説明

測長器の管理装置及び管理方法

【課題】 不揮発性メモリのような記憶手段を用いた場合において計測回数が大きい場合においても、当該記憶手段で可能な書き換え回数の範囲内で管理が可能な管理装置を提供する。
【解決手段】 被計測物に接触して移動する可動子の移動量に応じた計測信号を出力する測長器に備えられ、前記可動子の管理を行う管理装置であって、前記計測信号に基づいて、前記可動子の移動の累積値を求め、前記累積値が予め設定された単位値に達したとき又は前記単位値を越えたときに、前記累積値に基づく判定値を設定して記憶手段に書き込むように指令する制御部を有する構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測長器の管理装置及び管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軸線方向に進退移動する可動子又は支点を中心に揺動する可動子を有し、この可動子の移動を信号に変換して、可動子の変位を検出するようにした光学式リニアエンコーダ方式や差動変圧器方式を用いた測長器が一般的に知られている。このような測長器は、被計測物表面の凹凸の計測や、薄物ワークの寸法検出、リニアモーション移動体の位置検出等あらゆる分野に用いられている。
しかし、前記測長器は、可動子の機械的移動によって被計測物の計測を行っているため、長期間使用するうち又は高い計測頻度で計測を行ううちに可動子の動作が悪くなり、正確な計測結果を得られなくなる等の不具合が生じることがある。
【0003】
このような問題を解決するべく、例えば特許文献1には、可動子である接触子の変位回数をカウントし、カウントされた変位回数が予め設定された回数に到達すると、例えば「接触子のメンテナンス時期です。接触子をメンテナンスして下さい」という表示ガイダンスを表示部に表示して警報出力を行う管理装置を一体的に備えた測長器(接触式変位センサ)が開示されている。
【特許文献1】特開2004−233194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献1に記載の管理装置には以下のような問題がある。
(1)不揮発性メモリに変位回数の累積値を書き込み、接触式変位センサ(管理装置)の電源をOFFにしても変位回数の累積値が記憶されるようにしているが、不揮発性メモリは書き換え可能回数が10万回〜100万回程度と有限であるため、接触子の変位回数が増加する毎に、前記メモリに変位回数を更新記憶させると、容易に不揮発性メモリの書き換え可能限界に達し、不揮発性メモリが早期に使用できなくなる場合がある。
【0005】
(2)接触子の変位回数が一定の値を超えたときに測長器側のメンテナンスを促す警報を報知するようにしているが、測長器側のメンテナンス時期は接触子の変位回数だけではなく接触子の総移動量(総移動距離)にも関係する。
そのため、接触子の変位回数が少なくても、接触子のストロークが大きいような場合には、変位回数が予め設定した値に達するまえに接触子の動作が悪くなる等の不具合が生じることがあるが、このような早期の不具合発生前に前記警報を出力することができない場合がある。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、不揮発性メモリのような記憶手段を用いた場合においても、当該記憶手段で可能な書き換え回数の範囲内で測長器の管理が可能な管理装置及び管理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の管理装置は、被計測物に接触して移動する可動子の移動量に応じた計測信号を出力する測長器に備えられ、この測長器の管理を行う管理装置であって、前記計測信号に基づいて前記可動子の移動による変化値を演算する変化値演算部と、この変化値演算部によって得られた前記変化値を累積する累積値演算部と、この累積値演算部によって得られた値に基づいて所定の評価値を設定し、この評価値が、予め設定された単位値分だけ増加するごとに、所定の判定値を設定して記憶手段に書き込むように指令する制御部とを有し、前記記憶手段は、前記管理装置の稼動及び非稼動とは無関係に、前記判定値の記憶を継続する構成としてある。前記評価値は、前記変化値を累積した累積値であってもよいし、前記累積値に所定の初期値を加算した値であってもよい。
ここで、本発明の管理装置が適用される測長器の可動子は、一定範囲内を往復動するものであればよく、軸線方向に進退移動する形式のものであってもよいし、支点を中心に揺動するものであってもよい。
【0008】
本発明は上記のように構成されているので、メモリ等の記憶手段の書き換え回数を、変化値の演算毎に書き込む場合に比較して削減でき、記憶手段に不揮発性メモリのようなメモリを使用しても、容易に書き換え可能限界に達することはなく、前記メモリを長期にわたって使用し、判定値を書き込み続けることが可能となる。
また、前記変化値は、特許文献1と同様の可動子の変位回数であってもよいし、可動子の移動量であってもよい。この移動量は、予め設定された時間ごとに前記可動子の位置を順次検出し、連続して検出される前回検出された位置と今回検出された位置との差の絶対値を演算して求めるとよい。
変化値を移動量とすることで、移動量を累積した可動子の総移動量に応じた判定値が記憶手段に保存され、可動子の総移動量に基づく可動子の寿命到来やメンテナンス時期等を予測することが可能となる。
【0009】
なお、「判定値」は、測長器の寿命やメンテナンス時期を判定するための基準となるもので、評価値そのものであってもよいし、評価値に基づいて決定される所定の値であってもよい。
例えば、変化値を移動量とし、累積値を評価値とし、単位値が100mmに設定されている場合、移動量の累積値が、99.850mmから101.35mmになったときに、評価値(101.35mm)が単位値(100mm)分増加したと判断して判定値が設定される。このときの判定値は、評価値そのものを示す「101.35」としてもよいし、小数点以下を省略した「101」としてもよい。また、「100」,「10」又は「1」等の数値としてもよい。
【0010】
特に前記記憶手段が不揮発性メモリのように書き換え回数に制限があるものや、他の装置との関連で、記憶手段の書き込み領域が制限されているような場合には、前記評価値や累積値が予め設定された値になったときに前記単位値を変更するように構成するとよい。
例えば、評価値が90以下では、単位値1で判定値の書き込みを行い、評価値が90を越えたら単位値を10に変更して判定値の書き込みを行うようにする。
このようにすることで、記憶手段の書き換え回数や記憶容量を更に削減することができる。
【0011】
