説明

測定方法及びコンベックス

【課題】テープ状スケールを引出す際、腰折れすることなく安定して測定することができるコンベックスを提供する。
【解決手段】テープ状スケール13を有するコンベックスを用いて遠隔地までの距離を測定するに際し、前記テープ状スケール13を引出しながら、横断面が上に凹となる円弧状に屈曲させた状態を保持する保持部材32を所定間隔毎に設置して、前記テープ状スケール先端部を遠隔地まで到達させて測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベックスを用いた測定方法及びコンベックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベックスと呼ばれている小型の巻尺は、渦巻バネにより筺体内に巻取られたテープ状スケールを備え、その先端部に引掛具を備えている。テープ状スケールの横断面は湾曲しており、凹面に目盛が表示されている。テープ状スケールと同等の幅の平板である引掛具は、テープ状スケール先端部に取付けられ、垂直に折曲げられており、固定式のものと移動式のものがある。固定式は引掛具がテープ状スケール先端部に固定されており、垂直に折曲げられている部分を被測定物に引掛けて使用する。移動式は引掛具がテープ状スケール先端部に取付けられているが、引掛具の厚み分、基準点を補正するためテープ状スケールの引出し方向にスライドするようになっており、垂直に折曲げられている部分を被測定物に引掛けて又は押当てて使用する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
実際にこのコンベックスを使用して板の長さを測定する際は、板の一端に引掛具を引掛け、筺体を他端まで引き、他端上の目盛を読むことで、板の一端から他端までの長さを測定することができる。また、相対する壁面の距離を測定する際は、一方の壁面に引掛具の垂直に折曲げられている部分を押当てながら筺体を他方の壁面まで引き、他方の壁面上の目盛を読むことで、相対する壁面の距離を測定することができる。
【0004】
このようにコンベックスは小型で持ち運びに便利な測定用具として、工事現場、製造現場、家庭内等の様々な場所で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平06−082501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、様々な場所で使用されている中、動作範囲が制限された高所での鉄塔と電線間の架線工事においては、コンベックスが小さく持ち運びに便利ゆえの問題があった。コンベックスのテープ状スケールの横断面は上に凹状に湾曲して折曲がり難くなっているが、筺体から長く引出すと自重等により重力方向へ折曲がるいわゆる腰折れ状態になってしまい、距離を測定できないという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、テープ状スケールを筺体から引出す際に、自重等により腰折れすることなく引出して測定することができる測定方法、及び被測定物を確実に保持し、安定して測定できるコンベックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、テープ状スケールを有するコンベックスを用いて遠隔地までの距離を測定するに際し、前記テープ状スケールを引出しながら、横断面が上に凹となる円弧状に屈曲させた状態を保持する保持部材を所定間隔毎に設置して、前記テープ状スケール先端部を遠隔地まで到達させて測定することを特徴とする測定方法にある。
【0009】
本態様によれば、保持部材をテープ状スケールの幅方向に所定間隔毎に設置し、横断面が上に凹となる円弧状に屈曲させた状態を保持することで、重力方向の曲げに対する強度を上げ、テープ状スケール先端部を遠隔地まで到達させることができる。
【0010】
そして、本発明の第2の態様は、筺体内で渦巻き状に巻かれ、引出し収納可能に設けられたテープ状スケールと、当該テープ状スケールに着脱自在に取付けられ、当該テープ状スケールの横断面を所定間隔毎に上に凹となる円弧状に屈曲させた状態を保持する保持部材とを有することを特徴とするコンベックスにある。
【0011】
本態様によれば、筺体から引出された湾曲しているテープ状スケールの横断面を所定間隔毎に上に凹となる円弧状に屈曲させた状態に保持することができる。
【0012】
また、本発明の第3の態様は、第2の態様に記載するコンベックスにおいて、前記テープ状スケール先端部に具備する当該テープ状スケール引出し方向に対し直行方向に延びる電線押当て部と、当該テープ状スケール引出し方向に対し延長方向に延びる電線保持部とを備えることを特徴とするコンベックスにある。
【0013】
本態様によれば、電線押当て部と電線保持部とが遠隔地にある電線と接することで、電線外周部からの距離を測定する際、安定して測定の基準位置を設定することができる。
