説明

湯水混合水栓装置

【課題】全体の高さが低く、コンパクトな湯水混合水栓装置を提供する。
【解決手段】本発明は、単一の操作レバーを備えた湯水混合水栓装置(1)であって、操作ロッド(24)を備えた湯水混合バルブユニット(8)と、これを受け入れるバルブユニット収納凹部が上端に形成された水栓本体部(2)と、この水栓本体部の上端から概ね水平方向に延びる吐水部(6)と、操作ロッドを間に受け入れる対向面が形成され、操作ロッドと結合される取付部、及び把持部を備えた操作レバー(10)と、を有し、操作ロッドには、固定用ねじ(26)が螺合されており、第1対向面(10g)には、固定用ねじを締める工具を挿入する取付部孔が形成されており、固定用ねじを締めることにより操作ロッドの第2の側面(24d)は、第1対向面に押し付けられ、操作ロッドと取付部が結合されることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水混合水栓装置に係わり、特に、単一の操作レバーにより、給水・給湯管より供給された湯及び水の混合比を変化させ、吐水流量を調整する湯水混合水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平8−42724号公報(特許文献1)には、シングルレバー式水栓が記載されている。図10は、このような従来の湯水混合水栓装置であるシングルレバー式水栓を一部破断して示す側面図である。図10に示すように、従来のシングルレバー式水栓200は、鉛直に延びる水栓本体部202と、その中間部から斜め上方に延びる、吐水口204が設けられた吐水部206と、水栓本体部202に内蔵された湯水混合バルブ208と、この湯水混合バルブ208を操作するための操作レバー210と、を有する。また、シングルレバー式水栓200は、操作レバー210を水平方向に向けられた軸線を中心に上下方向に回動させることにより吐水流量を調整し、鉛直方向に向けられた軸線を中心に回動させることにより湯と水の混合比を調整するように構成されている。
【0003】
さらに、従来のシングルレバー式水栓200では、水栓本体部202の下方から供給された湯及び水が、水栓本体部202の上端部に配置された湯水混合バルブ208に流入する。この湯水混合バルブ208の中で混合された湯水は、湯水混合バルブ208の底面に設けられた流出口(図示せず)から流出し、湯水混合バルブ208よりも下方から斜め上方へ延びる吐水部206を通って吐水口204から吐水される。
【0004】
【特許文献1】特開平8−42724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開平8−42724号公報に記載された従来の構造のシングルレバー式水栓200では、その全高が高いため、洗面台にシングルレバー式水栓を設置した場合に、その背面側に設置された鏡を見る際に邪魔になるという問題がある。ここで、吐水口204が設けられた吐水部206を配置する高さは、その機能上、必要な高さを確保する必要があるが、水栓本体部202の、吐水部206の基端よりも上方に突出した部分や、操作レバー210の高さを極力低くすることが求められている。
【0006】
しかしながら、従来の構造のシングルレバー式水栓200では、吐水部206基端よりも上方に湯水混合バルブ208を配置せざるを得ず、シングルレバー式水栓200の全高を低くすることが難しいと言う問題がある。また、操作レバー210を小型化して、その高さを極力低く抑えることも望まれるが、操作レバー210は使用者による操作力が作用する部分であるため、小型化すると操作レバー210と湯水混合バルブ208の結合部の必要な強度を確保するのが難しいと言う問題がある。
【0007】
従って、本発明は、全体の高さが低く、コンパクトな湯水混合水栓装置を提供することを目的としている。
