説明

測定装置

【課題】光を照射された被検体から発生する音響波の測定装置において、モータからのノイズが画質に与える影響を少なくするための技術を提供する。
【解決手段】光源から照射された光を吸収した被検体から発生する音響波を受信し、電気信号に変換する探触子と、前記探触子を移動させて走査を行う駆動手段と、前記駆動手段の動作を制御するための制御信号を出力する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記探触子が音響波を受信する期間においては、前記駆動手段の動作の少なくとも一部を停止することを特徴とする測定装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を照射された被検体から発生する音響波を受信する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルスレーザ光を生体に照射し生体内部から発生する音響波を受信して内部組織の形態や機能を画像化する測定装置(画像診断装置)が、医療分野で多く使われている。このような測定装置においては生体内部から発生する音響波を、電気音響変換素子を集積した探触子で電気信号に変換する。その後電気信号に対して信号処理を行い、生体内部の形態や機能を表現する診断画像を得る。
【0003】
広い範囲の音響波を取得するために探触子を機械的走査する機構を備えた超音波診断装置が特許文献1に記載されている。特許文献1の超音波診断装置では探触子にモータを備え、機械走査しながら超音波を送受波する。
【0004】
一般に、探触子から取得される電気信号には、生体内部から発生する音響波に起因する信号以外に、電気回路やケーブルなどに伝播するノイズが混入する。特に探触子にモータを備える場合には、モータおよび周辺回路からノイズが多く発生する傾向がある。良質な診断画像を得るためには、このノイズが画像に及ぼす影響を低減させることが必要である。例えばステッピングモータであれば、制御信号の入力やスイッチングなどによる駆動コイルの通電時にノイズが発生しやすい。
【0005】
複数のモータおよびセンサを有するシステムでのノイズ低減方法が特許文献2に記載されている。特許文献2では、複数のモータの動作状態とセンサに及ぼすノイズの度合いを予め記憶しておき、各モータのノイズの度合いを示す評価値が予め決められた許容量を超えた場合に一部のモータの動作制御やセンサのノイズ除去処理に反映させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−195088号公報
【特許文献2】特開平10−243681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の測定装置では、生体内部からの音響波に起因する微弱な電気信号を受信している間に機械走査用のモータからのノイズが発生する。このノイズが探触子から電気信号を伝えるケーブルおよび受信回路に伝播し、信号にノイズが混入することにより診断画像の画質が低下する恐れがあった。
【0008】
特許文献2に記載のノイズ低減方法では評価値が予め決められた許容量を超えない範囲で、複数のモータのうち一部を停止していく。しかしながら、各モータのセンサに及ぼすノイズの度合いが大きく、許容量が小さい場合には全てのモータを常に停止していないとノイズが許容量を超えてしまう場合があった。そのため生体からの非常に微弱な信号を受信する必要がある測定装置には適用が困難であった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、光を照射された被検体から発生する音響波の測定装置において、モータからのノイズが画質に与える影響を少なくするための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、光源から照射された光を吸収した被検体から発生する音響波を受信し、電気信号に変換する探触子と、前記探触子を移動させて走査を行う駆動手段と、前記駆動手段の動作を制御するための制御信号を出力する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記探触子が音響波を受信する期間においては、前記駆動手段の動作の少なくとも一部を停止することを特徴とする測定装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光を照射された被検体から発生する音響波の測定装置において、モータからのノイズが画質に与える影響を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の測定装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施例1における処理全体のフローチャート。
