説明

測位装置、測位方法およびプログラム

【課題】正確に補正された計時時刻によってGPS衛星の送信電波を速やかに捕捉することのできる測位装置、測位方法およびそのプログラムを提供する。
【解決手段】計時を行う計時手段と、受信手段を介して測位衛星から時刻情報を間欠的に受信させる受信制御手段(S1)と、受信された時刻情報に基づき計時手段の計時時刻を修正する時刻修正手段(S14)と、受信された時刻情報と計時手段の計時時刻とに基づいて計時手段の単位時間当たりの誤差(“α/β”)を算出する誤差算出手段(S12,S13)と、算出された単位時間当たりの誤差(“α/β”)に基づき計時手段の計時時刻から誤差を除去した補正時刻を求める時刻補正手段(S4)と、補正時刻を使用して前記測位衛星の信号を捕捉するとともに当該捕捉した信号に基づき位置の測定を行う測位手段(S5〜S8)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測位衛星の信号を受信して位置の測定を行う測位装置、測位方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS(全地球測位システム)測位装置において位置の測定を短時間に完了するための幾つかの技術が提案されている(例えば、特許文献1,2)。また、GPS衛星の信号に含まれる時刻情報を利用して時計の時刻を自動的に修正する装置も提案されている(例えば、特許文献3,4)。
【0003】
一般的にGPSによる位置の測定は次のように行われる。先ず、複数のGPS衛星の送信電波を捕捉し、送信電波に含まれる測位符号に基づき複数のGPS衛星との擬似距離をそれぞれ算出する。さらに送信電波に含まれるエフェメリス情報を受信して、このエフェメリス情報から複数のGPS衛星の位置を算出する。そして、これらの結果に基づいて自己の位置を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−248345号公報
【特許文献2】特開平10−031061号公報
【特許文献3】特開平08−015463号公報
【特許文献4】特開平05−249221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GPS衛星から送信される電波は、微弱であり、また、スペクトル拡散されているため、この電波を捕捉して復調するためには、送信側と受信側とで同期をとって受信処理を行う必要がある。
【0006】
GPS衛星は原子時計により正確な時刻情報を有しているが、受信側の機器に搭載される計時回路はそれほどの正確さはない。そのため、計時回路の計時時刻に大きな誤差が生じていると、送信側と受信側とのタイミングの不整合により電波を捕捉するのに長い時間がかかる。
【0007】
そこで、本発明者らは、位置の測定を行わない期間においても、間欠的にGPS衛星の信号を受信して、GPSの時刻に計時回路の時刻を修正することで、計時時刻の誤差を小さく抑える構成を検討した。この構成により、計時時刻の誤差が大きくならずに、GPS衛星の送信電波の捕捉を速やかに行わせることが可能となる。
【0008】
一方、GPS衛星の信号受信には比較的に大きな電力を要するため、無駄な信号受信は避けたいという要求がある。
【0009】
この発明の目的は、正確に補正された計時時刻によってGPS衛星の送信電波を速やかに捕捉することができるとともに、時刻補正のための信号受信回数を少なくして消費電力の低減を図ることのできる測位装置、測位方法およびそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
測位衛星から送られてくる信号の受信を行う受信手段と、
計時を行う計時手段と、
前記受信手段を介して前記測位衛星から時刻情報を間欠的に受信させる第1受信制御手段と、
受信された前記時刻情報に基づき前記計時手段の計時時刻を修正する時刻修正手段と、
受信された前記時刻情報と前記計時手段の計時時刻とに基づいて当該計時手段の単位時間当たりの誤差を算出する誤差算出手段と、
算出された前記単位時間当たりの誤差に基づき前記計時手段の計時時刻から誤差を除去した補正時刻を求める時刻補正手段と、
前記補正時刻を使用して前記測位衛星の信号を捕捉するとともに当該捕捉した信号に基づき位置の測定を行う測位手段と、
を備えていることを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記受信手段を介して前記測位衛星から位置の測定に必要な航路情報を間欠的に受信させる第2受信制御手段と、
