説明

湿式定着装置およびそれを備えた画像形成装置

【課題】用紙に余分な定着液が与えられることを防ぎ、用紙にシワや曲がりが生じることを防止することができる湿式定着装置およびそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】プリンタは、トナー画像Tを形成するための複数の画像形成機構と、定着液を用いてトナー画像Tを定着させるための湿式定着装置6とを備える。湿式定着装置6は、画像形成機構から転写されたトナー画像Tを担持する担持ベルト13と、担持ベルト13の外周面14および担持ベルト13上のトナー画像Tに定着液を付与するための定着液噴出ヘッド17と、担持ベルト13から転写されたトナー画像Tを担持し、そのトナー画像Tを用紙2に転写するための担持ローラ15とを含む。担持ローラ15の外周面16には、撥液処理が施されて、定着液が付与されたトナー画像Tのみが転写されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トナー画像に定着液を付与することにより、トナーに粘着力を生じさせ、その粘着力を用いてトナー画像を記録材上に定着させる湿式定着装置およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の画像形成装置として、トナー画像に定着液を付与することにより、トナーに粘着力を生じさせ、その粘着力を用いてトナー画像を用紙等の記録材上に定着させる湿式定着装置を備えるものが提案されている。
このような湿式定着装置には、例えば特許文献1記載のように、中間転写ベルトと、中間転写ベルトに定着液を付与する定着液付与ローラとを備えるものがある。
【0003】
中間転写ベルトは、無端状であり、その外周面にトナー画像が転写される。定着液付与ローラは、その周面が中間転写ベルトの外周面と近接して対向しており、定着液付与ローラの周面に付着した定着液が中間転写ベルトの外周面に付与される。
また、中間転写ベルトの外周面には撥液処理が施されており、定着液付与ローラからの定着液は、中間転写ベルトの表面ではじかれて、中間転写ベルト上のトナー画像にのみ付与されるようになっている。これにより、中間転写ベルトの外周面において、トナー画像が転写されている部分以外に付与され、付着した定着液が、中間転写ベルトから用紙に与えられて用紙にシワや曲がりが生じることを防止している。
【特許文献1】特開2004−109747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の湿式定着装置では、中間転写ベルトの外周面に定着液がわずかながら付着する場合がある。この付着した定着液は、中間転写ベルトの外周面上で集まって次第に大きな液滴となってしまう。そして、この液滴は、中間転写ベルトから用紙にトナー画像を転写する際に用紙に移り、用紙に大きな濡れを生じさせる。そして、この濡れは、乾くと用紙のシワや曲がりの原因となる。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、用紙に余分な定着液が与えられることを防ぎ、用紙にシワや曲がりが生じることを防止することができる湿式定着装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
この発明は、また、定着液が付与されたトナー画像だけを用紙に転写させることができる湿式定着装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、トナー画像に定着液を付与することにより、トナーに粘着力を生じさせ、その粘着力を用いてトナー画像を記録材上に定着させる湿式定着装置において、トナー画像(T)が転写される第1の被転写面(14)を有する第1の像担持体(13)と、上記第1の像担持体の第1の被転写面に定着液を付与するための定着液付与手段(17)と、第1の被転写面と接する第2の被転写面(16)を有し、上記第1の被転写面から第2の被転写面に転写されたトナー画像を記録材(2)に転写するための第2の像担持体(15)とを備え、上記第2の被転写面は撥液性を有することを特徴とする湿式定着装置(6)である。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、第1の像担持体の第1の被転写面にトナー画像が転写され、定着液付与手段によって、第1の被転写面および第1の被転写面に転写されたトナー画像に定着液が付与される。さらに、第1の被転写面上のトナー画像は、第2の像担持体の第2の被転写面に転写される。ここで、第2の被転写面には撥液処理が施されているので、トナー画像以外の第1の被転写面上に付与された定着液は、第1の像担持体から第2の像担持体に移らず、定着液が付与されたトナー画像のみが第2の被転写面に転写される。そして、定着液が付与されたトナー画像は用紙等の記録材に転写される。このように、第2の像担持体は、定着液が付与されたトナー画像のみを担持しており、余分な定着液を担持していない。よって、余分な定着液が記録材に与えられず、用紙のシワや曲がりの原因がなくなる。
【0008】
請求項2記載の発明は、上記第1の像担持体は、複数の支持ローラ(18)に張架された無端状のベルト(13)であり、その外周面(14)が上記第1の被転写面である請求項1記載の湿式定着装置である。
この構成によれば、複数の支持ローラに張架された無端状のベルトの外周面にトナー画像が転写され、ベルトの外周面に定着液が付与される。また、支持ローラの配置によって、ベルトの形状を容易に変更することができる。
【0009】
請求項3記載の発明は、上記第2の像担持体は、ローラ(15)であり、その外周面(16)が上記第2の被転写面である請求項1または2記載の湿式定着装置である。
