説明

測定装置及び測定方法

【課題】蛍光物質の濃度が少ない試料でも、高いS/N比で蛍光強度を測定できる測定装置及び測定方法を提供する。
【解決手段】本発明は、試料中に入射した励起光によって、試料中で発生する蛍光を測定する測定装置200であって、励起光照射する光源201と、この光源201が照射する励起光を平行光とするコリメートレンズ202と、コリメートレンズ202によって平行光とされた励起光を反射し、所定位置に集光させる第1ミラー221と、第1ミラー221によって反射された励起光を反射し、平行光とする第2ミラー222と、試料中で発生する蛍光を検出する光検出器205と、を有し、第1ミラー221と第2ミラー222は試料を挟むようにして配置されることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小試料の蛍光測定装置に関し、より具体的には、マイクロチップなどの微小な蛍光スポットを効率的に測定可能とする測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来利用されてきた測定装置を小型化し、極微量の液体試薬を反応させるLOC(Lab. on a chip/ラボオンアチップ)の技術に関する検討が進んでいる。このLOC技術では、10cmから数cm角程度以下のチップが用いられる。このチップは、プラスチック製やガラス製やシリコン製であって、その表面に溝が形成されている。LOCでは、その溝中に試薬溶液や試料を流して分離、 反応を行って、微量試料の分析を行っている。これにより、例えば血液などの試料(検体)を微量にすることができる。このため、LOC技術においては、試料量、 検出に必要な試薬量、 検出に用いた消耗品等の廃棄物、 廃液の量がいずれも少なくなる上、検出に必要な時間もおおむね短時間で済むという利点がある。
【0003】
上記のようなLOC技術で用いられる測定装置としては、特許文献1に開示された測定装置がある。この測定措置では、微量試料に励起光を照射して、前記微量試料からの蛍光を検出している。
【特許文献1】特開2007−78574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、LOC技術で用いられる測定装置では、試料の量が微量である。この場合、微量試料から発生する蛍光は、一般的に励起光に対して極めて微弱である。このため、このような超微弱光を観測するには、S/N比を向上させるために、長時間の露光を行なう必要があるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためのものであり、そのために請求項1に係る発明は、
光源と、試料を保持する保持部材と第1の凹面ミラーと第2の凹面ミラーとを備え、前記第2の凹面ミラーは、前記光源から前記保持部材までの光路中に配置され、前記第1の凹面ミラーは、前記保持部材を挟んで前記第2の凹面ミラーと対向するように配置され、前記第1の凹面ミラーと前記第2の凹面ミラーは、互いの凹面が向き合うように配置され、前記1の凹面ミラーの外形が、前記2の凹面ミラーの外形よりも大きい
ことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の測定装置において、前記第1の凹面ミラーと前記第2の凹面ミラーは、各々の焦点位置が一致するように配置されている
ことを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の測定装置において、前記光源と前記第1の凹面ミラーの間に光学系を有し、該光学系は前記光源からの光を平行光に変換し、
該平行光の径が前記第2の凹面ミラーよりも大きい
ことを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の測定装置において、前記第1の凹面ミラーと及び前記第2の凹面ミラーはシリンドリカルミラーであって、
これら2つのシリンドリカルミラーのそれぞれの曲率方向が同じ方向である
ことを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の測定装置において、前記第1の凹面ミラー及び前記第2の凹面ミラーが放物面鏡である
ことを特徴とする。
【0010】
また、請求項6に係る発明は、輪帯状の平行光を、試料の一方側から入射させる第1照射工程、
試料を通過した前記平行光を試料に向けて反射すると共に、試料内で集光させる第2照射工程、
試料内から発散しながら射出する光を反射させて平行光とし、この平行光を試料の他方の側から入射させる第3照射工程を備え、前記第2照射工程と前記第3照射工程を繰り返し行ない、
前記試料からの光を検出する測定方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の測定装置及び測定方法によれば、長時間の露光を行なわなくても、高いS/N比で蛍光強度を測定することが可能となる。また、長時間の露光を行なわなくても良いことから、測定時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1はマイクロチップを示す図である。このマイクロチップは、本発明の実施形態に係る測定装置に用いられる。図1(a)はマイクロチップの上面図であり、流路も併せて示してある。また、図1(b)は、図1(a)中A−A’の断面を模式的に示す図である。 図1及び図2において、100はマイクロチップ、111は第1液導入口、112は第2液導入口、113は検出部、115は排出口、121は第1流路、122は第2流路、123は第3流路、131は第1基板、132は第2基板をそれぞれ示している。