受信された前記航路情報を記憶する記憶手段と、
を備え、
前記測位手段は、
前記記憶手段に記憶された前記航路情報に基づき前記測位衛星の位置を求めて当該測位装置の位置の測定を行う
ことを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記計時手段の精度を変動させる外的要因の検出或いは当該精度の変動の直接的な検出を行う変動検出手段を備え、
前記誤差算出手段は、
前記変動検出手段の検出結果に基づき前記計時手段の精度が変動したと判別される場合に前記単位時間当たりの誤差の算出をやり直すことを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記計時手段の精度を変動させる外的要因の検出或いは当該精度の変化の直接的な検出を行う変動検出手段を備え、
前記第1受信制御手段は、
前記変動検出手段の検出結果に基づき前記計時手段の精度が変動したと判別された場合に前記時刻情報を間欠的に受信する時間間隔を短く変化させる
ことを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の発明は、測位衛星から送られてくる信号の受信を行う受信手段と、計時を行う計時手段とを用いて測位を行う測位方法であって、
前記受信手段を介して前記測位衛星から時刻情報を間欠的に受信させる第1受信制御ステップと、
受信された前記時刻情報に基づき前記計時手段の計時時刻を修正する時刻修正ステップと、
受信された前記時刻情報と前記計時手段の計時時刻とに基づいて当該計時手段の単位時間当たりの誤差を算出する誤差算出ステップと、
算出された前記単位時間当たりの誤差に基づき前記計時手段の計時時刻から誤差を除去した補正時刻を求める時刻補正ステップと、
前記補正時刻を使用して前記測位衛星の信号を捕捉するとともに当該捕捉した信号に基づき位置の測定を行う測位ステップと、
を含むことを特徴としている。
【0015】
請求項6記載の発明は、測位衛星から送られてくる信号の受信を行う受信手段と、計時を行う計時手段とを制御するコンピュータに、
前記受信手段を介して前記測位衛星から時刻情報を間欠的に受信させる第1受信制御機能と、
受信された前記時刻情報に基づき前記計時手段の計時時刻を修正する時刻修正機能と、
受信された前記時刻情報と前記計時手段の計時時刻とに基づいて当該計時手段の単位時間当たりの誤差を算出する誤差算出機能と、
算出された前記単位時間当たりの誤差に基づき前記計時手段の計時時刻から誤差を除去した補正時刻を求める時刻補正機能と、
前記補正時刻を使用して前記測位衛星の信号を捕捉するとともに当該捕捉した信号に基づき位置の測定を行う測位機能と、
を実現させるプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従うと、測位衛星の送信信号に含まれる時刻情報に基づき、計時手段の単位時間当たりの誤差が算出され、この算出結果に基づいて計時時刻から誤差を除去した補正時刻が求められる。そして、この補正時刻が用いられて位置測定時における測位衛星の信号の捕捉が行われるので、正確な補正時刻により速やかな測位衛星の信号捕捉が実現される。さらに、計時手段の単位時間当たりの誤差から正確な補正時刻を求めているので、単に、測位衛星の時刻情報に基づき計時時刻の誤差を毎回修正する構成と比較して、測位衛星からの信号受信を行わなくても長い期間にわたって正確な時刻を求めることができる。従って、時刻修正のために測位衛星から信号受信する時間間隔を長く設定することができ、信号受信にかかる消費電力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の測位装置の全体を示すブロック図である。
【図2】測位装置の動作の一例を表わした説明図である。
【図3】CPUにより実行される測位制御処理の手順を示したフローチャートの第1部である。
【図4】同、測位制御処理の手順を示したフローチャートの第2部である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態の測位装置1の全体を示すブロック図である。
【0020】
