻射熱伝導の単独加熱、d.輻射熱伝導と接触熱伝導との併用。
【0023】
(低温発熱型の面状ヒーターの利用)
堀りコタツのモデル:図1、2に示すように、内面寸法(縦・横)が1200×860mm、深さが400mmの炉箱3を準備した。そして炉箱3の底板部5の上面に、幅が235mm、長さが1130mmの2枚の「低温発熱型の」底部面状ヒーター7を敷き、更に、幅が195mm、長さが1970mmの「低温発熱型の」側壁面状ヒーター7aを2枚準備し、それぞれをL形に曲げた状態で2面の側壁面に沿わせて設けた。そしてこれらの面状ヒーター7、7aを図4に示すように配線した。
【0024】
この面状ヒーター7、7aは後述するように熱可塑性樹脂を主体とし、これにカーボン微粉末を添加して成形したもので、熱可塑性樹脂を発熱させるものであるから、高温加熱には適していない。また、この例においては、底部面状ヒーター7の上面には蓄熱材8を積層せずに実験した。
【0025】
(低温発熱型の面状ヒーター7、7aについて)
低温発熱型の面状ヒーター7、7aは、本出願人の一人であるミサト株式会社が製造・販売している商品名“プラヒート”を使用した。このヒーターは、熱可塑性樹脂を主原料とするもので、ポリエチレンやポリピロピレンやナイロンなど主体とする熱可塑性樹脂にカーボン微粉末を20%程度添加してペレットを製造しておき、このペレットを押出成形機に供給してTダイより厚さが1mmのシート2枚を上下に平行して同時に成形し、そのシート両側に電極線を平行に配置しながら、軟化状態において押圧接着して連続的な帯状の面状ヒーターを製造した。
【0026】
この低温発熱型の面状ヒーター30(ヒーター7,7aの総称)は、図6及び図7に示すようにヒーター素子31の両側に電極線32、33を配置したシート状(帯状)のもので、これを耐熱性と電気絶縁性のカバー33内に収容・密封し、一端より電線35を導出して構成している。
【0027】
そしてこの面状ヒーター30は、図8に例示するように温度が上昇するにしたがって抵抗値が上昇し、40℃から50℃を越えると急激に高くなっており、温度状態と共に急速に電流を制限する、いわゆる“PTC効果”を持っている。また、この面状ヒーターはポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を原料としているので、高温発熱に適しておらず、50℃〜40℃程度の温度で発熱させるのに適している。なお、図8に示す曲線A、B、C、Dは、それぞれ30、40、50、60W/mの電気容量のものの例を示している。
【0028】
(面状ヒーターの安全性)
この面状ヒーター30は特殊な条件で製造されており、その断面において表面にカーボンの微粉末層cが薄く偏在して表面のみが導電層を薄く形成し、厚みの中間部分は殆んど電流を流さない電気絶縁性を持っている。そして通電により、ヒーター素子31の両側の電極31、32の間のヒーター部分の幅方向に電流が流れて発熱する。なお、ヒーター部分に穴を開けてもその他の部分の発熱効果には影響しない特性がある。
【0029】
このような状態において、例えば、この通電状態のヒーター部分に何らかの理由で電線の一方が触れてショートしたとすると、その電線が接触したヒーター部分の小面積でスパークが発生し、その部分が瞬時に溶融してその電線の周囲に小さな孔を形成する。この孔あき状態となると発熱層と電線との間の通電が自動的に遮断される。つまり、この低温発熱型の面状ヒーターは、万一のショート事故においても“自己電流遮断性”を持っているのである。
【0030】
(暖房効果実験)
第1の実験(コタツ全体の消費電力)
前記低温発熱型のヒーター素子を使用した底部面状面状ヒーター7と側部面状ヒーター7aは図4のように配線されているが、これらに対して100Vの電圧を給電して堀りコタツ1内の温度上昇の具合、突入電流と安定電流の変化の様子を測定した。
【0031】
