説明

温調配管付きアダプタプレートを備えた射出成形機

【課題】型盤に金型を取付ける際に用いられるアダプタと型盤との結合領域が前記金型のアダプタへの取付け面より小さい面積とし、かつ、少なくとも前記結合領域内に温度調節用媒体の配管を設けることによって、金型の熱が型盤に伝達する箇所である結合領域内を温度調節することができ、これによって、金型の温度分布を均一にすることができる射出成形機を提供すること。
【解決手段】型盤(固定盤11,可動盤12)に金型(31a,31b)を取付けるためのアダプタプレート30(30a,30b)を有する射出成形機において、アダプタプレート30は、前記型盤に取付ける面と前記金型に取付ける面を有し、前記型盤に取付ける面に前記金型の取付け面の面積より小さい面積の結合部32(32a,32b)を有し、少なくとも前記結合部32が備わった領域に対応する前記アダプタプレート30内に配管33を有する射出成形機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温調配管付きアダプタプレートを備えた射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ成形などの精密成形においては金型の僅かなズレが成形品へ影響を及ぼす。そのため型開閉の動作を高精度に行う必要がある。型開閉の精度については固定盤と可動盤の平行度と位置のずれ(偏芯)が成形品に影響を及ぼす。これらの精度を悪化させる原因として成形機の熱変形が挙げられる。レンズなどの精密成形では金型温度を80〜130℃にして成形が行われることがある。その際、金型の温度が盤面に伝わり、さらには型締機構部へ伝わり、盤面の平行度を悪化させる原因となっている。そこで、射出成形機の型締部が金型の熱の影響を受けないようにする必要がある。特許文献1や特許文献2には、射出成形機の型締部が金型の影響を受けないようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−266478号公報
【特許文献2】特開平9−29747号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定盤や可動盤の下側はベースフレームに結合あるいはベースフレームと接触している場合が多く、熱が逃げやすく、盤面の上下方向で温度差が大きくなってしまう。また、特許文献1に開示されるように、センサをつけて固定盤の傾きを検出し、傾きを補正するよう制御する方法もあるがセンサなどが必要となり高価なシステムになってしまう。また、盤面に直接加工が必要なため、既に組立が完了している機械に適用するには非常に困難である。また特許文献2に開示された技術では、脱着自在な断熱ユニットが知られているが、この断熱ユニットは盤面の全面に密着しているため盤面への接触面積が大きい。そのため、熱の伝わりを防ぐには、断熱ユニットの冷却に大きなエネルギが必要となる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、型盤に金型を取付ける際に用いられるアダプタと型盤との結合領域が前記金型のアダプタへの取付け面より小さい面積とし、かつ、少なくとも前記結合領域内に温度調節用媒体の配管を設けることによって、金型の熱が型盤に伝達する箇所である結合領域内を温度調節することができ、これによって、金型の温度分布を均一にすることができる射出成形機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1に係る発明は、型盤に金型を取付けるためのアダプタプレートを有する射出成形機において、前記アダプタプレートは、前記型盤に取付ける面と前記金型に取付ける面を有し、前記型盤に取付ける面に前記金型の取付け面の面積より小さい面積の結合部を有し、少なくとも前記結合部が備わった領域に対応する前記アダプタプレート内に配管を有することを特徴とするアダプタプレートを有する射出成形機である。
請求項2に係る発明は、型盤に金型を取付けるためのアダプタプレートを有する射出成形機において、前記アダプタプレートは、前記型盤に取付ける面と前記金型に取付ける面を有し、前記アダプタプレートは、前記型盤に取付ける面に前記金型の取付け面の面積より小さいシムを介して該型盤に取付けられ、前記アダプタは、少なくとも前記シムが接する該アダプタプレートの領域内に配管を有することを特徴とするアダプタプレートを有する射出成形機である。
請求項3に係る発明は、前記型盤の結合部周辺に配管を形成したことを特徴とする請求項1または2のいずれか一つに記載のアダプタプレートを有する射出成形機である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、型盤に金型を取付ける際に用いられるアダプタと型盤との結合領域が前記金型のアダプタへの取付け面より小さい面積とし、かつ、少なくとも前記結合領域内に温度調節用媒体の配管を設けることによって、金型の熱が型盤に伝達する箇所である結合領域内を温度調節することができ、これによって、金型の温度分布を均一にすることができる射出成形機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態を説明する断面図である。
【図2】本発明の実施形態に用いられるアダプタプレートを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の実施形態を説明する断面図である。
射出成形機は、概略、射出装置(図示せず)と型締装置10とから構成される。射出装置は、シリンダ、シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ、このスクリュ回転方向と軸方向とに駆動する駆動部などから構成されている。射出装置のトグルリンク機構22は、機台(図示せず)上に固定されている固定盤11、固定盤11と間隔をおいて機台上に軸方向に移動自在に設けられている型締盤13、固定盤11と型締盤13との間に設けられている4本のタイバ14,14,・・、これら4本のタイバ14,14,・・・によって軸方向に案内移動される可動盤12、可動盤12を型閉じ方向あるいは型開き方向に駆動するトグルリンク機構22、このトグルリンク機構22を駆動する可動盤前後進用サーボモータ17等から構成される。
【0010】
タイバ14の一方の端部は、固定盤11の4隅の挿通孔に通され、そして固定盤11に固定されている。タイバ14の他方の端部は、型締盤13の4隅を貫通し、その外方まで延びている。そして、4つのタイバ14,14,・・・には、型締盤13に設けられた型厚調整用ナット15,15,・・・が螺合されている。なお、図1では可動盤12と型締盤13の間でタイバ14,14,が省略して記載されている。4つの型厚調整用ナット15,15,・・・は型厚調整用サーボモータ16によって回転駆動される。型厚調整用ナット15,15,・・・が回転することによって、機台(図示せず)上において型締盤13が位置調整され型締力の調整がなされる。