【0013】
免疫測定装置は、例えば、臨床検査医療において、血清中に含まれる腫瘍マーカー、各種ホルモン、感染症の病原体の抗体等の測定に用いられる。この種の測定装置においては、被験者の負担を軽減するために、例えば血液のような測定に用いる試料(検体)の量をより少なくすることが求められている。このような少量の試料(検体)の測定を可能にする技術として、大きさ数cmのプラスチック製基板に設けられた微小な流路内で試料(検体)および試薬の導入、攪拌、測定および排出を行うものがLOC(Lab. on a chip/ラボオンアチップ)技術がある。図1に示したマイクロチップ100は、このLOC技術で用いられるものの一例である。
【0014】
図1のマイクロチップ100には微小な流路が形成されている。この微小な流路である第1流路121、第2流路122及び第3流路123がほぼY字型に連結している。第1流路の端部には第1液を導入する第1液導入口111が、第2流路の端部には第2液を導入する第2液導入口112がそれぞれ連結し、第3流路123内の混合部で、第1液と第2液とを混合する。第3流路123中にある検出部113には、空間Rが設けられている(以下、この空間Rを測定対象空間と呼ぶ)。排出口115からは、混合された第1液と第2液とを排出することができる。
【0015】
マイクロチップ100は、以下のような方法により作成することができる。例えば、上記のような流路に対応する溝が形成された第2基板132と、導入口と排出口とが形成された第1基板131とを用意し、第1基板131と第2基板132とを張り合わせて構成することができる。これらの基板は、例えば、ポリスチレン(PS)やアクリルレジン(PMMA)などの樹脂材料をシリコンの型から射出成型して作製することができる。また、マイクロチップ100の別の作製方法としては、例えば半導体の加工技術を応用して、シリコン等の基板上に流路となる溝を異方性エッチング等の微細加工技術を用いて形成した後、この溝を覆う蓋体を基板上に接合することによって作製してもかまわない。また、マイクロチップ100のさらに別の作製方法としては、ガラス基板から作製する手法も知られている。
【0016】
マイクロチップ100の形状の一例を挙げると、外形寸法は、例えば約80mm×60mm×2.5mmである。流路の幅は約0.5mm、また、流路の深さは約1mmである。例えば、第1液導入口111に試料(検体)、第2液導入口112に試薬を導入し、合流点で合流させる。混合液は、第3流路内で混合し、所定の生化学反応が起きる。この反応は測定対象空間Rで測定装置によって観察される。
【0017】
例えば、免疫学的検査では、抗原抗体反応を利用し、混合液に発光したり蛍光を発したりする標識抗体を添加することで、励起光を照射した際に発生する蛍光の強度を光検出器で検出する。例えば、フルオレシンの結合した標識抗体を用いた場合、波長が495nmの励起光を照射すると、波長が515nm付近の蛍光が出る。
【0018】
次に、蛍光測定を例に本実施形態に係る測定装置について説明する。本実施形態に係る測定装置では、マイクロチップ100を用いて、混合液中の蛍光物質が発光する蛍光の強度を測定する。図2は本実施形態に係る測定装置の概略を模式的に示す図である。図2においては、先のマイクロチップ100がセットされて、測定対象空間Rを観察する様子が示されている。
【0019】
図2において、200は測定装置、201は光源、202はコリメートレンズ、204は集光レンズ、205は光検出器、210は蛍光ユニット、211は励起光選択フィルター、212はダイクロイックミラー、213は蛍光選択フィルター、221は第1ミラー、222は第2ミラーをそれぞれ示している。
【0020】
光源201は、マイクロチップ100に照射する光を射出する。コリメートレンズ202は、光源201から射出された光を平行光にする。このコリメートレンズ202は、光源201からマイクロチップ100までの光路中、すなわち光源201の光射出側に配置されている。蛍光ユニット210は、励起光と蛍光を分離する。この蛍光ユニット210は、コリメートレンズ202からマイクロチップ100までの光路中、すなわち、コリメートレンズ202の光射出側に配置されている。第1ミラー221と第2ミラー222は、励起光の集光・反射及び試料からの蛍光を反射する。この第1ミラー221と第2ミラー222は、蛍光ユニット210よりもマイクロチップ100側の光路中に配置されている。マイクロチップ100は不図示のステージに載置され、このステージは、第1ミラー221から第2ミラー222までの光路中に配置されている。光検出器205は、試料からの蛍光を受光して光量を検出する。光検出器205は、蛍光ユニット210を挟んでマイクロチップ100の反対側に配置されている。集光レンズ204は、蛍光を光検出器205に集光させる。集光レンズ204は、光検出器205と蛍光ユニット210の間に配置されている。 光源201は、励起光を含む光を発するものである。この光源201としては、例えばハロゲンランプを使用することができる。この他に、光源201に水銀ランプ、レーザー、レーザーダイオード、LED等を用いることができる。
