説明

湿潤性の向上したハイドロゲルコンタクトレンズ

本発明は、湿潤性の向上したハイドロゲルコンタクトレンズに関し、より詳細には、アクリルモノマーとオリゴ糖を主成分として含み、任意でシリコーン化合物を含むコンタクトレンズ用組成物を架橋重合して製造したIPN(interpenetrating polymer network)の基礎構造を有するコンポジットメンブレイン(composite membrane)からなるハイドロゲルコンタクトレンズに関する。本発明におけるコンタクトレンズでは、オリゴ糖の含有により、コンタクトレンズの引張強度、及び湿潤性が極大化され、装用感に優れるだけでなく、洗浄液、保存液、蛋白除去液などのケア溶液に長期保存しても、湿潤性を持続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤性が向上したハイドロゲルコンタクトレンズに関し、より詳細には、アクリルモノマーとオリゴ糖を主成分として含み、任意で、シリコーン化合物を含むコンタクトレンズ用組成物を架橋重合して製造したIPN(interpenetrating polymer network)のイントラストラクチャー(intra structure)を有するコンプレックスメンブレイン(complex membrane)からなるハイドロゲルコンタクトレンズに関する。本発明におけるコンタクトレンズでは、オリゴ糖の含有により、コンタクトレンズの引張強度、及び湿潤性が高められ、装用感に優れ、洗浄液、保存液、蛋白除去液などのケア溶液に長期間保存しても、湿潤性を持続する。
【背景技術】
【0002】
産業化を経て、デジタル、情報化志向として定義される21世紀では、本やコンピュータを用いた近距離作業が増えており、それにより目の健康が脅かされている。コンタクトレンズとして最も多く用いられているハイドロゲル素材は、架橋剤によりモノマーが互いに結合された網目構造を形成しているポリマーである。コンタクトレンズに初めて用いられたハイドロゲル物質は、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(ポリヘマ(polyHEMA)、通常、ヘマ(HEMA)と呼ばれる)であり、1960年代にウィシュトルレ(Wichterle)により開発された。ポリヘマ(polyHEMA)は、ヒドロキシエチルメタクリレートモノマーが架橋剤(EGDMA)により最も単純な方法で結合したホモポリマー(homopolymer)である。ポリヘマ(PolyHEMA)は、次の理由によりコンタクトレンズに最も広く用いられている。つまり、非常に柔軟な構造を有しており、pHと温度変化に安定しており、ポリヘマ(PolyHEMA)を用いて容易にコンタクトレンズを作ることができる。しかし、ポリヘマ(PolyHEMA)は、比較的湿潤性(wettability)が低いため、長期間レンズを連続装用すると、角膜浮腫、充血、痛みなどの不都合を生じる可能性がある。従って、ポリヘマ(PolyHEMA)の湿潤性を改善するために、新製品の開発が必要とされる。シリコーン−ゴム素材のレンズも、過去数年間、治療用と小児用に使われていた。しかしながら、シリコーン−ゴムのレンズは、湿潤性と耐久性に優れているにも拘わらず、臨床的にさまざまな欠点を有している。例えば、涙液がレンズを通って流れることができず、眼球によくレンズがくっついたり、レンズが極めて高い疎水性であるため、眼球の表面に脂質沈着をもたらす。シリコーンハイドロゲル材料は、シリコーンモノマーとハイドロゲルモノマーを用いることによって製造され、シリコーン−ゴムレンズの欠点を克服するために開発されている。シリコーン成分は非常に高い酸素透過性を備え、ハイドロゲル成分は柔軟性、可溶性、及び涙液運搬性を高め、レンズの動きを促進する。しかし、シリコーンハイドロゲルは、異質の特性を有する2つの異なるモノマー、すなわち、シリコーンとハイドロゲルモノマーの組合わせを用いて製造され、従って、2つの異なるモノマーを適切に混ぜ合わせる技術を必要とする。現在、商用化されているシリコーンハイドロゲルレンズとしては、チバビジョン(CIBA Vision’s)のフォーカス ナイト アンド デイ(Focus Night & Day)、ボシュロム (Bausch & Lomb’s)のピュア ビジョン(PureVision)、ビスタコン(Vistakon’s)のアキュビュー アドバンス(Acuvue Advance)などがある。上記ナイト アンド デイ(Night & Day)とピュア ビジョン(Purevision)は、一日連続装用(overnight use)として認可されており、アキュビュー アドバンス(Acuvue Advance)は、日中装用のみ認可されている。
【0003】
商用化されているシリコーン−ハイドロゲルレンズは、湿潤性の面で改善の余地があるものと報告されており、レンズの表面改質によって、湿潤性を改善しようとする試みがなされてきた。国際公開番号第WO06/039466号には、内部湿潤剤としてポリアミド系、ポリラクトン系、ポリイミド系、ポリラクタム系ポリマーなどのさまざまな親水性ポリマーを用いてシリコーンハイドロゲルレンズを製造する方法が開示されている。しかし、臨床面での湿潤効果が全く開示されておらず、内部湿潤剤が数%〜数十%の量で含有されることにより、コンタクトレンズに要求される固有の特性が劣化するということが報告されている。