この実施形態の測位装置1は、GPS(全地球測位システム)により間欠的に位置の測定を行って位置データを記録していく装置である。この測位装置1は、図1に示すように、GPS衛星の送信電波を受信するGPS受信アンテナ11と、GPS衛星の送信電波を捕捉して復調するGPS受信機12と、現在時刻を計時する計時部13と、温度を電気的に計測する温度計14と、位置情報など種々の画像表示を行う表示部15と、各部に動作電圧を供給する電源16と、間欠的な位置測定の時間的な制御を行う間欠受信時間制御部17と、各部の統括的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)10と、CPU10に作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)18と、CPU10が実行する制御プログラムや制御データが格納されたROM(Read Only Memory)19と、位置データや測位用の各種データが記憶される不揮発性メモリ20等を備えている。
【0021】
GPS受信機12は、受信周波数をGPS衛星の運行位置に対応した周波数に合わせるとともに、GPS衛星と処理タイミングの同期をとりながら所定の拡散符号を用いて受信信号の逆拡散処理を行うことで、スペクトル拡散されたGPS衛星の送信電波を捕捉して復調する。さらに、このような信号受信の処理を複数のGPS衛星についてそれぞれ行う。ここで、GPS受信機12は、CPU10から与えられる現在時刻の情報に従って、各GPS衛星に対応する受信周波数の設定や各GPS衛星との処理タイミングの同期を図るが、現在時刻の情報に誤差があって送信電波の捕捉ができない場合には、受信周波数や処理タイミングを少しずつずらしながら受信処理を繰り返すことで、各GPS衛星に対応した受信周波数と処理タイミングを見つけて、各GPS衛星の送信信号を捕捉および復調する。従って、CPU10から与えられる現在時刻の情報が正確であればGPS衛星の送信電波を極短時間に捕捉することができるが、この現在時刻の情報に大きな誤差が含まれる場合には送信電波の捕捉に時間が掛かる。
【0022】
計時部13は、例えば水晶発振器の信号に基づいて計時を行うものであり、GPS衛星に備わる原子時計と比較して大きな誤差を有するものである。計時時刻の単位時間当たりの誤差は、一般に、温度変化がなければほぼ一定であり、温度の昇降によって変動する。
【0023】
温度計14は、温度を電気信号に変換する例えばサーミスタなどの温度検出素子と、温度を表わす電気信号(電圧)をサンプリングしてデジタルデータに変換するADコンバータ等から構成される。
【0024】
間欠受信時間制御部17は、CPU10により指定された間欠受信の期間(例えば30分周期)を計数し、間欠受信のタイミングにタイミング信号を発生させてCPU10にこのタイミングを通知する回路である。
【0025】
ROM19には、GPSによる位置の測定を間欠的に実行させるとともに、GPS衛星からの時刻情報に基づき正確な時刻を継続して取得するための測位制御処理のプログラムが格納されている。この測位制御処理のプログラムは、ROM19に格納するほか、例えば、データ読取装置を介してCPU10が読み取り可能な、光ディスク等の可搬型記憶媒体、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリに格納しておくことが可能である。また、このようなプログラムがキャリアウェーブ(搬送波)を媒体として通信回線を介して測位装置1にダウンロードされる形態を適用することもできる。
【0026】
不揮発性メモリ20には、測定結果の位置データが格納される他、測位用のデータとしてGPS衛星から受信されるアルマナック情報やエフェメリス情報が格納されるものである。エフェメリス情報は、各GPS衛星の位置を特定するための航路情報であり、一旦、受信して記憶しておくことで、対応するGPS衛星の位置を特定するために数時間にわたって使用することができる。
【0027】
図2には、測位装置1の測位制御処理の動作の一例を表わした説明図を示す。
【0028】
この実施形態の測位装置1においては、図2に示すように、例えば30分周期など間欠的なタイミングTe1〜Te7で、GPS衛星からの信号の受信を実行して、位置の測定、GPS時刻に基づく計時部13の時刻修正、並びに、エフェメリス情報の受信と記憶の各処理を実行する。
【0029】
これらの処理の内、位置の測定は、CPU10とGPS受信機12により、次のように遂行される。すなわち、先ず、CPU10の指令によりGPS受信機12が作動され、GPS受信機12により複数のGPS衛星の送信電波が捕捉される。このとき、CPU10は、計時部13の計時時刻を補正した補正時刻をGPS受信機12に与えて、GPS受信機12はこの正確な補正時刻に基づいて短時間のうちに送信電波の捕捉を行う。そして、複数のGPS衛星の送信電波が捕捉されたら、CPU10はこれら送信電波の測位符号に基づいて各GPS衛星までの擬似距離を求め、さらに、不揮発性メモリ20に記憶されているエフェメリス情報に基づき各GPS衛星の位置を算出する。そして、これらの結果に基づいて自己の位置を算出する。算出された位置データは、例えば、時刻情報とともに不揮発性メモリ20に格納される。
