説明

満腹感を持続させる剤及び該剤を含む飲食品

【課題】満腹感を持続する剤を提供する。
【解決手段】本発明は、イソマルツロースを含んでなる、満腹感を持続させる剤及び該剤を含む飲食品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、満腹感を持続させる剤及び該剤を含む飲食品に関する。また、本発明は、運動後に摂取される、満腹感を持続させる剤及び該剤を含む飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣病予防についての関心が高まっている。該予防のために、体内の脂肪を減らすことが必要である。体内の脂肪を減らすために、過食にならないこと乃至は運動不足にならないことが必要である。
【0003】
過食にならないために、満腹感の持続が達成されることが有効である。満腹感は、食物を摂取することにより得られる。これは、血糖値が上昇すること等により脳内の満腹中枢が作用することによる。
【0004】
しかし、胃から食物が排泄されること、或いは食物摂取後の時間経過に伴い血糖値が低下することにより、満腹感は消失し、空腹感が引き起こされる。空腹感を耐えられない場合、再度の食事摂取がされうる。そして、適度な食生活が達成されない場合、しばしば過食となりうる。
【0005】
また、運動不足の解消に、ジョギング等の有酸素運動が良いとされる。有酸素運動を一般に15分以上にわたって行うと、細胞内のグルコースが用いつくされ、さらに血糖値も下がる。そして、低血糖濃度に応答してグルカゴンが分泌されて、脂肪の分解が促進される。
【0006】
しかし、低血糖状態は空腹感をもたらす。空腹感故に、糖分を摂取した場合、血糖値が上昇することからインスリンが放出され、脂肪の分解は促進されない。従って、有酸素運動の効果が十分に得られない。他方、空腹感を耐えることはしばしば困難を伴う。さらに、糖分の摂取では一時的に血糖値が上昇してその後すぐに低下することから、満腹感が持続しない。よって、脂肪の燃焼を妨げず、かつ満腹感が持続することが求められている。
【0007】
一方、生活習慣病予防とは別に、スリムになりたいという願望の為に、満腹感の持続が求められている。
【0008】
以上から、満腹感が持続されることが、生活習慣病の予防に大きな貢献を果たすと考えられる。また、スリムになりたいという願望を実現するために、満腹感が持続されることも望ましい。
【0009】
特許文献1は、満腹感が得られる不溶性結晶セルロース添加米を記載する。しかし、該添加米が満腹感を持続させることは述べられていない。特許文献2は、空腹感緩和剤を記載する。しかし、該剤によって空腹感の緩和が持続されることは述べられていない。
【0010】
【特許文献1】特開2008−073026号公報
【特許文献2】特開2008−007427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、満腹感を持続させる剤を提供することである。また、本発明の目的は、運動後に摂取することで、脂肪燃焼を維持しながら満腹感を持続させる剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、イソマルツロースを摂取することが、満腹感を生じ、かつ満腹感を持続させるために有効であることを見出し、本発明を完成するに到った。
【発明の効果】
【0013】
本発明の剤の摂取により、満腹感が生じ、かつ満腹感が持続する。また、本発明の剤を摂取することにより、通常の糖分を摂取するよりも、高くかつ長い満腹感が持続する。これらの効果は、過食を回避するのに有利である。そして、生活習慣病予防又はスリムになりたいという願望に対しても有利である。また、甘味が得られ、かつ、ショ糖を摂取した場合のような血糖値の急激な上昇を伴わずに、上記満腹感が得られる。
【0014】
さらに、運動後又は空腹時において、本発明の剤または該剤を含む飲食品を摂取することにより、脂肪分解がより効率的に達成される、そして、食事を摂取したいという欲求に打ち克つための負担を軽減しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、満腹感を持続させる剤を提供する。該剤は、イソマルツロースを含む。また、本発明は、該剤を製造するためにイソマルツロースを使用する方法を提供する。
