測定装置及び分析用素子
【課題】酵素免疫反応において、標識酵素の酵素反応速度を直接測定できる、高感度で高精度の測定装置及び測定方法を提供する。
【解決手段】酵素標識抗体のサイクリック反応の生成物であるチオール化合物量又は生成速度を絶縁ゲート電界効果トランジスタ4上に形成された金電極14への吸着速度として測定する。吸着速度は、金電極14上への自己組織化膜形成に伴う金電極14上の電位変化を絶縁ゲート電界効果トランジスタ4内のソース15、ドレイン16間の電流をリアルタイムでモニターし、信号処理回路2、及びデータ処理装置3で記録し、吸着速度から抗原量を得る。その際、測定外部変動による影響を低減するために、測定中は参照電極5に電源6により高周波電圧を印加する。
【解決手段】酵素標識抗体のサイクリック反応の生成物であるチオール化合物量又は生成速度を絶縁ゲート電界効果トランジスタ4上に形成された金電極14への吸着速度として測定する。吸着速度は、金電極14上への自己組織化膜形成に伴う金電極14上の電位変化を絶縁ゲート電界効果トランジスタ4内のソース15、ドレイン16間の電流をリアルタイムでモニターし、信号処理回路2、及びデータ処理装置3で記録し、吸着速度から抗原量を得る。その際、測定外部変動による影響を低減するために、測定中は参照電極5に電源6により高周波電圧を印加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質等の生体物質を高感度に測定することのできる測定装置及び分析用素子に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なタンパク質の測定法である酵素免疫測定法は、抗体が特定のタンパク質に選択的に結合する反応、すなわち抗原抗体反応を利用しており、その測定法は、大きく分けて、サンドイッチ法と競合反応法がある。サンドイッチ法では、抗体に標識した酵素などを通して間接的に抗原量を測定する方法である。予め固相に固定化した一次抗体と試料中の抗原との反応後、酵素標識抗体を加えて、一次抗体-抗原-酵素標識抗体を形成させる。その後、結合した酵素標識抗体(B)と遊離の酵素標識抗体(F)を分離(BF分離)し、結合した酵素標識抗体(B)の酵素と基質のサイクリック反応の生成物を発光や吸光度で測定して、抗原量を得る。競合反応法は、測定対象の非標識抗原と濃度既知の酵素標識した抗原の間での固定化抗体への結合が競合する性質を用いている。酵素標識抗原の抗体への結合量は、測定対象の抗原と酵素標識抗原の濃度比に依存するため、酵素標識抗原の結合量を測定することにより、測定対象の抗原の量を求めることができる。その中で、サンドイッチ法は高感度であり、現在広く用いられている。病気のマーカーである生体内に極めて微量で存在するペプチドやタンパク質の測定にも用いられている。
【0003】
近年、健康意識が高まり、生活習慣病に対する対策や予防が問題となっている。特に、心疾患や脳血管疾患はガンにつぐ死亡原因となっており、その予防が重要となってきている。例えば、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、血管拡張作用、利尿作用をもち、体液量や血圧の調整に重要な役割を果たしている。健常人における血漿中BNP濃度は、極めて低いが、心不全患者では重症度に応じてその値が増加するため、BNPの測定は心不全の病態の把握に重要な意義を持っている。健常人の血中濃度は、18ppt(pg/mL)であり、10ppt以下の装置の測定感度が必要である。炎症性サイトカインのひとつであるTNF-α(Tumor Necrosis Factor:腫瘍壊死因子)も、心筋の損傷、とりわけ心不全にきわめて重要な役割を果たしていると言われている。心不全患者の血中あるいは心臓組織ではTNF-αのレベルが上昇し、それが心不全の病態形成に大きく関与している。その濃度も1ppt以下と極めて低い。また、サイトカインは疾患や感染に対する生体反応の発達と調節において重要な役割を担う多機能タンパク質であり、特に、免疫、炎症を制御する重要な因子である。例えば、インターロイキン-1βの濃度が上昇する疾患としては、アルコ-ル性肝炎、肝炎、関節リウマチ、脊髄疾患、頭部障害等が知られている。インターロイキン-1βの健常人の値は10ppt以下である。
【0004】
このような背景の中、生体内に極めて微量で存在する物質を高感度、簡便に測定する方法として、酵素免疫法と電気化学検出法を組み合わせた酵素免疫電気化学測定法が提案されている。従来のサンドイッチ法を用いた酵素免疫法では、予め固相に固定化した一次抗体と試料中の抗原との反応後、酵素標識抗体を加えて、一次抗体-抗原-酵素標識抗体を形成させる。その後、結合した酵素標識抗体(B)と遊離の酵素標識抗体(F)を分離(BF分離)し、結合した酵素標識抗体(B)の酵素と基質のサイクリック反応の生成物を発光や吸光度で測定して、抗原量を得ていた。酵素免疫電気化学測定法では、BF分離までの工程は従来と同じであるが、酵素標識抗体(B)のサイクリック反応の生成物を銀電極に吸着、濃縮して、その量を電気化学的手法で計測するものである。その際、抗体に標識する酵素としてコリンエステラーゼを使用し、コリンエステラーゼによる分解物であるチオコリンを銀電極に吸着、濃縮し、銀電極に吸着したチオコリンの強アルカリ中での還元脱離により発生する電流信号を計測して検出していた(特開2004−257996号公報)。そのため、微量の酵素反応生成物を銀電極上に濃縮することができ、高感度計測が可能となる。本手法は、金表面に結合したチオール化合物の還元脱離法(Langmuir 7, (1991) 2687-2693)を応用したものであり、この還元脱離を応用した他の例としては、アセチルコリンエステラーゼ活性を測定した報告(Sensors and Actuators B 91, (2003) 148-151)がある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−257996号公報
【非特許文献1】Langmuir 7, (1991) 2687-2693
【非特許文献2】Sensors and Actuators B 91, (2003) 148-151
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気化学手法を用いた酵素免疫電気化学測定法では、銀電極に吸着したチオコリンの還元脱離反応を強アルカリ溶液(例えば、0.5M KOH溶液)中で行なう必要がある。そのため、電気化学計測工程では、BF分離までの工程を行なう溶液を強アルカリ溶液に交換しなければならない。強アルカリ溶液の使用は、安全性に問題があるため、取扱に注意が必要である。さらに、本測定法では、コリンエステラーゼの酵素反応生成物であるチオコリンを銀電極に吸着した後に測定するため、酵素反応のエンドポイント測定となり、直接酵素の反応速度を測定できない。すなわち、コリンエステラーゼの酵素反応の途中経過を測定できないため、測定精度が低下する問題があった。銀電極に吸着したチオコリンを還元脱離させる方法においても、還元電流のピーク面積から吸着量を見積もるため、夾雑物による影響を受けやすくベースラインが安定しにくく、測定精度が低下する問題があった。
【0007】
本発明の目的は、溶液交換操作なしで簡便に使用でき、かつ標識酵素の酵素反応速度を直接測定し、高感度で高精度の測定装置及び測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では酵素標識抗体のサイクリック反応の生成物であるチオール化合物量又は生成速度を電界効果トランジスタで測定する。電界効果トランジスタは、センシング部分に例えば金電極を有し、絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲートと導電性配線で接続されている。センシング部分の金電極へのチオール化合物の吸着に伴う電位変化は、電界効果トランジスタのソース、ドレイン間のドレイン電流変化として計測する。すなわち、同一容器中でチオール化合物を生成する酵素反応を行い、その際生成したチオール化合物の金電極への吸着反応をドレイン電流変化として測定する。また、チオール化合物を生成する酵素反応と生成したチオール化合物の金電極への吸着反応を別々の容器で行なう場合でも、生成したチオール化合物が含まれる容器中の溶液を金電極への吸着反応を行なう容器に移し替えた後に、同様にチオール化合物量をドレイン電流変化として計測する。測定時には、金電極と参照電極間に交流電圧を印加する。さらに、測定時のドリフト低減のために、直鎖高分子ポリマーを金電極上に物理吸着させて使用するのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、金電極を有する電界効果トランジスタを用いて、抗体に標識された酵素のサイクリック反応の生成物であるチオール化合物の金電極への吸着に伴うドレイン電流変化を計測することにより、酵素反応の生成物であるチオール化合物の量、又は生成速度を測定することが出来る。その際、同一容器中でチオール化合物を生成する酵素反応と生成したチオール化合物の金電極への吸着反応を行なうことにより、酵素反応をリアルタイムで計測でき、高精度な定量が可能となる。また、チオール化合物を生成する酵素反応と生成したチオール化合物の金電極への吸着反応を別々の容器で行なう場合でも、生成したチオール化合物が含まれる容器中の溶液を金電極への吸着反応を行なう容器に移し替えるだけの簡単な操作で、生成したチオール化合物量を計測できる。そのため、従来の手法を用いてB/F分離及び酵素反応までの操作を行なうことができ、本発明の計測のために新たな操作を行なう必要がない。溶液中で金電極を使用する際に問題となる金電極上への夾雑物の吸着や溶液中のイオン等によるドリフトの影響は、金電極と参照電極間に交流電圧を印加することにより、容易に除くことができる。あるいは、直鎖高分子ポリマーを金電極上に物理吸着させることにより、ドリフトを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明によるFETセンサを用いた免疫分析装置の一例を示すブロック図である。本発明の計測システムは、測定部1、信号処理回路2、及びデータ処理装置3から構成される。測定部1内には、絶縁ゲート電界効果トランジスタ4、参照電極5、参照電極5に高周波電圧を印加する電源6、測定物質を含有する試料溶液を供給する試料溶液注入器7、チオール化合物を生成する酵素と測定物質に対する抗体とを結合した酵素標識抗体を供給する酵素標識抗体溶液注入器8、前記チオール化合物を生成する酵素の基質を供給するための基質溶液注入器9、測定セル10を備える。測定セル10内の反応溶液11中には、抗体12が固定化された抗体固定板13、絶縁ゲート電界効果トランジスタ4上に形成された金電極14、参照電極5が配置されている。
