説明

測光装置

【課題】クロストーク値を正確に測定することのできる測光装置を提供する。
【解決手段】測定対称物(50)からの光を受光する受光部12と、受光部12で取得した光量に基づいて測色値を算出する演算制御部31と、取得した光量に応じる受光部12からの信号に基づいて第1所定時間T1での基準測色値データを生成する第1処理部(37)と、取得した光量に応じる受光部12からの信号に基づいて第2所定時間T2での波形データを生成する第2処理部(39)と、を備え、演算制御部31は、第2処理部からの波形データにおける大きな極大値に対する小さな極大値の比率を算出し、第1処理部からの測色値データに基づく基準測色値に、算出した小さな極大値の比率を乗算することで測色値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物からの光を測定するための測光装置に関し、特に短い時間において変化する輝度を精度良く測定することのできる測光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイの画像の品質を把握するために、測光装置を用いてディスプレイを測定することが考えられている(特許文献1参照)。この測光装置は、色彩計としての機能を有し、ディスプレイ(その画像)の色彩を測定して当該ディスプレイにおける表示特性を把握することにより、ディスプレイの品質を把握することを可能とする。
【0003】
ところで、近年、ディスプレイとして画像を立体に表示することのできるもの(以下では、立体視用ディスプレイという)が登場している。このものでは、視聴者の右目に右目用の画像を取得させることと、左目に左目用の画像を取得させることと、を極めて短時間で交互に繰り返すことにより、視聴者に立体の画像として認識させるものがある。このような立体視用ディスプレイでは、視聴者の一方の目に他方の目用の画像を取得させてしまういわゆるクロストークが生じることがある。このクロストークは、視聴者にとって不要な光(画像のための表示信号)となることから、立体視用ディスプレイにおける画像の品質の劣化を招いてしまう。このため、立体視用ディスプレイでは、品質の向上のためにクロストークの強度すなわちクロストーク値を低減することが望まれる。これに伴い、生じたクロストーク値を正確に測定することのできる測光装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−300257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記した色彩計としての機能を有する測光装置では、光の強度の時間的変化を短い時間間隔で測定することが困難であることから、極めて短時間で左右の画像の表示が繰り返される中で発生するクロストーク値を測定することが困難である。このため、短い時間間隔での光の強度の時間的変化を測定することのできる応答度検出器としての機能を有する測光装置を用いてクロストーク値を測定することが考えられる。
【0006】
ところが、このような測光装置(応答度検出器)では、取得した光量に応じて出力する信号の分解能が十分ではないことから、輝度計として要求される精度を満たすことが困難であるので、クロストーク値を正確に測定するものとして使用するには改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、その目的は、クロストーク値を正確に測定することのできる測光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明の測光装置は、測定対称物からの光を受光する受光部と、該受光部で取得した光量に基づいて測色値を算出する演算制御部と、取得した光量に応じる前記受光部からの信号に基づいて第1所定時間での基準測色値データを生成する第1処理部と、取得した光量に応じる前記受光部からの信号に基づいて第2所定時間での波形データを生成する第2処理部と、を備え、前記演算制御部は、前記第2処理部からの前記波形データにおける大きな極大値に対する小さな極大値の比率を算出し、前記第1処理部からの前記測色値データに基づく基準測色値に、算出した前記小さな極大値の比率を乗算することで前記測色値を算出することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の測光装置であって、前記受光部は、受光した光量に応じる大きさのアナログ信号を出力し、前記第2処理部は、前記受光部からのアナログ信号における波形情報を保存する処理速度の第2アナログ−デジタル変換部を有し、前記第1処理部は、前記第2アナログ−デジタル変換部に比較して、前記受光部からのアナログ信号の大きさに対する分解能が大きい第1アナログ−デジタル変換部を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の測光装置であって、前記第2アナログ−デジタル変換部は、前記演算制御部に内蔵されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の測光装置であって、前記第1アナログ−デジタル変換部は、前記演算制御部とは別に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の測光装置であって、前記第2所定時間は、少なくとも2つの前記大きな極大値と少なくとも2つの前記小さな極大値とを含む前記波形データを生成することを可能とすべく、前記測定対称物における出力特性に応じて設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の測光装置であって、前記演算制御部は、前記第2所定時間の開始時点から前記第2所定時間の終了時点に至る間を示す測定範囲信号を生成することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明のプログラムは、測定対称物からの光を受光する受光部と、該受光部で取得した光量に基づいて測色値を算出する演算制御部と、取得した光量に応じる前記受光部からの信号に基づいて第1所定時間での基準測色値データを生成する第1処理部と、取得した光量に応じる前記受光部からの信号に基づいて第2所定時間での波形データを生成する第2処理部と、を備える測光装置の前記演算制御部に、前記第2処理部からの前記波形データにおける大きな極大値に対する小さな極大値の比率を算出する機能と、前記第1処理部からの前記測色値データに基づく基準測色値に、算出した前記小さな極大値の比率を乗算することで前記測色値を算出する機能と、を実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の測光装置によれば、基準測色値データに基づいて輝度値を絶対値(基準輝度値)として算出するとともに、波形データに基づいて輝度値での相対関係(本来必要とする表示信号に対するクロストーク値の比率)を算出し、その絶対値を基準として相対関係からクロストーク値を算出するものであることから、クロストーク値を正確に測定することができる。
【0016】
