説明

満腹感、摂食量の低減、および体重管理のための湿熱処理によって作製された全穀粒‐ハイドロコロイド複合体の使用

【課題】湿熱処理によって作製された全穀粒‐ハイドロコロイド複合体、および食品におけるその使用に関する。
【解決手段】本発明は、全穀粒‐ハイドロコロイド複合体、その作製、および食品におけるその使用に関する。この複合体は、それらが組み込まれた食品に対して、より長時間持続し、および/またはより高い満腹感をもたらすという有用な影響を、好ましくは食感に悪影響を及ぼすことなく与えるものであり、その加工によって、市販可能なエネルギー管理のための成分の開発を可能とする。本発明は、さらに、そのような満腹感の増加による、摂食量の低減および/または体重の管理にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿熱処理によって作製された全穀粒‐ハイドロコロイド複合体、および食品におけるその使用に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明は、全穀粒‐ハイドロコロイド複合体、その作製、および食品におけるその使用に関する。この複合体は、それらが組み込まれた食品に対して、より長時間持続し、および/またはより高い満腹感をもたらすという有用な影響を与え、それによって、エネルギー管理を補助する。本発明は、さらに、そのような満腹感の増加による、摂食量の低減および/または体重の管理にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、満腹感を得るための現行技術の成分に伴う主たる限界、即ち、食用に適し、食品としてプロセス適合性を有する形態での強い臨床効果、に取り組むものである。全穀粒とハイドロコロイドという独特の組み合わせは、2つの生理学的な満腹感のメカニズムを組み合わせることによって、より効力の高い、またはより強力である満腹感効果を可能とするものである。さらに、これらの2つの物質の独特な複合体化は、ハイドロコロイドの水和を制御することにより、特に食品の形態において、全穀粒含有量の増加および食感の改善を、臨床効果に悪影響を及ぼすことなく可能とするものである。通常、高レベルの市販全穀粒およびハイドロコロイドを食物に組み込む場合、加工性および/または食味が低下してしまう。本発明では、食品におけるハイドロコロイドの有害な影響を最小限に抑えると同時に、全穀粒をより高レベルとすることが可能であり、従って、未複合体化ハイドロコロイドによるより高い水の結合(water binding)および粘着性(gumminess)を有し得る、同等の「乾燥ブレンド」コントロールと比較して、優れた食味および良好な食感が可能となる。
【0004】
「複合体」の用語は、共加工された2つ以上の成分を含み、該成分が物理的に分離できない物質を形成することを意図している。
【0005】
「乾燥ブレンド」の用語は、組み合わされた2つ以上の成分を含み、該成分が物理的に分離され得る物質を形成することを意図している。
【0006】
「ハイドロコロイド」の用語は、中性の電荷を有する(非イオン性の)粘性化ガム(viscosifying gum)を含むことを意図している。
【0007】
「総食物繊維含有量」(TDF)の用語は、AOAC法991.43に記載の試験によって示されるように、ろ過分離された未消化物質の重量によって測定される。1つの態様では、これに含まれ得るものとしては、ヒトの消化酵素による加水分解(消化)に耐性を有する多糖類および植物物質の残部があり、非デンプン多糖類、難消化性デンプン、リグニン、ならびにワックス、クチン(cutin)、およびスベリン(suberin)などの少量成分が含まれる。
【0008】
「難消化性デンプン(RS)」の用語は、健康な個体の小腸で吸収されないデンプンおよびデンプン分解産物の総量として定義され、実施例のセクションで述べるように、改変したイングリスト法(Englyst method)を用い、膵αアミラーゼおよびアミログルコシダーゼ(AMG)による処理によって測定される。これには、本技術分野で知られたすべての難消化性デンプンが含まれる。難消化性デンプン産物とは、難消化性デンプンを含有する産物を意味することを意図している。
【0009】
「高難消化性デンプン含有量」とは、デンプンの重量に対する難消化性デンプン含有量が少なくとも70重量%であることを意味することを意図している。
【0010】
本明細書で用いる「全穀粒」の用語は、穀物粒自体を含むことを意図するだけでなく、例えば、粗挽き粒(grits)、粗挽き粉(meals)、穀粒(kernels)、およびフラワー(flour)などのドライミル処理された穀物粒を含む、本技術分野で周知の方法によって部分的に加工されたものを含むことも意図している。この用語には、加工によって穀物粒の一部を除去された穀物粒が含まれることは意図しておらず、即ち、デンプンが含まれることも意図していない。
【0011】
本明細書で用いる「高アミロース」の用語は、コムギまたはコメに対しては、デンプンに基づいて、少なくとも27重量%のアミロースを含有するものとして、その他の供給源に対しては少なくとも約50重量%のアミロース、具体的には少なくとも約70重量%、より具体的には少なくとも約80重量%のアミロースを含有するものとして定義される。アミロースのパーセントは、実施例セクションに記載の電位差試験を用いることで測定される。
【0012】
本明細書で用いる「満腹感の増加」の用語は、本複合体の摂食後少なくとも2時間以内のカロリー摂取量が、同一のカロリー量である容易に消化可能な10DE(デキストロース当量)のマルトデキストリン(例えば、米国イリノイ州のテイト アンド ライル ディケーター(Tate & Lyle, Decatur)より市販のSTAR‐DRI 100)の摂食時と比較して、統計的に有意な量で低減されるという意味であることを意図している。
