説明

湿式電気集塵機及び、集塵極板の荷電時洗浄方法

【課題】セル型上下向流式WEPにおいて、荷電運転時に大量の洗浄水による洗浄操作を実施する場合でも連続火花放電の発生又は短絡状態を防止する。
【解決手段】各セル5の四隅のうちの対角線上の2箇所の角部に、洗浄水噴出ノズル9が配設される。複数の噴出孔9a,9b,9cが、各洗浄水噴出ノズル9の側面の、セル上端部及びセル中間部に対応する場所に形成される。噴出させる洗浄水の合計は、WEPの横断面積1m2当たり、80〜400リットル/分、より望ましくは100〜300リットル/分である。噴出孔9a,9bからの洗浄水噴出方向は、セル5の角部を形成している隣り合う2つの集塵極板7の夫々に対して洗浄水噴出ノズル9の中心から下ろした垂線を基準にした水平角α(30°以上85°以下)の方向に、且つ、該噴出孔から水平の方向に設定される。噴出孔9cはセル5の角部の稜線に向けて洗浄水を噴出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度且つ/又は高粘着性のダストを含む排ガスを処理する湿式電気集塵機(以下、WEPと称す)に関し、特に、セル型上下向流式のWEPに備わる集塵極板を水で洗浄する洗浄構造及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WEPは、焼却炉などから出る排気ガス中に含まれ、乾式電気集塵機、スクラバー等では除去できない硫酸ミストや微細な塵埃を除去する目的で採用されている。WEPは、特許文献1、2等に示されるように、縦方向に延在する複数の集塵極板により方形筒状のセルが構成されるとともに、複数の当該セルが格子状に配置され、放電線が夫々のセル内に縦方向に延びている構成である。特許文献1の実施例説明用の図面では排ガスの上昇流式の場合が示されているが、この構成は上昇流式に限定されず、セル型上下向流式に適用される。即ち、この構成では、各セルの下部又は上部の開口からセル内に排ガスが取り込まれてセル内を上向きに又は下向きに流れるようになっている。また、集塵極板が正極とされ、放電線が負極とされ、両者の間に直流の高電圧を印加することによりコロナ放電が生起される。この状態で排ガスが各セル内を流れると、排ガス中のダスト粒子が負に帯電して正極の集塵極板に捕捉される。こうして脱塵された排ガスはセルの上部又は下部の開口から排出され、煙突などの次工程に行くようになっている。
【0003】
上記したセル型上下向流式の他には、特許文献3に示されるような平板型水平流式WEPおよび平板型上下向流式WEPが知られている。この構成の場合、集塵極板としての複数の平板が平行に設置され、各々の平板間の空隙内において、縦方向に延びる複数の放電線が並列に配置されている。そして、集塵極板と放電線の間にコロナ放電が生起された状態において、複数の平板に平行且つ水平な方向に又は上向き方向又は下向き方向に排ガスが各々の平板間の空隙を移動することで、排ガス中の粒子が集塵極板に捕捉されるようになっている。
【0004】
上記したセル型上下向流式、平板型水平流式ならびに平板型上下向流式のいずれのWEPでも、排ガス中の粒子としてオイル状ミストとダストが混ざり合ってペースト状ないしはグリース状となっているものが集塵極板に捕集されると、このようなダストは自然落下することなく、集塵極板にこびりつき、堆積することとなる。また、高粘着性ダストも同様に集塵極板に堆積する。この堆積したダストは逆電離現象を生起したり、コロナ放電を阻害してWEPの集塵性能の低下をきたす。そのため、集塵極板に定期的に水を放射して洗浄する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−55099号公報
【特許文献2】特開平6−55100号公報
【特許文献3】特開2002−119889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、WEP運転中の洗浄操作では、30kV〜75kV程度で荷電されている放電線へ洗浄水が飛散すると連続的な火花放電が発生し、ひいては短絡状態に至り荷電運転を継続することが不可能になることがある。このため、WEPの荷電運転時には洗浄水量は少量に制限されるという問題があった。
【0007】