本発明では、評価値が単位値分増加したときに、そのときの評価値に応じた判定値を設定して記憶手段に書き込むようにしている。そのため、記憶手段に記憶されているのは、一定時期の評価値に基づく判定値であり、その後に評価値が単位値分増加する前に管理装置の電源がOFFにされ、管理装置を非稼動とすると、そのときの評価値は何ら記憶されずに消去される。
【0012】
例えば、変化値を前記移動量とし、累積値を評価値とし、単位値が100mmに設定されている場合、評価値が99.850mmから101.35mmになったときに、判定値「1」が記憶手段に書き込まれ、評価値が181.56mmになったときに管理装置の電源がOFFにされると、記憶手段に記憶されている判定値は、前記の「1」のままである。この場合判定値「1」は評価値が1度、単位値分増加したことを意味し、可動子の総移動量が100mmであることを示しており、判定値「1」が示す100mm以降の評価値分、つまり81.56mm分のデータは何ら記憶されることなく消去される。このため次回管理装置の稼動時には、前回の電源OFFによって消去された81.56mmの評価値分は考慮されないため、測長器の使用及び不使用に伴う管理装置の稼動及び非稼動の切換え回数が増加するほど、可動子の真の総移動量と記憶手段に記憶されている判定値から演算される総移動量との乖離が大きくなり、測長器の管理精度が低下する。
そこで、このような不具合の発生を防止するべく、所定の初期値を準備し、前記累積値に前記初期値を加えて評価値とすることができる。
初期値を単位値の1/2とすることで、累積値を四捨五入して判定値を設定するのと同等の効果を得ることができ、単位値と同一値とすることで評価値を切り上げして判定値を設定することと同等の効果を得ることができる。
【0013】
なお、前記記憶手段が、前記判定値を記憶するための所定の記憶領域を有するとともに、前記判定値を前記記憶手段の前記記憶領域に順次書き込む際に、書き込み可能な全ての領域に前記判定値を書き込んだ後、順次新しい判定値を既に書き込まれた判定値に上書きするように指令するか、又は、前記記憶領域に書き込まれた判定値を一括消去して判定値の書き込みを継続するように指令する書き込み制御部を設けてもよい。
このように書き込み制御部が、いったん判定値書き込み用の記憶領域の全アドレスに判定値を書き込ませた後、全アドレスに書き込まれた判定値を削除して、判定値用の記憶領域を開放し、以降新たに判定値を書き込ませる、又はいったん判定値書き込み用の記憶領域の全アドレスに判定値を書き込ませた後、新たに書き込む判定値を順次各アドレスに上書きさせることによって、記憶手段の書き換え回数をさらに減少させることができる。
また、上記の管理装置には、前記記憶手段に記憶される前記判定値が予め設定された値に達したときに、所定の報知を行う報知手段を設けてもよい。
この報知手段は、オペレータ等に測長器のメンテナンス時期や寿命の到来を報知することができるものであればよく、警報音やディスプレイやランプ点灯等の警報表示に限らず、単に判定値をディスプレイ上に表示させるようなものも含まれる。
【0014】
上記管理装置を使った管理方法は、被計測物に接触して移動する可動子の移動量に応じた計測信号を出力する測長器の管理を行う管理方法であって、前記計測信号に基づいて前記可動子の移動による変化値を演算するとともに、前記変化値を累積するステップと、前記変化値を累積して得られた値に基づいて所定の評価値を設定し、この評価値が、予め設定された単位値分だけ増加するごとに、所定の判定値を設定して前記記憶手段に書き込むステップとを有し、前記記憶手段は、前記各ステップを実行する装置の稼動及び非稼動とは無関係に、前記判定値の記憶を継続する方法としてある。前記評価値は、前記変化値を累積した累積値であってもよいし、又は、この累積値に所定の初期値を加算した値であってもよい。
この方法によれば、メモリ等の記憶手段の書き換え回数を、変化値の演算毎に書き込む場合に比較して削減でき、記憶手段に不揮発性メモリのようなメモリを使用しても、容易に書き換え可能限界に達することはなく、前記メモリを長期にわたって使用し、判定値を書き込み続けることが可能となる。
【0015】
この場合、前記変化値を前記可動子の移動量とすることで、移動量を累積した可動子の総移動量に応じた判定値が記憶手段に保存され、可動子の総移動量に基づく可動子の寿命到来やメンテナンス時期等を予測することが可能となる。前記移動量は、予め設定された時間ごとに前記可動子の位置を順次検出し、連続して検出される前回検出された位置と今回検出された位置との差の絶対値を演算して求めることができる。
さらに、前記変化値を累積した累積値又は前記評価値が予め設定された値になったときに、前記単位値を変更するようにするとよい。前記初期値は、前記単位値の1/2であってもよいし、使用する単位値と同じ値であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、メモリ等の記憶手段の書き換え回数を、変化値の演算毎に書き込む場合に比較して削減でき、不揮発性メモリのような書き換え回数に制限のある記憶手段を用いた場合において、容易に書き換え可能限界に達することなく、前記メモリを長期にわたって使用し、判定値を書き込み続けることが可能となり、当該記憶手段で可能な書き換え回数の範囲内で測長器の管理が可能になる。そのため、測長器のメンテナンス時期や寿命の到来前に管理装置の記憶手段の寿命が尽きるという不都合を防止することができる。
また、変化値を可動子の移動量とすることで、移動量を累積した可動子の総移動量に応じた判定値が記憶手段に保存され、可動子の総移動量に基づく可動子の寿命到来やメンテナンス時期等の予測を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の管理装置の一例にかかり、その構成を説明するブロック図である。
なお、以下の説明では、管理装置は測長器とは別体のものであるとして説明するが、管理装置は測長器と一体に構成されているものであってもよい。
測長器2は、軸線方向に進退移動する可動子又は支点を中心に揺動する可動子2aと、この可動子2aの移動量に応じた計測信号を出力する測長部2bとを備え、可動子2aの位置に基づき測長を行う。
測長器2は従来公知の測定器であるため、詳細な説明は省略する。
【0018】
管理装置1は、少なくとも測長器2の使用時(測長時)には電源がONにされて稼動し、測長器2の不使用時(測長を行わない時)には電源がOFFにされて非稼動とされるように構成される。
管理装置1は、演算結果等を一時的に記憶するRAM13と、管理装置1の稼働又は非稼働(電源ON/OFF)に関わらず書き込まれたデータの記憶を継続する不揮発性のメモリ(EEPROM)12と、測長器2側からの信号に基づく演算を行い、ディスプレイ14の表示やRAM13やEEPROM12等への書き込み及び読み出しを制御する制御部であるCPU10とを有している。
