説明

湿式画像形成装置

【課題】より高画質な画像を記録媒体上に形成することが可能な湿式画像形成装置を得る。
【解決手段】搬送方向ARに沿って搬送される記録媒体P上に画像を形成する湿式画像形成装置は、トナー粒子を含むトナー画像2Tを担持する像担持体7と、像担持体7に圧接されることによって像担持体7との間にニップ部Nを形成する転写ローラー8と、ニップ部Nよりも搬送経路ALの上流側に配置された荷電装置9とを備え、荷電装置9は、トナー画像2Tが記録面P1上に静電転写される前に記録面P1側から記録媒体Pに対して電荷を付与し、ニップ部Nよりも搬送経路ALの上流側においては、記録媒体Pの表面電位と像担持体7によって担持されたトナー画像2Tのトナー粒子の電位とが互いに同電位であるか、または、記録媒体Pの表面電位は、像担持体7によって担持されたトナー画像2Tのトナー粒子の電位よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤を用いる湿式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008−107692号公報(特許文献1)、特開昭63−305375号公報(特許文献2)、特開平01−149080号公報(特許文献3)、特開平08−328398号公報(特許文献4)、および、特開2007−003880号公報(特許文献5)に開示されるように、液体現像剤(湿式現像剤ともいう)を用いる湿式画像形成装置が知られている。
【0003】
湿式画像形成装置に用いられる液体現像剤は、キャリア液と、このキャリア液中に分散されたトナー粒子とを含む。一方、乾式電子写真方式を採用する画像形成装置(乾式画像形成装置)においては、トナー粒子がそのままの状態で用いられる。
【0004】
湿式画像形成装置は、乾式画像形成装置に比べて、より小さな粒径を有するトナー粒子を用いることができる。より小さな粒径を有するトナー粒子によって、画像の細かな部分まで表現される。湿式画像形成装置によれば、高画質な画像を記録媒体上に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−107692号公報
【特許文献2】特開昭63−305375号公報
【特許文献3】特開平01−149080号公報
【特許文献4】特開平08−328398号公報
【特許文献5】特開2007−003880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1〜5に開示される湿式画像形成装置においては、印刷用紙などの記録媒体は、トナーが転写される前に所定の電荷が付与される。記録媒体に電荷を予め付与することによって、高画質な画像を記録媒体上に形成することが図られている。
【0007】
本発明は、より高画質な画像を記録媒体上に形成することが可能な湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づく湿式画像形成装置は、所定の搬送方向に沿って搬送される記録媒体上に画像を形成する湿式画像形成装置であって、トナー粒子を含むトナー画像を担持する像担持体と、上記記録媒体の搬送経路を挟んで上記像担持体の反対側に配置され、上記像担持体に圧接されることによって上記像担持体との間にニップ部を形成する転写ローラーと、上記ニップ部よりも上記搬送経路の上流側に配置された荷電装置と、を備え、上記像担持体によって担持された上記トナー画像は、上記ニップ部において上記記録媒体の記録面上に静電転写され、上記荷電装置は、上記トナー画像が上記記録面上に静電転写される前に上記記録面側から上記記録媒体に対して電荷を付与し、上記ニップ部よりも上記搬送経路の上流側においては、上記記録媒体の表面電位と上記像担持体によって担持された上記トナー画像の上記トナー粒子の電位とが互いに同電位であるか、または、上記記録媒体の表面電位は、上記像担持体によって担持された上記トナー画像の上記トナー粒子の電位よりも高い。
【0009】
好ましくは、本発明に基づく上記の湿式画像形成装置は、上記ニップ部よりも上記搬送経路の上流側において、上記転写ローラーの表面に上記記録媒体を巻き付ける搬送ローラーをさらに備える。
【0010】