上記した構成に加えて、前記受光部は、受光した光量に応じる大きさのアナログ信号を出力し、前記第2処理部は、前記受光部からのアナログ信号における波形情報を保存する処理速度の第2アナログ−デジタル変換部を有し、前記第1処理部は、前記第2アナログ−デジタル変換部に比較して、前記受光部からのアナログ信号の大きさに対する分解能が大きい第1アナログ−デジタル変換部を有することとすると、高い分解能を有する第1アナログ−デジタル変換部を介して得た基準測色値データに基づいて高い精度の輝度値を絶対値(基準輝度値)として算出するとともに、高速な処理速度を有する第2アナログ−デジタル変換部を介して得た波形データに基づいて輝度値での相対関係(本来必要とする表示信号に対するクロストーク値の比率)を算出し、その絶対値を基準として相対関係からクロストーク値を算出するものであることから、正確なクロストーク値を得ることができる。
【0017】
上記した構成に加えて、前記第2アナログ−デジタル変換部は、前記演算制御部に内蔵されていることとすると、第2アナログ−デジタル変換部におけるアナログ−デジタル変換をより高速に行うことができるので、第2所定時間の波形データに基づいて測定光での大きな極大値に対する小さな極大値の比率をより正確に求めることができる。
【0018】
上記した構成に加えて、前記第1アナログ−デジタル変換部は、前記演算制御部とは別に設けられていることとすると、アナログ−デジタル変換部を内蔵する演算制御部を有するものであれば、当該アナログ−デジタル変換部よりも高い分解能を有する第1アナログ−デジタル変換部を設けるとともに演算制御部における演算処理方法(そのためのプログラム)を変更するだけで、既存の測光装置に適用することができる。
【0019】
上記した構成に加えて、前記第2所定時間は、少なくとも2つの前記大きな極大値と少なくとも2つの前記小さな極大値とを含む前記波形データを生成することを可能とすべく、前記測定対称物における出力特性に応じて設定されていることとすると、大きな極大値(本来必要とする表示信号)におけるピーク値を2つ以上抽出することができるとともに、小さな極大値(クロストーク)におけるピーク値を2つ以上抽出することができるので、表示信号(測定光)での大きな極大値に対する小さな極大値の比率をより正確に求めることができる。
【0020】
上記した構成に加えて、前記演算制御部は、前記第2所定時間の開始時点から前記第2所定時間の終了時点に至る間を示す測定範囲信号を生成することとすると、測定値と、受光部で取得した光量に基づくアナログ信号と、の相関関係を、使用者に容易に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る測光装置10を用いて測定対象物としての立体視画像システム50の測定を行っている様子を示す説明図である。
【図2】立体視画像システム50における立体視用ディスプレイ51からの表示信号と立体視用眼鏡52との関係性の説明のために、横軸を時間軸とし、かつ縦軸で表示信号を光の強度(輝度)で示す説明図であり、(a)は立体視用ディスプレイ51から出力された表示信号を示し、(b)は立体視用眼鏡52の右目側のレンズ部52aを経た表示信号を示し、(c)は立体視用眼鏡52の左目側のレンズ部52aを経た表示信号を示す。
【図3】本発明に係る測光装置10の構成の概要を示す説明図である。
【図4】演算制御部31(記憶部40に格納されたプログラム)にて実行されるクロストーク値(測色値)の測定処理内容を示すフローチャートである。
【図5】CCDアナログPCB38(受光部12)から出力されるアナログ信号に対する第2所定時間T2と、出力される測定範囲信号Smとの関係を、横軸を時間軸とし、かつ縦軸を光の強度(輝度)で示す説明図である。
【図6】設定された第2所定時間T2における、CCDアナログPCB38(受光部12)から出力されるアナログ信号と、それが第2A/Dコンバータ39により変換されたデジタル信号と、の関係を、横軸を時間軸とし、かつ縦軸を光の強度(輝度)で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本願発明に係る測光装置の実施例について図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0023】
図1は、本発明に係る測光装置10を用いて測定対象物としての立体視画像システム50の測定を行っている様子を示す説明図である。図2は、立体視画像システム50における立体視用ディスプレイ51からの表示信号と立体視用眼鏡52との関係性の説明のために、横軸を時間軸とし、かつ縦軸で表示信号を光の強度(輝度)で示す説明図であり、(a)は立体視用ディスプレイ51から出力された表示信号を示し、(b)は立体視用眼鏡52の右目側のレンズ部52aを経た表示信号を示し、(c)は立体視用眼鏡52の左目側のレンズ部52aを経た表示信号を示す。図3は、本発明に係る測光装置10の構成の概要を示す説明図である。なお、図2の(b)および(c)では、理解容易のためにクロストーク(その輝度値であるクロストーク値)を二点鎖線で示しているが、この大きさは実際の出力と必ずしも一致するものではない。
【0024】
測光装置10は、測定対象物における測光特性(測色値(輝度、色度、色温度))を測定するものである。その測定対象物は、例として、ディスプレイ、液晶パネル、信号灯、冷陰極管、誘導灯、LED等があげられる。本実施例では、図1に示すように、立体の画像として視聴者に認識させることのできる立体視画像システム50を測定対象物としている。
【0025】
この立体視画像システム50は、視聴者の右目に右目用の画像を取得させることと、左目に左目用の画像を取得させることと、を極めて短時間で交互に繰り返すことにより、視聴者に立体の画像として認識させる。立体視画像システム50は、ディスプレイである立体視用ディスプレイ51(3D(three−dimensional)ディスプレイ)と、立体視用眼鏡52と、を有する。
【0026】
この立体視用ディスプレイ51は、所定の時間間隔で交互に、右目用の画像の表示のための表示信号と、左目用の画像の表示のための表示信号と、を出力する(図2(a)参照)。なお、ここでいう表示信号とは、立体視用ディスプレイ51の表示画面において所定の画像を形成するために、その表示画面(その各画素)を光源として出力される光のことをいう。立体視用ディスプレイ51は、本実施例では、右目用の画像の表示のための表示信号の出力およびその次の左目用の画像の表示のための表示信号の出力、すなわち立体画像のための一対の表示信号の出力を1周期として、点灯周波数が120[Hz]に設定されている。このため、立体視用ディスプレイ51は、本実施例では、立体画像のための一対の表示信号を約8.3[msec]に1回のペースで出力する(図6参照)。
【0027】
立体視用眼鏡52は、一般的な眼鏡と同様に左右のそれぞれに対応して対を為すレンズ部52aを有する。この立体視用眼鏡52では、両レンズ部52aがそれぞれ光を透過する状態と光を遮蔽する状態とを、立体視用ディスプレイ51での左右の表示信号の出力に同期させて切り換えることが可能とされている。この両レンズ部52aは、例えば、液晶シャッターを用いることにより遮蔽することができる。その立体視用眼鏡52では、立体視用ディスプレイ51における右目用の画像と左目用の画像との表示に同期して駆動されることにより、右目側のレンズ部52aと左目側のレンズ部52aとが、所定の時間間隔で交互に遮蔽される。