上記の連続火花放電又は短絡状態を防ぐために、洗浄水量は、セル型上下向流式WEPではWEPの横断面積1m2当たり1〜10リットル/分という小流量に限定されていた。特許文献1及び2に記載のWEPで用いられる放水方式は、複数の洗浄用ノズルよりセル上空から放電線および集塵極板に向けて洗浄水を放射する方法であるため、放射水量が多くなるほど放電線へ洗浄水が飛散しやすい。そのため、荷電運転中の洗浄水量は上記のような少量にされている。また、特許文献3に記載の平板型水平流式WEPにおいては、洗浄水スプレーノズルの設置位置、及びスプレー噴出圧を限定し且つ集塵極板下部に水切り機構を設置する条件の下で、WEPの横断面積1m2当たり20〜40リットル/分という流量に限定されていた。
【0008】
上記の洗浄水量は、集塵極板に酷くこびりつくような高濃度且つ/又は高粘着性のダストを洗浄する場合には不十分な量である。したがって、WEPの荷電運転時に上記の流量範囲で洗浄操作を実施しても高濃度且つ/又は高粘着性のダストの除去は困難で、集塵能力の低下が予想される。
【0009】
そこで、WEPの集塵能力を維持するためには、WEPの横断面積1m2当たり80〜400リットル/分という大量の洗浄水を使った定期的な洗浄操作、特にダスト堆積が激しい集塵極板の洗浄操作が必要とされる。しかし、この洗浄操作中は集塵極板と放電線の間の電圧印加を一時的に停止し、その間に上記のような大量水を集塵極板の上部から噴射するので、WEPでのダスト捕集ができず、排ガス中のダストはそのまま排出されてしまう。特に高濃度且つ/又は高粘着性のダストを含む排ガスを処理するWEPにおいては、洗浄の周期は短くなり且つ洗浄に要する時間は長くなるので、排ガス中のダスト除去というWEP本来の機能が発揮されなくなる。
【0010】
そこで本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。その目的の一例は、WEPの荷電運転時に大量の洗浄水を使った洗浄操作を実施する場合でも連続火花放電の発生又は短絡状態を防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一つの態様は、重力方向に延在する複数の集塵極板により各セルが多角形筒状に形成され、且つ重力方向から見て隣接配置された複数のセルと、各セルの中に重力方向に延びている放電線と、各セルの側壁を成している前記集塵極板に洗浄水を放射する放水装置と、を備えた、セル型上下向流式の湿式電気集塵機に係るものである。
【0012】
この装置において、放水装置はセルごとに洗浄水噴出ノズルを有する。そして、隣接する2つの集塵極板により形成された、セルの内側の角部には、洗浄水噴出ノズルが、該角部の稜線に沿って設置されている。洗浄水噴出ノズルの側面には、角部の位置から、隣接する2つの集塵極板の各々へ洗浄水を噴出する第1及び第2の噴出孔が少なくとも形成されている。噴出孔から集塵極板への噴出水量の合計は、湿式電気集塵機の横断面積1m2当たり80〜400リットル/分とされている。このような態様により、上記課題が解決される。
【0013】
また本発明の他の態様は、重力方向に延在する複数の集塵極板により各セルが多角形筒状に形成され、且つ重力方向から見て隣接配置された複数のセルと、各セルの中に重力方向に延びている放電線と、を備えたセル型上下向流式の湿式電気集塵機において、集塵極板と放電線の間に直流電圧を印加することでコロナ放電を生起して、セル内を上昇又は下降する排ガス中のダスト粒子を集塵極板に捕集する荷電運転中に、集塵極板を洗浄水で洗浄する方法に係る。
【0014】
この方法において、上記課題を解決すべく、セルの内側の角部の稜線に沿って洗浄水噴出ノズルを配置し、該洗浄水噴出ノズルから洗浄水量の合計として湿式電気集塵機の横断面積1m2当たり80〜400リットル/分の洗浄水を、角部を形成している隣り合った2つの集塵極板の各々へ噴出するという方法を提案する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特にセル型上下向流式のWEPにおいて、荷電運転時に大量の洗浄水を使った洗浄操作を実施する場合でも連続火花放電の発生又は短絡状態を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態によるセル型上下向流式WEPの要部の概略構成を示す断面図。