また、本発明は、小型でありながら操作レバーの結合部分に十分な強度を確保することができる湯水混合水栓装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、単一の操作レバーにより、供給された湯及び水の混合比を変化させ、吐水流量を調整する湯水混合水栓装置であって、第1軸線を中心に回動させることにより湯及び水の混合比を変化させ、第1軸線とは異なる第2軸線を中心に回動させることにより混合された湯及び水の吐水流量を変化させることができる操作ロッドを備えた湯水混合バルブユニットと、この湯水混合バルブユニットを受け入れるバルブユニット収納凹部が上端に形成され、湯及び水を湯水混合バルブユニットに夫々導く給水路を内蔵した水栓本体部と、この水栓本体部の上端から概ね水平方向に延び、混合された湯及び水が吐水される吐水口が形成された吐水部と、操作ロッドを間に受け入れる対向面が形成され、操作ロッドと結合される取付部、及びこの取付部から延び、使用者によって把持される把持部を備えた操作レバーと、を有し、操作ロッドには、固定用ねじが螺合された雌ねじが形成されており、対向面のうちの第1対向面には、固定用ねじを回転させる工具を挿入するための取付部孔が形成されており、固定用ねじを締めることにより、固定用ねじは、操作ロッドの第1の側面から突出して第1対向面の反対側の第2対向面に当接されると共に、第1の側面の反対側の第2の側面は、第1対向面に押し付けられ、操作ロッドと取付部が結合されることを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明によれば、吐水部が水栓本体部の上端から概ね水平方向に延びているので、湯水混合水栓装置全体の高さを低く抑えることができる。また、このように構成された本発明によれば、固定用ねじが、操作ロッドの第1の側面から突出して第1対向面の反対側の第2対向面に当接されると共に、第1の側面の反対側の第2の側面は、第1対向面に押し付けられ、操作ロッドと取付部が結合されるので、固定用ねじ、操作ロッド、操作レバーの取付部を小型化しても、結合部分の十分な強度を確保することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、把持部は、取付部から延び、且つ止水時において概ね水平方向に向けられる基端部と、この基端部から屈曲して斜め上方に延びる遠位部と、を有する。
【0011】
このように構成された本発明によれば、使用者によって把持される遠位部は、基端部に対して屈曲されているので、互いに押し付け合っている第1対向面及び第2の側面が向けられている方向と、遠位部に作用する操作力の方向が相違し、操作レバーを操作ロッドから引き抜く方向の操作力の成分を小さくすることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、把持部は、過大な操作力を受けたとき弾性変形可能な変形促進部を備えている。
このように構成された本発明によれば、使用者によって、把持部に過大な力が加えられたとき、変形促進部が弾性変形され、操作レバーと操作ロッドの結合部分に過大な力が作用するのを防止することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、遠位部は、その長手方向軸線が、第2軸線上又はその近傍を通るように向けられている。
このように構成された本発明によれば、操作レバーの遠位部は、ほぼ第2軸線を中心に回動されるので、回動に伴って平行移動が発生することなく、良好な使用感を得ることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、第1対向面は、操作レバーの把持部が設けられた側に配置されている。
このように構成された本発明によれば、取付部の第1対向面と操作ロッドの第2の側面の面接触している部分が、操作力の支点となるため、操作レバーと操作ロッドの結合強度を高くすることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、操作レバーは、さらに、取付部を取り囲むように形成されたスカート部を有し、このスカート部には、固定用ねじを回転させる工具を挿入するためのスカート部孔が、第1対向面に形成された取付部孔と整合する位置に形成されている。
【0016】
このように構成された本発明によれば、スカート部に設けられたスカート部孔が、取付部孔を介して工具を挿入して固定用ねじを回転させる際のガイドとして作用するので、工具によって操作レバーを傷つけたり、固定用ねじの頭を損傷したりするのを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、全体の高さが低く、コンパクトな湯水混合水栓装置を得ることができる。