【図3】実施例1における制御手段と駆動手段の内部構成図。
【図4】実施例1における測定処理のフローチャート。
【図5】実施例1におけるタイミングチャート。
【図6】実施例1における測定対象近傍の構造を示す図。
【図7】実施例2における測定処理のフローチャート。
【図8】実施例2におけるタイミングチャート。
【図9】実施例3におけるタイミングチャート。
【図10】実施例1における探触子の時刻と位置の関係を示す図。
【図11】実施例2における探触子の時刻と位置の関係を示す図。
【図12】実施例1における探触子からの電気信号の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0014】
<実施例1>
図1は本発明に係る測定装置(画像診断装置)101の第一の実施例を示すブロック図である。図1において測定対象(被検体)102は生体信号を測定する対象であり、例えば乳房等の被験者の体の一部である。光源103は測定対象102から音響波を発生させるためのパルスレーザ光源、探触子104は測定対象から発生した音響波を電気信号に変換するトランスデューサ、駆動手段105は探触子104を機械的に2次元的に走査するためのモータである。制御手段106は光源103および駆動手段105への制御信号を送信し、生体信号の受信シーケンスを実行させるコントローラである。制御手段は、例えばマイクロプロセッサやFPGAなどの回路とソフトウェアで構成される。信号取得手段107は探触子104からの電気信号を受信し、画像化に用いるデータに変換した後に外部へ出力するための電気回路であり、増幅回路、A/D変換回路などから構成される。
【0015】
図6に測定対象102の近傍の構造を拡大した様子を示す。板状部材601および602は測定対象102を固定している。本実施例では板状部材601および602は平行平板になっており、測定対象102を挟んで固定する。投光部603は測定対象102にパルスレーザ光606を照射する。光路604は光源103からのパルスレーザ光を投光部603へ導く。ケーブル605は探触子104と信号取得手段107を接続する。光吸収部位607は測定対象102内部にあって光吸収の大きな部位である。光吸収部位607にパルスレーザ光606が照射されるとエネルギーが吸収され、音響波608が発生する。探触子104は、この音響波608を電気信号に変換し、ケーブル605を経て信号取
得手段107へ伝達する。この電気信号を光音響信号と呼ぶ。また、探触子104および投光部603は、不図示の駆動手段105の制御により図のX−Y方向を走査して、測定対象102の測定範囲を2次元的に網羅するように動く。
【0016】
図2に、制御手段106が実行する本実施例の処理全体のフローチャートを示す。
ステップS201において、制御手段は、測定準備ができているか否かを確認する。測定対象102が所定の測定位置に固定されている場合には、測定準備ができていると判断し、ステップS203へ進む、測定準備ができていない場合には、ステップS202へ進み、一定時間待機した後にステップS201に戻る。
ステップS203において、制御手段は、使用者が指定した測定条件の読み込みを行う。測定条件としては、光源発光回数や探触子の移動範囲などがある。
ステップS204において、測定対象102の測定処理が行われる。具体的には、制御手段は探触子104および投光部603を移動させ、光源103を発光させて音響波を探触子に受信させる。そして信号取得手段107に光音響信号の取得を行わせる。測定処理の詳細は後述する。
【0017】
ステップS205において、信号取得手段107は、A/D変換等の信号処理を行った後の測定データを外部に出力する。外部に出力したデータは、PC等の情報処理装置での画像化(画像データの生成)に用いることができる。
ステップS206において、制御手段は、測定対象102の全測定範囲のデータを出力完了したか否かを判定する。完了している場合にはステップS207に進む。
ステップS207において、制御手段は、探触子104および投光部603を初期位置に戻し、外部にメッセージを出力して処理を終了する。完了していない場合にはステップS204へ進み、次の測定処理を行う。
【0018】
図3に制御手段106および駆動手段105の詳細な構造を示す。マイクロプロセッサ(CPU)301は制御シーケンスに従ってFPGA302へコマンドを送信する。FPGA302はマイクロプロセッサ301からの制御コマンドに従って、駆動手段105および光源103を制御するための制御信号を出力する。駆動手段106の動作を制御するための制御信号として右回転指示信号306、左回転指示信号307、励磁信号308がある。発光指示信号309は、不図示の光源103に出力される制御信号である。これらの制御信号はデジタル信号であり、本実施例ではHレベルが5V,Lレベルが0Vとする。