【図2】図1のセルの配置及び概略構成を示す平面図。
【図3】図1の各セルの集塵極板を洗浄するための洗浄水噴出ノズルの構成を示す図。
【図4】(a)は一セルに対応する集水機構6の一部分を示す平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は(a)のB−B矢視断面図。
【図5】図4(a)に示した集水機構6の一部分の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態によるセル型上下向流式WEPの要部の概略構成を示す断面図、図2は図1のセルの配置及び概略構成を示す平面図である。
【0018】
図1及び図2を参照すると、本実施形態のセル型上下向流式WEPは筐体1を備え、排ガス上昇流の場合においては筐体1の下部に外部からの排ガスG1を取り込むガス入口2が形成され、上部には、脱塵されたガスG2を排出するガス出口3が形成される。排ガス下降流の場合には筐体1の下部に排ガスg2を排出するガス出口3が形成され、上部には、排ガスg1を取り込むガス入口2が形成される。また、筐体1の内部には複数の放電線4と、各放電線4が内部に配設される複数のセル5、セル5の下部に位置する集水機構6などが備わる。
【0019】
図2に示すように、各セル5は、縦方向(すなわち重力方向)に延在する複数の集塵極板7により矩形筒状に形成されており、複数のセル5は、重力方向から見て格子状に配置されている。放電線4は夫々のセル5内を重力方向に延びており、周囲の集塵極板7から離すようにして両端が固定されている。また、集塵極板7が正極とされ、放電線4が負極とされ、両極の間に30kV〜75kV程度の直流の高電圧を印加する装置(不図示)が備わる。
【0020】
さらに、このWEPは、各セル5の側壁を形成する集塵極板7に洗浄水を放射する放水装置8を備え、放水装置8の洗浄水噴出ノズルは各セル5の内側に配備されている。
【0021】
各セル5における洗浄水噴出ノズルの構成を図3に示す。図3の(a)は一つの矩形筒状セルの平面図、(b)は一つの矩形筒状セルの側面図、(c)は矩形筒状セルの角部の拡大平面図である。
【0022】
各セル5の四隅のうちの対角線上の2箇所の角部に、直管形の洗浄水噴出ノズル9が配設されている。本実施形態では洗浄水噴出ノズル9は図3(a)のように対角線上の2箇所の角部に位置するが、セル5の四隅の角部すべてに配設されていてもよい。各々の洗浄水噴出ノズル9は、セル5の角部を形成している隣り合う2つの内壁面に接して固定されている(図3(c))。
【0023】
さらに、セル5の内側の角部からこの角部を成す2つの集塵極板7の各々へ洗浄水を噴出する2つの噴出孔9a,9bと、セル5の内側の角部の稜線に向けて洗浄水を噴出する噴出孔9cと、が各洗浄水噴出ノズル9の側面に形成され、これらは同じ高さに位置させてもよいし、噴出孔9cについては他の噴出孔9a及び9bより下方に位置させても良い。本実施形態では、噴出孔9a,9b,9cは、各洗浄水噴出ノズル9の側面の、セル上端部に対応する場所及びセル中間部に対応する場所にそれぞれ形成されている(図3(b))。そのため、洗浄水噴出ノズル9はセル5の上端部からセル上下端の中間部まで重力方向下向きに延びていることが好ましい。セル上端部又はセル中間部のいずれか一方に対応する場所だけに噴出孔が設けられていても良い。
【0024】
セル上端部又は/及びセル中間部の各噴出孔9a,9b,9cから集塵極板7へ噴出させる洗浄水の総量は、各々の集塵極板7にこびりついた高濃度且つ/又は高粘着性のダストを洗浄するためにWEPの横断面積1m2当たり80〜400リットル/分であり、より望ましくはWEPの横断面積1m2当たり100〜300リットル/分である。
【0025】
洗浄水噴出ノズル9は、上記のような大量の洗浄水を噴出孔9a,9b,9cから各々の集塵極板7の表面へ噴出し、集塵極板7上に洗浄水の流下膜を形成する。このとき、集塵極板7の表面からの水の跳ね返り飛散(しぶき)を防止し、集塵極板7上に安定した洗浄水の流下膜を形成するためには、次のような条件が良い。
【0026】