【0030】
GPS時刻に基づく計時部13の時刻修正処理は、次のように遂行される。GPS受信機12がGPS衛星の送信電波を捕捉・受信する際、GPS受信機12の内蔵時計は送信電波に含まれる時刻情報に基づいてGPS衛星の高精度の時刻(GPS時刻と呼ぶ)とほぼ正確に同期する。従って、GPS受信機12で、GPS衛星の送信電波が受信されたら、CPU10はGPS受信機12の内蔵時計の時刻を読み出すことで正確な時刻を取得することができる。そして、この正確な時刻に計時部13の計時時刻を合わせることで、計時部13の時刻修正を行う。
【0031】
エフェメリス情報の受信と記憶の処理は、位置測定のために補足した送信電波を、そのままGPS受信機12により追尾させて必要なエフェメリス情報を受信させ、これを不揮発性メモリ20へ記憶させることで行う。また、位置測定の完了後も、捕捉可能な他のGPS衛星の送信電波が有れば、このGPS衛星のエフェメリス情報も受信して、不揮発性メモリ20へ記憶させる。これらの受信処理は、所定の制限時間(例えば40秒)を超えない範囲で実行される。このようにエフェメリス情報を受信および記憶させておくことで、次の位置測定の処理において、記憶されたエフェメリス情報を使用して短時間のうちに位置の測定が可能となる。
【0032】
さらに、この実施形態の測位装置1では、GPS受信機12へ高精度の補正時刻を与えるために、CPU10は、適宜な時期に計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”を測定するようになっている。
【0033】
単位時間当たりの誤差“α/β”の測定方法は、次の通りである。すなわち、時間を開けて2回GPS時刻を取得するとともに、1回目のGPS時刻の取得時から2回目のGPS時刻の取得時までの時間間隔“β”と、1回目のGPS時刻の取得時から2回目のGPS時刻の取得時までの計時部13の誤差の増加量“α”とを求め、これらの比を計算することで求める。
【0034】
図2の例では、先ず、タイミングTe1,Te2における2回のGPS衛星の信号の受信処理に伴って2回のGPS時刻を取得し、2回目のGPS時刻が取得されたタイミングTc1に上記の単位時間当たりの誤差“α/β”を算出している。
【0035】
補正時刻は、上記の単位時間当たりの誤差“α/β”に基づいて現時点における計時部13の推定誤差を求め、この推定誤差を計時部13の計時時刻に加算することで得られる。推定誤差は、前回のGPS衛星の信号受信時刻から現時点の計時時刻までの時間間隔に、上記の単位時間当たりの誤差“α/β”を乗算することで求められる。計時部13の計時時刻は、GPS衛星の信号受信時にGPS時刻に修正されて誤差がほぼゼロとなり、その後、時間の経過に伴って“α/β”の比率で誤差が加算されていくので、上記の方法で正確な補正時刻を求めることができる。
【0036】
さらに、この実施形態の測位装置1では、計時部13の誤差の変化量に比較的大きな変動が生じていないか検出するために、温度計14により温度計側を行って、所定量以上の温度変化が生じていないか継続的に確認を行っている。具体的には、単位時間当たりの誤差“α/β”の測定時期における温度を記憶しておき、この記憶された温度と現在の計測温度とを比較して所定量以上の変化が無いか確認を行う。
【0037】
ここで、記憶しておく温度は、上記誤差“α/β”を測定するための2回のGPS時刻の取得期間を通した温度の平均値としても良いし、或いは、1回目のGPS時刻の取得時点における温度、2回目のGPS時刻の取得時点における温度、または、これらの平均値などとしても良い。この実施形態では、上記誤差“α/β”を測定するための2回のGPS時刻の取得期間のうち1回目のGPS時刻の取得時点の温度を記憶するようにしている。
【0038】
そして、保存された温度と現在の計測温度とに所定量以上の変化が無ければ、計時部13の単位時間当たりの誤差は、最後に求めた値“α/β”から大きく変動していないものとして、新たな値の再計算は行わない。そして、補正時刻が必要なときには最後に求められている単位時間当たりの誤差“α/β”を用いて補正時刻を計算する。
【0039】
