説明

測定装置、周波数比測定回路、測定方法およびプログラム

【課題】測定周期を外部から変更することなく、周波数比の変動状況に応じて該周波数比の測定精度を自動的に変更する。
【解決手段】測定装置は、互いに独立した比較クロック信号と基準クロック信号との周波数比を測定する。測定装置は、特定のタイミングで測定した周波数比と該特定のタイミングから所定の測定周期が経過したタイミングで測定した周波数比との間の差分と、あらかじめ設定された基準閾値とを比較する。測定装置は、該比較の結果に基づいて周波数比の測定周期を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、周波数比測定回路、測定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外部から入力されたクロック信号に同期してその動作を制御する電子機器が広く普及している。
【0003】
このクロック信号の周波数が一定でない場合、電子機器は正確に動作せず、電子機器が利用者にとって使いにくいものとなってしまう。
【0004】
そのため、利用者にとって電子機器を使い易いものにするためには、クロック信号などの周波数を正確に測定して、電子機器へ入力されるクロック信号の周波数が一定であるかどうかを確認することが必要となる。
【0005】
このようなクロック信号の周波数を測定する方法が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04−339272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的な周波数比を測定する技術においては、周波数比の測定を行う測定周期が周波数変動に対応していないという問題点がある。
【0008】
より具体的には、周波数比の測定を行う測定周期が長くなるに伴って、その測定によって得られた測定精度は高くなる。しかしながら、周波数比の測定値を得るまでの時間は長くなってしまう。
【0009】
また、測定周期を短くした場合、短時間で周波数比の測定値を得ることができる。そのため、周波数比をリアルタイムに測定することが可能である。しかしながら、測定周期が短くなるに伴って、その測定によって得られた周波数比の測定精度は低下してしまう。
【0010】
つまり、一般的な周波数比を測定する技術においては、周波数比が大きく変動する場合、長い測定周期をかけて測定精度を高めても、周波数比をリアルタイムに測定することができず変動状況を把握できないという問題点がある。
【0011】
また、一般的な周波数比を測定する技術においては、周波数比の変動が小さく安定している場合、測定周期が短いと満足な測定精度が得られないという問題点がある。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決する測定装置、周波数比測定回路、測定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の測定装置は、互いに独立した比較クロック信号と基準クロック信号との周波数比を測定する測定装置であって、特定のタイミングで測定した前記周波数比と該特定のタイミングから所定の測定周期が経過したタイミングで測定した前記周波数比との間の差分を算出する周波数比測定回路と、前記周波数比測定回路が算出した差分とあらかじめ設定された基準閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記周波数比の測定周期を制御する判定回路とを有する。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の周波数比測定回路は、互いに独立した比較クロック信号と基準クロック信号との周波数比を測定する周波数比測定回路であって、前記比較クロック信号を用いて動作する第1のビット数からなる第1のカウンタと、前記基準クロック信号を用いて動作する第2のビット数からなり、該第2のビット数のビットによるカウント値が最大となった場合、前記周波数比の測定周期が経過した旨を示す測定周期経過パルスを出力する第2のカウンタと、前記測定周期経過パルスが出力された場合、前記比較クロック信号と同期し該比較クロック信号の1周期と同じ時間幅の第1カウント値取得パルスを出力するパルス生成部と、前記第1カウント値取得パルスが出力された場合、前記第1のカウンタがカウントしている値をラッチするラッチ回路と、前記ラッチ回路がラッチしている値から前記第2のビット数のビットがすべて1である値を減算して、前記周波数比として外部へ出力する減算回路とを有し、前記第1のカウンタは、前記第1カウント値取得パルスが出力された場合、0をロードする。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の測定方法は、互いに独立した比較クロック信号と基準クロック信号との周波数比を測定する測定方法であって、特定のタイミングで測定した前記周波数比と該特定のタイミングから所定の測定周期が経過したタイミングで測定した前記周波数比との間の差分を算出する処理と、前記算出した差分とあらかじめ設定された基準閾値とを比較する処理と、前記比較の結果に基づいて前記周波数比の測定周期を制御する処理とを有する。
