説明

測定器

【課題】検体センサの誤挿入を防止することができる測定器を提供する。
【解決手段】 検体の基質の成分量を測定する測定器であって、検体が付着される検体センサが装着される装着部と、前記検体センサに接続される制御部とを備えており、前記制御部は、前記検体センサが前記装着部に装着された際の導通信号出力値を複数回に亘って検出する導通検出部と、検出された各導通信号出力値が、予め定められた閾値範囲内に含まれるか否かを判定する閾値判定部と、検出された複数の前記導通信号出力値のうち、前記閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が、所定数以上である場合に、前記装着部に装着された前記検体センサが正規品であると判断する装着判断部と、を備える測定器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定器、特に体液等の検体の基質の成分量を測定する測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物、酵素、抗体、DNA、RNA等の基本生体要素を、分子識別素子として応用した検体センサがある。この検体センサは、基本生体要素が基質を認識したときに起こる反応、例えば微生物の呼吸による酸素の消費、酵素反応、発光等を利用することにより、試料液中に含まれる基質を定量または基質の存在を検知する。
【0003】
各種検体センサの中でも酵素センサ(酵素を用い対象の基質と反応させることにより基質を検出/定量する検体センサ)の実用化が進んでいる。例えば、グルコース、乳酸、コレステロール、アミノ酸等を対象の基質とする酵素センサは、対象の基質名に基づき例えばグルコースセンサ、コレステロールセンサ等とも呼ばれ、医療計測や食品工業等に利用されている。こうした酵素センサを用いた計測方式によれば、例えば、検体に含まれる特定の物質(基質)と酵素などとの反応により生成する電子によって電子伝達体を還元し、この電子伝達体の還元量を、測定器で電気化学的に計測することにより、検体中に含まれる基質を定量する。
【0004】
このような検体センサに要求される性能の1つとして、極微量の検体でも精度良く測定が可能であることが挙げられる。例えば、糖尿病患者がグルコースセンサを用いる場合は、検体は患者から採取した血液であることが多い。患者の負担を減少させるためには、採取する血液はできるだけ少ないことが望ましい。
【0005】
検体センサを用いて血液等の検体を検査する測定器としては、特許文献1や特許文献2に開示されているようなものが提案されている。この測定器は、筐体と、この筐体に設けられるとともに血液が付着される検体センサが装着される装着部と、検体センサに接続される測定回路部と、この測定回路部に接続された表示部とを備えている。また、このような測定器は、検体センサが装着部に挿入されたことを自動的に検知するために、検体センサが装着部に装着された際の導通信号を検出できるように構成されている。
【0006】
このような構成の測定器を使用する場合、先ず、検体センサを装着部に装着し、この検体センサの検体導入部に患者から採取した血液(検体)を点着させる。この血液は検体導入部から検体センサの内部に取り込まれて、検体センサ内の試薬と反応して化学変化する。この化学変化を測定回路部で電気的に測定し、その結果を表示部に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−63577号公報
【特許文献1】特公平8−20412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のような測定器や検体センサは多種多様のものが存在し、測定器の利用者が複数種類の測定器や検体センサを保有する場合がある。このような状況下では、使用する測定器に適合しない非正規品の検体センサ(例えば、他社製の検体センサ)を誤って装着部に挿入してしまう場合がある。非正規品の検体センサを測定器に挿入した場合、通常、測定器は、検体センサが装着部に挿入された際の適正な導通信号を検出できないため動作せず、利用者は、非正規品の検体センサを挿入したことや、何らかの異常が発生したことに気づくことになるが、測定器および検体センサの種類によっては、測定器に検体センサを挿入する際の接触抵抗により、非正規品の検体センサを測定器に挿入した場合であっても、測定器が正規品の検体センサが挿入されたと認識してしまうおそれがあった。
【0009】