図2の例では、タイミングTc1に計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”が計算された後、タイミングTf1に至るまで、初回に記憶された温度から現在温度に所定量以上の変化が発生していない。そのため、タイミングTc1で誤差“α/β”を求めた後、間欠的な信号受信タイミングTe3〜Te5においても上記誤差“α/β”の再計算は行わずに、初回に求めた値“α/β”を用いて補正時刻が計算されている。
【0040】
一方、保存された温度と現在の計測温度とに所定量以上の変化が有れば、計時部13の単位時間当たりの誤差が、最後に求めた値“α/β”から大きく変動していると見なして、この値“α/β”をクリアする。そして、再び、この単位時間当たりの誤差“α/β”を算出する処理を行って、温度変化に対応した値を求める。
【0041】
図2の例では、タイミングTf1において、初回に記憶された温度から所定量以上の変化が生じている。そのため、この時点で初回に求めた単位時間当たりの誤差“α/β”をクリアするとともに、再度、この単位時間当たりの誤差“α/β”を求めるためにGPS衛星からの信号の受信を開始してGPS時刻の1回目の取得を行う。そして、続く間欠的な信号受信のタイミングTe6で2回目のGPS時刻の取得を行ったら、このタイミングTc2において計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”を新たに算出している。
【0042】
このような再算出の処理により、新たに算出された値“α/β”がタイミングTf1の温度に対応した計時部13の単位時間当たりの誤差となり、その後、温度に大きな変化が生じなければ、この値“α/β”により再び正確な補正時刻を求めることが可能となる。
【0043】
上記一連の測位制御処理によれば、多くの期間において計時部13の計時時刻から高精度な補正時刻を求めることが可能となり、間欠的に行われるGPS衛星の信号受信時にこの補正時刻を用いて送信電波の捕捉処理を行うことで、速やかな位置の測定ならびに速やかなエフェメリス情報の受信を遂行することが可能になっている。
【0044】
また、上記一連の測位制御処理によれば、計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”から計時部13の計時時刻を補正して正確な時刻を求めているので、位置の測定とエフェメリス情報の間欠的な受信を30分間隔で行う一方、例えば、計時部13の誤差を大きくしないために時刻修正用の信号受信を例えば10分間隔など短い周期で行う構成と比較して、信号受信の回数を減らして消費電力の低減が図れるようになっている。
【0045】
以下、上記の測位制御処理を実現する制御手順の一例についてフローチャートに基づいて説明する。
【0046】
図3と図4は、上記の測位制御処理の手順を表わしたフローチャートである。
【0047】
この測位制御処理は、電源投入時に開始されて、その後、継続して実行されるものである。測位制御処理が開始されると、先ず、CPU10は、間欠受信時間制御部17からの通知に基づきGPS衛星の信号を受信する時刻(毎時00分又は30分)になったか否か判別する(ステップS1)。その結果、該等時刻になっていなければ、ステップS16(図4)からの温度計側に関する処理へ移行し、該等時刻であれば、ステップS2からのGPS衛星の信号受信に関する処理(ステップS2以降)へ移行する。
【0048】
該当時刻と判別されてステップS2へ以降したら、先ず、CPU10は、GPS受信機12を作動させ(ステップS2)、次いで、RAM18に計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”の各パラメータが記憶されているか否かを判別する(ステップS3)。
【0049】
その結果、各パラメータが記憶されていれば、これらのパラメータを用いて補正時刻の算出を行う(ステップS4:時刻補正手段)。すなわち、現在の計時部13の計時時刻に、推定誤差である“(現在時刻−前回測位時刻)×α/β”を加算して補正時刻とする。そして、この補正時刻をGPS受信機12へ供給する(ステップS5)。これにより、GPS受信機12の内蔵時計に補正時刻が設定されて正確な時刻が計時されることになる。
【0050】
一方、“α/β”の各パラメータが未だ記憶されていなければ、補正時刻を算出できないので、上記ステップS4,S5の処理を省略する。
【0051】
次に、CPU10は、GPS受信機12により受信処理を行わせてGPS受信機12から復調信号を入力する(ステップS6)。ここで、補正時刻が供給されていれば、GPS受信機12は、正確な時刻情報に基づいて、GPS衛星の送信電波を極短時間のうちに捕捉して信号受信を遂行することができる。さらに、必要な信号受信が完了したか判別し(ステップS7)、完了していなければ、完了するまでステップS6の受信処理を継続させる。なお、この受信処理においては、位置測定に必要な4つのGPS衛星からの測位符号の受信、および、信号受信可能な位置にある複数のGPS衛星からのエフェメリス情報の受信を行う。受信したエフェメリス情報は不揮発性メモリ20へ記憶する。