【0011】
測定手順は以下の通りである。最初、測定セル10内の反応溶液11中に試料溶液注入器7を用いて試料溶液を注入し、試料溶液中の抗原と抗体12を結合させる。一定時間後、反応溶液11中に酵素標識抗体溶液注入器8を用いて酵素標識抗体溶液を注入し、抗原・抗体反応を起こし、抗体-抗原-酵素標識抗体を形成させる。その後、結合した酵素標識抗体と遊離の酵素標識抗体を測定セル10の洗浄及び測定セル10内の反応溶液11の交換により分離する。測定セル10内の洗浄・溶液交換後、基質溶液注入器9を用いて標識酵素の基質を注入すると、基質は酵素により分解され、チオール化合物が生成する。生成したチオール化合物は、絶縁ゲート電界効果トランジスタ4上に形成された金電極14に吸着し、自己組織化膜を形成する。その結果、金電極14上の電位が変化する。測定は、基質溶液注入器9による基質注入前後で変化する絶縁ゲート電界効果トランジスタ4内のソース15、ドレイン16間の電流をリアルタイムでモニターし、信号処理回路2及びデータ処理装置3で記録することで行う。チオール化合物の金電極14への吸着速度は、チオール化合物の生成速度、すなわち、抗体-抗原-酵素標識抗体の量に比例する。そのため、チオール化合物の金電極14への吸着速度を測定することにより、結合した標識酵素の量、すなわち試料溶液中の抗原量を得ることができる。その際、測定外部変動による影響を低減するために、測定中は参照電極5に電源6により高周波電圧を印加している。
【0012】
試料溶液注入器7、酵素標識抗体溶液注入器8、基質溶液注入器9には、シリンジポンプ又は加圧式送液装置を使用することができる。注入する体積が1μL以上であればシリンジポンプ、加圧式送液装置共に使用できるが、注入体積が1μL以下であれば、抵抗管にキャピラリーを使用した加圧式送液装置が望ましい。例えば、注入体積が0.2μLの場合には、内径25μm、長さ20mmの流量制御用キャピラリーを使用し、加圧2気圧、加圧時間2秒の条件下で正確に注入を行なうことができる。
【0013】
参照電極5は、反応溶液11中の金電極14の表面で起こる平衡反応あるいは化学反応に基づく電位変化を安定に測定するために、基準となる電位を与える。通常は参照電極としては、飽和塩化カリウムを内部溶液に使用している銀・塩化銀電極、あるいは甘こう(カロメル)電極が用いられるが、測定する試料溶液の組成が一定の場合には、疑似電極として銀・塩化銀電極のみを使用しても問題はない。
【0014】
図2は、本発明の免疫分析装置に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタの構造を示す図である。図2(a)、(b)は、各々断面構造及び平面構造を表わしている。絶縁ゲート電界効果トランジスタ21は、シリコン基板の表面にソース22、ドレイン23、及びゲート絶縁物24を形成し、金電極25を設けてある。金電極25と絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲート26を導電性配線27で接続してある。好ましくは、絶縁ゲート電界効果トランジスタは、シリコン酸化物を絶縁膜として用いる金属酸化物半導体(Metal-oxide semiconducor)電界効果トランジスタ(FET)であるが、薄膜トランジスタ(TFT)を用いても問題はない。本構造を採用することにより、金電極25を任意の場所に、かつ任意の大きさに形成でき、測定対象の試料溶液量に応じて測定セルの容積を変更することができる。本発明で使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタは、SiO2(厚さ;17.5nm)を用いた絶縁層を有するデプレション型FETであり、金電極を400μm×400μmの大きさで作製してある。通常の測定は、水溶液を使用するため、本素子は溶液中で動作しなければならない。溶液中で測定する場合には、電気化学反応を起こし難い−0.5〜0.5Vの電極電位範囲で動作することが必要である。そのため、本実施例ではデプレション型nチャネルFETの作製条件、すなわち閾値電圧(Vt)調整用イオン打ち込み条件を調整し、FETの閾値電圧を−0.5V付近に設定してある。なお、金電極に代えて、銀等の他の貴金属からなる電極を用いてもよい。
【0015】
図3は、本発明によるFETセンサを用いた免疫分析装置の他の構成例を示す図である。本実施例に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタ31は、シリコン基板の表面にソース32、ドレイン33、及びゲート絶縁物34を形成し、ソース32、ドレイン33間のゲート絶縁物表面に金電極35を設けてある。金電極35の表面には、抗体36が固定化されている。
【0016】
実際の測定の際には、金電極35、金電極35の表面上に固定化された抗体36、及び参照電極37を測定セル38内の反応溶液39中に配置し、参照電極37に電源40により高周波電圧を印加し、反応溶液39で起こる酵素反応生成物を基質注入前後で変化する絶縁ゲート電界効果トランジスタ31の電気特性変化、すなわちソース32とドレイン33間の電流変化として検出する。こうして、抗体36に結合した試料溶液中の抗原量を測定することができる。
【0017】
測定手順は以下の通りである。最初、測定セル38内の反応溶液39中に試料溶液注入器7を用いて試料溶液を注入し、試料溶液中の抗原と抗体36を結合させる。一定時間後、反応溶液39中に酵素標識抗体溶液注入器8を用いて酵素標識抗体溶液を注入し、抗原・抗体反応を起こし、抗体-抗原-酵素標識抗体を形成させる。その後、結合した酵素標識抗体と遊離の酵素標識抗体を、測定セル38内の反応溶液39の交換及び測定セル38の洗浄により分離する。測定セル38内の溶液交換・洗浄後、基質溶液注入器9を用いて標識酵素の基質を注入すると、基質は酵素により分解され、チオール化合物が生成する。生成したチオール化合物は、絶縁ゲート電界効果トランジスタ31上に形成された金電極35に吸着し、自己組織化膜を形成する。その結果、金電極35上の電位が変化する。チオール化合物の金電極35への吸着速度は、チオール化合物の生成速度、すなわち、抗体-抗原-酵素標識抗体の量に比例する。そのため、チオール化合物の金電極35への吸着速度を測定することにより、結合した標識酵素の量、すなわち試料溶液中の抗原量を得ることができる。その際、金電極35上への固定化は、抗体の他に抗体の一部であるFab’断片や一本鎖DNAであるアプタマーを用いても問題ない。
【0018】
図4は、本発明によるFETセンサを用いた免疫分析システムの例を示すブロック図である。この分析システムは、測定部41、信号処理回路42、データ処理装置43、及びチオール化合物生成反応のための反応容器44から構成される。測定部41内には、絶縁ゲート電界効果トランジスタ45、参照電極46、参照電極46に高周波電圧を印加する電源47、反応容器44内の溶液を供給するチオール化合物溶液注入器48が設けられている。測定セル49内の反応溶液50中には、絶縁ゲート電界効果トランジスタ45上に形成された金電極51、参照電極46が配置されている。チオール化合物生成反応のための反応容器44内には、抗体52が抗体固定板53上に固定化されている。尚、抗体52を直接反応容器44の内部に固定化してもよい。
【0019】
測定手順は以下の通りである。チオール化合物生成反応のための反応容器44に試料溶液を注入し、試料溶液中の抗原と抗体52を結合させる。一定時間後、反応容器44に酵素標識抗体溶液を注入し、抗原・抗体反応を起こし、抗体-抗原-酵素標識抗体を形成させる。その後、結合した酵素標識抗体と遊離の酵素標識抗体を、反応容器44内の溶液交換及び反応容器44の洗浄により分離する。反応容器44内の溶液交換・洗浄後、標識酵素の基質を注入すると、基質は酵素により分解され、チオール化合物が生成する。一定時間反応後、生成したチオール化合物を、チオール化合物溶液注入器48を用いて測定セル49内の反応溶液50に導入する。測定セル49内の反応溶液50に導入されたチオール化合物は、絶縁ゲート電界効果トランジスタ45上に形成された金電極51に吸着し、自己組織化膜を形成する。その結果、金電極51上の電位が変化する。測定は、チオール化合物溶液注入器48による生成したチオール化合物の注入前後で変化する絶縁ゲート電界効果トランジスタ45内のソース54、ドレイン55間の電流をリアルタイムでモニターし、信号処理回路42及びデータ処理装置43で記録することで行う。チオール化合物の金電極51への吸着速度は、チオール化合物の濃度、すなわち、抗体-抗原-酵素標識抗体の量に比例する。そのため、チオール化合物の金電極51への吸着速度を測定することにより、結合した標識酵素の量、すなわち試料溶液中の抗原量を得ることができる。
【0020】
図5は、本発明によるFETセンサを用いた免疫分析装置における反応フローを示している。
免疫分析では、抗原と抗体との特異的な結合反応を利用し、抗原と抗体の結合量を計測して抗原量を得る。本発明では、従来の免疫分析で一般的に用いられているサンドイッチ法を用いて、抗体に標識した酵素などを通して間接的に抗原量を測定する。予め固相に固定化した抗体61と試料中の抗原62との反応後、酵素標識抗体63を加えて、抗体-抗原-酵素標識抗体64を形成させる。その後、結合した酵素標識抗体65と遊離の酵素標識抗体63及び遊離の抗原62を分離し、結合した酵素標識抗体の酵素66と基質67のサイクリック反応の生成物であるチオール化合物68をFETセンサで測定して、抗原量を得ることができる。
【0021】