好ましくは、上記荷電装置は、上記記録媒体のうちの上記転写ローラーの表面に巻き付けられた部分において、上記記録面側から上記記録媒体に対して電荷を付与する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より高画質な画像を記録媒体上に形成することが可能な湿式画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1における湿式画像形成装置を示す模式図である。
【図2】実施の形態1における湿式画像形成装置の2次転写部の近傍を拡大して示す第1模式図である。
【図3】実施の形態1における湿式画像形成装置の2次転写部の近傍を拡大して示す第2模式図である。
【図4】実施の形態1の比較例における湿式画像形成装置の2次転写部の近傍を拡大して示す模式図である。
【図5】実施の形態1に関する実験の結果を示す図である。
【図6】実施の形態2における湿式画像形成装置を示す模式図である。
【図7】実施の形態3における湿式画像形成装置を示す模式図である。
【図8】実施の形態4における湿式画像形成装置を示す模式図である。
【図9】実施の形態5における湿式画像形成装置を示す模式図である。
【図10】実施の形態2に関する実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。特に制限が無い限り、各実施の形態に示す構成を適宜組み合わせて用いることは、当初から予定されていることである。
【0014】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態における湿式画像形成装置100を示す模式図である。湿式画像形成装置100は、搬送経路AL上を搬送方向ARに沿って搬送される記録媒体P上に、画像を形成する。湿式画像形成装置100は、画像形成部N1〜N4を備える。画像形成部N1〜N4の各々は、現像槽1、現像剤2、アニロックスローラー3、均しローラー4、現像剤担持体5、感光体6、中間転写体7、転写ローラー8、荷電装置9、および、対向電極10を含む。
【0015】
画像形成部N1〜N4の各々において、現像槽1、現像剤2、アニロックスローラー3、均しローラー4、現像剤担持体5、感光体6、中間転写体7、転写ローラー8、荷電装置9、および、対向電極10は、略同一に構成されるとともに、略同一に機能する。
【0016】
現像槽1、現像剤2、アニロックスローラー3、均しローラー4、および現像剤担持体5によって、現像部M1〜M4がそれぞれ構成される。現像部M1〜M4は、Y(Yellow:黄色)、M(Magenta:赤紫)、C(Cyan:シアン)、および、K(blacK:黒)の各色に対応している。
【0017】
イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの配列順序は、適宜変更されることが可能である。現像部M1〜M4としては、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラック以外の色が用いられてもよい。以下、画像形成部N1〜N4(現像部M1〜M4)を構成するこれらの構成および機能について説明する。
【0018】
現像槽1に、現像剤2が貯留されている。現像剤2は、トナー粒子およびキャリア液を含む。トナー粒子は、所定の割合でキャリア液中に分散されている。アニロックスローラー3は、矢印A3方向に回転する。現像剤2は、このアニロックスローラー3によって汲み上げられる。
【0019】
均しローラー4は、矢印A4方向に回転する。アニロックスローラー3によって汲み上げられた現像剤2は、均しローラー4に送られる。アニロックスローラー3の表面に汲み上げられた余剰の現像剤2は、均しローラー4に送られる前に、アニロックス規制ブレード3Tによって掻き取られる。均しローラー4においては、現像剤2の膜厚が均等になるように現像剤2が調整される。
【0020】
現像剤担持体5は、矢印A5方向に回転する。膜厚が調整された現像剤2は、現像剤担持体5に転移される。現像剤担持体5に転移された現像剤2中のトナー粒子は、現像チャージャー5Qによって荷電される。
【0021】
感光体6は、矢印A6方向に回転する。感光体6は、帯電部6Qによって帯電された後、露光部6Pにおいて潜像形成される。現像剤担持体5によって担持される現像剤2中のトナー粒子は、感光体6の表面に静電移動し、感光体6の表面においてトナー画像(図示せず)として現像される。このトナー画像の形状は、感光体6の表面に潜像形成された静電潜像の形状に対応している。現像剤担持体5から感光体6に転移しなかった現像剤2は、クリーニングブレード5Tによって掻き取られた後、回収される。