このような場合、測定器の利用者は、非正規品の検体センサを測定器に挿入したこと(検体センサの誤挿入)に気づかずに、検体センサの検体導入部に血液等の検体を点着させる等して検体検査を続行することになり、正確な検体検査を行なうことができないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、検体センサの誤挿入を防止することができる測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、検体の基質の成分量を測定する測定器であって、検体が付着される検体センサが装着される装着部と、前記検体センサに接続される制御部とを備えており、前記制御部は、前記検体センサが前記装着部に装着された際の導通信号出力値を複数回に亘って検出する導通検出部と、検出された各導通信号出力値が、予め定められた閾値範囲内に含まれるか否かを判定する閾値判定部と、検出された複数の前記導通信号出力値のうち、前記閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が、所定数以上である場合に、前記装着部に装着された前記検体センサが正規品であると判断する装着判断部と、を備える測定器より達成される。
【0012】
上述の測定器は、検体センサが測定器に挿入された際に検出される導通信号の出力値が所定の閾値範囲内であるか否かを複数回に亘って判定すると共に、検出された複数の導通信号出力値のうち、閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が所定数以上である場合に、装着部に装着された検体センサが正規品であると判断するため、検体センサの誤挿入を効果的に防止することができる。例えば、非正規品の検体センサを測定器に挿入した場合に一時的な接触抵抗が発生したとしても、この接触抵抗は不安定であるため、検体センサが測定器に挿入された際に検出される導通信号の出力値が複数回に亘って所定の閾値範囲内の値となることはない。したがって、非正規品の検体センサが装着部に挿入された場合に、誤って正規品の検体センサが挿入されたと判断してしまうことを効果的に防止できる。なお、正規品の検体センサとは、当該測定器とセットで使用される専用の検体センサであって、正常に機能する検体センサを意味する。したがって、当該測定器とセットで使用されない検体センサや、専用の検体センサであっても、何らかの異常を有する検体センサは、正規品の検体センサの概念から除外される。
【0013】
また、この測定器において、前記装着判断部は、前記導通検出部が順次検出した複数の前記導通信号出力値のうち、連続的に前記閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が所定数以上である場合に、前記装着部に装着された前記検体センサが正規品であると判断することが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、正規品の検体センサが測定器に挿入されたか否かの判断をより厳しい条件で行なうため、より一層効果的に、検体センサの誤挿入を防止することが可能になる。
【0015】
また、前記装着判断部に接続され、前記装着部に装着された前記検体センサが正規品であることを表示する表示部を更に備えることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、正規品の検体センサが装着されたことが表示部に表示されるため、測定器の利用者は、正規品である検体センサが測定器に装着されたことを確実に認識することができる。
【0017】
また、前記装着判断部は、検出された複数の前記導通信号出力値のうち、前記閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が、所定数未満である場合に、前記装着部に装着された前記検体センサが正規品でないことを喚起する情報を出力するアラーム情報出力部を備えることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、測定器に適合しない非正規品の検体センサ、あるいは、何らかの異常のある検体センサを測定器に挿入したことを利用者に確実に知らせることが可能となるため、測定器の利用者が、誤って検体センサに血液等の検体を点着させる等して検体検査を続行してしまうことを効果的に防止することができる。
【0019】
また、予め定められた前記閾値に関する情報が格納される閾値記憶部と、前記閾値記憶部に格納される前記閾値に関する情報を変更する閾値変更部と、を備えることが好ましい。
【0020】
非正規品の検体センサの種類によっては、測定器に挿入した場合に導通検出部が検出する導通信号出力値が、正規品の検体センサにおける導通信号出力値と近い値を示すものも存在する。このような場合、測定器は、挿入された検体センサが正規品であるか、非正規品であるかの区別がつかないことになるが、上述のように、予め定められる閾値に関する情報を変更できるように構成することにより、測定器における閾値範囲の変更後においては、非正規品の検体センサの誤挿入を検知することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、検体センサの誤挿入を防止することができる測定器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る測定器の概略構成図である。
【図2】図1に示す測定器の電気的な構成を示すブロックである。
【図3】測定器に装着される検体センサの概略構成図である。
【図4】図1に示す測定器が備える制御部と検体センサとを接続する回路構成を示す概略構成図である。