本発明の交流電圧印加の効果を、他の実施例を用いて説明する。図6(a)〜(h)は、図4に示した参照電極46に交流電圧を印加して、試料溶液を測定セル49内の反応溶液50中に導入した際のドレイン電流の経時変化を示す図である。図6(b)〜(h)は、各々周波数10Hz、100Hz、1KHz、10KHz、100KHz、1MHz、10MHzの交流電圧を印加した場合の結果を示している。交流電圧印加の効果を見るために、リファレンス実験として直流(DC)印加のデータを図6(a)に示してある。参照電極46にはAg/AgCl参照電極を使用した。参照電極46への交流電圧印加は、中心電圧100mV、振幅電圧100mVで行った。反応溶液には0.1M Na2SO4水溶液1.9mlを用いた。試料溶液には、アルカンチオール化合物として1mM 6−ヒドロキシ−1−ヘキサンチオール(6-HHT)水溶液を用いた。トランジスタの電流・電圧特性の測定は、半導体パラメータアナライザ(Agilent 4155C Semiconductor Parameter Analyzer)を用いて行った。
【0022】
測定開始600秒後(図中の矢印)に、試料溶液0.1mLを反応溶液中に導入した。試料溶液導入後、全ての場合でドレイン電流の減少が見られた。DC印加の場合には、安定性が悪く、測定開始から試料溶液導入までの間でのドリフトが大きかった。さらに、試料溶液の導入後、ドレイン電流値は減少後再び増加し、安定化までには10分以上を要した。この傾向は、周波数が1KHz以下の場合に見られた。一方、周波数が10KHz以上の場合には、ドレイン電流値は減少後ほとんど増加することなく、安定化までの時間は周波数が1KHz以下の場合と比べて短かった。また、測定開始から試料溶液導入までの間のドレイン電流もドリフトが小さく安定していた。これらの結果は、試料溶液を導入したことにより金電極の表面電位が不安定になるが、参照電極に印加する交流の周波数が10KHz以上の場合には、この金電極の表面電位の乱れを早く回復する効果が大きくなるためであると考えられる。このように、測定時に10KHz以上の高周波を参照電極に重畳することにより、金電極上で生じる反応過程を精度良く測定できるようになる。
【0023】
図7は、異なる濃度の試料溶液を測定した結果を示す図である。試料溶液には、アルカンチオール化合物として6-HHT水溶液を用いた。図7(a)〜(g)は、反応溶液中の最終濃度が各々50μM、25μM、10μM、5μM、2.5μM、0.5μM、0.1μMの場合の結果を示している。金電極への物理吸着の影響を見るために、リファレンス実験としてHDO(ヘキサンチジオール)水溶液を用いた(最終濃度;50μM)。図中の矢印は、使用溶液の導入した時間を表している。参照電極46にはAg/AgCl参照電極を使用した。参照電極46への交流電圧印加は、中心電圧100mV、振幅電圧100mV、周波数1MHzで行った。反応溶液には0.1M Na2SO4水溶液1.9mlを用いた。図7(a)、(b)に示すように、反応溶液中の濃度が50μMや25μMの場合には、数秒でドレイン電流値が一定となり、金電極への吸着反応が終了した。また、図7(d)、(e)に示すように、濃度が5μMや2.5μMの場合には、ドレイン電流値が一定となり反応が終了するのに各々約5分及び10分要した。一方、図7(f)、(g)に示すように、濃度が0.5μMや0.1μMの場合には、ドレイン電流値が一定となるのに1時間以上要した。また、図7(h)に示すように、HDO水溶液の場合は、ドレイン電流値はほとんど変化せず、金電極への物理吸着の影響が無い事を示している。
【0024】
このように、反応溶液中の濃度に応じてドレイン電流値が一定になるまでの時間が変化するため、試料溶液導入後からのドレイン電流値が一定になるまでの時間を測定又は推測すれば、試料溶液中のアルカンチオール化合物の濃度を得ることができる。また、試料溶液導入後からのドレイン電流値が一定になるまでの時間を測定又は推測する代わりに、試料溶液導入直後のドレイン電流値の変化量から金電極へのアルカンチオール化合物の吸着速度を用いて溶液中の濃度を得ることもできる。金電極への吸着速度は、試料溶液導入直後のドレイン電流値を多項式や指数関数を用いて最小二乗法などによりフィッティングして得られた関数y=F(x)を用いればよい。あるいは、試料溶液導入直後の吸着反応の初速度として、F(x)の微分値あるいは一定時間の変化量を用いればよい。
【0025】
図8は、試料溶液中の濃度と金電極への測定結果の吸着速度の関係を示す図である。測定は3回行い、図にはその平均をプロットした。吸着速度は、試料溶液導入直後のドレイン電流曲線の接線を初速度として計算して求めた。図8に示すように、試料溶液中の濃度と吸着速度は良好な直線性を示した。このように、ドレイン電流値が一定になるまでの時間を計測して吸着反応が終了するまでの時間を用いる代わりに、金電極への吸着速度から試料溶液中の濃度を迅速にかつ正確に得ることができる。
【0026】
本発明の装置を用いた酵素免疫測定法について以下に説明する。本実施例では、従来の免疫分析で一般的に用いられているサンドイッチ法を用いて、抗体に標識した酵素などを通して間接的に抗原量を測定した。予めプレート上に固定化した抗体と試料中の抗原との反応後、酵素標識抗体を加えて、抗体-抗原-酵素標識抗体を形成させた。その後、結合した酵素標識抗体と遊離の酵素標識抗体及び遊離の抗原を分離し、結合した酵素標識抗体の酵素と基質のサイクリック反応の生成物であるチオール化合物をFETセンサで測定した。本実施例で使用した試料及び試薬を以下に示す。
固定化抗体:Interleukin 1β 抗体
試料: Human plasma
測定対象:Interleukin 1β
酵素標識抗体:アセチルコリンエステラーゼ(AChE):Interleukin-1β Fab’ Conjugate
基質:2.5 mM アセチルチオコリン(Acetylthiocholine)
反応溶液: 0.1M リン酸バッファー(pH7.4)、0.15M NaCl、1mM EDTA
尚、ここで使用した反応条件や試薬濃度は単なる一例であり、装置構成及び測定対象に応じて適宜変更できる。
【0027】
測定手順は以下の通りである。最初、Interleukin 1βの抗体が固定化されたプレートのウエルに100μLの試料溶液(Human plasma)及び100μLの酵素標識抗体(AChE:Interleukin-1β Fab’ Conjugate)を加えて、プレートをプラスチックフィルムでカバーして4℃で一晩反応させる。その後、プレートのウエルの溶液を捨てて、洗浄バッファーで5〜6回洗浄する。アセチルコリンエステラーゼの基質であるアセチルチオコリン溶液を各ウエルに添加して、約30分間反応させる。反応により生じたチオール化合物が含まれた反応溶液をFETセンサの浸漬した反応セルに導入して、チオール化合物の金電極への吸着速度を測定することにより、反応により生じたチオール化合物の濃度を得る。生成したチオール化合物の濃度は、抗体-抗原-酵素標識抗体の酵素濃度に比例するため、抗原量を定量することができる。
【0028】
FETセンサによる測定の際には、参照電極としてAg/AgCl参照電極を使用した。参照電極には、中心電圧100mV、振幅電圧100mV、周波数1MHzの交流電圧を印加した。FETセンサによる測定結果を図9に示す。図9(a)〜(d)のデータは、抗原であるInterleukin 1βの濃度が各々200、20、2.0、1.0pg/mLの試料の測定結果を表している。図9(e)のデータは、Interleukin 1βの濃度が0pg/mLであるブランクである。本発明では、試料中のInterleukin 1βの濃度を金電極への吸着速度として求めた。その吸着速度は、試料溶液導入直後(図中の矢印)のドレイン電流曲線の接線(図中の点線)を初速度として計算して求めた。
【0029】
その結果、図10に示すように、試料溶液中の濃度と吸着速度は良好な直線性を示し、1.0pg/mLまで測定可能であった。この検出感度は従来法より1桁以上高い値である。このように、従来の免疫分析で一般的に用いられているサンドイッチ法の酵素反応で生成したチオール化合物の金電極への吸着速度を測定することにより、分光光度計を使用せずに、FETセンサにより、試料溶液中の濃度を高感度に測定することができる。
【0030】
本発明の装置を用いた酵素免疫測定法の他の実施例について以下に説明する。本実施例では、図1に示す装置構成で、同一反応セル内で酵素免疫反応生成物のチオール化合物をリアルタイムで計測した。尚、FETセンサによる測定の際には、参照電極としてAg/AgCl参照電極を使用した。参照電極には、中心電圧100mV、振幅電圧100mV、周波数1MHzの交流電圧を印加した。本実施例で使用した試料及び試薬を以下に示す。
固定化抗体:Interleukin 1β 抗体
試料: Human plasma
測定対象:Interleukin 1β
酵素標識抗体:アセチルコリンエステラーゼ(AChE):Interleukin-1β Fab’ Conjugate
基質:2.5 mM アセチルチオコリン(Acetylthiocholine)
反応溶液: 0.1M リン酸バッファー(pH7.4)、0.15M NaCl、1mM EDTA
【0031】
測定手順は以下の通りである。最初、反応セル内にInterleukin 1βの抗体が固定化された抗体固定板を設置する。反応セルに100μLの試料溶液(Human plasma)及び100μLの酵素標識抗体(AChE:Interleukin-1β Fab’ Conjugate)を加え、反応セルをプラスチックフィルムでカバーして4℃で一晩反応させる。その後、反応セル内の溶液を捨てて、洗浄バッファーで5〜6回洗浄する。反応セル内に1.8mLの反応溶液(0.1M リン酸バッファー(pH7.4)、0.15M NaCl、1mM EDTA)を加えて、測定を開始する。測定開始から600秒後に0.2mLのアセチルチオコリン溶液を反応セル内に導入すると、酵素反応によりチオール化合物が生成する。反応により生じたチオール化合物の金電極への吸着により、FETセンサのドレイン電流値が変化する。このドレイン電流値をリアルタイムで計測することにより、チオール化合物の生成速度が正確に測定できる。チオール化合物の生成速度は、抗体-抗原-酵素標識抗体の酵素量に依存するため、チオール化合物の生成速度から結合した標識酵素の量、すなわち抗原量を得ることができる。
【0032】
本実施例では、試料中のInterleukin 1βの濃度を、金電極への吸着速度を試料溶液導入直後のドレイン電流曲線の接線を初速度として計算して求めた。FETセンサによる測定結果を図11に示す。図11に示すように、試料溶液中の濃度と吸着速度は良好な直線性を示した。