【0019】
CPU10は、図示するように変換部100,累積値演算部101,RAM入出力部102,評価値比較部103,繰上げ設定部104及びEEPROM制御部105を有している。変換部100,累積値演算部101,RAM入出力部102,評価値比較部103,繰上げ設定部104又はEEPROM制御部105は、CPU10の内部にあってもよいし外部にあってもよい。
変換部100は、可動子2aの移動によって測長器の測長部2bから出力される計測信号を可動子2aの移動量(距離)に変換する。本実施形態においては、測長器2から出力される信号を一定間隔(例えば1ms間隔)で読み込み、該信号に基づき可動子2aの現在位置(信号を読み取った時点の位置)を一定間隔で順次検出し、連続して検出される可動子2aの前回検出された位置と今回検出された位置との差の絶対値を演算して、可動子2aの移動量とする。これにより可動子2aの移動量を前記一定間隔毎に順次演算する。前記移動量は可動子2aの移動により変化するため、本実施形態においては、移動量を可動子の移動による変化値とし、変換部100が、変化値(移動量)を演算する変化値演算部をなす。
累積値演算部101は、変換部100から入力された最新の移動量を、RAM13から読み出した前回の移動量の累積値に加算して最新の移動量の累積値を求め、RAM入出力部102を介してRAM13に記憶させる。
【0020】
評価値比較部103は、累積値演算部101からの最新の累積値が入力される。
また、繰上げ設定部104に所定の初期値が設定されている場合には、初期値を読み出して前記累積値にこの初期値を加算した評価値を演算する。繰上げ設定部104に初期値が設定されていない場合は、前記累積値をそのまま評価値とする。
そして、評価値比較部103は、評価値の増加分が単位値を越える又は以上となることで、単位値分増加しているかどうかを判断する。
例えば、初期値が設定されておらず、単位値が100mmに設定されている場合、ある時点で累積値が99.850mmから101.35mmになると、評価値比較部103は評価値が単位値分増加したと判断する。また、例えば、初期値50mmが設定され、単位値が100mmに設定されている場合、ある時点で累積値が49.850mmから51.35mmになると、評価値が99.850mmから101.35mmに変化するため、評価値比較部103は評価値が単位値分増加したと判断する。
【0021】
繰上げ設定部104は、また、評価値が予め設定された基準値に達しているか否かを判断する。前記基準値に達しているか否かは、評価値そのものから判断してもよいし、単位値の到達回数から判断してもよい。そして、前記基準値に達していると判断したときには、単位値の変更を行う。また、累積値に初期値を加えた評価値を使用する場合には、繰上げ設定部104は、単位値の変更とともに前記初期値の変更を行う。
【0022】
EEPROM制御部105は、評価値比較部103において、評価値が単位値分増加したと判断されたときに、そのときの評価値から「判定値」を設定し、該判定値をEEPROM12に書き込むように指令し、書き込みを実行させる。EEPROM12に書き込まれた最新の判定値はRAM13に記憶され、EEPROM制御部105は、RAM13に記憶された判定値に基づき次の判定値を設定する。なお、「判定値」は、書き込み時の評価値そのものであってもよいし、評価値に基づいて得られた所定の値であってもよい。
【0023】
例えば、書き込み時における評価値の表示のうち、小数点以下を省略した値(例:書き込み時の評価値が1.008である場合には「1」)や、「100」,「10」又は「1」等の数値を「判定値」としてもよい。前記のように評価値が単位値分増加したタイミングでのみEEPROM12に判定値を書き込ませるため、移動量の演算毎にEEPROM12にデータを書き込む場合に比較してEEPROM12への書き込み指令の回数が削減され、判定値の書き込みにおいて、EEPROM12の書き換え可能限界に容易に達することはない。
【0024】
前記変換部100,累積値演算部101,RAM入出力部102,評価値比較部103,繰上げ設定部104,EEPROM制御部105は、管理装置1が電源ONの稼動状態で、管理装置1側に保存されているコンピュータプログラムに基づきCPU10が作動することによって実現される。従って管理装置1の稼動時に前記各部の演算に伴いRAM13に一時的に記憶される移動量や累積値,初期値,評価値,基準値,単位値,判定値等は、管理装置1が電源OFFの非稼動状態となるとRAM13から消去される。一方EEPROM12は、上記判定値を記憶するための所定の記憶領域が予め設定され、管理装置1の稼働又は非稼働に関わらず上記記憶領域に書き込まれた判定値の記憶を継続する。
以上のように本管理装置1は、測長器2の管理として、可動子2aの移動量の累積値に基づき設定される判定値を、書き換え可能限界に容易に達することなくEEPROM12に記憶させるように構成されている。
【0025】
ディスプレイ14は、判定値に基づき測長器2のメンテナンス時期や寿命の到来等をオペレータ等に報知するためのもので、例えば、EEPROM12に書き込まれた判定値が予め設定した値になったときに、例えば「可動子のメンテナンス時期です。可動子をメンテナンスして下さい」とのメッセージを画面上に表示する報知手段をなす。もちろん、測長器2のメンテナンス時期や寿命の到来をオペレータ等に報知することができるのであれば、報知の態様は上記以外のものであってもよく、ディスプレイ14の代わりに例えば警告灯や音声で寿命の到来を報知する報知手段を設けるようにしてもよい。
【0026】
次に、上記構成の管理装置1の作用及び本発明の管理方法の一例を、図2,図3及び図4を参照しつつ説明する。
図2は、管理装置1の作動例を説明するフローチャートで、図3は、可動子の現在位置、可動子の移動量,移動量の累積値,単位値及び可動子の真の移動量と判定値との関係を説明するための表、図4は、単位値の変更を伴う場合の例を説明するための図3と同様の表である。
【0027】
管理装置1の電源ONと同時に、初期設定が行われる(ステップS1)。この実施形態では、図3に示すように、電源ONのたびに、移動量及び累積値(評価値)が「0」に設定される。また、このとき、管理装置1側に予め不揮発的に記憶されている単位値と、初期値とが選択され、繰上げ設定部104に初期値が設定される(ステップS2)。なお、図3及び図4に示す例では、移動量の累積値をそのまま「評価値」としていて、ステップS2では初期値は選択されない。