この構成によれば、ローラの外周面に撥水処理が施されており、第1の被転写面からローラの外周面にトナー画像が転写される。また、ローラであるので、湿式定着装置の構造を単純化できる。
【0010】
請求項4記載の発明は、上記定着液付与手段は、上記第1の被転写面に定着液を噴出して付与する定着液噴出ヘッド(17)を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の湿式定着装置である。
この構成によれば、定着液噴出ヘッドから第1の被転写面に定着液が供給される。これにより、第1の被転写面に定着液を十分に付与することができる。
【0011】
請求項5記載の発明は、電子写真方式によりトナー画像を形成するための画像形成機構(30〜33)と、上記画像形成機構により形成されたトナー画像を定着させるための請求項1〜4の何れか1項に記載の湿式定着装置とを備える、画像形成装置(1)である。
この構成によれば、上記湿式定着装置を用いることにより、用紙のシワや曲がりを防止して、良好な画像品質を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における湿式定着装置6を備えた画像形成装置としてのプリンタ1の概略構成を示めす図解的な断面図である。また、図2は、図1における湿式定着装置6の一部を概略的に示す拡大断面図である。
図1および図2を参照して、プリンタ1は、記録材としての用紙2が収容されたカセット3と、カセット3内の用紙2が搬送される用紙搬送路4と、用紙搬送路4に沿って設けられ、画像が印刷された用紙2を機外に排出するための排出ローラ対5とを備える。
【0013】
また、プリンタ1は、画像データに基づくトナー画像Tを形成するための複数(本実施の形態では4つ)の画像形成機構30〜33と、画像形成機構30〜33によって形成されたトナー画像Tに定着液を付与して、用紙2に定着させるための湿式定着装置6とを備える。
複数の画像形成機構30〜33は、それぞれ異なる色のトナー画像Tを形成するためのものであり、具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれの色に対応するトナー画像Tを形成することができる。また、画像形成機構30〜33は、それぞれ感光体ドラム7を有し、各感光体ドラム7の周囲には、感光体ドラム7の周面を帯電させるための帯電装置8、帯電された感光体ドラム7の周面を露光して静電潜像を形成するための露光装置9、静電潜像をトナーTで顕在化するための現像装置10、感光体ドラム7を除電するための除電装置11および感光体ドラム7の周面に残留する残留トナーTを除去するためのクリーニング装置12が配置されている。
【0014】
また、湿式定着装置6は、画像形成機構30〜33から転写されたトナー画像Tを担持するための無端状の担持ベルト13と、担持ベルト13から転写されたトナー画像Tを担持するための担持ローラ15と、担持ベルト13の外周面14に定着液を噴出して付与するための定着液噴出ヘッド17とを含む。担持ローラ15および定着液噴出ヘッド17は、担持ベルト13の外周側に配置されている。
【0015】
担持ベルト13は、複数の支持ローラ18によって張架されており、図示しない駆動源によって回転駆動されるようになっている。また、複数の画像形成機構30〜33に備えられた感光体ドラム7は、それぞれ担持ベルト13の外周面14に沿って配置されており、各感光体ドラム7の周面と担持ベルト13の外周面14とが接するようにされている。これにより、各感光体ドラム7の周面に形成されたトナー画像Tを担持ベルト13の外周面14に転写することができる。担持ベルト13の外周面14には、各感光体ドラム7の周面に形成されたトナー画像Tがそれぞれ重ね合わされて転写される。これにより、担持ベルト13の外周面14には、フルカラーのトナー画像Tが形成される。
【0016】
定着液噴出ヘッド17は、担持ベルト13から所定距離をあけて配置されており、図示しない定着液供給源から送られる定着液を担持ベルト13の外周面14に向けて噴出することができる。また、定着液噴出ヘッド17は、担持ベルト13の幅方向(図1および図2における紙面に垂直な方向)に延びており、担持ベルト13の幅方向に亘って定着液を付与することができる。したがって、定着液噴出ヘッド17が担持ベルト13の外周面14に向けて定着液を噴出し、担持ベルト13が駆動源によって回転駆動されることにより、担持ベルト13の外周面14の全域に亘って定着液を付与することができる。これにより、担持ベルト13の外周面14の全域および担持ベルト13に転写されたトナー画像Tに定着液を付与することができる。また、定着液が付与されたトナーTは、定着液により溶解または膨潤されて、弾力性のあるガム状になり、粘着力を生じる。
【0017】
担持ローラ15は、担持ベルト13の幅方向に延びており、担持ベルト13の幅と同等以上の軸長を有している。また、担持ローラ15は、担持ベルト13に近接して設けられており、担持ローラ15の外周面16が担持ベルト13の外周面14に、幅方向に亘って接するようにされている。これにより、担持ベルト13の外周面14から担持ローラ15の外周面16に、互いの外周面14,16の摩擦係数の違いを利用してトナー画像Tを転写することができる。
【0018】
また、担持ローラ15の外周面16には撥液処理が施されており、定着液等の水分が付着しないようにされている。したがって、担持ベルト13の外周面14から担持ローラ15の外周面16には、ガム状のトナーTのみが転写される。すなわち、担持ベルト13の外周面14において、トナー画像Tが転写されている部分以外に付与された定着液は、担持ローラ15の外周面16ではじかれて、担持ローラ15の外周面16に付着することができない。担持ローラ15の外周面16には、ガム状のトナーTのみが転写され、余分な定着液が付着しないようにされている。
【0019】