【0021】
コリメートレンズ202は、光源201から射出された光を平行光に変換する。ここで、平行光の直径は、第2ミラー222の直径よりも大きくなっている。また、平行光を出射することができる光源を用いる場合には、コリメートレンズ202を省略することができる。ただし、コリメートレンズ202を省略した場合であっても、平行光の直径は第2ミラー222の直径よりも大きくなっている。なお、第2ミラー222の位置において、平行光の直径が第2ミラー222の直径よりも大きくなっていれば良い。
【0022】
蛍光ユニット210は、励起光選択フィルター211、ダイクロイックミラー212、蛍光選択フィルター213とから構成されている。
【0023】
励起光選択フィルター211は、特定の波長の光のみを選択的に透過させるものである。
【0024】
ダイクロイックミラー212は、励起光選択フィルター211を透過した励起光を反射させる特性と、蛍光を透過させる特性を有する。また、ダイクロイックミラー212は、光源201側の光路に対して45°の角度で配置されている。よって、ダイクロイックミラー212に入射した励起光は、90°偏向されて、マイクロチップ100に向かう。ここで、マイクロチップ100の所定の空間を測定対象空間Rとすると、励起光は測定対象空間Rに入射する。
【0025】
また、蛍光選択フィルター213としては、バンドパスフィルター、吸収フィルターなどがある。蛍光選択フィルター213には、目的とする蛍光物質の波長帯域に応じて、適切な光学特性を有するものを使用する。
【0026】
測定対象空間Rから発せられた蛍光は、蛍光ユニット210の蛍光選択フィルター213を通過して、集光レンズ204に入射する。集光レンズ204に入射した光は、集光レンズ204によって集光あるいは収束される。集光点あるいは収束点には、光検出器205が配置されている。よって、蛍光は光検出器205によって検出される。光検出器205には、例えばフォトダイオード、フォトマルチプライヤー、冷却CCD等を用いることができる。
【0027】
上述のように、不図示のステージ上には、マイクロチップ100が載置されている。また、第1ミラー221と第2ミラー222が、マイクロチップ100を挟むように配置されている。よって、マイクロチップ100の測定対象空間R近傍には、2つのミラー221、222が測定対象空間Rを挟むようにして設けられていることになる。図2に示すように、測定対象空間Rを挟んで蛍光ユニット210と反対側にあるミラーが、第1ミラー221である。また、蛍光ユニット210と同一側にあるミラーが、第2ミラー222である。第1ミラー221は図2に示すような凹面鏡であり、この凹面鏡の焦点距離をf1とする。同様に、第2ミラー222も凹面鏡であり、この凹面鏡の焦点距離をf2とする。
【0028】
第2ミラー222の直径は、第2ミラー222に到達する平行光の直径よりも小さい。よって、第2ミラー222に到達する平行光のうち、中心部の光は第2ミラー222によって遮られる。一方、周辺部の光は第2ミラー222の外周部を通過して、マイクロチップ100に入射する。この結果、マイクロチップ100には、輪帯状の平行光が入射することになる。ここで測定対象空間Rは、第2ミラー222と対向する場所に位置している。そのため、輪帯状の平行光は、測定対象空間Rに到達しない。
【0029】
マイクロチップ100に入射した輪帯状の平行光は、マイクロチップ100を通過する。ここで、第1ミラー221の直径は、第2ミラー222の直径大きくなっている。よって、輪帯状の平行光は第1ミラー221に入射する。第1ミラー221に入射した輪帯状の平行光は、第1ミラー221により、マイクロチップ100に向けて反射される。このとき、凹面による反射が行なわれるので、反射された輪帯状の光は測定対象空間Rに集光する。これにより、測定対象空間Rが照明光で照射されることになる。
【0030】
なお、第1ミラー221の直径は、平行光の直径と同じか、それよりも大きいのが好ましい。第1ミラー221の直径は、平行光の直径よりも小さくても構わないが、この場合は、輪帯状の平行光の一部しか反射できないので、光の利用効率が悪くなる。
【0031】
本実施形態では、光源201からの光は、蛍光ユニット210の励起光選択フィルター211に入射する。これにより、目的とする励起光だけがマイクロチップ100に入射する。さらに、励起光はマイクロチップ100を通過して第1ミラー221に到達する。到達した光は第1ミラー221で反射され、図2に示すように、測定対象空間Rの流路内で集光する。そして、励起光の一部は流路内の測定対象空間Rに存在する試料によって吸収され、その結果、試料から蛍光が発生する。
【0032】