【0052】
そして、受信が完了したら、CPU10は、受信された測位符号に基づいて現在位置を求める測位演算を行う(ステップS8)。上記ステップS6〜S8により測位手段が構成される。続いて、GPS受信機12からGPS衛星の原子時計とほぼ完全に同期したGPS時刻を取得する(ステップS9)。その後、計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”の各パラメータがRAM18に記憶されているか否かを判別する(ステップS10)。
【0053】
その結果、各パラメータが記憶されていれば、これらのパラメータを算出する必要がないので、そのままステップS14へ移行する。一方、各パラメータが記憶されていなければ、これらのパラメータを算出するためにステップS11へ移行する。ステップS11へ移行したら、さらに、CPU10は、RAM18に前回測位時刻が記憶されているか確認し(ステップS11)、前回測位時刻が記憶されていなければ、未だ、パラメータの算出はできないので、そのままステップS14に移行する。ここで、前回測位時刻とは、後述のステップS15で記憶される時刻情報のことであり、前回のGPS衛星の信号受信に伴って計時部13の時刻修正が行われた時刻が表わされるものである。
【0054】
一方、ステップS11の判別処理で前回測位時刻が記憶されていると判別されれば、前回測位時刻と現在時刻との差を計算して、この時間間隔をパラメータ“β”に記憶する(ステップS12)。続いて、ステップS9で取得したGPS時刻(GPS衛星の原子時計の時刻)と計時部13の時間差を計算して、この値をパラメータ“α”に記憶する(ステップS13)。これら“α”と“β”のパラメータにより計時部13の単位時間当たりの誤差が表わされ、上記のステップS12,13の処理により誤差算出手段が構成される。そして、ステップS14に移行する。
【0055】
ステップS14に移行したら、先ず、ステップS9で取得したGPS時刻に基づいて、計時部13の計時時刻の誤差を除去する修正処理を行い(ステップS14:時刻修正手段)、この時点の時刻を前回測位時刻としてRAM18の所定領域に記憶させる(ステップS15)。そして、1回の受信処理を終了して、再び、ステップS1に戻る。
【0056】
次に、ステップS1の判別処理で、信号受信の時刻でないと判別された場合を説明する。信号受信の時刻でなくてステップS16へ移行したら、先ず、CPU10は、温度計14からのサンプリングデータを入力し(ステップS16)、次いで、RAM18の所定領域に温度データが記憶されているか確認する(ステップS17)。そして、温度データが記憶されていなければ、ステップS16で入力された温度データをRAM18の所定領域に記憶させる(ステップS18)。そして、再び、ステップS1へ戻る。
【0057】
一方、ステップS17の判別処理で温度データの記憶が有ると判別されたら、この記憶されている温度(「前回温度」)とステップS16で取得した現在の温度との差を計算して、この差が所定のしきい値を超えているか否か判別する(ステップS19)。すなわち、この比較により計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”に比較的大きな変動が生じたか否かが判別される。
【0058】
そして、ステップS19の判別処理で、温度差がしきい値を超えたと判別されたら、RAM18に記憶されている単位時間当たりの誤差“α/β”の各パラメータをクリアし(ステップS20)、これらの各パラメータの算出をやり直すためにRAM18に記憶されている前回測位時刻をクリアする(ステップS21)。さらに、誤差“α/β”の再算出に必要な2回のGPS信号受信のうち1回目の信号受信を直後に行うことになるので、この時点の温度としてステップS16で取得した温度データをRAM18の所定領域に記憶させる(ステップS22)。そして、GPS衛星からの信号受信の時刻か否かに拘わらずに信号受信を行うためにステップS2へジャンプする。
【0059】
また、ステップS19の判別処理で、温度差がしきい値を超えていないと判別されたら、そのままステップS1へ戻る。
【0060】
