説明

溝切り器

【課題】溝切り時において左右側板の上部間に設けられた閉塞部材に乗り上げた泥土を外側に排出する。
【解決手段】左右振り分け体10,10は閉塞部材5の上面上に左右一対を左右対称に突設する。これら左右一対の左右振り分け体10,10は先鋭部11を閉塞部材5のほぼ長手方向中心軸線7上の溝切り器本体2の前部2A側に設けると共に、平面を略逆V字状に配置してその左右に左右振り分け面12,12をそれぞれ設ける。左右振り分け面12,12の間隔Aを後方に向けて次第に幅大となるように形成する。閉塞部材5に乗り上げた泥土を左右に振り分け、その振り分けた泥土を左右振り分け面12,12に沿わせて次第に外側に移動させて、その移動に伴う運動エネルギーによってより遠くへ排出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝切り器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして図5に示すように、正面を略V字状に左右一対の左右側板21,21を設けると共に、これら左右側板21,21間の間隔を後方へ次第に大きく形成し、左右側板21,21のそれぞれの上部間に閉塞部材22を設けて溝切り器23を形成し、溝切り器23は自走式の農業用作業車24の後部に接続部材25を介して接続している。そして、圃場等おいて駆動輪26を回転駆動して農業用作業車24を前進すると、この前進に伴って農業用作業車24に取り付けられた溝切り器23が土に食い込みながら溝を切り、その断面形状に倣った溝が形成されるものが知られている。このような溝切り器23においては、閉塞部材22を設けたことによって、溝切り器23の内側に泥土が入り込むことを防ぎ、さらに、溝切り器23の上部が閉塞されたことにより、溝切り器の強度が向上するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−247233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術においては、溝切り作業時に、泥土が閉塞部材に乗ってしまい、溝切器が重くなって溝切り器が圃場においてやや沈んだ状態で溝切りするおそれがあった。また、従来技術では溝切り器で掘った溝に、溝切り器によって外側に排出した泥土が戻ってきてこの泥土が溝を埋めて溝が浅くなってしまうおそれもある。これは溝切り器によって外側に排出した泥土が溝の遠くに排出しにくいことに起因する。
【0005】
解決しようとする問題点は、先細に左右側板を設けると共にこれらの間に閉塞部材を設けた溝切り器において、溝切り時において閉塞部材に泥土などが乗り上げた泥土を外側に排出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、左右一対の左右側板を先細に設けると共に、これら左右側板間の間隔を後方へ次第に大きく形成し、前記左右側板のそれぞれの上部間に閉塞部材を設けて溝切り器本体を形成し、前記閉塞部材の上面上に、長手方向を前記閉塞部材の長手方向軸線と交差する左右振り分け体を設けたことを特徴とする溝切り器である。
【0007】
請求項2の発明は、左右一対の左右側板を先細に設けると共に、これら左右側板間の間隔を後方へ次第に大きく形成し、前記左右側板のそれぞれの上部間に閉塞部材を設けて溝切り器本体を形成し、前記閉塞部材の上面上に左右一対の左右振り分け体を突設し、これら左右一対の左右振り分け体は先鋭部を前記閉塞部材のほぼ長手方向軸腺上の前記溝切り器本体の前部側に設けるように平面を略逆V字状に配置してその左右に左右振り分け面をそれぞれ設けると共に、これら左右振り分け面の間隔を後方に向けて次第に幅大となるように形成し、これら左右振り分け面の後部を前記溝切り器本体の後部側に設けたことを特徴とする溝切り器である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、溝の形成時に、閉塞部材に乗り上がった泥土を、左右振り分け体によって溝切り器本体の後方ではなく、左右の外側方向に排出することができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、閉塞部材に乗り上げた泥土を左右に振り分け、その振り分けた泥土を左右振り分け面に沿わせて次第に外側に移動させて、その移動に伴う運動エネルギーによって泥土をより遠くへ排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1を示す上方からの斜視図である。
【図2】同下方からの斜視図である。
【図3】同後面図である。
【図4】本発明の実施例2を示す上方からの斜視図である。
【図5】従来技術の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0012】
図1〜3は実施例1を示しており、作業用の自走車体或いは手押し車体の後部に接続部材1を介して装着される牽引用の溝切り器本体2は、正面を略V字状になるように先細に左右一対の左右側板3,3を設けると共に、これら左右側板3,3間の間隔Aを後方へ次第に大きく形成して船の舳先状に形成し、左右側板3,3のそれぞれの上部4,4間に閉塞部材5を設けている。この閉塞部材5は、左右側板3,3のそれぞれの上部4,4間の上部開口を覆うようにカバー板材等とも称する。尚、溝切り器本体2の後部には左右側板3,3の下縁を内側に互いに対向するように折り曲げて横向きな底板部6を形成している。この閉塞部材5は上部開口の全域を覆うように溝切り器本体2における長手方向中心軸線7の前部2Aから後部2Bにかけて設けられている。そして、閉塞部材5の前部2Aの中央部分には接続用受け部材8が前方へ突設している。