【0004】
また、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの含水率を維持するレンズケア溶液を開発する試みがなされている。国際公開番号第WO06/009101号では、水分の蒸発を防ぐために、主成分としてポリビニールアルコール(PVA)、セルロース、スクアレンを含有する溶液を製造する方法を開示している。しかしながら、コンタクトレンズの表面の親水性官能基に応じて水分維持が変化するので、効果を発揮しない。ジャーナル オブ コリアン オプサルマック オプティクス ソサイエティー(Journal of Korean Oph.Opt.Soc.)11、27(2006)では、レンズの湿潤性を維持する方法として、レンズのケア溶液を製造し、このようにして製造された溶液と購入した市販のケア溶液との間に、結果として生じた接触角を比較している。レンズを製造するために用いられる材質とケア溶液の種類に応じて湿潤性が変化する。米国特許第4,820,352号は、コンタクトレンズの湿潤性を補う保存剤として、界面活性剤、及びソルビン酸を含む組成物を開示している。しかしながら、この技術は、レンズ装用者の目を刺激するだけでなく、レンズの耐久性を低下させることが報告されている。韓国特許公開番号第2001−007722号には、蛋白除去、洗浄、及びレンズケア溶液の目的で、分子量5,000以上の多糖類、非イオン性界面活性剤、及びコラーゲン誘導体を主成分として含む多目的レンズケア溶液が開示されている。湿潤性の増加は、レンズの元素成分を変えることによって得られるものではないので、一時的なものである。
【0005】
本発明は、上記の全ての問題点を一度に克服するためになされた結果として得られたものである。即ち、本発明では、コンタクトレンズの濡れ特性を、表面改質、またはレンズケア溶液の代わりに、適切な材料を重合させることによって増加させ、本発明のコンタクトレンズを用いることによって相対的に高い水分含有率を長期間維持できることを見いだすことにより本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開番号第WO06/039466号
【特許文献2】国際公開番号第WO06/009101号
【特許文献3】米国特許第4,820,352号
【特許文献4】韓国特許公開番号第2001−007722号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ジャーナル オブ コリアン オプサルマック オプティクス ソサイエティー(Journal of Korean Oph.Opt.Soc.)11、27(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、コンタクトレンズの濡れ特性と、引張強度などの機械的性質とを向上させることができるコンタクトレンズ用組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、眼球乾燥症や角膜浮腫などの眼科疾患を生じることなく、高い酸素含有率を長期間維持できるコンタクトレンズを提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、洗浄液、保存液、蛋白除去液などのケア溶液に長期間レンズを漬けて保存しても、湿潤性を維持できるコンタクトレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、a)アクリルモノマー30〜99.99重量%、及びb)オリゴ糖0.01〜70重量%を含むコンタクトレンズ用組成物を開示する。
【0012】
また、本発明は、a)アクリルモノマー30〜99.98重量%、b)オリゴ糖0.01〜20重量%、及びc)シリコーン化合物0.01〜50重量%を含むコンタクトレンズ用組成物を開示する。
【0013】
さらに、本発明は、組成物を架橋重合することによって製造されたコンプレックスメンブレイン(complex membrane)であるハイドロゲルコンタクトレンズを開示する。
【0014】
本発明は、IPNのイントラストラクチャー(intra structure)を有しており、引張強度が3〜15kg/cm2、含水率が30〜75%、ぬれ角が40〜150゜、及び弾性率が0.3〜1.6MPaを有するコンプレックスメンブレイン(complex membrane)であるハイドロゲルコンタクトレンズを開示する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハイドロゲルコンタクトレンズは、IPNのイントラストラクチャー(intra structure)を有するコンプレックスメンブレイン(complex membrane)であって、長時間装用しても装用感がよく、引張強度、含水率、ぬれ角、及び弾性率などの諸般物性に優れているため、眼球乾燥症、角膜浮腫などの眼科疾患を引き起こす可能性がほとんどない。