【0014】
また、本発明の第4の態様は、第3の態様に記載するコンベックスにおいて、前記電線保持部が前記電線押当て部に対して回動可能に取付けられ、前記テープ状スケール引出し方向に対し直交方向である第1位置と、前記テープ状スケール引出し方向に対し延長方向である第2位置とに保持されることを特徴とするコンベックスにある。
【0015】
本態様によれば、コンベックス使用時には電線保持部を開いた第2位置に保持し、未使用時には電線保持部を閉じた第1位置に保持することができる。
【0016】
また、本発明の第5の態様は、第2〜第4の何れか1つの態様に記載するコンベックスにおいて、前記筺体が前記保持部材を収納する収納部を備えることを特徴とするコンベックスにある。
【0017】
本態様によれば、保持部材を収納部に収納することができる。
【0018】
また、本発明の第6の態様は、第5の態様に記載するコンベックスにおいて、前記収納部と、前記保持部材とのいずれか一方が磁石を具備し、他方が磁性体を具備することを特徴とするコンベックスにある。
【0019】
本態様によれば、テープ状スケールの横断面を上に凹となる円弧状に屈曲させた状態を保持する保持部材を収納部に保持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明はテープ状スケールを引き出しながら、所定間隔毎にテープ状スケールの横断面を上に凹の円弧状に屈曲させた状態を保持部材で保持し、重力方向への曲げに対する強度を上げることで腰折れすることなく、安定かつ正確に被測定物との距離を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンベックスの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るコンベックスの分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るコンベックスに係るテープ状スケール先端部の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るコンベックスに係るテープ状スケールと保持部材の使用説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る保持部材を取付けたコンベックスの説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る架線工事における作業環境の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るコンベックスの斜視図、図2は本発明の一実施形態に係るコンベックスの分解斜視図、図3は本発明の一実施形態に係るコンベックスに係るテープ状スケール先端部の説明図、図4は本発明の一実施形態に係るコンベックスに係るテープ状スケールと保持部材の使用説明図である。
【0023】
コンベックス1における筺体10は蓋体10aと受体10bの2つの升形構造からなり、各々の側面適位置に取出口14を設け、受体10bにおいては、枡形内部の底部中央に垂直に渦巻バネ12取付け用の取付軸11が突設されている。
【0024】
この渦巻バネ12は図2に示すように、渦巻きの中心にある一端が取付軸11に固定され、渦巻きの外側にある他端には渦巻バネと同じ方向にテープ状スケール13が巻付けられており、常時取付軸11を中心にテープ状スケール13を巻付けるように渦巻バネ12の弾性力が働いている。この弾性力はテープ状スケール13を筺体10に引込むのに必要かつ十分に作用しているため、図3(a)に示すようにテープ状スケール13が筺体10に収納する際には渦巻バネ12の弾性力により、テープ状スケール13の先端に設けられている引掛具16が取出口14で止まるまで引込まれる。また、テープ状スケール13を筺体10から引出す際には、図3(b)に示すように渦巻バネ12の弾性力を保ちつつテープ状スケール13を引出すことができ、引出す力を緩めると図3(a)に示すように引込まれる。
【0025】
テープ状スケール13は図4(a)に示すように常時上に凹に湾曲しており、凹面を上に向けて引出す際、自重による重力方向への腰折れをし難くしたものである。また、凹面には、目盛15が設けられており、測定時にこの目盛15を読み、距離を測定する。図3(a)に示すように、テープ状スケール13の先端部には、垂直に折曲げられた引掛具16が取付けられ、引掛具16に電線押当て部20が接着又はピン等で結合され、電線押当て部20の端部中央に凸部20aが突設されている。この電線押当て部20の面はテープ状スケール13の面と面一となるように取付けられており、電線押当て部20の端部中央に突設された凸部20aはテープ状スケール13の延長方向に設けられている。一方、電線保持部21は一端部に凸部20aに嵌合する切欠き部21aを具備し、他端部には切欠き部21aと直交する方向に突設されている凸部21bを具備している。電線押当て部20と電線保持部21とは電線押当て部20に突設されている凸部20aが電線保持部21の切欠き部21aに嵌合した状態で両者を貫通するピン23により回動可能に連結されている。なお、電線保持部21が開方向に回動した際には、テープ状スケール13の面と電線保持部21の面とが面一となるようになっている(図3(b)参照)。