【0033】
次に、金電極上に直鎖状ポリマーを物理吸着させることの効果について説明する。直鎖状のポリマーとして、分子量の異なるポリエチレングリコールを使用した。図12は、ポリエチレングリコールを物理吸着させた電極へのチオール化合物の吸着に伴うドレイン電流の経時変化を示す図である。図12(b)〜(f)は、各々分子量、1000、2000、8000、500000、2000000の0.5%ポリエチレングリコール水溶液をコーティングした金電極のデータである。図12(a)は、リファレンスとして未処理の金電極を用いた場合を示している。使用したチオール化合物は、1mM 6-HHT水溶液である。反応溶液には0.1M Na2SO4水溶液1.9mlを用いて、測定開始から600秒後に、0.1mLの6-HHT水溶液を導入した。参照電極にはAg/AgCl参照電極を使用した。尚、直鎖状ポリマーの効果を見るために、参照電極への交流電圧印加は行なわず、DC100mVを印加した。トランジスタの電流・電圧特性の測定は、半導体パラメータアナライザ(Agilent 4155C Semiconductor Parameter Analyzer)を用いて行った。
【0034】
その結果、図12に示すように、未処理の金電極では、6-HHT水溶液導入前はベースラインが大きく揺らいでいるが、ポリエチレングリコールを物理吸着した場合にはベースラインが安定している。特に、分子量が2000以上の場合では、ベースラインの揺らぎは無くなり安定した。
【0035】
また、別の直鎖状のポリマーとしてデキストランを用いた場合の測定結果を図13に示す。図13は、デキストランを物理吸着させた電極へのチオール化合物の吸着に伴うドレイン電流の経時変化を示す図である。図13(b)〜(d)は、各々分子量、40000、90000、200000の0.5%デキストラン溶液をコーティングした金電極のデータである。図13(a)は、リファレンスとして未処理の金電極を示している。使用したチオール化合物は、1mM 6-HHT水溶液である。反応溶液には0.1M Na2SO4水溶液1.9mlを用い、測定開始から600秒後に0.1mLの6-HHT水溶液を導入した。参照電極にはAg/AgCl参照電極を使用した。尚、直鎖状ポリマーの効果を見るために、参照電極への交流電圧印加は行なわず、DC100mVを印加した。トランジスタの電流・電圧特性の測定は、半導体パラメータアナライザ(Agilent 4155C Semiconductor Parameter Analyzer)を用いて行った。その結果、図12の場合と同様に、未処理の金電極では、6-HHT水溶液導入前はベースラインが大きく揺らいでいるが、金電極にデキストランを物理吸着した場合にはベースラインが安定した。
【0036】
また、これらの直鎖状ポリマーを物理吸着させた金電極と高周波重畳法を組み合わせた場合の測定結果を図14に示す。図14(a)、(b)、(c)は、各々未処理の金電極、デキストラン(分子量:2000000)をコーティングした金電極、ポリエチレングリコール(分子量:500000)をコーティングした金電極に対応する。尚、金電極へのポリマーの物理吸着には0.5%水溶液を使用した。使用したチオール化合物は、1mM 6-HHT水溶液である。反応溶液には0.1M Na2SO4水溶液1.9mlを用いて、測定開始から600秒後に、0.1mLの6-HHT水溶液を導入した。参照電極にはAg/AgCl参照電極を使用した。参照電極への交流電圧印加は、中心電圧100mV、振幅電圧100mV、周波数1MHzとした。トランジスタの電流・電圧特性の測定は、半導体パラメータアナライザ(Agilent 4155C Semiconductor Parameter Analyzer)を用いて行った。
【0037】
その結果、図14中に破線で囲んで示すように、未処理の金電極の場合でも、6-HHT水溶液導入前のベースラインの揺らぎが小さく安定していた。デキストランやポリエチレングリコールをコーティングした場合には、ほとんどベースラインの揺らぎが見られなくなり、直鎖状ポリマーのコーティングと高周波重畳法の相乗効果があった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による免疫分析装置の例を示すブロック図。
【図2】本発明の免疫分析装置に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタの構造例を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図。
【図3】本発明による免疫分析装置の例を示す図
【図4】本発明による免疫分析システムの例を示すブロック図
【図5】本発明による免疫分析の反応フローを示す図。
【図6】本発明による高周波重畳法の効果を示す図(印加した電圧の周波数、(a):DC、(b):10Hz、(c):100Hz、(d):1KHz、(e):10KHz、(f):100kHz、(g):1MHz、(h):10MHz)。
【図7】異なる濃度のチオール化合物溶液を測定した結果を示す図(チオール化合物の濃度(a):50μM、(b):25μM、(c):10μM、(d):5μM、(e):2.5μM、(f):0.5μM、(g):0.1μM)。
【図8】チオール化合物の濃度と金電極への吸着速度の関係を示す図。
【図9】本発明の免疫分析装置による測定結果を示す図。
【図10】本発明の装置で測定した試料溶液中の濃度と吸着速度の関係を示す図。
【図11】本発明の装置で測定した試料溶液中の濃度と吸着速度の関係を示す図。
【図12】金電極上に物理吸着した直鎖状ポリマーの効果を示す図。
【図13】金電極上に物理吸着した直鎖状ポリマーの効果を示す図。
【図14】直鎖状ポリマーを物理吸着させた金電極と高周波重畳法を組み合わせた場合の効果を示す図。
【符号の説明】
【0039】
1,41…測定部、2,42…信号処理回路、3,43…データ処理装置、4,21,31,45…絶縁ゲート電界効果トランジスタ、5,37…参照電極、6,40,47…電源、7…試料溶液注入器、8…酵素標識抗体溶液注入器、9…基質溶液注入器、10,38,49…測定セル、11,39,50…反応溶液、12,36,52,61…抗体、13,53…抗体固定板、14,25,35,51…金電極、15,22,32,54…ソース、16,23,33,55…ドレイン、24,34…ゲート絶縁物、26…絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲート、27…導電性配線、44…反応容器、48…チオール化合物溶液注入器、62…抗原、63…酵素標識抗体、64…抗体-抗原-酵素標識抗体、65…結合した酵素標識抗、66…結合した酵素標識抗体の酵素、67…基質、68…チオール化合物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質等の生体物質を高感度に測定することのできる測定装置及び分析用素子に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なタンパク質の測定法である酵素免疫測定法は、抗体が特定のタンパク質に選択的に結合する反応、すなわち抗原抗体反応を利用しており、その測定法は、大きく分けて、サンドイッチ法と競合反応法がある。サンドイッチ法では、抗体に標識した酵素などを通して間接的に抗原量を測定する方法である。予め固相に固定化した一次抗体と試料中の抗原との反応後、酵素標識抗体を加えて、一次抗体-抗原-酵素標識抗体を形成させる。その後、結合した酵素標識抗体(B)と遊離の酵素標識抗体(F)を分離(BF分離)し、結合した酵素標識抗体(B)の酵素と基質のサイクリック反応の生成物を発光や吸光度で測定して、抗原量を得る。競合反応法は、測定対象の非標識抗原と濃度既知の酵素標識した抗原の間での固定化抗体への結合が競合する性質を用いている。酵素標識抗原の抗体への結合量は、測定対象の抗原と酵素標識抗原の濃度比に依存するため、酵素標識抗原の結合量を測定することにより、測定対象の抗原の量を求めることができる。その中で、サンドイッチ法は高感度であり、現在広く用いられている。病気のマーカーである生体内に極めて微量で存在するペプチドやタンパク質の測定にも用いられている。
【0003】
近年、健康意識が高まり、生活習慣病に対する対策や予防が問題となっている。特に、心疾患や脳血管疾患はガンにつぐ死亡原因となっており、その予防が重要となってきている。例えば、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、血管拡張作用、利尿作用をもち、体液量や血圧の調整に重要な役割を果たしている。健常人における血漿中BNP濃度は、極めて低いが、心不全患者では重症度に応じてその値が増加するため、BNPの測定は心不全の病態の把握に重要な意義を持っている。健常人の血中濃度は、18ppt(pg/mL)であり、10ppt以下の装置の測定感度が必要である。炎症性サイトカインのひとつであるTNF-α(Tumor Necrosis Factor:腫瘍壊死因子)も、心筋の損傷、とりわけ心不全にきわめて重要な役割を果たしていると言われている。心不全患者の血中あるいは心臓組織ではTNF-αのレベルが上昇し、それが心不全の病態形成に大きく関与している。その濃度も1ppt以下と極めて低い。また、サイトカインは疾患や感染に対する生体反応の発達と調節において重要な役割を担う多機能タンパク質であり、特に、免疫、炎症を制御する重要な因子である。例えば、インターロイキン-1βの濃度が上昇する疾患としては、アルコ-ル性肝炎、肝炎、関節リウマチ、脊髄疾患、頭部障害等が知られている。インターロイキン-1βの健常人の値は10ppt以下である。
【0004】