【0013】
本明細書で用いる「哺乳類」の用語は、ヒトを含むことを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、全穀粒‐ハイドロコロイド複合体、その作製、および哺乳類の満腹感を増加させるための食品におけるその使用に関する。本発明はまた、満腹感を誘発する結果としてのカロリー摂取量の低減にも関し、これは、体重管理の補助となるであろう。
【0015】
複合体の全穀粒成分は、いずれの天然源に由来するものであってもよい。本明細書で用いる天然源とは、自然に見出される状態のものである。また、交雑育種、転座、逆位、形質転換、またはそれらの変形を含むその他の遺伝子もしくは染色体工学の方法を含めた標準的な育種技術によって得られた植物に由来する穀物粒も適する。加えて、突然変異育種の公知の標準的な方法によって作出することができる上記の一般的成分の誘導突然変異および変種から成長させた植物由来の全穀粒も、本発明に適する。
【0016】
全穀粒の典型的な供給源は、穀物であり、これらに限定されないが、トウモロコシ(メイズ)、オオムギ、コムギ、コメ、ライムギ、オートムギ、アマランス、クズウコン、カンナ、またはモロコシ、ならびにこれらの高アミロース変種が挙げられる。1つの態様では、全穀粒の供給源は、高アミロース穀粒である。
【0017】
別の態様では、植物源は、アミロース増量遺伝子型(amylose extender genotype)を有する植物であり、全穀粒のデンプンのアミロペクチン含有量が10重量%未満である。この穀粒は、遺伝資源の選択の遺伝子複合体(genetic composite of germplasm selections)である植物育種群、特にトウモロコシから得られるものあり、そのデンプンは、ブタノール分画/排除クロマトグラフィ技術によって測定して、少なくとも75重量%のアミロースを含み、所望に応じて少なくとも85重量%のアミロース(すなわち、通常のアミロース)を含む。そのデンプンはさらに、10重量%未満、所望に応じて5重量%未満のアミロペクチンを含み、さらに、約8〜25%の低分子量アミロースを含む。穀粒は、好ましくは、数多くのアミロース増量変更遺伝子と合わせた劣勢アミロース増量遺伝子型を有する植物から得られる。この穀粒およびその作製方法は、その明細書が参照することで本明細書に組み入れられる、米国特許第5,300,145号に記載されている。
【0018】
複合体の全穀粒成分は、天然源から直接得られるものであってよく、および/または物理的、化学的もしくは酵素的に修飾されてもよい。1つの態様では、全穀粒成分は、高い難消化性デンプン含有量を有する。別の態様では、全穀粒成分は、高アミローストウモロコシに由来する。
【0019】
複合体のハイドロコロイド成分は、中性の電荷を有する(非イオン性の)粘性化ガムであってもよく、これらに限定されないが、グアーガム(guar gum)、コンニャク(konjac)、イナゴマメガム(locust bean gum)、タラガム(tara gum)およびその他のこのような細胞外多糖類(exocellular polysaccharides)を含むことが意図される。1つの態様では、ハイドロコロイド成分は、グアーガムである。さらに別の態様では、ガムは、規格仕様が4000〜5500cPs(25℃の1%水溶液、ブルックフィールド(Brookfield)RVT、スピンドル番号4を20RPMで使用)である高粘度ガムである。
【0020】
複合体の全穀粒:ハイドロコロイドの比率(重量/重量)は、少なくとも90:10である。1つの態様では、全穀粒:ハイドロコロイドの比率(重量/重量)は、少なくとも80:20である。さらに別の態様では、複合体のデンプン:ハイドロコロイドの比率(重量/重量)は、95:5以下である。
【0021】
本発明の1つの局面では、全穀粒が高アミローストウモロコシフラワーであり、ハイドロコロイドがグアーガムである。
【0022】
この2つの物質はブレンドされ、そのブレンドが湿熱処理(heat-moisture treatment)(HMT)に掛けられ、複合体が形成される。単一成分の湿熱処理は、その明細書が参照することで本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2006‐0263503号および米国特許出願公開第2002‐0197373号に例示されるように、本技術分野で周知である。
【0023】
本発明の複合体の作製では、全穀粒‐ハイドロコロイドブレンドは、全穀粒のデンプンの部分的または完全な糊化を回避し、それによってデンプンがその粒状構造を保持するように、指定された時間、指定された総水含有量、および定められた温度の組み合わせにて湿熱処理されることが必要である。このような条件下にて全穀粒を処理することにより、複合体が作製される。
【0024】
湿熱処理前のブレンドの総水(水分)含有量は、乾燥ブレンドの重量に対して、約10〜50重量%の範囲内であり、1つの態様では、約20〜30重量%の範囲内である。すなわち、水分含有量は、成分中に存在する水含有量と添加した水(添加した場合)との合計である。1つの態様では、この相対水分レベルが、加熱工程全体を通じて実質的に一定に維持される。別の態様では、加熱の過程でブレンドに水は添加されない(すなわち、成分の平衡水分含有量以外は、加熱工程の過程で水は存在しない)。別の態様では、水分含有量は、湿熱処理の過程で制御(実質的に一定に)されず、そのため、得られた複合体の水分含有量は、ブレンドよりも低い。
【0025】