【0016】
本発明のコンタクトレンズは、アクリルモノマーとともにオリゴ糖が必須成分として含有された組成物を架橋重合して製造されることにより、レンズ洗浄液、ケア溶液または保存液により物理的に劣化しない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】比較例2で製造されたコンタクトレンズの赤外線スペクトルである。
【図2】実施例3で製造されたコンタクトレンズの赤外線スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において開示されたコンタクトレンズ用組成物は、必須成分としてアクリルモノマーとオリゴ糖とを含む。
【0019】
オリゴ糖(oligosaccharide)は、眼球に有用な生体適合性有機物質であって、アクリルモノマーと架橋重合し、IPNの基礎構造を有するコンプレックスメンブレイン(complex membrane)を形成する。IPNの基礎構造内には気孔が存在し、この気孔を通って、気体、及び液体が移動できる。コンプレックスメンブレイン(complex membrane)のIPNのイントラストラクチャー(intra structure)内の気孔の大きさ、及び分布に応じて、含水率等のコンタクトレンズとして要求されるさまざまな物性は、大きく異なる。本発明では、IPNの基礎構造の気孔サイズを調節するためにオリゴ糖が必須成分として用いられ、特に、レンズが水分と容易に結合できる方法で、イントラストラクチャー(intra structure)を改質することにより、眼球の湿潤性の調節とレンズの引張強度の改善とが得られ、酸素の含有率と透過性が高まる。
【0020】
オリゴ糖は、2〜1,000個のモノマー、望ましくは5〜500個のモノマーを含むオリゴマーであり、グリコシド結合により互いに結合されている。オリゴ糖は、植物に存在する天然のオリゴ糖類であるか、または、多糖類(polysaccharide)を部分的に分解させて製造された合成のオリゴ糖類である。天然オリゴ糖は、ほとんどが、スクロース、マルトース(麦芽糖)、ラクトース(乳糖)などの二糖類であり、糖蛋白質と糖脂質も、オリゴ糖類を含有する。また、調節された粘性を有するオリゴ糖は、化学的、もしくは物理的のいずれかの開裂法により製造される。化学的方法として、多糖類の分子構造(例えば、澱粉、セルロース、グリコーゲン、キチン、ペクチン、コンドロイチン硫酸、アルギン、カラギーナン、グリコサミノグリカン)が、例えば、適切な酸、及びアルカリを用いる加水分解、またはオゾン(O3)処理のいずれかによって分解される。本発明では、多糖類の分子構造を分解するためにさまざまな既知の方法が用いられるが、これに限定されるものではない。本発明で用いるオリゴ糖を例示すれば、スクロースオリゴ糖、マルトースオリゴ糖、ラクトースオリゴ糖、グルコースオリゴ糖、グルコサミンオリゴ糖、N−アセチルグルコサミンオリゴ糖、グルコピラノシドオリゴ糖、グルコサミノグリカンオリゴ糖(例えば、コンドロイチン、またはその塩、デルマタン、またはその塩、ケラタン、またはその塩、ヘパラン、またはその塩、ヒアルロナン、及びヘパリン)、ガラクツロン酸オリゴ糖、セロビオースオリゴ糖、及びアルギンオリゴ糖が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0021】
オリゴ糖は、レンズの湿潤性を十分に向上させることができるが、本発明のオリゴ糖は、レンズの湿潤性を極大化するために、イオン交換によって親水性基と置換されることができ、親水性基の置換率は、オリゴ糖の全重量に対して5〜100重量%、望ましくは20〜100重量%である。親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基(−OH)、カルボン酸基(−COOH)、カルボキシレート基(−COOR、R=C1-6アルキル)、ケトン基(−CO−)、アルデヒド基(−COH)、アミド基(−NHCO−)、アルカノエート基(RCOO−、R=C1-6アルキル)、ヒドロキシメチル基(−CH2OH)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0022】
オリゴ糖は、モノマーの個数に応じて粘度が変わり得るが、本発明では、粘度が30〜20,000cPの範囲、望ましくは100〜10,000cPの範囲であるオリゴ糖を用いる。オリゴ糖の粘度が30cPより低い場合、分子量が小さくなるので、保水性が低下し、20,000cPより高い場合、モノマーが十分に配合されず、気泡を形成して、製品品質の低下が発生し得る。従って、オリゴ糖の粘度は、レンズの湿潤性を調節する際に重要な要素になる。
【0023】
以下に、本発明におけるコンタクトレンズ用組成物の構成要素と、コンタクトレンズの製造方法についてより具体的に説明する。
本発明のコンタクトレンズ用組成物は、必須成分としてアクリルモノマーとオリゴ糖を含む。
【0024】