【0016】
本発明において「イソマルツロース(isomaltulose)」とは、グルコースがフラクトースにα-1,6-グルコシル結合することによって構成された二糖をいう。イソマルツロースはパラチノース(palatinose)(商標)とも呼ばれる。以降、パラチノースという。
【0017】
パラチノースは水和物であってもよく、一水和物の場合は、融点は123〜124℃であり、比旋光度は[α]20D+97.0〜99.0(C=0.04)であり、フェ−リング溶液還元力はグルコースの52%であり、水100gに対する溶解度は20℃で38.4gである。また、水溶液の甘味の質は良好で、甘味度はショ糖の約40%である。
【0018】
パラチノースは、天然において蜂蜜に見出される。また、細菌又は酵母に由来するα−グルコシルトランスフェラーゼ(イソマルツロースシンターゼ)がショ糖に作用した場合に生じる転移生成物中にも存在する。
【0019】
工業的には、パラチノースは、ショ糖にプロタミノバクター・ルブラム(Protaminobacter rubrum)又はセラチア・プリムチカ(Serratia plymuthica)等の細菌が生み出すα−グルコシルトランスフェラーゼを作用させることにより製造される。
【0020】
本発明において、「満腹感」とは、空腹感を感じない状況にある感覚をいい、特に食事の摂取を欲しない状況にあるという感覚をいう。このような感覚は、視覚的アナログスケールのようなアンケートで判断される。また、生化学的には血中のGLP−1量又はコレシストキニン量により判断されうる。
GLP−1およびコレシストキニンは、消化管ホルモンの1つであり、満腹感を与えるホルモンと言われている。これらは、食欲抑制作用を有する。
【0021】
本発明において、「満腹感の持続」とは、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも6時間、満腹感が持続することをいう。
【0022】
「満腹感を持続させる剤」とは、例えばパラチノース結晶、パラチノース粉末、パラチノース顆粒、パラチノースシロップ、トレハルロースシロップがある。パラチノース結晶は例えば、結晶パラチノースIC(三井製糖株式会社製)である。パラチノース粉末は例えば、粉末パラチノースICP(三井製糖株式会社製)である。パラチノースシロップ(商品名パラチノースシロップ−ISN又は−TN、ブリックス 75、三井製糖株式会社製)は、全糖分あたりトレハルロース53〜59%、パラチノースを11〜17%含んでいる。トレハルロースシロップ(商品名 ミルディア−75、三井製糖株式会社製)は、パラチノースを8〜13%含んでおり、パラチノースの他にトレハルロースを含んでいる。その他、「満腹感を持続させる剤」には、例えばパラチノースシロップを含むフォンダン、シロップ、成型物、例えば錠剤、カプセルなどがある。
【0023】
本発明の剤を投与する対象は、健常人でもよいが、好ましくはメタボリックシンドローム又は肥満に該当する者又は患う者である。
本発明の1つの実施態様として、メタボリックシンドローム又は肥満に該当する者又は患う者の満腹感を持続させるための剤を製造するために、パラチノースを使用する。
【0024】
本発明の剤又は該剤を含む飲食品を摂取するにあたり、パラチノースの摂取量は体重1kgあたり0.1g以上、好ましくは0.5g以上、より好ましくは0.7g以上、更により好ましくは1g以上である。
【0025】
本発明の剤は、好ましくは運動後に摂取されうる。本発明において、「運動後」とは、運動後30分以内が好ましく、運動後15分以内がより好ましく、運動後5分以内がさらにより好ましい。
【0026】