【0019】
モータドライバ回路303は制御信号306、307、308に基づき、駆動手段105内部の駆動コイル304に電流を流す。駆動コイル304に電流が流れるとロータ軸305が回転する。このロータ軸305はギアやベルトなどの機械的伝達手段により探触子104および投光部603に接続されており、ロータ軸305が回転すると探触子104および投光部603が測定対象102に対して相対移動する。
【0020】
右回転指示信号306にパルス信号が一つ入力されると、1ステップだけロータ軸305は右回転する。一方、左回転指示信号307にパルス信号が一つ入力されると、1ステップだけロータ軸305は左回転する。励磁信号308の電圧レベルがHレベルになると、コイル304に電流が流れロータ軸305に外力が加わってもロータ軸は回転しなくなる。一方励磁信号308の電圧レベルがLになると、コイル304の電流が停止し、ロータ軸305に外力が加わるとロータ軸が回転するようになる。発光指示信号309にパルス信号が一つ入力されると、光源103よりパルスレーザ光が1回発光する。
【0021】
なお、図3では簡単のため1個のモータの制御信号のみ記載したが、探触子104およ
び投光部603をX−Y方向の2次元走査するために4個のモータが存在する。
【0022】
図4および図5を用いてステップS204の測定処理のタイミングの詳細を説明する。図4は測定処理の詳細を記述したフローチャートである。また、図5は制御信号および光音響信号のタイミングを示したタイミングチャートである。タイミングチャートには、右回転指示信号306、左回転指示信号307、励磁信号308、発光指示信号309、および、信号取得手段が受信する光音響信号が、時刻が進むにつれてどのように変化するかが示されている。
初期状態では図5の左端部分のように、いずれの制御信号も電圧レベルはLレベルとする。また、光音響信号は、測定対象から発生した音響波による成分502以外に、ほぼ同程度の振幅のノイズ成分501が重ねあわされた波形になっているものとする。
【0023】
ステップS401において、制御手段は、駆動手段105への制御信号を出力し、モータを回転させ、探触子104および投光部603を測定点まで移動させる。本実施例ではマイクロプロセッサ301はFPGA302にコマンドを送信し、励磁信号308の電圧レベルをHレベルにするとともに、右回転指示信号306にパルス信号を必要な回数だけ出力させる。測定点まで移動したらステップS402に進む。
ステップS402において、制御手段は、光源103が発光できるタイミングか否かを判定する。光源103は周波数10Hzでパルスレーザ光を出力するものとする。そこで、ステップS402では前回発光した時刻から100msの時間が経過していれば発光できると判定しステップS404へ進む。一方、前回発光した時刻から100msの時間が経過していない場合にはまだ発光できないと判定しステップS403へ進む。ステップS403で一定期間待ち、ステップS402へ戻る。
【0024】
ステップS404は時刻503に対応する。ここで制御手段は、励磁信号308の電圧レベルをLレベルにし、駆動コイル304への通電を停止する。これにより、探触子104および投光部603の保持力は失われる代わりにモータドライバ回路303および駆動手段105から発生するノイズ成分501が低減する。
ステップS405は時刻504に対応する。ここで制御手段は、発光指示信号309にパルス信号を出力し、光源103よりパルスレーザ光を発光させる。パルスレーザ光は測定対象102へ照射され、光吸収部位607より音響波608が発生する。
ステップS406において、探触子104は、音響波608を受信して光音響信号502へと変換する。信号取得手段107は、時刻505から時刻506の間に入力された光音響信号502をA/D変換し、信号処理を行う。この信号処理では探触子104の測定対象102の同じ位置に対応する電気音響素子からの光音響信号を加算平均する。複数回の光音響信号を加算平均することにより、S/N比が向上する。
【0025】
ステップS407は時刻507に対応する。ここで制御手段は、励磁信号308の電圧レベルをHレベルにし、駆動コイルの通電を再開させる。これにより探触子104の保持力が回復するが、モータドライバ303および駆動手段105から発生するノイズ成分501が増加する。
