説明

湿度検出器

【課題】内部発熱の影響を受けることなく、被測定空間の相対湿度を精度よく検出する。
【解決手段】湿度検出器100内の天井側に第1の温度センサ5を設ける。湿度検出器100内の床側に第2の温度センサ4を設ける。第2の温度センサ4は湿度センサ3の近傍の温度を計測する周囲温度センサを兼ねる。第1の温度センサ5と第2の温度センサ4が計測する2地点間の温度差ΔTに基づいて内部発熱の度合いを特定し、この特定した内部発熱の度合いと湿度センサ3の近傍の温度(周囲温度)T0とに基づいて湿度補正係数α”(α”=α×α’)を特定する。この特定した温度補正係数α”を用いて計測相対湿度H1を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被測定空間の相対湿度を検出する湿度検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の湿度検出器として、計測した相対湿度を周囲温度によって補正する補正機能を備えた湿度検出器が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この補正機能を備えた湿度検出器では、例えば25℃の湿度の傾きを1とした時の周囲温度に対応する傾きαのテーブル値と、25℃の湿度のオフセットを0とした時の周囲温度に対応する切片βのテーブル値とを定め、内蔵された温度センサを用いて相対湿度の計測部の近傍の温度を周囲温度として計測する一方、その計測した周囲温度に応じた傾きαと切片βを読み出し、この読み出した傾きαおよび切片βを下記(1)式に代入して計測相対湿度を補正し、この補正した計測相対湿度(補正相対湿度)を相対湿度の検出値として出力するようにしている。
補正相対湿度=計測相対湿度×α+β ・・・・(1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−280767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、最近の湿度検出器は、マイクロコンピュータが搭載されており、電源回路やCPUなどの構成部品の発熱(内部発熱)により、相対湿度の計測部の周囲温度が実際の被測定空間の温度よりも高い値となり、この被測定空間との間の温度差が相対湿度の検出値に誤差を生じさせてしまう。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、内部発熱の影響を受けることなく、被測定空間の相対湿度を精度よく検出することが可能な湿度検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明に係る湿度検出器は、相対湿度を計測する相対湿度計測部と、この相対湿度計測部の近傍の温度を計測する温度計測部と、相対湿度計測部の計測相対湿度を温度計測部の計測温度に基づいて補正する補正演算部とを備えた湿度検出器において、補正演算部は、湿度検出器内の内部発熱の度合いを特定し、この特定した内部発熱の度合いと温度計測部の計測温度とに基づいて湿度補正係数を特定する湿度補正係数特定部と、湿度補正係数特定部によって特定された湿度補正係数に基づいて相対湿度計測部の計測相対湿度を補正する補正実行部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明では、湿度補正係数特定部において、湿度検出器内の内部発熱の度合いを特定し、この特定した内部発熱の度合いと温度計測部の計測温度とに基づいて湿度補正係数を特定する。この場合、湿度検出器内の内部発熱の度合いを特定する方式として、例えば、湿度検出器の予め定められた2地点間の温度差に基づいて内部発熱の度合いを特定する方式、手動で入力される設定情報に基づいて内部発熱の度合いを特定する方式、湿度検出器の予め定められた所定の地点の風速に基づいて内部発熱の度合いを特定する方式などが考えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、湿度検出器内の内部発熱の度合いを特定し、この特定した内部発熱の度合いと温度計測部の計測温度(相対湿度計測部の近傍の計測温度(周囲温度))とに基づいて湿度補正係数を特定し、この特定された湿度補正係数に基づいて相対湿度計測部の計測相対湿度を補正するようにしたので、内部発熱の度合いと相対湿度計測部の近傍の計測温度と湿度補正係数との関係を適切に定めておくことにより、内部発熱の影響を受けることなく、被測定空間の相対湿度を精度よく検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る湿度検出器の第1の実施の形態(実施の形態1)の外観を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1の湿度検出器のカバーを取り外した状態を示す図である。