本発明の満腹感を持続させる剤を飲食品に含ませることもできる。このような飲食品(以下、「本発明の剤を含む飲食品」という場合がある)としては、例えば、清涼飲料水、ニアウォーター、スポーツ飲料、ゼリー飲料、コーヒー飲料などの各種飲料、ソフトゼリー、ハードキャンディー、エナジーバー、パン、スープ、中華麺、うどん、ケーキ、ドーナツ、アイスクリーム、和菓子などの各種食品などがあげられる。また、本発明の剤を、コーヒー、紅茶、ココアなどに甘味剤として添加し、摂取してもよい。また、使用される飲食品の対象により異なるが、飲料に摂取することを想定すれば、本発明の剤を含む飲食品は、パラチノースを、該飲食品中に、固形分として0.01〜100重量%含み、好ましくは0.1〜70重量%、より好ましくは0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.1〜30重量%含む。
【0027】
以下に述べる実施例から明らかなように、本発明の剤又は該剤を含む飲食品を摂取することにより満腹感が得られる。また、該満腹感は、通常の糖分を摂取した場合よりも高くかつ長時間にわたり持続する。通常は、血糖値が上昇することで満腹感が得られるが、このような効果は、通常の糖分を摂取した場合より血糖値の上昇が低いにもかかわらず、達成される。一方、比較対象とした異性化糖では、血糖値が急激に上昇するにもかかわらず、すぐには満腹感が得られない。通常の糖分として、異性化糖と同様にショ糖、グルコース、マルトデキストリンなどを摂取した場合、本発明の効果が得られないと予想される。なお、異性化糖の構成糖はグルコースとフラクトースであり、ショ糖及びパラチノースの構成糖もグルコースとフラクトースである。異性化糖のカロリーは、ショ糖及びパラチノースのカロリーと同じ4kcal/gである。
【0028】
本発明は更に、GLP−1分泌促進剤を提供する。該剤は、イソマルツロースを含む。また、本発明は、該剤を製造するためにイソマルツロースを使用する方法を提供する。該剤は、好ましくは運動後に摂取されうる。さらに、該剤を飲食品に含ませることもできる。
【0029】
「GLP−1分泌促進剤」とは、GLP−1の分泌を促進する剤をいう。該剤は、特に血中におけるGLP−1の分泌を促進する。
【0030】
「GLP−1分泌促進剤」とは、例えばパラチノース結晶、パラチノース粉末、パラチノース顆粒、パラチノースシロップ、トレハルロースシロップがある。パラチノース結晶は例えば、結晶パラチノースIC(三井製糖株式会社製)である。パラチノース粉末は例えば、粉末パラチノースICP(三井製糖株式会社製)である。パラチノースシロップ(商品名パラチノースシロップ−ISN又は−TN、ブリックス 75、三井製糖株式会社製)は、全糖分あたりトレハルロース53〜59%、パラチノースを11〜17%含んでいる。トレハルロースシロップ(商品名 ミルディア−75、三井製糖株式会社製)は、パラチノースを8〜13%含んでおり、パラチノースの他にトレハルロースを含んでいる。その他、「GLP−1分泌促進剤」には、例えばパラチノースシロップを含むフォンダン、シロップ、成型物、例えば錠剤、カプセルなどがある。
GLP−1分泌促進剤を投与する対象、摂取量は、満腹感を持続させる剤と同様である。
GLP−1分泌促進剤又は該剤を含む飲食品を摂取するにあたり、パラチノースの摂取量は体重1kgあたり0.1g以上、好ましくは0.5g以上、より好ましくは0.7g以上、更により好ましくは1g以上である。
GLP−1分泌促進剤は、好ましくは運動後に摂取されうる。本発明において、「運動後」とは、運動後30分以内が好ましく、運動後15分以内がより好ましく、運動後5分以内がさらにより好ましい。
【0031】
本発明は更に、コレシストキニン分泌促進剤を提供する。該剤は、イソマルツロースを含む。また、本発明は、該剤を製造するためにイソマルツロースを使用する方法を提供する。該剤は、好ましくは運動後に摂取されうる。さらに、該剤を飲食品に含ませることもできる。
【0032】
「コレシストキニン分泌促進剤」とは、コレシストキニンの分泌を促進する剤をいう。該剤は、特に血中におけるコレシストキニンの分泌を促進する。
【0033】
