説明

温風暖房機

【課題】 温風による誤作動をなくして確実に人体だけを認識できる、人体検出手段を備えた温風暖房機に関する。
【解決手段】 枠体1内にバーナ2と燃焼室8を備え、枠体1の前後を貫通する送風経路5に燃焼室8を配置し、対流用送風機6によって送風経路5を通過する空気流を温風に変えて吹出口7から吹出す。枠体1には付近の人の存在を検知する人体検出手段9を設け、人体検出手段9は枠体1の表面で温風の吹出方向に向けて配置した人体センサ10と、人体センサ10が人の存在を検知もしくは不検知したときにカウントを開始するタイマー手段11とを備え、タイマー手段11がカウントアップするまで人体センサ10が検知もしくは不検知状態を維持したときに人の存在・不存在を認識する。また、タイマー手段11にはバーナ2の燃焼量と連動して設定時間を変更する可変手段12を備え、燃焼量に応じて最適な時間を設定することで安定した人体検出が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温風暖房機の燃焼制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼排気を室内に排出する方式の温風暖房機では、枠体内にバーナを設け、このバーナに燃料を供給するポンプと、燃焼空気を送る燃焼用送風機を設け、ポンプから供給された燃料と、燃焼用送風機からの燃焼空気を、バーナ内で混合、気化、燃焼させることにより、暖房に必要な熱量を発生させている。
【0003】
枠体の前後を貫通する送風経路には、入口側に対流用送風機、出口側に吹出口を設け、前記バーナの上部に設けた燃焼室を送風経路に開口することにより、送風経路を通過する空気と、バーナから燃焼室内に送り込まれる排気とを混合し、対流用送風機によって吹出口から温風として枠体前面に吹き出すものである。
【0004】
また、枠体内には前記ポンプと燃焼用送風機とを制御してバーナの燃焼開始、停止、燃焼量の変更を行う燃焼制御手段を設け、枠体上の操作盤に設けられた運転スイッチの入/切信号に基づいて、バーナの燃焼開始、及び停止の制御を行っている。
【0005】
また、枠体には室内の温度を検知する室内温度検出手段、操作盤には使用者が所望の室内温度を設定することができる温度設定手段を設け、前記燃焼制御手段は室内温度検出手段によって検出された室内温度の数値と温度設定手段にて決定された設定温度の数値をもとにして、バーナの燃焼量を変化させ、室内温度を設定温度に近づけるように制御を行うものである。
【0006】
近年では、特許文献1に示すように枠体に暖房機のまわりの人体の有無を検知する人体検出手段を設け、人体検出手段が人の存在を検知しなくなった場合は、温度設定手段にて設定された設定温度の数値を、使用者があらかじめ設定した数値分を強制的に下げることにして、この減少した設定温度と室内温度との比較を燃焼制御手段によって行うことにより、バーナの燃焼量を減少する方向に変化させて、部屋に人がいない間は暖房機の燃料消費量を低減するような構造が知られている。
【特許文献1】特開2003―90624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1の発明は、人体検出手段が暖房機の周りの人体の存在を検出し、この検出結果が人の不存在であるときには、燃焼制御手段に働きかけて燃焼量を低下すると共に、その後の検出結果が人の存在に代わったときには、直ちに所定の燃焼量で燃焼が開始できるようにしたものである。
このような動作は確実に人の存在が検出されることを前提としているが、直接人の存在を高精度に検出できる人体検出手段は高価であるから、最近では検出方向から届く熱線を検出し、この熱線の強さが変化したときに人が存在していると認識する人体検出手段が安価に供給されるようになってきた。
しかし、このような安価な人体検出手段を暖房機に設置したときには、人がいなくなっても人の存在を検出し続け、人がいても不存在を検出するといった誤作動を発生させる場合があり、安価な人体検出手段を使っても、燃焼制御手段に目的通りの動作をさせたいとの要求がある