また、本発明の湯水混合水栓装置によれば、小型でありながら操作レバーの結合部分に十分な強度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による湯水混合水栓装置を説明する。
図1は本発明の実施形態による湯水混合水栓装置全体を一部破断して示す斜視図である。また、図2は本実施形態による湯水混合水栓装置の分解斜視断面図である。さらに、図3は本実施形態の湯水混合水栓装置の止水状態における側面断面図であり、図4は吐水状態における斜視断面図である。さらに、図5乃至8は夫々、水栓本体部の平面断面図である。また、図9は、操作レバーの斜視断面図である。
【0019】
まず、図1に示すように、本発明の実施形態による湯水混合水栓装置1は、ほぼ鉛直方向に延びる水栓本体部2と、この水栓本体部2の上端から水平方向に延び、先端に吐水口4が設けられた吐水部6と、を有する。さらに、湯水混合水栓装置1は、湯と水を適宜混合し、吐水流量を調節する湯水混合バルブユニット8と、この湯水混合バルブユニット8を操作するために水栓本体2上部に取付けられた操作レバー10と、を有する。
【0020】
本実施形態の湯水混合水栓装置1は、操作レバー10を左右方向に回動させることにより、即ち、第1軸線である鉛直軸線を中心に操作レバー10を回動させることにより、湯用給水管12及び水用給水管14から夫々供給された湯と水の混合比を変化させるように構成されている。また、湯水混合水栓装置1は、操作レバー10を上下方向に回動させることにより、即ち、第2軸線である水平軸線を中心に操作レバー10を回動させることにより、湯と水が混合された湯水の吐水流量を調節し、吐水部6の吐水口4から吐水させるように構成されている。
【0021】
次に、図2に示すように、水栓本体部2の背面側には、湯水混合水栓装置1が設置される洗面台のボウル(図示せず)の排水栓(図示せず)を開閉操作するための排水栓レバー16が設けられており、この排水栓レバー16により、排水栓の開閉機構16aを操作するようになっている。
【0022】
また、図2に示すように、湯水混合水栓装置1は、湯水混合バルブユニット8を固定するための環状のバルブ押え部材18と、このバルブ押え部材18の上に配置されるスリップリング20と、このスリップリング20の上に配置されるカバーリング22と、を有する。
【0023】
次に、図1乃至9を参照して、各部品の構成を詳細に説明する。
水栓本体部2は、主に図1及び2に示すように、概ね四角柱状の形状を有し、ほぼ鉛直方向に延びるように設置される。また、水栓本体部2の上端には、湯水混合バルブユニット8を収納するためのバルブユニット収納凹部2aが設けられている。さらに、水栓本体部2の下端には、湯用給水管12及び水用給水管14が接続されており、供給された湯及び水は、水栓本体部2内に形成された2本の給水路2b(湯用のみ図2に図示)によって湯水混合バルブユニット8に導かれるように構成されている。
【0024】
吐水部6は、主に図1及び2に示すように、長方形断面の管状の形状を有し、水栓本体部2の上端からほぼ水平方向に延びるように、水栓本体部2と一体に形成されている。吐水部6内の吐水部通水路6aは、水栓本体部2のバルブユニット収納凹部2aと連通するように構成されている。また、吐水部6の上面は、水栓本体部2の上端面と面一に、即ち、吐水部6の上面と水栓本体部2の上端面が同一の平面を構成するように構成されている。さらに、吐水部6の先端部の下面には、吐水口4が形成されており、吐水部6内部の吐水部通水路6aを通って導かれた湯水が吐水されるように構成されている。吐水口4には、整流用のキャップ4aが取付けられている。
【0025】
次に、図5乃至8を参照して、水栓本体部2及び吐水部6の中に形成されている通水路の形状を説明する。図5乃至8は、夫々、図3のv−v線、vi−vi線、vii−vii線、viii−viii線に沿う平面断面図である(ただし、水栓本体部2内に配置された湯水混合バルブユニット8は、図示を簡略化するため断面図にされていない。)。
図5に示すように、水栓本体部2に形成されたバルブユニット収納凹部2aは、その下部においては、概ね正方形の断面形状を有する。湯水混合バルブユニット8内で混合された湯水は、その側面に設けられた流出口28(図3、4)から流出し、湯水混合バルブユニット8とバルブユニット収納凹部2aの間に流入する。
