説明

測定具

【課題】例えば、壁つなぎを取り付ける際に、屈折点経由での2点間の距離が所定の値の範囲内であるか否かを容易に確認でき、しかも低コストで製作可能な測定具を提供する。
【解決手段】測定具Cは直角三角形状で、斜辺21以外の2つの辺22のなす角度は2本の基準線1のなす角度に等しく直角となっており、2本の基準線1のなす角度に等しい角度で交わる2つの辺を有している。斜辺以外21の2つの辺22は、施工図Bと同一の縮尺で305mm間隔の目盛23が記されている。即ち、基準線1のなす角度に等しくなるように角度が設定された2つの辺22に沿ってモジュールに基づく目盛23が記されている。測定具Cの上面には、直角の頂点24からの距離の合計値が上限値に等しくなるような組み合わせを示す複数の「組み合わせ表示線25」が記されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、図上の2点間の、ある点を経由した距離が所定の数値以下であるか否かを容易に確認することができる測定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の建築工事において、建物の外周面に所定の数値以下の間隔となるように部材を設置することがある。例えば、建物の建築中に建物の外周部にそって仮設する足場のぐらつきや揺れを防止する為に、建物の外周部の壁、梁等と足場とを壁つなぎで連結することが行われており(例えば特許文献1を参照)、この壁つなぎには平面的な取り付け間隔に上限値が設定され、壁つなぎ1ヶ所あたりに作用する荷重が許容値を超えないように設置される。
【0003】
所定の平面モジュールを有し、該平面モジュールに基づく基準線上に各種部材の取り付け用のボルト孔を穿孔した梁を配置し構成した工業化住宅においては、この壁つなぎを、梁のフランジやウェブのボルト孔を利用して直接、或は壁つなぎ取り付け用のアンカー部材を介して固定することがある。この場合、壁つなぎの取り付け間隔も平面モジュールの整数倍となり、取り付け間隔の上限値も平面モジュールの整数倍となるように設定される。
【0004】
また、壁つなぎの取り付け位置は所定の縮尺で描かれた梁伏図等の施工図に表記され、施工図の作成時には、壁つなぎの取り付け間隔が上限値以下であることを確認する作業が行われる。
【0005】
この確認作業は、隣接する壁つなぎが同一の壁面に配置される場合は、単に施工図と同一縮尺の目盛が記された物差し(スケール)を施工図上の壁つなぎ取り付け位置にあてることで容易に行うことができる。
【0006】
しかし、隣接する壁つなぎが、建物の出隅部(或は入隅部)を越えて、隣接する他の壁面に配置される場合、施工図上で建物の出隅部(或は入隅部)から夫々の壁つなぎまでの間隔を物差し(スケール)で測定し、さらにその値を合計するという作業が必要であり、確認作業に時間がかかっていた。
【0007】
一方、地図上で道のりの測定が可能なマップメータ、カーブメータ等と呼ばれる測定装置があり(例えば特許文献2など)、建築図面上での部材の取り付け間隔の確認作業にも応用することが可能である。しかし、複雑な機構を有する為高価であり、しかも図面上で測定すべきルートに沿ってトレースする必要があり作業時間の軽減にはつながらなかった。
【0008】
【特許文献1】特開平5−340086号公報
【特許文献2】実開昭60−154863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題を解決し、屈折点経由での2点間の距離が所定の値の範囲内であるか否かを容易に確認でき、しかも低コストで製作可能な測定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する為の本発明に係る測定具の構成は、平面上で交差する2本の基準線線上において前記2本の基準線の交点からの距離が所定のモジュールの整数倍となるように設定されたポイントと、前記交点との間の距離の合計値が、前記モジュールの整数倍で表された所定の上限値以下であることを確認するための測定具であって、前記2本の直線のなす角度に等しい角度で交わる2つの辺を有する板材からなり、前記2つの辺に沿って前記所定のモジュールに基づく目盛が記され、前記2つの辺が構成する頂点からの距離の合計値が前記上限値に等しくなるような目盛の組み合わせを示す組み合わせ表示線が複数記されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る測定具によれば、交差する2本の基準線に測定具の前記2本の基準線のなす角度に対応した角度で交わる2つの辺を重ね合わせるとともに、2つのポイントと、測定具に示された組み合わせ表示線で組み合わされた一対の目盛との位置関係を確認することによって、基準線の交点から夫々のポイントまでの距離の合計値(換言すると、基準線の交点経由での2つのポイント間の距離)と所定の値との比較を容易に行うことができる。
【0012】