本発明のアクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、C1−C15飽和、または不飽和アルキルアクリレート、またはメタクリレート、1〜3つ置換されたヒドロキシルアルキル基を含有するC1−C15ヒドロキシアルキルアクリレート、またはメタクリレート、N,N−ジ(C1−C15飽和、または不飽和アルキル)アクリルアミドからなる基、およびその混合物から選択することができる。具体的には、本発明のアクリルモノマーは、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MA)、アクリルアミド、メタクリル酸ラウリル(LMA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリセロールモノメタクリレート(GMMA)、及びN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)からなる基、及びその混合物から選択することができる。
【0025】
また、コンタクトレンズの親水性を改善するために、アクリルモノマーの一部を、N−ビニルピロリドン(NVP)、及びN−メチルピロリドン(NMP)からなる基から選択される親水性モノマーと置き換えられることもできる。親水性モノマーは、0〜50重量%、望ましくは10〜30重量%の量で使用可能である。アクリルモノマーに取って代わる親水性モノマーの量が50重量%より多い場合は、引張強度が弱くなる。
【0026】
必須成分としてアクリルモノマーとオリゴ糖が含まれるコンタクトレンズ用組成物において、アクリルモノマーが30〜99.99重量%、及びオリゴ糖が0.01〜70重量%、望ましくは、アクリルモノマーが40〜99.99重量%、及びオリゴ糖が0.01〜60重量%含有される。アクリルモノマーの量が、上記範囲より少ないか、もしくはオリゴ糖の量が過度に多い場合は、架橋重合して製造されたコンプレックスメンブレイン(complex membrane)が壊れやすく、一方、アクリルモノマーの量が過度に多いか、もしくは、オリゴ糖の量が少なすぎる場合は、気孔の大きさが調節されたIPNのイントラストラクチャー(intra structure)を形成し、レンズの引張強度と湿潤性をともに向上させることは難しい。
【0027】
また、本発明のコンタクトレンズ用組成物は、レンズの湿潤性を改善するために、シリコーン化合物をさらに含むことができる。シリコーン化合物は、シリコン(Si)原子を有する炭化水素化合物であって、本発明のシリコーン化合物のシリコン(Si)原子は、ヒドロキシ基、C1−C10のアルコキシル基、アミド基、エステル基、シロキシ基と置換されるか、または非置換であり得る。本発明におけるシリコーン化合物の例としては、2−(トリメチルシリロキシ)エチルメタクリレート、トリス(3−メタクリロキシプロピル)シラン、3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、及び4−メタクリロキシブチル末端ポリジメチルシロキサンがある。
【0028】
必須成分としてアクリルモノマー、オリゴ糖、及びシリコーン化合物が含まれるコンタクトレンズ用組成物において、アクリルモノマーが、30〜99.98重量%、オリゴ糖が、0.01〜20重量%、及びシリコーン化合物が、0.01〜50重量%、望ましくは、アクリルモノマーが、40〜94.9重量%、オリゴ糖が、0.1〜15重量%、及びシリコーン化合物が、5〜45重量%含有される。シリコーン化合物の含有量が前記量よりも少ない場合は、湿潤性を向上させる効果はわずかであり、また、含有量が多すぎる場合は、硬度が増してレンズが壊れやすくなり、引張強度、及び湿潤性が急激に低下する。従って、コンタクトレンズの弾性率を向上させるために用いられるシリコーン化合物は、十分な引張強度、及び湿潤性を有するコンタクトレンズを製造するために、適切な量で含有される。
【0029】
本発明の組成物を用い、通常行われる重合を行うことによって、コンプレックスメンブレイン(complex membrane)の形状を有するコンタクトレンズが製造される。
【0030】
上記組成物に架橋剤、例えば、アゾジイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサンを入れ、室温〜200℃の温度で攪拌し、架橋重合させた後、0.04〜2.0mm厚さの膜形態に成形してコンタクトレンズを製造する。本発明のコンタクトレンズの湿潤性は、架橋重合度合い、すなわち、ポリマーの分子量を調整することによって高めることができる。
【0031】
このように製造される本発明のコンタクトレンズは、IPNのイントラストラクチャー(intra structure)を有する薄い透明硬化膜である。このように製造された膜のイントラストラクチャー(intra structure)、及び外表面には、オリゴ糖に由来した親水性官能基が存在し、水分を化学的に吸着し、それによってコンタクトレンズの接触角を制御する。
【0032】
このように製造されたコンタクトレンズは、引張強度が3〜15kg/cm2、含水率が38〜65%、ぬれ角が40〜150゜、弾性率が0.3〜1.6MPaである。
