説明

測色位置決定方法および表示装置

【課題】
スポット型測色計を用いてカラーキャリブレーションを行うときの測色位置を、画面全体の色感を好適に調整することができる位置に決定する測色位置決定方法および表示装置を提供する。
【解決手段】
ステップB1で、表示装置1の画面11a全体に、所定の単一色画像データに基づく画像を表示させ、ステップB2で、2次元測色計5に、前記画像を表示中の画面11a全体を構成する複数の領域について、輝度値および色度値を測定させ、ステップB3で、位置決定用PC4に、前記複数の領域のうち、輝度値および色度値が平均的な値となる領域を選択させ、選択された領域の中央位置を示す測色座標値を算出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーキャリブレーション用の測色位置決定方法および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、表示装置は、所望の明るさや色合い(以下では、「色感」と称する)で画像を表示するための調整であるカラーキャリブレーションが行われる。カラーキャリブレーションは、ガンマ値、ホワイトバランスなどの、表示装置に設定される画質調整用パラメータを適宜変更することで行われ、ユーザが目視によって表示装置の画面に表示される画像を確認しながら手動で画質調整用パラメータを変更する場合と、表示装置に接続された情報処理装置が自動的に画質調整用パラメータを変更する場合とがある。
【0003】
情報処理装置が自動的に画質調整用パラメータの変更を行う場合、情報処理装置は測色計と接続される。測色計は、光を受けて色感を測定する装置であり、カラーキャリブレーションに用いられる場合は、所定の画像データに基づく画像を表示中の表示装置の画面からの光を受けて色感を測定し、測定結果を情報処理装置に入力する。情報処理装置は、測色計による測定結果と、上記所定の画像データとに基づいて、所定のカラーキャリブレーション用のプログラムに従って、画質調整用パラメータを変更する。
【0004】
測色計としては、画面全体の光を受けて画面の各箇所の色感をそれぞれ測定する2次元測色計が知られている。特許文献1には、2次元測色計を用いて表示装置のカラーキャリブレーションを行う方法が記載されている。このような2次元測色計を用いるカラーキャリブレーションでは、色感の測定を正確に行うために、画面以外からの光が入射しない暗室で2次元測色計を用いる必要があり、色感の正確な測定が難しいという問題がある。
【0005】
そこで、2次元測色計以外の測色計であるスポット型測色計を用いてカラーキャリブレーションを行う方法が特許文献2において提案されている。スポット型測色計は、画面の一部分からの光を受けて色感を測定する測色計であり、特許文献2に記載の方法では、液晶表示装置において、ユーザの視線が集中する画面の中央位置で、スポット型測色計による測定を行い、液晶表示装置のカラーキャリブレーションを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−249596号公報
【特許文献2】特開2008−203099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
表示装置は、単一色の画像データに基づいて画像を表示する場合であっても、構造上、画面全体において同一の色感で画像を表示することは不可能であり、不可避的に、画面上に輝度むらや色度むらが生じる。したがって、スポット型測色計を用いてカラーキャリブレーションを行う場合、スポット型測色計によって測定する画面上の位置(以下では、「測色位置」と称する)においては所望の色感で画像を表示できても、その位置以外では所望の色感で画像を表示することができない。
【0008】
よって、特許文献2に記載の方法の場合、表示装置の画面の中央位置では所望の色感で画像が表示されるけれども、中央位置の色感と画面全体の色感との間にずれが生じ、画面全体の色感は所望の色感とはならなくなってしまう。さらに、中央位置の色感と画面全体の色感との間にずれが生じると、複数の表示装置を組み合わせてマルチディスプレイシステムを構成するときに、各表示装置間で画面全体の色感を統一することができなくなってしまう。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、スポット型測色計を用いてカラーキャリブレーションを行うときの測色位置を、画面全体の色感を好適に調整することができる位置に決定する測色位置決定方法および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、測定装置および情報処理装置によって、表示装置の画面上におけるカラーキャリブレーション用の測色位置を決定する測色位置決定方法であって、