「コレシストキニン分泌促進剤」とは、例えばパラチノース結晶、パラチノース粉末、パラチノース顆粒、パラチノースシロップ、トレハルロースシロップがある。パラチノース結晶は例えば、結晶パラチノースIC(三井製糖株式会社製)である。パラチノース粉末は例えば、粉末パラチノースICP(三井製糖株式会社製)である。パラチノースシロップ(商品名パラチノースシロップ−ISN又は−TN、ブリックス 75、三井製糖株式会社製)は、全糖分あたりトレハルロース53〜59%、パラチノースを11〜17%含んでいる。トレハルロースシロップ(商品名 ミルディア−75、三井製糖株式会社製)は、パラチノースを8〜13%含んでおり、パラチノースの他にトレハルロースを含んでいる。その他、「コレシストキニン分泌促進剤」には、例えばパラチノースシロップを含むフォンダン、シロップ、成型物、例えば錠剤、カプセルなどがある。
コレシストキニン分泌促進剤を投与する対象、摂取量は、満腹感を持続させる剤と同様である。
コレシストキニン分泌促進剤又は該剤を含む飲食品を摂取するにあたり、パラチノースの摂取量は体重1kgあたり0.1g以上、好ましくは0.5g以上、より好ましくは0.7g以上、更により好ましくは1g以上である。
コレシストキニン分泌促進剤は、好ましくは運動後に摂取されうる。本発明において、「運動後」とは、運動後30分以内が好ましく、運動後15分以内がより好ましく、運動後5分以内がさらにより好ましい。
【0034】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものでない。
【実施例1】
【0035】
1.目的
本試験において、低血糖時のパラチノース摂取による満腹感持続効果を、血中GLP−1濃度及び血中コレシストキニン濃度と、感覚的満腹感によって確認する。
【0036】
2.試験方法
500mlの水に、被験者の体重1kgあたり固形分1.0gの量で、パラチノース又は異性化糖(果糖55%)のそれぞれを溶解した2種類の試験飲料を調製した。
上記2種類の試験飲料について、上記被験者に対しそれぞれ飲用試験を実施した。各試験の間には10日間以上の間隔が設けられた。
【0037】
表1は、飲用試験の被験者の身体測定結果及び代謝特性を示す。
被験者は、メタボリックシンドロームの疑いがある腹囲85cm以上の男性であり、かつ、運動不足である。心疾患及び2型糖尿病の家系及び/又は脂質異常症の者は被験者に含まれていない。
【0038】
被験者の身体測定方法はACSMガイドライン(American College of Sports Medicine, 2001)に従った。
身体測定の項目は、身長、体重、ボディマス指数、腹囲及び体脂肪率である。
代謝特性の項目は、最大酸素摂取量(VOmax)、50%VOmax、VOmaxにおける運動負荷、50%VOmaxにおける運動負荷、空腹時血漿グルコース、空腹時血漿インスリン、インスリン抵抗性(HOMA-IR)、糖化ヘモグロビン、総コレステロール、トリグリセリド、HDL−C、LDL−C、AST、ALT、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ、最高血圧及び最低血圧である。
【0039】
最大酸素摂取量(VOmax)は次の試験により算定された。なお、試験の間30秒毎に、被験者から呼気ガスを採取して、呼気ガス自動分析器(Oxycon Alpha, Mijnhardt社製)を用いて該呼気ガスを分析した。
該試験では、自転車エルゴメーター(818E, Monark社製)で、段階的な運動負荷を被験者にかける。すなわち、2分間の0wattのウォーミングアップの後、1分毎に15wattずつ運動負荷を増加させ、Borgスケールで測定した主観的運動負荷が19〜20になるとともに、酸素摂取量が一定(体重1kgあたり2mL/min未満の増加)になるまで続けた。30秒超達せられたピークの酸素摂取量をVOmaxとした。
【0040】
空腹時血漿グルコース、空腹時血漿インスリン、インスリン抵抗性(HOMA-IR)、糖化ヘモグロビン、総コレステロール、トリグリセリド、HDL−C、LDL−C、AST、ALT、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ、最高血圧及び最低血圧が、当技術分野で慣用的に用いられる生化学的方法に従って測定された。
【0041】
【表1】