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記課題を解決するもので、枠体1内にバーナ2と、このバーナ2に燃料を供給するポンプ3と、このバーナ2に燃焼空気を送る燃焼用送風機4とを設け、該枠体1の前後を貫通する送風経路5には、入口側に対流用送風機6、出口側に吹出口7を設け、前記バーナ2の上部に設けた燃焼室8は送風経路5内に開口し、この送風経路5を通過する空気を温風にする温風暖房機において、前記枠体1には付近の人の存在を検知する人体検出手段9を設け、この人体検出手段9の検知部である人体センサ10は前記枠体1の表面で前記吹出口7から吹出す温風方向に向けて設置し、前記人体センサ10が人の存在を検知もしくは不検知したときにカウントを開始するタイマー手段11を設け、前記タイマー手段11がカウントアップするまで前記人体センサ10が人の存在の検知状態もしくは不検知状態を維持したときに、前記人体検出手段9は人の存在もしくは不存在を認識すると共に、前記タイマー手段11には設定時間の可変手段12を備え、この可変手段12は前記バーナ2の燃焼量と連動させたことを特徴とする。
【0009】
また、前記可変手段12は燃焼量が大きい場合、前記タイマー手段11の設定時間を長くしたから、温風の影響をなくして安定した人体検出が可能となった。また燃焼量が小さい場合、タイマー手段11の設定時間を短くしたから、広範囲の人体検出が可能となった。
【発明の効果】
【0010】
この発明は枠体1に設けた人体検出手段9はその人体センサ10が枠体1の前方である温風の吹出し方向に向けて取付けられており、この人体センサ10は温風の吹出し方向にいる人の存在を検出している。
そして人体検出手段9には人がいる時、または人がいなくなった時を検出した時からカウントを開始するタイマー手段11を備えており、この人体検出手段9はこのタイマー手段11がカウントアップするまで、人がいる状態や人がいなくなった状態を維持したときに始めて、人の存在・不存在を検出出力するようになっている。
一般に人体センサ10は人体から発生している熱線を検出するものであるから、人体検出手段9の検出方向が温風の吹出し方向と近似するときには、温風による誤作動の恐れがあったが、この発明のように所定時間にわたって人の存在・不存在が連続したときに、はじめてその変化を出力する構成とすることによって、人体検出手段9を温風暖房機の枠体1前面の温風吹出方向に設置したときでも、確実に人の存在・不存在が検出できるようになった。
【0011】
また、このタイマー手段11にはこの設定時間を変更できる可変手段12を備え、バーナ2の燃焼量と連動する構成としたから、室温の上昇が必要なときや、室温が上昇して安定した温度を維持するときには、暖房機を使用する空間の条件や、暖房機の使用条件に応じて任意にタイマー手段11の設定時間が可変できるから、取扱者は可変手段12を操作して実使用の条件において誤作動が発生しにくい設定時間に修正することができ、その暖房空間において何回かの使用のうちに誤作動が発生しない設定時間が見つかり、以後は安定した人体検出が可能になるものである。
【0012】
このタイマー手段11の設定時間は、実験によると吹出口7から吹出す温風が高温のときと低温のときとでは最適値が異なることがわかったものであり、基本的な可変手段12の動作としてこの発明では、燃焼量が大きなときは設定時間を長く、燃焼量が小さなときは設定時間が短くなるように作動させたものである。燃焼量が大きく大量の高温度の温風が吹出口7から吹出すときには、温風の流れからの熱線の変化がより多くなるので、設定時間を長くすることにより誤作動を回避することに有効である。また、燃焼量が小さなときは温風の流れからの熱線の変化が少ないため、設定時間を短くすることにより検知距離を出来るだけ広くすることができる。従って、このような基本動作があらかじめセットしてあれば、取扱者は可変手段12の設定時間の調整を行わないでも、確実に人体の存在・不存在が確認できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施例を示す図によってこの構成を説明すると、1は温風暖房機の枠体、2は枠体1内に配置したバーナ、13は燃焼用空気が送られる風胴、14は風胴13内に設置された有底筒形のポット、14aは風胴13から燃焼用空気が供給できるようにポット14の側壁に設けた多数の小径空気孔であり、前記バーナ2の本体は風胴13とポット14によって構成される。4はポット14に燃焼用空気を供給するための燃焼用送風機であり、燃焼用送風機4によって圧送された燃焼用空気は風胴13に送られ、小径空気孔14aの位置と大きさにより最適に制御されてポット14内に供給される。
【0014】
15はポット14に供給する燃料を貯える油タンク、3は油タンク15の上面に取付けた電磁ポンプで構成するポンプ、16はポット14とポンプ3との間に設けた燃料パイプ、17は燃料パイプ16のポット14内に伸ばした先端で構成する送油ノズルであり、前記風胴13とポット14の側壁とを貫通するようにポット14内部に伸ばした送油ノズル17から燃料がポット14の底面に供給される。