【0026】
テープ状スケール13が筺体10に引込まれている際には、図3(a)に示すように、電線保持部21が電線押当て部20と平行に重なった収納状態(第1位置)に回動して保持されている。この状態では凸部21bは電線押当て部20の先端部に係合し、電線保持部21が第1位置に保持されるようになっている。
【0027】
テープ状スケール13を筺体10から引出して使用する際には、図3(b)に示すように、電線保持部21を開方向に回動し、テープ状スケール13の面と電線保持部21の面とが面一となる使用状態とする(第2位置)。この状態では、電線保持部21の切欠き部21a側の端面が引掛具16と当接して保持され、電線保持部21がこれ以上回動しないようになっている。こうして、電線保持部21を開方向に回動し、第2位置に保持した後、図3(c)に示すように、電線保持部21の下面を電線22に載置する。これにより、電線押当て部20と凸部21bとの間に電線22が保持され、凸部21bにより電線22が容易に外れないようになる。また、図3(d)に示すように、電線押当て部20を電線22に当接させることにより、取出口14(図1参照)から電線22の外周部手前側までの距離が、電線22の太さを含むことなく正確に測定できるようになっている。
【0028】
なお、本実施形態は電線押当て部20と電線保持部21の各々の端部がピン23により回動可能に連結されていると説明したが、それぞれの端部に蝶番を取付けて開閉できるようにしても良い。そして、電線押当て部20と電線保持部21は電線22に接する面が互いに平面であれば、四角形でも丸形でも三角形でも良い。また、テープ状スケール13を支持することなく引出すため、電線22を保持するのに必要最低限の大きさとなっている。電線保持部21を回動自在とせず、電線押当て部20と電線保持部21とを一体のL字型保持部としても良い。
【0029】
図5に示すテープ状スケール13に巻付けられた保持部材32は、図4(b)に示すように針金33の周りがビニール34でコーティングされている紐であり、一端に磁石31を有する。この保持部材32は、巻付けた先端部を捻って拘束するものであり、図4(c)に示すように保持部材32でテープ状スケール13の幅方向を締付け、横断面を上に凹の円弧状に屈曲された状態に保持するものである。ここで、屈曲された状態とは、元々の湾曲した状態が更に湾曲されている状態である。なお、保持部材32はテープ状スケール13を上に凹の円弧状に屈曲された状態に保持できるものであれば良く、保持力を有する線材でもクリップ状のものでも良い。そして、保持部材32は磁石31を有しており、磁性体である収納部30(図1参照)に保持することができる。なお、本実施形態は保持部材32に磁石31を有し、収納部30が磁性体として説明したが、これに限ることはなく、保持部材32が磁性体で、収納部30が磁石31を有しているか、又は保持部材32が磁性体であって収納部30なしで筺体10が磁石31を有し、保持部材32が筺体10に保持できれば良い。
【0030】
以下、本実施形態のコンベックスを用いて離間した位置までの距離を測定する測定方法の一例を説明する。まず、図3(b)に示すように、電線保持部21をテープ状スケール13の延長上の第2位置に保持し、テープ状スケール13を凹面が上になるように筺体10から引出していく。この際、テープ状スケール13の横断面が図4(c)に示すような上に凹の円弧状に屈曲した状態を保持できるように、収納部30に保持されている保持部材32を所定間隔毎にテープ状スケール13の幅方向に締付けていく。
【0031】
そして、図5に示すように、所定間隔毎にテープ状スケール13の幅方向に保持部材32を締付けながら、被測定物である電線22までテープ状スケール13を引出していく。このように保持部材32を取付けながらテープ状スケール13を引出すことにより、腰折れすることなくテープ状スケール13を引出すことができ、図3(c)に示すように電線保持部21を電線22に載置することができる。また、図3(d)に示すように電線保持部21が電線22に載置された状態のまま電線押当て部20を電線22に押付ける。これにより電線22が電線保持部21と電線押当て部20に接する状態となり、安定した状態でテープ状スケール13の測定の基準位置が設定され、この時点で手元の筺体10から出ているテープ状スケール13の目盛15を読むことで、電線22との距離を安定かつ正確に測定することができる。
【0032】