【図3】実施の形態1の湿度検出器を被測定空間の壁面に取り付けた状態を示す図である。
【図4】実施の形態1の湿度検出器の要部の機能ブロック図である。
【図5】実施の形態1の湿度検出器の記憶部に格納されている基準テーブルおよび補助テーブルの内容を例示する図である。
【図6】実施の形態1の湿度検出器の補正演算部での処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】実施の形態2の湿度検出器のカバーを取り外した状態を示す図である。
【図8】実施の形態2の湿度検出器の要部の機能ブロック図である。
【図9】実施の形態2の湿度検出器の記憶部に格納されている基準テーブルおよび補助テーブルの内容を例示する図である。
【図10】実施の形態2の湿度検出器における周囲の風速・風向と設定値との関連を示す図である。
【図11】実施の形態2の湿度検出器の補正演算部での処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】実施の形態3の湿度検出器のカバーを取り外した状態を示す図である。
【図13】実施の形態3の湿度検出器の要部の機能ブロック図である。
【図14】実施の形態3の湿度検出器の記憶部に格納されている基準テーブルおよび補助テーブルの内容を例示する図である。
【図15】実施の形態3の湿度検出器の補正演算部での処理動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
〔実施の形態1:湿度検出器の2地点間の温度差に基づいて内部発熱の度合いを特定するタイプ〕
図1はこの発明に係る湿度検出器の第1の実施の形態(実施の形態1)の外観を示す斜視図であり、図2はこの湿度検出器のカバーを取り外した状態を示す図である。
【0013】
図1において、1はカバーであり、湿度検出器100の前面に取り付けられている。この湿度検出器100は、図3に示すように、被測定空間200の壁面201に取り付けられる。この壁面201への湿度検出器100の取り付け状態において、カバー1の天井側に位置する上面1−1および床側に位置する下面1−2には、開口1aおよび1bが形成されている。また、カバー1の左右の面1−3,1−4にも、開口1cおよび1dが形成されている。
【0014】
この例において、被測定空間200に対して設けられている空調機(図示せず)は、天井吹き出しタイプとされている。これにより、空調機から吹き出された調和空気は、カバー1の上面1−1の開口1aから湿度検出器100の内部に入り、カバー1の下面1−2の開口1bから抜け出る。
【0015】
湿度検出器100の内部には、図2に示されているようにプリント回路基板2が設けられており、このプリント回路基板2にマイクロコンピュータが搭載され、電源回路やCPUなどの構成部品が設けられている。
【0016】
また、プリント回路基板2の床側に位置する部分には、相対湿度計測部として湿度センサ3が設けられており、この湿度センサ3の近傍に第2の温度計測部兼周囲温度計測部として第2の温度センサ4が設けられている。また、プリント回路基板2の天井側に位置する部分には、第2の温度センサ4と対向する位置に、第1の温度計測部として第1の温度センサ5が設けられている。
【0017】
図4にこの湿度検出器100の要部の機能ブロック図を示す。この湿度検出器100は、メモリに格納されたプログラムに従ってマイクロコンピュータが実行する処理機能として、補正演算部6を有している。補正演算部6は、温度差算出部6−1と、湿度補正係数特定部6−2と、補正実行部6−3とを備えている。また、マイクロコンピュータがアクセスする記憶部7には、基準テーブルTA1と補助テーブルTA2とが格納されている。
【0018】
補正演算部6において、温度差算出部6−1は、第1の温度センサ5が検出する湿度検出器100の内部の天井側の温度(上部温度)を第1の温度T1として、第2の温度センサ4が検出する湿度検出器100の内部の床側の温度(下部温度)を第2の温度T2として入力し、この第1の温度T1と第2の温度T2との温度差ΔT(ΔT=T1−T2)を求める。
【0019】