【0026】
さらに、図6に示すように、バルブユニット収納凹部2aのほぼ中間部には、円環状の突起である荷重支持部2d(図3及び4にも図示)が形成されている。この荷重支持部2dが湯水混合バルブユニット8の側面に当接することによって、湯水混合バルブユニット8の横方向の動きが拘束される。湯水混合バルブユニット8から流出した湯水は、荷重支持部2dを切り欠くことによって形成された通路2eを通って上昇する。この通路2eは、湯水混合バルブユニット8の円筒状の側面と、バルブユニット収納凹部2aの正面側の2つの隅部との間に形成され、概ね三角形断面になっている。
【0027】
さらに、図7に示すように、バルブユニット収納凹部2aは、荷重支持部2dよりも上方では、円形断面となるように形成されている。図6の通路2eを通って上昇した湯水は、水栓本体部2から吐水部6に移行する部分において、図7に示す2本に分かれた移行部通水路6bを通って上昇する。さらに、この2本の移行部通水路6bを通って上昇した湯水は、図8に示すように、各移行部通水路6bに連通した吐水部6の吐水部通水路6aに流入し、吐水口4から流出する。
【0028】
一方、バルブ押え部材18は、主に図2に示すように、直径の小さい円環状の上側環部18aと、直径の大きい円環状の下側環部18bから構成されている。下側環部18bの下端外周には、雄ねじが形成されており、バルブユニット収納凹部2aの内壁面に形成された雌ねじ2fと螺合されるように構成されている。湯水混合バルブユニット8をバルブユニット収納凹部2aに受入れた状態で、下側環部18bの雄ねじとバルブユニット収納凹部2aの雌ねじ2fを螺合させることにより、バルブ押え部材18が湯水混合バルブユニット8の肩部8aを下方に押圧し、湯水混合バルブユニット8が水栓本体部2に固定される。湯水混合バルブユニット8が固定された状態では、湯水混合バルブユニット8の上部が、バルブ押え部材18の上側環部18aに受入れられ、湯水混合バルブユニット8の操作ロッド24が上側環部18aから上方に突出する。また、下側環部18bの上部外周には、Oリング18cが取付けられており、バルブユニット収納凹部2aの水密性を確保している。
【0029】
スリップリング20は、外周が上方に折り曲げられた円環状の部材であり、バルブ押え部材18の上側環部18aを取り囲むように、下側環部18bの上に配置される。また、スリップリング20の外周には、上方に向けて延びる片持ち梁状の位置決め舌部20aが形成されており(図2)、この位置決め舌部20aは、スリップリング20の上方に折り曲げられた部分よりも上方に突出するように形成されている。また、位置決め舌部20aの外側面には、突起20bが形成されている(図1)。この突起20bが、バルブユニット収納凹部2aの内壁面に形成された位置決め凹部2c(図2)に受入れられることにより、スリップリング20の回転位置が位置決めされる。なお、スリップリング20は、表面の滑らかな樹脂で形成されており、スリップリング20に当接した部材との間の摩擦が小さくなるように構成されている。
【0030】
操作レバー10は、図9に示すように、使用者によって把持されるプレート状の把持部10aと、湯水混合バルブユニット8の操作ロッド24に取付けられる取付部10bと、この取付部10bの周囲に形成された半球状のスカート部10cと、を有する。さらに、把持部10aは、止水時において、ほぼ水平方向に向けられる基端部10dと、この基端部10dから屈曲して斜め上方に向けられている遠位部10eから構成されている。この遠位部10eは、その長手方向軸線Lと操作ロッド24の上端部の軸線との間の角θが、90゜よりも小さい鋭角となるように屈曲されている(図3参照)。また、遠位部10eは、その長手方向軸線Lが操作ロッド24の支軸24bの近傍を通るような角度で屈曲されている(図3参照)。
【0031】