【0016】
また、コンピュータに実行させるプログラムであって、互いに独立した比較クロック信号と基準クロック信号との周波数比を測定する測定装置に、特定のタイミングで測定した前記周波数比と該特定のタイミングから所定の測定周期が経過したタイミングで測定した前記周波数比との間の差分を算出する手順と、前記算出した差分とあらかじめ設定された基準閾値とを比較する手順と、前記比較の結果に基づいて前記周波数比の測定周期を制御する手順とを実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、測定周期を外部から変更することなく、周波数比の変動状況に応じて周波数比の測定精度を自動的に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に従った測定装置の特徴的な構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に従った測定装置の詳細な構成を示す図である。
【図3】図2に示した周波数比測定回路の構成を示す図である。
【図4】逓倍比較クロック信号と、1Wパルスと、Mカウンタからラッチ回路への出力と、ラッチ回路から減算回路への出力とのタイミングチャートを示す図である。
【図5】1測定周期においてMカウンタが逓倍比較クロック信号をカウントしたカウント値と、当該測定周期においてNカウンタが逓倍基準クロック信号をカウントしたカウント値との関係を示す図である。
【図6】図2に示した判定回路の構成を示す図である。
【図7】図3に示したパルス生成部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に従った測定装置(周波数比測定回路、測定方法およびプログラムを含む)を説明する。
【0020】
なお、本発明の測定装置1は、互いに独立した、比較クロック信号の周波数F1と、基準クロック信号の周波数F2との周波数比RT(=(F1−F2)/F2)を測定する。
【0021】
まず、測定装置1が有する特徴的な構成について説明する。図1に示すように、測定装置1は、周波数比測定回路13と、判定回路14とを有する。
【0022】
周波数比測定回路13は、判定回路14により指示された測定周期で、外部から出力されてきた周波数F1の比較クロック信号と周波数F2の基準クロック信号との比である周波数比RTを測定する。そして、周波数比測定回路13は、測定した周波数比RTを判定回路14へ出力する。なお、周波数比測定回路13の詳細な構成については、図3にて後述する。
【0023】
判定回路14は、周波数比測定回路13から出力されてきた周波数比RTの変動に応じて、周波数比測定回路13が周波数比測定回路13が周波数比RTを測定する測定周期を指示する。
【0024】
本実施形態では、周波数比測定回路13が、比較クロック信号および基準クロック信号をそれぞれ逓倍した信号を用いて、周波数比RTを測定する場合を例に挙げて説明する。
【0025】
つぎに、測定装置1が有する構成について詳細に説明する。
【0026】
図2に示すように、測定装置1は、第1逓倍回路11と、第2逓倍回路12と、周波数比測定回路13と、判定回路14とを有する。
【0027】
第1逓倍回路11は、外部から入力された周波数F1の比較クロック信号をr倍に逓倍する。そして、第1逓倍回路11は、周波数「r×F1」の逓倍比較クロック信号を周波数比測定回路13へ出力する。
【0028】
第2逓倍回路12は、外部から入力された周波数F2の基準クロック信号をr倍に逓倍する。そして、第2逓倍回路12は、周波数「r×F2」の逓倍基準クロック信号を周波数比測定回路13へ出力する。
【0029】
なお、第1逓倍回路11および第2逓倍回路12が逓倍動作を行うかどうかは、任意である。
【0030】
周波数比測定回路13は、第1逓倍回路11から出力されてきた逓倍比較クロック信号と、第2逓倍回路12から出力されてきた逓倍基準クロック信号とを用いて、判定回路14から出力された測定周期制御信号により制御された測定周期で周波数比RTを測定する。そして、周波数比測定回路13は、測定した周波数比RTを判定回路14へ出力する。
【0031】