全穀粒‐ハイドロコロイドブレンドは、約60〜160℃の目標温度で、1つの態様では約80〜120℃で、湿熱処理される。最も望ましい温度および水含有量は、用いられる特定の全穀粒およびハイドロコロイドに応じて(タンパク質、デンプン、脂質、およびハイドロコロイドの供給源、ならびに成分の粒子サイズを含むがこれらに限定されない)様々であり得るが、全穀粒中に存在するデンプンが、粒状を維持することが重要である。粒状とは、デンプンがその結晶および複屈折特性を喪失しないという意味であることが意図される。
【0026】
目標温度での加熱時間は、用いられる全穀粒、そのアミロース含有量、および粒子サイズ、並びに用いられるハイドロコロイド、さらには水分含有量および加熱温度に応じて様々であり得る。1つの態様では、そのような加熱時間は、約1分〜24時間である。別の態様では、目標温度での加熱時間は、約15分〜2時間である。
【0027】
温度上昇(ランプ(ramp))時間は、用いられる設備、プロセス条件、並びに用いられる全穀粒およびハイドロコロイド成分に応じて様々であってよい。1つの態様では、得られた複合体における着色および不都合な風味形成を回避するために、短い温度上昇時間が望ましい。別の態様では、温度上昇時間が、約5分未満であり、もう一つの態様では、約1分未満である。
【0028】
ブレンドを湿熱処理して複合体を得るための条件は、デンプンの粒状構造が破壊(糊化)されない、即ちデンプン粒が、結晶性および複屈折性を維持するような条件である。さらに、粒状構造を偏光下で観察した場合に全穀粒成分の元々のデンプンに存在するマルタクロスの喪失も無い。高水分および高温などのある種の条件下では、デンプン粒は、部分的に膨潤される場合があるが、その結晶性は完全には破壊されない。このような条件下では、デンプン粒が破壊されてはいない。
【0029】
湿熱処理は、十分な粉末処理能力を提供する、本技術分野で公知のいずれの装置で実施してもよい。1つの態様では、装置はさらに以下の1つ以上、即ち、水分添加、水分制御、混合、加熱、および/または乾燥のための十分な能力を提供する。1つの態様では、装置は、ホソカワ‐ビーペックス(Hosokawa-Bepex)から市販されているもの(Solidaire乾燥機)などの、連続式チューブ型薄膜乾燥機(continuous tubular thin film dryer)である。別の態様では、装置は、連続式加熱コンベヤースクリュー(continuous heated conveyer screw)と直列に配置された連続式薄膜乾燥機との組み合わせであり、これは、所望に応じて、目標温度での水分含有量を制御するために加圧されてもよい。さらに別の態様では、装置は、バッチ式鋤の刃ミキサー(batch ploughshare mixer)である。湿熱処理は、バッチ式または連続式プロセスとして行ってよい。
【0030】
全穀粒‐ハイドロコロイドブレンドまたは複合体には、プロセスがデンプンの粒構造を破壊しない限りにおいて、湿熱処理(HMT)の前または後のいずれかに、追加的な処理が施されてよい。1つの態様では、そのような追加の処理は、α‐アミラーゼまたは酸による処理を用いた分解を含んでよく、別の態様では、化学修飾を含んでよい。
【0031】
全穀粒成分の粒子サイズは、湿熱処理の前に、例えば粉砕、凝集、および/または篩いによって調節してよい。複合体の粒子サイズはまた、湿熱処理の後に調節してもよいが;しかし、粉砕により、複合体の総食物繊維および/またはRS含有量が低下する場合があることには留意すべきである。
【0032】
成分または複合体は、本技術分野で公知のいずれの技術を用いて精製してもよい。1つの態様では、全穀粒は、着色を低減するために、本技術分野で公知の方法を用いて漂白される。また、全穀粒または複合体のpHも、本技術分野で公知の方法を用いて調節してよい。1つの態様では、複合体のpHは、5.5〜8.0の間に調節される。
【0033】
複合体は、そのデンプンを糊化しない本技術分野で公知のいずれの乾燥手段を用いて乾燥してもよい。乾燥は、本技術分野で公知のいずれの方法も含み、これらに限定されないが、スプレー乾燥、フラッシュ乾燥、空気乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、ベルト乾燥、およびドラム乾燥が挙げられる。1つの態様では、複合体は、空気乾燥され、別の態様では、フラッシュ乾燥される。
【0034】
用いられる前処理および/または後処理の方法は、さらに、複合体の物理的または化学的特性を制御するか、またはそうでなければ、複合体を食品における使用により望ましいものとするものであってよい。
【0035】
本発明の1つの局面では、複合体は、全穀粒およびハイドロコロイド以外のカロリー成分を含有しない。
【0036】
得られた複合体は、全穀粒を含有し、そのデンプンが、顕微鏡下で観察した場合の複屈折特性によって、および偏光下で観察した場合に元々のデンプンに存在するマルタクロスの喪失が無いことによって裏付けられるように、その粒状構造を維持している。
【0037】
1つの態様では、複合体の総食物繊維含有量は、少なくとも約45%(重量/重量)である。別の態様では、複合体の総食物繊維含有量は、少なくとも約50%(重量/重量)であり、別の態様では、少なくとも約55%(重量/重量)である。本発明の1つの局面では、複合体の総食物繊維は、乾燥ブレンドにおけるよりも、少なくとも3%(重量/重量)の絶対増加を示す。さらに別の局面では、複合体の総食物繊維は、乾燥ブレンドにおけるよりも、少なくとも4.5%(重量/重量)の絶対増加を示す。食物繊維のレベルは、湿熱処理に用いられる条件、並びに特定の出発成分に応じて様々となる。総食物繊維含有量は、実施例セクションで用いられる手順によって測定される。
【0038】