表示装置によって、該表示装置の画面全体に、所定の単一色画像データに基づく画像を表示する第1ステップと、
測定装置によって、前記画像を表示中の前記画面全体を構成する複数の領域について、該領域ごとに、前記測定装置の所定の表色モードにおける複数種類の表色値を測定する第2ステップと、
情報処理装置によって、前記複数の領域のうち、前記第2ステップにおいて測定された複数種類の表色値が平均的な値となる領域を選択し、選択された領域の中央位置を算出し、算出された中央位置をカラーキャリブレーション用の測色位置に決定する第3ステップとを含むことを特徴とする測色位置決定方法である。
【0011】
また本発明は、前記複数種類の表色値は、輝度値と2つの色度値とであり、
前記領域について、輝度値をLv、一方の色度値をx、他方の色度値をyとし、前記複数の領域における、輝度値Lvの算術平均値をLv、色度値xの算術平均値をx、色度値yの算術平均値をyとするとき、
前記第3ステップでは、前記情報処理装置によって、前記領域ごとに、下記式(1)によって表される輝度差分値Pおよび下記式(2)によって表される色度差分値Qを算出し、
前記領域ごとに、算出された輝度差分値Pおよび色度差分値Qから、下記式(3)によって表される平均的差分値Rを算出し、
前記複数種類の表色値が平均的な値となる領域として、前記複数の領域のうち、算出された平均的差分値Rが最小となる領域を選択することを特徴とする。
P=(Lv−Lv …(1)
Q=(x−x+(y−y …(2)
R=α×P + β×Q
ただし、α≧0、β≧0、α+β=1
…(3)
【0012】
また本発明は、画面を有する表示部と制御部と記憶部とを備える表示装置であって、
前記記憶部には、前記測色位置決定方法によって決定された、カラーキャリブレーション用の測色位置が記憶されており、
前記制御部は、前記表示部の前記画面上において、前記記憶部に記憶されている、カラーキャリブレーション用の測色位置に、所定の目印画像を表示させることを特徴とする表示装置である。
【0013】
また本発明は、前記記憶部は、前記表示部の前記画面全体を構成する複数の領域について、前記測色位置決定方法によって算出された輝度差分値Pおよび色度差分値Qをそれぞれ記憶していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第3ステップにおいて、複数種類の表色値が平均的な値となる領域を選択し、選択された領域の中央位置を算出し、算出された中央位置をカラーキャリブレーション用の測色位置に決定するので、スポット型測色計を用いてカラーキャリブレーションを行うときの測色位置を、画面全体の色感を好適に調整することができる位置に決定することができる。
【0015】
また本発明によれば、測定装置の表色モードが、輝度値と2つの色度値とを出力する表色モードである場合に、スポット型測色計を用いてカラーキャリブレーションを行うときの測色位置を、画面全体の色感を好適に調整することができる位置に決定することができる。
【0016】
また本発明によれば、スポット型測色計を用いてカラーキャリブレーションを行うときに画面全体の色感を好適に調整することができる位置を、目印画像によって表すことができる。
【0017】
また本発明によれば、カラーキャリブレーションの目的に応じて、記憶部に記憶された輝度差分値Pおよび色度差分値Qを用いて、測色座標値を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】表示装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】カラーキャリブレーションの手順を示すフローチャートである。
【図3】表示部11に表示された目印画像Gを示す図である。
【図4】カラーキャリブレーションが行われるときのシステム構成を示す図である。
【図5】測色位置決定方法の手順を示すフローチャートである。
【図6】測色位置決定方法が実行されるときのシステム構成を示す図である。
【図7】画素ブロックと受光素子との対応関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る表示装置の実施形態の1つである表示装置1について説明する。図1は、表示装置1の構成を示すブロック図である。表示装置1は、表示部11と、制御演算部12と、記憶部13と、入力部14と、通信部15とを備える。
【0020】