噴出孔9a及び噴出孔9bからの洗浄水噴出方向は、セル5の角部を形成している隣り合う2つの集塵極板7の夫々に対して洗浄水噴出ノズル9の中心から下ろした垂線を基準にした30°以上85°以下の水平角(図3(c)の角度α)の方向に、且つ、該噴出孔から水平の方向に設定される。前記および特許請求の範囲で言う「水平の方向」とは、水平線より上向きに20°以内、下向きに30°以内の角度の範囲内の方向を含む。
【0027】
残りの噴出孔9cはセル5の角部の稜線に向けて洗浄水を噴出できればよい。また噴出孔サイズに関しては、噴出孔9a及び噴出孔9bの場合3mmφ〜8mmφが好ましく、噴出孔9cの場合2mmφ〜5mmφが好ましい。
【0028】
噴出孔9a及び噴出孔9bからの洗浄水の噴出圧力は、その噴出圧力が小さ過ぎると集塵極板7上に洗浄水が行き渡らず、その噴出圧力が大き過ぎると水しぶきが激しくなるおそれがあるので、200mm水柱〜1500mm水柱であることが望ましい。
【0029】
このような放水性能を持つ洗浄水噴出ノズル9によれば、WEPの横断面積1m2当たり80〜400リットル/分という大量の洗浄水で集塵極板7の洗浄操作を実施した際、放電線4への水の跳ね返り飛散が生じなくなった。これは、セル上空から放電線および集塵極板に向けて洗浄水を放射した従来技術とは異なり、各セル5内の角部の位置から、この角部を形成している2つの集塵極板7の表面に向けて、上記の条件で洗浄水を噴射した為である。この結果、大量水による集塵極板の洗浄操作を本WEPの荷電運転中に実施しても、集塵極板7と放電線4の間で連続的な火花放電が発生しなくなった。この洗浄水噴出ノズル9をセル5の角部すべてに設置する場合には角部を形成する2つの集塵極板7の片方に洗浄水を噴射することとしてもよい。
【0030】
このような洗浄水噴出ノズル9を有する放水装置8は本WEPの荷電運転中に洗浄水噴出ノズル9より集塵極板7に洗浄水を連続的又は間欠的に噴出させるといった制御を行えるものとする。ここで言う「連続的」とは本WEPの荷電運転の間中洗浄水を噴出させることを意味し、「間欠的」とは本WEPの荷電運転中に数時間に1回の間隔で数分間洗浄水を噴出させることを意味する。
【0031】
なお、本実施形態ではセル5を矩形筒状とし、当該セルの大きさとしてはセル1辺の長さl(図3(a))が200mm〜500mmとされている。しかし、本発明のWEPに用いられるセルの形状は矩形筒状に限られず、三角形、五角形、六角形、八角形等の多角形の筒状であってもよい。つまり、本発明のWEPは多角形筒状のセルを隣接配置したものであってもよい。また集塵極板7は平板からなるが、平板の代りに網状体を設置したものであってもよい。
【0032】
また、本実施形態のWEPにおいては、図1に示すように放電線4はセル5内を通され、セル5の上方に出ている放電線4の上端が放電極用上部枠組10で固定されている。セル5の下方から出ている放電線4の下端には錘11が取り付けられ、これにより、放電線4は錘11によって重力方向にまっすぐ吊り下げられている。そして、放電線4がセル5の集塵極板7と接触しないで一定の距離離れるように、放電線4の下端の錘11が放電極用下部枠組12で固定されている。また、図2に示すように格子状に配置された複数のセル5において、セル5の一列ごとに対応して放電極用下部枠組が配置され、これらの枠組はその列間隔が所定幅に維持されるように、当該枠組に対し90°方向に配置された他の複数の枠組により接合され、全体として放電極用下部枠組12を形成している。
【0033】
このような放電極用下部枠組12は放電線4と同様にWEP運転時に荷電されるため、集塵極板7の下端に向けて流下した洗浄水が放電極用下部枠組12へ飛散すると、集塵極板7と放電極用下部枠組12の間で連続的な火花放電が発生し、ひいては短絡状態に至り荷電運転を継続することが不可能になることがある。
【0034】
そのため、放電極用下部枠組12の上方であって集塵極板7の下端に、上記のような大量の洗浄水を放電極用下部枠組12及び放電線4側へ跳ね返り飛散させることなく集水する集水機構6(図1)が設置されている。
【0035】
集水機構6の具体的構成を図4及び図5に示す。図4の(a)は一セルに対応する集水機構6の一部分を示す平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は(a)のB−B矢視断面図である。図5は図4(a)に示した集水機構6の一部分の斜視図である。