1つの態様では、複合体の難消化性デンプン含有量は、デンプンの少なくとも約70重量%である。別の態様では、複合体の難消化性デンプン含有量は、デンプンの少なくとも約75重量%であり、さらに別の態様では、デンプンの少なくとも80重量%であり、なお別の態様では、デンプンの少なくとも約85重量%である。難消化性デンプンのレベルは、湿熱処理に用いられる条件、並びに特定の出発成分に応じて様々となる。難消化性デンプン含有量は、実施例セクションで用いられる手順によって測定される。
【0039】
得られた複合体は、高いインビトロ胃内粘性含有量(in vitro stomach viscosity content)を有する。本発明の1つの態様では、複合体は、純粋な完全水和グアーガムに対する曲線下面積(area under the curve)(AUC)の少なくとも90%のインビトロ胃内粘性含有量を有する。本発明の別の態様では、複合体は、グアーガムに対するAUCの少なくとも95%のインビトロ胃内粘性含有量を有する。本発明のさらに別の態様では、複合体は、グアーガムに対するAUCの少なくとも100%のインビトロ胃内粘性含有量を有する。このインビトロ胃内粘性含有量は、実施例セクションで示される方法を用いて測定される。
【0040】
複合体は、哺乳類に食餌として与えられる。1つの態様では、哺乳類は、これらに限定されないが、イヌおよびネコを含むコンパニオン動物である。別の態様では、哺乳類は、ヒトである。
【0041】
本複合体が効果的であるのは、同一のカロリー量である容易に消化可能である10DE(デキストロース当量)のマルトデキストリンの摂食と比較して、摂食後少なくとも2時間以内のカロリー摂取量が少なくとも統計的に有意な量で低減されることによって満腹感を増加させることにその摂食が効果的であるという点である。本発明の1つの局面では、このカロリー摂取量の統計的に有意な低減量は、少なくとも10%である。別の態様では、複合体は、少なくとも7.5グラムの量で効果的であり、別の態様では少なくとも10グラムで、さらに別の態様では少なくとも15グラムで、なおさらなる別の態様では少なくとも20グラムで、効果的である。1つの局面では、カロリー摂取量は、上記条件のいずれかを用いて、少なくとも15%低減される。さらなる局面では、カロリー摂取量は、上記条件のいずれかを用いて、少なくとも20%低減される。別の局面では、同じ条件を用いての摂食後24時間以内のカロリー増加が低減される。そのようなカロリー摂取量の低減は、さらに体重減少の増進をもたらし得る。
【0042】
得られた本発明の複合体は、そのまま摂食されてもよく、または、非加熱形態(cold form)のスナックバー、マフィンおよびクッキーなどの焼き製品、すぐに食べられるシリアル、パスタ、並びにその他の低水分量食品系を含むがこれらに限定されない様々な食品に組み込まれてもよい。食品はまた、プレバイオティクス(prebiotic)およびシンバイオティクス(synbiotic)組成物、糖尿病用食品および補助食品、ダイエット用食品、血糖反応を制御するための食品、並びに錠剤およびその他の医薬剤形を含むがこれらに限定されない栄養品を含むことも意図される。食品は、複合体、および少なくとも1つの追加の食用成分を含む。
【0043】
食品に添加される場合、得られた複合体は、所望されるいずれの量でも添加される。1つの局面では、複合体は、食品の5〜75%(重量/重量)の量で添加され、別の局面では、食品の10〜65%(重量/重量)の量である。1つの態様では、複合体は、食品に対して少なくとも10%(重量/重量)の量で添加される。別の態様では、複合体は、食品に対して少なくとも15%(重量/重量)の量で添加される。さらに別の態様では、複合体は、食品に対して少なくとも20%(重量/重量)の量で添加される。なおさらに別の態様では、複合体は、食品に対して少なくとも25%(重量/重量)の量で添加される。さらなる態様では、複合体は、食品に対して少なくとも30%(重量/重量)の量で添加される。なおさらなる態様では、複合体は、食品に対して少なくとも35%(重量/重量)の量で添加される。本発明のさらなる態様では、複合体は、フラワーまたは食品に従来から添加されるその他の炭水化物系産物の少なくとも一部と置換されるものであり、例えば、従来のデンプン、フラワー、粗挽き粒、または穀粒と置換される。
【0044】
全穀粒‐ハイドロコロイド複合体の食品への添加は、食感(粘着性)または風味を含む食品の官能品質特性(organoleptic quality attributes)を悪化させる何らかの形での大きな影響を及ぼすことはないであろうし、場合によっては、好ましい官能品質の変化を提供し得る。食品への複合体の添加は、難消化性デンプンおよび/または食物繊維含有量など、食品の栄養価を高め得るものである。
【実施例】
【0045】
実施例および方法
以下の実施例は、本発明をさらに例証し、説明するために提供されるものであり、いかなる点でも限定するものと見なしてはならない。特に断りのない限り、部、比率およびパーセントはすべて重量基準で与えられ、温度はすべて摂氏(℃)で与えられる。
【0046】
実施例全体を通して以下の成分を用いた。
Hi‐maize(登録商標)Whole Grain Corn Flour;およそ60%RSおよび30%TDFを含有する、ナショナルスターチLLC(National Starch LLC)より市販の高アミローストウモロコシ全穀粒フラワー。
Coyote Brand(商標)Guar Gum HV;ガムテクノロジーコーポレーション(Gum Technology Corporation)より市販の、主として高分子量ガラクトマンナンから成るもの。
【0047】
実施例全体を通して以下の試験手順を用いた。
A.難消化性デンプン(「RS」)の測定(改変イングリスト法)