判定回路14は、周波数比測定回路13から出力されてきた現在の測定周期の直前の測定周期にて測定された周波数比RTと、周波数比測定回路13から出力されてきた現在の測定周期にて測定された周波数比RTとの差分DFを算出する。
【0032】
そして、判定回路14は、算出した差分DFと、外部から設定された基準閾値THとを比較する。
【0033】
ここで、「基準閾値TH」とは、周波数比RTの変動に応じて、測定周期Tを増大させるか、それとも測定周期Tを減少させるかを判別するための基準となる値である。
【0034】
そして、判定回路14は、比較結果に基づいて、周波数比測定回路13が周波数比RTを測定する測定周期を制御(指示)するための測定周期制御信号を、周波数比測定回路13へ出力する。
【0035】
つぎに、図2に示した周波数比測定回路13の詳細な構成について、図3を参照して説明する。
【0036】
図3に示すように、周波数比測定回路13は、Mカウンタ131と、Nカウンタ132と、ラッチ回路133と、減算回路134と、パルス生成部135とを有する。
【0037】
Mカウンタ131は、第1逓倍回路11から出力されてきた周波数「r×F1」の逓倍比較クロック信号を動作クロックとしてカウントアップする、Mビット(M;自然数)の第1のビット数からなる「第1のカウンタ」である。
【0038】
Mカウンタのビット数Mについては特に限定しない。この説明例では、ビット数Mが「N+1」(N;Nカウンタ132のビット数)である場合に例に挙げて説明する。そのため、本実施形態では、ビット数がMビットからなるMカウンタ131のカウント値CTMを、CTN+1と表記する。
【0039】
また、Mカウンタ131は、パルス生成部135から出力されてきた1WパルスPL1をロード信号として、0をロード(カウント値CTN+1をクリア)する。1WパルスPL1とは、周波数r×F1の逓倍比較クロック信号の1周期1/(r×F1)の1倍の時間幅でHiレベルの「第1カウント値取得パルス」である。
【0040】
なお、Mカウンタ131のビット数であるM(この例では、M=N+1)は、判定回路14から出力されてきた測定周期制御信号によって増減する。
【0041】
また、Mカウンタ131は、ビット数がM(=N+1)ビットのカウント値CTN+1を、ラッチ回路133へ出力する。
【0042】
Nカウンタ132は、第2逓倍回路12から出力されてきた周波数「r×F2」の逓倍基準クロック信号を動作クロックとしてカウントアップする、Nビットの第2のビット数からなる「第2のカウンタ」である。Nカウンタ132のビット数Nについては特に限定されない。なお、以下では、ビット数がNビットからなるNカウンタ132のカウント値を、CTNと表記する。
【0043】
なお、Nカウンタ132の1サイクルの時間2N/(r×F2)が、周波数比RTを測定するための測定周期Tとなる。そのため、Nが大きくなると、測定周期Tも長くなる。
【0044】
なお、Nカウンタ132のビット数であるNは、判定回路14から出力されてきた測定周期制御信号に応じて増減する。
【0045】
Nカウンタ132は、そのカウント値CTNが最大値(=2N−1)に到達するごとに、周波数r×F2の逓倍基準クロック信号の1周期1/(r×F2)の3倍の時間幅でHiレベルの「3WパルスPL3」を生成して、パルス生成部135へ出力する。なお、3WパルスPL3は、測定周期Tが経過した旨を示す「測定周期経過パルス」である。
【0046】
ラッチ回路133は、パルス生成部135から出力されてきた1WパルスPL1がHiレベルからLowレベルへ変化した際のMカウンタ131から出力されてきたカウント値CTN+1を、ラッチする。例えば、図4に示すように、ラッチ回路133は、1WパルスPL1がHiレベルからLowレベルへ変化した際のMカウンタ131の出力Bをラッチする。
【0047】
また、ラッチ回路133は、ラッチしたカウント値CTN+1を減算回路134へ出力する。
【0048】
減算回路134は、測定周期T=2N/(r×F2)ごとに、ラッチ回路133から出力されてきたカウント値CTN+1から、2N−1(つまり、各ビットの値がすべて1であるN桁のビット列)を減算する。
【0049】
なお、図5に示すように、測定周期T=2N/(r×F2)において、Mカウンタ131が逓倍比較クロック信号をカウントしたカウント値CTN+1は、CTN+1=2N×(F1/F2)−1である。
【0050】
また、2N−1は、測定周期T=2N/(r×F2)の間に、Nカウンタ132が逓倍基準クロック信号をカウントしたカウント値CTNに相当する。
【0051】
そして、減算回路134は、減算によって得られた値2N×((F1/F2)−1)=2N×(F1−F2)/F2を、周波数比RTとして判定回路14と外部とへ出力する。