表示部11は、画像を表示する部材であり、表示部11において画像が表示される部分を画面11aと称する。制御演算部12は、CPU(Central Processing Unit)などの制御演算回路であり、表示部11を制御して画面11a上に画像を表示させる。記憶部13は、DDR SDRAM(Double Data Rate Synchronous Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリ、および、フラッシュROM(Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性メモリから構成される。記憶部13は、後述する測色座標値、目印画像データ、および目印画像表示プログラムを不揮発的に記憶する。
【0021】
入力部14は、ユーザからの指示を受けて所定の入力情報を制御演算部12に入力する部材であり、表示装置1に設けられるボタンや、表示装置1のリモートコントローラなどをユーザが操作することで、操作の内容に対応する入力情報が、入力部14から制御演算部12に入力される。通信部15は、他の機器との間でデータ通信を行うための通信インターフェースである。
【0022】
このような表示装置1は、測色座標値、目印画像データ、および目印画像表示プログラムが記憶部13に記憶されていること以外は、液晶ディスプレイ、EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの従来公知の表示装置と同様の構成である。
【0023】
測色座標値は、画面11aの画素の位置を表す2次元座標系における座標値であって、画面11aの特定の画素の位置を示す。測色座標値は、後に詳述する本発明に係る測色位置決定方法の実施形態(以下では、「測色位置決定方法」と称する)によって算出され、記憶部13に記憶される。
【0024】
目印画像データは、目印画像を表示するための画像データである。目印画像は、その中央部を目視によって認識し易いような形状の画像であり、たとえば、赤色の十字形状とその十字形状に外接する赤色の円形状とからなる画像である。
【0025】
目印画像表示プログラムは、画面11aに目印画像を表示させるためのプログラムであり、制御演算部12は、目印画像表示プログラムに従って、画面11a上において測色座標値が示す箇所に目印画像の中央部が位置するように、目印画像を表示させる。たとえば、ユーザが、表示装置1のリモートコントローラなどに対して、目印画像を表示するための操作を行うと、入力部14は、制御演算部12に目印画像を表示するための入力情報を入力し、この入力情報が入力された制御演算部12は、画面11a上に目印画像をOSD(On-screen Display)表示する。
【0026】
以上に説明した測色座標値、目印画像データ、および目印画像表示プログラムは、表示装置1のカラーキャリブレーションを好適に行うためのものである。カラーキャリブレーションは、たとえば、表示装置1の購入後に行われる。
【0027】
図2は、カラーキャリブレーションの手順を示すフローチャートである。図3は、表示部11に表示された目印画像Gを示す図であり、図4は、カラーキャリブレーションが行われるときのシステム構成を示す図である。図4に示すように、カラーキャリブレーションは、表示装置1とデータ通信可能に接続されるカラーキャリブレーション用情報処理装置2(以下では、「CC用PC2」と称する)と、CC用PC2とデータ通信可能に接続されるスポット型測色計3とによって行われる。
【0028】
カラーキャリブレーションのステップA1では、カラーキャリブレーションを行おうとする者(以下では、「ユーザ」と称する)がCC用PC2を用いたデータ通信によって表示装置1を制御することで、表示装置1が画面11a上に目印画像Gを表示する。上述したように、目印画像Gが表示される位置は、記憶部13に記憶されている測色座標値が示す位置である。図3では、測色座標値が示す位置は画面11aの中央位置よりも右側であるとして、十字形状と円形状とからなる目印画像Gを表している。
【0029】
ステップA2では、ユーザによって、画面11a上において目印画像Gが表示されている位置に、スポット型測色計3が配置される。より詳細には、目印画像Gの中央部にスポット型測色計3の受光部の中央部が対向するように、スポット型測色計3が配置される。したがって、スポット型測色計3が色感の測定を行うとき、測色位置は測色座標値が示す位置となり、スポット型測色計3の受光部は、その位置を含む所定の領域内の画素からの光を受けることになる。
【0030】