【0028】
このため、立体視用眼鏡52の右目側のレンズ部52aを介して立体視用ディスプレイ51を見ると、立体視用ディスプレイ51から出力される表示信号のうち、右目用の画像に相当する表示信号だけを取得することができる(図2(b)参照)。また、立体視用眼鏡52の左目側のレンズ部52aを介して立体視用ディスプレイ51を見ると、立体視用ディスプレイ51から出力される表示信号のうち、左目用の画像に相当する表示信号だけを取得することができる(図2(c)参照)。
【0029】
これにより、立体視画像システム50では、立体視用眼鏡52を通して立体視用ディスプレイ51を見せることで、視聴者に立体の画像として認識させることができる。なお、立体視用眼鏡52は、立体視用ディスプレイ51において交互に表示される両目用の画像のうち、右目側のレンズ部52aが右目用の画像(表示信号)のみの取得を可能とするものであり、かつ左目側のレンズ部52aが左目用の画像(表示信号)のみの取得を可能とするものであればよく、本実施例に限定されるものではない。
【0030】
測光装置10は、図3に示すように、光学系11と受光部12と回路部13とを有する。その光学系11は、測定対象物からの光を受光部12等へと導くものであり、本実施例では、視準光学系14と測光光学系15とを有する。
【0031】
視準光学系14は、測定対象物における測定箇所を視認するとともに、その測定箇所の調整のために設けられている。その視準光学系14は、対物レンズ16、アパーチャミラー17、反射ミラー18、第1レンズ19、第2レンズ20および接眼レンズ21を有する。
【0032】
対物レンズ16は、測定対象物から出射された測定光を集めるために設けられており、その焦点位置がアパーチャミラー17の近傍に設定されている。このため、測定対象物から出射された測定光は、対物レンズ16を通りアパーチャミラー17へと進行する。
【0033】
そのアパーチャミラー17は、対物レンズ16で集光された測定光を視準光学系14側に進行する光と測光光学系15側に進行する光とに分けるために設けられており、開口17aを有する。アパーチャミラー17は、対物レンズ16で集光された測定光の一部を反射ミラー18(視準光学系14)へ向けて反射するとともに、その他部を開口17aから後述する第3レンズ23(測光光学系15)へと進行させる。
【0034】
反射ミラー18は、入射した光を反射するものである。このため、アパーチャミラー17で反射された測定光は、反射ミラー18により反射されて、第1レンズ19へと進行する。
【0035】
第1レンズ19は、第2レンズ20と協働してリレーレンズを構成するものであり、測定対象物の像を共役な位置22にリレーする。視準光学系14では、共役な位置22が焦点位置となるように接眼レンズ21が設けられている。このため、視準光学系14では、反射ミラー18で反射した測定光を第1レンズ19と第2レンズ20とを通すことにより、測定対象物の像を共役な位置22にリレーし、接眼レンズ21を介して測定対象物の像を測定者に視準させることができる。
【0036】
測光光学系15は、測定対象物からの光を適宜調節して受光部12へと導くものである。その測光光学系15は、視準光学系14と共用の対物レンズ16およびアパーチャミラー17を有するとともに、第3レンズ23、色フィルタターレット板24、減光フィルタ25、第4レンズ26および減光フィルタターレット板27を有する。
【0037】
第3レンズ23は、第4レンズ26と協働してリレーレンズを構成するものであり、測定対象物の像を受光部12(その受光面)にリレーする。この測光光学系15では、対物レンズ16で集光された測定光のうちのアパーチャミラー17の開口17aを通った他部が、第3レンズ23を通り色フィルタターレット板24へと進行する。
【0038】
その色フィルタターレット板24は、各波長の感度を補正するものである。色フィルタターレット板24は、円板部材24aと、その中心軸に出力軸が連結された駆動部24bとを有する。その円板部材24aでは、中心軸周りに複数の開口(図3に示す例では4つ)が設けられ、その4つの開口24c、24d、24e、24fに互いに異なる波長に感度を有するフィルタが設けられている。駆動部24bは、円板部材24aの回転姿勢を調節するものであり、本実施例ではパルスモータにより構成されている。この色フィルタターレット板24は、円板部材24aの回転姿勢により、いずれかの開口(24c、24d、24e、24f)を第3レンズ23から減光フィルタ25へと向かう光路(測定光路)上の位置に存在させることが可能とされている。このため、色フィルタターレット板24は、第3レンズ23を通過した測定光に対して、所定の波長の感度を補正することができる。色フィルタターレット板24は、後述する演算制御部31の制御下で駆動部24bが適宜駆動されることにより、円板部材24aの回転姿勢が調整される、すなわち上記した光路上に存在する開口(24c、24d、24e、24f)が切り替えられる。この色フィルタターレット板24は、第3レンズ23を通過した測定光を、適宜設定された波長の感度を補正して、減光フィルタ25へと進行させる。
【0039】
その減光フィルタ25は、色フィルタターレット板24を通過した測定光の強度を調整するものである。減光フィルタ25は、板状のフィルタ部材25aと、その端部に出力軸が連結された駆動部25bと、を有する。フィルタ部材25aは、所定の減光率とされている。駆動部25bは、フィルタ部材25aを第3レンズ23から減光フィルタ25へと向かう光路(測定光路)上に出し入れ自在とするものであり、本実施例ではパルスモータにより構成されている。このため、減光フィルタ25は、色フィルタターレット板24を通過した測定光に対して、強度を低減することと強度を変化させることなく素通しさせることとを切り替えることができる。減光フィルタ25は、後述する演算制御部31の制御下で駆動部25bが適宜駆動されることにより、上記した光路上にフィルタ部材25aが出し入れされる。この減光フィルタ25は、色フィルタターレット板24を通過した測定光を、適宜強度を調節して、第4レンズ26へと進行させる。
【0040】
その第4レンズ26は、上述したように、第3レンズ23と協働してリレーレンズを構成するものであり、測定対象物の像を受光部12(その受光面)にリレーする。この測光光学系15では、色フィルタターレット板24および減光フィルタ25で適宜調整された測定光が、減光フィルタターレット板27へと進行する。
【0041】