室温が18℃の状態における突入電流は3.2Aであったが、5分後に2.9Aと低下し、10後に2.8Aに低下し、更に20分後に2.6Aに低下し、それ以降は安定した。従って、スイッチを投入してから20分後の堀りコタツの消費電力量は260Wであった。なお、従来のこの程度の大きさの堀りコタツの場合の消費電力は1500〜3000W程度であり、前記低温発熱型の面状ヒーターを使用した堀りコタツの消費電力は従来のものに比較すると極端に低いことが分かる。
【0032】
第2の実験(身体の加熱を感ずる場所の探索)
前記堀りコタツ1を使用し、男7人、女7人の14人が下記の実験を行い、この堀りコタツの加熱方法を評価した。
【0033】
(実験a)側壁面状ヒーター7aの通電を停止し、そして底部面状ヒーター7のみを発熱させ、これに直接、足裏部を約20分間接触させた場合の暖かさの程度を評価する。なお、前記底部面状ヒーター7の温度は45℃に制御されている。この場合のコタツ内の平均温度は35〜36℃であった(足裏・直接・熱伝導加熱)。
【0034】
(実験b)前記底部面状ヒーター7の上に、潜熱型蓄熱材を充填したシート状の蓄熱材8を載せ、この蓄熱材8が溶融した状態に加熱し、この蓄熱材8の上に直接、足裏部を約20分間、接触させた場合の暖かさを感じを評価する。この場合のコタツ内の平均温度は35〜36℃であった。この蓄熱材の溶融温度31℃、凝固温度28℃であった(足裏・蓄熱材接触加熱)。
【0035】
(実験c)側壁面状ヒーター7aと底部面状ヒーター7の両方を発熱させる。そして底部面状ヒーター7に足裏を接触させ、更に、踵(くるぶし)部を側壁面状ヒーター7aより20〜50cm程度離間した状態に保持して約20分間その状態で暖かさの感じを評価する。この場合のコタツ内の平均温度は35〜36℃であった(足裏直接熱伝導加熱と踵輻射加熱)。
【0036】
(実験d)側壁面状ヒーター7aの表面にアルミ板を配置し、このアルミ板を介してコタツ内に熱を輻射させると共に、底部面状ヒーター7にも通電して両面状ヒーター7、7aを発熱させながら、前記(実験c)と同様な姿勢で約20分間その状態で暖かさの感じを評価する。この場合のコタツ内の平均温度は35〜36℃であった。前記アルミ板は放熱板であると共に、表面の光沢により熱反射鏡の役目もした(足裏直接熱伝導加熱と踵輻射加熱)。
【0037】
(実験e)赤外線サーモグラフィ−を利用した観察
前記実験a〜dによる脚部を加熱した場合の赤外線サーモグラフィーによる温度分布状態を観察した。また、比較のために従来の高温発熱型の堀りコタツを使用して脚部を加熱し前記と同様に赤外線サーモグラフィーによる観察を行なった(参考実験)。
【0038】
その結果、実験aは足裏の温度上昇が早いが、脚部まで加熱されるのには約20分以上の時間を必要とした。実験bは実験aに比較して脚部までの加熱に時間がかかった。
【0039】
実験cは低温加熱でありながら、脚部の温度上昇がかなり早かった。更に実験dは脚部の温度上昇が早い上に、下半身への温度の上昇の伝達の早いことを確認できた。これは脚部の低温加熱、特に輻射エネルギーを使用した脚部の加熱により体温の上昇がかなり早いことも確認できた。
【0040】
また、従来の高温発熱型の堀りコタツの場合は、足部全体と脚部の表面の温度上昇が顕著であったが、コタツ内の温度がかなり高温であることから、脚部をコタツから出したりコタツ内で移動するなどの動作が必要であり、長時間の使用には問題があった。
【0041】
(実験の考察)
前記第1の消費電力の実験結果より、低温発熱型の面状ヒーターを使用した堀りコタツの場合は、従来の高温加熱型の堀りコタツに比較して、消費電力が極端に低下することが確認された。これはPTC効果を持つ熱可塑性樹脂を主原料として製造された極低温加熱の効果であることが理由である。
【0042】
前記第2の人体コタツ暖房実験より、(実験a)の足裏・直接・熱伝導加熱では、あまり暖かさを感じないか、あるいは受熱が不十分であると感じた人が多かった。
【0043】
また、(実験b)の足裏・蓄熱材接触加熱では、(実験a)の場合と同様に、あまり暖かさを感じない人か多かった。これらの実験より足裏部だけの低温加熱では、コタツの暖房として不十分であることが評価された。