また、取付部10bには、操作ロッド24を受入れる四角柱状の凹部10fが形成されている。この凹部10fの内壁の一組の対向面は、第1対向面10gと第2対向面10hから構成されている。第1対向面10gには、操作ロッド24に設けられた雌ねじ24a(図2)に螺合された固定用ねじである芋ねじ26を締める工具を通すための小孔である取付部孔10iが形成されている。さらに、スカート部10cの正面側には取付部孔10iと整合した小孔であるスカート部孔10jが形成されており、芋ねじ26を締める工具を外部から挿入することを可能としている。このスカート部孔10jは、把持部10aの下側の小さい孔として形成されているので外観を損なうことがなく、また、芋ねじ26を締めるために工具を挿入する際に、工具をガイドする役割を果たす。
【0032】
次に、主に図3及び図9を参照して、操作レバー10の操作ロッド24への取付構造を説明する。
図3に示すように、操作ロッド24の上端部は、操作レバー10の取付部10bに形成された凹部10fに受入れられている。この状態では、操作ロッド24の雌ねじ24aに予め螺合されている芋ねじ26は、操作レバー10のスカート部10cに設けられたスカート部孔10j、及び取付部10bに設けられた取付部孔10iと整合している。このため、スカート部孔10j、取付部孔10iを通して六角レンチ(図示せず)を挿入し、これを芋ねじ26の端部に形成された六角柱状の穴(図示せず)に係合させることにより、六角レンチで芋ねじ26を回転させることができる。回転させることにより、芋ねじ26は操作ロッド24の第1の側面24cから突出され、その先端が取付部10bの第2対向面10hに当接する。さらに芋ねじ26を締め込むと、芋ねじ26の先端は第2対向面10hに僅かに食い込み、第2対向面10hの反対側の第1対向面10gは、操作ロッド24の第2の側面24dに押し付けられる。この押圧力により、操作レバー10は操作ロッド24に固定される。
【0033】
一方、カバーリング22は、主に図2に示すように、上面が平坦に形成されたリング状の部材である。カバーリング22は、バルブユニット収納凹部2aの上端に嵌め込まれるように構成され、操作レバー10のスカート部10cの周囲に配置される。カバーリング22の下部円周上の1箇所には、スリップリング20の位置決め舌部20aを受入れる切欠部22aが形成されている。この切欠部22aが位置決め舌部20aを受入れるように、カバーリング22をバルブユニット収納凹部2aに嵌め込むことにより、カバーリング22の回転位置が位置決めされる。このように、カバーリング22はスリップリング20に対して位置決めされ、また、上述したように、スリップリング20は水栓本体部2に対して位置決めされているので、結局、カバーリング22の回転位置は、水栓本体部2に対して位置決めされる。
【0034】
さらに、カバーリング22の外周には、Oリング22bが嵌め込まれており、このOリング22bを押し潰すようにカバーリング22を嵌め込むことによって、カバーリング22はバルブユニット収納凹部2aから容易に外れないように嵌め込まれる。また、カバーリング22の下側内周には、テーパ面22cが形成されている。操作レバー10のスカート部10cが、このテーパ面22cと摺動することにより、操作レバー10の動きは案内される。
【0035】
次に、主に図3及び4を参照して、湯水混合バルブユニット8の構成を説明する。湯水混合バルブユニット8は、操作ロッド24と、カバー30と、このカバー30の中に収納された固定ディスク32と、この固定ディスク32に対して可動な可動ディスク34と、を有する。
【0036】
操作ロッド24は、水平方向に向けられた支軸24bを中心に回動可能に構成されている。また、この支軸24bは、カバー30に対して、湯水混合バルブユニット8の中心を通る鉛直方向軸線を中心に回動可能に構成されている。従って、操作ロッド24は、支軸24bを中心に回動可能であると同時に、鉛直方向軸線を中心に回動可能に支持されている。
【0037】
固定ディスク32は、3つの貫通孔32a、32bが形成された概ね円板状の部材であり、カバー30に対して固定されている。2つの貫通孔32b(1つのみ図示)は、水栓本体部2に設けられた2本の給水路2b(1本のみ図示)と連通するように構成されており、供給された湯及び水が2つの貫通孔32bに夫々流入するようになっている。
【0038】
可動ディスク34は、概ね円板状の部材であり、その上面には操作ロッド受入凹部34aが、下面には通水凹部34bが夫々形成されている。操作ロッド受入凹部34aは、操作ロッド24の下端部を受入れており、操作ロッド24が支軸24bを中心に回動されることにより、可動ディスク34が固定ディスク32に対して前後方向に移動されるように構成されている。また、操作ロッド24が鉛直方向軸線を中心に回動されると、これと係合している可動ディスク34も固定ディスク32に対して回動されるように構成されている。