難消化性デンプン含有量は、イングリスト消化法(Englyst et. al., European Journal of Clinical Nutrition, vol. 46 (Suppl. 2), pp S33-S50, 1992)の改変バージョンを用いて測定した。この手順および改変を以下に詳述する。易消化性デンプン(rapidly digestible starch)(RDS)は20分で放出されたグルコースの量として定められ、遅消化性デンプン(slowly digestible starch)(SDS)は20分〜120分の間で放出されたグルコースの量として定められ、難消化性デンプン(RS)は120分間のインキュベーション(incubation)後に加水分解されないデンプンである。RS含有量は、120分間のインキュベーション後に消化された炭水化物の量(即ち、遊離グルコース)を測定し、次に炭水化物から遊離グルコース量を差し引いてRSを算出し、炭水化物含有量に対するRSの%を得ることで間接的に決定される。
【0048】
インビトロでのグルコース放出の結果は、物質の全炭水化物含有量ではなく全デンプン部分のみが考慮されるように調節した。複合体中のそれらのパーセントとして分析されたハイドロコロイド、脂質およびタンパク質の量を、サンプル重量から差し引いた。これは、複合体の全デンプン部分に対するRS含有量を決定するために行った。非デンプン物質の重量を含めると、複合体のRS含有量が人為的に高められる結果となる。
【0049】
標準溶液、酵素溶液、ブランクおよびグルコースコントロールの調製:
a.反応「ブランク」を、20mlの0.25M酢酸ナトリウムから構成した。
b.グルコース標準を、20mlの0.25M酢酸ナトリウムバッファーおよび500mgのグルコースから構成した。
c.ストック溶液Aは、0.5%(重量/体積)のペプシン(シグマ(Sigma)社製のブタ胃粘膜(P7000))および0.5%(重量/体積)のグアーガム(シグマ社製のG‐4129グアーガム)を0.05M HClに溶解することで調製した。
d.精製酵素溶液の調製:12gのブタパンクレアチン(シグマ社)を85mlの室温の脱イオン水に溶解した。この溶液を続いて遠心分離し(3000rpm、10分間、50mlチューブ)、上清をデカントして保存した。
e.ストック溶液Bは、40mgの乾燥インベルターゼ(シグマ社)および1.0mlのアミログルコシダーゼ(AMG)(ノボザイム(Novozymes)社製の300L AMG)を前述の上清に添加することによって調製した。
【0050】
RS含有量の決定(改変イングリストプロトコル):
各試験サンプルを秤量し(0.1mgの単位に近似させる)、各試験チューブに550〜600mgの炭水化物を投入した。次に、10mlの溶液Aを各チューブに添加した。サンプルのフタをしっかり閉め、混合し、次に静止状態のウォーターバス中で37℃にて30分間インキュベートした。10mlの0.25M酢酸ナトリウムバッファーを添加してこの溶液を中和した。次に、5mlの酵素混合物(溶液B)をサンプル、ブランクおよびグルコースのチューブへ20〜30秒の間隔で添加し、37℃のウォーターバス中へ配置して消化を行った。消化中、チューブを水平方向に振とうした。120分間の消化時間で、0.5mlのアリコートを取り出し、19mlの66%エタノールが入った別のチューブへ移し、反応を停止した(酵素が沈殿する;次の工程の前に再分散させる)。続いて、このエタノール性溶液の1.0mlのアリコートを、ピペットで1mlの遠心分離用マイクロチューブへ移し、3000gにて5分間遠心分離した。続いて、グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ(GOPOD)法(Megazyme Kit K-Gluc)を用いてグルコース濃度を測定した。3mlのGOPODを各培養チューブに入れ、0.1mlの各サンプルを添加し、よく混合し、50℃にて20分間インキュベートした。遊離グルコースを、波長510nmでの吸収により分光光度測定した。各サンプルのグルコース(消化)パーセントを、標準と比較したUV吸収に基づいて算出する。通常のデントコーンの参照サンプルを含むコントロールを定期的に実行した。分析はすべて少なくとも2つの反復サンプルで行った。
【0051】
B.AOAC法991.43を用いた総食物繊維(「TDF」)の測定:
総食物繊維(TDF)を、AOAC公定法991.43について推奨されるMegazyme-K-TDFR診断キットを用いて測定した。2つの反復サンプル(乾燥ベースで1.0g)を、400mlのトールビーカー中で、0.05MのMES/TRISバッファー溶液(40ml、pH8.2)に分散させ、熱安定性アルファ‐アミラーゼ溶液(50μl)を添加した。この混合物を振とう状態のウォーターバス中、98℃にて35分間インキュベートした。60℃まで冷却後、この混合物をプロテアーゼ酵素(100μl)で処理し、30分間インキュベートした。この消化物を、HCl溶液でpH4.5に調節した。次に、グルコアミラーゼ(200μl)を添加し、この混合物を60℃にてさらに30分間消化させた。4倍量の95%エタノールを添加することで、不溶性残渣が沈殿した。この残渣を充填フィルターで回収し、105℃にて一晩乾燥し、秤量し、総食物繊維として算出した(残渣中のタンパク質および灰分を差し引く)。TDFデータはすべて乾燥ベースで報告した。
【0052】
C. 水分含有量(「%M」)測定:
複合体およびバー(bar)の水分含有量を、サートリウスAG(Sartorius AG)から入手可能であるサートリウス電子モイスチャーアナライザー(モデルMA30)を用いて測定した。水分バランスは、「自動」モードにて105℃に設定した。このモードでは、MA30は、大きな重量変化が予想されない時点(単位時間あたりの水分減少がゼロに到達する、または僅かな重量の低下の後に読み取り値が短時間一定に維持される時点)を認識し、自動的に水分測定ルーチンを停止する。