測定後はテープ状スケール13の凹面を上方に向けたまま、テープ状スケール13が腰折れしないよう手元の筺体10をやや上方に傾けることで、電線保持部21を電線22から浮かせ、テープ状スケール13を引込んでいく。この時、テープ状スケール13の横断面を上に凹の円弧状に屈曲した状態に保持していた保持部材32を取外し、収納部30に保持する。保持部材32を外したテープ状スケール13は上に凹の屈曲した円弧状から、図4(a)に示すような通常の湾曲した状態となり、筺体10に引込まれていく。そして、図3(a)に示すように引掛具16が取出口14で止まるところまで引込んだら、電線保持部21を閉じて、第1位置に保持する。
【0033】
以上説明したコンベックス1を用いる測定方法によれば、以下のような効果がある。
【0034】
横断面が湾曲したテープ状スケール13の凹面を上方に向け、テープ状スケール13を引出しながら保持部材32を所定間隔毎にテープ状スケール13の幅方向に締付けることにより、横断面が湾曲した状態から更に上に凹の円弧状に屈曲した状態を保持することで、保持部材32を用いない場合には腰折れが生じるような長さまでテープ状スケール13を引出しても腰折れすることを防止することができる。さらに、電線保持部21と電線押当て部20とにより、測定物を保持し、押当てることで、電線22の太さを含むことなく正確に筺体10と電線22との距離を測定することができる。そして、図6に示すような高所での鉄塔40と電線22の架線工事においてコンベックス1を用いる場合においては、テープ状スケール13の幅方向に保持部材32を締付けることにより、腰折れすることなく、安定してテープ状スケール13を長く引出すことができる。また、電線保持部21と電線押当て部20とにより、電線22を保持し、押当てることで、電線22の太さを含むことなく正確に筺体10と電線22との距離を測定することができる。なお、本実施形態において、コンベックス1による筺体10と電線22との距離測定について説明したが、測定対象物を電線22に限らず、電線22以外の測定対象物についても使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、コンベックスを使用して距離を測定することを要する産業分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 筺体
10a 蓋体
10b 受体
11 取付軸
12 渦巻バネ
13 テープ状スケール
14 取出口
15 目盛
16 引掛具
20 電線押当て部
20a 凸部
21 電線保持部
21a 切欠き部
21b 凸部
22 電線
23 ピン
30 収納部
31 磁石
32 保持部材
33 針金
34 ビニール
40 鉄塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状スケールを有するコンベックスを用いて遠隔地までの距離を測定するに際し、前記テープ状スケールを引出しながら、横断面が上に凹となる円弧状に屈曲させた状態を保持する保持部材を所定間隔毎に設置して、前記テープ状スケール先端部を遠隔地まで到達させて測定すること
を特徴とする測定方法。
【請求項2】
筺体内で渦巻き状に巻かれ、引出し収納可能に設けられたテープ状スケールと、当該テープ状スケールに着脱自在に取付けられ、当該テープ状スケールの横断面を所定間隔毎に上に凹となる円弧状に屈曲させた状態を保持する保持部材とを有すること
を特徴とするコンベックス。
【請求項3】
請求項2に記載のコンベックスにおいて、
前記テープ状スケール先端部に具備する当該テープ状スケール引出し方向に対し直行方向に延びる電線押当て部と、当該テープ状スケール引出し方向に対し延長方向に延びる電線保持部とを備えること
を特徴とするコンベックス。
【請求項4】
請求項3に記載のコンベックスにおいて、
前記電線保持部が前記電線押当て部に対して回動可能に取付けられ、前記テープ状スケール引出し方向に対し直交方向である第1位置と、前記テープ状スケール引出し方向に対し延長方向である第2位置とに保持されること
を特徴とするコンベックス。
【請求項5】
請求項2〜請求項4の何れか1項に記載するコンベックスにおいて、
前記筺体が前記保持部材を収納する収納部を備えること
を特徴とするコンベックス。
【請求項6】
請求項5に記載のコンベックスにおいて、
前記収納部と、前記保持部材とのいずれか一方が磁石を具備し、他方が磁性体を具備することを特徴とするコンベックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−13623(P2012−13623A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152457(P2010−152457)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】