つまり、図3と図4に示す測位制御処理の制御手順によれば、GPS衛星からの信号受信の時刻になれば、ステップS2〜S15の処理により、GPS衛星から信号受信を行って、位置の測定と、エフェメリス情報の受信および記憶と、計時部13の時刻修正とが行われるようになっている。また、計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”の計測中には、これを求めるための処理も行われるようになっている。
【0061】
また、GPS衛星からの信号受信の時刻以外には、ステップS1,S16,S17,S19のループ処理により温度計測と温度変化の比較とが繰り返し行われ、さらに、しきい値を超える温度変化があれば、計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”を求めるための1回目のGPS信号受信に移行されるようになっている。
【0062】
以上のように、この実施形態の測位装置1によれば、GPS衛星から受信されるGPS時刻に基づいて計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”を算出し、これに基づいて計時部13の計時時刻を正確な時刻に補正してGPS衛星の送信電波の捕捉処理に使用するので、正確な時刻情報により速やかな送信電波の捕捉が可能となる。さらに、正確な時刻を取得可能とするために、GPS衛星の信号受信(GPS時刻の取得)を短い周期で行う必要がないので、信号受信の数を減らせて消費電力の低減を図ることができる。
【0063】
また、位置測定に必要なエフェメリス情報は、間欠的な受信により不揮発性メモリ20に予め記憶させているので、測位演算の際には、不揮発性メモリ20のエフェメリス情報を利用することで、速やかな位置の測定が実現されるようになっている。
【0064】
また、この実施形態の測位装置1によれば、温度計14により温度の計測を行って計時部13の誤差の時間的な変化量に比較的大きな変動が生じたと見なされた場合に、その時点で求められている単位時間当たりの誤差“α/β”をクリアし、再度、この値を求め直すようになっている。従って、例えば温度変化など計時部13の誤差の変化量を変動させる外的要因にも対応して、多くの期間において正確な計時時刻の補正を行えるようになっている。
【0065】
さらに、温度計14により温度の計測を行って計時部13の誤差の時間的な変化量に比較的大きな変動が生じたと見なされた場合には、単位時間当たりの誤差“α/β”を再算出するために、間欠受信の時間間隔を狭めて、その直後にGPS衛星の信号受信を開始するので、速やかに誤差の変動後に対応する値“α/β”を求めて、計時時刻の補正を可能な状態にすることができる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、間欠的にGPS時刻を取得して計時部13の時刻修正を行う時間間隔として、位置測定を行う時間間隔、或いは、エフェメリス情報の受信を行う時間間隔と同じ30分間隔としているが、この時間は、例えば、20分間隔としたり、1時間間隔や2時間間隔とするなど、適宜設定変更可能である。また、位置測定やエフェメリス情報の受信とは別にGPS衛星の信号受信を行ってGPS時刻を取得するようにしても良い。
【0067】
また、上記の実施形態では、温度の変化を検出して、計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”が比較的に大きく変動したか否かを判別するようにしているが、その他、計時部13の精度を変動させる外的要因があれば、その外的要因を検出して上記の変動の有無を判別するようにしても良い。また、計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”を、GPS時刻を取得するたびに算出して、直接的に、計時部13の精度の変化を検出するようにしても良い。
【0068】
そして、例えば、計時部13の精度の変化が検出されなければ、GPS時刻を取得する時間間隔を次第に伸ばしていき、計時部13の精度の変化が検出されたら、GPS時刻を取得する時間間隔を短くして、計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”の再算出が早く行われるように構成しても良い。
【0069】
また、上記実施の形態では、温度のしきい値以上の変化がなければ、計時部13の単位時間当たりの誤差“α/β”を再算出しない構成を示したが、GPS衛星の信号を受信してGPS時刻が取得されるタイミングごとに上記の誤差“α/β”を再算出して更新していくようにしても良い。また、上記実施の形態では、GPS受信機12の内蔵時計と計時部13とを別構成にした例を示したが、GPS受信機12の内蔵時計が常時動作を続ける構成であれば、計時部13としてGPS受信機12の内蔵時計を流用する構成としても良い。