【0052】
なお、出力される周波数比RTの「N+1」ビット目の最上位の値は、負の数値を扱うために付加される符号ビットとしての役割を果たす。例えば、符号ビットの値が「0」である場合は正数を表し、符号ビットの値が「1」である場合は負数を表す。
【0053】
また、算出された周波数比RTに付随する測定精度qは、q=1/2Nで求められる。そのため、Nが大きくなると、測定精度qは小さくなる。なお、測定精度qとは、周波数比の真の値と、測定した周波数比RTとの差分である。
【0054】
パルス生成部135は、測定周期T=2N/(r×F2)ごとに、逓倍比較クロック信号の1周期1/(r×F1)と同じ時間幅を有するHiレベルの1WパルスPL1を生成する。
【0055】
そして、パルス生成部135は、生成した1WパルスPL1を、Mカウンタ131とラッチ回路133と判定回路14とへ出力する。
【0056】
つぎに、図2に示した判定回路14の詳細な構成について、図6を参照して説明する。図6に示すように、判定回路14は、フリップフロップ回路141と、減算器142と、比較部143とを有する。
【0057】
フリップフロップ回路141は、現在の測定周期の直前の測定周期において周波数比測定回路13が測定した周波数比RTを、減算器142へ出力する役割を果たす。
【0058】
より具体的には、フリップフロップ回路141は、周波数比測定回路13から出力されてきた1WパルスPL1がLowからHighへ変化したときの周波数比RTを減算器142へ出力する。
【0059】
減算器142は、フリップフロップ回路141から出力されてきた周波数比RTから、周波数比測定回路13から出力されてきた周波数比RTを減算する。これにより、減算器142は、2つの連続した測定周期それぞれにて測定した周波数比RT間の差分DFを算出する。
【0060】
そして、減算器142は、算出した周波数比RT間の差分DFを比較部143へ出力する。
【0061】
なお、当該差分DFが大きな場合、周波数比RTの変動が大きいことに相当する。また、当該差分DFが小さな場合、周波数比RTの変動は小さく安定していることに相当する。
【0062】
比較部143は、減算器142から出力されてきた周波数比RTの差分DFと、周波数比RTの変動に応じた測定周期Tの増減を判別するための外部から設定された「基準閾値TH」とを比較する。
【0063】
より具体的には、この説明例では、「基準閾値TH」は、測定周期Tを2倍に増大させるか、それとも、測定周期Tを1/2倍に減少させるかを判別するための基準となる値である。
【0064】
また、比較部143は、該比較の結果に応じた測定周期制御信号を生成する「測定周期切替部」である。
【0065】
比較部143は、周波数比RTの差分DFが外部から設定された基準閾値THよりも大きな場合、Nカウンタ132のビット数NおよびMカウンタ131のビット数M(この例ではN+1)を1だけ減少させる旨を示す測定周期制御信号を生成する。そして、比較部143は、その測定周期制御信号を、Mカウンタ131およびNカウンタ132へそれぞれ出力する。
【0066】
ビット数MおよびNが1減少した場合、測定周期T=2N/(r×F2)の関係式より、減少後の測定周期Tはその減少前の1/2倍となる。そのため、周波数比RTの変動に対応して、周波数比RTの測定値の更新が早くなる。しかしながら、測定精度q=1/2Nの関係式より、当該減少後の測定精度qはその減少前の1/2倍に落ちる(劣化する)。
【0067】
また、比較部143は、周波数比の差分DFが外部から設定された基準閾値TH以下である場合、ビット数Nおよびビット数Mを1だけ増大させる旨を示す測定周期制御信号を生成する。そして、比較部143は、その測定周期制御信号を、Mカウンタ131およびNカウンタ132へそれぞれ出力する。
【0068】
ビット数MおよびNが1増大した場合、増大後の測定周期Tはその増大前の2倍となる。そのため、周波数比RTの測定値の更新は遅くなる。しかしながら、増大後の測定精度qはその増大前の2倍に向上する。
【0069】
判定回路14は、連続して2回測定した周波数比RTの差分DFと基準閾値THとに基づいて、周波数比RTの測定周期Tを制御するための測定周期制御信号を周波数比測定回路13へ出力する。そのため、周波数比RTが大きく変動する場合、周波数比RTをリアルタイムに測定することができ、ひいては変動状況を把握することが可能となる。また、周波数比RTの変動が小さく安定している場合、測定精度qを向上させてより正確な精度で測定値を得ることが可能となる。
【0070】
なお、図3に示したパルス生成部135の詳細な構成について、図7を参照して説明しておく。図7に示すように、パルス生成部135は、第1フリップフロップ回路136−1と、第2フリップフロップ回路136−2と、第3フリップフロップ回路136−3と、インバータ137と、ANDゲート138とを有する。