補正演算部6において、湿度補正係数特定部6−2は、温度差算出部6−1からの第1の温度T1と第2の温度T2との温度差ΔTおよび第2の温度センサ4が検出する湿度センサ3の近傍の温度(周囲温度)を計測温度T0として入力し、記憶部7に格納されている基準テーブルTA1および補助テーブルTA2にアクセスすることによって、その時の温度差ΔTと計測温度T0とに応じた湿度補正係数α”(α”=α・α’)および切片βを特定する。
【0020】
補正演算部6において、補正実行部6−3は、湿度センサ3からの相対湿度の計測値を計測相対湿度H1として入力し、この計測相対湿度H1を湿度補正係数特定部6−2からの湿度補正係数α”および切片βで補正し、この補正した計測相対湿度を相対湿度の検出値として出力する。具体的には、下記の(2)式に湿度補正係数α”および切片βを代入して計測相対湿度H1を補正し、この補正した計測相対湿度(補正相対湿度)H2を相対湿度の検出値とする。
H2=H1×α”+β ・・・・(2)
【0021】
図5(a)に記憶部7に格納されている基準テーブルTA1を例示する。この基準テーブルTA1では、25℃の湿度の傾きを1とした時の周囲温度(計測温度T0)に対応する傾きα(基本湿度補正係数)のテーブル値と、25℃の湿度のオフセットを0とした時の周囲温度(計測温度T0)に対応する切片βのテーブル値とを定めている。
【0022】
図5(b)に記憶部7に格納されている補助テーブルTA2を例示する。この補助テーブルTA2では、第1の温度T1と第2の温度T2との温度差ΔTを複数の温度差範囲に区分し(この例では、6つに区分)、その温度差範囲の区分毎に周囲温度(計測温度T0)に対応する傾きαの調整係数α’を定めている。この調整係数α’は湿度検出器100を実環境に近い状態に置いて動作させ実験を繰り返すことによって定められた値である。なお、この補助テーブルTA2において、温度差範囲の区分が湿度検出器100内の内部発熱の度合いを示す。
【0023】
図6に補正演算部6での処理動作のフローチャートを示す。補正演算部6は、所定周期毎に(ステップS101のYES)、第2の温度センサ4からの計測温度(湿度センサ3の近傍の温度(周囲温度))T0、湿度センサ3からの計測相対湿度(相対湿度の計測値)H1、第1の温度センサ5からの第1の温度(上部温度)T1および第2の温度センサ4からの第2の温度(下部温度)T2を取り込む(ステップS102)。
【0024】
取り込まれた第1の温度T1および第2の温度T2は温度差算出部6−1に送られる。温度差算出部6−1は、第1の温度T1と第2の温度T2との温度差ΔTを算出し(ステップS103)、この算出した温度差ΔTを湿度補正係数特定部6−2へ送る。
【0025】
湿度補正係数特定部6−2は、記憶部7に格納されている基準テーブルTA1(図5(a))にアクセスし、第2の温度センサ4からの計測温度T0に応じた傾きαおよび切片βを読み出す(ステップS104)。また、記憶部7に格納されている補助テーブルTA2(図5(b))にアクセスし、温度差算出部6−1からの温度差ΔTが属する温度差範囲の区分を特定し、すなわち内部発熱の度合いを特定し、この特定した温度差範囲の区分における第2の温度センサ4からの計測温度T0に応じた調整係数α’を読み出す(ステップS105)。
【0026】
そして、湿度補正係数特定部6−2は、その読み出した調整係数α’をステップS104で読み出した傾きαに乗じて、湿度補正係数α”(α”=α×α’)を求める(ステップS106)。すなわち、その時の温度差ΔTと計測温度T0とに応じた湿度補正係数α”を特定する。そして、この特定した湿度補正係数α”とステップS104で特定した切片βを補正実行部6−3に送る。
【0027】
補正実行部6−3は、湿度センサ3からの計測相対湿度H1と湿度補正係数特定部6−2からの湿度補正係数α”および切片βとから、H2=H1×α”+βとして補正相対湿度H2を求め(ステップS107)、この求めた補正相対湿度H2を相対湿度の検出値として出力する(ステップS108)。
【0028】
このようにして、実施の形態1では、湿度検出器100内の上下の温度差ΔTを計測し、この湿度検出器100内の上下の温度差ΔTと湿度センサ3の近傍の計測温度T0に応じた調整係数α’を求め、この調整係数α’をその時の計測温度T0に応じた傾きαに乗じて湿度補正係数α”を求めることにより、内部発熱の影響を受けることなく、被測定空間200の相対湿度を精度よく検出することができるようになる。
【0029】