【0070】
その他、上記実施形態で示した細部構成および細部方法は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 測位装置
10 CPU(第1受信制御手段、第2受信制御手段)
12 GPS受信機(受信手段)
13 計時部(計時手段)
14 温度計(変動検出手段)
20 不揮発性メモリ(航路情報の記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星から送られてくる信号の受信を行う受信手段と、
計時を行う計時手段と、
前記受信手段を介して前記測位衛星から時刻情報を間欠的に受信させる第1受信制御手段と、
受信された前記時刻情報に基づき前記計時手段の計時時刻を修正する時刻修正手段と、
受信された前記時刻情報と前記計時手段の計時時刻とに基づいて当該計時手段の単位時間当たりの誤差を算出する誤差算出手段と、
算出された前記単位時間当たりの誤差に基づき前記計時手段の計時時刻から誤差を除去した補正時刻を求める時刻補正手段と、
前記補正時刻を使用して前記測位衛星の信号を捕捉するとともに当該捕捉した信号に基づき位置の測定を行う測位手段と、
を備えていることを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記受信手段を介して前記測位衛星から位置の測定に必要な航路情報を間欠的に受信させる第2受信制御手段と、
受信された前記航路情報を記憶する記憶手段と、
を備え、
前記測位手段は、
前記記憶手段に記憶された前記航路情報に基づき前記測位衛星の位置を求めて当該測位装置の位置の測定を行う
ことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
前記計時手段の精度を変動させる外的要因の検出或いは当該精度の変動の直接的な検出を行う変動検出手段を備え、
前記誤差算出手段は、
前記変動検出手段の検出結果に基づき前記計時手段の精度が変動したと判別される場合に前記単位時間当たりの誤差の算出をやり直すことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項4】
前記計時手段の精度を変動させる外的要因の検出或いは当該精度の変化の直接的な検出を行う変動検出手段を備え、
前記第1受信制御手段は、
前記変動検出手段の検出結果に基づき前記計時手段の精度が変動したと判別された場合に前記時刻情報を間欠的に受信する時間間隔を短く変化させる
ことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項5】
測位衛星から送られてくる信号の受信を行う受信手段と、計時を行う計時手段とを用いて測位を行う測位方法であって、
前記受信手段を介して前記測位衛星から時刻情報を間欠的に受信させる第1受信制御ステップと、
受信された前記時刻情報に基づき前記計時手段の計時時刻を修正する時刻修正ステップと、
受信された前記時刻情報と前記計時手段の計時時刻とに基づいて当該計時手段の単位時間当たりの誤差を算出する誤差算出ステップと、
算出された前記単位時間当たりの誤差に基づき前記計時手段の計時時刻から誤差を除去した補正時刻を求める時刻補正ステップと、
前記補正時刻を使用して前記測位衛星の信号を捕捉するとともに当該捕捉した信号に基づき位置の測定を行う測位ステップと、
を含むことを特徴とする測位方法。
【請求項6】
測位衛星から送られてくる信号の受信を行う受信手段と、計時を行う計時手段とを制御するコンピュータに、
前記受信手段を介して前記測位衛星から時刻情報を間欠的に受信させる第1受信制御機能と、
受信された前記時刻情報に基づき前記計時手段の計時時刻を修正する時刻修正機能と、
受信された前記時刻情報と前記計時手段の計時時刻とに基づいて当該計時手段の単位時間当たりの誤差を算出する誤差算出機能と、
算出された前記単位時間当たりの誤差に基づき前記計時手段の計時時刻から誤差を除去した補正時刻を求める時刻補正機能と、
前記補正時刻を使用して前記測位衛星の信号を捕捉するとともに当該捕捉した信号に基づき位置の測定を行う測位機能と、
を実現させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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