また、試料によって吸収されなかった励起光は、マイクロチップ100を通過し第2ミラー222に到達する。第2ミラー222に到達した励起光は、第2ミラー222で反射される。このとき、発散光が凹面で反射されるので、反射された励起光は平行光となって、第1ミラー221に到達する。以上のように、励起光は第1ミラー221と第2ミラー222との間で反射を繰り返す。
【0033】
流路内で発生した蛍光は第1ミラー221で反射して平行光になる。ただし、平行光のうち、第2ミラー222に入射した光は、第2ミラー222によって遮られる。そのため、蛍光ユニット210に入射する蛍光は、励起光と同じように、輪帯状の平行光になる。蛍光ユニット210を通過した後に光検出器205に入射する。
【0034】
このように励起光を測定対象空間Rに存在する試料(検体)に照射することによって、試料中の蛍光物質により発生した蛍光は、蛍光ユニット210を通過して光検出器205で検出される。なお、マイクロチップ100から光検出器205方向に向かう励起光は、蛍光ユニット210の蛍光選択フィルタ213によってカットされるため、光検出器205には到達しない。
【0035】
以上のような構成によれば、測定対象空間Rに存在する試料(検体)に重畳的に励起光を集光させることができ、蛍光物質の濃度が少ない試料(検体)の測定でも、蛍光強度を増幅させ、高いS/N比で蛍光強度を測定することが可能となる。その結果測定時間を短縮することができる。 次に、本発明における第1ミラー221、第2ミラー222、マイクロチップ100に係る望ましい測定条件について説明する。
【0036】
図3は本発明の実施形態に係る測定装置の検出部を示す図である。図3に示すように、第2ミラー222と第2基板132との間の距離はL1で、屈折率n1の媒質で満たされているものとする。また、第2基板132の厚さはL2で、屈折率n2の物質で形成されているものとする。また、第2基板132と第1基板131との間の距離はL3で、測定においては屈折率がn3の試料液で満たされているものとする。また、第1基板131の厚さはL4で屈折率n4の物質で形成されているものとする。さらに、第1基板131と第1ミラー221との間の距離はL5で、屈折率n5の媒質で満たされているものとする。通常、第2ミラー222と第2基板132との間の媒質、及び、第1基板131と第1ミラー221との間の媒質は空気であるため、n1=n5=1である。また、図3に示すように距離L1〜L5は、凹面鏡である第1ミラー221の最凹部の頂点の位置を0(原点)とし、上方を正の方向としたx軸座標によって表すものとする。
【0037】
以上のように定めるとき、第2ミラー222と第1ミラー221との間隔の空気換算長Lは、
以下の式(1)で表される。
L=L1/n1+L2/n2+L3/n3+L4/n4+L5/n5 ・・・(1)
第1ミラー222及び第2ミラー221からの反射光が、第1基板131と第2基板132の間で集光するためには、まず、第1ミラー221の焦点距離f1、第2ミラー222の焦点距離f2、及び空気換算長Lとが、以下の式(2)を満たす必要がある。
f1+f2=L ・・・(2)
さらに、反射光の集光点を測定対象空間Rの内部に設定するためには、以下の式(3)、(4)を満たす必要がある。
L4/n4+L5/n5<f1<L3/n3+L4/n4+L5/n5 ・・・(3)
L1/n1+L2/n2<f2<L1/n1+L2/n2+L3/n3 ・・・(4)
式(3)を満足すれば、平行光が第1ミラー221に到達したとき、第1ミラー221による反射光の集光位置を測定対象空間Rの内部に設定することができる。また、式(4)を満足すれば、平行光が第2ミラー222に到達したとき、第1ミラー222による反射光の集光位置を測定対象空間Rの内部に設定することができる。従って、以上のような式(1)乃至式(4)を満足すれば、測定対象空間Rに存在する試料(検体)に重畳的に励起光を集光させることができ、蛍光物質の濃度が少ない試料(検体)の測定でも、蛍光強度を増幅させ、高いS/N比で蛍光測定することが可能となる。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、第1ミラー221及び第2ミラー222をシリンドリカルミラーで構成している。また、これら2つのシリンドリカルミラーは、それぞれの曲率方向(又は母線方向)が同じ方向になるように配置されている。本実施形態によれば、励起光が測定対象空間Rの流路内の試料中にライン状で集光することとなる。すなわち、流路内の試料(検体)をライン状に存在する多点で蛍光測定するのと同等の効果が得られるため、試料の濃度ムラや濃度勾配の影響を少なくすることができる。
【0039】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態では、第1ミラー221及び第2ミラー222を放物面鏡で構成する。放物面鏡では、放物面の軸に平行に入射し、放物面で反射した光線は、無収差で放物面の焦点に集光する。また、逆に放物面の焦点から放射された光線は、放物面鏡で反射すると放物面の軸に平行な光線となる。したがって、本実施形態によれば、第1ミラー221で反射して、第1ミラーの焦点で集光した励起光は、第2ミラー222に入射して、再び反射して平行光となる。これにより励起光が、測定対象空間Rにおける試料(検体)の同一位置を繰り返し透過することにより、励起光の利用効率を高めることができる。このため、微弱な蛍光を増幅させて、効率よく検出することができる。