【図5】閾値記憶部に記憶される閾値の例を示す説明図である。
【図6】図1に示す測定器が備える導通検出部、閾値判定部及び装着判断部の作動を示すフローチャートである。
【図7】図1に示す測定器が備える装着判断部の変形例における作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実態形態にかかる測定器について添付図面を参照して説明する。本発明の一実施形態に係る測定器は、血液や尿等の検体の基質の成分量を測定する測定器であって、専用の検体センサとセットで使用されるものである。図1は、本発明の一実施形態に係る測定器1の概略構成図であり、図2は、測定器1の電気的な構成を示すブロック図である。また、図3は、測定器1に装着される検体センサ50の概略構成図である。
【0024】
先ず、測定器1に装着される検体センサ50について説明する。この検体センサ50は、取り替え式のセンサであり、図3に示すように、絶縁体からなる基板51と、基板51の上に設けられる測定用作用電極52と、測定用作用電極52と一定間隔を空けて基板51の上に設けられる測定用対向電極53と、測定用作用電極52および測定用対向電極53の上に設けられる反応部54と、血液等の検体を反応部54まで導入する検体導入部55と、を備えている。また、検体センサ50は、測定用作用電極52及び測定用対向電極53からそれぞれ延長された端子56,57と、当該端子56,57と一定間隔を空けて設けられる装着確認用端子58とを備えている。
【0025】
基板51を構成する絶縁体は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ユニットおよび芳香族ユニットからなる生分解性ポリエステル樹脂などのポリエステル系樹脂シート、耐熱性、耐薬品性、強度などに優れるポリアミドシート、ポリイミドフィルムシートなどのプラスチックシート、セラミックなどの無機系基板などである。
【0026】
両電極52,53は、ほぼ半円形に構成され、両電極52,53によってほぼ円形となるようになっている。半円形の直線部分が一定間隔で対向するようになっている。両電極52,53は、白金、金、パラジウム、インジウム−スズ酸化物などの導体によって形成される。形成方法としては、ホットスタンピングなどが考えられるが、真空蒸着又はスパッタリングによる方法が微細な電極パターンを精度良く形成できるので好ましい。スパッタリングの場合は、両電極形成外をマスキングすることで一挙に形成できる。
【0027】
反応部54は、酸化還元酵素および電子受容体を含んで構成される。反応部54の上に血液等の検体が付着すると、反応部54と検体とが反応し、両電極52,53間に電子の授受が発生する。このとき、反応部54の材料によって血糖値等の検体基質の成分量に比例した電子の授受を生じさせることができる。反応部54は、液体状の材料をディスペンサによって所望の位置に滴下し、乾燥して形成する。
【0028】
検体導入部55は、基板51の上にスペーサー59を介して設けられたカバー60の先端縁と、基板51の先端縁とによって構成される。すなわち、スペーサー59によって先端縁同士の間に生じた隙間によって検体導入部55が構成される。検体導入部55から導入された検体は毛細管現象によってスペーサー59の先端縁61まで到達することが可能である。
【0029】
次に測定器1について説明する。測定器1は、図1や図2に示すように、測定器本体2、装着部3、表示部4、操作部5、電源部6及び制御部7を備えている。測定器本体2は、合成樹脂等の材料により形成される筐体であり、その内部に、電源部6及び制御部7を収容している。
【0030】
装着部3は、検体センサ50が挿入される部位であり、測定器本体2の周縁部に設けられる中空状部31を備えている。この中空状部31の奥には、検体センサ50に形成された端子に接続されるコネクタ(図示せず)が設けられており、このコネクタは回路を介して制御部7に接続している。
【0031】
検体センサ50と制御部7とを接続する回路は、図4に示す構成を備えており、検体センサ50を装着部3に挿入した際に、測定用作用電極52及び測定用対向電極53からそれぞれ延長された端子56,57に個別に接続する端子9,10や、装着確認用端子58に接続する端子11,12を備えている。端子11,12は、装着確認用端子58を介して電気的に接続される。
【0032】
表示部4は、検体センサ50が装着部3に装着されたことや、検体基質の成分量の測定結果や、測定が正しく行なわれなかったことを示すエラーメッセージ等を表示する液晶モニタ等であり、制御部7に電気的に接続している。この表示部4は、液晶等の表示画面が外部に露出するように測定器本体2に設置されている。
【0033】
操作部5は、測定器1に操作信号を入力するために利用されるものであり、例えば電源のオン/オフを指示する操作ボタン、測定データの読み出しを指示する操作ボタン、検体測定を継続することを指示する操作ボタン等を備え、制御部7に電気的に接続している。各操作ボタンは、外部に露出するように測定器本体2に設置されている。
【0034】