【0039】
また、可動ディスク34の下面の通水凹部34bは、可動ディスク34が固定ディスク32に対して移動されたとき、固定ディスク32の2つの貫通孔32bを適宜開閉するような形状に構成されている。即ち、図3に示す可動ディスク34が最も後方に移動された状態では、2つの貫通孔32bは、可動ディスク34によって完全に閉鎖され、止水状態となる。この状態から、操作ロッド24を、支軸24bを中心に回動させ、可動ディスク34を前方に移動させると、固定ディスク32の2つの貫通孔32bと可動ディスク34の通水凹部34bが重なるようになる。この状態では、各貫通孔32bを通って流入した湯及び水は、通水凹部34bの中に流入して混合され、さらに流出口28から流出して吐水状態となる。図4に示す可動ディスク34を最も前方に移動させた状態では、各貫通孔32bは、最も開放された状態となり、吐水流量も最大になる。
【0040】
一方、操作ロッド24を、鉛直方向軸線を中心に回動させ、可動ディスク34を回動させた場合には、各貫通孔32bの開度が変化する。即ち、操作レバー10(操作ロッド24)を、図4におけるHの方向に回動させた場合には、湯用給水管12と連通する貫通孔32bの開度が小さくなり、水用給水管14と連通する他方の貫通孔32bの開度が大きくなる。これにより、水の流入量が減り、湯の流入量が増えるので、吐水される湯水の温度が高くなる。逆に、操作レバー10を、図4におけるCの方向に回動させた場合には、水の流入量が増え、湯の流入量が減るので、吐水される湯水の温度が低くなる。なお、図3に示すように、可動ディスク34が最も後方に移動されている場合には、操作ロッド24を、鉛直方向軸線を中心に回動させても各貫通孔32bは閉鎖されたままであり、止水状態が維持される。
【0041】
次に、本発明の実施形態による湯水混合水栓装置1の作用を説明する。まず、図3に示す止水状態においては、可動ディスク34が固定ディスク32に設けられた2つの貫通孔32bを閉鎖しているので、湯用給水管12及び水用給水管14を介して供給された水及び湯は、湯水混合バルブユニット8内に流入せず、止水状態になる。次に、操作レバー10(操作ロッド24)を、支軸24bを中心に上方に回動させると、可動ディスク34は前方に移動され、2つの貫通孔32bが開いて吐水状態となる。操作レバー10が湯水混合水栓装置1の正面に向けられている場合には、2つの貫通孔32bの開度はほぼ等しくなり、ほぼ同量の水及び湯が湯水混合バルブユニット8内に流入する。
【0042】
湯水混合バルブユニット8内に流入した水及び湯は、混合され、湯水混合バルブユニット8の側面の流出口28から流出される。流出口28から流出した湯水は、バルブユニット収納凹部2aに流入し、上昇する。バルブユニット収納凹部2a内を上昇した湯水は、湯水混合バルブユニット8の側面とバルブユニット収納凹部2aの壁面との間の2つの通路2e(図6)を通って更に上昇し、移行部通水路6b(図7)を経て吐水部通水路6aに流入する。吐水部通水路6aに流入した湯水は、吐水口4から吐水される。
【0043】
操作レバー10を上方に回動させていくと、そのスカート部10cの後端がスリップリング20の上面と当接し、それ以上操作レバー10を回動させることができなくなる。このため、操作ロッド24の過度の回動が規制され、操作ロッド24及び湯水混合バルブユニット8に過大な力が作用するのが防止される。また、使用者によって把持される操作レバー10の遠位部10eは、基端部10dに対して屈曲され、操作ロッド24の上端部の軸線に対して鋭角を為すように向けられている。このため、遠位部10eに対して直角に加えられる使用者による操作力の方向は、互いに押し付け合っている第1対向面10g及び第2の側面24dが向けられている方向とは異なり、操作レバー10を操作ロッド24から引き抜く方向の操作力の成分が小さくなる。
【0044】
一方、操作レバー10を右方向又は左方向に回動させると、流入する湯及び水の混合比が変化し、吐水される湯水の温度を調節することができる。また、スカート部10cの後端は、スリップリング20と当接されているので、これらの間に作用する摩擦力は小さく、操作レバー10を容易に左右方向に回動させることができる。