スポット型測色計3を配置した後、ユーザは、表示装置1のリモートコントローラなどを用いて、目印画像Gの表示を終了させる。スポット型測色計3としては、従来公知のものを使用することができ、たとえば、i1Display2(製品名、エックスライト株式会社製)や、超低輝度分光放射計SR-UL2(製品名、株式会社トプコン製)などが挙げられる。
【0031】
ステップA3では、CC用PC2が、表示装置1に設定される画質調整用パラメータを自動的に変更する。CC用PC2は、表示装置1およびスポット型測色計3に、データ通信可能に有線または無線ネットワーク接続されており、そのネットワーク接続の規格としては、RS−232C、USB(Universal Serial Bus)、イーサネット(登録商標)、HDMI(High-definition Multimedia Interface)、CEC(Consumer Electronics Control)などが挙げられる。CC用PC2としては、たとえば、i1Match(製品名、エックスライト株式会社製)などのカラーキャリブレーション用のプログラムがインストールされた一般的なパーソナルコンピュータを使用することができる。
【0032】
ステップA3では、より詳細には、CC用PC2が、表示装置1に所定の調整用画像データに基づく画像を表示させ、スポット型測色計3が、測色座標値が示す位置において色感を測定し、測定結果をCC用PC2に入力する。そして、CC用PC2は、スポット型測色計3による測定結果と、上記所定の画像データとに基づいて、カラーキャリブレーション用のプログラムに従って、表示装置1に設定される画質調整用パラメータを変更する。
【0033】
表示装置1に設定される画質調整用パラメータとしては、色温度、コントラスト値、ホワイトバランス、ブライトネス値、ガンマ値などが挙げられる。ステップA3において、これらのパラメータがCC用PC2によって適宜変更されることで、カラーキャリブレーションが完了する。
【0034】
以上のカラーキャリブレーションにおいて従来のカラーキャリブレーションと異なる点は、ステップA1で、表示装置1の画面11aにおける測色座標値が示す位置に目印画像Gが表示され、ステップA2で、目印画像Gが表示される位置にスポット型測色計3が配置される点である。すなわち、本発明に係る表示装置1に対するカラーキャリブレーションに対して、従来のカラーキャリブレーションでは、単純に画面11aの中央位置にスポット型測色計3を配置するだけであった。したがって、従来のカラーキャリブレーションでは、画面11aの中央位置に輝度むらや色度むらが生じている場合、画面11a全体の色感が不所望の色感に調整されることがあった。
【0035】
これに対して、本発明に係る表示装置1に対するカラーキャリブレーションでは、以下に説明する測色位置決定方法によって算出される測色座標値が示す位置にスポット型測色計3が配置されることで、画面11a全体の色感を好適に調整でき、さらに、他の表示装置との間において、画面11a全体の色感を統一することができる。このような効果が得られる理由は、以下に説明する測色位置決定方法によって測色位置に決定される位置(測色座標値が示す位置)の画素が、画面11a全体の色感を表す画素であるからである。
【0036】
図5は、測色位置決定方法の手順を示すフローチャートである。図6は、測色位置決定方法が実行されるときのシステム構成を示す図である。測色位置決定方法は、カラーキャリブレーションが行われる前、たとえば表示装置1の製造時に、表示装置1の製造を行う者(以下では、「製造者」と称する)によって、表示装置1とデータ通信可能に接続される測色位置決定用情報処理装置4(以下では、「位置決定用PC4」と称する)と、位置決定用PC4とデータ通信可能に接続される2次元測色計5とを用いて実行される。測色位置決定方法によって決定された測色位置を示す測色座標値は、表示装置1の記憶部13に記憶される。なお、目印画像データおよび目印画像表示プログラムが記憶部13に記憶される時期は、測色位置決定方法の実行前であってもよいし、実行後であってもよい。
【0037】
測色位置決定方法のステップB1では、表示装置1の制御演算部12が、表示部11を制御して、画面11a全体に、所定の単一色画像データに基づく画像を表示させる。単一色画像データは、画像データを構成するすべての画素データにおいて、画素値が同一となる画像データである。なお、表示装置1の画面11aには、不可避的に輝度むらや色度むらが生じるので、単一色画像データに基づいて画面11aに表示される画像は単一色にはならない。
【0038】