【0028】
単位値は、1m,10m,100mの三種類が用意されている。この実施形態では、電源ON後の単位値は1m(図3及び図4の表記上は「1」)であり、評価値比較部103が、評価値の増加分との比較時に使用する。すなわち、電源ON後は、累積値(評価値)が1mを越えるごとに判定値が設定されてEEPROM12に書き込まれる。
【0029】
図3に示すように、管理装置1の電源ON後は、前述のように可動子の移動量が1ms毎に求められ、この移動量を累積して累積値が求められ、該累積値を評価値として設定する。そして、評価値が「0.9989(m)」から「1.0021(m)」になったときに、判定値「1」が設定されて、EEPROM12に書き込まれる。また、評価値が「1.9978(m)」から「2.005(m)」になったときに、判定値「2」が設定されて、EEPROM12に書き込まれる。以後、同様に、評価値が単位値「1(m)」分増加するごとに、判定値が1ずつ増加し、「3」,「4」,「5」・・・と設定されて、EEPROM12に書き込まれる。
【0030】
そして、図4に示すように、管理装置1の電源ON後の評価値が、管理装置1側に不揮発的に記憶されている最初の基準値である90mを越えると、単位値が「1(m)」から「10(m)」に変更され、評価値が10m分増加するごとに判定値が設定されてEEPROM12に書き込まれる。例えば、図4に示す例では、評価値が「89.9924(m)」から「90.0018(m)」になったときに、判定値「90」が設定されてEEPROM12に書き込まれるとともに、単位値が「1」から「10」に変更される。以後、単位値が10倍されているため、評価値が単位値「10(m)」分増加するごとに、判定値が10ずつ増加し、「100」,「110」,「120」,「130」・・・と設定されて、EEPROM12に書き込まれる。
【0031】
さらに、図示はしないが、評価値が次の基準値である900mを越えると、単位値が10mから100mに変更され、以後、単位値が10倍されているため、評価値が単位値「100(m)」分増加するごとに判定値が100ずつ増加し、「1000」,「1100」,「1200」・・・と設定されて、EEPROM12に書き込まれる。
【0032】
判定値は、EEPROM12に書き込まれている最新の判定値に対して1又は10又は100ずつ増加されて設定される。したがって測長器2の不使用等に伴い、いったん管理装置1の電源をOFFした後、再度管理装置1の電源をONし、最初に評価値が単位値分増加すると、電源をONする前にEEPROM12に書き込まれている最新の判定値に1を加えた値が判定値として設定される。
【0033】
以上の手順を、図2のフローチャートに従って説明する。
図2に示すように、変換部100によって可動子2aの移動量が求められる(ステップS3)。次に累積値演算部101は、この可動子2aの移動量によって累積値を更新し、最新の累積値をRAM13に書き込む(ステップS4)。
次に評価値比較部103は、累積値から設定した評価値が単位値(1m)分増加したか否かを判断する(ステップS5)。
ステップS5での判断の結果、評価値が単位値分増加していないと判断すれば、ステップS3に戻り、次に演算された可動子2aの移動量に基づきステップS3からステップS5の作動を繰り返し、評価値が単位値分増加するまで待機する。
【0034】
ステップS5で評価値が単位値分増加していると判断すれば、次に、繰上げ設定部104は、評価値が最初の基準値(90m)を越えたか否かを判断する(ステップS6)。
その結果、前記最初の基準値に達していなければ、EEPROM制御部105から単位値を1mとする判定値をEEPROM12に書き込むように指令が出力され(ステップS7)、EEPROM12への判定値の書き込みが可能であることを条件として(ステップS11)、判定値がEEPROM12に書き込まれる(ステップS12)。
【0035】
電源をONしてからOFFするまでの間に、評価値が最初の基準値(90m)を越えれば(ステップS8)、評価値が次の基準値(900m)を越えていないことを条件に、評価値比較部103は、単位値を1mから10mに変更する。そして、EEPROM制御部105から単位値を10mとする判定値をEEPROM12に書き込むように指令が出力され(ステップS9)、EEPROM12への判定値の書き込みが可能であることを条件として(ステップS11)、判定値がEEPROM12に書き込まれる(ステップS12)。
【0036】
また、ステップS8で評価値が前記次の基準値(900m)を越えていると判断されれば、評価値比較部103は、単位値を10mから100mに変更する。そして、EEPROM制御部105から単位値を100mとする判定値をEEPROM12に書き込むように指令が出力され(ステップS10)、EEPROM12への判定値の書き込みが可能であることを条件として(ステップS11)、判定値がEEPROM12に書き込まれる(ステップS12)。
以後、管理装置1の電源がOFFにされるまで、ステップS3〜ステップS12の処理が繰り返される。
【0037】
なお、EEPROM12に準備されている判定値書き込み用の記憶領域のアドレスの全てに前記判定値が書き込まれることによって、EEPROM制御部105が、ステップS11でEEPROM12への書き込みが不可能と判断したときは、EEPROM制御部105が書き込み制御部として、EEPROM12の記憶内容をクリアし(ステップS13)、以後、アドレスの先頭から、次の判定値を順次書き込む。
【0038】
上記のように本管理装置1を作動させると、最初の単位値と判定値とを乗算することによって、可動子2aの概ねの総移動量を演算して算出することができる。このためディスプレイ14の警告表示だけでなく、測長器2の使用者や管理者等は、判定値をEEPROM12側から読み出すことによって、測長器2の寿命やメンテナンス時期等を、判定値から演算される可動子2aの総移動量に基づいて判断することができる。例えば可動子の変位回数が少なく、ストロークが大きいような場合に、早期に接触子の動作が悪くなる等の不具合を管理することができる。
【0039】
上記のようにEEPROM制御部105が、いったん判定値書き込み用の記憶領域の全アドレスに判定値を書き込ませた後、全アドレスに書き込まれた判定値を削除して、判定値用の記憶領域を開放し、以降新たに判定値を書き込ませることによって、EEPROM12の書き換え回数を減少させることができ、EEPROM12の寿命(書き換え可能限界)までに保存できる可動子2aの総移動量を長くすることができる。
なお、EEPROM制御部105を、いったん判定値書き込み用の記憶領域の全アドレスに判定値を書き込ませた後、新たに書き込む判定値を順次各アドレスに上書きさせるように構成し、EEPROM12の書き換え回数を減少させることもできる。
