説明

湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤

【課題】芳香族基含有基材、例えばポリエステルシートに対して厳冬期においても良好な密着性を有し、化粧ポリエステルシートのラミネート加工等に有用な湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】ポリオール組成物(A)と、多官能イソシアネート化合物(B)とを反応させて得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーであって、構成単位として芳香族ジカルボン酸を有するポリエステルポリオール(a1)を全ポリオールに対して50〜95重量%、EO−POランダム共重合ポリオール(a2)を全ポリオールに対して5〜20重量%含有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族基含有基材、例えばポリエステルシートに対して厳冬期においても良好な密着性を有し、化粧ポリエステルシートのラミネート加工等に有用な湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
合板、MDF、パーティクルボード等の木質基材やケイカル板等の無機基材等に化粧シートを貼り合わせることにより製造される化粧材は、壁面パネル、ドア、窓枠、家具等に使用されており、従来は主にエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンが用いられてきた。近年、反応性ホットメルト接着剤は生産性に優れることや、樹脂分が100%のため基材が接着剤中の水分を吸収して反りが発生するおそれがないこと等が評価され、化粧シートのラミネート加工においても使用されるようになっている。
【0003】
これまで、化粧シートとして主に塩ビシートが用いられてきたが、周知のように塩ビは焼却時に有害物質を生成するおそれがあるため、塩ビシートを使用した化粧材は減少傾向にあり、代わりにポリオレフィンシートやポリエステルシートを使用した化粧材が増加している。なお、ポリオレフィンは極性がないため極めて接着が難しく、接着面にウレタン樹脂等によるプライマー処理を施したものが使用されている。一方、ポリエステルはある程度の極性を有しているため、プライマー処理が行われる場合もあるが、コロナ放電処理等の簡易的な処理に留まる場合が多い。しかしながら、プライマー未処理のポリエステルシートは特に低温接着性が悪く、これに対応できる接着剤の検討はなされていないのが現状である。
【0004】
特許文献1には、分子内に芳香環を有するポリカーボネート等の被着体に対する接着性に優れた湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物が記載されている。しかしながら、実施例で常温接着性のみが検討されていることからも明らかなように、接着性が顕著に低下する低温下における接着性までも考慮したものではなかった。また、本出願人は特許文献2においてポリエステルシートに対する密着性に優れる接着剤を提案しているが、厳冬期における密着性について未だ改善の余地があった。
【特許文献1】特開平5-194929号公報
【特許文献2】特願2007-097401号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、芳香族基含有基材、例えばポリエステルシートに対して厳冬期においても良好な密着性を有し、化粧ポリエステルシートのラミネート加工等に有用な湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリオール組成物(A)と、多官能イソシアネート化合物(B)とを反応させて得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーであって、構成単位として芳香族ジカルボン酸を有するポリエステルポリオール(a1)を全ポリオールに対して50〜95重量%、EO−POランダム共重合構造を有するポリエーテルポリオール(a2)を全ポリオールに対して5〜20重量%含有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明になる湿気硬化型ホットメルト型接着剤は、ポリエステルシート等に対して厳冬期においても良好な密着性を有しているため、低温下でも基材の予備加熱を行うことなくラミネート加工が可能である。また、該湿気硬化型ホットメルト型接着剤を使用して製造された化粧材は、低温下においても基材とシートが容易にはく離せず、耐寒性が高く有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤は、ポリオール組成物(A)と、多官能イソシアネート化合物(B)とを反応させて得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含有する。ポリオール組成物(A)は、構成単位として芳香族ジカルボン酸を有するポリエステルポリオール(a1)とEO−POランダム共重合構造を有するポリエーテルポリオール(a2)を含有し、全ポリオールに対する(a1)の含有量が50〜95重量%であり、全ポリオールに対するEO−POランダム共重合ポリオール(a2)の含有量が5〜20重量%である。このような組成により、ポリエステルシート等の芳香族基含有基材に対して、厳冬期においても良好な密着性が得られる。
【0009】
構成単位として芳香族ジカルボン酸を有するポリエステルポリオール(a1)を構成する芳香族ジカルボン酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。また、芳香族でないジカルボン酸を含んでいても良く、例えばアジピン酸が挙げられる。また、前記ジカルボン酸と反応させるジオールとしては、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0010】
EO−POランダム共重合構造を有するポリエーテルポリオール(a2)は、ポリマー中にエチレンオキサイド構造とプロピレンオキサイド構造がランダムに存在し、両末端に水酸基を有するポリエーテルポリオールである。ポリオール組成物(A)中にEO−POランダム共重合ポリオールを含有しない場合、5℃程度の低温下における密着性は得られるものの、厳冬期の工場内温度に相当する2℃程度においては、十分な密着性を得ることができない。
【0011】
ポリオール組成物(A)には、前記(a1)、(a2)以外に、さらにその他のポリオール成分を含有しても良い。例えば、構成単位として芳香族ジカルボン酸を有しないポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールを用いることができる。ただし、前記(a1)および(a2)が前記含有割合を満たす範囲内で使用に限られる。
【0012】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得るため、前記ポリオール組成物(A)との反応に用いる多価イソシアネート化合物(B)としては、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類等が挙げられる。中でも湿気硬化性、安全面等の点から、4,4’−MDIやそのカルボジイミド変性体であるカルボジイミド変性MDIが好ましく用いられる。また、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基とポリエステルポリオールに含まれる水酸基の当量比率NCO/OHは1.5〜2.5であることが望ましい。この範囲内であれば、溶融装置内で長時間加熱溶融状態にあっても顕著な増粘がなく、硬化反応時の二酸化炭素による発泡が少ない。また、未反応の多官能イソシアネート化合物の揮発による作業環境への影響が少ない。
【0013】
本発明における湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤は、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー以外にも、必要に応じて粘着付与樹脂、触媒、造核剤、着色剤、老化防止剤等を添加することができる。粘着付与樹脂としては、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、ロジンエステル等が挙げられる。触媒としては、3級アミン系、錫系の触媒が挙げられる。造核剤としてはパラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。なお、低温下における硬化性を向上させるためには、触媒や造核剤の添加が有効である。
【0014】
以下、実施例、比較例に基づき本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に何ら限定されるものでない。
【実施例】
【0015】
実施例及び比較例に使用したポリエステルポリオール(a1)は、表1に記載した性状を有する市販品を用いた。例えば、ポリエステルポリオール1は、ジカルボン酸としてアジピン酸、テレフタル酸を構成成分とし、ジオールとしてヘキサンジオールを構成成分とし、結晶性であり、分子量が4500であることを示す。また、ポリエーテルポリオール(a2)として、エチレンオキサイド構造とプロピレンオキサイド構造がランダムに存在し、分子量が3000であるポリエーテルポリオール(1)を用いた。
【0016】
【表1】