単一色画像データにおける単一の画素値が表す色は、上述したカラーキャリブレーションのステップA3において用いられる調整用画像データにおける画素値が表す色と同一であることが好ましい。一般的に、調整用画像データにおける画素値が表す色は、白やグレーであるので、単一色画像データにおける画素値は、(R:255,G:255,B:255)、(R:128,G:128,B:128)、(R:64,G:64,B:64)などの画素値であることが好ましい。
【0039】
ステップB2では、2次元測色計5が、単一色画像データに基づく画像を表示中の画面11aの各箇所について、2次元測色計5の所定の表色モードにおける複数の表色値をそれぞれ測定する。2次元測色計5としては、たとえば、輝度色度ユニフォミティ測定装置UA-1000A(製品名、株式会社トプコン製)や、2次元色彩輝度計CA-2000(製品名、コニカミノルタセンシング株式会社製)などが挙げられる。この2次元色彩輝度計CA-2000の表色モードとしては、XYZ、Lvxy、Lvu’v’などがあり、上記所定の表色モードは、いずれの表色モードであってもよい。たとえば、表色モードがXYZのときは、表色値は、X刺激値、Y刺激値、およびZ刺激値の3つの値が、2次元測色計5によって測定され、表色モードがLvxyのときは、表色値は、輝度値Lv、色度値x、および色度値yの3つの値が、2次元測色計5によって測定される。以下では、2次元測色計5の表色モードは、Lvxyであるとする。
【0040】
2次元測色計5は、たとえば、暗室において、表示装置1の長手方向に対して2次元測色計5の受光部の長手方向が平行となり、表示装置1の幅方向に対して2次元測色計5の受光部の幅方向が平行となるように配置され、その受光部において表示装置1の画面11a全体からの光を受けて、画面11a上の複数の画素からなる画素ブロック単位で、輝度値Lvおよび色度値x,yを測定する。
【0041】
より詳細には、2次元測色計5の受光部を構成する複数の受光素子それぞれに、各画素ブロックからの光が入射する。たとえば、2次元測色計5の受光部を構成する受光素子の数が、長手方向にm(m≧2)個、幅方向にn(n≧2)個の合計m×n個であり、表示装置1の画面11aを構成する画素の数が、長手方向にk(k≧1)×m個、幅方向にk(k≧1)×n個の合計k×k×m×n個である場合、2次元測色計5の受光部を構成する1つの受光素子には、k×k個の画素からなる画素ブロックからの光が入射する。
【0042】
図7に、画素ブロックと受光素子との対応関係を例示する。図7は、表示装置1の画面11aの、長手方向に4個、幅方向に2個の合計8個の画素からなる画素ブロックからの光が、2次元測色計5の1つの受光素子に入射する様子を示しており、このとき、k=4、k=2である。表示装置1の画素の位置を表す2次元座標系における座標値を(i,j)とし、2次元測色計5の受光素子の位置を表す2次元座標系における座標値を(s,t)とするとき、図7の例では、座標値(i,j)が(1,1)、(1,2)、(2,1)、(2,2)、(3,1)、(3,2)、(4,1)、(4,2)となる画素からの光が、座標値(s,t)が(1,1)となる受光素子に入射することになる。
【0043】
2次元測色計5の各受光素子は、表示装置1の各画素ブロックについて、輝度値Lvと色度値x,yとをそれぞれ測定し、測定結果を、2次元測色計5とデータ通信可能に接続される位置決定用PC4に入力する。位置決定用PC4としては、制御演算部、表示部、記憶部、通信部、および入力部を備える一般的なパーソナルコンピュータが用いられ、位置決定用PC4の通信部と表示装置1および2次元測色計5とが、データ通信可能に有線または無線ネットワーク接続され、そのネットワーク接続の規格としては、RS−232C、USB、イーサネット(登録商標)、HDMI、CECなどが挙げられる。
【0044】
ステップB3では、位置決定用PC4の制御演算部が、表示装置1の複数の画素ブロックのうち、ステップB2において測定された表色値(輝度値Lvおよび色度値x,y)が平均的な値となる画素ブロックを選択し、選択された画素ブロックの中央位置を算出し、算出された中央位置をカラーキャリブレーション用の測色位置に決定する。本実施形態では、位置決定用PC4は、以下のようにして算出される平均的差分値R(s,t)が最小となる座標値(s,t)に位置する2次元測色計5の受光素子に対応する画素ブロックを、輝度値Lvおよび色度値x,yが平均的な値となる画素ブロックとして選択する。そして、選択した画素ブロックの中央に位置する画素の座標値を、測色座標値として算出する。
【0045】