【0040】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図4は本発明の他の実施形態に係る測定装置の検出部の断面図を模式的に示す図である。本実施形態では、図4に示すように、第2ミラー222が、マイクロチップ100に一体成型される構成となっている。本実施形態によれば、励起光の焦光点から第2ミラー222までの距離が短くなるため、第2ミラー222のサイズを小さくできる。そのため、第2ミラー222によって入射が妨げられる励起光の光量ロスを少なくできる。また、第1ミラー221で反射された蛍光も、第2ミラー222によって出射が妨げられる蛍光の光量ロスを少なくできる。よって、このように第2ミラー222をマイクロチップ100と一体成型する本実施形態によれば、微弱な蛍光を増幅させて、さらに効率よく検出することができる。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態では、第2ミラー222の波長特性は、励起光を反射し、蛍光波長を透過するものとする。具体的には、第2ミラー222をダイクロイックミラーとする。このような実施形態によれば、測定対象空間Rにおける試料(検体)で発生した蛍光は第2ミラー222を透過することができるため、より効率的に蛍光を検出することが可能となる。
【0042】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図5は本発明の他の実施形態に係る測定装置の検出部の断面図を含む測定光学系の概略を示す図である。本実施形態が図2に示す実施形態と異なる点は、蛍光が光検出器205に入射する前段にピンホール220を設けて、共焦点光学系を構成した点である。また、光源としてレーザーを使用してもよい。励起光の焦光点の共役位置にピンホールを配置する。また、励起光がマイクロチップ100に入射すると、マイクロチップ自体が蛍光を放射して、背景ノイズとなることがある。これを自家蛍光と呼ぶが、このような共焦点光学系を構成することによって、マイクロチップ100による自家蛍光がノイズとして光検出器205に入射することを防止することができる。そのため、本実施形態によれば、蛍光のS/N比をより高くすることができる。
【0043】
次に、さらに他の実施形態について説明する。図6は本発明の他の実施形態に係る測定装置の検出部の断面図を含む測定光学系の概略を示す図である。図6に示す実施形態は、励起光の光軸に対して、垂直の方向から測定するように構成されている。
【0044】
図6において、251は光源、252はコリメートレンズ、254は集光レンズ、260は励起光カットフィルター、261は光検出器をそれぞれ示している。また、図2と同じ符号が付された構成は、図2に関連して説明した構成と同様であるので説明を省略する。
【0045】
本実施形態では、光源251から射出された励起光は、コリメートレンズ252で平行光とされ、第1ミラー221と第2ミラー222との間に挟まれたマイクロチップ100の測定対象空間Rへ入射する。第1ミラー221と第2ミラー222による集光の原理は先の実施形態と同様である。
【0046】
本実施形態では、測定対象空間Rに存在する試料(検体)が放射する蛍光を、入射光の光軸とは垂直の方向から測定する。より具体的には、光検出器261の手前には励起光カットフィルター260を配置する。そして、励起光の集光点と光検出器261とが共役位置関係となるように集光レンズ254を配置する。
【0047】
以上のように構成される本実施形態では、先の実施形態と同様の効果に加え、第2ミラー222による光量ロスがなく、光検出器261で効率よく蛍光を検出することができる。
【0048】
次に、以上のように構成される本発明の測定装置を用いて測定する際の測定方法について説明する。図7は本発明の実施形態に係る測定方法の測定フローを示す図である。
【0049】
図7において、ステップS100で測定が開始される。続いて、ステップS101に進み、測定装置200にマイクロチップ100をセットする。そして、第1液導入口111から第1液を導入、第2液導入口112から第2液を導入し、第3流路で混合させ、測定対象空間Rに試料(検体)を導入する。ステップS102では、試料(検体)から放射される蛍光の測定を行う。
【0050】
ステップS103では、光検出器で検出可能な光量の限界を下回っているか否かが判定される。
ステップS103における判定の結果がYESであるときにはステップ105に進み、測定処理を終了とする。
【0051】
ステップS103における判定の結果がNOであるときにはステップ104に進み、測定系における光量の調整を実行し、さらにステップS102で再度蛍光測定を実行する。
【0052】
このように光量の調整を行いつつ、測定を実行することで、さらに高いS/N比で蛍光測定を行なうことができる。
【0053】