【0044】
次に、(実験c)の足裏に直接熱伝導する加熱に、更に踵を輻射熱による加熱が付加された複合加熱の場合は、コタツ内の平均温度が35〜36℃で体温以下の温度(低温加熱)であるにもかかわらず、10分〜15分程度の時間の経過で発汗と、従来のコタツでは経験したこともない快適な暖房効果を感ずることができた(踝・遠赤外線加熱効果)。
【0045】
更に、(実験d)の側壁面状ヒーターと反射板とを併用した場合のコタツ暖房効果によると、10分〜15分程度の時間で発汗があり、更に、(実験c)の場合よりも従来のコタツでは未経験の、快適なコタツ暖房効果を感ずることができた。前記のようにコタツ内の温度が35、36℃程度の低温にもかかわらず、脚部全体がボワ〜ッと温かくなり、これが下半身から体全体に伝達して快適な温もりを感じた。
【0046】
そして本発明にかかるこのコタツの場合、従来のコタツと比較すると極低温の合成樹脂を主体として製造された面状ヒーターによる暖房であるにもかかわらず、コタツより出た時においても脚部の火照りが30分間程度も継続し、更に、脚部が軽くなったような感じがした(踝・遠赤外線加熱効果)。
【0047】
本発明は、前記低温加熱を利用した堀りコタツの特徴より、従来技術の問題点を解消した堀りコタツを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0048】
前記目的を達成するための本発明に係る堀りコタツは、次のように構成されている。
【0049】
1)炉箱の底板部上に熱可塑性樹脂製の底部面状ヒーターと蓄熱材を積層配置すると共に、前記炉箱の側壁部に熱可塑性樹脂製の側壁面状ヒーターを設け、前記両面状ヒーターは50℃以下の温度で発熱するように温度制御されることを特徴としている。
【0050】
2)炉箱の底板部上に熱可塑性樹脂製の底部面状ヒーターと蓄熱材を積層配置すると共に、前記炉箱の側壁部に熱可塑性樹脂製の側壁面状ヒーターを設け、この側壁面状ヒーターの表面は金属製放熱板で被覆されており、前記両面状ヒーターは50℃以下の温度で発熱するように温度制御されることを特徴としている。
【0051】
3)前記熱可塑性樹脂製の面状ヒーターは、熱可塑性樹脂とカーボンの混合体を押出成形され、PTC特性を有することを特徴としている。
【0052】
4)前記側壁面状ヒーターの表面に配置される金属製放熱板は、前記側壁面状ヒーターに近い側より酸化チタンのセラミックス層と酸化アルミのセラミックス層が二重構造に形成されていることを特徴としている。
【0053】
5)前記側壁面状ヒーターの表面を反射性のある金属製放熱板で被覆し、この放熱板を介して輻射熱エネルギーを放射すると共に、輻射熱ネエルギーを反射させて輻射熱エネルギーを炉箱内に充満させ、この炉箱内に収容された被加熱体に効率的に輻射熱エネルギーを付与して加熱するように構成したことを特徴している。
【発明の効果】
【0054】
本発明に係る堀りコタツは、熱可塑性樹脂を使用して押出成形した低温発熱型の面状ヒーターを使用し、足裏部への伝熱加熱と、踝部への輻射熱加熱と、脚部全体の遠赤外線加熱などにより、コタツ内は体温程度の、常識外の低温であるにもかかわらず、脚部への熱エネルギーの打ち込み効果があり、快適なコタツ暖房を実現することができる。
【0055】
従って、従来の100℃以上の高温加熱型の電熱式の堀りコタツのようにチリチリ・ヒリヒリするような受熱をすることがなく、長時間にわたる暖房作用を受けても、従来のような不快な感じが全くない。従って、コタツを囲んだ団欒や会合を快適に、しかも、長時間にわたって行うことが可能である。
【0056】
特に、本発明に係る堀りコタツと従来の高温発熱型の堀りコタツと比較すると赤外線サーモグラフィーによる脚部や下半身の加熱状態の観察によると、温度上昇の均一性が一段と優れていることが分かる。
【0057】