その減光フィルタターレット板27は、第4レンズ26を通過した測定光の強度を段階的に調整するものである。減光フィルタターレット板27は、円板部材27aと、その中心軸に出力軸が連結された駆動部27bとを有する。その円板部材27aでは、中心軸周りに複数の開口(図3に示す例では4つ)が設けられ、その4つの開口27c、27d、27e、27fに互いに異なる透過率(減光倍率)のフィルタが設けられている。駆動部27bは、円板部材27aの回転姿勢を調節するものであり、本実施例ではパルスモータにより構成されている。この減光フィルタターレット板27は、円板部材27aの回転姿勢により、いずれかの開口(27c、27d、27e、27f)を第4レンズ26から受光部12へと向かう光路(測定光路)上の位置に存在させることが可能とされている。このため、減光フィルタターレット板27は、第4レンズ26を通過した測定光の強度を段階的に調節することができる。減光フィルタターレット板27は、後述する演算制御部31の制御下で駆動部27bが適宜駆動されることにより、円板部材27aの回転姿勢が調整される、すなわち上記した光路上に存在する開口(27c、27d、27e、27f)が切り替えられる。この減光フィルタターレット板27は、第4レンズ26を通過した測定光を、適宜設定された強度に調整して、受光部12へと進行させる。このため、測光光学系15では、測定対象物から出射された測定光を、適宜調整しつつ受光部12へと導くことができる。
【0042】
受光部12は、受光面で受光した光の光量に応じた大きさ(強度)のアナログ値である信号を出力するものである。この受光部12は、本実施例では、後述するクロストーク値を検出可能とする観点から、電流増幅(電子増倍)機能を有する高感度光検出器である光電子増倍管(いわゆるフォトマル)が用いられている。受光部12は、測光光学系15(光学系11)により導かれた測定光を受光し、その光量に応じた大きさ(強度)の電流(アナログ信号)を回路部13(そのCCDアナログPCB38)に出力する。
【0043】
その回路部13は、受光部12から出力されるアナログ信号に基づいて、測定光における測色値(輝度、色度、色温度)を算出するものである。回路部13は、演算制御部31、ACアダプタ32、DC−DC電源33、LCD(Liquid Crystal Display)表示器34、操作キー35、外部入出力端子36、第1A/Dコンバータ37、およびCCD(Charge Coupled Device)アナログPCB(CCDアナログプリント基板ボード)38を有する。
【0044】
演算制御部31は、LCD表示器34の駆動や、操作キー35に為された操作に基づく駆動処理や、受光部12からの信号に基づく測色値の演算処理や、測光光学系15(色フィルタターレット板24、減光フィルタ25および減光フィルタターレット板27)の駆動等の制御や、外部入出力端子36を介する外部機器(図1の符号41参照)とのデータの送受信処理を、後述する記憶部40に格納されたプログラムにより統括的に行う。この演算制御部31は、本実施例では、ROMやRAMをワンチップに内蔵した中央演算処理ユニット(CPU(Central Processing Unit))で構成されている。演算制御部31は、第2A/Dコンバータ39と、記憶部40と、を有する。
【0045】
その第2A/Dコンバータ39は、後述するようにCCDアナログPCB38(受光部12)から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。この第2A/Dコンバータ39は、CCDアナログPCB38(受光部12)から出力されるアナログ信号を高速にデジタル信号に変換することのできる処理速度を有するものとされている。ここで、高速にデジタル信号に変換することのできる処理速度とは、CCDアナログPCB38(受光部12)から出力されるアナログ信号における波形情報(時間に対する強度の変化の態様)の保存を可能とする時間間隔で変換処理を行うことができることを言う。すなわち、変換処理されたデジタル信号において、波形情報(時間に対する強度の変化の態様)を読み取ることを可能とする短い時間間隔で変換処理を行うことができる(時間に対して十分な量のサンプリング数を確保することができる)ことを言う。第2A/Dコンバータ39は、本実施例では、演算制御部31の一部を構成する、すなわち演算制御部31に内蔵されて設けられている。また、第2A/Dコンバータ39は、本実施例では、10bitの分解能を有するものとされている。さらに、第2A/Dコンバータ39は、本実施例では、後述するようにCCDアナログPCB38(受光部12)から出力されるアナログ信号を、11[μsec]毎にアナログ−デジタル変換することができる処理速度を有するものとされている。
【0046】
この演算制御部31は、第2A/Dコンバータ39や第1A/Dコンバータ37からデジタル信号が入力されると、そのデジタル信号を用いて適宜測色値の演算処理を行う。この測色値の演算処理とは、測定光における輝度、色度および色温度等を適宜算出するものである。本願発明では、測色値として、後述するクロストーク値を算出することができる。このクロストーク値の生成については、後に詳細に説明する。また、演算制御部31は、測色値の生成処理を行う際、生成過程でのデータ等を記憶部40に適宜格納するとともに、記憶部40に格納したデータ等を記憶部40から適宜読み込む。
【0047】
演算制御部31では、ACアダプタ32およびDC−DC電源33を介して電力が供給される。LCD表示器34は、演算制御部31の制御下で駆動されて、生成した測光特性(後述するクロストーク値等)や、その他の指令等を表示する。操作キー35は、測光装置10における各種機能の選択操作や各種機能のための入力操作を行うべく設けられている。この操作キー35に為された操作に基づく信号は、演算制御部31へと出力される。なお、この操作キー35は、LCD表示器34とは独立して設けられているものであってもよく、LCD表示器34にタッチパネルの機能を搭載してLCD表示器34に表示された画面として構成されているものであってもよい。
【0048】
外部入出力端子36は、図示は略すが外部入出力端子の接続が可能とされており、その外部入出力端子を経て外部機器41(その制御部(図1参照))と演算制御部31とで情報(生成した測色値やCCDアナログPCB38(受光部12)から出力されたアナログ信号等)を遣り取りすることを可能とする。この外部入出力端子36は、本実施例では、LAN機能を持った機器との接続を可能とするLANインターフェースと、RS−232Cのシリアル通信ポートとの接続を可能とするRS−232Cインターフェースと、が用いられている。
【0049】
第1A/Dコンバータ37は、CCDアナログPCB38(受光部12)から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して演算制御部31へと出力する。この第1A/Dコンバータ37は、少なくとも第2A/Dコンバータ39よりも大きな分解能を有するものとする。より好ましくは、第1A/Dコンバータ37は、後述するCCDアナログPCB38を介して出力される受光部12での受光光量に応じた大きさ(強度)のアナログ信号を変換したデジタル信号において、輝度計として求められる精度を満たすことのできる分解能を有するものとする。この第1A/Dコンバータ37は、本実施例では、演算制御部31の外部に設けられており、16bitの分解能を有するものとされている。
【0050】
CCDアナログPCB38は、受光部12から出力される受光光量に応じた大きさ(強度)の電流(アナログ信号)を、受光部12での受光光量に応じた大きさ(強度)の電圧(アナログ信号)に変換する。このCCDアナログPCB38は、そのアナログ信号を、第1A/Dコンバータ37へと出力するとともに演算制御部31(第2A/Dコンバータ39を含む)へと出力することが可能とされている。