平均的差分値R(s,t)は、輝度差分値P(s,t)と色度差分値Q(s,t)とから算出される。座標値が(s,t)の受光素子が測定した画素ブロックの輝度値Lvを輝度値Lv(s,t)とし、色度値x,yをそれぞれ色度値x(s,t),y(s,t)とし、すべての画素ブロックについて、輝度値Lv(s,t)の算術平均値をLvとし、色度値x(s,t),y(s,t)の算術平均値をそれぞれx,yとするとき、位置決定用PC4は、輝度差分値P(s,t)を、下記式(1)によって算出し、色度差分値Q(s,t)を、下記式(2)によって算出する。
【0046】
P(s,t)=(Lv(s,t)−Lv …(1)
【0047】
Q(s,t)=(x(s,t)−x+(y(s,t)−y …(2)
【0048】
平均的差分値R(s,t)は、下記式(3)によって算出される。ここで、下記式(3)中の係数α,βは、輝度差分値P(s,t)および色度差分値Q(s,t)の重み付けのための係数であり、たとえば、色度差分値Q(s,t)の重みを輝度差分値P(s,t)の重みよりも大きくするときは、(α,β)=(0.4,0.6)などに設定され、輝度差分値P(s,t)の重みと色度差分値Q(s,t)の重みとを等しくするときは、(α,β)=(0.5,0.5)に設定される。
【0049】
R(s,t)=α×P(s,t) + β×Q(s,t)
ただし、α≧0、β≧0、α+β=1
…(3)
【0050】
上述したように、位置決定用PC4は、平均的差分値R(s,t)が最小となる座標値(s,t)に位置する2次元測色計5の受光素子に対応する、表示装置1の画面11a上の画素ブロックを、輝度値Lvおよび色度値x,yが平均的な値となる画素ブロックとして選択する。ここで、平均的差分値R(s,t)が最小となる画素ブロックが複数ある場合、位置決定用PC4は、画面11aの中央に最も近い位置にある画素ブロックを選択する。なお、製造者が、複数の画素ブロックの中から1つの画素ブロックを選択してもよい。
【0051】
このようにして選択された画素ブロックは、平均的差分値R(s,t)が最小となる画素ブロックであるので、画面11a全体の色感を表す画素ブロックとなる。なお、本実施形態では、2次元測色計5の表色モードはLvxyであるけれども、画面11a全体の色感を表す画素ブロックを選択できるのであれば、他の表色モードであってもよい。たとえば、2次元測色計5の表色モードがXYZである場合、位置決定用PC4は、下記式(4)によって平均的差分値R’(s,t)を算出し、算出した平均的差分値R’(s,t)が最小となる画素ブロックを、表色値(X刺激値、Y刺激値、およびZ刺激値)が平均的な値となる画素ブロックとして選択する。
【0052】
R’(s,t)=α’×(X(s,t)−X+β’×(Y(s,t)−Y
+γ’×(Z(s,t)−Z
ただし、α’≧0、β’≧0、γ’≧0、α’+β’+γ’=1
…(4)
【0053】
上記式(4)では、座標値が(s,t)の受光素子が測定した画素ブロックのX刺激値、Y刺激値、およびZ刺激値をそれぞれX(s,t),Y(s,t),Z(s,t)とし、すべての画素ブロックについて、X(s,t),Y(s,t),Z(s,t)の算術平均値をそれぞれX,Y,Zとする。
【0054】
また、たとえば、2次元測色計5の表色モードとしてRGBが無い場合、すなわち、2次元測色計5がR刺激値、G刺激値、およびB刺激値を出力しない装置である場合であっても、R刺激値、G刺激値、およびB刺激値は、X刺激値、Y刺激値、およびZ刺激値の関数であるので、位置決定用PC4は、RGBを2次元測色計5の仮想的な表色モードとして、表色値(R刺激値、G刺激値、およびB刺激値)が平均的な値となる画素ブロックを選択することが可能である。RGBを2次元測色計5の仮想的な表色モードとする場合、位置決定用PC4は、下記式(5)によって平均的差分値R”(s,t)を算出し、算出した平均的差分値R”(s,t)が最小となる画素ブロックを、表色値(R刺激値、G刺激値、およびB刺激値)が平均的な値となる画素ブロックとして選択する。
【0055】
R”(s,t)=α”×(R(s,t)−R+β”×(G(s,t)−G
+γ”×(B(s,t)−B
ただし、α”≧0、β”≧0、γ”≧0、α”+β”+γ”=1
…(5)
【0056】
上記式(5)では、座標値が(s,t)の受光素子が測定した画素ブロックのR刺激値、G刺激値、およびB刺激値をそれぞれR(s,t),G(s,t),B(s,t)とし、すべての画素ブロックについて、R(s,t),G(s,t),B(s,t)の算術平均値をそれぞれR,G,Bとする。
【0057】
位置決定用PC4は、以上のようにして、所定の表色モードにおける表色値が平均的な値となる画素ブロックを選択し、次に、選択された画素ブロックの中央位置を算出する。選択された画素ブロックからの光を受ける受光素子の座標値を(s,t)とするとき、この画素ブロックの中央位置を示す測色座標値(i,j)におけるi,jは、下記式(6),(7)によってそれぞれ算出される。