【0045】
逆に、操作レバー10を下方に回動させていくと、そのスカート部10cの前端がスリップリング20の上面と当接すると共に止水状態となり、それ以上操作レバー10を下方に回動させることができなくなる。このため、操作レバー10を下方に回動させた場合にも、操作ロッド24及び湯水混合バルブユニット8に過大な力が作用するのが防止される。
【0046】
本発明の実施形態の湯水混合水栓装置によれば、吐水部が水栓本体部の上端から概ね水平方向に延びているので、湯水混合水栓装置全体の高さを低く抑えることができる。また、本実施形態の湯水混合水栓装置によれば、芋ねじが、操作ロッドの第1の側面から突出して第1対向面の反対側の第2対向面に当接されると共に、第1の側面の反対側の第2の側面は、第1対向面に押し付けられ、操作ロッドと取付部が結合されるので、小型に構成した芋ねじ、操作ロッド、操作レバーの取付部によっても、十分な結合強度を確保することができる。
【0047】
また、本発明の実施形態の湯水混合水栓装置によれば、使用者によって把持される操作レバーの遠位部は、基端部に対して屈曲されており、操作ロッドの軸線に対して鋭角を為すように向けられているので、互いに押し付け合っている第1対向面及び第2の側面が向けられている方向と、遠位部に作用する操作力の方向が相違し、操作レバーを操作ロッドから引き抜く方向の操作力の成分を小さくすることができる。
【0048】
さらに、本実施形態の湯水混合水栓装置によれば、遠位部の長手方向軸線が、支軸上又はその近傍を通るように向けられているので、操作レバーの遠位部は、ほぼ支軸を中心に回動され、回動に伴って平行移動が発生することなく、良好な使用感を得ることができる。
【0049】
また、本実施形態の湯水混合水栓装置によれば、第1対向面は、操作レバーの把持部が設けられた側に配置されているので、取付部の第1対向面と操作ロッドの第2の側面の面接触している部分が、操作レバーを下方に回動させる操作力の支点となり、操作レバーと操作ロッドの結合強度を高くすることができる。
【0050】
さらに、本実施形態の湯水混合水栓装置によれば、スカート部に設けられたスカート部孔が、取付部孔を介して工具を挿入し、芋ねじを回転させる際のガイドとして作用するので、工具によって操作レバーを傷つけたり、芋ねじの頭を損傷したりするのを防止することができる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態では、湯水混合水栓装置の操作レバーの把持部は、屈曲されたプレート状の形状を有していたが、把持部の途中に弾性変形を起こしやすい変形促進部を形成することもできる。この変形促進部は、例えば、把持部の一部の肉厚を薄く形成し、又は把持部の一部を細く形成することによって、或いは、把持部の一部を弾性係数の小さい材料で形成することによって構成することができる。このように構成することにより、操作レバーに過大な操作力が加えられた際に変形促進部が変形し、操作ロッドに過大な力が作用したり、操作レバーと操作ロッドの取付部に過大な力が作用したりするのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態による湯水混合水栓装置全体を一部破断して示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による湯水混合水栓装置の分解斜視断面図である。
【図3】本発明の実施形態の湯水混合水栓装置の止水状態における側面断面図である。
【図4】本発明の実施形態の湯水混合水栓装置の吐水状態における斜視断面図である。
【図5】図3のv−v線に沿う平面断面図である。
【図6】図3のvi−vi線に沿う平面断面図である。
【図7】図3のvii−vii線に沿う平面断面図である。
【図8】図3のviii−viii線に沿う平面断面図である。
【図9】操作レバーの斜視断面図である。
【図10】従来のシングルレバー式水栓を一部破断して示す側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 湯水混合水栓装置
2 水栓本体部
2a バルブユニット収納凹部