ここで、光量の調整には、測定光路中にNDフィルターを設けるか、光源の出力が可変の場合には光源の出力を下げるか、光検出器のゲインを下げるか、光検出器の露出時間を短くするか、のいずれかを用いるか、或いは、任意の組み合わせを用いるかを適宜選択することができる。
【0054】
以上、本発明の測定装置及び測定方法によれば、測定対象空間Rに存在する試料(検体)に重畳的に励起光を集光させることができ、蛍光物質の濃度が少ない試料(検体)でも、蛍光強度を増幅させ、高いS/N比で測定することが可能となる。その結果、測定時間を短縮することができる。
【0055】
なお、本明細書においては、種々の実施形態について説明したが、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成された実施形態も本発明の範疇となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る測定装置に用いるマイクロチップを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る測定装置の検出部の断面図を含む測定光学系の概略を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る測定装置の検出部を示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る測定装置の検出部の断面図を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る測定装置の検出部の断面図を含む測定光学系の概略を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る測定装置の検出部の断面図を含む測定光学系の概略を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る測定方法の測定フローを示す図である。
【符号の説明】
【0057】
100・・・マイクロチップ、111・・・第1液導入口、112・・・第2液導入口、113・・・検出部、115・・・排出口、121・・・第1流路、122・・・第2流路、123・・・第3流路、131・・・第1基板、132・・・第2基板、200・・・測定装置、201・・・光源、202・・・コリメートレンズ、204・・・集光レンズ、205・・・光検出器、210・・・蛍光ユニット、211・・・励起光選択フィルター、212・・・ダイクロイックミラー、213・・・蛍光選択フィルター、220・・・ピンホール、221・・・第1ミラー、222・・・第2ミラー、223・・・第2ミラー、251・・・光源、252・・・コリメートレンズ、254・・・集光レンズ、260・・・励起光カットフィルター、261・・・光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
試料を保持する保持部材と
第1の凹面ミラーと
第2の凹面ミラーとを備え、
前記第2の凹面ミラーは、前記光源から前記保持部材までの光路中に配置され、
前記第1の凹面ミラーは、前記保持部材を挟んで前記第2の凹面ミラーと対向するように配置され、
前記第1の凹面ミラーと前記第2の凹面ミラーは、互いの凹面が向き合うように配置され、
前記1の凹面ミラーの外形が、前記2の凹面ミラーの外形よりも大きいことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記第1の凹面ミラーと前記第2の凹面ミラーは、各々の焦点位置が一致するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記光源と前記第1の凹面ミラーの間に光学系を有し、
該光学系は前記光源からの光を平行光に変換し、
該平行光の径が前記第2の凹面ミラーよりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記第1の凹面ミラーと及び前記第2の凹面ミラーはシリンドリカルミラーであって、
これら2つのシリンドリカルミラーのそれぞれの曲率方向が同じ方向であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記第1の凹面ミラー及び前記第2の凹面ミラーが放物面鏡であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
輪帯状の平行光を、試料の一方側から入射させる第1照射工程、
試料を通過した前記平行光を試料に向けて反射すると共に、試料内で集光させる第2照射工程、
試料内から発散しながら射出する光を反射させて平行光とし、この平行光を試料の他方の側から入射させる第3照射工程を備え、
前記第2照射工程と前記第3照射工程を繰り返し行ない、
前記試料からの光を検出する測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−156659(P2009−156659A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333584(P2007−333584)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】