【0042】
飲用試験は、二重盲検クロスオーバー試験で実施された。被験者には、試験の2日前から食事制限を課した。1回目の試験の2日前からの食事を記録し、2回目の試験の前にこの食事を繰り返した。これは試験前の食事を標準化し、グリコーゲン貯蔵量の変化を最低限にするためである。
被験者が試験の前日の夕食に摂取した食事は、全被験者を通じて同じとした(725kcalのエネルギー:エネルギーの60%が炭水化物であり、30%が脂質であり、10%がタンパク質である)。一晩(10〜12時間)絶食後、試験を実施した。試験の24時間前から、全ての被験者にはアルコール、カフェイン及び緑茶が禁止されるとともに、激しい運動も禁止された。また、2回目の試験を実施するにあたって、2回目の試験の2日前から被験者が摂取した食事は、各被験者夫々における1回目の試験の2日前から摂取した食事と同じとした。
【0043】
サーカディアンリズムの影響を避けるため、2種類の試験飲料についての試験はそれぞれ同時刻に開始された。
まず、30分間の安静の後、被験者から最初の静脈採血が行われた。次に、被験者は、自転車エルゴメーターで約50%のVOmaxの負荷で1時間の運動を行った。前記運動後に採血がされ、採血後、5分間で試験飲料を摂取した。試験飲料の摂取後、10分、20分、30分、45分、60分、75分、90分、105分、及び120分に採血を行った。採取した血液は、各種生化学検査に供した。
【0044】
3−1.被験者4人の飲用試験の結果
図1〜4に被験者4人の場合の飲用試験の結果を示す。全データは、平均±標準誤差で表した。
【0045】
図1は、運動後の飲料摂取による、血中GLP−1濃度の経時変化を示す。
異性化糖を摂取した場合、GLP−1濃度はほとんど変わらなかった。一方、パラチノースを摂取した場合、摂取直後にGLP−1濃度が上昇した。パラチノースを摂取した場合、摂取10分後及び20分後において、血中GLP−1濃度は、異性化糖を摂取した場合よりも有意に高かった。
【0046】
図2は、運動後の飲料摂取による、血中コレシストキニン濃度の経時変化を示す。
異性化糖を摂取した場合、コレシストキニン濃度が低下した。一方、パラチノースを摂取した場合、摂取後にコレシストキニン濃度が上昇した。パラチノースを摂取した場合、摂取10分後及び20分後において、血中コレシストキニン濃度は、異性化糖を摂取した場合よりも有意に高かった。
【0047】
また、被験者の感じた満腹感及び空腹感について、上記の試験に伴い調査を行った。被験者に5段階の評価用紙を配布し、記入させた。評価基準は、次の通りである。1:空腹である。2:少し空腹である。3:どちらでもない。4:少し満腹である。5:満腹である。
【0048】
図3は、運動後の飲料摂取による、感覚的満腹感の経時変化を示す。
図の縦軸は評価用紙の値を2倍にした値である。異性化糖を摂取した場合、摂取後すぐに満腹感が減少し始めた。一方、パラチノースを摂取した場合、摂取後から2時間満腹感に変化がなかった。パラチノースを摂取した場合、摂取2時間後において、満腹感が、異性化糖を摂取した場合よりも有意に高かった。
【0049】
図4は、運動後の飲料摂取による、感覚的空腹感の経時変化を示す。
図の縦軸は値10から図3の値を引いた値である。異性化糖を摂取した場合、摂取後すぐに空腹感が増加し始めた。一方、パラチノースを摂取した場合、摂取後から2時間空腹感に変化がなかった。パラチノースを摂取した場合、摂取2時間後において、空腹感が、異性化糖を摂取した場合よりも有意に低かった。
【0050】
3−2.被験者7人の飲用試験の結果
図5〜8に被験者7人の場合の飲用試験の結果を示す。全データは、平均±標準誤差で表した。
【0051】
図5は、運動後の飲料摂取による、血中GLP−1濃度の経時変化を示す。
異性化糖を摂取した場合、GLP−1濃度はほとんど変わらなかった。一方、パラチノースを摂取した場合、摂取直後にGLP−1濃度が上昇した。パラチノースを摂取した場合、血中GLP−1濃度は、異性化糖を摂取した場合よりも高かった。
【0052】