ステップS408において、制御手段は、ステップS203で読み込まれた繰り返し回数分の測定が完了しているか否かを判定する。完了していない場合にはステップS402にもどり、再度パルスレーザ光の照射と信号受信を行う。完了している場合には測定処理を終了する。なお、図5のタイムチャートでは繰り返し回数が3回の場合を示しており、時刻505、508、509に光音響信号の受信を開始する。
【0026】
光を照射してから光音響信号502の受信開始までの時間は時刻504と時刻505の間であり、板状部材601中の音速をV601、板状部材601の厚さをD601とすると以下の式1で表される。
時刻505−時刻504=D601/V601 …(式1)
【0027】
光音響信号502を受信する時間は、時刻506と時刻505の間であり、測定対象102中の音速をV102、測定対象102の厚さをD102とすると以下の式2で表される。
時刻506−時刻505=D102/V102 …(式2)
つまり、光音響信号の受信期間(探触子が音響波を受信する期間と同じ)は、光源の発光時刻(被検体への光照射時刻と同じ)と、測定対象の厚さと、測定対象の音速と、が分かれば求めることができる。よって、制御手段は、光照射からの経過時間に基づいて駆動手段の動作の少なくとも一部を停止したり再開したりすることができる。
【0028】
時刻503にて励磁信号をLレベルにすると、探触子104および投光部603の保持力が失われる。保持力が失われてから、探触子104および投光部603が許容量を超えて動いてしまうまでの時間をToffとする。そして、以下の式3〜式5の3つの関係を満たすように時刻507と時刻503の間の時間を計算すれば、励磁信号をLレベルにしても探触子および投光部の移動を許容範囲内に収めることができる。このように励磁信号をLレベルにして測定を行えば、光音響信号502を受信している間のみノイズ成分501を低減させ、診断画像の画質を向上させることができる。
時刻503<時刻505 …(式3)
時刻506<時刻507 …(式4)
時刻507−時刻503<Toff …(式5)
【0029】
また、D102が大きく光音響信号の受信期間が長く、受信期間全体にわたって励磁信号をLレベルにできない場合もあり得る。そのような場合には、特に診断画像の画質を高めたい光吸収部位607の深さを設定し、その深さからの音響波を受信している期間のみ励磁信号をLレベルにすればよい。
例えば、図6において板状部材601の近傍はパルスレーザ光606が届きにくいため、音響波608の強度が弱まり、光音響信号502の強度が弱くなる。この部分の光音響信号502がノイズ成分501に埋もれやすいので、板状部材601の近傍即ち時刻505付近は優先的に励磁信号をLレベルにすることが考えられる。
【0030】
図10に本実施例における探触子104および投光部603の位置と時刻の関係を示す。ここでは位置1001、1002、1003の3点で光音響信号を受信する。1回目の測定処理において、探触子104および投光部603を位置1001まで移動させ、時刻505、508,509の3回光音響信号受信を行う。すなわち、同一の測定点で3回の測定が行われる。その測定処理の間は探触子104および投光部603は停止している。2回目の測定処理において探触子104および投光部603を位置1002まで移動させ、1回目と同様に3回光音響信号受信を行う。3回目の測定処理において探触子104および投光部603を位置1003まで移動させ、同様に光音響信号受信を行う。ただし、本実施例では、同一測定点での音響波の受信回数は、求めるS/N比により適宜選択するとよい。
【0031】
図12(a)にモータ通電時の探触子104から得られた電気信号波形の一例を示す。縦軸は信号取得手段107のA/D変換器からの出力値であり、単位はdigitである。横
軸は時刻であり単位はマイクロ秒である。時刻40マイクロ秒付近の信号が光音響信号であり、絶対値は100〜200程度である。これに対し、モータ通電時には時刻20マイクロ秒付近よりモータに起因するノイズ信号が発生しており、絶対値が50程度である。そのため光音響信号のS/N比は2から4程度になっている。
【0032】
図12(b)にモータ通電を停止した場合の探触子104から得られた電気信号波形の一例を示す。顕著なノイズ信号は存在せず、絶対値はせいぜい1から2程度である。その
ため光音響信号のS/N比は50から100程度まで高められている。
【0033】
なお、本実施例では一つのモータ制御信号生成の方法について説明したが、本発明はモータの個数に限定されるものではない。即ち、モータの個数が複数の場合にも同様のタイミングで制御信号を生成し、診断画像の画質を向上することができる。
【0034】