【0053】
D.電位差滴定によるアミロース含有量:
0.5gのデンプン(1.0gの粉砕穀粒)サンプルを、10mlの濃塩化カルシウム(約30重量%)中で、95℃まで30分間加熱した。サンプルを室温まで冷却し、5mlの2.5%酢酸ウラニル溶液で希釈し、よく混合し、2000rpmにて5分間遠心分離した。次に、このサンプルをろ過して透明溶液を得た。デンプン濃度を、1cmの旋光計セルを用いた旋光分析で測定した。続いて、サンプルのアリコート(通常は5ml)を標準化0.01Nヨウ素溶液で直接滴定し、同時にKCl参照電極と共に白金電極を用いて電位を記録した。変曲点へ到達するまでに要するヨウ素の量を、結合ヨウ素として直接測定した。アミロースの量は、1.0グラムのアミロースが200ミリグラムのヨウ素と結合すると仮定して算出した。
【0054】
E.グアーガム粘度の測定:
グアー(guar)のブルックフィールド粘度は、以下に挙げた手順(冷ブルックフィールド粘度分析法(Cold Brookfield Viscosity Analysis Methods):B‐V‐1.03B、ポリプロインターナショナル社(Polypro International, Inc.))を用いて測定される。サンプルを水に分散して水和させ、指定された時間でのブルックフィールド粘度を読み取る。
【0055】
装置:
1. ワーリング(Waring)ブレンダー、一般消費者用モデル(最低360ワットのモーター)
2. クォート(Quart)ブレンダーカップ(ステンレスまたはガラス)
3. スライダック(Variac)、0〜140ボルト
4. バランス、精度+/−0.01グラム
5. メスシリンダー、500ml
6. ビーカー、グリフィンローフォーム(Griffin Low Form)、600ml
7. ストップウォッチ
8. スピンドル付きブルックフィールドRV粘度計
9. 恒温ウォーターバス
10. 撹拌棒
11. 秤量ボート(boat)
12. 温度計
【0056】
化学薬品および試薬:
蒸留水または脱イオン水(pHを5.5〜6.0に調節)
手順:
A.水の調製
1. pHを5.5〜6.0に調節する(希窒素ガスまたはHClを用いる)。
2. 温度を25℃に調節する。
B.校正
1. ブルックフィールドのポインターがスムーズに動き、製造元の説明書に従って適切に校正が行われていることを確認する。
2. 7.00のバッファーに対して7.00+/−0.01の読み取りとなるようにpHメーターを設定する。
【0057】
C.分析手順
1. 秤量ボート上にて5.00+/−0.01グラムの試験すべきガムを秤量する。
2. ブレンダーの基部にセットしたワーリングブレンダーカップに、495+/−2mlの蒸留水または脱イオン水を計り入れる。
3. ブレンダーブレード(blade)と水面との中間に渦が形成されるようにブレンダーのスピードを調節する(およそ1500〜1800rpm)。
4. 塊状のグアーが溶液中に入って粘度の読み取りが不正確とならないようにする。粉末がブレンダーカップの壁面または攪拌ブレードのハブ部に接触しないようにする。塊のない溶液を形成するために、ガムを渦のスロープの上部に向ける。ストップウォッチのスタートと同時に、攪拌水中へグアーを素早く投入する。
5. 2分間攪拌を続ける。溶液が粘性となるに従って、僅かな渦を維持するために、ブレードのスピードを僅かに上昇させる。空気の噛み込みを最小限に抑える。2分の時点で、溶液を600mlのグリフィンローフォームビーカーに移す。塊が視認される場合は、試験は行わない。
6. 恒温ウォーターバス中で溶液温度を25℃に維持する。
7. 粘度計速度は20rpmを用いる。通常は3番スピンドルを用いる。初期粘度が1300cpsよりも低い場合、2番スピンドルが必要であり得る。
8. 粘度の読み取りは、混合後、15分、30分、1時間、2時間、4時間、および24時間で行う。必要である読み取りの1分前に、溶液を入れたビーカーをバスから取り出し、ガラス棒で溶液を攪拌し、粘度計の下に配置してスピンドルを設置する。読み取りの20秒前に、粘度計のスイッチを入れ、指定の時間に読み取りを行う。
9. 2時間の時点でpHを読み取り、記録する。溶液の粘性のために、安定な読み取りまでにある程度の時間を要する場合がある。
【0058】
F.胃/腸内粘度の測定:
ベンチトップ胃モデルを作製した。これは、文献に記載の他の胃モデル(Kimura et al., 2000, National Enzyme Co./TNO Nutrition and Food Research, 2004)に由来する特徴を有する。この消化モデルはまた、「給餌」状態における胃成分の緩衝能も模倣しており、「空腹」または胃が空の状態で用いられる他の胃モデルとは区別される。消化プロセスを標準化し、実験室での手順の再現性を高める目的で、いくつかの単純化するための仮定を用いた:
・ 胃のサイズ、1.25リットル。
・ ストマッカー(stomacher)の前処理で咀嚼を模倣し、唾液アミラーゼは用いない。
・ 攪拌:往復振とう器プラットフォーム、120rmp、実験を通して一定。
・ 温度:実験を通して37℃で固定(温度制御ウォーターバス中に容器を浸漬);正常なヒトの体温。
・ 胃媒体成分:
・ペプシン(ブタ胃粘膜由来−例:Sigma P7000);低pH条件によりペプシノーゲンから活性化、タンパク質成分をペプチドに分解するものであり、pH2〜4の間で最も活性である。
・ムチン(Mucin)(保護タンパク質;例:II型、Sigma M2378);ペプシンが胃壁の細胞由来であるため、やはり胃壁由来である保護タンパク質ムチンをシステムに含めることとした。