【0040】
管理装置1の電源がOFFにされると、前述のようにそれまでRAM13に記憶されていた移動量及び累積値に関するデータは消去される。図3に示す例では、評価値が2.0103のときに電源がOFFされている。このとき、評価値の増加分は未だ0.0103mであるから、単位値「1(m)」を越えておらず、判定値の設定もEEPROM12への書き込みも行われない。管理装置1の電源OFF後にEEPROM12に記憶されている判定値は「1」及び「2」であるため、この電源OFFの時点で判定値から可動子2aの総移動量を演算すると2mとなり、真の総移動量2.0103mに対して、0.0103mの移動量が消去される(切り捨てられる)。
【0041】
そして、次に管理装置1の電源をONにしたときには、図2及び図3に示すように、ステップS1で初期設定が行われ、移動量及び累積値がともに「0」に設定され、ステップS2で初期値及び単位値が選択された後、管理装置1の電源がOFFにされるまで、ステップS3〜ステップS12(ステップS13を含む)が繰り返される。
【0042】
このため、例えば2回目の電源ONの時に評価値が1.0018となり、最初に評価値が単位値分増加し、判定値「3」が書き込まれた時点で管理装置1の電源をOFFすると、判定値から演算される総移動量と真の総移動量との差は、この電源OFFの際に切り捨てられる0.0018(1.0018−1)と、初回の電源OFFの際に切り捨てられた0.0103との和となる0.0121となる。
上記のように管理装置1の電源をOFFする際には、EEPROM12に最新の判定値を書き込ませた後の移動量の累積分は全て切り捨てられる。
換言すると管理装置1の電源ONからOFFまでの間の累積値を、単位値の桁数の一桁下の桁で切り捨てして判定値が設定されるわけである。
【0043】
このため、例えば測長器2の使用と不使用との切換え頻度が高く、管理装置1の電源ONとOFFの切換え回数が増加するほど、上記のように真の総移動量と判定値から演算される総移動量との乖離が大きくなって、測長器2の管理精度が低下する。
これを、図5を参照しながら説明する。図5では、真の総移動量と判定値とを対比して示している。
図5の表の最右欄の丸数字は、判定値が書き込まれるEEPROM12のアドレスを参考的に示しているが、図示と説明の便宜のため、EEPROM12には判定値の書き込み用に12個のアドレス(アドレス1〜12)が準備されているものとする。また、表外の「ON」は電源投入による管理装置1の稼動を、「OFF」は電源遮断による管理装置1の稼動終了を示している。
【0044】
図示するように、(a)〜(d)にわたって、四回電源のON,OFFを繰り返すものとする。
図5の例では、初回は、(a)に示すように、累積値が9.5221mになったときに電源がOFFにされたものとする。このとき累積値が9.0096mになったときに設定された「9」がEEPROM12に書き込まれた最新の判定値である。判定値「9」が設定された後、判定値が単位値分増加する前に電源がOFFされているため、判定値は「9」のままであり、つまり判定値「9」が設定された後の累積値の増加分0.5221mが切り捨てられて判定値が設定され、電源がOFFされる。判定値から演算される総移動量は、真の総移動量(9.5221m)の小数点以下を切り捨てた値となる。
【0045】
次回電源ON時には、累積値は初期化されて「0」から開始されるため、電源ON後、累積値が1.0018となり最初に評価値(累積値)が単位値(1m)分増加したとすると、次の判定値「10」が設定されてEEPROM12のアドレス10に書き込まれる。そして、(b)に示すように、累積値が3.0052m(真の総移動量が12.5273m)になり、EEPROM12に判定値「12」が書き込まれた後、累積値が3.3314となり、真の総移動量が12.8535mになったときに、電源がOFFされたものとする。
このようにして、以後、(c),(d)と電源のON,OFFを繰り返すと、前記のように切り捨てられる累積値が増加するため、(d)に示すように、真の総移動量が129mを越えているにも関わらず、判定値から演算される総移動量は「126m」であり、両者の間には移動量にして3m以上の乖離が発生する場合もあり得る。
【0046】
[単位値の1/2の初期値導入例]
そこで、図6及び図7に示す例では、単位値が1mのときにこの単位値の1/2である初期値0.5mと、単位値が10mのときにこの単位値の1/2である初期値5mと、単位値が100mのときにこの単位値の1/2である初期値50mとを用意し、単位値の変更に応じて対応する初期値を繰上げ設定部104に設定して、評価値を設定し、この評価値に基づいて判定値を決定するようにしている。
【0047】
図6に示すように、例えば累積値が「0.4955(m)」から「0.5030(m)」になると、この累積値に初期値0.5(m)を加えた評価値が「0.9955」から「1.003」になるので、このときに、判定値「1」を設定してEEPROM12に書き込む。また、同様に、累積値が「1.4980(m)」から「1.5067(m)」になったときに、判定値「2」が設定されて、EEPROM12に書き込まれる。以後、同様に、累積値に初期値0.5を加算した評価値が単位値「1(m)」分増加するごとに、初期値を導入しない場合と同様に、判定値を設定して、EEPROM12に書き込む。
【0048】
図7は、電源ON後の評価値が、最初の基準値である90mを越える場合を示している。図7に示すように、累積値に初期値0.5を加えた評価値が「89.9971」から「90.0012」になると、単位値が「1(m)」から「10(m)」に変更され、評価値が10m分増加するごとに、初期値を導入しない場合と同様に、判定値が設定されてEEPROM12に書き込まれる。初期値は単位値に対応して「0.5」から「5」に変更される。例えば、図7に示す例では、累積値が「94.9955(m)」から「95.0047(m)」になると、評価値が「99.9955」から「100.0047」になり、判定値「100」が設定されてEEPROM12に書き込まれる。
【0049】
さらに、図示はしないが、評価値が次の基準値である900mを越えると、単位値が「10(m)」から「100(m)」に変更されるとともに、初期値が「5」から「50」に変更される。以後、累積値に初期値50mを加えた評価値が100m分増加するごとに、初期値を導入しない場合と同様に、判定値が設定されて、EEPROM12に書き込まれる。
【0050】