なお、この実施の形態1では、湿度検出器100内の床側に湿度センサ3を設けるようにしたが、湿度検出器100内の天井側に湿度センサ3を設けるようにしてもよい。この場合、第1の温度センサ5を第1の温度計測部兼周囲温度計測部として使用するようにする。また、湿度センサ3の近傍の温度を計測する専用の周囲温度センサを設け、第1の温度センサ5を第1の温度T1を計測する専用の温度センサとし、第2の温度センサ4を第2の温度T2を計測する専用の温度センサとするようにしてもよい。また、第1の温度T1を計測する第1の温度センサ5および第2の温度T2を計測する第2の温度センサ4を、湿度検出器100の内部ではなく、湿度検出器100の外部に設けるようにしてもよい。
【0030】
また、この実施の形態1では、基本テーブルTA1と補助テーブルTA2とを用いるようにしたが、α×α’を演算したα”を複数の温度差範囲の区分毎にテーブル値として定めた湿度補正係数テーブルを用いるようにしてもよい。このようにすることによって、基本テーブルTA1と補助テーブルTA2とを1つのテーブルにまとめることが可能となる。
【0031】
〔実施の形態2:手動で入力される設定情報に基づいて内部発熱の度合いを特定するタイプ〕
図7にこの発明に係る湿度検出器の第2の実施の形態(実施の形態2)のカバーを取り外した状態を示す。この実施の形態2において、湿度検出器101の内部には、10進の設定スイッチ8が設けられている。
【0032】
なお、実施の形態1の湿度検出器100では天井側に第1の温度センサ5を設けていたが、実施の形態2の湿度検出器101では第1の温度センサ5は設けずに、第2の温度センサ4を湿度センサ3の近傍の温度を計測する周囲温度センサ(周囲温度計測部)として用いる。
【0033】
図8にこの湿度検出器101の要部の機能ブロック図を示す。この湿度検出器101は、メモリに格納されたプログラムに従ってマイクロコンピュータが実行する処理機能として、補正演算部9を有している。補正演算部9は、湿度補正係数特定部9−1と、補正実行部9−2とを備えている。また、マイクロコンピュータがアクセスする記憶部7には、基準テーブルTB1と補助テーブルTB2とが格納されている。
【0034】
図9(a)に記憶部7に格納されている基準テーブルTB1を例示する。この基準テーブルTB1は、実施の形態1で用いた基準テーブルTA1と同じであるので、その説明は省略する。
【0035】
図9(b)に記憶部7に格納されている補助テーブルTB2を例示する。この補助テーブルTB2では、手動で操作される設定スイッチ8からの設定値毎に、周囲温度(計測温度T0)に対応する傾きαの調整係数α’を定めている。この例では、図10に示すように、湿度検出器101の周囲の風速・風向と設定値とを関連づけ、この風速・風向と関連づけた設定値毎に調整係数α’を定めている。この調整係数α’は湿度検出器101を実環境に近い状態に置いて動作させ実験を繰り返すことによって定められた値である。なお、この補助テーブルTB2において、設定値が湿度検出器101内の内部発熱の度合いを示す。
【0036】
図11に補正演算部9での処理動作のフローチャートを示す。なお、この処理動作を開始させるに際して、エンジニアまたはユーザは、湿度検出器101の周囲の風速・風向を風速計(図示せず)にて手動計測し、図10に示した図表に従い、その計測した風速・風向に応じた設定値を設定スイッチ8を介して補正演算部9に対してセットする。
【0037】
補正演算部9は、所定周期毎に(ステップS201のYES)、周囲温度センサ4からの計測温度(湿度センサ3の近傍の温度(周囲温度))T0、湿度センサ3からの計測相対湿度(相対湿度の計測値)H1、設定スイッチ8からの設定値(スイッチ設定値)を取り込む(ステップS202)。
【0038】
取り込まれた周囲温度センサ4からの計測温度T0および設定スイッチ8からの設定値は湿度補正係数特定部9−1に送られる。湿度補正係数特定部9−1は、記憶部7に格納されている基準テーブルTB1(図9(a))にアクセスし、周囲温度センサ4からの計測温度T0に応じた傾きαおよび切片βを読み出す(ステップS203)。
【0039】
また、湿度補正係数特定部9−1は、記憶部7に格納されている補助テーブルTB2(図9(b))にアクセスし、設定スイッチ8からの設定値を特定し、すなわち内部発熱の度合いを特定し、この特定した設定値に対して定められている周囲温度センサ4からの計測温度T0に応じた調整係数α’を読み出す(ステップS204)。
【0040】