・pH5.0バッファー系:フタル酸水素カリウム(例:Sigma 179922)/NaOH(例:1.0N溶液、Sigma S2567)。何らかの食物の存在を模倣するものであり、酢酸ほど強いバッファーではない。
【0059】
・胃ステージ:HCl添加により2時間。胃ステージにおける酸HClの添加速度は、1時間あたり36ミリ当量(mEq)で一定であると仮定した(1.25リットルの胃体積に対して1.5NのHClを0.50ml/分)。酸は、定量ぜん動ポンプを通して、液面上に滴下した。2時間の胃ステージの間に、pHは約5.0〜約2.0にシフトした。
・中和:15mlの6NのNaOH(ペレットからの溶液、例:Sigma S8045)および15gのNaHCO3(例:Sigma S6014)を添加することで行った:NaOHとNaHCO3との組み合わせを用いることにより、過剰な泡形成(NaHCO3単独の場合のように)がなく、および目標pHである7.0よりも高すぎるpH(NaOH単独の場合のように)とすることもなく、pHシフトを迅速に達成することができる。
・腸ステージ 2時間:腸に存在する酵素:パンクレアチン(ブタ由来、例:Sigma P8096)、ブレンドとしてアミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、およびリボヌクレアーゼ。胆汁酸(胆汁酸塩とも称される)はこのモデルに含まれない。
・グルコース放出(GR)、ならびに難消化性デンプンのレベルが、別の分析試験(Englyst et al., 1992)で測定されることにも留意されたい。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
実施例1−湿熱処理した全穀粒‐グアーガム複合体:
代表的な湿熱処理を以下の条件下で実施した。80部のHi‐maize(登録商標)全穀粒トウモロコシフラワーを20部のグアーガムHVと、標準的なベンチトップ型KitchenAid(登録商標)ミキサーボウル中で混合した。成分の混合は、パドルアタッチメントにより低スピードで7から10分間行い、均一性を確保した。この混合物に、周囲温度の蒸留水20部を均一な形で噴霧した。混合をさらに30分間継続した。水分をチェックし、全水分量25%を確認した。水和された混合物を密封アルミニウム皿に入れ、デスパッチオーブン(デスパッチオーブン社(Despatch Oven Co.),ミネアポリス,ミネソタ州)に配置した。混合物を90℃まで加熱し、2時間90℃で保持した。時間経過後、最終サンプルを冷却し、次に空気乾燥して、最終水分含有量を10%から13%とした。この乾燥サンプルを、コーヒー挽き器を用いて粉砕し;粉砕サンプルをUSメッシュ20の篩いを用いて分級した。USメッシュ20の篩いを通過した物質を、インビトロおよび応用でのスクリーニングに用いた。
【0067】
全穀粒‐グアーガム乾燥ブレンドの組成を以下の表1に示す。
【表7】

【0068】
改変イングリストアッセイを用いたインビトロでのグルコース放出(GR)
表2の結果は、グアーガムの存在下でのHi‐maize(登録商標)全穀粒トウモロコシフラワーの湿熱処理によってRS含有量が増加したことを証拠として、デンプン消化が低下したことを示す。HMT WGCF‐グアーガム複合体は、乾燥ブレンドコントロールおよびネイティブWGCFに対して、それぞれ約10%および26%高いRS含有量を示した。
【0069】
【表8】

【0070】
RS含有量は重要な性能基準であるが、このような成分の市販の可能性を考慮する場合、胃腸内(GI)増粘能力(gastrointestinal (GI) viscosifying ability)および感覚刺激性(organoleptics)も重要である。これらの測定のために、試験複合体および種々のコントロールを非加熱処理バー(cold processed bars)に製剤し、次に、インビトロでのGI粘度および感覚属性(sensory attributes)についての試験を行った。
【0071】
バーの配合および作製
試験成分およびコントロールによって製剤された非加熱形態のスナックバーを用いて、食感属性(textural attributes)を評価し、インビトロでの胃内粘度を測定した。トウモロコシシロップ(63DE)、イチジクペースト(水分23%)、およびオレンジ香料(加熱後に添加)から成るウェット(成分)フェーズを、60℃(140°F)まで加熱し、軟化させてブレンドの均一性を促進することで作製した。次に、加熱したウェットフェーズを、押しオートムギ、グラニュー糖、コメフラワーおよび塩から成る予備ブレンドしたドライフェーズに添加した。次に、このブレンドを40g片に分け、バー金型へ移した。バーは、水分含有量約18%、水分活性0.60未満により、柔らかい食感が出るように製剤した。スナックバー配合物にさらなる仕上げ作業を行って、胃モデルおよび感覚評価のためのコントロールを作製した。コントロールバーは、複合体を含有するバーの栄養プロファイル、固形分、および食感/堅さに合うように製剤し、基準点として評価した。これを達成するために、コメフラワーを減らし、砂糖および押しオートムギのレベルを増やして固形分を上げ、炭水化物レベルを合わせた(目標80%炭水化物)。ホエイプロテイン(ダビスコフーズインターナショナル社(Davisco Foods International, Inc.)製インスタントBiPRO(登録商標))を0.09%添加してタンパク質レベルを合わせ(目標5%タンパク質)、カノーラ油を1.10%添加して脂肪レベルを合わせた(目標2.5%脂肪)。
【0072】
バーの配合を以下の表3に示す。
【表9】

【0073】
感覚評価:
スナックバーの感覚評価を、同じ5人の個人から成る感覚評価グループによって実施した。ベースライン感覚スコアはコントロールバーで設定した。湿熱処理複合体および乾燥ブレンドコントロールをコントロールバーベース中で評価した。物質の組成の違いを適合させるためにバーの1人分のサイズ(serving size)を調節し、用いたコントロールバーベースの総量を1人分あたり33.3gに標準化した。これにより、80:20複合体については、1人分のサイズが43.3gとなった(全配合に対するガムレベル4.6%)。この調節を行うことで、各複合体の実験において胃/腸内粘度モデルに添加されるコントロールバーベースを同量に維持した。
【0074】
堅さ、咀嚼性、粘着性、および異臭の4つの属性を、9段階の嗜好尺度で評価した。粘着性および異臭については、スコア4を許容される限界として、5もしくはそれ以上を許容されないとして分類した。咀嚼性および堅さについては、バーに対する個人的な感覚に基づいて順位付けを行い、例えば、グラノーラバーが9、フルーツバーが1である。スナックバーサンプルは、評価の前日にベンチトップで作製し(密封容器中室温にて保存)、バーを平衡状態とした。感覚スコアは、比較可能なように5人のメンバーの平均を取った。主たる不合格モードとして認識された重要属性は、粘着性と異臭であった。
【0075】
表4の感覚についての結果は、粘着性および異臭に関して、HMT全穀粒‐グアーガム複合体で作製したバーが、未処理乾燥ブレンドで作製したバーよりも低いスコアであることを示している。
【0076】
【表10】

【0077】
表5から、HMT全穀粒‐グアーガム複合体で作製したバーが、乾燥ブレンドで作製したバーと比較して約20%高いRSを示したことが分かり、このことは、非加熱形態のバーへの応用において、RS含有量が比較的に影響を受けずに維持されていることを示している。
【0078】
【表11】

【0079】
インビトロでの胃/腸内粘度
試験成分を含有するバーを、上記で詳述した胃モデルアッセイにて実験した。完全水和グアーガムゴールドスタンダードレファレンスを含むすべてのサンプルを、同等のグアーガムレベルで分析した。腸内フェーズ粘度データは、完全水和グアーガムレファレンスに対する曲線下面積(AUC)%として表す。表6のデータから、複合体からのガムが、完全水和ガムレファレンスと比較して100%の増粘力を示したことが分かる。グアーガムの完全水和は、本技術分野で公知の標準的なプロセスを用いて行う。
【0080】
【表12】

【0081】
TDF分析:
単純化した成分のTDF分析を実施して、HMTプロセスがTDF含有量を増加させるかどうかの判定、およびこれらの物質のさらなる特性決定を行った。表7は、HMT全穀粒‐グアーガム複合体のTDF含有量が、ネイティブWGCFおよび乾燥ブレンドと比べて、それぞれ約31%および7%高かったことを示す。
【0082】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
全穀粒およびハイドロコロイドを含む、複合体。
【請求項2】
前記全穀粒が、高アミロース全穀粒である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記全穀粒が、高アミローストウモロコシ全穀粒である、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記ハイドロコロイドが、非イオン性ガムである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項5】
前記ガムが、グアーガム、コンニャク、イナゴマメガム、タラガムから成る群より選択される、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
前記ガムが、グアーガムである、請求項4に記載の複合体。
【請求項7】
前記複合体の全穀粒:ハイドロコロイドの比(重量/重量)が、少なくとも90:10である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体を作製するプロセスであって、前記全穀粒およびハイドロコロイドを混合してブレンドを形成すること、並びに前記ブレンドを湿熱処理して複合体を形成することを含む、プロセス。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体、および追加の食用成分を含む、食品。
【請求項10】
前記複合体の量が5〜75%(重量/重量)である、請求項9に記載の食品。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体を少なくとも7.5g摂食することを含む、満腹感を増加させる方法。
【請求項12】
同一のカロリー含有量である容易に消化可能な10DEのマルトデキストリンの摂食後のカロリー摂取量と比較して、摂食後少なくとも2時間にわたってカロリー摂取量が少なくとも10%低下する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
満腹感を増加させるための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体の使用。

【公開番号】特開2012−214785(P2012−214785A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−78843(P2012−78843)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(512035620)コーンプロダクツ ディベロップメント インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】