【0058】
が奇数のとき、
i=s×k−(k−1)/2
が偶数のとき、
i=s×k−k/2
…(6)
【0059】
が奇数のとき、
j=t×k−(k−1)/2
が偶数のとき、
j=t×k−k/2
…(7)
【0060】
なお、上記式(6)において、kが偶数のとき、i=s×k−k/2+1としてもよい。また、上記式(7)において、kが偶数のとき、i=t×k−k/2+1としてもよい。
【0061】
算出された測色座標値(i,j)は、表示装置1の記憶部13に記憶され、測色位置決定方法が完了する。上記のようにして算出された測色座標値(i,j)が示す測色位置は、画面11a全体の色感を表す箇所の位置である。したがって、上記ステップA1〜ステップA3のように、この位置にスポット型測色計3を配置してカラーキャリブレーションを行うことで、好適に表示装置1の色感を調整することができる。
【0062】
なお、表示装置1の記憶部13は、測色座標値(i,j)だけでなく、各画素ブロックに対応する、2次元測色計5の受光素子の座標値(s,t)、輝度差分値P(s,t)、および色度差分値Q(s,t)を、それぞれ記憶することが好ましい。これらを記憶することで、製造者ではなくユーザが、表示装置1の制御演算部12によって、係数α,βを適宜変更し、新たな測色座標値(i,j)を記憶部13に記憶させることができる。具体的には、表示装置1の制御演算部12は、係数α,βを変更して、輝度差分値P(s,t)と色度差分値Q(s,t)とから、上記式(3)に従って、新たな平均的差分値R(s,t)を算出する。そして、新たな平均的差分値R(s,t)が最小となる画素ブロックを選択し、選択した画素ブロックに対応する受光素子の座標値(s,t)とkおよびkの値とから、上記式(6),(7)に従って、選択した画素ブロックの中央位置を示す座標値(i,j)を算出し、算出した(i,j)を新たな測色座標値として、記憶部13に記憶させる。
【0063】
上記のように構成される表示装置1によれば、ユーザが、カラーキャリブレーションを行うときに、カラーキャリブレーションの目的に応じて、好適な測色位置を決定することができる。たとえば、表示装置1を複数台用意してマルチディスプレイシステムを構成する場合において、そのマルチディスプレイシステムが観衆から離れたところで画像を表示するように設置されるときは、各表示装置1間で画面11a全体の明るさがばらついていると、観衆に違和感が生じ易いので、このような違和感の抑制を目的とするときは、ユーザは、輝度差分値P(s,t)の重み付けの係数αの値を大きな値に変更して測色位置を決定し、違和感が生じ難いようにカラーキャリブレーションを行うことができる。
【0064】
また、たとえば、表示装置1を複数台用意してマルチディスプレイシステムを構成する場合において、そのマルチディスプレイシステムが観衆に近いところで画像を表示するように設置されるときは、各表示装置1間で画面11a全体の色合いがばらついていると、観衆に違和感が生じ易いので、このような違和感の抑制を目的とするときは、ユーザは、色度差分値Q(s,t)の重み付けの係数βの値を大きな値に変更して測色位置を決定し、違和感が生じ難いようにカラーキャリブレーションを行うことができる。
【0065】
表示装置1は、ユーザが使用するうちに、不可避的に経年劣化する。しかしながら、表示装置1の各部分は一様に経年劣化するので、輝度むらや色度むらの分布に大きな変化は生じない。よって、表示装置1が経年劣化しても、製造時に記憶部13に記憶された測色座標値によって、画面11a全体の色感を表す画素を示すことができる。ただし、経年劣化によって輝度むらや色度むらの分布に大きな変化が生じた場合などには、製造者またはユーザが、ステップB1〜ステップB3のような測色位置決定方法を再度実行して、新たな測色座標値を記憶部13に記憶させてもよい。
【0066】
表示装置1は、1つの測色座標値だけではなく、画質調整用パラメータに応じた複数の測色座標値を記憶部13に記憶してもよい。上述したカラーキャリブレーションのステップA3では、調整用画像データに基づく画像を表示中の表示装置1の測色位置において、スポット型測色計3によって色感を測定し、測定結果に基づいて、CC用PC2が画質調整用パラメータを変更している。このようなステップA3の処理では、複数の調整用画像データに基づく画像が表示され、各画像についての測定結果に基づいて、各画質調整用パラメータが変更される場合がある。このような場合のために、表示装置1は、画質調整用パラメータに応じた複数の測色座標値を記憶部13に記憶することが好ましい。
【0067】