また、本実施例ではモータの例としてステッピングモータを用いて説明したが、モータの種類はこれに限定されるものではない。例えばDCモータなど他のモータを用いて駆動する装置であっても、同様のタイミングで駆動コイルの通電を制御することのより診断画像の画質を向上することができる。
【0035】
また、本実施例ではモータドライバの制御信号として右回転指示信号、左回転指示信号、励磁信号の3本の場合を例にして説明したが、駆動コイルの通電を停止する手段があれば、制御信号の種類と本数はこれらに限定されるものではない。
【0036】
また、本実施例では、装置内部で信号処理までを行った後にデータを外部に出力し画像化する構成を用いて説明したが、さらに画像化手段と画像を表示するディスプレイを内部に備え、光音響信号データを画像化して表示する構成にしてもよい。
【0037】
以上説明してきたように、本実施例によれば、光音響信号を受信している間に駆動コイルの通電を停止することによりノイズを低減することができる。また、右回転指示信号等のパルス信号出力を停止することによってもノイズを低減することができる。これにより、診断データのS/N比を向上させることが可能になる。
【0038】
<実施例2>
続いて実施例2について説明する。実施例2の実施例1との違いは、複数回のパルスレーザ発光の合間に探触子104および投光部603を移動させていることである。図1のブロック図、図2のフローチャート、図3の制御手段106と駆動手段105の構成、および、図6の測定対象近傍の構造は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0039】
図7および図8を用いて測定処理の詳細を説明する。図7は測定処理の詳細を記述したフローチャートである。
ステップS701からステップS703までの処理は、それぞれ図4のステップS401からステップS403までの処理と同様であるため説明を省略する。
ステップS704において、マイクロプロセッサ301は、FPGA302にコマンドを送信し、右回転指示信号306のパルス信号出力を中断させる。
【0040】
ステップS705からステップS708までの処理は、それぞれ図4のステップS404からステップS407までの処理と同様である。すなわち、ステップS705は時刻503に対応してモータ駆動が停止し、ステップS706は時刻504に対応して光源から発光がなされる。ステップS707で音響波を受信し、ステップS708は時刻507に対応してモータ駆動が再開する。このステップS705〜S708により、ノイズ成分のない信号が取得される。
ステップS709において、マイクロプロセッサ301は、FPGA302にコマンドを送信し、右回転指示信号306のパルス信号出力を再開させ、次の測定位置まで探触子104を移動させる。
ステップS710の処理は、図4のステップS408の処理と同様であり、繰り返し回数の測定が完了していれば処理を終了する。
【0041】
図8は制御信号および光音響信号のタイミングを示したタイミングチャートである。実
施例1と異なる点は、ステップS708にて時刻507にコイルの通電を再開してから、次回の繰り返し時のステップS704にてコイルの通電を停止するまでに、右回転指示信号306にパルス信号を出力する点である。この右回転指示信号により、図8の時刻507から時刻801の間に探触子104および投光部603を移動させている。この場合、信号処理時には移動距離を考慮して加算平均を行う。
【0042】
図11に本実施例における探触子104および投光部603の位置と時刻の関係を示す。位置1001、1002、1003の3点で光音響信号を受信する。1回目の測定処理において、探触子104および投光部603を位置1001まで移動させ、時刻505、508,509の3回光音響信号受信を行う。その測定処理の間に探触子104および投光部603は1002、1003まで連続的に移動している。
【0043】
本実施例においても、実施例1と同様に光音響信号受信中は励磁信号をLレベルにしており、ノイズ成分501の診断画像への影響を低減することができる。また、右回転指示信号等のパルス信号出力を停止することによってもノイズを低減することができる。これにより信号のS/N比が向上する。さらに本実施例では、複数のレーザ発光の合間に探触子を駆動させることにより、実施例1よりも短時間に測定対象102全体の測定を行うことができる。
【0044】
<実施例3>
続いて実施例3を説明する。本実施例の実施例2との違いは、光音響信号受信中に駆動コイルの通電を維持し探触子104および投光部603の保持力を保つことである。図1のブロック図、図2のフローチャート、図3の制御手段106および駆動手段105の構成、および、図6の測定対象近傍の構造は実施例2と同じであるため説明を省略する。また、探触子104および投光部603の位置と時刻の関係も、実施例2と同じである。