図6は、運動後の飲料摂取による、血中コレシストキニン濃度の経時変化を示す。
異性化糖を摂取した場合、コレシストキニン濃度が低下した。一方、パラチノースを摂取した場合、摂取後にコレシストキニン濃度が上昇した。パラチノースを摂取した場合、摂取10分後において、血中コレシストキニン濃度は、異性化糖を摂取した場合よりも有意に高かった。
【0053】
また、被験者の感じた満腹感及び空腹感について、上記の試験に伴い調査を行った。被験者に5段階の評価用紙を配布し、記入させた。評価基準は、次の通りである。1:空腹である。2:少し空腹である。3:どちらでもない。4:少し満腹である。5:満腹である。
【0054】
図7は、運動後の飲料摂取による、感覚的満腹感の経時変化を示す。
図の縦軸は評価用紙の値を2倍にした値である。異性化糖を摂取した場合、摂取後満腹感が緩やかに減少した。一方、パラチノースを摂取した場合、摂取後から満腹感が上昇した。パラチノースを摂取した場合、摂取後の2時間において、満腹感が、異性化糖を摂取した場合よりも高かった。
【0055】
図8は、運動後の飲料摂取による、感覚的空腹感の経時変化を示す。
図の縦軸は値10から図7の値を引いた値である。異性化糖を摂取した場合、摂取後空腹感が緩やかに上昇した。一方、パラチノースを摂取した場合、摂取後から空腹感が若干減少した。パラチノースを摂取した場合、摂取後の2時間において、空腹感が、異性化糖を摂取した場合よりも低かった。
【0056】
[確認試験]
上記の検査と同時に、血中グルコース濃度、血中インスリン濃度及び血中C−ペプチド濃度を測定した。本測定は、上記飲用試験を実施した被験者のうち10人に対して行われた。
【0057】
図9は、運動後の飲料摂取による、血中グルコース濃度の経時変化を示す。
異性化糖を摂取した場合、摂取直後に血糖値が上昇し、摂取45分後から下降し始めた。一方、パラチノースを摂取した場合、摂取後緩やかに血糖値が上昇した。さらに、この血糖値は、60分を過ぎたあたりで異性化糖摂取の場合の血糖値と逆転し、その後も比較的高い値を維持し続けた。
【0058】
図10は、運動後の飲料摂取による、血中インスリン濃度の経時変化を示す。
異性化糖を摂取した場合、インスリン分泌が刺激されている。一方、パラチノースを摂取した場合、インスリン分泌が穏やかである。
【0059】
図11は、運動後の飲料摂取による、血中C−ペプチド濃度の経時変化を示す。
C−ペプチドは、インスリン生合成の過程における前駆体であるプロインスリンの膵β細胞内でのプロセッシングによって生じるインスリンの副産物である。血中C−ペプチド濃度は、インスリン分泌の指標である。血中C−ペプチド濃度の経時変化は、図10に示される血中インスリン濃度の経時変化と同様の傾向を示した。
【0060】
図1〜図11の結果から、パラチノースの摂取によりインスリンの分泌は刺激されず、かつ血糖値の上昇が緩やかであるにもかかわらず、GLP−1及びコレシストキニンの血中濃度はパラチノース摂取直後に上昇し、感覚的満腹感が維持された。従って、パラチノースの摂取による満腹感は、血糖値の上昇によるものでないと考えられる。
【実施例2】
【0061】
(スティックシュガー)
2−1:パラチノースのスティックシュガー
包装一本当たり結晶パラチノースが7g含まれるようにスティック包装に充填した。
2−2:パラチノース及び高甘味度甘味料からなるスティックシュガー
包装一本当たり結晶パラチノース7g及びアセスルファムカリウム0.02gが含まれるようにスティック包装に充填した。
2−3:パラチノース及びショ糖からなるスティックシュガー
結晶パラチノース及びショ糖を同重量混合し、包装一本当たり結晶パラチノース及びショ糖がそれぞれ3.5gずつ含まれるようにスティック包装に充填した。
【実施例3】
【0062】
(ガムシロップ)
以下の表2に示す配合で、パラチノース及び異性化糖を含むガムシロップを製造した。製造は、パラチノースとアラビアガムを合わせ、粉体混合し、そこへ異性化糖及び水を加え、煮沸混合した。以上の溶液をレフブリックスで30に調整した。
【0063】
【表2】