【0022】
中間転写体7は、矢印A7方向に回転する。感光体6と中間転写体7との間には、1次転写部T1が形成される。感光体6上にトナー画像として現像された現像剤2は、1次転写部T1において、感光体6から中間転写体7(像担持体)に1次転写される。感光体6から中間転写体7に転写されなかった現像剤2は、クリーニングブレード6Tによって掻き取られる。
【0023】
転写ローラー8は、矢印A8方向に回転する。転写ローラー8は、記録媒体Pの搬送経路ALを挟んで中間転写体7の反対側に配置されている。中間転写体7と転写ローラー8との間には、2次転写部T2が形成される。記録媒体Pの搬送経路ALは、画像形成部N1〜N4の各々における2次転写部T2を含むように形成されている。本実施の形態における搬送経路ALは、略一直線状に形成される。
【0024】
中間転写体7によって担持された現像剤2は、2次転写部T2において、記録媒体Pに2次転写(静電転写)される。2次転写されずに中間転写体7に残留する現像剤2は、クリーニングブレード7Tによって掻き取られる。荷電装置9および対向電極10は、2次転写部T2よりも搬送方向ARの上流側に配置されている。荷電装置9および対向電極10の構成および機能の詳細については後述する。
【0025】
記録媒体Pは、画像形成部N1〜N4の各々における2次転写部T2においてそれぞれ2次転写された後、定着装置(図示せず)に送られる。記録媒体Pに転写された各色の現像剤2は、定着装置(図示せず)によって定着される。記録媒体Pが定着装置から排出されることによって、湿式画像形成装置100におけるプリント動作が完了する。
【0026】
(荷電装置9)
図2は、湿式画像形成装置100(図1参照)における2次転写部T2、荷電装置9、および対向電極10の近傍を拡大して示す第1模式図である。図2においては、説明の便宜上、荷電装置9および対向電極10が作動していない様子が示されている。
【0027】
図1を参照して上述したように、2次転写部T2においては、中間転写体7(像担持体)および転写ローラー8が、記録媒体Pの搬送経路ALを挟んで互いに対向するように配置されている。矢印A7方向に回転している中間転写体7は、トナー画像2Tを担持しているとともに、記録媒体Pの表面P1(記録面)側に位置している。矢印A8方向に回転している転写ローラー8は、記録媒体Pの裏面P2側に位置している。
【0028】
2次転写部T2においては、中間転写体7に担持されたトナー画像2Tを記録媒体Pに向かって移動(転写)させるために、転写ローラー8(または中間転写体7)によって、転写電界E1が形成される。転写電界E1の作用によって、トナー画像2Tを形成するトナー粒子に対して電気的な力が付与される。
【0029】
この電気的な力は、トナー粒子を中間転写体7から記録媒体Pの表面P1(記録面)上に移動させようとする方向に作用する。トナー粒子が中間転写体7の表面から記録媒体Pの表面P1上に移動することによって、記録媒体Pの表面P1上において所定の画像が形成される。
【0030】
ここで、転写ローラー8(中間転写体7)によって形成される転写電界は、ニップ部N(中間転写体7と転写ローラー8とが互いに圧接されることによって形成される部分)だけでなく、ニップ部Nの上流側の領域R1、およびニップ部Nの下流側の領域R2にも作用する。すなわち、トナー画像2T中のトナー粒子を記録媒体Pに向かって移動(転写)させるため転写電界は、ニップ部Nだけでなく、所定の幅を有する領域RRにわたって作用する。
【0031】
ニップ部Nの上流側(領域R1)において、トナー画像2Tを形成するトナー粒子は、中間転写体7上に拘束されていない。ニップ部Nの上流側においては、転写電界E1(バイアス)の作用によって、トナー粒子が中間転写体7の表面上においてわずかに揺れ動いたり、わずかに飛翔したりすることがある。トナー粒子が揺れ動いたり飛翔したりすることは、画像形成後における記録媒体Pに、転写むら(粒状の濃淡むら)が発生する原因となり得る。
【0032】
図3は、湿式画像形成装置100(図1参照)における2次転写部T2、荷電装置9、および対向電極10の近傍を拡大して示す第2模式図である。図3においては、荷電装置9および対向電極10が作動している様子が示されている。
【0033】
上記のような転写電界E1(バイアス)の作用に対して、本実施の形態の湿式画像形成装置100(図1参照)においては、荷電装置9および対向電極10が、2次転写部T2よりも搬送方向ARの上流側に配置されている。記録媒体Pは、2次転写部T2のニップ部N(領域R1)に突入する前に、荷電装置9と対向電極10との間を通過する。