このような背景の中、生体内に極めて微量で存在する物質を高感度、簡便に測定する方法として、酵素免疫法と電気化学検出法を組み合わせた酵素免疫電気化学測定法が提案されている。従来のサンドイッチ法を用いた酵素免疫法では、予め固相に固定化した一次抗体と試料中の抗原との反応後、酵素標識抗体を加えて、一次抗体-抗原-酵素標識抗体を形成させる。その後、結合した酵素標識抗体(B)と遊離の酵素標識抗体(F)を分離(BF分離)し、結合した酵素標識抗体(B)の酵素と基質のサイクリック反応の生成物を発光や吸光度で測定して、抗原量を得ていた。酵素免疫電気化学測定法では、BF分離までの工程は従来と同じであるが、酵素標識抗体(B)のサイクリック反応の生成物を銀電極に吸着、濃縮して、その量を電気化学的手法で計測するものである。その際、抗体に標識する酵素としてコリンエステラーゼを使用し、コリンエステラーゼによる分解物であるチオコリンを銀電極に吸着、濃縮し、銀電極に吸着したチオコリンの強アルカリ中での還元脱離により発生する電流信号を計測して検出していた(特開2004−257996号公報)。そのため、微量の酵素反応生成物を銀電極上に濃縮することができ、高感度計測が可能となる。本手法は、金表面に結合したチオール化合物の還元脱離法(Langmuir 7, (1991) 2687-2693)を応用したものであり、この還元脱離を応用した他の例としては、アセチルコリンエステラーゼ活性を測定した報告(Sensors and Actuators B 91, (2003) 148-151)がある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−257996号公報
【非特許文献1】Langmuir 7, (1991) 2687-2693
【非特許文献2】Sensors and Actuators B 91, (2003) 148-151
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気化学手法を用いた酵素免疫電気化学測定法では、銀電極に吸着したチオコリンの還元脱離反応を強アルカリ溶液(例えば、0.5M KOH溶液)中で行なう必要がある。そのため、電気化学計測工程では、BF分離までの工程を行なう溶液を強アルカリ溶液に交換しなければならない。強アルカリ溶液の使用は、安全性に問題があるため、取扱に注意が必要である。さらに、本測定法では、コリンエステラーゼの酵素反応生成物であるチオコリンを銀電極に吸着した後に測定するため、酵素反応のエンドポイント測定となり、直接酵素の反応速度を測定できない。すなわち、コリンエステラーゼの酵素反応の途中経過を測定できないため、測定精度が低下する問題があった。銀電極に吸着したチオコリンを還元脱離させる方法においても、還元電流のピーク面積から吸着量を見積もるため、夾雑物による影響を受けやすくベースラインが安定しにくく、測定精度が低下する問題があった。
【0007】
本発明の目的は、溶液交換操作なしで簡便に使用でき、かつ標識酵素の酵素反応速度を直接測定し、高感度で高精度の測定装置及び測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では酵素標識抗体のサイクリック反応の生成物であるチオール化合物量又は生成速度を電界効果トランジスタで測定する。電界効果トランジスタは、センシング部分に例えば金電極を有し、絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲートと導電性配線で接続されている。センシング部分の金電極へのチオール化合物の吸着に伴う電位変化は、電界効果トランジスタのソース、ドレイン間のドレイン電流変化として計測する。すなわち、同一容器中でチオール化合物を生成する酵素反応を行い、その際生成したチオール化合物の金電極への吸着反応をドレイン電流変化として測定する。また、チオール化合物を生成する酵素反応と生成したチオール化合物の金電極への吸着反応を別々の容器で行なう場合でも、生成したチオール化合物が含まれる容器中の溶液を金電極への吸着反応を行なう容器に移し替えた後に、同様にチオール化合物量をドレイン電流変化として計測する。測定時には、金電極と参照電極間に交流電圧を印加する。さらに、測定時のドリフト低減のために、直鎖高分子ポリマーを金電極上に物理吸着させて使用するのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、金電極を有する電界効果トランジスタを用いて、抗体に標識された酵素のサイクリック反応の生成物であるチオール化合物の金電極への吸着に伴うドレイン電流変化を計測することにより、酵素反応の生成物であるチオール化合物の量、又は生成速度を測定することが出来る。その際、同一容器中でチオール化合物を生成する酵素反応と生成したチオール化合物の金電極への吸着反応を行なうことにより、酵素反応をリアルタイムで計測でき、高精度な定量が可能となる。また、チオール化合物を生成する酵素反応と生成したチオール化合物の金電極への吸着反応を別々の容器で行なう場合でも、生成したチオール化合物が含まれる容器中の溶液を金電極への吸着反応を行なう容器に移し替えるだけの簡単な操作で、生成したチオール化合物量を計測できる。そのため、従来の手法を用いてB/F分離及び酵素反応までの操作を行なうことができ、本発明の計測のために新たな操作を行なう必要がない。溶液中で金電極を使用する際に問題となる金電極上への夾雑物の吸着や溶液中のイオン等によるドリフトの影響は、金電極と参照電極間に交流電圧を印加することにより、容易に除くことができる。あるいは、直鎖高分子ポリマーを金電極上に物理吸着させることにより、ドリフトを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明によるFETセンサを用いた免疫分析装置の一例を示すブロック図である。本発明の計測システムは、測定部1、信号処理回路2、及びデータ処理装置3から構成される。測定部1内には、絶縁ゲート電界効果トランジスタ4、参照電極5、参照電極5に高周波電圧を印加する電源6、測定物質を含有する試料溶液を供給する試料溶液注入器7、チオール化合物を生成する酵素と測定物質に対する抗体とを結合した酵素標識抗体を供給する酵素標識抗体溶液注入器8、前記チオール化合物を生成する酵素の基質を供給するための基質溶液注入器9、測定セル10を備える。測定セル10内の反応溶液11中には、抗体12が固定化された抗体固定板13、絶縁ゲート電界効果トランジスタ4上に形成された金電極14、参照電極5が配置されている。
【0011】
測定手順は以下の通りである。最初、測定セル10内の反応溶液11中に試料溶液注入器7を用いて試料溶液を注入し、試料溶液中の抗原と抗体12を結合させる。一定時間後、反応溶液11中に酵素標識抗体溶液注入器8を用いて酵素標識抗体溶液を注入し、抗原・抗体反応を起こし、抗体-抗原-酵素標識抗体を形成させる。その後、結合した酵素標識抗体と遊離の酵素標識抗体を測定セル10の洗浄及び測定セル10内の反応溶液11の交換により分離する。測定セル10内の洗浄・溶液交換後、基質溶液注入器9を用いて標識酵素の基質を注入すると、基質は酵素により分解され、チオール化合物が生成する。生成したチオール化合物は、絶縁ゲート電界効果トランジスタ4上に形成された金電極14に吸着し、自己組織化膜を形成する。その結果、金電極14上の電位が変化する。測定は、基質溶液注入器9による基質注入前後で変化する絶縁ゲート電界効果トランジスタ4内のソース15、ドレイン16間の電流をリアルタイムでモニターし、信号処理回路2及びデータ処理装置3で記録することで行う。チオール化合物の金電極14への吸着速度は、チオール化合物の生成速度、すなわち、抗体-抗原-酵素標識抗体の量に比例する。そのため、チオール化合物の金電極14への吸着速度を測定することにより、結合した標識酵素の量、すなわち試料溶液中の抗原量を得ることができる。その際、測定外部変動による影響を低減するために、測定中は参照電極5に電源6により高周波電圧を印加している。
【0012】
試料溶液注入器7、酵素標識抗体溶液注入器8、基質溶液注入器9には、シリンジポンプ又は加圧式送液装置を使用することができる。注入する体積が1μL以上であればシリンジポンプ、加圧式送液装置共に使用できるが、注入体積が1μL以下であれば、抵抗管にキャピラリーを使用した加圧式送液装置が望ましい。例えば、注入体積が0.2μLの場合には、内径25μm、長さ20mmの流量制御用キャピラリーを使用し、加圧2気圧、加圧時間2秒の条件下で正確に注入を行なうことができる。
【0013】
参照電極5は、反応溶液11中の金電極14の表面で起こる平衡反応あるいは化学反応に基づく電位変化を安定に測定するために、基準となる電位を与える。通常は参照電極としては、飽和塩化カリウムを内部溶液に使用している銀・塩化銀電極、あるいは甘こう(カロメル)電極が用いられるが、測定する試料溶液の組成が一定の場合には、疑似電極として銀・塩化銀電極のみを使用しても問題はない。
【0014】
図2は、本発明の免疫分析装置に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタの構造を示す図である。図2(a)、(b)は、各々断面構造及び平面構造を表わしている。絶縁ゲート電界効果トランジスタ21は、シリコン基板の表面にソース22、ドレイン23、及びゲート絶縁物24を形成し、金電極25を設けてある。金電極25と絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲート26を導電性配線27で接続してある。好ましくは、絶縁ゲート電界効果トランジスタは、シリコン酸化物を絶縁膜として用いる金属酸化物半導体(Metal-oxide semiconducor)電界効果トランジスタ(FET)であるが、薄膜トランジスタ(TFT)を用いても問題はない。本構造を採用することにより、金電極25を任意の場所に、かつ任意の大きさに形成でき、測定対象の試料溶液量に応じて測定セルの容積を変更することができる。本発明で使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタは、SiO2(厚さ;17.5nm)を用いた絶縁層を有するデプレション型FETであり、金電極を400μm×400μmの大きさで作製してある。通常の測定は、水溶液を使用するため、本素子は溶液中で動作しなければならない。溶液中で測定する場合には、電気化学反応を起こし難い−0.5〜0.5Vの電極電位範囲で動作することが必要である。そのため、本実施例ではデプレション型nチャネルFETの作製条件、すなわち閾値電圧(Vt)調整用イオン打ち込み条件を調整し、FETの閾値電圧を−0.5V付近に設定してある。なお、金電極に代えて、銀等の他の貴金属からなる電極を用いてもよい。
【0015】