【実施例4】
【0064】
(錠剤)
以下の表3に示す配合で、パラチノース及びショ糖を含む食品であるタブレットを製造した。製造は、下記に示す配合の混合粉末に、300kg/cm3の打錠圧をかけ、直径18mm、厚さ5mm、重量1.5gであるタブレットを成型することによって行った。
【0065】
【表3】

【実施例5】
【0066】
(粉末飲料)
以下の表4に示す配合で、パラチノース及びショ糖を含む粉末飲料を、常法に従い、万能混合攪拌機を使用して製造した。
【0067】
【表4】

【実施例6】
【0068】
(清涼飲料水)
6−1
以下の表5に示す配合でパラチノースを含む清涼飲料水を製造した。製造は、以下の原料を熱湯500mlに溶解した後、ペットボトル(500ml用)に充填することにより行った。
【0069】
【表5】

【0070】
6−2
以下の表6に示す配合でパラチノース及びショ糖を含む清涼飲料水を製造した。製造は、以下の原料を熱湯500mlに溶解した後、ペットボトル(500ml用)に充填することにより行った。
【0071】
【表6】

6−3
以下の表7に示す配合でパラチノース及び異性化糖を含む清涼飲料水を製造した。製造は、以下の原料を熱湯500mlに溶解した後、ペットボトル(500ml用)に充填することにより行った。
【0072】
【表7】

【実施例7】
【0073】
(ゼリー飲料)
下記表8に示す配合でパウチ入りゼリー飲料を調製した。
【0074】
【表8】

【実施例8】
【0075】
(ドーナツ)
下記表9に示す配合でドーナツを製造した。卵を割りほぐして、該ほぐした卵に、結晶パラチノース、ミルディア−75を加えてよく混ぜた後、さらに溶かしバターを加えてよく混ぜた。これに、篩った小麦粉とベーキングパウダーを加えてさっくり混ぜて、生地とした。生地をまとめて、冷蔵庫で30分休ませた後、生地を伸ばしてドーナツ型で抜いた。170℃の油に入れ、膨れてきつね色になったら、ドーナツを油から取り出した。熱いうちに、揚げたドーナツに粉末パラチノースをまぶした。
【0076】
【表9】

【実施例9】
【0077】
(大福)
下記表10に示す配合で大福を製造した。
餅:白玉粉に水を加えて電子レンジ500Wで4分加熱した。加熱後に、全体をかき混ぜ、粉末パラチノースとミルディア−75を加えて練りこんだ。練りこみは、透明感が出て粘りが出るまで行われた。
餡:生餡に、結晶パラチノース、ミルディア−75及び水を加えて火にかけ、つやがでるまで約10分間練り上げた。
餡を餅で包んで大福を製造した。
【0078】
【表10】

【実施例10】
【0079】
(エナジーバー)
下記表11に示す配合でエナジーバーを製造した。室温で軟らかくしたバターに結晶パラチノースを加えてよく練った。全卵を加えてよく混ぜた後、ドライクランベリー、アーモンドダイスを加えてよく混ぜた。これに大豆粉を加えてさっくり混ぜて、生地とした。天板に該生地を約1.5cmの厚みで敷き詰め、170℃のオーブンで20分間焼した。焼きあがったものを食べ易い大きさにカットした。
【0080】
【表11】

【実施例11】
【0081】
(食パン)
下記表12に示す配合で食パンを製造した。
中種:中種の原材料を24℃で低速3分中速1分ミキシングし、27℃で4時間予備発酵させた。
本種:ショートニング以外の本種の原材料を26℃で低速3分、中速10分、高速1分の順でミキシングし、次にショートニングを添加し、低速2分、中速2分、高速1分の順でミキシングした。生地をひとつにまとめフロアータイムとして20分間休ませた。分割重量220gとし、ベンチタイムとして20分間休ませた。該生地を馬蹄形に成形して形につめ、35℃75%でホイロタイムとして100分間最終醗酵させた。該最終発酵させた生地を、上火175℃、下火195℃のオーブンで40分間焼成した。なお、ミキシングの低速は約116回転/分、中速は約211回転/分、高速は約268回転/分である。使用ミキサーは「HPS−20M(関東混合機工業株式会社製)」である。
【0082】
【表12】

【実施例12】
【0083】
(アイスクリーム)
下記13に示す配合でアイスクリームを製造した。
砂糖、パラチノース、脱脂粉乳及び安定剤をあらかじめ良く混ぜた。これにミルディア−75及び水を加えて攪拌しながら沸騰させ、完全に溶かした。これに機能性クリームを入れてよく混ぜた。これを20℃程度に冷却し、ホモジナイズした後、アイスクリーマーにかけた。
【0084】
【表13】