また、担持ローラ15は、用紙搬送路4に沿って設けられており、用紙搬送路4を挟んだ担持ローラ15の対向側には、担持ローラ15に対向する転写ローラ19が設けられている。用紙搬送路4を搬送される用紙2は、担持ローラ15と転写ローラ19との間に搬送される。そして、この用紙2は、担持ローラ15および転写ローラ19によって加圧されて、用紙2の一方の面にトナー画像Tが転写される。ここで、担持ローラ15の外周面16には、上述のように余分な定着液が付着していないので、用紙2にはトナー画像Tのみが転写され、余分な定着液が用紙2に付与されない。これにより、用紙2に定着液による濡れが生じ、この濡れが乾くことによって生じる用紙2のシワや曲がりを防止することができる。
【0020】
そして、用紙2に転写されたガム状のトナーTは、定着液が蒸発(気化)することにより固まり、用紙2上に定着固定される。
以上のように、この実施形態によれば、担持ローラ15の外周面16に撥液処理を施すことによって、担持ローラ15の外周面16に余分な定着液が付着することを防止している。これにより、担持ローラ15から用紙2に余分な定着液が付与されないので、用紙2が濡れてシワや曲がりが発生することを防止できる。言い換えると、用紙2には、定着液が付与されてガム状となったトナーTのみが転写される。
【0021】
さらに、定着液噴出ヘッド17から担持ローラ15に直接、定着液を付与せずに、担持ベルト13を介して間接的に定着液を付与することで、担持ローラ15の外周面16に付与される定着液の量が少なくなり、担持ローラ15の外周面16に余分な定着液が付着することをさらに防止することができる。
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、定着液付与手段として定着液噴出ヘッド17を用い、担持ベルト13に定着液を噴出して付与する例について説明したが、噴出による付与以外に、定着液を、噴霧、滴下して担持ベルトに付与してもよい。また、例えば、担持ベルト13の幅方向に延びるローラを担持ベルト13の外周面14に近接配置して、このローラの周面に付着した定着液を担持ベルト13の外周面14に付与してもよい。
【0022】
また、上記の実施形態では、第1の像担持体として担持ベルト13が用いられている例について説明したが、第1の像担持体は、ベルトだけでなく、例えばローラであってもよい。同様に、上記の実施形態では、第2の像担持体として担持ローラ15が用いられている例について説明したが、第2の像担持体は、ローラだけでなく、例えばベルトであってもよい。すなわち、第1および第2の像担持体のどちらか一方がベルトで、他方がローラであってもよいし、第1および第2の像担持体の両方がベルトまたはローラであってもよい。
【0023】
また、上記の実施形態では、画像形成装置がいわゆるフルカラープリンタである例について説明したが、画像形成装置は、フルカラー用だけでなく、白黒等の2色印刷用であってもよい。また、画像形成装置は、プリンタだけでなく、複写機またはファクシミリであってもよいし、プリンタ、複写機またはファクシミリの内の2つ以上の機能を有する複合機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態における湿式定着装置を備えた画像形成装置としてのプリンタの概略構成を示めす図解的な断面図である。
【図2】図1における湿式定着装置の一部を概略的に示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 プリンタ(画像形成装置)
2 用紙(記録材)
6 湿式定着装置
13 担持ベルト(第1の像担持体、ベルト)
14 外周面(第1の被転写面)
15 担持ローラ(第2の像担持体、ローラ)
16 外周面(第2の被転写面)
17 定着液噴出ヘッド(定着液付与手段)
18 支持ローラ
30〜33 画像形成機構
T トナー画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー画像に定着液を付与することにより、トナーに粘着力を生じさせ、その粘着力を用いてトナー画像を記録材上に定着させる湿式定着装置において、
トナー画像が転写される第1の被転写面を有する第1の像担持体と、
上記第1の像担持体の第1の被転写面に定着液を付与するための定着液付与手段と、
第1の被転写面と接する第2の被転写面を有し、上記第1の被転写面から第2の被転写面に転写されたトナー画像を記録材に転写するための第2の像担持体とを備え、
上記第2の被転写面は撥液性を有することを特徴とする湿式定着装置。
【請求項2】
上記第1の像担持体は、複数の支持ローラに張架された無端状のベルトであり、その外周面が上記第1の被転写面である請求項1記載の湿式定着装置。
【請求項3】
上記第2の像担持体は、ローラであり、その外周面が上記第2の被転写面である請求項1または2記載の湿式定着装置。
【請求項4】
上記定着液付与手段は、上記第1の被転写面に定着液を噴出して付与する定着液噴出ヘッドを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の湿式定着装置。
【請求項5】
電子写真方式によりトナー画像を形成するための画像形成機構と、
上記画像形成機構により形成されたトナー画像を定着させるための請求項1〜4の何れか1項に記載の湿式定着装置とを備える、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−199399(P2007−199399A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17957(P2006−17957)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】