この場合、上記のように管理装置1の電源ON後、累積値が単位値の1/2(0.5m)分増加すると、判定値が増加する。このため管理装置1の電源ONからOFFまでの間の累積値を、単位値の桁数の一桁下の桁で四捨五入して判定値が設定される。従って累積値を切り上げしてEEPROM12に最新の判定値が書き込まれて管理装置1の電源がOFFされるケースと、管理装置1の電源をOFFした際に累積値が切り捨てられるケースとが混在する。
【0051】
例えば図6は、管理装置1の初回電源ONからOFFまでの間では、累積値が0.5030から1.4980の範囲で判定値が「1」と設定され、累積値が2.4144で電源がOFFされているため、管理装置1の電源OFFの際に0.4144が切り捨てられる。
また、管理装置1の2回目の電源ONの期間では、累積値が0.5045に到達した時点で、判定値が1増加し、例えば累積値が0.5081の時に電源がOFFされるとすると、0.5081が切り上げられた判定値が書き込まれた状態で管理装置1の電源がOFFされる。この場合、移動量の切捨てと切り上げが1回ずつ行われたため、2回目の管理装置1の電源OFF後に判定値から演算される可動子の総移動量3mは、真の総移動量2.9225に極めて近い値となる。
【0052】
管理装置1の電源のON/OFFを繰り返したときにおける単位値の1/2の初期値導入の効果を、図8を参照しながら説明する。図8は、1/2の初期値を導入した場合における真の移動量と判定値との関係を示す表である。図5の表と同様に、最右欄の丸数字は、判定値が書き込まれるEEPROM12のアドレスを参考的に示している。また、表外の「ON」は管理装置1の電源投入による稼動を、「OFF」は管理装置1の電源遮断による稼動終了を示していて、(a)〜(d)にわたって四回、電源のON,OFFを繰り返すものとする。
【0053】
図8の例では、初回は、(a)に示すように、累積値が8.9909mになったときに電源がOFFにされたものとする。このとき累積値が8.5007mになったときに設定された「9」がEEPROM12に書き込まれた最新の判定値である。このため判定値「9」が設定された後、累積値が9.0000に達する前に電源がOFFされているにもかかわらず、判定値「9」が書き込まれ、つまり累積値が切り上げされて判定値が設定されて電源がOFFされる。判定値から演算される総移動量は、真の総移動量(8.9909m)の小数点以下を切り上げた値となる。
【0054】
次回電源ON時には、累積値は初期化されて「0」から開始されるため、電源ON後、累積値が0.5045となり最初に評価値が単位値(1m)分増加、換言すれば、累積値が0.5m分増加する(すなわち、0.5045+0.5=1.0045mを越える)と、判定値「10」が設定されてEEPROM12のアドレス10に書き込まれる。
【0055】
そして、(b)に示すように、累積値が2.5011m(真の総移動量が11.4920)になり、EEPROM12に判定値「12」が書き込まれた後、累積値が3.4948mとなり、真の総移動量が12.4857mになったときに電源がOFFされたものとする。この場合累積値「2.5011m」の時に判定値が3回増加して「12」が書き込まれ、その後累積値が3.0000mを越えているにもかかわらず、判定値は「12」のままであるため、つまり累積値が切り捨てされて判定値が設定されて電源OFFされる。判定値から演算される総移動量は、真の総移動量(12.4857m)の小数点以下を切り捨てた値となる。
【0056】
このようにして、以後、(c),(d)と電源のON,OFFを繰り返すと、(c)の場合は電源OFFの際、前記のように累積値を切り上げた状態で判定値が設定され、判定値から演算される総移動量が、真の総移動量(121.8943m)の小数点以下を切り上げた値となる。(d)の場合は、電源OFFの際、累積値を前記のように切り捨てた状態で判定値が設定され、判定値から演算される総移動量「126m」が、真の総移動量(126.3895m)の小数点以下を切り捨てた値となり、前記のように累積値を四捨五入して判定値を設定することによって、両者間の乖離量が初期値を設けない場合よりも僅少化している。
【0057】
測長器2の不使用等に伴う管理装置1の電源OFFのタイミングは一定ではないが、管理装置1の電源ON/OFFの切換え回数が増加するに伴い、統計的に前記四捨五入によって切り捨てられる移動量の累積分と切り上げられる移動量の累積分とが近づくと考えられ、これにより判定値から演算される可動子2aの総移動量が、真の総移動量に近づくと考えられる。
【0058】
[単位値と同値の初期値導入例]
次に、単位値と同値の初期値を累積値に加算した場合について、図9及び図10を参照しつつ説明する。
図9及び図10に示す例では、単位値が1mのときにこの単位値と同値である初期値1mと、単位値が10mのときにこの単位値と同値の初期値10mと、単位値が100mのときにこの単位値と同値の初期値100mとを用意し、単位値の変更に応じて対応する初期値を繰上げ設定部104に設定して、評価値を設定し、この評価値に基づいて判定値を決定するようにしている。
【0059】
図9に示すように、電源ON時の移動量及び累積値は0であるが、初期値「1(m)」を導入することで、評価値は「1(m)」となる。この実施形態では、評価値の増加分が単位値を越えたときに、評価値が単位値分増加するものとしている。そのため、電源ON時には評価値は「1(m)」でも判定値の設定と書き込みは行われないが、可動子2aが移動すると、ただちに判定値「1」が設定されてEEPROM12に書き込まれる。図9の例では、電源ON直後に累積値が0.0176mになったときに、評価値1.0176が設定され、判定値「1」がEEPROM12に書き込まれる。
【0060】
累積値が「0.9989(m)」から「1.0021(m)」になると、この累積値に初期値1(m)を加えた評価値が「1.9989」から「2.0021」になるので、このときに、判定値「2」が設定されてEEPROM12に書き込まれる。また、評価値が「2.9978」から「3.005」になったときに、判定値「3」が設定されて、EEPROM12に書き込まれる。以後、初期値を導入しない場合と同様に、累積値に初期値1を加算した評価値が単位値「1(m)」分増加するごとに、判定値が設定されて、EEPROM12に書き込まれる。
【0061】
そして、電源ON後の評価値が、最初の基準値である90mを越えると、つまり、図10に示すように、評価値が「89.9944」から「90.0065」になると、単位値が「1(m)」から「10(m)」に変更されるとともに初期値が1(m)から10(m)に変更され、初期値を導入しない場合と同様に、累積値に初期値10(m)を加えた評価値が単位値「10(m)」分増加するごとに判定値が設定されてEEPROM12に書き込まれる。例えば、図10に示す例では、評価値が「99.9924」から「100.0018」になったときに、判定値「100」が設定されてEEPROM12に書き込まれる。