【0013】
さらに、閉塞部材5の上面に下縁9を水密又はほぼ水密に固定して左右一対の左右振り分け体10,10を上方へ突設する。左右振り分け体10,10は、ステンレス鋼などにより形成され平面を略逆V字状に配置した左右一対のものであり、その先鋭部11を閉塞部材5のほぼ長手方向中心軸線7上における溝切り器本体2の前部2A側に設けると共に、先鋭部11は接続用受け部8を避けるようにして溝切り器本体2の先端よりやや後退して設けられており、その先鋭部11の平面上の先鋭挟角度Bは、平面上の溝切り器本体2の前部2Aの前部挟角度Cよりも大きく形成されている(B>C)。また、左右振り分け体10,10の外側には、左右振り分け面12,12を、長手方向中心軸線7を中心として左右対称にそれぞれ設けると共に、これら左右振り分け面12,12の間隔Dを後方に向けて次第に幅大となるように形成している。そして、長手方向中心軸線7を中心として溝切り器本体2の後部2B側に左右振り分け体10,10の後部10Bを設けている。実施例では後部10Bは閉塞部材5の後部5Bより後方に配置されている。また、後部10Bは閉塞部材5の左右両側の縁5C又はその延長線5Dよりも外側に配置され、その結果、左右一対の左右振り分け面12,12のそれぞれの後部12B側の最大幅Eは溝切り器本体2の左右側板3,3間の最大幅Fより大きく形成されている(E>F)。尚、左右振り分け体10,10の閉塞部材5から上部までの高さGは、溝切り器本体2自体の最大高さHよりも低く形成されている(G<H)。
【0014】
前記左右振り分け体10,10は、それぞれ下縁9を閉塞部材5の上面に水密又はほぼ水密に固定し、後部13Aが閉塞部材5の左右両側の縁5C又は後部5Bに至る前部板部13と、この前部板部13の後方に、この前部板部13と同一面状に該前部板部13に接続された後部板部14によって形成されている。したがって、この後部板部14は左右両側の縁5C又は後部5Bより外側に張り出すように設けられている。そして、後部板部14における前部14Aは、前部板部13の後縁側である後部13Bに水密状態又はほぼ水密状態に固定しており、この後部板部14は前部板部13の長手方向15に対して左右に水平状態となって揺動自在になっている。そして、後部板部14の後縁である後部14Bは閉塞部材5の左右両側の縁5C又は後部5Bよりも後方に突設して、自由端となっている。さらに、例えば、溝切り器本体2や前部板部13をステンレス鋼によって形成し、後部板部14をステンレス鋼、或いはバネ鋼によって形成するなど、後部板部14を他の部位と同じ弾性のもの、或いは弾性の大きいものによって形成している。
【0015】
尚、左右側板3,3と閉塞部材5との接続箇所には、上向きの小突起16(高さJ、J<<G)が形成されており、この小突起16は、左右振り分け体10,10の前方において高さG程度の長さK(K≒G)を除いてその前方に設けられている。
【0016】
次に前記構成についてその作用を説明する。作業用の自走車体或いは手押し車体に接続部材1を介して接続用受け部8を接続して、車体1の後部に溝切り器本体2を装着する。この際、閉塞部材5は水平に配置される。そして、圃場等で車体1を前進させて溝切り器本体2を牽引すると、この前進に伴って車体1後方の溝切り器本体2の左右側板3,3、底板部6が土に食い込みながら溝17を切り、その断面形状に倣った溝17が形成される。
【0017】
この際、泥土(図示せず)が左右側板3,3の上部4,4を乗り越えて閉塞部材5上に乗り上げることで、溝切り器本体2の内部に泥土が入り込むことを防ぎ、溝切り器の重量が大きくなることを阻止して、車体1の操作性などが向上する。
【0018】
さらに、閉塞部材5上に乗り上げた泥土は、左右一対の左右振り分け体10,10の先鋭部11によって左右に振り分けられる。そして、左右にそれぞれ振り分けられた泥土は、左右振り分け体10,10の外面、すなわち左右振り分け面12,12に沿って後方へ流れると共に、泥土は小突起16によっても後方へ案内される。このように後方に流れた泥土は後部側12Bより外側に排出される。この排出にあっては、溝切り器本体2が走行していることで、泥土には勢いがあり、その運動エネルギーで斜め後方に飛び出し、溝17より離れて排出できる。さらに、左右振り分け体10,10の後部10B(左右振り分け面12,12の後部12B)間の最大幅Eが、左右側板3,3(上部4,4)間の最大幅Fよりも外側に配置されていることで、閉塞部材5の上面にある泥土は上部4,4よりも外側まで案内されることで泥土を溝切り器本体2のいっそう外側に排出することができる。しかも、左右振り分け体10,10に沿う泥土によって水平揺動可能に設けられた後部板部14は、一点鎖線に示すように内側に押し込められ、この押込み力より変形に伴う後部板部14の復元力が大きくなると、後部板部14は二点鎖線で示すように前部14A側を回転中心としてその後部12Bが外側にはじき出るように回動し、この結果この後部板部14の回動に伴って後部板部14の外側にある泥土ははじき飛ばされて溝切り器本体2のなおさら外側に排出することができる