【0051】
これにより、測光装置10では、図1に示すように、任意の測定対象物(立体視画像システム50)に対して光学系11の対物レンズ16を対向させて測定を行うことで、その測定光を受光部12で受光して、それに基づく信号(アナログ信号)を回路部13へと出力させることにより、測定光における測色値(輝度、色度、色温度)を生成することができる。
【0052】
測光装置10では、さらに、立体視画像システム50におけるクロストーク値の測定を行うことが可能とされている。すなわち、演算制御部31では、立体視画像システム50でのクロストーク値の測定のための演算処理が可能とされている。まず、クロストークについて説明する。なお、立体視画像システム50では、左右いずれの目に対応する画像を取得する場面であってもクロストークが生じ得るものであることから、以下の説明では、右目用の画像を取得する場面について説明し、左目用については省略する。
【0053】
上述したように、立体視画像システム50(図1参照)では、立体視用ディスプレイ51での右目用の画像と左目用の画像との表示に同期して駆動する立体視用眼鏡52を用いることにより、一方の目に当該目に対応する画像だけを取得させている(図2参照)。このとき、立体視用眼鏡52の右目側のレンズ部52aを介して立体視用ディスプレイ51を見ると、立体視用ディスプレイ51から出力される表示信号のうち、右目用の画像に相当する表示信号だけを取得させることが望ましい(図2(b)参照)。しかしながら、実際には、立体視用眼鏡52の右目側のレンズ部52aを介して立体視用ディスプレイ51を見た際、左目に対応する画像が出力される時間帯において、大変微弱ではあるが輝度値が検出される(図2(b)の二点鎖線参照)。これは、立体視画像システム50における何らかの原因により、立体視用眼鏡52の右目側のレンズ部52aを介して立体視用ディスプレイ51を見ても、左目に対応する表示信号の一部が入力されている、すなわち右目に対応する表示信号に左目に対応する表示信号の一部が混入している(洩れている)ものと考えられる。このように、立体視用眼鏡52の一方の目側のレンズ部52aを介して立体視用ディスプレイ51を見た際に、他方の目に対応する表示信号の一部が混入することを、本明細書ではクロストークが生じると言い、混入したクロストーク(他方の目に対応する表示信号)の強度(本実施例では輝度値)をクロストーク値と言う。
【0054】
立体視画像システム50(立体視用ディスプレイ51)では、クロストークが生じると、画像の劣化(特に、色再現性の悪化)を招いてしまうことから、クロストークが生じることを抑制することが望まれている。このためには、クロストーク(クロストーク値)の測定を高精度に行うことが必要となる。
【0055】
次に、立体視画像システム50でのクロストーク値を、測光装置10を用いて測定することについて、図4を用いて説明する。図4は、演算制御部31(記憶部40に格納されたプログラム)にて実行されるクロストーク値(測色値)の測定処理内容を示すフローチャートである。以下、図4のフローチャートの各ステップについて説明する。このクロストーク値の測定は、操作キー35においてクロストーク値の測定を実行する旨の操作が為されることにより開始される。このクロストーク値の測定では、図1に示すように、立体視用ディスプレイ51の前に測光装置10を設置するとともに、その測定光の入力箇所(その対物レンズ16(図3参照))に立体視用眼鏡52の右目側のレンズ部52aを配する。そして、立体視用ディスプレイ51と立体視用眼鏡52とを同期させて駆動するとともに、立体視用ディスプレイ51に検査用の画像(そのための左右の表示信号(図2(a)参照))を出力させる。このため、測光装置10では、立体視用ディスプレイ51から出力されて立体視用眼鏡52の右目側のレンズ部52aを通過した表示信号(図2(b)参照)を、測定光として取得(受光)することができる。
【0056】
ステップS1では、受光した測定光に応じた受光部12からのアナログ信号を、第1A/Dコンバータ37からデジタル信号として取得して、ステップS2へ進む。このステップS1では、CCDアナログPCB38を介して出力される受光部12での受光光量に応じた大きさ(強度)のアナログ信号が、第1A/Dコンバータ37により変換されたデジタル信号を、取得する。ステップS1は、第1所定時間T1の間、継続する。この第1所定時間T1は、輝度計として設定する精度を満たす観点から、第1A/Dコンバータ37における分解能と処理速度とを考慮して適宜設定する。第1所定時間T1は、本実施例では、100[msec]に設定している。この輝度計として設定する精度とは、測光装置10において保障する精度であり、適宜設定されるものである。
【0057】
ステップS2では、ステップS1での第1A/Dコンバータ37からのデジタル信号の取得に続き、そのデジタル信号に基づいて第1所定時間T1での測定光の輝度値を算出して、ステップS3へ進む。このステップS2では、第1A/Dコンバータ37を介して取得したデジタル信号に基づいて、第1所定時間T1における受光部12での受光光量を、輝度値に換算することにより、立体視用眼鏡52の右目側のレンズ部52aを通して取得した立体視用ディスプレイ51からの表示信号の基準輝度値(基準測色値)を算出する。その換算される輝度値とは、観測者へ向かって出射される光の強さを、人間の目の感度で評価した測光量である。この基準輝度値は、16bitの分解能の第1A/Dコンバータ37からのデジタル信号に基づくものであって、第1所定時間T1(本実施例では100[msec])を測定時間としたものであることから、輝度計として設定された精度を十分に満たしている。このため、受光部12(CCDアナログPCB38)から出力されたアナログ信号に基づいて、第1A/Dコンバータ37が生成(変換)したデジタル信号が、測定光における第1所定時間T1での基準測色値データとなる。
【0058】
ステップS3では、ステップS2での基準輝度値の算出に続き、受光した測定光に応じた受光部12からのアナログ信号を、第2A/Dコンバータ39を介してデジタル信号として取得して、ステップS4へ進む。このステップS3では、CCDアナログPCB38を介して出力される受光部12での受光光量に応じた大きさ(強度)のアナログ信号が、第2A/Dコンバータ39により変換されたデジタル信号(図6参照)を、取得する。ステップS3は、第2所定時間T2の間、継続する。この第2所定時間T2の設定方法については後述する。本実施例では、第2A/Dコンバータ39が11[μsec]毎にアナログ−デジタル変換が可能であることに基づいて、当該変換を2000回行うことができるように、第2所定時間T2を22[msec]に設定している。ステップS3で取得するデジタル信号では、上述したように第2A/Dコンバータ39が高速な処理速度を有するものであることから、時間に対する強度の変化の態様を示す波形情報の読み取りが可能とされている。このため、受光部12(CCDアナログPCB38)から出力されたアナログ信号に基づいて、第2A/Dコンバータ39が生成(変換)したデジタル信号が、測定光における第2所定時間T2での波形データとなる。
【0059】