本発明においては、40℃以下、しかも35〜36℃程度の低温においても優れた加熱効果、柔らかい加熱効果を得ることができることから、これを温浴(足湯)を漬かった場合と対比して温浴式と称する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
次に、図面を参照して本発明に係る温浴式堀りコタツのの実施の形態を説明する。
【0059】
図1(A)は堀りコタツ正断面図、(B)は側壁部の別の形態を示す断面図である。
【0060】
本発明に係る堀りコタツ1は、床面2を堀り下げた凹部内に設置されるようになっており、例えば、厚さが15mmの断熱板からなる側壁部4a〜4d(4)と、同様な断熱板からなる底板部5で上部が開放された組上式箱状の炉箱3が形成されている。
【0061】
そして前記底板部5の上面に底部面状ヒーター7と、潜熱型蓄熱材を薄い板状に袋詰した蓄熱材8が敷設されて底面発熱部Hが形成され、その上に桟板9が敷設されている。なお、この桟板9は足の感触を改善するためにフエルト状の敷物9aなどに変更することもできる。
【0062】
前記発熱部Hの上方に設けられている側壁部4の内面に凹部11が形成され、その中に側壁面状ヒーター7aを含む側壁発熱部Haが設けられている。図1(B)は、側壁発熱部Haの一例を示す断面図であって、側壁部4cに形成された凹部11の表面に絶縁シートないし植毛布やカーペットなどの表面処理シート12が貼られている。そして前記凹部11内に側壁面状ヒーター7aを嵌入し、この上にアルミ板(金属板製反射板、表面は鏡のように光沢があるのが良い)からなる放熱板13が設けられている。この放熱板13は、側部面状ヒーター7aを支持すると共に、このヒーターより発する熱量を放射エネルギーに変換する性質を持っているものである。
【0063】
前記面状発ヒーター7、7aは前記ミサト株式会社が製造している商品名“プラヒート”を基本構造として設計したもので、熱可塑性樹脂とカーボンとの混合体を押出成形した低温発熱型でありながら遠赤外線の輻射効果の大きいものを使用している。
【0064】
そして蓄熱体としては、例えば、特許第2929418号に記載されている「水と無水硫酸ナトリウムと硫酸カルシウム2水塩と、ホウ酸ナトリウム10水塩と、水ガラスと塩酸とを配合してなり、硫酸カルシウム2水塩の配合量が0.1〜2.9重量%であり、硫酸の配合量が35%塩酸に換算して0.1〜10重量%である蓄熱組成物」を使用することができる。
【0065】
図2は、側壁部4aに面状ヒーターを収容する凹部を形成しない実施例を示すもので、側壁面状ヒーター7aをアルミ板からなる放熱板13で覆って固定している。この放熱板13の裏面は前記ヒーター7aに対面するが、この受熱面に図2(B)に示すように酸化チタンからなるセラミックス層13b/酸化アルミからなるセラミックス層13aを二重に積層して熱の移動を円滑に行うためのセラミックス層を形成している。
【0066】
なお、このセラミックス層を二層にすることや、その層の順序については本発明の長年の実験によって得られたもので、その層の積層順序には一定の法則がある。即ち、放射線の強度と波長の分布図において、最大強度に対応する波長の短い性質のセラミックス層を受熱面側(熱源側)に、前記波長より長い波長の性質を持つセラミックス層を放熱板の表面側に配置することになる。この順序でセラミックス層を積層すると、放熱板を有しない面状ヒーターからの放熱よりも、放熱量がかなり増加(約10〜20%程度)すると言う知見がある。
【0067】
底部面状ヒーター7と側壁面状ヒーター7aの配置の例としては、図3に示すように底板5上に2枚並列し、側壁部4a〜4dの内面には2枚の面状ヒーター7aをL形に曲げた状態で凹部11内に配置している。従って、底板部5の上面に2枚の面状ヒーター7と側壁部4a〜4dの内面に2枚の面状ヒーター7aを使用している。
【0068】