【0045】
本実施例の測定処理の流れは、基本的には図7に示した実施例2のフローチャートと同様である。ただし、本実施例の測定処理が実施例2と異なる点は、ステップS705およびステップS708で何も行わず、コイルの通電を維持する点である。
【0046】
図9は制御信号および光音響信号のタイミングを示したタイミングチャートである。このタイミングチャートが、図8に示した実施例2のタイミングチャートと異なる点は、光音響信号を受信する間も、励磁信号308はHレベルのままという点である。すなわち、図9の時刻503から時刻507の間にも励磁信号308はHレベルのままであり、駆動コイルの通電は行われている。なお、光音響信号を受信する間は右回転指示信号306および左回転指示信号307へのパルス出力が停止する点は、実施例2と同じである。
【0047】
本実施例では光音響信号受信中に駆動コイルには定常的な電流が流れるが、右回転指示信号306および左回転指示信号307へのパルス出力は停止しているため電流のスイッチングは行われない。そのため、定常電流によるノイズの影響は低減できないが、スイッチングによるノイズの診断画像への影響を低減することは可能である。光音響信号の受信期間が長く、駆動コイルの通電を停止する際の保持力低下による影響が無視できない場合にも、スイッチングに起因するノイズの診断画像への影響を低減することができる。これにより、診断データのS/N比を向上させることができる。
【0048】
なお、本実施例ではモータドライバの制御信号として右回転指示信号、左回転指示信号、励磁信号の3本の場合を例にして説明したが、スイッチングを停止する手段があれば、本発明の制御信号の種類と本数はこれに限定されるものではない。
【0049】
また、本実施例では駆動コイルのスイッチングを停止する例を用いて説明したが、スイ
ッチング源の場所は駆動コイルに限定されるものではない。例えば、モータドライバ内にPWM制御回路へクロック生成回路などのスイッチング源がある場合は、光音響信号受信中にそれらの回路のスイッチングを停止してもよい。
【符号の説明】
【0050】
104:探触子,105:駆動手段,106:制御手段,107:信号取得手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射された光を吸収した被検体から発生する音響波を受信し、電気信号に変換する探触子と、
前記探触子を移動させて走査を行う駆動手段と、
前記駆動手段の動作を制御するための制御信号を出力する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記探触子が音響波を受信する期間においては、前記駆動手段の動作の少なくとも一部を停止する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記駆動手段の動作には、前記駆動手段が前記探触子の位置を保持する動作が含まれており、
前記制御手段は、前記探触子が音響波を受信する期間においては、前記駆動手段による前記探触子の保持を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記駆動手段の動作には、前記駆動手段が前記探触子を移動させる動作が含まれており、
前記制御手段は、前記探触子が音響波を受信する期間においては、前記駆動手段が前記探触子を移動させるための制御信号を出力しない
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記制御手段は、光の照射からの経過時間に基づいて前記駆動手段の動作の少なくとも一部を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記探触子は、所定の時間をおいて音響波の受信を繰り返すものであり、
前記駆動手段は、前記探触子の走査において、同一の測定点で複数回の音響波の受信を行うように前記探触子を移動させる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記探触子は、所定の時間をおいて音響波の受信を繰り返すものであり、
前記駆動手段は、前記探触子の走査において、前記探触子を連続的に移動させる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−200381(P2011−200381A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69740(P2010−69740)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】