図3は、本発明によるFETセンサを用いた免疫分析装置の他の構成例を示す図である。本実施例に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタ31は、シリコン基板の表面にソース32、ドレイン33、及びゲート絶縁物34を形成し、ソース32、ドレイン33間のゲート絶縁物表面に金電極35を設けてある。金電極35の表面には、抗体36が固定化されている。
【0016】
実際の測定の際には、金電極35、金電極35の表面上に固定化された抗体36、及び参照電極37を測定セル38内の反応溶液39中に配置し、参照電極37に電源40により高周波電圧を印加し、反応溶液39で起こる酵素反応生成物を基質注入前後で変化する絶縁ゲート電界効果トランジスタ31の電気特性変化、すなわちソース32とドレイン33間の電流変化として検出する。こうして、抗体36に結合した試料溶液中の抗原量を測定することができる。
【0017】
測定手順は以下の通りである。最初、測定セル38内の反応溶液39中に試料溶液注入器7を用いて試料溶液を注入し、試料溶液中の抗原と抗体36を結合させる。一定時間後、反応溶液39中に酵素標識抗体溶液注入器8を用いて酵素標識抗体溶液を注入し、抗原・抗体反応を起こし、抗体-抗原-酵素標識抗体を形成させる。その後、結合した酵素標識抗体と遊離の酵素標識抗体を、測定セル38内の反応溶液39の交換及び測定セル38の洗浄により分離する。測定セル38内の溶液交換・洗浄後、基質溶液注入器9を用いて標識酵素の基質を注入すると、基質は酵素により分解され、チオール化合物が生成する。生成したチオール化合物は、絶縁ゲート電界効果トランジスタ31上に形成された金電極35に吸着し、自己組織化膜を形成する。その結果、金電極35上の電位が変化する。チオール化合物の金電極35への吸着速度は、チオール化合物の生成速度、すなわち、抗体-抗原-酵素標識抗体の量に比例する。そのため、チオール化合物の金電極35への吸着速度を測定することにより、結合した標識酵素の量、すなわち試料溶液中の抗原量を得ることができる。その際、金電極35上への固定化は、抗体の他に抗体の一部であるFab’断片や一本鎖DNAであるアプタマーを用いても問題ない。
【0018】
図4は、本発明によるFETセンサを用いた免疫分析システムの例を示すブロック図である。この分析システムは、測定部41、信号処理回路42、データ処理装置43、及びチオール化合物生成反応のための反応容器44から構成される。測定部41内には、絶縁ゲート電界効果トランジスタ45、参照電極46、参照電極46に高周波電圧を印加する電源47、反応容器44内の溶液を供給するチオール化合物溶液注入器48が設けられている。測定セル49内の反応溶液50中には、絶縁ゲート電界効果トランジスタ45上に形成された金電極51、参照電極46が配置されている。チオール化合物生成反応のための反応容器44内には、抗体52が抗体固定板53上に固定化されている。尚、抗体52を直接反応容器44の内部に固定化してもよい。
【0019】
測定手順は以下の通りである。チオール化合物生成反応のための反応容器44に試料溶液を注入し、試料溶液中の抗原と抗体52を結合させる。一定時間後、反応容器44に酵素標識抗体溶液を注入し、抗原・抗体反応を起こし、抗体-抗原-酵素標識抗体を形成させる。その後、結合した酵素標識抗体と遊離の酵素標識抗体を、反応容器44内の溶液交換及び反応容器44の洗浄により分離する。反応容器44内の溶液交換・洗浄後、標識酵素の基質を注入すると、基質は酵素により分解され、チオール化合物が生成する。一定時間反応後、生成したチオール化合物を、チオール化合物溶液注入器48を用いて測定セル49内の反応溶液50に導入する。測定セル49内の反応溶液50に導入されたチオール化合物は、絶縁ゲート電界効果トランジスタ45上に形成された金電極51に吸着し、自己組織化膜を形成する。その結果、金電極51上の電位が変化する。測定は、チオール化合物溶液注入器48による生成したチオール化合物の注入前後で変化する絶縁ゲート電界効果トランジスタ45内のソース54、ドレイン55間の電流をリアルタイムでモニターし、信号処理回路42及びデータ処理装置43で記録することで行う。チオール化合物の金電極51への吸着速度は、チオール化合物の濃度、すなわち、抗体-抗原-酵素標識抗体の量に比例する。そのため、チオール化合物の金電極51への吸着速度を測定することにより、結合した標識酵素の量、すなわち試料溶液中の抗原量を得ることができる。
【0020】
図5は、本発明によるFETセンサを用いた免疫分析装置における反応フローを示している。
免疫分析では、抗原と抗体との特異的な結合反応を利用し、抗原と抗体の結合量を計測して抗原量を得る。本発明では、従来の免疫分析で一般的に用いられているサンドイッチ法を用いて、抗体に標識した酵素などを通して間接的に抗原量を測定する。予め固相に固定化した抗体61と試料中の抗原62との反応後、酵素標識抗体63を加えて、抗体-抗原-酵素標識抗体64を形成させる。その後、結合した酵素標識抗体65と遊離の酵素標識抗体63及び遊離の抗原62を分離し、結合した酵素標識抗体の酵素66と基質67のサイクリック反応の生成物であるチオール化合物68をFETセンサで測定して、抗原量を得ることができる。
【0021】
本発明の交流電圧印加の効果を、他の実施例を用いて説明する。図6(a)〜(h)は、図4に示した参照電極46に交流電圧を印加して、試料溶液を測定セル49内の反応溶液50中に導入した際のドレイン電流の経時変化を示す図である。図6(b)〜(h)は、各々周波数10Hz、100Hz、1KHz、10KHz、100KHz、1MHz、10MHzの交流電圧を印加した場合の結果を示している。交流電圧印加の効果を見るために、リファレンス実験として直流(DC)印加のデータを図6(a)に示してある。参照電極46にはAg/AgCl参照電極を使用した。参照電極46への交流電圧印加は、中心電圧100mV、振幅電圧100mVで行った。反応溶液には0.1M Na2SO4水溶液1.9mlを用いた。試料溶液には、アルカンチオール化合物として1mM 6−ヒドロキシ−1−ヘキサンチオール(6-HHT)水溶液を用いた。トランジスタの電流・電圧特性の測定は、半導体パラメータアナライザ(Agilent 4155C Semiconductor Parameter Analyzer)を用いて行った。
【0022】
測定開始600秒後(図中の矢印)に、試料溶液0.1mLを反応溶液中に導入した。試料溶液導入後、全ての場合でドレイン電流の減少が見られた。DC印加の場合には、安定性が悪く、測定開始から試料溶液導入までの間でのドリフトが大きかった。さらに、試料溶液の導入後、ドレイン電流値は減少後再び増加し、安定化までには10分以上を要した。この傾向は、周波数が1KHz以下の場合に見られた。一方、周波数が10KHz以上の場合には、ドレイン電流値は減少後ほとんど増加することなく、安定化までの時間は周波数が1KHz以下の場合と比べて短かった。また、測定開始から試料溶液導入までの間のドレイン電流もドリフトが小さく安定していた。これらの結果は、試料溶液を導入したことにより金電極の表面電位が不安定になるが、参照電極に印加する交流の周波数が10KHz以上の場合には、この金電極の表面電位の乱れを早く回復する効果が大きくなるためであると考えられる。このように、測定時に10KHz以上の高周波を参照電極に重畳することにより、金電極上で生じる反応過程を精度良く測定できるようになる。
【0023】
図7は、異なる濃度の試料溶液を測定した結果を示す図である。試料溶液には、アルカンチオール化合物として6-HHT水溶液を用いた。図7(a)〜(g)は、反応溶液中の最終濃度が各々50μM、25μM、10μM、5μM、2.5μM、0.5μM、0.1μMの場合の結果を示している。金電極への物理吸着の影響を見るために、リファレンス実験としてHDO(ヘキサンチジオール)水溶液を用いた(最終濃度;50μM)。図中の矢印は、使用溶液の導入した時間を表している。参照電極46にはAg/AgCl参照電極を使用した。参照電極46への交流電圧印加は、中心電圧100mV、振幅電圧100mV、周波数1MHzで行った。反応溶液には0.1M Na2SO4水溶液1.9mlを用いた。図7(a)、(b)に示すように、反応溶液中の濃度が50μMや25μMの場合には、数秒でドレイン電流値が一定となり、金電極への吸着反応が終了した。また、図7(d)、(e)に示すように、濃度が5μMや2.5μMの場合には、ドレイン電流値が一定となり反応が終了するのに各々約5分及び10分要した。一方、図7(f)、(g)に示すように、濃度が0.5μMや0.1μMの場合には、ドレイン電流値が一定となるのに1時間以上要した。また、図7(h)に示すように、HDO水溶液の場合は、ドレイン電流値はほとんど変化せず、金電極への物理吸着の影響が無い事を示している。
【0024】
このように、反応溶液中の濃度に応じてドレイン電流値が一定になるまでの時間が変化するため、試料溶液導入後からのドレイン電流値が一定になるまでの時間を測定又は推測すれば、試料溶液中のアルカンチオール化合物の濃度を得ることができる。また、試料溶液導入後からのドレイン電流値が一定になるまでの時間を測定又は推測する代わりに、試料溶液導入直後のドレイン電流値の変化量から金電極へのアルカンチオール化合物の吸着速度を用いて溶液中の濃度を得ることもできる。金電極への吸着速度は、試料溶液導入直後のドレイン電流値を多項式や指数関数を用いて最小二乗法などによりフィッティングして得られた関数y=F(x)を用いればよい。あるいは、試料溶液導入直後の吸着反応の初速度として、F(x)の微分値あるいは一定時間の変化量を用いればよい。
【0025】
図8は、試料溶液中の濃度と金電極への測定結果の吸着速度の関係を示す図である。測定は3回行い、図にはその平均をプロットした。吸着速度は、試料溶液導入直後のドレイン電流曲線の接線を初速度として計算して求めた。図8に示すように、試料溶液中の濃度と吸着速度は良好な直線性を示した。このように、ドレイン電流値が一定になるまでの時間を計測して吸着反応が終了するまでの時間を用いる代わりに、金電極への吸着速度から試料溶液中の濃度を迅速にかつ正確に得ることができる。
【0026】