【0034】
トナー粒子が上記の転写電界の影響を受けないように(トナー粒子が移動または飛翔しない方向のバイアスを得るために)、荷電装置9は、荷電装置9と対向電極10との間を通過する記録媒体Pに対して電荷を付与する。
【0035】
具体的には、トナー画像2Tが記録媒体Pの表面P1上に静電転写される前に、荷電装置9は、記録媒体Pの表面P1(記録面)側から記録媒体Pに対して電荷を付与する。ニップ部Nの直前のバイアス(記録媒体Pの表面電位と中間転写体7の電位との電位差)が0V以上となるように、荷電装置9は、トナー画像2T中のトナー粒子と同極性の電荷を記録媒体Pに対して付与する。
【0036】
荷電装置9は、トナー画像2Tに含まれるトナー粒子が正荷電されている場合、記録媒体Pに対して正荷電する。この場合、荷電装置9は、(記録媒体Pの表面電位)−(中間転写体7の電位)≧0Vとなるように、記録媒体Pに対して荷電する。好ましくは、荷電装置9は、(記録媒体Pの表面電位)−(中間転写体7の電位)≧100Vとなるように記録媒体Pに対して荷電する。トナー画像2Tに含まれるトナー粒子が負荷電されていれば、荷電装置9は記録媒体Pに対して負荷電する。
【0037】
荷電装置9は、ニップ部Nにできるだけ近くに配置されるとよい。荷電装置9のニップ部Nからの距離、および荷電装置9の出力量は、転写ローラー8の抵抗、中間転写体7の抵抗、記録媒体Pの厚み、記録媒体Pの種類、記録媒体Pの抵抗、記録媒体Pの搬送速度、または周囲の温湿度環境などに応じて、トナー粒子が上記の転写電界の影響を受けないように最適化されるとよい。
【0038】
図2においては、荷電装置9は、コロトロンのコロナチャージャーと対向電極10との組み合わせを例示しているが、荷電装置9としては、スコロトロンチャージャー、帯電ブラシ、または帯電ローラーなど、記録媒体Pに荷電できるものならばコロトロンのコロナチャージャー以外のものが用いられてもよい。
【0039】
記録媒体Pが荷電装置9によって荷電された後、記録媒体Pは、表面P1側が荷電された状態で、2次転写部T2(領域R1およびニップ部N)に突入する。記録媒体Pが荷電装置9によって荷電されることによって、ニップ部Nよりも搬送経路ALの上流側においては、記録媒体Pの表面電位と中間転写体7によって担持されたトナー画像2T中のトナー粒子の電位とが互いに同電位であるか、または、記録媒体Pの表面電位は、中間転写体7によって担持されたトナー画像2T中のトナー粒子の電位よりも高くなっている。
【0040】
記録媒体Pが上記のように荷電されていることによって、記録媒体Pと中間転写体7(トナー画像2T)との間には、トナー画像2T中のトナー粒子が移動(または飛翔)しない方向の電界E2が形成されている。電界E2の作用によって、記録媒体Pが領域R1およびニップ部Nへと順次突入する際、トナー画像2T中のトナー粒子が移動(飛翔)することは抑制されている。
【0041】
記録媒体Pがニップ部Nに突入することによって、記録媒体Pの表面の電荷は、中間転写体7側に移動する。電荷の移動により、中間転写体7と転写ローラー8との間のニップ部Nにおけるバイアスは、当初の設定どおり、2次転写に必要な所定のバイアスが付与される。2次転写は適切に行なわれ、転写性が低下することはない。電荷を効率良く移動させることによって転写性をより向上させるために、中間転写体7の厚み方向の抵抗は、10Ω〜1010Ω程度であるとよい。より好ましくは、中間転写体7の厚み方向の抵抗は、10Ω〜1010Ω程度であるとよい。
【0042】
(作用・効果)
以上説明したように、湿式画像形成装置100によれば、2次転写時においてトナー画像2T中のトナー粒子が移動(飛翔)することが抑制されている。
【0043】
図4は、本実施の形態の比較例における湿式画像形成装置の転写部(2次転写部)の近傍を拡大して示す模式図である。図4に示す構成は、冒頭に説明した特開昭63−305375号公報(特許文献2)、特開平01−149080号公報(特許文献3)、特開平08−328398号公報(特許文献4)、および、特開2007−003880号公報(特許文献5)に開示される構成に相当している。
【0044】