このようして形成された溝17においては、排出した泥土が溝17より遠くに排出されているので、溝17の形状は左右側板3,3、底板部6の倣ったままの形状を確保することができる。
【0019】
以上のように、前記実施例においては、溝切り器本体2の閉塞部材5の上面上に、長手方向15を閉塞部材5の長手方向中心軸線7と交差する左右一対の左右振り分け体10,10を設けたことにより、溝17の形成時に、閉塞部材5に乗り上がった泥土を、左右側板3,3によって左右のいずれか、すなわち溝切り器本体2の後方ではなく、左右振り分け体10,10が左向きであれば左側に、右向きであれば右側に排出することで、排出した泥土を溝17に再び入り込ませるようなことはなく、溝17の形状を確保することができる。
【0020】
また、左右振り分け体10,10は閉塞部材5の上面上に左右一対を左右対称に突設し、これら左右一対の左右振り分け体10,10は先鋭部11を閉塞部材5のほぼ長手方向中心軸線7上の溝切り器本体2の前部2A側に設けると共に、平面を略逆V字状に配置してその左右に左右振り分け面12,12をそれぞれ設けると共に、これら左右振り分け面12,12の間隔Aを後方に向けて次第に幅大となるように形成して、これら左右振り分け面12,12の後部12Bを溝切り器本体2の後部2B側に設けたことで、閉塞部材5に乗り上げた泥土を左右に振り分け、その振り分けた泥土を左右振り分け面12,12に沿わせて次第に外側に移動させて、その移動に伴う運動エネルギーによってより遠くへ排出でき、この遠くへ排出した泥土が溝17側に戻ってくることを阻止して、いっそう溝17の形状の確保を行うことができる。
【0021】
さらに、左右一対の左右振り分け面12,12の後部12B側の最大幅Eは溝切り器本体2の左右側板3,3の最大幅Fより大きく形成されていることによって、泥土を左右一対の左右振り分け面12,12に沿わせて次第に外側に移動させたとき、泥土を溝切り器本体2の外側まで案内できることによって、なおいっそう泥土を外側に排出することができる。
【0022】
しかも、前記左右振り分け面12,12の後向きの後部12Bは板材によって形成されて、その後部板部14の後部13Bは自由端に形成されて水平回動可能に設けられていることで、左右振り分け面12,12に沿って移動する泥土によって後部が内側に押込まれた後に、後部が外側に弾性復元することで、泥土を遠くの外側にはじき出すこともできる。
【0023】
また、後部板部14の後部13Bである自由端側をバネ鋼で形成することで、弾性力を向上してはじき飛ばしによって遠くまで泥土を排出することができ、しかも自由端側の復元力を確保することができる。
【実施例2】
【0024】
図4は実施例2を示しており、前記実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。実施例2は、左右側板3,3の先鋭部11を可及的に前部2Aに近づけ、そして左右振り分け面12,12は直線状ではなく、長手方向15の中間部が長手方向よりも内側に配置された円弧状のものを示している。
【0025】
このようにしても、実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように本発明に係る牽引用溝切り器は、各種の用途に適用できる。実施例では左右振り分け体は左右両側に振り分けたものを示したが、左右のいずれか一方のみに振り分けるようなものでもよい。また、溝切り器本体の正面は、U字状のような略V字状に形成してもよく、さらに牽引式ではなく押出し式のようなものでもよい。
【符号の説明】
【0027】
2 溝切り器本体
2A 前部
2B 後部
3,3 左右側板
5 閉塞部材
7 長手方向中心軸線
10,10 左右振り分け体
11 先鋭部
15 長手方向
12,12 左右振り分け面
12B 後部
A 間隔
D 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の左右側板を先細に設けると共に、これら左右側板間の間隔を後方へ次第に大きく形成し、前記左右側板のそれぞれの上部間に閉塞部材を設けて溝切り器本体を形成し、前記閉塞部材の上面上に、長手方向を前記閉塞部材の長手方向軸線と交差する左右振り分け体を設けたことを特徴とする溝切り器。
【請求項2】
左右一対の左右側板を先細に設けると共に、これら左右側板間の間隔を後方へ次第に大きく形成し、前記左右側板のそれぞれの上部間に閉塞部材を設けて溝切り器本体を形成し、前記閉塞部材の上面上に左右一対の左右振り分け体を突設し、これら左右一対の左右振り分け体は先鋭部を前記閉塞部材のほぼ長手方向軸腺上の前記溝切り器本体の前部側に設けるように平面を略逆V字状に配置してその左右に左右振り分け面をそれぞれ設けると共に、これら左右振り分け面の間隔を後方に向けて次第に幅大となるように形成し、これら左右振り分け面の後部を前記溝切り器本体の後部側に設けたことを特徴とする溝切り器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−38276(P2011−38276A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185161(P2009−185161)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000160245)吉徳農機株式会社 (5)
【Fターム(参考)】