【0062】
さらに、図示はしないが、評価値が次の基準値である900mを越えると、単位値が10mから100mに変更されるとともに初期値も10(m)から100(m)に変更され、以後、累積値に初期値100(m)を加えた評価値が単位値「100(m)」分増加するごとに、初期値を導入しない場合と同様に、判定値が設定されて、EEPROM12に書き込まれる。
【0063】
この場合、上記のように管理装置1の電源ON後、累積値が少しでも増加すると、判定値が増加する。このため管理装置1の電源ONからOFFまでの間の累積値を、単位値の桁数の一桁下の桁で切り上げして判定値が設定される。例えば、図9は、管理装置1の初回電源ONからOFFまでの間では、前記のように判定値が「1」,「2」,「3」と設定され、累積値が2.0103で電源がOFFされているため、0.0103が切り上げられた判定値「3」が書き込まれた状態で管理装置1の電源がOFFされる。
【0064】
また、管理装置1の2回目の電源ONの期間では、累積値が0から増加した0.0133に到達した時点、単位値1を越えた1.0018に到達した時点で、判定値がそれぞれ1ずつ増加し、例えば累積値が1.0038の時に電源がOFFされるとすると、0.0038が切り上げられた判定値「5」が書き込まれた状態で管理装置1の電源がOFFされる。
この場合2回目の管理装置1の電源OFF後に判定値から演算される可動子の総移動量5mとなる。この値は真の総移動量3.0141に対して比較的乖離が大きいが、判定値から演算される可動子の総移動量が必ず真の総移動量より大きな値となる。
【0065】
管理装置1の電源のON/OFFを繰り返したときにおける単位値と同値の初期値導入の効果を、図11を参照しながら説明する。図11は、単位値と同値の初期値を導入した場合における真の移動量と判定値との関係を示す表である。図5の表と同様に、最右欄の丸数字は、判定値が書き込まれるEEPROM12のアドレスを参考的に示している。また、表外の「ON」は管理装置1の電源投入による稼動を、「OFF」は電源遮断による稼動終了を示していて、(a)〜(d)にわたって四回、電源のON,OFFを繰り返すものとする。
【0066】
図11の例では、初回は、(a)に示すように、累積値が8.8807mになったときに電源がOFFにされたものとする。このとき累積値が8.0045mになったときに設定された「9」がEEPROM12に書き込まれた最新の判定値である。判定値「9」が設定された後、判定値が単位値分増加する前に電源がOFFされているため、判定値「9」が設定された後の累積値の増加分0.8807mが切り上げられて、電源がOFFされる。判定値から演算される総移動量は、真の総移動量(8.8807m)の小数点以下を切り上げた値となる。
【0067】
次回電源ON時には、累積値は初期化されて「0」から開始されるため、電源ONの直後、可動子2aの移動により、累積値が0.0133となると、ただちに判定値「10」が設定されてEEPROM12のアドレス10に書き込まれる。図11の例では、(b)に示すように、真の総移動量が11.7817mになったときに、電源がOFFされたものとする。
このようにして、以後、(c),(d)と電源のON,OFFを繰り返すと、前記のように切り上げられる累積値が増加するため、(d)に示すように、真の総移動量124m余りに対し、判定値から演算される総移動量は「126m」であり、判定値から演算される可動子の総移動量が真の総移動量より大きな値となる。
単位値と同値の初期値を導入することによって、可動子2aの真の総移動量に比較して大きくなる数値(判定値から演算される可動子2aの総移動量)により、測長器側のメンテナンス等を早めに行うことが可能となる。
【0068】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記の説明では、電源ON時の単位値は常に1から始まるものとして説明したが、EEPROMに前回の最新の単位値(例えば単位値10)を記憶させておき、次回電源をONしたときには当該最新の単位値(10)で判定値をEEPROMに書き込んでいくように構成することも可能である。
【0069】
また、上記の説明では、評価値が判定値設定及び単位値変更の基準となっているが、判定値設定と単位値変更で基準を変更するようにしてもよい。例えば、判定値設定は評価値を基準に行い、単位値の変更は累積値を基準に行うようにしてもよい。
【0070】
累積値に基づき単位値を変更する場合は、例えば管理装置1の電源ONからOFFまでの間に、累積値が90mを越えると単位値を「1(m)」から「10(m)」に、累積値が900mを越えると単位値を「10(m)」から「100(m)」に変更することが考えられる。その他は前記のように判定値に基づき単位値を変更する場合と同一とすることができる。
ただし累積値に基づき単位値を変更する場合も判定値に基づき単位値を変更する場合も累積値が同じ値であれば、判定値は同一に設定されてEEPROM12に書き込まれる。
【0071】
さらに、上記の説明では、単位値は1m,10m,100mの三種類が用意されていて、基準値90mまでは単位値1mが、基準値900mまでは単位値10mが、基準値900超では単位値100mが選択されるものとして説明したが、単位値及び基準値は測長器によって計測可能な最小値よりも大きな値であればよく、上記以外のものであってもよい。また、測長器2の一回の使用時(管理装置1の一度のON/OFF)での可動子2aの総移動量が比較的小さいような場合は、一種類の単位値のみを準備すれば十分である。
【0072】
また、初期値も、単位値と同値又は単位値の1/2の場合を例に挙げて説明したが、これ以外であってもよい。さらに、また、上記の説明では変化値を可動子2aの移動量として説明したが、変化値を可動子2aの変位回数とすることもできる。この場合、可動子2aの変位回数が単位値分増加するごとに判定値を設定して、書き換え可能限界に容易に達することなくEEPROM12に記憶させることができ、判定値によって前記変位回数を保存することによって、測長器2の管理を行うことができる。なお、単位値の1/2の初期値を導入するか、単位値と同値の初期値を導入するか、或いはこれ以外の初期値を導入するかは、測長器の使用頻度や可動子の移動量等、使用環境に応じて適宜に決定するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、被計測物に可動子を接触させ、この可動子の変位を検出する変位検出形の測長器であれば広範に適用が可能で、可動子が軸線方向に進退移動するものであってもよいし、可動子が支点を中心に揺動するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の管理装置の一例にかかり、その構成を説明するブロック図である。