【0033】
本発明のコンタクトレンズは、比較的高い酸素透過性を示し、数十日間連続装用しても、眼球乾燥症、角膜浮腫などの眼科疾患を起こさずに高レベルの酸素含有率を維持する。
【0034】
[実施例]
本発明は、以下の実施例に基づいて説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0035】
比較例1〜3、及び実施例1〜9
表1に示すように、様々な種類のコンタクトレンズの組成成分を、アクリルモノマー単独(比較例1〜3)、及びアクリルモノマーとオリゴ糖の両方(実施例1〜9)を用いて用意した。上記組成物(100g)に、架橋剤としてアゾジイソブチロニトリル(0.4g)を入れて攪拌し、モノマー混合物を調製した。コンタクトレンズ形状のモールドで熱重合を行った。
【0036】
比較例4〜5、及び実施例10〜18
表1に示すように、様々な種類のコンタクトレンズの組成成分を、アクリルモノマーとシリコーン化合物(比較例4〜5)、及びアクリルモノマーとオリゴ糖とシリコーン化合物(AcrymerTM−SiHy843、有効成分名;シリコーンアクリレート)(実施例10〜18)を用いて用意した。上記組成物100gに、架橋剤としてアゾジイソブチロニトリル(0.4g)を入れて攪拌し、モノマー混合物を調製した。コンタクトレンズ形状のモールドで熱重合を行った。
【0037】
実施例、及び比較例において用いられたモノマーの略語は下記の通りである。
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
GMMA:グリセロールモノメタクリレート
MA:メタクリル酸
DMA:N,N−ジメチルアクリルアミド
NVP:N−ビニルピロリドン
【0038】
実験例:コンタクトレンズの物性評価
比較例1〜5、及び実施例1〜18で製造されたコンタクトレンズ、及び商用コンタクトレンズ製品の物性が評価され、その結果を下記表1に示す。
【0039】
[評価方法]
1)引張強度は、JIS K7113:1995により測定した。
2)含水率は、ISO18369−4:2006により測定した。
3)ぬれ角(゜)は、DSA100を用いて固定気泡測定方法により測定した。
4)弾性率(MPa)は、ヤング率(Young’s Modulus)による法方により測定した。
【0040】
【表1】


【0041】
表1は、オリゴ糖を含有する組成物に関する実施例が、オリゴ糖を含まない組成物に関する比較例と比較すると、引張強度、及び湿潤性ともに高いことを示している。特に、アクリルモノマーとオリゴ糖を含有するコンタクトレンズ(実施例1〜9)は、引張強度、及び湿潤性ともに、アクリルモノマーのみを含有するコンタクトレンズ(比較例1〜3)よりも高くなっている。アクリルモノマー、シリコーン化合物、及びオリゴ糖を含有するコンタクトレンズ(実施例10〜18)も、引張強度、及び湿潤性ともに、アクリルモノマーとシリコーン化合物のみを含有するコンタクトレンズ(比較例4〜5)よりも高くなっている。
【0042】
また、コンタクトレンズの組成物において、シリコーン化合物をさらに含有したコンタクトレンズ(実施例10〜18)は、シリコーン化合物を含有しないコンタクトレンズ(実施例1〜9)と比較して、弾性率がわずかに増加し、引張強度と湿潤性は少し低くなった。実施例10〜18の組成物は、本発明が目的とする湿潤性が向上したコンタクトレンズの材料としては十分である。従って、コンタクトレンズの用途によっては、コンタクトレンズの組成物に、特定量のシリコーン化合物を追加で含有させることにより、コンタクトレンズの弾性率、引張強度、及び湿潤性を向上させることができる。
【0043】
一方、比較例2、及び実施例3で製造されたコンタクトレンズの赤外線スペクトルを、図1、及び図2にそれぞれ示した。図1、及び図2から、必須組成成分としてオリゴ糖を含有したコンタクトレンズ(実施例3)は、オリゴ糖を含有していないコンタクトレンズ(比較例2)と比較して、ヒドロキシ基等の親水基を多量に含有していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上述のように、本発明のコンタクトレンズは、必須成分として、アクリルモノマーとオリゴ糖を含有し、適用用途に応じて任意でシリコーン化合物をさらに含有するレンズ組成物を架橋重合して製造したコンプレックスメンブレイン(complex membrane)であって、レンズの外表面と分子内構造に親水性官能基が化学的に結合しているため、湿潤性に優れており、長時間装着した後でも目の疲労感が著しく軽減される。また、親水性官能基は本発明のコンタクトレンズに化学的に結合されており、レンズの洗浄剤、ケア溶液、保存液によっても親水性官能基が容易に解離しない。
【0045】
従って、本発明のコンタクトレンズは、市販のシリコーンハイドロゲルレンズに取って代わることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アクリルモノマー30〜99.99重量%と、