【0015】
18はポット14の側壁からポット14の底面と間隔を介して取付けた予熱兼用の点火ヒータ、19はポット14内に設置された助燃部材、8はポット14上方に配置された燃焼室であり、ポット14内に供給された燃料は、点火ヒータ18や燃焼熱で高温となっているポット14の底面で気化し、初期燃焼を開始しながら小径空気孔14aから供給される燃焼用空気と助燃部材19の働きで混合し、燃焼室8内で完全燃焼するものである。
【0016】
5は枠体1を前後に貫通して燃焼室8を取り囲むように配置された送風経路、6は送風経路5の後方に設置された対流用送風機、7は送風経路5の前方に設置された吹出口であり、前記燃焼室8は送風経路5内に開口し、その燃焼室8で完全燃焼した燃焼ガスは送風経路5に送られ、前記対流用送風機6によって取り込まれた室内空気と燃焼ガスとが送風経路5内で混合され、吹出口7より温風として排出されるものである。
【0017】
また、20は枠体1内に設置されたコンピュータシステムで構成してCPU・ROM・RAM・I/O装置などで動作させる燃焼制御手段、21は枠体1の表面に設置された操作盤、22は操作盤21に設けられた運転スイッチ、23は操作盤21と燃焼制御手段20とをつなぐリード線であり、運転スイッチ22の入/切信号はリード線23を通して燃焼制御手段20に送られ、該燃焼制御手段20は運転スイッチ22の信号に基づいてポンプ3、燃焼用送風機4、点火ヒータ18、対流用送風機6の入/切を指示し、温風暖房機の運転を制御している。
【0018】
また、24は枠体1の後方に設置された温度センサで構成する室内温度検出手段、25は操作盤21上に設けたボタンで操作されて使用者の所望する温度を記憶する温度設定手段であり、温度設定手段25に記憶されている温度数値と、室内温度検出手段24よりもたらされる現在室温の温度数値を前記燃焼制御手段20にて比較し、設定温度のほうが高い場合にはポンプ3の流量、及び燃焼用送風機4の回転数を増加することによってバーナ2の燃焼量を増加させ、室内温度のほうが高い場合にはポンプ3の流量、及び燃焼用送風機4の回転数を減少することによってバーナ2での燃焼量を減少させることにより、室内温度の数値を設定温度の数値に近づけるように制御を行うものである。
【0019】
9は前記枠体1の付近の人の存在を検知する人体検出手段であり、燃焼制御手段20が人体検出手段9から人体不検出の信号を受けると、バーナ2の燃焼量を変更したりバーナ2の燃焼を停止する信号を出力し、また、燃焼制御手段20が人体検出手段9から人体検出の信号を受けると、バーナ2の燃焼量をあらかじめ温度設定手段25で定めた燃焼量に復帰する。
【0020】
ところで、最近出回っている安価な人体検出手段は、主として人体から発生している熱線を検出して、この熱線の変化によって人の存在を検出するものであるが、このような安価な人体検出手段を温風暖房機と組み合わせて使用すると、人体検出手段が暖房機から発生する熱気を検出して誤作動することがあるため、この発明では安価な人体検出手段を用いたときでも誤作動を起こすことなく、正確な燃焼制御を可能にするためのものである。
【0021】
10は人体検出手段9の検知部を構成する人体センサであり、該人体センサ10は枠体1の前面に取付けられて吹出口7から吹出す温風方向に向けて配置しており、人体から発生する熱線の変化によって人の存在を検出する。11は人体センサ10が熱線の変化を検出したときにカウントを開始するタイマー手段であり、人体検出手段9は人体センサ10が熱線の変化を検出するとタイマー手段11のカウントを開始し、人体センサ10が熱線の変化を検出しなくなるとタイマー手段11のカウントを停止する。
【0022】
26は人体センサ10とタイマ手段11のデータを入力する判定手段であり、人体センサ10が人の動作による熱線の変化を検出した状態を維持しながらタイマー手段11のカウントが終了すると人が存在していると判断し、一方、タイマー手段11がカウントを終了する前に人体センサ10が熱線の変化を検出しなくなると人の存在がないと判断する。
【0023】
暖房機の付近に人がいるときは、人体センサ10が人体から発生する熱線の変化を検出し続けるので、人体検出手段9は人が存在していると判断し、一方、暖房機の付近から人がいなくなると人体センサ10は熱線の変化を検出することはないので人の存在がないと判断するものである。もし暖房機の付近に人がいないときに人体センサ10が暖房機から発生する熱気を検出しても、温風の熱線が変化する燃焼量が変わる時などでは熱線の変化を検出している時間は人から発生する熱線に比べて非常に短いから、人体センサ10はすぐに熱線の変化を検出しなくなり、人体検出手段9は温風から出る熱気を人と判断することはなく誤作動を起こすことはなくなった。