ステップS4では、ステップS3での第2A/Dコンバータ39からのデジタル信号の取得に続き、そのデジタル信号(第2所定時間T2での波形データ)に基づいて測定光での大きな極大値に対する小さな極大値の比率を算出して、ステップS5へ進む。このステップS4では、第2A/Dコンバータ39を介して取得したデジタル信号における時間に対する強度の変化の態様を示す波形情報から、大きな極大値すなわち右目に対応する表示信号におけるピーク値(図6のPl参照)を抽出し、それらの平均値を算出する。また、第2A/Dコンバータ39を介して取得したデジタル信号における時間に対する強度の変化の態様を示す波形情報から、小さな極大値すなわちクロストーク(左目に対応する表示信号)におけるピーク値(図6のPs参照)を抽出し、それらの平均値を算出する。その後、大きな極大値の平均値と、小さな極大値の平均値と、に基づいて、第2A/Dコンバータ39を介して取得したデジタル信号での大きな極大値に対する小さな極大値の比率を算出する。なお、ステップS4では、測定光における第2所定時間T2での大きな極大値に対する小さな極大値の比率を求めるのみであって、第2A/Dコンバータ39からのデジタル信号に基づく輝度値(測色値)の算出は行わない。
【0060】
ステップS5では、ステップS4での大きな極大値に対する小さな極大値の比率の算出に続き、クロストーク値を算出して、クロストーク値の測定処理を終了する。このステップS5では、ステップS2で算出した基準輝度値に、ステップS4で算出した大きな極大値に対する小さな極大値の比率を乗算することにより、クロストーク値を算出する(クロストーク値=基準輝度値×(小さな極大値/大きな極大値))。
【0061】
この測光装置10では、使用者が操作キー35においてクロストーク値の測定を実行する旨の選択を行うと、図4のフローチャートにおいてステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進むことにより、クロストーク値を算出することができる。この算出(測定)したクロストーク値は、演算制御部31の制御下で、LCD表示器34に表示される。このことから、測光装置10では、図4のフローチャートが、受光部12(CCDアナログPCB38)、第1A/Dコンバータ37および第2A/Dコンバータ39との協働により、クロストーク値を算出するクロストーク値算出手段として機能する。また、第1A/Dコンバータ37が、測定光を受光した受光部12からのアナログ信号に基づいて、第1所定時間T1での基準測色値データを生成する第1処理部として機能する。さらに、第2A/Dコンバータ39が、測定光を受光した受光部12からのアナログ信号に基づいて、第2所定時間T2での波形データを生成する第2処理部として機能する。
【0062】
また、測光装置10では、クロストーク値の測定を実行する際、図1に示すように、外部入出力端子36に外部機器41が接続されている場合、演算制御部31は、CCDアナログPCB38を介して出力される受光部12での受光光量に応じた大きさ(強度)のアナログ信号を、外部入出力端子36から外部機器41へと出力する。このとき、演算制御部31は、本実施例では、そのアナログ信号において、クロストーク値の測定に用いた時間範囲、すなわちクロストーク値として定量化するための算出の根拠となる時間範囲を示す測定範囲信号Sm(図5参照)を、外部入出力端子36から外部機器41へと出力する。演算制御部31は、測定範囲信号Smとして、該当する時間範囲の間、所定の大きさの電圧(図5の例では5[V])を出力する。この時間範囲は、ステップS3での演算制御部31が測定光に応じた第2A/Dコンバータ39からのデジタル信号の取得を開始した時点(第2所定時間T2のカウントを開始した時点)から、ステップS3での演算制御部31が測定光に応じた第2A/Dコンバータ39からのデジタル信号の取得を終了した時点(第2所定時間T2が経過した時点)までとなる(図5参照)。
【0063】
次に、第2所定時間T2の設定方法について説明する。この第2所定時間T2は、CCDアナログPCB38を介して出力される受光部12での受光光量に応じた大きさ(強度)のアナログ信号、すなわちそれが第2A/Dコンバータ39により変換されたデジタル信号において、少なくとも4つの波形を存在させるように、立体視用ディスプレイ51(立体視画像システム50)で設定された点灯周波数(出力特性)に応じて設定する。換言すると、第2所定時間T2は、立体視用ディスプレイ51における立体画像のための一対の表示信号の出力が2回行われる2周期以上に設定する。これにより、上記した図4のフローチャートのステップS4において、大きな極大値すなわち右目に対応する表示信号におけるピーク値(図6の符号Pl参照)を2つ以上抽出することができるとともに、小さな極大値すなわちクロストーク(左目に対応する表示信号)におけるピーク値(図6の符号Ps参照)を2つ以上抽出することができるので、測定光での大きな極大値に対する小さな極大値の比率をより正確に求めることができる。
【0064】
特に、本実施例では、第2所定時間T2は、CCDアナログPCB38を介して出力される受光部12での受光光量に応じた大きさ(強度)のアナログ信号、すなわちそれが第2A/Dコンバータ39により変換されたデジタル信号において、少なくとも6つの波形を存在させるように、立体視用ディスプレイ51(立体視画像システム50)で設定された点灯周波数に応じて設定する。このことについて、図6および本実施例での設定値を用いて以下で説明する。
【0065】
本実施例では、上述したように、立体視用ディスプレイ51(立体視画像システム50)の点灯周波数が120[Hz]に設定されていることから、図6に示すように、立体画像のための一対の表示信号が約8.3[msec]に1回のペースで出力される。これに対し、測光装置10(その演算制御部31)では、少なくとも6つの波形を存在させることを可能とする観点から、第2所定時間T2を22[msec]に設定している。すると、第2所定時間T2の開始時点に拘らず、立体視用ディスプレイ51から繰り返して出力される表示信号において、第2所定時間T2(22[msec])の間に少なくとも6つの波形を存在させることができる。すなわち、第2所定時間T2の開始時点に拘らず、立体視用ディスプレイ51から繰り返して出力される表示信号において、少なくとも、3つの大きな波形(右目に対応する表示信号)と、3つの小さな波形(クロストーク(左目に対応する表示信号))と、を存在させることができる。
【0066】
ところが、第2所定時間T2(22[msec])の開始時点が、立体視用ディスプレイ51における右目用の画像の表示のための表示信号の出力もしくは左目用の画像の表示のための表示信号の出力を開始する時点(左右目用の画像の切り替え時点)のいずれかと一致されていない場合、第2所定時間T2内で取得した波形情報のうちの最初または最後の波形情報には、当該波形のピーク値が含まれていない場面が生じ得る(図6の例では左端の波形)。このため、本実施例では、演算制御部31は、第2A/Dコンバータ39を介して取得したデジタル信号における波形情報のうち、時間軸で見た最初の波形情報と最後の波形情報とを抽出対象から除外し、残りの波形情報から大きな極大値すなわち右目に対応する表示信号におけるピーク値(中間位置の2つの符号Pl参照)を抽出するとともに、小さな極大値すなわちクロストーク(左目に対応する表示信号)におけるピーク値(中間位置の2つの符号Ps参照)を抽出する。これにより、立体視用ディスプレイ51(立体視画像システム50)に同期させることなく第2所定時間T2を開始しても、大きな極大値すなわち右目に対応する表示信号におけるピーク値Plを2つ以上抽出することができるとともに、小さな極大値すなわちクロストーク(左目に対応する表示信号)におけるピーク値Psを2つ以上抽出することができるので、測定光での大きな極大値に対する小さな極大値の比率をより正確に求めることができる。