(b)オリゴ糖0.01〜70重量%と
を含むコンタクトレンズ用組成物。
【請求項2】
(a)アクリルモノマー30〜99.98重量%と、
(b)オリゴ糖0.01〜20重量%と、
(c)シリコーン化合物0.01〜50重量%と
を含む請求項1に記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項3】
前記アクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、C1−C15飽和、または不飽和アルキルアクリレート、またはメタクリレート、1〜3つ置換されたヒドロキシアルキル基を含むC1−C15ヒドロキシアルキルアクリレート、またはメタクリレート、及びN,N−ジ(C1−C15飽和、または不飽和アルキル)アクリルアミドからなる基、またはその混合物から選択される請求項1または請求項2に記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項4】
前記アクリルモノマーは、さらにN−ビニルピロリドン(NVP)、及びN−メチルピロリドン(NMP)からなる基から選択された親水性モノマーを含む請求項1または請求項2に記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項5】
前記オリゴ糖は、ヒドロキシ基(−OH)、カルボン酸基(−COOH)、カルボキシレート基(−COOR、R=C1-6アルキル)、ケトン基(−CO−)、アルデヒド基(−COH)、アミド基(−NHCO−)、アルカノエート基(RCOO−、R=C1-6アルキル)、及びヒドロキシメチル基(−CH2OH)からなる基から選択された親水性基と置換されるか、または非置換である請求項1または請求項2に記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項6】
前記オリゴ糖の粘度が、30〜20,000cPである請求項5に記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項7】
前記オリゴ糖は、スクロースオリゴ糖、マルトースオリゴ糖、ラクトースオリゴ糖、グルコースオリゴ糖、グルコサミンオリゴ糖、N−アセチルグルコサミンオリゴ糖、グルコピラノシドオリゴ糖、グルコサミノグリカンオリゴ糖、ガラクツロン酸オリゴ糖、セロビオースオリゴ糖、またはアルギンオリゴ糖からなる基から選択される請求項6に記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項8】
前記シリコーン化合物のシリコン(Si)原子は、ヒドロキシ基、C1〜C10のアルコキシ基、アミド基、エステル基、及びシロキシ基と置換されるか、または非置換である請求項2に記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項9】
前記シリコーン化合物は、2−(トリメチルシリルオキシ)エチルメタクリレート、トリス(3−メタクリルオキシプロピル)シラン、3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、及び4−メタクリルオキシブチル末端ポリジメチルシロキサンからなる基から選択される請求項2または請求項8に記載のコンタクトレンズ用組成物。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の組成物を架橋重合して製造したコンプレックスメンブレイン(complex membrane)であるハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項11】
IPNの基礎構造を有するコンプレックスメンブレイン(complex membrane)である請求項10に記載のハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項12】
引張強度が3〜15kg/cm2、含水率が30〜75%、ぬれ角が40〜150゜、弾性率が0.3〜1.6MPaである請求項11に記載のハイドロゲルコンタクトレンズ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−514231(P2012−514231A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544349(P2011−544349)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002193
【国際公開番号】WO2010/076923
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(510256159)コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー (4)
【出願人】(511158579)インテロジョ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】