【0011】
型締盤13の中央部には挿通孔が形成され、この挿通孔に整合して型締盤13の外側においてボールナット25が軸方向の移動が規制された状態で回転自在に設けられている。このボールナット25にはボールネジ26が螺合している。ボールネジ26の一方の端部に従来公知のクロスヘッド23が取り付けられている。ボールナット25は、ベルト18、プーリ24を介して可動盤前後進用サーボモータ17により所定方向に回転駆動されるようになっている。したがって、可動盤前後進用サーボモータ17によりボールネジ26を所定方向に回転駆動すると、クロスヘッド23が所定方向に駆動され、可動盤12は型閉じ方向(紙面右方向)あるいは型開き方向(紙面左方向)に駆動される。
【0012】
固定盤11には、固定側金型31bが固定盤側アダプタプレート30b,結合部32bを介して取り付けられている。可動盤12には、可動側金型31aが可動盤側アダプタプレート30a,結合部32aを介して、固定側金型31bと対抗するように取り付けられている。固定盤11、可動盤12、アダプタプレート30(固定盤側アダプタプレート30b,可動盤側アダプタプレート30a)には、それらの内部に温度調節用媒体を流通する配管33,33,・・・が設けられている。なお、アダプタプレート30(固定盤側アダプタプレート30b,可動盤側アダプタプレート30a)の構成について図2を用いて後述する。なお、結合部32aと結合部32bとを総称して結合部32と称する。
【0013】
可動側金型31aと固定側金型31bのパーティング面に形成されたキャビティ内に溶融樹脂が射出される。そして、型開きの後、突き出し用ボールネジ21を駆動することによって可動側金型31a内に突き出される突き出し棒(図示せず)により可動側金型31aから成型品が突き出される。ベルト20を介して成型品突き出し用サーボモータ19の回転駆動が突き出し用ボールネジ21に伝達される。
【0014】
図2は本発明の実施形態に用いられるアダプタプレートを説明する図である。可動盤側アダプタプレート30aは、その一方の側面に可動側金型31aが取り付けられ、他方の側面に結合部32aを介して可動盤12に取り付けられる平板状部材である。固定盤側アダプタプレート30bはその一方の側面に固定側金型31bが取り付けられ、他方の側面に結合部32bを介して固定盤11に取り付けられる平板状部材である。可動盤側アダプタプレート30a,固定盤側アダプタプレート30bとも共通の構成を備えているので、図2においては可動盤側アダプタプレート30aを説明する。
【0015】
可動盤側アダプタプレート30aの可動盤12に取り付ける一方の側面の中央部に、他方の側面に取り付けられる可動側金型31aの面積より小さい面積を有する結合部32aを設ける。結合部32aは、結合部32aが設けられる可動盤側アダプタプレート30aの面を、所定の厚さ削り落とすことによって台状に形成される部位である。
【0016】
可動盤側アダプタプレート30aは、台状に形成された結合部32aを介することにより、その中央部のみで可動盤12に取り付けられることで、可動盤側アダプタプレート30aと可動盤12との接触面積が小さくなり、可動盤12は可動側金型31aからの熱の影響を受けにくくなる。加えて、当該可動盤側アダプタプレート30aは、型締力発生時の可動盤12の変形による可動側金型31aへの偏荷重の問題を改善する効果を有する。なお、可動盤側アダプタプレート30aに形成された台状の結合部32aに代えて(つまり、可動盤側アダプタプレート30aに台状の結合部32aを形成しない)、可動側金型31aからの伝熱を抑えるために可動盤側アダプタプレート30aと可動盤12の間に平板状のシムを挟んでよく、前記シムには熱伝導率が低い材質のものを使用すれば効果的である。なお、シムは結合部32aと同様に金型の取付け面より小さい面積を有する平板状の部材である。また、可動盤12への伝熱の影響を抑えるために可動盤12の結合部領域34aの周辺に配管を形成するとよい。
【0017】
可動盤側アダプタプレート30aは可動側金型31aより小さい面積の範囲で可動盤12に結合されることによって可動盤12に伝わる熱量を抑えることができるものの、その伝熱を無くすことは困難であるから、可動盤側アダプタプレート30aの可動盤12との結合部領域34aを介しての可動側金型31aから可動盤12への伝熱によって、可動側金型31aの温度分布が不均一になる可能性がある。そこで、本発明の実施形態ではさらに、結合部領域外の配管33aと結合部領域内の配管33bに示されるように、少なくとも可動盤側アダプタプレート30aと可動盤12との結合領域内のアダプタプレート30b内に配管を設けることによって、可動側金型31aの熱が可動盤12に伝達する箇所である結合部領域34a内を温度調節(温調)することができるため、これらによって、可動側金型31aの温度分布を均一にすることができる。
【0018】
なお、アダプタプレート30(可動盤側アダプタプレート30a,固定盤側アダプタプレート30b)は可動盤12或いは固定盤11の一方だけにも取付けてもよく、また、可動盤12と固定盤11の双方に取付けてもよい。
【0019】
上述したように、本発明の実施形態では、温調されたアダプタプレート(固定盤側アダプタプレート,可動盤側アダプタプレート)を型盤(固定盤11,可動盤12)の金型取り付け面全面に密着させる場合や、型盤を直接温調する場合に比べ温度上昇する面積が限られているため、型盤に伝わる熱量も抑えられるとともに、放熱する面積も大きいので、型盤の温度上昇が抑えられ、型盤の変形も抑制することができる。また、少なくともアダプタプレートと型盤の結合する領域内に配管を設けて温調することによって、金型の熱が型盤に伝達する箇所である結合領域内を温調することができ、金型の温度分布を均一にすることができる。さらに、型盤の結合領域周辺の型盤内に配管を形成して型盤への伝熱の影響を抑えることができる。
【符号の説明】
【0020】
10 型締装置
11 固定盤
12 可動盤
13 型締盤
14 タイバ
15 型厚調整用ナット
16 型厚調整用サーボモータ
17 可動盤前後進用サーボモータ
18 ベルト
19 成型品突き出し用サーボモータ
20 ベルト
21 突き出し用ボールネジ
22 トグルリンク機構
23 クロスヘッド
24 プーリ
25 ボールナット
26 ボールネジ
27 タイバ挿通孔