【0036】
これらの図に示すように、矩形筒状のセル5を成す4つの側壁のうちの相対する2枚の集塵極板7−1の下端に対して集水桶13が設置され、残りの2枚の集塵極板7−2の下端に対しては集水溝14が設置されている。図示されていないが、集水桶13は、格子状に配置された複数のセル5(図2)における全ての集塵極板7−1の下端の辺に亘って延びている。集水溝14もまた、格子状に配置された複数のセル5(図2)における全ての集塵極板7−2の下端の辺に亘って延びている。集水桶13の桶幅(図4のa)は5mm〜40mmとされ、集水溝14の溝幅(図4のb)は5mm〜40mmとされるのが良い。
【0037】
集塵極板7−1と集塵極板7−2が交差する部分では、図5に示すように集水桶13の端部が集水溝14と連通している。集水桶13と集水溝14の上端は同じ高さに在るが、集水溝14の深さが集水桶13の深さよりも深くされている。
【0038】
集塵極板7−1の下端から集水桶13内に流れ落ちた洗浄水は集水溝14に流れ込み、集塵極板7−2の下端から落ちる洗浄水は集水溝14に直接入る。集水溝14に集められた洗浄水はWEP筐体1の側壁側に排水として導かれるようになっている。すなわち、集塵極板7上を流下してきた大量の洗浄水は、集塵極板7の下端に設置された集水桶13及び集水溝14により放電極用下部枠組12及び放電線4側へ飛散せずに、WEP外部へ排出される。そのため、WEPが荷電運転中でも上記のような大量の洗浄水を使った洗浄操作が実施可能になる。
【0039】
なお、集水桶13から集水溝14へ容易に水が流れるように集水桶13の底面は勾配を有し、また集水溝14に集められた水もWEP筐体1の側壁側に容易に流れるように集水溝14の底面にも勾配を有することが好ましい。また、洗浄水は循環使用してもよい。
【0040】
以上に説明したような本実施形態のセル型上下向流式WEPによれば、次のような効果が得られる。
【0041】
集塵極板7で構成されたセル5の内側の角部に洗浄水噴出ノズル9を設置し、セル5を成す集塵極板7の下端に集水桶13および集水溝14を設置することにより、WEPの荷電運転時に、WEPの横断面積1m2当たり80〜400リットル/分、より望ましくはWEPの横断面積1m2当たり100〜300リットル/分といった大量の洗浄水による集塵極板の洗浄が可能になった。これにより、WEPの荷電運転を停止することなく集塵極板へのダスト付着を防止でき、WEPの高効率除塵性能及び連続的安全運転が維持される。
【符号の説明】
【0042】
1 WEPの筐体
2 ガス入口
3 ガス出口
4 放電線
5 セル
6 集水機構
7,7−1,7−2 集塵極板
8 放水装置
9 洗浄水噴出ノズル
9a,9b,9c 噴出孔
10 放電極用上部枠組
11 錘
12 放電極用下部枠組
13 集水桶
14 集水溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力方向に延在する複数の集塵極板により各セルが多角形筒状に形成され、且つ重力方向から見て隣接配置された複数のセルと、前記各セルの中に重力方向に延びている放電線と、前記各セルの側壁を成している前記集塵極板に洗浄水を放射する放水装置と、を備えた、セル型上下向流式の湿式電気集塵機において、
前記放水装置は前記セルごとに洗浄水噴出ノズルを有し、
隣接する2つの前記集塵極板により形成された、前記セルの内側の角部に、前記洗浄水噴出ノズルが前記角部の稜線に沿って設置されており、
前記洗浄水噴出ノズルの側面には、前記角部の位置から前記隣接する2つの集塵極板の各々へ洗浄水を噴出する第1及び第2の噴出孔が少なくとも形成されており、
前記各噴出孔から前記集塵極板へ噴出させる洗浄水量の合計は、前記湿式電気集塵機の横断面積1m2当たり80〜400リットル/分であることを特徴とするセル型上下向流式の湿式電気集塵機。
【請求項2】
前記第1及び第2の噴出孔の各々からの洗浄水の噴出方向は、前記隣接する2つの集塵極板の夫々に対して前記洗浄水噴出ノズルの中心から下ろした垂線を基準にした水平角α(30°以上85°以下)の方向、且つ、前記噴出孔から水平の方向に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のセル型上下向流式の湿式電気集塵機。