本発明の装置を用いた酵素免疫測定法について以下に説明する。本実施例では、従来の免疫分析で一般的に用いられているサンドイッチ法を用いて、抗体に標識した酵素などを通して間接的に抗原量を測定した。予めプレート上に固定化した抗体と試料中の抗原との反応後、酵素標識抗体を加えて、抗体-抗原-酵素標識抗体を形成させた。その後、結合した酵素標識抗体と遊離の酵素標識抗体及び遊離の抗原を分離し、結合した酵素標識抗体の酵素と基質のサイクリック反応の生成物であるチオール化合物をFETセンサで測定した。本実施例で使用した試料及び試薬を以下に示す。
固定化抗体:Interleukin 1β 抗体
試料: Human plasma
測定対象:Interleukin 1β
酵素標識抗体:アセチルコリンエステラーゼ(AChE):Interleukin-1β Fab’ Conjugate
基質:2.5 mM アセチルチオコリン(Acetylthiocholine)
反応溶液: 0.1M リン酸バッファー(pH7.4)、0.15M NaCl、1mM EDTA
尚、ここで使用した反応条件や試薬濃度は単なる一例であり、装置構成及び測定対象に応じて適宜変更できる。
【0027】
測定手順は以下の通りである。最初、Interleukin 1βの抗体が固定化されたプレートのウエルに100μLの試料溶液(Human plasma)及び100μLの酵素標識抗体(AChE:Interleukin-1β Fab’ Conjugate)を加えて、プレートをプラスチックフィルムでカバーして4℃で一晩反応させる。その後、プレートのウエルの溶液を捨てて、洗浄バッファーで5〜6回洗浄する。アセチルコリンエステラーゼの基質であるアセチルチオコリン溶液を各ウエルに添加して、約30分間反応させる。反応により生じたチオール化合物が含まれた反応溶液をFETセンサの浸漬した反応セルに導入して、チオール化合物の金電極への吸着速度を測定することにより、反応により生じたチオール化合物の濃度を得る。生成したチオール化合物の濃度は、抗体-抗原-酵素標識抗体の酵素濃度に比例するため、抗原量を定量することができる。
【0028】
FETセンサによる測定の際には、参照電極としてAg/AgCl参照電極を使用した。参照電極には、中心電圧100mV、振幅電圧100mV、周波数1MHzの交流電圧を印加した。FETセンサによる測定結果を図9に示す。図9(a)〜(d)のデータは、抗原であるInterleukin 1βの濃度が各々200、20、2.0、1.0pg/mLの試料の測定結果を表している。図9(e)のデータは、Interleukin 1βの濃度が0pg/mLであるブランクである。本発明では、試料中のInterleukin 1βの濃度を金電極への吸着速度として求めた。その吸着速度は、試料溶液導入直後(図中の矢印)のドレイン電流曲線の接線(図中の点線)を初速度として計算して求めた。
【0029】
その結果、図10に示すように、試料溶液中の濃度と吸着速度は良好な直線性を示し、1.0pg/mLまで測定可能であった。この検出感度は従来法より1桁以上高い値である。このように、従来の免疫分析で一般的に用いられているサンドイッチ法の酵素反応で生成したチオール化合物の金電極への吸着速度を測定することにより、分光光度計を使用せずに、FETセンサにより、試料溶液中の濃度を高感度に測定することができる。
【0030】
本発明の装置を用いた酵素免疫測定法の他の実施例について以下に説明する。本実施例では、図1に示す装置構成で、同一反応セル内で酵素免疫反応生成物のチオール化合物をリアルタイムで計測した。尚、FETセンサによる測定の際には、参照電極としてAg/AgCl参照電極を使用した。参照電極には、中心電圧100mV、振幅電圧100mV、周波数1MHzの交流電圧を印加した。本実施例で使用した試料及び試薬を以下に示す。
固定化抗体:Interleukin 1β 抗体
試料: Human plasma
測定対象:Interleukin 1β
酵素標識抗体:アセチルコリンエステラーゼ(AChE):Interleukin-1β Fab’ Conjugate
基質:2.5 mM アセチルチオコリン(Acetylthiocholine)
反応溶液: 0.1M リン酸バッファー(pH7.4)、0.15M NaCl、1mM EDTA
【0031】
測定手順は以下の通りである。最初、反応セル内にInterleukin 1βの抗体が固定化された抗体固定板を設置する。反応セルに100μLの試料溶液(Human plasma)及び100μLの酵素標識抗体(AChE:Interleukin-1β Fab’ Conjugate)を加え、反応セルをプラスチックフィルムでカバーして4℃で一晩反応させる。その後、反応セル内の溶液を捨てて、洗浄バッファーで5〜6回洗浄する。反応セル内に1.8mLの反応溶液(0.1M リン酸バッファー(pH7.4)、0.15M NaCl、1mM EDTA)を加えて、測定を開始する。測定開始から600秒後に0.2mLのアセチルチオコリン溶液を反応セル内に導入すると、酵素反応によりチオール化合物が生成する。反応により生じたチオール化合物の金電極への吸着により、FETセンサのドレイン電流値が変化する。このドレイン電流値をリアルタイムで計測することにより、チオール化合物の生成速度が正確に測定できる。チオール化合物の生成速度は、抗体-抗原-酵素標識抗体の酵素量に依存するため、チオール化合物の生成速度から結合した標識酵素の量、すなわち抗原量を得ることができる。
【0032】
本実施例では、試料中のInterleukin 1βの濃度を、金電極への吸着速度を試料溶液導入直後のドレイン電流曲線の接線を初速度として計算して求めた。FETセンサによる測定結果を図11に示す。図11に示すように、試料溶液中の濃度と吸着速度は良好な直線性を示した。
【0033】
次に、金電極上に直鎖状ポリマーを物理吸着させることの効果について説明する。直鎖状のポリマーとして、分子量の異なるポリエチレングリコールを使用した。図12は、ポリエチレングリコールを物理吸着させた電極へのチオール化合物の吸着に伴うドレイン電流の経時変化を示す図である。図12(b)〜(f)は、各々分子量、1000、2000、8000、500000、2000000の0.5%ポリエチレングリコール水溶液をコーティングした金電極のデータである。図12(a)は、リファレンスとして未処理の金電極を用いた場合を示している。使用したチオール化合物は、1mM 6-HHT水溶液である。反応溶液には0.1M Na2SO4水溶液1.9mlを用いて、測定開始から600秒後に、0.1mLの6-HHT水溶液を導入した。参照電極にはAg/AgCl参照電極を使用した。尚、直鎖状ポリマーの効果を見るために、参照電極への交流電圧印加は行なわず、DC100mVを印加した。トランジスタの電流・電圧特性の測定は、半導体パラメータアナライザ(Agilent 4155C Semiconductor Parameter Analyzer)を用いて行った。
【0034】
その結果、図12に示すように、未処理の金電極では、6-HHT水溶液導入前はベースラインが大きく揺らいでいるが、ポリエチレングリコールを物理吸着した場合にはベースラインが安定している。特に、分子量が2000以上の場合では、ベースラインの揺らぎは無くなり安定した。
【0035】
また、別の直鎖状のポリマーとしてデキストランを用いた場合の測定結果を図13に示す。図13は、デキストランを物理吸着させた電極へのチオール化合物の吸着に伴うドレイン電流の経時変化を示す図である。図13(b)〜(d)は、各々分子量、40000、90000、200000の0.5%デキストラン溶液をコーティングした金電極のデータである。図13(a)は、リファレンスとして未処理の金電極を示している。使用したチオール化合物は、1mM 6-HHT水溶液である。反応溶液には0.1M Na2SO4水溶液1.9mlを用い、測定開始から600秒後に0.1mLの6-HHT水溶液を導入した。参照電極にはAg/AgCl参照電極を使用した。尚、直鎖状ポリマーの効果を見るために、参照電極への交流電圧印加は行なわず、DC100mVを印加した。トランジスタの電流・電圧特性の測定は、半導体パラメータアナライザ(Agilent 4155C Semiconductor Parameter Analyzer)を用いて行った。その結果、図12の場合と同様に、未処理の金電極では、6-HHT水溶液導入前はベースラインが大きく揺らいでいるが、金電極にデキストランを物理吸着した場合にはベースラインが安定した。
【0036】
また、これらの直鎖状ポリマーを物理吸着させた金電極と高周波重畳法を組み合わせた場合の測定結果を図14に示す。図14(a)、(b)、(c)は、各々未処理の金電極、デキストラン(分子量:2000000)をコーティングした金電極、ポリエチレングリコール(分子量:500000)をコーティングした金電極に対応する。尚、金電極へのポリマーの物理吸着には0.5%水溶液を使用した。使用したチオール化合物は、1mM 6-HHT水溶液である。反応溶液には0.1M Na2SO4水溶液1.9mlを用いて、測定開始から600秒後に、0.1mLの6-HHT水溶液を導入した。参照電極にはAg/AgCl参照電極を使用した。参照電極への交流電圧印加は、中心電圧100mV、振幅電圧100mV、周波数1MHzとした。トランジスタの電流・電圧特性の測定は、半導体パラメータアナライザ(Agilent 4155C Semiconductor Parameter Analyzer)を用いて行った。
【0037】
その結果、図14中に破線で囲んで示すように、未処理の金電極の場合でも、6-HHT水溶液導入前のベースラインの揺らぎが小さく安定していた。デキストランやポリエチレングリコールをコーティングした場合には、ほとんどベースラインの揺らぎが見られなくなり、直鎖状ポリマーのコーティングと高周波重畳法の相乗効果があった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による免疫分析装置の例を示すブロック図。
【図2】本発明の免疫分析装置に使用する絶縁ゲート電界効果トランジスタの構造例を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図。
【図3】本発明による免疫分析装置の例を示す図
【図4】本発明による免疫分析システムの例を示すブロック図
【図5】本発明による免疫分析の反応フローを示す図。
【図6】本発明による高周波重畳法の効果を示す図(印加した電圧の周波数、(a):DC、(b):10Hz、(c):100Hz、(d):1KHz、(e):10KHz、(f):100kHz、(g):1MHz、(h):10MHz)。