【0071】
第1フリップフロップ回路136−1および第2フリップフロップ回路136−2は、メタステーブル(metastable)対策のために設けられている。つまり、第1フリップフロップ回路136−1および第2フリップフロップ回路136−2は、逓倍基準クロック信号r×F2から生成された3WパルスPL3を逓倍基準クロック信号r×F1に同期させる。
【0072】
また、第3フリップフロップ回路136−3と、インバータ137と、ANDゲート138とは、第2フリップフロップ回路136−2から出力された3WパルスPL3の立ち上がりを微分する。これにより、第3フリップフロップ回路136−3と、インバータ137と、ANDゲート138とは、測定周期Tごとに、逓倍比較クロック信号の1周期1/(r×F1)の時間幅の1WパルスPL1を生成してMカウンタ131とラッチ回路133と判定回路14とへ出力する。
【0073】
つぎに、上記構成を有する測定装置1が、連続して2回測定された周波数比RTの間の差分DFと基準閾値THとの比較に基づいて、周波数比RTの測定周期を制御する動作について説明する。
【0074】
第1逓倍回路11は、外部から入力された周波数F1の比較クロック信号をr倍に逓倍して、周波数r×F1の逓倍比較クロック信号を周波数比測定回路13へ出力する。
【0075】
すると、周波数比測定回路13のMカウンタ131は、r×F1の逓倍比較クロック信号を動作クロックとしてカウントアップし、カウントアップしたカウント値CTN+1をラッチ回路133へ出力する。
【0076】
ラッチ回路133は、1WパルスPL1がHiレベルからLowレベルへ変化した際のMカウンタ131から出力されてきたカウント値CTN+1=2N×(F1/F2)−1をラッチして、ラッチしたカウント値CTN+1を減算回路134へ出力する。
【0077】
また、第2逓倍回路12は、外部から入力された周波数F2の基準クロック信号をr倍に逓倍して、周波数r×F2の逓倍基準クロック信号を周波数比測定回路13へ出力する。
【0078】
すると、周波数比測定回路13のNカウンタ132は、周波数r×F2の逓倍基準クロック信号を動作クロックとしてカウントアップする。そして、Nカウンタ132は、そのカウント値CTNが最大値(=2N−1)に到達した場合、3W幅でHiレベルの3WパルスPL3を、パルス生成部135へ出力する。
【0079】
すると、パルス生成部135は、3WパルスPL3とr×F1の逓倍比較クロック信号とに基づいて、r×F1に同期した時間幅が1/(r×F1)でHiレベルの1WパルスPL1を生成する。そして、パルス生成部135は、生成した1WパルスPL1を、Mカウンタ131とラッチ回路133と判定回路14とへ出力する。
【0080】
すると、Mカウンタ131は、パルス生成部135から出力されてきた1WパルスPL1をロード信号として、0をロード(カウント値CTN+1のクリア)する。
【0081】
その後、Mカウンタ131は、r×F1の逓倍比較クロック信号を動作クロックとしてカウント値CTN+1をカウントアップして、該カウント値CTN+1をラッチ回路133へ出力する。
【0082】
また、ラッチ回路133は、パルス生成部135から出力されてきた1WパルスPL1がHiからLowへ変化したときのMカウンタ131から出力されてきたカウント値CTN+1をラッチして減算回路134へ出力する。
【0083】
すると、減算回路134は、ラッチ回路133から出力されてきたカウント値CTN+1=2N×(F1/F2)−1から2N−1を減算する。そして、減算回路134は、減算によって得られた値2N×(F1−F2)/F2を、周波数比RTとして判定回路14と外部とへ出力する。
【0084】
すると、判定回路14のフリップフロップ回路141は、周波数比測定回路13から出力されてきた1WパルスPL1の立上りエッジに応じて、測定周期T=2N/(r×F2)ごとに、周波数比測定回路13から出力されてきた測定周期の直前の測定周期における周波数比RTを減算器142へ出力する。
【0085】
すると、減算器142は、フリップフロップ回路141から出力されてきた周波数比RTから、周波数比測定回路13から出力されてきた周波数比RTを減算する。これにより、減算器142は、2つの連続した測定周期それぞれにて測定した周波数比RT間の差分DFを算出する。そして、減算器142は、算出した周波数比RT間の差分DFを比較部143へ出力する。
【0086】