たとえば、画質調整用パラメータの1つであるホワイトバランスが調整されるときには、全画素の画素値が(R:255,G:255,B:255)となる調整用画像データに基づく画像が表示装置1に表示されるとし、画質調整用パラメータの1つであるガンマ値が調整されるときには、全画素の画素値が(R:128,G:128,B:128)となる調整用画像データに基づく画像が表示されるとする。
【0068】
このようなときには、測色位置決定方法のステップB1において全画素の画素値が(R:255,G:255,B:255)となる単一色画像データに基づく画像が表示されることで算出された測色座標値が、ホワイトバランス調整用の測色座標値として記憶部13に記憶され、測色位置決定方法のステップB1において全画素の画素値が(R:128,G:128,B:128)となる単一色画像データに基づく画像が表示されることで算出された測色座標値が、ガンマ値調整用の測色座標値として記憶部13に記憶される。そして、カラーキャリブレーションのステップA2およびステップA3では、ホワイトバランス調整用の測色座標値が示す測色位置にスポット型測色計3が配置されて、CC用PC2によってホワイトバランスの変更が行われ、その後、ガンマ値の変更が行われるときに、ガンマ値調整用の測色座標値が示す測色位置にスポット型測色計3が移動させられて、CC用PC2によってガンマ値の変更が行われる。
【符号の説明】
【0069】
1 表示装置
2 カラーキャリブレーション用情報処理装置(CC用PC)
3 スポット型測色計
4 測色位置決定用情報処理装置(位置決定用PC)
5 2次元測色計
11 表示部
11a 画面
12 制御演算部
13 記憶部
14 入力部
15 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置および情報処理装置によって、表示装置の画面上におけるカラーキャリブレーション用の測色位置を決定する測色位置決定方法であって、
表示装置によって、該表示装置の画面全体に、所定の単一色画像データに基づく画像を表示する第1ステップと、
測定装置によって、前記画像を表示中の前記画面全体を構成する複数の領域について、該領域ごとに、前記測定装置の所定の表色モードにおける複数種類の表色値を測定する第2ステップと、
情報処理装置によって、前記複数の領域のうち、前記第2ステップにおいて測定された複数種類の表色値が平均的な値となる領域を選択し、選択された領域の中央位置を算出し、算出された中央位置をカラーキャリブレーション用の測色位置に決定する第3ステップとを含むことを特徴とする測色位置決定方法。
【請求項2】
前記複数種類の表色値は、輝度値と2つの色度値とであり、
前記領域について、輝度値をLv、一方の色度値をx、他方の色度値をyとし、前記複数の領域における、輝度値Lvの算術平均値をLv、色度値xの算術平均値をx、色度値yの算術平均値をyとするとき、
前記第3ステップでは、前記情報処理装置によって、前記領域ごとに、下記式(1)によって表される輝度差分値Pおよび下記式(2)によって表される色度差分値Qを算出し、
前記領域ごとに、算出された輝度差分値Pおよび色度差分値Qから、下記式(3)によって表される平均的差分値Rを算出し、
前記複数種類の表色値が平均的な値となる領域として、前記複数の領域のうち、算出された平均的差分値Rが最小となる領域を選択することを特徴とする請求項1に記載の測色位置決定方法。
P=(Lv−Lv …(1)
Q=(x−x+(y−y …(2)
R=α×P + β×Q
ただし、α≧0、β≧0、α+β=1
…(3)
【請求項3】
画面を有する表示部と制御部と記憶部とを備える表示装置であって、
前記記憶部には、請求項1または2に記載の測色位置決定方法によって決定された、カラーキャリブレーション用の測色位置が記憶されており、
前記制御部は、前記表示部の前記画面上において、前記記憶部に記憶されている、カラーキャリブレーション用の測色位置に、所定の目印画像を表示させることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記表示部の前記画面全体を構成する複数の領域について、請求項2に記載の測色位置決定方法によって算出された輝度差分値Pおよび色度差分値Qをそれぞれ記憶していることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−244555(P2012−244555A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115270(P2011−115270)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】