電源部6は、表示部4や制御部7等の測定器1の構成要素に駆動電力を供給するものであり、電池により構成されている。電源部6に用いられる電池としては、市販の電池或いは専用の充電池等を使用することができる。なお、電池の代わりに、ACプラグをACコンセントに差し込むことで、商用電源から電力供給されるように電源部6を構成してもよい。
【0035】
制御部7は、図2のブロックに示すように、導通検出部71と、閾値判定部72と、装着判断部73と、検体測定部74とを備えている。
【0036】
導通検出部71は、検体センサ50が装着部3に装着された際に生じる導通信号出力値を複数回に亘って検出する機能を有している。具体的には、検体センサ50の装着確認用端子58を介して接続される端子11,12間の抵抗値(導通信号出力値)を複数回に亘って検出するように構成する。抵抗値を検出する時間間隔や、検出回数については特に限定されないが、例えば、10msec毎に10回検出するように構成する。なお、本実施形態においては、導通検出部71が検出する導通信号として、端子11,12間の抵抗値を採用しているが、抵抗値の他、端子11,12間の電圧値や電流値を検出するようにしてもよい。
【0037】
閾値判定部72は、導通検出部71において検出された各導通信号出力値が、予め定められた閾値範囲内に含まれるか否かを判定する機能を有している。この閾値判定部72は、判定基準となる予め定められた閾値に関する情報が格納される閾値記憶部72aを備えている。ここで、測定器1は高い測定精度が要求されるため、製造段階や使用段階において、要求される測定精度を維持していることを確認する必要がある。そのため、実際に検体が付着されて使用される検体センサ50の他、検定用の各種検査用チップを装着部3に装着して動作確認が行なわれる。このような状況下では、測定器1に装着されたものが、検体センサ50なのか検査用チップなのかを正確に認識する必要があるため、検体センサ50や検査用チップ毎に個別に設定される閾値が閾値記憶部72aに記憶されている。閾値記憶部72aに記憶される閾値の例を図5の説明図に示す。なお、図5においては、導通検出部71が検出する導通信号として抵抗値を採用している。図5からも分かるように、閾値A〜閾値Bの範囲であれば検体センサ50が装着されたと判断し、閾値C〜閾値Dの範囲であれば検査用チップaが装着されたと判断する。同様に、閾値E〜閾値Fの範囲であれば検査用チップbが、閾値G〜閾値Hの範囲であれば検査用チップcが、閾値I〜閾値Jの範囲であれば検査用チップdが、それぞれ装着されたと判断する。なお、検体センサ50や検査用チップa〜dの閾値範囲は、種々設定することができるが、例えば、検体センサ50の閾値範囲を0±20Ω、検査用チップa〜dの閾値範囲をそれぞれ、3.9kΩ±20Ω、6.2kΩ±20Ω、8.2kΩ±20Ω、10kΩ±20Ωとする。
【0038】
装着判断部73は、検出された複数の導通信号出力値のうち、閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が、所定数以上である場合に、装着部3に装着された検体センサ50(或いは検査用チップ)が正規品であると判断する機能、及び、正規品の検体センサ50(或いは検査用チップ)が装着部3に装着されたと判断した場合に、その情報を表示部4に表示する指令を発する機能を有している。例えば、導通検出部71において、抵抗値(導通信号出力値)を10msec毎に10回検出する場合、閾値判定部72において、閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が、3以上であれば、適切な検体センサ50(或いは検査用チップ)が装着部3に装着されたと判断し、その情報を表示部4に表示する指令を発する。なお、装着判断部73における判断基準である“所定数”は、導通検出部71の検出精度や、検体センサ50(或いは検査用チップ)における装着確認用端子58の抵抗値の作成精度によって変動するものであり、上記“3”という数に限定されない。
【0039】
上述の導通検出部71、閾値判定部72及び装着判断部73の作動について図6に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。なお、導通検出部71において検出される導通信号出力値を抵抗値とし、当該抵抗値を10msec毎に10回検出するものとする。また、装着判断部73は、検出された複数の抵抗値のうち、閾値範囲内であった抵抗値の個数が、3以上である場合に、正規品の検体センサ50(或いは検査用チップ)が装着部3に装着されたと判断するものとする。
【0040】
まず、測定器1の装着部3に検体センサ50或いは検査用チップを装着する。これにより、回路における端子11,12が装着確認用端子58を介して電気的に接続される。導通検出部71は、端子11,12の抵抗値を検出し(抵抗値検出)、閾値判定部72は、検出した抵抗値が、記憶部に記憶される各閾値範囲のどの範囲内に含まれるのかを判断する(閾値判定)。なお、このとき、導通検出部71が備える記憶部が、抵抗値検出回数を“1”として記憶する(トータルカウンタの数値が“1”として記憶される)。