【0067】
なお、上述した第1所定時間T1および第2所定時間T2は、予め記憶部40に保存(登録)されており、その保存(登録)は、操作キー35に為された操作によるものであってもよく、外部入出力端子36を介して接続された他の機器から取得するものであってもよい。
【0068】
このように、本実施例の測光装置10では、CCDアナログPCB38を介して出力される受光部12での受光光量に応じた大きさ(強度)のアナログ信号に対して、高い分解能を有する第1A/Dコンバータ37で生成したデジタル信号(基準測色値データ)に基づいて基準輝度値(基準測色値)を算出するとともに、高速な処理速度を有する第2A/Dコンバータ39で生成したデジタル信号(波形データ)に基づいて大きな極大値に対する小さな極大値の比率を算出し、その基準輝度値に大きな極大値に対する小さな極大値の比率を乗算することにより、クロストーク値を算出するものであることから、正確なクロストーク値を得ることができる。換言すると、測光装置10では、高い分解能を有する第1A/Dコンバータ37を介して得たデジタル信号(基準測色値データ)に基づいて十分な精度の輝度値を絶対値(基準輝度値(基準測色値))として算出するとともに、高速な処理速度を有する第2A/Dコンバータ39を介して得たデジタル信号(波形データ)に基づいて輝度値での相対関係(本来必要とする表示信号に対するクロストーク値の比率)を算出し、その絶対値を基準として相対関係からクロストーク値を算出するものであることから、正確なクロストーク値を得ることができる。
【0069】
また、測光装置10では、少なくとも4つの波形を存在させるように、立体視用ディスプレイ51(立体視画像システム50)で設定された点灯周波数に応じて設定した第2所定時間T2でのデジタル信号(波形データ)に基づいて、立体視用眼鏡52を通した立体視用ディスプレイ51からの表示信号での大きな極大値に対する小さな極大値の比率を算出することから、大きな極大値(本来必要とする表示信号)におけるピーク値を2つ以上抽出することができるとともに、小さな極大値(クロストーク)におけるピーク値を2つ以上抽出することができるので、表示信号(測定光)での大きな極大値に対する小さな極大値の比率をより正確に求めることができる。このため、より正確にクロストーク値を得ることができる。
【0070】
さらに、測光装置10では、少なくとも6つの波形を存在させるように立体視用ディスプレイ51(立体視画像システム50)で設定された点灯周波数に応じて第2所定時間T2を設定し、その第2所定時間T2でのデジタル信号での波形情報のうち、時間軸で見た最初の波形情報と最後の波形情報とを抽出対象から除外して、立体視用ディスプレイ51からの表示信号での大きな極大値に対する小さな極大値の比率を算出することから、立体視用ディスプレイ51(立体視画像システム50)に同期させることなく第2所定時間T2を開始しても、大きな極大値(必要とする表示信号)におけるピーク値を2つ以上抽出することができるとともに、小さな極大値(クロストーク)におけるピーク値を2つ以上抽出することができるので、表示信号(測定光)での大きな極大値に対する小さな極大値の比率をより正確に求めることができる。このため、同期させることなく(そのための機構を設けることなく)、より正確にクロストーク値を得ることができる。
【0071】
測光装置10では、第2A/Dコンバータ39が演算制御部31に内蔵されて設けられていることから、第2A/Dコンバータ39におけるアナログ−デジタル変換をより高速に行うことができるので、第2所定時間T2のデジタル信号(波形データ)に基づいて測定光での大きな極大値に対する小さな極大値の比率をより正確に求めることができる。このため、より正確にクロストーク値を得ることができる。
【0072】
測光装置10では、クロストーク値の測定を実行する際、外部入出力端子36に外部機器41を接続することで、CCDアナログPCB38を介して出力される受光部12での受光光量に応じた大きさ(強度)のアナログ信号を、外部機器41へと出力することができる。このため、使用者は、測光装置10による測定値としてのクロストーク値と併せて、生じたクロストークを含むアナログ信号を解析することができる。
【0073】
測光装置10では、CCDアナログPCB38を介して出力される受光部12での受光光量に応じた大きさ(強度)のアナログ信号を、外部入出力端子36から外部機器41へと出力する際、クロストーク値の測定に用いた時間範囲を示す測定範囲信号Smを併せて出力することができる。このため、使用者は、測光装置10による測定値としてのクロストーク値と、アナログ信号と、の相関関係を容易に把握することができる。
【0074】
測光装置10では、第1A/Dコンバータ37が演算制御部31の外部に設けられて構成されていることから、第2A/Dコンバータ(高速にデジタル信号に変換することのできる処理速度を有するもの)を内蔵する演算制御部を有するものであれば、当該第2A/Dコンバータよりも高い分解能を有する第1A/Dコンバータを設けるとともに演算制御部における演算処理方法(そのためのプログラム)を上述したように変更するだけで、既存の測光装置に適用することができる。
【0075】
したがって、本願発明に係る測光装置10では、クロストーク値を正確に測定することができる。
【0076】
なお、上記した実施例では、本発明に係る測光装置の一例について説明したが、測定対称物からの光を受光する受光部と、該受光部で取得した光量に基づいて測色値を算出する演算制御部と、取得した光量に応じる前記受光部からの信号に基づいて第1所定時間での基準測色値データを生成する第1処理部と、取得した光量に応じる前記受光部からの信号に基づいて第2所定時間での波形データを生成する第2処理部と、を備え、前記演算制御部は、前記第2処理部からの前記波形データにおける大きな極大値に対する小さな極大値の比率を算出し、前記第1処理部からの前記測色値データに基づく基準測色値に、算出した前記小さな極大値の比率を乗算することで前記測色値を算出する測光装置であればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0077】