【図2】図1の管理装置の作動例を説明するフローチャートである。
【図3】可動子の現在位置、可動子の移動量,移動量の累積値,単位値及び可動子の真の移動量と判定値との関係を説明するための表である。
【図4】図3と同様の表にかかり、単位値の変更を伴う場合の例を説明するための表である。
【図5】初期値を導入しない場合における真の総移動量と判定値とのずれを説明するための表である。
【図6】初期値1/2を導入した場合における可動子の現在位置、可動子の移動量,移動量の累積値,単位値及び可動子の真の移動量と判定値との関係を説明するための表である。
【図7】図6と同様の表にかかり、単位値の変更を伴う場合の例を説明するための表である。
【図8】初期値1/2を導入した場合における真の総移動量と判定値とのずれを説明するための表である。
【図9】初期値1を導入した場合における可動子の現在位置、可動子の移動量,移動量の累積値,単位値及び可動子の真の移動量と判定値との関係を説明するための表である。
【図10】図9と同様の表にかかり、単位値の変更を伴う場合の例を説明するための表である。
【図11】初期値1を導入した場合における真の総移動量と判定値とのずれを説明するための表である。
【符号の説明】
【0075】
1 管理装置
10 制御部(CPU)
100 変換部
101 累積値演算部
102 RAM入出力部
103 評価値比較部
104 繰上げ設定部
105 EEPROM制御部
12 EEPROM
13 RAM
14 ディスプレイ
2a 可動子
2b 測長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測物に接触して移動する可動子の移動量に応じた計測信号を出力する測長器に備えられ、この測長器の管理を行う管理装置であって、
前記計測信号に基づいて前記可動子の移動による変化値を演算する変化値演算部と、
この変化値演算部によって得られた前記変化値を累積する累積値演算部と、
この累積値演算部によって得られた値に基づいて所定の評価値を設定し、この評価値が、予め設定された単位値分だけ増加するごとに、所定の判定値を設定して記憶手段に書き込むように指令する制御部とを有し、
前記記憶手段は、前記管理装置の稼動及び非稼動とは無関係に、前記判定値の記憶を継続するものであること、
を特徴とする測長器の管理装置。
【請求項2】
前記評価値が、前記変化値を累積した累積値又はこの累積値に所定の初期値を加算した値であることを特徴とする請求項1に記載の測長器の管理装置。
【請求項3】
前記変化値が前記可動子の移動量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の測長器の管理装置。
【請求項4】
前記変化値演算部が、予め設定された時間ごとに前記可動子の位置を順次検出し、前回検出された位置と今回検出された位置との差の絶対値を演算して可動子の移動量とすることを特徴とする請求項3に記載の測長器の管理装置。
【請求項5】
前記変化値を累積した累積値又は前記評価値が予め設定された値になったときに、前記単位値を変更することを特徴とする請求項1〜4に記載の測長器の管理装置。
【請求項6】
前記初期値が、前記単位値の1/2であるか、又は、前記単位値と同じ値であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の測長器の管理装置。
【請求項7】
前記記憶手段が、前記判定値を記憶するための所定の記憶領域を有するとともに、前記判定値を前記記憶手段の前記記憶領域に順次書き込む際に、書き込み可能な全ての領域に前記判定値を書き込んだ後、順次新しい判定値を既に書き込まれた判定値に上書きするように指令するか、又は、前記記憶領域に書き込まれた判定値を一括消去して判定値の書き込みを継続するように指令する書き込み制御部をさらに設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の測長器の管理装置。
【請求項8】
前記記憶手段に記憶される前記判定値が予め設定された値に達したときに、所定の報知を行う報知手段を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の測長器の管理装置。
【請求項9】
被計測物に接触して移動する可動子の移動量に応じた計測信号を出力する測長器の管理を行う管理方法であって、
前記計測信号に基づいて前記可動子の移動による変化値を演算するとともに、前記変化値を累積するステップと、
前記変化値を累積して得られた値に基づいて所定の評価値を設定し、この評価値が、予め設定された単位値分だけ増加するごとに、所定の判定値を設定して前記記憶手段に書き込むステップとを有し、
前記記憶手段は、前記各ステップを実行する装置の稼動及び非稼動とは無関係に、前記判定値の記憶を継続すること、
を特徴とする測長器における管理方法。
【請求項10】
前記評価値が、前記変化値を累積した累積値又はこの累積値に所定の初期値を加算した値であることを特徴とする請求項9に記載の測長器の管理方法。
【請求項11】
前記変化値が前記可動子の移動量であることを特徴とする請求項9又は10に記載の測長器の管理方法。
【請求項12】
予め設定された時間ごとに前記可動子の位置を順次検出し、前回検出された位置と今回検出された位置との差の絶対値を演算して可動子の移動量とすることを特徴とする請求項11に記載の測長器の管理方法。
【請求項13】
前記変化値を累積した累積値又は前記評価値が予め設定された値になったときに、前記単位値を変更することを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の測長器の管理方法。
【請求項14】
前記初期値が、前記単位値の1/2であるか、又は、前記単位値と同じ値であることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の測長器の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−8429(P2009−8429A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167666(P2007−167666)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】