そして、湿度補正係数特定部9−1は、その読み出した調整係数α’をステップS203で読み出した傾きαに乗じて、湿度補正係数α”(α”=α×α’)を求める(ステップS205)。すなわち、その時のスイッチ設定値と計測温度T0とに応じた湿度補正係数α”を特定する。そして、この特定した湿度補正係数α”とステップS203で特定した切片βを補正実行部9−2に送る。
【0041】
補正実行部9−2は、湿度センサ3からの計測相対湿度H1と湿度補正係数特定部9−1からの湿度補正係数α”および切片βとから、H2=H1×α”+βとして補正相対湿度H2を求め(ステップS206)、この求めた補正相対湿度H2を相対湿度の検出値として出力する(ステップS207)。
【0042】
このようにして、実施の形態2では、湿度検出器101の周囲の風速・風向を手動計測し、その計測した風速・風向に応じた設定値を設定スイッチ8を介してセットし、このセットした設定値と湿度センサ3の近傍の計測温度T0に応じた調整係数α’を求め、この調整係数α’をその時の計測温度T0に応じた傾きαに乗じて湿度補正係数α”を求めることにより、内部発熱の影響を受けることなく、被測定空間200の相対湿度を精度よく検出することができるようになる。
【0043】
なお、この実施の形態2では、湿度検出器101内の床側に湿度センサ3を設けるようにしたが、湿度検出器101内の天井側に湿度センサ3を設けるようにしたりしてもよい。この場合、周囲温度センサ4は、湿度センサ3の近傍に設けるようにすることは言うまでもない。
【0044】
また、この実施の形態2では、基本テーブルTB1と補助テーブルTB2とを用いるようにしたが、α×α’を演算したα”を設定値毎にテーブル値として定めた湿度補正係数テーブルを用いるようにしてもよい。このようにすることによって、基本テーブルTB1と補助テーブルTB2とを1つのテーブルにまとめることが可能となる。
【0045】
〔実施の形態3:湿度検出器の所定の地点の風速に基づいて内部発熱の度合いを特定する〕
図12にこの発明に係る湿度検出器の第3の実施の形態(実施の形態3)のカバーを取り外した状態を示す。この実施の形態3において、湿度検出器102の内部には、天井側に風速計10が設けられている。
【0046】
なお、この実施の形態3の湿度検出器102でも、実施の形態2の湿度検出器101と同様に、第1の温度センサ5を設けずに、第2の温度センサ4を湿度センサ3の近傍の温度を計測する周囲温度センサ(周囲温度計測部)として用いる。
【0047】
図13にこの湿度検出器102の要部の機能ブロック図を示す。この湿度検出器102は、メモリに格納されたプログラムに従ってマイクロコンピュータが実行する処理機能として、補正演算部11を有している。補正演算部11は、湿度補正係数特定部11−1と、補正実行部11−2とを備えている。また、マイクロコンピュータがアクセスする記憶部7には、基準テーブルTC1と補助テーブルTC2とが格納されている。
【0048】
図14(a)に記憶部7に格納されている基準テーブルTC1を例示する。この基準テーブルTC1は、実施の形態1で用いた基準テーブルTA1と同じであるので、その説明は省略する。
【0049】
図14(b)に記憶部7に格納されている補助テーブルTC2を例示する。この補助テーブルTC2では、風速計10が計測する風速WSを複数の風速範囲に区分し(この例では、6つに区分)、その風速範囲の区分毎に周囲温度(計測温度T0)に対応する傾きαの調整係数α’を定めている。この風速範囲の区分毎の周囲温度(計測温度T0)に対応する調整係数α’は湿度検出器102を実環境に近い状態に置いて動作させ実験を繰り返すことによって定められた値である。なお、この補助テーブルTC2において、風速範囲の区分が湿度検出器102内の内部発熱の度合いを示す。
【0050】
図15に補正演算部11での処理動作のフローチャートを示す。補正演算部11は、所定周期毎に(ステップS301のYES)、周囲温度センサ4からの計測温度(湿度センサ3の近傍の温度(周囲温度))T0、湿度センサ3からの計測相対湿度(相対湿度の計測値)H1、風速計10からの風速(風速の計測値)WSを取り込む(ステップS02)。
【0051】
取り込まれた周囲温度センサ4からの計測温度T0および風速計10からの風速WSは湿度補正係数特定部11−1に送られる。湿度補正係数特定部11−1は、記憶部7に格納されている基準テーブルTC1(図14(a))にアクセスし、周囲温度センサ4からの計測温度T0に応じた傾きαおよび切片βを読み出す(ステップS303)。
【0052】