比較部143は、減算器142から出力されてきた周波数比RTの差分DFと、測定周期Tの増減を判別するための外部から設定された基準閾値THとを比較する。この説明例では、基準閾値THは、測定周期Tを2倍に増大させるか、それとも、測定周期Tを1/2倍に減少させるかを判別するための基準となる値である。
【0087】
続いて、比較部143は、該比較の結果に応じた測定周期制御信号を生成する。
【0088】
比較部143は、周波数比RTの差分DFが外部から設定された基準閾値THよりも大きな場合、ビット数Mおよびビット数Nを1だけ減少させる旨を示す測定周期制御信号を生成する。そして、比較部143は、その測定周期制御信号を、Mカウンタ131およびNカウンタ132へそれぞれ出力する。
【0089】
また、比較部143は、周波数比の差分DFが外部から設定された基準閾値TH以下である場合、ビット数Nおよびビット数Mを1だけ増大させる旨を示す測定周期制御信号を生成する。そして、比較部143は、その測定周期制御信号を、Mカウンタ131およびNカウンタ132へそれぞれ出力する。
【0090】
なお、ビット数MおよびNが1減少した場合、減少後の測定周期Tはその減少前の1/2倍となり、周波数比RTの測定値の更新が早くなる。しかしながら、測定精度q=1/2Nの関係式より、当該減少後の測定精度qはその減少前の1/2倍に落ちる(劣化する)。
【0091】
また、ビット数MおよびNが1桁増大した場合、増大後の測定周期Tはその増大前の2倍となり、周波数比RTの測定値の更新は遅くなる。しかしながら、増大後の測定精度qはその増大前の2倍に向上する。
【0092】
以上説明したように、本発明によれば、測定装置1の判定回路14は、周波数比RTの変動(差分DF)と外部から設定された基準閾値THとの比較結果に応じて、測定周期Tを制御する。
【0093】
これにより、測定周期を外部から変更することなく、周波数比の変動状況に応じて周波数比の測定精度を自動的に変更することができる。
【0094】
より具体的には、測定装置1は、周波数比RTが大きく変動する場合、測定周期Tを短くしてリアルタイムな周波数比RTの測定値を取得する。また、周波数比RTの変動が小さく安定している場合、測定周期Tを長くして高い測定精度qを得ることができる。
【0095】
また、本発明によれば、測定装置1は、比較する周波数F1およびF2それぞれを、第1逓倍回路11および第2逓倍回路12それぞれにてr倍(r>1)に逓倍している。これにより、同じ測定精度による周波数比の測定値を得るために必要な測定周期Tを1/rに短縮することができる。
【0096】
なお、本発明においては、測定装置1内の処理は上述の専用のハードウェアにより実現されるもの以外に、その機能を実現するためのプログラムを測定装置1にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを測定装置1に読み込ませ、実行するものであってもよい。測定装置1にて読取可能な記録媒体とは、フロッピーディスク(登録商標)、光磁気ディスク、DVD、CDなどの移設可能な記録媒体の他、測定装置1に内蔵されたHDD等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、例えば、測定装置1が有する判定回路14にて読み込まれ、判定回路14の制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。
【0097】
ここで、測定装置1が有する判定回路14は、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【0098】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が理解し得る各種の変形が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 測定装置
11 第1逓倍回路
12 第2逓倍回路
13 周波数比測定回路
131 Mカウンタ
132 Nカウンタ
133 ラッチ回路
134 減算回路
135 パルス生成部
136−1 第1フリップフロップ回路
136−2 第2フリップフロップ回路
136−3 第3フリップフロップ回路
137 インバータ
138 ANDゲート
14 判定回路
141 フリップフロップ回路
142 減算器
143 比較部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立した比較クロック信号と基準クロック信号との周波数比を測定する測定装置であって、
特定のタイミングで測定した前記周波数比と該特定のタイミングから所定の測定周期が経過したタイミングで測定した前記周波数比との間の差分を算出する周波数比測定回路と、