また、上記した実施例では、本発明に係るプログラム(図4のフロ−チャートにおける制御処理を実現させるもの)の一例について説明したが、測定対称物からの光を受光する受光部と、該受光部で取得した光量に基づいて測色値を算出する演算制御部と、取得した光量に応じる前記受光部からの信号に基づいて第1所定時間での基準測色値データを生成する第1処理部と、取得した光量に応じる前記受光部からの信号に基づいて第2所定時間での波形データを生成する第2処理部と、を備える測光装置の前記演算制御部に、前記第2処理部からの前記波形データにおける大きな極大値に対する小さな極大値の比率を算出する機能と、前記第1処理部からの前記測色値データに基づく基準測色値に、算出した前記小さな極大値の比率を乗算することで前記測色値を算出する機能と、を実現させるプログラムであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0078】
さらに、上記した実施例では、測色値として輝度値に換算したクロストーク値を算出していたが、混入したクロストーク(他方の目に対応する表示信号)の強度を示す測色値であれば、色度等であってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0079】
上記した実施例では、演算制御部31が立体視用眼鏡52を通して取得した立体視用ディスプレイ51からの表示信号の基準輝度値(基準測色値)を算出するものとされていたが、第1A/Dコンバータ37で生成した基準測色値データ(第1A/Dコンバータ37により変換されたデジタル信号)に基づいて当該基準輝度値(基準測色値)を算出するものであれば、第1A/Dコンバータ37において基準輝度値(基準測色値)を算出するものであってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。なお、第1A/Dコンバータ37において基準輝度値(基準測色値)を算出する場合、例えば、第1A/Dコンバータ37にその算出のための演算制御部を設けるものであってもよく、第1A/Dコンバータ37にその算出のため演算回路を加えるものであってもよい。
【0080】
上記した実施例では、第1A/Dコンバータ37が16bitの分解能を有するものとされていたが、少なくとも第2A/Dコンバータ39よりも大きな分解能を有するものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0081】
上記した実施例では、第2A/Dコンバータ39が演算制御部31に内蔵されて設けられていたが、CCDアナログPCB38(受光部12)から出力されたアナログ信号を高速にデジタル信号に変換することのできる処理速度を有するものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0082】
上記した実施例では、第2A/Dコンバータ39が10bitの分解能を有するものとされていたが、CCDアナログPCB38(受光部12)から出力されたアナログ信号を高速にデジタル信号に変換することのできる処理速度を有するものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0083】
上記した実施例では、第2A/Dコンバータ39が11[μsec]毎にアナログ−デジタル変換を行うことのできる処理速度を有するものとされていたが、CCDアナログPCB38(受光部12)から出力されるアナログ信号における時間に対する強度の変化の態様を示す波形情報の保存を可能とする時間間隔で変換処理を行うことができるものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0084】
以上、本発明の測光装置およびプログラムを実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0085】
10 測光装置
12 受光部
31 演算制御部
37 第1A/Dコンバータ(第1処理部)
39 第2A/Dコンバータ(第2処理部)
50 (測定対象物としての)立体視画像システム
Pl 大きな極大値におけるピーク値
Ps 小さな極大値におけるピーク値
Sm 測定範囲信号
T1 第1所定時間
T2 第2所定時間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対称物からの光を受光する受光部と、
該受光部で取得した光量に基づいて測色値を算出する演算制御部と、
取得した光量に応じる前記受光部からの信号に基づいて第1所定時間での基準測色値データを生成する第1処理部と、
取得した光量に応じる前記受光部からの信号に基づいて第2所定時間での波形データを生成する第2処理部と、を備え、
前記演算制御部は、前記第2処理部からの前記波形データにおける大きな極大値に対する小さな極大値の比率を算出し、前記第1処理部からの前記測色値データに基づく基準測色値に、算出した前記小さな極大値の比率を乗算することで前記測色値を算出することを特徴とする測光装置。
【請求項2】
前記受光部は、受光した光量に応じる大きさのアナログ信号を出力し、
前記第2処理部は、前記受光部からのアナログ信号における波形情報を保存する処理速度の第2アナログ−デジタル変換部を有し、
前記第1処理部は、前記第2アナログ−デジタル変換部に比較して、前記受光部からのアナログ信号の大きさに対する分解能が大きい第1アナログ−デジタル変換部を有することを特徴とする請求項1に記載の測光装置。
【請求項3】
前記第2アナログ−デジタル変換部は、前記演算制御部に内蔵されていることを特徴とする請求項2に記載の測光装置。
【請求項4】
前記第1アナログ−デジタル変換部は、前記演算制御部とは別に設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の測光装置。
【請求項5】
前記第2所定時間は、少なくとも2つの前記大きな極大値と少なくとも2つの前記小さな極大値とを含む前記波形データを生成することを可能とすべく、前記測定対称物における出力特性に応じて設定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の測光装置。
【請求項6】
前記演算制御部は、前記第2所定時間の開始時点から前記第2所定時間の終了時点に至る間を示す測定範囲信号を生成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の測光装置。
【請求項7】
測定対称物からの光を受光する受光部と、該受光部で取得した光量に基づいて測色値を算出する演算制御部と、取得した光量に応じる前記受光部からの信号に基づいて第1所定時間での基準測色値データを生成する第1処理部と、取得した光量に応じる前記受光部からの信号に基づいて第2所定時間での波形データを生成する第2処理部と、を備える測光装置の前記演算制御部に、
前記第2処理部からの前記波形データにおける大きな極大値に対する小さな極大値の比率を算出する機能と、
前記第1処理部からの前記測色値データに基づく基準測色値に、算出した前記小さな極大値の比率を乗算することで前記測色値を算出する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−247285(P2012−247285A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118746(P2011−118746)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】