2b 給水路
2c 位置決め凹部
2d 荷重支持部
2e 通路
2f 雌ねじ
4 吐水口
6 吐水部
6a 吐水部通水路
6b 移行部通水路
8 湯水混合バルブユニット
8a 肩部
10 操作レバー
10a 把持部
10b 取付部
10c スカート部
10d 基端部
10e 遠位部
10f 凹部
10g 第1対向面
10h 第2対向面
10i 取付部孔
10j スカート部孔
12 湯用給水管
14 水用給水管
16 排水栓レバー
16a 開閉機構
18 バルブ押え部材
18a 上側環部
18b 下側環部
18c Oリング
20 スリップリング
20a 位置決め舌部
20b 突起
22 カバーリング
22a 切欠部
22b Oリング
22c テーパ面
24 操作ロッド
24a 雌ねじ
24b 支軸
24c 第1の側面
24d 第2の側面
26 芋ねじ
28 流出口
30 カバー
32 固定ディスク
32a 貫通孔
32b 貫通孔
34 可動ディスク
34a 操作ロッド受入凹部
34b 通水凹部
200 従来のシングルレバー式水栓
202 水栓本体部
204 吐水口
206 吐水部
208 湯水混合バルブ
210 操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の操作レバーにより、供給された湯及び水の混合比を変化させ、吐水流量を調整する湯水混合水栓装置であって、
第1軸線を中心に回動させることにより湯及び水の混合比を変化させ、上記第1軸線とは異なる第2軸線を中心に回動させることにより混合された湯及び水の吐水流量を変化させることができる操作ロッドを備えた湯水混合バルブユニットと、
この湯水混合バルブユニットを受け入れるバルブユニット収納凹部が上端に形成され、湯及び水を上記湯水混合バルブユニットに夫々導く給水路を内蔵した水栓本体部と、
この水栓本体部の上端から概ね水平方向に延び、混合された湯及び水が吐水される吐水口が形成された吐水部と、
上記操作ロッドを間に受け入れる対向面が形成され、上記操作ロッドと結合される取付部、及びこの取付部から延び、使用者によって把持される把持部を備えた操作レバーと、を有し、
上記操作ロッドには、固定用ねじが螺合された雌ねじが形成されており、上記対向面のうちの第1対向面には、上記固定用ねじを回転させる工具を挿入するための取付部孔が形成されており、上記固定用ねじを締めることにより、上記固定用ねじは、上記操作ロッドの第1の側面から突出して上記第1対向面の反対側の第2対向面に当接されると共に、上記第1の側面の反対側の第2の側面は、上記第1対向面に押し付けられ、上記操作ロッドと上記取付部が結合されることを特徴とする湯水混合水栓装置。
【請求項2】
上記把持部が、上記取付部から延び、且つ止水時において概ね水平方向に向けられる基端部と、この基端部から屈曲して斜め上方に延びる遠位部と、を有する請求項1記載の湯水混合水栓装置。
【請求項3】
上記把持部が、過大な操作力を受けたとき弾性変形可能な変形促進部を備えている請求項1又は2記載の湯水混合水栓装置。
【請求項4】
上記遠位部は、その長手方向軸線が、上記第2軸線上又はその近傍を通るように向けられている請求項2又は3記載の湯水混合水栓装置。
【請求項5】
上記第1対向面が、上記操作レバーの上記把持部が設けられた側に配置されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の湯水混合水栓装置。
【請求項6】
上記操作レバーが、さらに、上記取付部を取り囲むように形成されたスカート部を有し、このスカート部には、上記固定用ねじを回転させる工具を挿入するためのスカート部孔が、上記第1対向面に形成された取付部孔と整合する位置に形成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の湯水混合水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−113316(P2007−113316A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307321(P2005−307321)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】