【0041】
閾値判定部72が、検体センサ50の閾値範囲内であると判断した場合には、検体センサ50の閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が“1”であるとして記憶される(センサカウンタの数値が“1”として記憶される)。
【0042】
また、閾値判定部72が、検査用チップa〜dのいずれかの閾値範囲内であると判断した場合には、対応する検査用チップの閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が“1”であるとして記憶される(検査用チップa〜dのいずれかのチップカウンタの数値が“1”として記憶される)。
【0043】
次に、上述の導通検出部71における抵抗値検出回数の“1”に1をプラスして“2”とし、再度、導通検出部71は、端子11,12の抵抗値を検出し(抵抗値検出)、閾値判定部72は、検出した抵抗値が、記憶部に記憶される各閾値範囲のどの範囲内に含まれるのかを判断する(閾値判定)。閾値判定部72が、検体センサ50の閾値範囲内であると判断した場合には、検体センサ50の閾値範囲内であった導通信号出力値の個数“1”に1をプラスして“2”する。また、検査用チップa〜dのいずれかの閾値範囲内であると判断した場合には、対応する検査用チップの閾値範囲内であった導通信号出力値の個数に1をプラスして“2”する。
【0044】
このような工程を繰り返し、例えば、検体センサ50の閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が“3”となれば、装着部3に装着されたものが正規品の検体センサ50であると最終判断し、装着部3に装着されたセンサの判別を終了する。同様に、各検査用チップの閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が“3”となれば、装着部3に装着されたものが正規品の検査用チップであると最終判断し、装着部3に装着されたセンサの判別を終了する。なお、装着部3に装着されたセンサの判別を終了した後、装着判断部73は、正規品の検体センサ50(或いは検査用チップ)が装着部3に装着されたことを示す情報を表示部4に表示する指令を発する。
【0045】
また、導通検出部71における抵抗値検出回数が“10”に達したとしても、検体センサ50の閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が“3”以上、或いは、検査用チップの閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が“3”以上とならない場合には、装着部3に装着されたものが適正な検体センサ50や検査用チップではないと判断し、装着部3に装着されたセンサの判別処理を終了する。
【0046】
検体測定部74は、測定用作用電極52と測定用対向電極53との間に流れる電流を測定し、測定された電流値から酵素と反応した検体の基質成分量を求める機能を有している。なお、この検体測定部74は、求めた基質成分量に関する種々のデータを記憶する記憶部を備えるように構成してもよい。
【0047】
本実施形態に係る測定器1は、検体センサ50(或いは検査用チップ)が測定器1に挿入された際に検出される導通信号の出力値が所定の閾値範囲内であるか否かを複数回に亘って判定すると共に、検出された複数の導通信号出力値のうち、閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が所定数以上である場合に、正規品の検体センサ50(或いは検査用チップ)が装着部3に装着されたと判断するため、検体センサ50(或いは検査用チップ)の誤挿入を効果的に防止することができる。例えば、非正規品の検体センサを測定器1に挿入した場合に一時的な接触抵抗が発生したとしても、この接触抵抗は不安定であるため、非正規品の検体センサが測定器1に挿入された際に検出される導通信号の出力値が複数回に亘って所定の閾値範囲内の値となることはない。したがって、非正規品の検体センサが装着部3に挿入された場合に、誤って正規品の検体センサ50が挿入されたと判断してしまうことを効果的に防止できる。
【0048】
また、本実施形態に係る測定器1は、制御部7が有する装着判断部73に接続され、正規品である検体センサ50(或いは検査用チップ)が装着部3に装着されたことを表示する表示部4を備えているため、測定器1の利用者は、正規品である検体センサ50(或いは検査用チップ)が測定器1に装着されたことを確実に認識することができる。
【0049】
以上、本発明に係る測定器1の実施形態について説明したが、具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、図7のフローチャートに示すように、上記実施形態において、装着判断部73が、導通検出部71が順次検出した複数の導通信号出力値のうち、連続的に閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が所定数以上である場合に、正規品の検体センサ50(或いは検査用チップ)が装着部3に装着されたと判断するように構成してもよい。