また、湿度補正係数特定部11−1は、記憶部7に格納されている補助テーブルTC2(図14(b))にアクセスし、風速計10からの風速WSが属する風速範囲の区分を特定し、すなわち内部発熱の度合いを特定し、この特定した風速範囲の区分における周囲温度センサ4からの計測温度T0に応じた調整係数α’を読み出す(ステップS304)。
【0053】
そして、湿度補正係数特定部11−1は、その読み出した調整係数α’をステップS303で特定した傾きαに乗じて、湿度補正係数α”(α”=α×α’)を求める(ステップS305)。すなわち、その時の風速WSと計測温度T0とに応じた湿度補正係数α”を特定する。そして、この特定した湿度補正係数α”とステップS303で特定した切片βを補正実行部11−2に送る。
【0054】
補正実行部11−2は、湿度センサ3からの計測相対湿度H1と湿度補正係数特定部11−1からの湿度補正係数α”および切片βとから、H2=H1×α”+βとして補正相対湿度H2を求め(ステップS306)、この求めた補正相対湿度H2を相対湿度の検出値として出力する(ステップS307)。
【0055】
このようにして、実施の形態3では、湿度検出器102内の風速WSを計測し、この湿度検出器102内の風速WSと湿度センサ3の近傍の計測温度T0に応じた調整係数α’を求め、この調整係数α’をその時の計測温度T0に応じた傾きαに乗じて湿度補正係数α”を求めることにより、内部発熱の影響を受けることなく、被測定空間200の相対湿度を精度よく検出することができるようになる。
【0056】
なお、この実施の形態3では、湿度検出器102内の天井側に風速計10を設けるようにしたが、図12に点線で示すように、湿度検出器102内の中央部の右側のサイドに風速計10を設けるなどしてもよい。また、風速計10を湿度検出器102の内部ではなく、湿度検出器102の外部に設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の湿度検出器は、被測定空間の相対湿度を検出する湿度検出器として、空調制御用の湿度検出器や発熱させることで相対湿度を低くして計測を行う農業用の湿度検出器などして利用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…カバー、1−1…上面、1−2…下面、1−3…左面、1−4…右面、1a〜1c…開口、2…プリント回路基板、3…湿度センサ、4…第2の温度センサ、5…第1の温度センサ、6…補正演算部、6−1…温度差算出部、6−2…湿度補正係数特定部、6−3…補正実行部、7…記憶部、8…設定スイッチ、9…補正演算部、9−1…湿度補正係数特定部、9−2…補正実行部、10…風速計、11…補正演算部、11−1…湿度補正係数特定部、11−2…補正実行部、TA1,TB1,TC1…基準テーブル、TA2,TB2,TC2…補助テーブル、100,101,102…湿度検出器、200…被測定空間、201…壁面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対湿度を計測する相対湿度計測部と、この相対湿度計測部の近傍の温度を計測する温度計測部と、前記相対湿度計測部の計測相対湿度を前記温度計測部の計測温度に基づいて補正する補正演算部とを備えた湿度検出器において、
前記補正演算部は、
前記湿度検出器内の内部発熱の度合いを特定し、この特定した内部発熱の度合いと前記温度計測部の計測温度とに基づいて湿度補正係数を特定する湿度補正係数特定部と、
前記湿度補正係数特定部によって特定された湿度補正係数に基づいて前記相対湿度計測部の計測相対湿度を補正する補正実行部と
を備えることを特徴とする湿度検出器。
【請求項2】
請求項1に記載された湿度検出器において、
前記湿度補正係数特定部は、
前記湿度検出器の予め定められた2地点間の温度差に基づいて前記内部発熱の度合いを特定する
ことを特徴とする湿度検出器。
【請求項3】
請求項1に記載された湿度検出器において、
前記湿度補正係数特定部は、
手動で入力される設定情報に基づいて前記内部発熱の度合いを特定する
ことを特徴とする湿度検出器。
【請求項4】
請求項1に記載された湿度検出器において、
前記湿度補正係数特定部は、
前記湿度検出器の予め定められた所定の地点の風速に基づいて前記内部発熱の度合いを特定する
ことを特徴とする湿度検出器。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図12】
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