【0024】
12はタイマー手段11で設定されるカウント時間を可変する可変手段であり、可変手段12はバーナ2の燃焼量の変化に連動してタイマー手段11のカウント時間を可変する。人体検出手段9で検出できる熱線の量は人と人体検出手段9との距離によって変化し、また、暖房機から発生する熱線の量はバーナ2の燃焼量によって変化するが、この発明ではバーナ2の燃焼量によってタイマー手段11のカウント時間を設定することができるから、燃焼量の変化によって誤作動を起こすことなく、人体の存在の有無だけを正確に検出できるようになる。
【0025】
具体的な構成として、前記可変手段12は、バーナ2の燃焼量が大きいときはタイマー手段11のカウント時間を長く設定し、バーナ2の燃焼量が小さいときはタイマー手段11のカウント時間を短く設定するようにしている。
【0026】
バーナ2の燃焼量が大きいときは、人体センサ10が温風から出る熱線を検出する時間は長くなるが、温風暖房機の近くに人がいるときに人体センサ10が人体から発生する熱線を検出する時間はそれ以上に長くなるから、タイマー手段11のカウント時間を長く設定することで、温風から出る熱線を人として検出することはなく、温風暖房機の付近に人がいるときだけを確実に検出できる。
【0027】
また、暖房機から離れた場所に人がいるときは、人体センサ10が人体から発生する熱線を検出できる時間が短くなるため、暖房機から離れた人の存在を検出できるようにするためには、タイマー手段11のカウント時間は短いほうがよい。バーナ2の燃焼量が小さいときは、温風から出る熱線の量は非常に少なくなり、人体センサ10が熱線を検出してもその時間は非常に短いため、タイマー手段11のカウント時間を短く設定しても温風から出る熱線で人体検出手段9が誤作動を起こすことはないから、バーナ2の燃焼量が小さいときは、タイマー手段11のカウント時間を短く設定することで、暖房機から離れた場所に人がいる場合でも人体検出手段9が確実に人の存在を検出できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施例を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施例を示す温風暖房機の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 枠体
2 バーナ
3 ポンプ
4 燃焼用送風機
5 送風経路
6 対流用送風機
7 吹出口
8 燃焼室
9 人体検出手段
10 人体センサ
11 タイマー手段
12 可変手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体1内にバーナ2と、このバーナ2に燃料を供給するポンプ3と、このバーナ2に燃焼空気を送る燃焼用送風機4とを設け、該枠体1の前後を貫通する送風経路5には、入口側に対流用送風機6、出口側に吹出口7を設け、前記バーナ2の上部に設けた燃焼室8は送風経路5内に開口し、この送風経路5を通過する空気を温風にする温風暖房機において、
前記枠体1には付近の人の存在を検知する人体検出手段9を設け、
この人体検出手段9の検知部である人体センサ10は前記枠体1の表面で前記吹出口7から吹出す温風方向に向けて設置し、
前記人体センサ10が人の存在を検知もしくは不検知したときにカウントを開始するタイマー手段11を設け、前記タイマー手段11がカウントアップするまで前記人体センサ10が人の存在の検知状態もしくは不検知状態を維持したときに、前記人体検出手段9は人の存在もしくは不存在を認識すると共に、
前記タイマー手段11には設定時間の可変手段12を備え、この可変手段12は前記バーナ2の燃焼量と連動させたことを特徴とする温風暖房機。
【請求項2】
前記可変手段12は燃焼量が大きい場合、前記タイマー手段11の設定時間を長くし、燃焼量が小さい場合、タイマー手段11の設定時間を短くすることを特徴とする請求項1に記載の温風暖房機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−64559(P2007−64559A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252166(P2005−252166)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)
【Fターム(参考)】