【0017】
湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤の製造
ポリエステルポリオール1 150重量部、ポリエステルポリオール2 100重量部、ポリエステルオール3 100重量部、ポリエーテルポリオール(1)20重量部、触媒としてJEFFCAT DMDEE(ハンツマン社製、商品名)0.2重量部、造核剤として合成ワックスであるFT105(日本精蝋株式会社製、商品名)2.5重量部を攪拌装置、温度制御装置、真空ポンプを取り付けたセパラブルフラスコに入れ、120℃、減圧下で2時間攪拌し、脱水した。次に、多官能イソシアネート化合物としてミリオネートMT(4、4’−MDI、日本ポリウレタン工業社製、商品名)53.9重量部を加え(NCO/OH=1.8)、120℃、窒素雰囲気下で3時間攪拌して反応させ、常温で固体の湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を得た。また、表2記載の配合で実施例1と同様に製造を行い、各湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を得た。各湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤について、以下の評価を行った。
【0018】
試験評価方法
120℃で溶融した湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤をポリエステル化粧シート(50μm厚、プライマー処理なし)に50g/m2塗布し、パーティクルボードに貼り合わせた後、120℃に加熱したヒートロールで圧締することにより試験体を作成した。各試験体を2℃(低温)または23℃(室温)雰囲気下で1日間養生した後、強制破壊して破壊状態を観察した。全面材料破壊であったものを○、材料破壊と界面はく離が混在しているものを△、全面界面はく離または凝集破壊であったものを×と評価した。
【0019】
【表2】

【0020】
表2に示されるように、全ポリオールに対する(a1)の含有量が50〜95重量%であり、全ポリオールに対する(a2)の含有量が5〜20重量%である実施例の各湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤は、低温においてもポリエステルシートに優れた密着性を有していることが分かる。一方、全ポリオールに対する(a2)の含有量が5重量%未満または20重量%を超える比較例の各湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤は、低温における密着性が不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール組成物(A)と、多官能イソシアネート化合物(B)とを反応させて得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーであって、構成単位として芳香族ジカルボン酸を有するポリエステルポリオール(a1)を全ポリオールに対して50〜95重量%、EO−POランダム共重合構造を有するポリエーテルポリオール(a2)を全ポリオールに対して5〜20重量%含有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。

【公開番号】特開2009−242513(P2009−242513A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89257(P2008−89257)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】