【0050】
このような構成によれば、正規品の検体センサ50(或いは検査用チップ)が測定器1に挿入されたか否かの判断をより厳しい条件で行なうことになるため、より一層効果的に、検体センサ50(或いは検査用チップ)の誤挿入を防止することが可能になる。例えば、非正規品の検体センサを測定器1に挿入した場合に一時的な接触抵抗が発生したとしても、この接触抵抗は不安定であるため、検体センサが測定器1に挿入された際に検出される導通信号の出力値が複数回に亘って連続的に所定の閾値範囲内の値となることはない。したがって、非正規品の検体センサが装着部3に挿入された場合に、誤って正規品の検体センサ50が挿入されたと判断してしまうことをより確実に防止できる。
【0051】
また、上記実施形態において、装着判断部73が、検出された複数の導通信号出力値のうち、閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が所定数未満である場合に、正規品である検体センサ50(或いは検査用チップ)が装着部3に装着されていないことを喚起する情報を出力するアラーム情報出力部を備えるように構成してもよい。このような構成を採用する場合、測定器1に適合しない非正規品の検体センサや、何らかの異常のある検体センサを、測定器1に挿入したことを確実に利用者に知らせることが可能となるため、測定器1の利用者が、誤って検体センサの検体導入部に血液等の検体を点着させる等して検体検査を続行してしまうことを効果的に防止することができる。
【0052】
また、上記実施形態において、閾値記憶部72aに格納される閾値に関する情報を変更する閾値変更部を更に備えるように構成してもよい。非正規品の検体センサの種類によっては、測定器1に挿入した場合に導通検出部71が検出する導通信号出力値が、正規品の検体センサ50における導通信号出力値と近い値を示すものも存在する。このような場合、測定器1は、挿入された検体センサが正規品であるのか、非正規品であるのかの区別がつかない場合が生じるが、上述のように、予め定められる閾値に関する情報を変更できるように構成することにより、測定器1における閾値範囲の変更後においては、非正規品の検体センサの誤挿入を検知することが可能になる。具体的には、閾値範囲をより狭くする等の変更を行なうことにより、挿入された検体センサが正規品であるのか、非正規品であるのかの判別が可能になる。
【符号の説明】
【0053】
1 測定器
2 測定器本体
3 装着部
31 中空状部
4 表示部
5 操作部
6 電源部
7 制御部
71 導通検出部
72 閾値判定部
72a 閾値記憶部
73 装着判断部
74 検体測定部
9,10,11、12 端子
50 検体センサ
51 基板
52 測定用作用電極
53 測定用対向電極
54 反応部
55 検体導入部
56、57 端子
58 装着確認用端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の基質の成分量を測定する測定器であって、
検体が付着される検体センサが装着される装着部と、前記検体センサに接続される制御部とを備えており、
前記制御部は、
前記検体センサが前記装着部に装着された際の導通信号出力値を複数回に亘って検出する導通検出部と、
検出された各導通信号出力値が、予め定められた閾値範囲内に含まれるか否かを判定する閾値判定部と、
検出された複数の前記導通信号出力値のうち、前記閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が、所定数以上である場合に、前記装着部に装着された前記検体センサが正規品であると判断する装着判断部と、を備える測定器。
【請求項2】
前記装着判断部は、前記導通検出部が順次検出した複数の前記導通信号出力値のうち、連続的に前記閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が、所定数以上である場合に、前記装着部に装着された前記検体センサが正規品であると判断する請求項1に記載の測定器。
【請求項3】
前記装着判断部に接続され、前記装着部に装着された前記検体センサが正規品であることを表示する表示部を更に備える請求項1又は2に記載の測定器。
【請求項4】
前記装着判断部は、検出された複数の前記導通信号出力値のうち、前記閾値範囲内であった導通信号出力値の個数が、所定数未満である場合に、前記装着部に装着された前記検体センサが正規品でないことを喚起する情報を出力するアラーム情報出力部を備える請求項1から3のいずれかに記載の測定器。
【請求項5】
予め定められた前記閾値に関する情報が格納される閾値記憶部と、
前記閾値記憶部に格納される前記閾値に関する情報を変更する閾値変更部と、を備える請求項1から4のいずれかに記載の測定器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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