図4に示すように、記録媒体Pの裏面P2側(記録面とは反対側の面)から荷電されるという構成も考えられる。しかしながら、当該構成においては、記録媒体Pの抵抗が高い場合、記録媒体Pの表面P1側は良好に荷電されない場合がある。トナー粒子は、転写電界の影響を受けて、移動または飛翔することがある。
【0045】
これに対して、本実施の形態における湿式画像形成装置100によれば、記録媒体Pが表面P1(記録面)側から荷電される。記録媒体Pの抵抗が高い場合であっても、荷電不良が発生することは無く、記録媒体Pは確実に荷電されることができる。表面P1(記録面)側が荷電された記録媒体Pによって、トナー画像2T中のトナー粒子が移動または飛翔することは確実に抑制される。したがって湿式画像形成装置100によれば、記録媒体Pに転写むら(粒状の濃淡むら)が発生することは抑制され、より高画質な画像を記録媒体P上に形成することが可能となる。
【0046】
(実施の形態1に基づく実験)
図5を参照して、実施の形態1における湿式画像形成装置100を使用して行なった実験の結果について説明する。当該実験においては、荷電装置9(現像チャージャー)によって、トナー粒子をプラス極性に荷電させた。2次転写部T2において、中間転写体7の電位は−400Vであり、転写ローラー8の電位は−1200Vである。記録媒体Pとしては、王子製紙製のOKトップコート(トップコート:登録商標)(面積:84g/m)を使用した。
【0047】
2次転写部T2におけるトナーの量は1.5g/mであり、キャリア液に対する固形分比率は50%である。荷電装置9としては、コロトロンのコロナチャージャーを使用した。荷電装置9(コロナチャージャー)の対向面には、対向電極10が設けられる。ニップ部Nの入口から20mm離れた位置に、荷電装置9および対向電極10を配置した。記録媒体Pの搬送速度は、400mm/sである。表面電位計は、ニップ部Nの入口から5mm上流に設置した。表面電位を設定するために、コロトロンのコロナチャージャーを所定の値に設定した。
【0048】
図5は、表面電位の値と画像評価とを示す実験結果である。表面電位の値を変えて画像評価を行った結果、図5に示す結果が得られた。画像の評価評価としては、記録媒体Pの表面P1(記録面)上に転写されたトナー画像(べた画像)を、200倍の顕微鏡によって観察し、粒状の濃淡むらの有無で判断した。図5の左側には、観察時における表面電位値を示している。
【0049】
図5に示すように、中間転写体7の電位が−100V、−300V、および−400Vの場合、粒状の濃淡むらは観察されなかった。一方、中間転写体7の電位が−600V、および−800Vの場合、粒状の濃淡むらがわずかに観察された。したがって、湿式画像形成装置100において上記の構成を採用する場合、中間転写体7の電位は、−400V以上であると好ましいことがわかる。
【0050】
[実施の形態2]
図6は、本実施の形態における湿式画像形成装置101を示す模式図である。湿式画像形成装置101においては、1つの感光体6の周囲に現像部M1〜M4が配置される。感光体6および中間転写体7(像担持体)上においては、4色の画像が重ねて転写される。
【0051】
転写ローラー8の2次転写部T2の上流側においては、荷電装置9Aが配置される。荷電装置9Aとしては、記録媒体Pの表面P1に接触しながら記録媒体Pを帯電させる円柱状の帯電ローラーが用いられる。荷電装置9Aのさらに上流側においては、巻付ローラー10Aが転写ローラー8に対向するように配置される。記録媒体Pは、巻付ローラー10Aと転写ローラー8との間を搬送される。
【0052】
巻付ローラー10Aによって、2次転写部T2のニップ部N(図2,図3参照)よりも搬送経路ALの上流側において、記録媒体Pは転写ローラー8の表面に巻き付けられる。巻付ローラー10Aによって、記録媒体Pの位置ずれが抑制されている。
【0053】
荷電装置9Aは、記録媒体Pのうちの転写ローラー8の表面に巻きつけられた部分において、記録媒体Pの表面P1(記録面)側から記録媒体Pに対して上述の実施の形態1と同様に電荷を付与する。当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様に、2次転写時においてトナー画像中のトナー粒子が移動(飛翔)することが抑制されている。記録媒体Pに転写むら(粒状の濃淡むら)が発生することは抑制され、より高画質な画像を記録媒体P上に形成することが可能となる。
【0054】
[実施の形態3]