また、本測定具は板材を2本の直線のなす角度に対応した形状に加工し、目盛や目盛の組み合わせを記しただけの単純な構成の為、多大なコストをかけることなく製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る測定具の好ましい実施形態について図を用いて説明する。本実施形態は、鉄骨造の工業化住宅の外周部に取り付ける仮設の足場用の壁つなぎを固定するためのアンカー部材の取り付け間隔が上限値の範囲内であるか否かを施工図上で確認するための測定具であり、図1は建物にアンカー部材が取り付けられた状態を示す正面図及び断面図、図2はアンカー部材の取り付け位置を示した施工図(2階梁伏図)、図3は本発明に係る測定具を示す図、図4〜図6は本発明に係る測定具の使用方法を示す図である。
【0014】
図1に示す工業化住宅である建物Aは、305mmの平面モジュールを有し、モジュールに基づく格子状の基準線(通り芯)1上に鉄筋コンクリート造の布基礎7を構築し(図7参照)、該布基礎6上に柱(不図示)、梁2、耐震要素(不図示)等を組み立てて上部架構を構成し、更にモジュールの等倍及び2倍の幅(305mm、610mm)を有するALCからなる床パネル3、壁パネル4によって床・壁が構成される。梁2のフランジやウェブには汎用的に付帯部材が取り付けられるボルト孔2aがモジュールに基づくピッチで穿設されている。
【0015】
図1に示すアンカー部材5は、外周部の梁2の外部側のフランジに前記ボルト孔2aを利用してボルト6にて取り付けられる。従って、アンカー部材5の間隔はモジュールの整数倍となり、出隅或は入隅からの距離もモジュールの整数倍となる。また、アンカー部材5の取り付け間隔の上限値は、平部、出隅まわし部、入隅まわし部いずれの場合であってもモジュールの12倍である3660mmに設定されている。また、アンカー部材5が壁パネル4の目地部に位置するように壁パネル4の割り付けが決定されている。
【0016】
図2に示す施工図(2階梁伏図)Bにおいて、基準線1は一点鎖線で表記され、基準線1に沿って配置される梁2は各梁2の長さに対応した長さの棒状の記号11で表記され、アンカー部材5の取り付け位置は三角の記号12で表記されている。
【0017】
図3に示す測定具Cは、施工図B上で、出隅部13あるいは入隅部14におけるアンカー部材5の取り付け位置を示す記号12の間隔(以下単にアンカー部材12の間隔とする)が前記上限値の範囲内であるか否かを確認するためのものである。
【0018】
測定具Cはアクリル樹脂からなる透明の板材からなる。透明の板材で構成されている為、測定具Cを施工図B上に置いた状態でも図が透視でき作業性がよい。
【0019】
測定具Cの形状は直角三角形状である。即ち、斜辺21以外の2つの辺22a、22bのなす角度は2本の基準線1のなす角度に等しく直角となっており、2本の基準線1のなす角度に等しい角度で交わる2つの辺を有している。
【0020】
また、測定具Cの斜辺以外21の2つの辺22a、22bは、施工図Bと同一の縮尺で305mm間隔の目盛23が記されている。即ち、基準線1のなす角度に等しくなるように角度が設定された2つの辺22a、22bに沿ってモジュールに基づく目盛23が頂点24を起点として記されている。測定具Cの上面には、頂点24からの距離の合計値が上限値3660mmに等しくなるような組み合わせを示す複数の組み合わせ表示線25が記されている。組み合わせ表示線25は異なる色で記されており、目盛23の組み合わせが容易に確認できるように構成されている。(本図では色の表現が困難であるので線種を変えて表現している。)
【0021】
測定具Cを用いたアンカー部材12の間隔の確認方法は以下のとおりである。
(1)施工図B上で出隅部13(あるいは入隅部14)の直交する2本の基準線1の交点と測定具Cの頂点24とを一致させるとともに、2本の基準線1と測定具Cの目盛の記された2つの辺22とを重ね合わせる。
(2)測定具Cの一方の辺22上における頂点24に最も近いアンカー部材12の位置に一致する目盛23を確認する。
(3)上記目盛23と組み合わせ表示線25によって組み合わされた他方の辺22の目盛23と他方のアンカー部材12との位置関係を確認する。
(4)他方のアンカー部材12が他方の辺22の目盛23よりも頂点24側に位置する、あるいは目盛23に一致する場合、出隅部13(あるいは入隅部14)でのアンカー部材12の間隔は上限値の範囲内であることがわかる。
【0022】
例えば、図4において、出隅部13aを基準とした場合の最初のアンカー部材12aは一方の辺22aの目盛23aに一致し、他方のアンカー部材12bは組み合わせ表示線25aによって組み合わされた他方の辺22bの目盛23bよりも頂点24側に位置する。(即ち、他方のアンカー部材12bは一目盛分だけ出隅部13a寄りに位置する。)従って、出隅部13aにおいてアンカー部材12aと12bとの間隔は上限値3660mmよりも305mmだけ小さな間隔であり、上限値の範囲内であることがわかる。
【0023】
また、図5に示す入隅部14においては、2つのアンカー部材12c、12dの位置が一本の組み合わせ表示線25aによって組み合わされた一対の目盛23a、23cに一致することが確認でき、アンカー部材12cと12dとの間隔は上限値に一致し経済的な部材配置がなされていることがわかる。