【図7】異なる濃度のチオール化合物溶液を測定した結果を示す図(チオール化合物の濃度(a):50μM、(b):25μM、(c):10μM、(d):5μM、(e):2.5μM、(f):0.5μM、(g):0.1μM)。
【図8】チオール化合物の濃度と金電極への吸着速度の関係を示す図。
【図9】本発明の免疫分析装置による測定結果を示す図。
【図10】本発明の装置で測定した試料溶液中の濃度と吸着速度の関係を示す図。
【図11】本発明の装置で測定した試料溶液中の濃度と吸着速度の関係を示す図。
【図12】金電極上に物理吸着した直鎖状ポリマーの効果を示す図。
【図13】金電極上に物理吸着した直鎖状ポリマーの効果を示す図。
【図14】直鎖状ポリマーを物理吸着させた金電極と高周波重畳法を組み合わせた場合の効果を示す図。
【符号の説明】
【0039】
1,41…測定部、2,42…信号処理回路、3,43…データ処理装置、4,21,31,45…絶縁ゲート電界効果トランジスタ、5,37…参照電極、6,40,47…電源、7…試料溶液注入器、8…酵素標識抗体溶液注入器、9…基質溶液注入器、10,38,49…測定セル、11,39,50…反応溶液、12,36,52,61…抗体、13,53…抗体固定板、14,25,35,51…金電極、15,22,32,54…ソース、16,23,33,55…ドレイン、24,34…ゲート絶縁物、26…絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲート、27…導電性配線、44…反応容器、48…チオール化合物溶液注入器、62…抗原、63…酵素標識抗体、64…抗体-抗原-酵素標識抗体、65…結合した酵素標識抗、66…結合した酵素標識抗体の酵素、67…基質、68…チオール化合物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定物質に対する抗体を有する容器と、
前記容器に前記測定物質を含有する試料溶液を供給する試料溶液供給手段と、
前記容器にチオール化合物を生成する酵素と前記測定物質に対する抗体とが結合された酵素標識抗体を供給する酵素標識抗体供給手段と、
前記酵素の基質を供給するための基質供給手段と、
電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタのゲートと配線で接続され、前記容器中の溶液と接触する電極と、
前記容器中の溶液と接触する参照電極と、
前記電極と前記参照電極との間に電圧を印加する電源と、
前記電界効果トランジスタの出力を検出する検出部とを備えることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の測定装置において、前記電源は10kHz以上の交流電圧を印加することを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1記載の測定装置において、前記抗体が固相上に固定化されていることを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項1記載の測定装置において、前記抗体は前記電極に固定されていることを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項1記載の測定装置において、前記電極は貴金属製であることを特徴とする測定装置。
【請求項6】
請求項1記載の測定装置において、前記電極上に直鎖状ポリマーが物理吸着されていることを特徴とする測定装置。
【請求項7】
請求項1記載の測定装置において、前記基質供給手段による前記基質の供給時からの前記電界効果トランジスタの出力の変化量を計算するための処理部を有することを特徴とする測定装置。
【請求項8】
請求項1記載の測定装置において、前記基質供給手段による前記基質の供給時からの前記電界効果トランジスタの出力の変化の初速度を計算するための処理部を有することを特徴とする測定装置。
【請求項9】
チオール化合物を含有する測定溶液が導入される容器と、
電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタのゲートと配線で接続され、前記容器中の測定溶液と接触する電極と、
前記容器中の測定溶液と接触する参照電極と、
前記電極と前記参照電極との間に電圧を印加する電源と、
前記電界効果トランジスタの出力を検出する検出部とを備えることを特徴とする測定装置。
【請求項10】
請求項9記載の測定装置において、前記電源は10kHz以上の交流電圧を印加することを特徴とする測定装置。
【請求項11】
請求項9記載の測定装置において、前記電極は貴金属製であることを特徴とする測定装置。
【請求項12】
請求項9記載の測定装置において、前記電極上に直鎖状ポリマーが物理吸着されていることを特徴とする測定装置。
【請求項13】
請求項9記載の測定装置において、前記チオール化合物を含有する測定溶液の供給時からの前記電界効果トランジスタの出力の変化量を計算するための処理部を有することを特徴とする測定装置。
【請求項14】
請求項9記載の測定装置において、前記チオール化合物を含有する測定溶液の供給時からの前記電界効果トランジスタの出力の変化の初速度を計算するための処理部を有することを特徴とする測定装置。
【請求項15】
電界効果トランジスタと、
直鎖状ポリマーを表面上に物理吸着した貴金属からなる電極とを有し、
前記電界効果トランジスタのゲートと前記電極が導電性配線で接続されていることを特徴とする分析用素子。
【請求項16】
請求項15記載の分析用素子において、前記貴金属は金又は銀であることを特徴とする分析用素子。
【請求項17】
請求項15記載の分析用素子において、前記直鎖状ポリマーは、デキストラン又はポリエチレングリコールであることを特徴とする分析用素子。
【請求項1】
測定物質に対する抗体を有する容器と、
前記容器に前記測定物質を含有する試料溶液を供給する試料溶液供給手段と、
前記容器にチオール化合物を生成する酵素と前記測定物質に対する抗体とが結合された酵素標識抗体を供給する酵素標識抗体供給手段と、
前記酵素の基質を供給するための基質供給手段と、
電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタのゲートと配線で接続され、前記容器中の溶液と接触する電極と、
前記容器中の溶液と接触する参照電極と、
前記電極と前記参照電極との間に電圧を印加する電源と、
前記電界効果トランジスタの出力を検出する検出部とを備えることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の測定装置において、前記電源は10kHz以上の交流電圧を印加することを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1記載の測定装置において、前記抗体が固相上に固定化されていることを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項1記載の測定装置において、前記抗体は前記電極に固定されていることを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項1記載の測定装置において、前記電極は貴金属製であることを特徴とする測定装置。
【請求項6】
請求項1記載の測定装置において、前記電極上に直鎖状ポリマーが物理吸着されていることを特徴とする測定装置。
【請求項7】
請求項1記載の測定装置において、前記基質供給手段による前記基質の供給時からの前記電界効果トランジスタの出力の変化量を計算するための処理部を有することを特徴とする測定装置。
【請求項8】
請求項1記載の測定装置において、前記基質供給手段による前記基質の供給時からの前記電界効果トランジスタの出力の変化の初速度を計算するための処理部を有することを特徴とする測定装置。
【請求項9】
チオール化合物を含有する測定溶液が導入される容器と、
電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタのゲートと配線で接続され、前記容器中の測定溶液と接触する電極と、
前記容器中の測定溶液と接触する参照電極と、
前記電極と前記参照電極との間に電圧を印加する電源と、
前記電界効果トランジスタの出力を検出する検出部とを備えることを特徴とする測定装置。
【請求項10】
請求項9記載の測定装置において、前記電源は10kHz以上の交流電圧を印加することを特徴とする測定装置。
【請求項11】
請求項9記載の測定装置において、前記電極は貴金属製であることを特徴とする測定装置。
【請求項12】
請求項9記載の測定装置において、前記電極上に直鎖状ポリマーが物理吸着されていることを特徴とする測定装置。
【請求項13】
請求項9記載の測定装置において、前記チオール化合物を含有する測定溶液の供給時からの前記電界効果トランジスタの出力の変化量を計算するための処理部を有することを特徴とする測定装置。
【請求項14】
請求項9記載の測定装置において、前記チオール化合物を含有する測定溶液の供給時からの前記電界効果トランジスタの出力の変化の初速度を計算するための処理部を有することを特徴とする測定装置。
【請求項15】
電界効果トランジスタと、
直鎖状ポリマーを表面上に物理吸着した貴金属からなる電極とを有し、
前記電界効果トランジスタのゲートと前記電極が導電性配線で接続されていることを特徴とする分析用素子。
【請求項16】
請求項15記載の分析用素子において、前記貴金属は金又は銀であることを特徴とする分析用素子。
【請求項17】
請求項15記載の分析用素子において、前記直鎖状ポリマーは、デキストラン又はポリエチレングリコールであることを特徴とする分析用素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−263914(P2007−263914A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92950(P2006−92950)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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