図7は、本実施の形態における湿式画像形成装置102を示す模式図である。湿式画像形成装置102においては、1つの中間転写体7の周囲に、4つの感光体6が配置される。4つの感光体6の各々に一対一で対応するように、現像部M1〜M4が配置される。中間転写体7(像担持体)上においては、4色の画像が重ねて転写される。
【0055】
その他の構成は、上述の実施の形態2における湿式画像形成装置101(図6参照)と略同様である。当該構成によっても、上述の実施の形態2と同様に、2次転写時においてトナー画像中のトナー粒子が移動(飛翔)することが抑制されている。記録媒体Pに転写むら(粒状の濃淡むら)が発生することは抑制され、より高画質な画像を記録媒体P上に形成することが可能となる。
【0056】
[実施の形態4]
図8は、本実施の形態における湿式画像形成装置103を示す模式図である。湿式画像形成装置103においては、上述の実施の形態1〜3における中間転写体7は用いられない。湿式画像形成装置103においては、感光体6(像担持体)と転写ローラー8とが記録媒体Pの搬送経路ALを挟んで互いに対向するように配置される。
【0057】
その他の構成は、上述の実施の形態2における湿式画像形成装置101(図6参照)と略同様である。当該構成によっても、上述の実施の形態2と同様に、1次転写時においてトナー画像中のトナー粒子が移動(飛翔)することが抑制されている。記録媒体Pに転写むら(粒状の濃淡むら)が発生することは抑制され、より高画質な画像を記録媒体P上に形成することが可能となる。
【0058】
[実施の形態5]
図9は、本実施の形態における湿式画像形成装置104を示す模式図である。湿式画像形成装置104においては、転写ローラー8に、咥え爪8Kが設けられる。隣り合う転写ローラー8同士の間に、咥え爪10Kを有する巻付ローラー10Bが設けられる。
【0059】
咥え爪8Kと咥え爪10Kとは、転写ローラー8と巻付ローラー10Bとの当接位置で互いに対向するように回転方向における位置が設定される。当該構成により、転写ローラー8と巻付ローラー10Bとがどれだけ回転しても、転写ローラー8と巻付ローラー10Bとが上記当接位置にあるときには、咥え爪8Kは、常に、咥え爪10Kと当接する位置に配置されることとなる。
【0060】
記録媒体Pが搬送される際、記録媒体Pの端部は、転写ローラー8と巻付ローラー10Bとの間(転写ローラー8と巻付ローラー10Bとが互いに当接する部分)において、咥え爪10K(または咥え爪8K)から咥え爪8K(咥え爪10K)に渡される。具体的には、記録媒体Pの端部は、2次転写部T2よりも搬送方向上流側において、巻付ローラー10Bの咥え爪10Kから転写ローラー8の咥え爪8Kに渡される。
【0061】
記録媒体Pは、記録媒体Pの端部が咥え爪8Kによって保持された状態で、転写ローラー8の回転によって転写ローラー8と中間転写体7(像担持体)との間に搬送される。転写ローラー8の咥え爪8Kは、記録媒体Pの端部とともに移動する。転写ローラー8と中間転写体7との間において、2次転写が行なわれる。その後、記録媒体Pの端部は、2次転写部T2よりも搬送方向下流側において、転写ローラー8の咥え爪8Kから開放され、巻付ローラー10Bの咥え爪10Kに渡される。
【0062】
湿式画像形成装置104において記録媒体Pが搬送される際、2次転写部T2の搬送方向上流側および搬送方向下流側の双方において、記録媒体Pは転写ローラー8の表面に巻き付けられる。記録媒体Pは、上記のような咥え爪8Kおよび咥え爪10Kによる受け渡しを繰り返されながら搬送される。記録媒体Pは、位置ずれが抑制された状態で搬送されることができる。
【0063】
湿式画像形成装置104によっても、上述の各実施の形態と同様に、2次転写時においてトナー画像中のトナー粒子が移動(飛翔)することが抑制されている。記録媒体Pに転写むら(粒状の濃淡むら)が発生することは抑制され、より高画質な画像を記録媒体P上に形成することが可能となる。
【0064】
(実施の形態5に基づく実験)
図10を参照して、実施の形態2における湿式画像形成装置104を使用して行なった実験の結果について説明する。当該実験においては、荷電装置9A(現像チャージャー)によって、トナー粒子をプラス極性に荷電させた。2次転写部T2において、中間転写体7の電位は−400Vであり、転写ローラー8の電位は−1200Vである。記録媒体Pとしては、王子製紙製のOKトップコート(トップコート:登録商標)(面積:84g/m)を使用した。
【0065】