本発明においては、図2(A)に示すように底板部5上に敷設した面状ヒーター7の上面に薄板状の蓄熱材8が敷設されている関係で、面状ヒーター7の発熱は蓄熱材8を介して堀りコタツ1内に放熱される。一方、側壁部4a〜4dの内面に設けられた面状ヒーター7aは、図1(B),図2(A)に示すようにアルミ板製の放熱板13を介してコタツ1内に効率的に熱放射するようになっている。
【0069】
図4に堀りコタツの配線図を示しており、制御装置15に対して2枚の底面発熱ヒーター7と、2枚の側壁面状ヒーター7aの電極に接続された電線16、16aが接続されている。図示していないが、各面状発熱ヒーター7、7aには温度ヒューズと温度センサーが接続されて所定の温度、つまり、45〜50℃の低温で発熱するようになっている。
【0070】
図5は堀りコタツ1の1例を示す側断面図であって、床面2を切り込んで形成された穴部に断熱箱18を支し、この断熱箱18内に前記構成の炉箱3を収容して支持し、この状態で炉箱3内に設けられたヒーター類を図4に示すように配線している。そしてこのコタツ1の上方に座卓19を設け、更にこの座卓19の上面を蒲団や毛布で覆っている。
【0071】
前記構造の堀りコタツ1を使用する場合は、底部面状ヒーター7と側壁面状ヒーター7aの両方に通電して底部面状ヒーター7よりの熱を蓄熱材8を経由して炉箱3内に熱伝導する。そして側壁面状ヒーター7aよりの熱の一部は放熱板13をを経由して炉箱3内に低温の遠赤外線として熱放射され、残部はコタツ1の内部の空気に対して対流熱伝導することになる。
【0072】
そして人がこのコタツ1の炉箱3の周囲に置かれた座蒲団などに座わり、脚部を炉箱3内に延ばして採暖することになるが、足裏は蓄熱材8の上のカーペット等の上にに載置されて接触熱伝導を受ける。そして踵部は側壁面状ヒーター7aより離れた位置に対面して輻射熱伝導を受け、更にコタツ1内の加熱された空気と接触して脚部や下半身が暖房されることになる。
【0073】
前記のように、このタコツ内は35〜36℃程度の、従来の電熱式の堀りコタツと比較して常識外の低温発熱を採用しているので、コタツの使用者がコタツに入った当初は何ら加熱感を感じない。場合によってはスイッチが入れられてないように感ずる人もいた。しかし、15分程度の暖房で前記のような優れた暖房効果が得られ、からだ全体に柔らかい暖かさが与えられ、脚部より下半身が快く暖まり、次第に汗ばむ様子を感じることができる。
【0074】
なお、極低温発熱による堀りコタツは前例がなく、その快適さを具体的に説明することは困難であるが、例えば、幼児をこのコタツの中に体の一部を入れた状態で睡眠させても低温火傷をしたり、皮膚に異常な乾燥があった等の何らの問題がないことは驚きである。
【0075】
本発明に係る堀りコタツの脚部の暖房効果は、「足湯」に浸って加熱されたような感じに類似している。また、念のために赤外線サーモグラフィーで温度分布を測定して見ると、従来のコタツに比較して低温であるにもかかわらず、脚部の温度の均一性と体全体への熱流の循環効果は一段と顕著であった。
【0076】
また、本発明に使用した面状ヒーターは、本質的に省電力であることから、従来の電気加熱式堀りコタツに比較して電気料金を半分ないし1/3程度に逓減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】(A)は、本発明の実施の形態に係る堀りコタツの断面図、(B)は、側壁部の断面図である。
【図2】(A)は、堀りコタツの要部の詳細図、(B)は放熱板の断面図である。
【図3】炉箱内の面状ヒーターの配置の説明図である。
【図4】炉箱内の面状ヒーターの配線図である。
【図5】堀りコタツの全体を示す断面図である。
【図6】低温発熱型の面状ヒーターの説明用斜視図である。
【図7】低温発熱型の面状ヒーターの説明用平面図である。
【図8】面状ヒーターのPTC効果の説明用グラフである。
【符号の説明】
【0078】
1 コタツ 2 床面 3 炉箱 5 底板部
7 底部面状ヒーター 7a 側壁面状ヒーター 8 蓄熱材
9 桟板(あるいはカーペット) 11 凹部
12 表面処理シート 13 放熱板(アルミ板)