【0024】
また、他方のアンカー部材12(例えば、図4に示すアンカー部材12aよりも右側に位置するアンカー部材)が他方の辺22の目盛23よりも測定具Cの頂点24から離れた位置にある場合、出隅部13(あるいは入隅部14)でのアンカー部材12の間隔は上限値を越えていることがわかる。
【0025】
例えば、図6において、他方のアンカー部材12fの位置と、一方のアンカー部材12eの位置に一致する目盛23dと組み合わせ表示線25bによって組み合わされた目盛23eの位置とを比較すると前者のほうが610mmだけ頂点24よりも離れた位置にあり、アンカー部材12eと12fとの間隔は上限値を越えていることがわかる。この場合、アンカー部材12の位置を変更しその間隔が上限値を越えないようにする。
【0026】
上記の如く、本発明に係る測定具Cを使用することにより施工図B上で建物Aの出隅部13(あるいは入隅部14)におけるアンカー部材12の間隔の確認作業を短時間に容易に行うことができる。また、本測定具Cは、直角三角形の透明アクリル板に目盛23と組み合わせ表示線25を記すだけの構成であるので低コストで製作することができる。
【0027】
図7に示すように、布基礎7の上端部に中心が基準線に一致するように凹状に形成される床下換気孔7aを出隅部13(あるいは入隅部14)に所定の間隔以下で配置する場合においても、床下換気孔7aの配置を表記した図面と、床下換気孔の間隔の上限値に基づく組み合わせ表示線を記した測定具を用意することにより、床下換気孔7aの間隔の確認作業を同様の手法を用いて容易に行うことができる。
【0028】
また、図8に示すように、壁パネル4の305mmピッチの基準線の中間位置に穿設される換気ガラリ4aを出隅部あるいは入隅部に所定の間隔以下で配置する場合においても、その間隔の確認作業を同様の手法を用いて容易に行うことができる。
【0029】
上記実施例は2本の基準線が直交する一般的な建物における測定具の適用例であるが、基準線の交わる角度は特に限定されるものでなく、任意の角度であってよく、その角度に応じて測定具の2つの辺のなす角度を設定すればよい。また、測定具の形状も三角形に限定されるものではなく、例えば、2本の基準線のなす角度に等しい角度で交わる2つの辺に替えて透明な板に2本の基準線に対応する2本の直線を記しこの直線に沿って目盛を記したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る測定具は、建築の分野に限らず、2点間の他の1点経由での距離が所定の間隔あるいは所定の間隔以内であることを確認する場合に広く応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)建物にアンカー部材5が取り付けられた状態を示す正面図である。(b)建物にアンカー部材5が取り付けられた状態を示す断面図である。
【図2】アンカー部材の取り付け位置を示した施工図(2階梁伏図)である。
【図3】本発明に係る測定具を示す図である。
【図4】測定具の使用方法を示す図である。
【図5】測定具の使用方法を示す図である。
【図6】測定具の使用方法を示す図である。
【図7】測定具の他の適用部位を示す図である。
【図8】測定具の他の適用部位を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
A…建物
B…施工図(2階梁伏図)
C…測定具
1…基準線
2…梁
2a…ボルト孔
3…床パネル
4…壁パネル
4a…換気ガラリ
5…アンカー部材
6…ボルト
7…布基礎
7a…床下換気孔
11…梁(を示す記号)
12(12a〜12f)…アンカー部材
13(13a、13b)…出隅部
14…入隅部
21…斜辺
22(22a、22b)…辺
23(23a〜23e)…目盛
24…頂点
25(25a、25b)…組み合わせ表示線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上で交差する2本の基準線の交点からの距離が所定のモジュールの整数倍となるように夫々の基準線上に設定されたポイントと、前記交点との間の距離の合計値を、前記モジュールの整数倍で表された所定の値と比較するための測定具であって、
前記2本の基準線のなす角度に等しい角度で交わる2つの辺を有する板材からなり、
前記2つの辺に沿って前記所定のモジュールに基づく目盛が記され、
前記2つの辺が構成する頂点からの距離の合計値が前記所定の値に等しくなるような目盛の組み合わせを示す組み合わせ表示線が複数記されたことを特徴とする測定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−115642(P2009−115642A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289463(P2007−289463)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】