2次転写部T2におけるトナーの量は1.5g/mであり、キャリア液に対する固形分比率は50%である。荷電装置9Aとしては、φ10mmの帯電ローラーを使用した。ニップ部Nの入口から20mm離れた位置に、荷電装置9Aを配置した。記録媒体Pが通過しない場合、荷電装置9Aと転写ローラー8とは互いに接触する。記録媒体Pの搬送速度は、400mm/sである。表面電位計は、ニップ部Nの入口から5mm上流に設置した。表面電位の測定方法については、実際の機械に入れて測定できないことから、上述の実施の形態1に基づく実験と同様の装置で測定したもので代用した。但し、荷電装置としては、本実験で使用する帯電ローラーを使用した。
【0066】
図10は、表面電位の値と画像評価とを示す実験結果である。表面電位の値を変えて画像評価を行った結果、図10に示す結果が得られた。画像の評価評価としては、記録媒体Pの表面P1(記録面)上に転写されたトナー画像(べた画像)を、200倍の顕微鏡によって観察し、粒状の濃淡むらの有無で判断した。図10の左側には、観察時における表面電位値を示している。
【0067】
図10に示すように、中間転写体7の電位が−200V、−300V、および−400Vの場合、粒状の濃淡むらは観察されなかった。一方、中間転写体7の電位が−600V、および−800Vの場合、粒状の濃淡むらがわずかに観察された。したがって、湿式画像形成装置104において上記の構成を採用する場合、中間転写体7の電位は、−400V以上であると好ましいことがわかる。
【0068】
以上、本発明に基づいた各実施の形態および実験結果について説明したが、今回開示された各実施の形態および実験結果はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1 現像槽、2 現像剤、2T トナー画像、3 アニロックスローラー、3T アニロックス規制ブレード、4 均しローラー、5 現像剤担持体、5Q 現像チャージャー、5T,6T,7T クリーニングブレード、6 感光体(像担持体)、6P 露光部、6Q 帯電部、7 中間転写体(像担持体)、8 転写ローラー、8K,10K 咥え爪、9,9A 荷電装置、10 対向電極、10A,10B 巻付ローラー、100,101,102,103,104 湿式画像形成装置、AL 搬送経路、AR 搬送方向、E1 転写電界、E2 電界、M1,M2,M3,M4 現像部、N ニップ部、N1,N2,N3,N4 画像形成部、P 記録媒体、P1 表面(記録面)、P2 裏面、R1,R2,RR 領域、T1 1次転写部、T2 2次転写部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送方向に沿って搬送される記録媒体上に画像を形成する湿式画像形成装置であって、
トナー粒子を含むトナー画像を担持する像担持体と、
前記記録媒体の搬送経路を挟んで前記像担持体の反対側に配置され、前記像担持体に圧接されることによって前記像担持体との間にニップ部を形成する転写ローラーと、
前記ニップ部よりも前記搬送経路の上流側に配置された荷電装置と、を備え、
前記像担持体によって担持された前記トナー画像は、前記ニップ部において前記記録媒体の記録面上に静電転写され、
前記荷電装置は、前記トナー画像が前記記録面上に静電転写される前に前記記録面側から前記記録媒体に対して電荷を付与し、
前記ニップ部よりも前記搬送経路の上流側においては、前記記録媒体の表面電位と前記像担持体によって担持された前記トナー画像の前記トナー粒子の電位とが互いに同電位であるか、または、前記記録媒体の表面電位は、前記像担持体によって担持された前記トナー画像の前記トナー粒子の電位よりも高い、
湿式画像形成装置。
【請求項2】
前記ニップ部よりも前記搬送経路の上流側において、前記転写ローラーの表面に前記記録媒体を巻き付ける搬送ローラーをさらに備える、
請求項1に記載の湿式画像形成装置。
【請求項3】
前記荷電装置は、前記記録媒体のうちの前記転写ローラーの表面に巻き付けられた部分において、前記記録面側から前記記録媒体に対して電荷を付与する、
請求項2に記載の湿式画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−33094(P2013−33094A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168400(P2011−168400)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】