【請求項3】
前記第1及び第2の噴出孔は、前記洗浄水噴出ノズルの側面の、前記セルの上端部又は/及び前記セルの上下端の中間部に対応する箇所に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセル型上下向流式の湿式電気集塵機。
【請求項4】
前記各セルを形成している前記各集塵極板の下方に、前記各集塵極板上を流下してきた洗浄水を集水する集水機構をさらに備え、
前記集水機構は、前記各集塵極板上を流下してきた洗浄水が流れ込むように前記集塵極板の下端の辺に亘って延びる集水桶および集水溝を有し、該集水桶および集水溝が前記各集塵極板の交差部で互いに連通し、該集水溝は、前記各集塵極板上を流下してきた洗浄水を前記湿式電気集塵機の筐体の側壁側に排水として導くことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のセル型上下向流式の湿式電気集塵機。
【請求項5】
前記複数のセルは、各セルが複数の前記集塵極板により矩形筒状に形成され、且つ、格子状に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のセル型上下向流式の湿式電気集塵機。
【請求項6】
前記放水装置は前記湿式電気集塵機の荷電運転中に前記洗浄水噴出ノズルより前記各集塵極板に洗浄水を連続的又は間欠的に噴出させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のセル型上下向流式の湿式電気集塵機。
【請求項7】
重力方向に延在する複数の集塵極板により各セルが多角形筒状に形成され、且つ重力方向から見て隣接配置された複数のセルと、前記各セルの中に重力方向に延びている放電線と、を備えたセル型上下向流式の湿式電気集塵機において、前記集塵極板と前記放電線の間に直流電圧を印加することでコロナ放電を生起して、前記セル内を上昇又は下降する排ガス中のダスト粒子を前記集塵極板に捕集する荷電運転中に、前記集塵極板を洗浄水で洗浄する方法であって、
前記セルの内側の角部の稜線に沿って洗浄水噴出ノズルを配置し、該洗浄水噴出ノズルの側面に形成した噴出孔から合計洗浄水量として前記湿式電気集塵機の横断面積1m2当たり80〜400リットル/分の洗浄水を、前記角部を形成している隣り合った2つの集塵極板の各々へ噴出することを特徴とする集塵極板の荷電時洗浄方法。
【請求項8】
前記角部を形成している隣り合った2つの集塵極板の各々に対して前記洗浄水噴出ノズルの側面の噴出孔から噴出させる前記洗浄水の噴出方向は、該2つの集塵極板の夫々に対して前記洗浄水噴出ノズルの中心から下ろした垂線を基準にした水平角α(30°以上85°以下)の方向、且つ、該噴出孔から水平の方向に設定されることを特徴とする請求項7に記載の集塵極板の荷電時洗浄方法。
【請求項9】
前記セルの上端部又は/及び前記セルの上下端の中間部から前記洗浄水を噴出させることを特徴とする請求項7又は8に記載の集塵極板の荷電時洗浄方法。
【請求項10】
前記各集塵極板上を流下してきた洗浄水が流れ込むように前記集塵極板の下端の辺に亘って延びる集水桶および集水溝を設置し、該集水桶および集水溝を前記各集塵極板の交差部で互いに連通させ、該集水溝により、前記各集塵極板上を流下してきた洗浄水を湿式電気集塵機の筐体の側壁側に排水として導くことを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の集塵極板の荷電時洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−52337(P2013−52337A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191709(P2011−191709)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(392022374)テックプロジェクトサービス株式会社 (1)
【出願人】(391029613)
【出願人】(511214901)
【Fターム(参考)】