13a 酸化チタンセラミックス層 13b 酸化アミルセラミックス層
15 制御装置 16,16a 電線
18 断熱箱 19 座卓
30 面状ヒーター 31 ヒーター素子
H 発熱部 Ha 側面発熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉箱の底板部上に熱可塑性樹脂製の底部面状ヒーターと蓄熱材を積層配置すると共に、前記炉箱の側壁部に熱可塑性樹脂製の側壁面状ヒーターを設け、前記両面状ヒーターは50℃以下の温度で発熱するように温度制御されることを特徴とする温浴式堀りコタツ。
【請求項2】
炉箱の底板部上に熱可塑性樹脂製の底部面状ヒーターと蓄熱材を積層配置すると共に、前記炉箱の側壁部に熱可塑性樹脂製の側壁面状ヒーターを設け、この側壁面状ヒーターの表面は金属製放熱板で被覆されており、前記両面状ヒーターは50℃以下の温度で発熱するように温度制御されることを特徴とする温浴式堀りコタツ。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂製の面状ヒーターは、熱可塑性樹脂とカーボンの混合体を押出成形され、PTC特性を有することを特徴とする請求項1あるいは2記載の温浴式堀りコタツ。
【請求項4】
前記側壁面状ヒーターの表面に配置される金属製放熱板は、前記側壁面状ヒーターに近い側より酸化チタンのセラミックス層と酸化アルミのセラミックス層が二重構造に形成されていることを特徴とする請求項2ないし3の何れかに記載の温浴式堀りコタツ。
【請求項5】
前記底部面状ヒーターは底板部の上面に複数枚が並列して配置され、また、前記側壁部には面状ヒーターをL型に曲げた状態で2枚が対向して設けられていることを特徴とする請求項1ないか4の何れかに記載の温浴式堀りコタツ。
【請求項6】
前記炉箱の側壁面に面状ヒーターを収容できる深さと幅の凹部が形成されており、この凹部に側壁面状ヒーターが収容され、その側壁面ヒーターの表面が金属製放熱板で被覆されていることを特徴とする請求項2ないし5の何れかに記載の温浴式堀りコタツ。
【請求項7】
炉箱の底板部上に熱可塑性樹脂製の底部面状ヒーターと蓄熱材を積層配置すると共に前記炉箱の側壁部周面に熱可塑性樹脂製の側壁面状ヒーター配置しており、両ヒーターの発熱温度は50℃以下に制御される堀りコタツにおいて、更に、前記側壁面状ヒーターは低温の輻射熱エネルギーを主体として炉箱内に輻射し、この輻射熱エネルギーが主体となって脚の踝部を加熱して足湯効果を与えるように構成されていることを特徴とする請求項1あるいは2記載の温浴式堀りコタツ。
【請求項8】
前記側壁面状ヒーターの表面を反射性のある金属製放熱板で被覆し、この放熱板を介して輻射熱エネルギーを放射すると共に、輻射熱ネエルギーを反射させて輻射熱エネルギーを炉箱内に充満させ、この炉箱内に収容された被加熱体に効率的に輻射熱エネルギーを付与して加熱するように構成したことを特徴とする請求項7記載の温浴式堀りコタツ。
【請求項9】
前記放熱板表面に種類の異なる下層セラミックス層と、この下層のセラミックス層の上に形成された上層セラミックス層からなる二重のセラミックス層が形成されており、
前記セラミックス層は、放射エネルギー/放射線の波長曲線上に描かれた分布曲線におけるピーク値に対応する波長が短い方を上層セラミックス層とし、それより長い波長の方を下層セラミックス層としていることを特徴とする請求項8期待の温浴式堀りコタツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−32891(P2007−32891A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214608(P2005−214608)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000114064)ミサト株式会社 (15)
【出願人】(501195625)住友林業クレスト株式会社 (43)
【Fターム(参考)】