【実施例13】
【0085】
(中華麺)
下記表14に示す配合で中華麺を製造した。
粗捏ね:材料を混ぜて50回程度捏ねた後、生地が乾かないようにして20分間休ませた。
本捏ね:さらに生地を軽めに捏ねて40分間休ませた。
生地を伸ばして包丁で細く切った。
【0086】
【表14】

【実施例14】
【0087】
(うどん)
下記表15に示す配合でうどんを製造した。
材料を混ぜてひとつにまとめ、できた生地をムラがなくなるまで5分間捏ねた後、ラップをして30分間休ませた。該生地を足踏み−たたむ、を45分間約30回繰り返した後、ひとつにまとめた。次に、該生地をラップに包んで1〜2時間休ませた後、伸ばして包丁で細く切った。
【0088】
【表15】

【実施例15】
【0089】
(粉末ポタージュスープ)
下記表16に示す配合で粉末ポタージュスープを製造した。
【0090】
【表16】

【実施例16】
【0091】
(スポンジケーキ)
以下の表17に示す配合により、パラチノース、ショ糖、及びデンプンを含むスポンジケーキを調製した。結晶パラチノース、ショ糖(グラニュ糖)、キサンタンガムを粉体混合したものをAとした。別に、小麦粉とベーキングパウダーを混合したものをBとした。Aに、牛乳及びリョートーエステルSPを入れて良く混合した。これに卵を入れ、均一になるまで良く混合し、卵液が25℃ぐらいになるまで湯煎で温めた。これを万能攪拌機で泡立て、これ以上泡立たないという状態になるまで泡立てた。これに、Bを練らないように混合し、スポンジケーキ型に入れ、160℃のオーブンで40分間焼いた。
【0092】
【表17】

【実施例17】
【0093】
(マドレーヌ)
以下の表18に示す配合により、パラチノース及びデンプンを含むマドレーヌを調製した。小麦粉とベーキングパウダーは合わせて篩っておいた。バターは湯煎にかけ、溶かしておいた。ボールに卵を入れ、グラニュ糖、食塩、レモンの皮、レモンエッセンスを加えて湯煎にかけた。これを温めながら、パラチノースを入れ、泡立て器でよく攪拌した。ここに篩っておいた小麦粉を一度に加え、良く混ぜ合わせ、溶かしバターを加えて混ぜた。アルミホイルのカップに分けて入れ、160℃のオーブンで色づくまで10分ほど焼いた。
【0094】
【表18】

【実施例18】
【0095】
(ケーキミックス)
以下の表19に示す配合でケーキミックスを調製した。ショートニング以外の材料を予備混合し、そこに溶解したショートニングを混合し、篩別を行った。
【0096】
【表19】

【実施例19】
【0097】
(乾燥スープ)
下記表20に示す配合で乾燥スープを調製した。
【0098】
【表20】

【実施例20】
【0099】
(ドレッシング)
下記表21に示す配合でドレッシングを調製した。
【0100】
【表21】

【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】運動後の飲料摂取による、血中GLP−1濃度の経時変化を示す。
【図2】運動後の飲料摂取による、血中コレシストキニン濃度の経時変化を示す。
【図3】運動後の飲料摂取による、感覚的満腹感の経時変化を示す。
【図4】運動後の飲料摂取による、感覚的空腹感の経時変化を示す。
【図5】運動後の飲料摂取による、血中GLP−1濃度の経時変化を示す。
【図6】運動後の飲料摂取による、血中コレシストキニン濃度の経時変化を示す。
【図7】運動後の飲料摂取による、感覚的満腹感の経時変化を示す。
【図8】運動後の飲料摂取による、感覚的空腹感の経時変化を示す。
【図9】運動後の飲料摂取による、血中グルコース濃度の経時変化を示す。
【図10】運動後の飲料摂取による、血中インスリン濃度の経時変化を示す。
【図11】運動後の飲料摂取による、C−ペプチド濃度の経時変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソマルツロースを含んでなる、満腹感を持続させる剤。
【請求項2】
該剤が運動後に摂取される、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の剤を含む、飲食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−53036(P2010−53036A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210710(P2008−210710)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(501190941)三井製糖株式会社 (52)
【Fターム(参考)】