前記周波数比測定回路が算出した差分とあらかじめ設定された基準閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記周波数比の測定周期を制御する判定回路とを有する測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の測定回路において、
前記判定回路は、前記周波数比測定回路が算出した差分と前記基準閾値とを比較し、前記差分が前記基準閾値よりも大きな場合、前記周波数比の測定周期を短くし、前記差分が前記基準閾値以下であった場合、該測定周期を長くすることを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の測定装置において、
前記周波数比測定回路は、
前記比較クロック信号を用いて動作する第1のビット数からなる第1のカウンタと、
前記基準クロック信号を用いて動作する第2のビット数からなる第2のカウンタとを有し、
前記第2のビット数に基づいた前記測定周期で前記差分を算出し、
前記判定回路は、前記差分が閾値よりも大きい場合、前記第1のビット数および前記第2のビット数をそれぞれ1だけ減少させる測定周期制御信号を出力し、前記差分が閾値以下である場合、前記第1のビット数および前記第2のビット数をそれぞれ1だけ増大させる測定周期制御信号を出力することを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の測定装置において、
前記比較クロック信号の周波数F1をr倍(r>1)に逓倍して、r×F1の周波数を有する逓倍比較クロック信号を前記第1のカウンタへ出力する第1逓倍回路と、
前記基準クロック信号の周波数F2をr倍(r>1)に逓倍して、r×F2の周波数を有する逓倍基準クロック信号を前記第2のカウンタへ出力する第2逓倍回路とを有し、
前記第1のカウンタは、前記逓倍比較クロック信号を用いて動作し、
前記第2のカウンタは、前記逓倍基準クロック信号を用いて動作することを特徴とする測定装置。
【請求項5】
互いに独立した比較クロック信号と基準クロック信号との周波数比を測定する周波数比測定回路であって、
前記比較クロック信号を用いて動作する第1のビット数からなる第1のカウンタと、
前記基準クロック信号を用いて動作する第2のビット数からなり、該第2のビット数のビットによるカウント値が最大となった場合、前記周波数比の測定周期が経過した旨を示す測定周期経過パルスを出力する第2のカウンタと、
前記測定周期経過パルスが出力された場合、前記比較クロック信号と同期し該比較クロック信号の1周期と同じ時間幅の第1カウント値取得パルスを出力するパルス生成部と、
前記第1カウント値取得パルスが出力された場合、前記第1のカウンタがカウントしている値をラッチするラッチ回路と、
前記ラッチ回路がラッチしている値から前記第2のビット数のビットがすべて1である値を減算して、前記周波数比として外部へ出力する減算回路とを有し、
前記第1のカウンタは、前記第1カウント値取得パルスが出力された場合、0をロードする周波数比測定回路。
【請求項6】
互いに独立した比較クロック信号と基準クロック信号との周波数比を測定する測定方法であって、
特定のタイミングで測定した前記周波数比と該特定のタイミングから所定の測定周期が経過したタイミングで測定した前記周波数比との間の差分を算出する処理と、
前記算出した差分とあらかじめ設定された基準閾値とを比較する処理と、
前記比較の結果に基づいて前記周波数比の測定周期を制御する処理とを有する測定方法。
【請求項7】
請求項6記載の測定方法において、
前記比較の結果、前記差分が前記基準閾値よりも大きな場合、前記周波数比の測定周期を短くし、前記差分が前記基準閾値以下であった場合、該測定周期を長くする処理を有することを特徴とする測定方法。
【請求項8】
互いに独立した比較クロック信号と基準クロック信号との周波数比を測定する測定装置に、
特定のタイミングで測定した前記周波数比と該特定のタイミングから所定の測定周期が経過したタイミングで測定した前記周波数比との間の差分を算出する手順と、
前記算出した差分とあらかじめ設定された基準閾値とを比較する手順と、
前記比較の結果に基づいて前記周波数比の測定周期を制御する手順とを実行させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項8記載のプログラムにおいて、
前記比較の結果、前記差分が前記基準閾値よりも大きな場合、前記周波数比の測定周期を短くし、前記差分が前記基準閾値以下であった場合、該測定周期を長くする手順とを実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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