30 アダプタプレート
30a 可動盤側アダプタプレート
30b 固定盤側アダプタプレート

31 金型
31a 可動側金型
31b 固定側金型

32 結合部
32a 可動側結合部
32b 固定側結合部
33 配管
33a 結合部領域外の配管
33b 結合部領域内の配管
34a 結合部領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型盤に金型を取付けるためのアダプタプレートを有する射出成形機において、
前記アダプタプレートは、前記型盤に取付ける面と前記金型に取付ける面を有し、前記型盤に取付ける面に前記金型の取付け面の面積より小さい面積の結合部を有し、少なくとも前記結合部が備わった領域に対応する前記アダプタプレート内に配管を有することを特徴とするアダプタプレートを有する射出成形機。
【請求項2】
型盤に金型を取付けるためのアダプタプレートを有する射出成形機において、
前記アダプタプレートは、前記型盤に取付ける面と前記金型に取付ける面を有し、
前記アダプタプレートは、前記型盤に取付ける面に前記金型の取付け面の面積より小さいシムを介して該型盤に取付けられ、
前記アダプタプレートは、少なくとも前記シムが接する該アダプタプレートの領域内に配管を有することを特徴とするアダプタプレートを有する射出成形機。
【請求項3】
前記型盤の結合部周辺に配管を形成したことを特徴とする請求項1または2のいずれか一つに記載のアダプタプレートを有する射出成形機。

【図1】
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【図2】
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