説明

溝蓋の取付構造

【課題】免震設計されたビル等の建築物に一端が連結され、自由端側が建築物と溝を介して隣接する地盤に固定される幅広の受枠に摺動可能に支持される溝蓋の取付構造において、上記受枠の下面に並設される補強材と地盤のコンクリート躯体より突設される差し筋との溶接作業が容易に行えるようにすると共に、受枠下へのコンクリートの打設が隅々まで容易に行えるようにする。
【解決手段】受枠17をL形断面の板材13と、一側縁を斜め外向きに傾斜させた傾斜受縁14aとした板材14と、両板材13及び14を長手方向に適当間隔で連結したT形断面の補強材15とにより構成し、補強材間をコンクリート打設用の開口16とする。地盤Bへの取付けは、受枠17を支持した状態で、開口16からコンクリート躯体18より突設される差し筋19と補強材15とを溶接して固定すると共に、板材14とコンクリート躯体18との間及び各開口16からコンクリートを打設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震設計されたビル等の建築物の周りに形成される溝に設置される溝蓋の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
免震設計されたビル等の建築物では、地震時における建築物の揺れを吸収するために周りに溝が設置してあり、溝には歩行者や車両の走行のため溝蓋が設置してある。こうした溝蓋は、地震時の溝幅の変化に対応できるようにする必要がある。そこで下記特許文献1には、図1及び図2に示すように、建築物Aにアングル状の受枠1を固着すると共に、建築物Aと溝Dを介して隣接する地盤Bに幅広の受枠2を固着し、一端を受枠1に連結した溝蓋3の自由端側を受枠2上に載置し、地震時に溝幅が変化すると、溝蓋3の自由端側が受枠2上を摺動できるようにし、溝幅がより狭くなったときは図3に示すように溝蓋自由端に設けた傾斜縁4が受枠2端の傾斜受縁2aに当たって地盤B上に乗り上げるようになっており、溝蓋端には更に地盤Bに掛け渡されるカバー板5を取付けた目地カバー装置が開示されている。
【0003】
上述する受枠1及び2の建築物A及び地盤Bへの施工は、図4に示すように受枠1及び2の高さをそれぞれ調節して保持したのち、建築物Aのコンクリート躯体より突設される差し筋6に受枠1に固着のアンカー7を溶接にて取付けたり、地盤Bより突設される差し筋8に受枠2に固着のアンカー9及び受枠2下面の長手方向に適当間隔で、該長手方向と直交して並設される補強材10を溶接にて取付け、ついで建築物Aのコンクリート躯体と受枠1との間、及び地盤Bのコンクリート躯体と受枠2との間よりコンクリートを矢印方向に打設して行っていた。図5は、施工後の断面構造を示し、図中、11は打設したコンクリート層を示す。
【特許文献1】特開平10−317516号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の受枠2は溝蓋3の摺動を確保できるように幅広に形成されているため、地盤Bのコンクリート躯体と受枠2の間の隙間よりコンクリートを受け枠2の隅々まで充填することは容易でなく、施工が困難であり、また受枠下面の補強材10と差し筋8を溶接するのも補強材10が受枠2の奥にある程困難であった。
【0005】
本発明は、溝蓋が摺動する受枠を建築物又は建築物の周りの地盤に固定するためのコンクリートの打設が容易に行える溝蓋の取付構造を提供することを第1の目的とし、溝蓋が摺動する受枠の長手方向下面に適当間隔で並設される補強材と、建築物または該建築物の周りの地盤より突設された差し筋とで溶接にて取付けられる溝蓋の取付構造において、コンクリートの打設及び補強材と差し筋との溶接作業が容易に行えるようにすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、免震設計されたビル等の建築物の周りに地震時における建築物の揺れを吸収するために形成される溝に設置される溝蓋の取付構造であって、上記建築物と、該建築物と溝を介して隣接する地盤のいずれか一方に固定され、溝蓋の一端が連結される第1の受枠と、上記建築物と地盤のいずれか他方に固定され、溝蓋の自由端側が摺動可能に載置される幅広の第2の受枠よりなり、第1及び第2の両受枠のうち、少なくとも第2の受枠には、上記建築物または地盤との間にコンクリートが打設される溝蓋の取付構造において、上記第2の受枠には1ないし複数のコンクリート打設用の開口が形成されることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、第2の受枠が建築物または地盤に、該建築物又は地盤より突設される差し筋と、受枠下面の長手方向に適当間隔で並設される補強材を溶接することにより固定され、補強材間の受枠にはコンクリート打設用の開口が補強材に沿うようにして形成されることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の第2の受枠が一定の間隔を存して長手方向に延びる板材と、両板材を適当間隔で固定する補強材よりなり、補強材間がコンクリート打設用の開口とされることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項2に係る発明の第2の受け枠が一枚の鋼板から或いは数枚の鋼板を組合せて形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によると、コンクリート躯体と受枠との間のみならず、コンクリート打設用の開口を通してコンクリートを打設することにより、コンクリートの打設をコンクリート躯体と受枠との間でのみ行ってきた従来例に比べ、コンクリートを受枠の隅々まで充填することが容易にできるようになり、また開口を設けたことにより、受枠の重量を軽減できるようになる。
【0010】
請求項2に係る発明によると、補強材に沿う開口を通してコンクリートの打設を行うことにより請求項1に係る発明と同様の効果を奏するほか、補強材と差し筋の溶接作業が容易に行えるようになる。
【0011】
請求項3に係る発明によると、板材と補強材により、補強材ごとにコンクリート打設用の開口を備えた受枠を簡易に得ることができる。
【0012】
請求項4に係る発明によると、受枠を1枚の鋼板から或いは数枚の鋼板を組合せて形成することにより受枠の構成を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の溝蓋の取付構造について図面により説明する。
図6は、L形断面の板材13と、一側縁を斜め外向きに傾斜させた傾斜受縁14aとした板材14の両板材13及び14をT形断面の補強材15により板材13及び14の長手方向に適当間隔で連結し、補強材間をコンクリート打設用の開口16とした第2の受枠に相当する受枠17を示すものであり、図7は、同受枠17を地盤Bに取付けた状態を示すもので、受け枠17の地盤Bへの取付けは、図6に示す受枠17を地盤Bのコンクリート躯体18上に高さ調整をして支持した状態で、開口16からコンクリート躯体18より突設される差し筋19と補強材15とを溶接して固定すると共に、板材14の傾斜受縁14aに固定されるアンカー21と差し筋19を溶接して固定することにより行う。その後、 板材14とコンクリート躯体18との間及び各開口16からコンクリートが打設される。
【0014】
第1の受枠に相当する建築物A側の受枠24(図9参照)は、図1〜図3に示す従来の受枠1と同様にして建築物Aに連結される。
【0015】
図8は、建築物A側に取付けた受枠24と、溝Dを介して隣接する地盤B側に取付けた受枠17にコンクリート打設後、溝蓋3を架設した状態を示すもので、溝蓋3には、図1〜図3に示す溝蓋3と同様、地盤Bに掛け渡されるカバー板5が取付けてある。図中、22は打設されたコンクリート層を示す。
【0016】
なお、上述のコンクリート層22は乾燥により収縮し、乾燥後は板材13、14より沈降するため、図7に示す受枠17では、溝蓋3は受枠17に装着した状態で板材13及び14に当たり、両板材によって支持されるが、コンクリートの収縮代を見込んで収縮代分嵩上げしてコンクリートを打設することにより乾燥後のコンクリート面を板材13及び14と面一になるようにし、溝蓋3を板材13及び14と共にコンクリート層で支持させるようにすることもできる。
【0017】
本実施形態の取付構造によると、地震時に溝幅が変化すると、図1〜図3に示す従来の溝蓋3と同様、溝蓋3の自由端側が受枠17上を摺動して溝幅の変化に対応できるようになり、溝幅がより狭くなったときは図3に示すように溝蓋自由端に設けた傾斜縁4が受枠17端の傾斜受縁14aに当たって地盤B上に乗り上げるようになること、受枠17の各開口16と、板材14とコンクリート躯体18の間よりコンクリートを打設することにより、板材13及び14下の受枠17の隅々までコンクリートを容易に充填することができること、受枠17は板材13及び14と補強材15とで構成されることから、構造が簡単なものとなり、補強材間は開口16となっているため、全体の重量が軽減されること、補強材15の両側は開口16となっているため、該開口16を通して補強材15と差し筋19との溶接作業が容易に行えるようになること等の効果を奏する。
【0018】
上記実施形態では、受枠17は、板材13及び14と、両板材13及び14を連結する補強材15よりなり、補強材間をコンクリート打設用の開口16としているが、別の実施形態では、受枠17が一枚の鋼板から形成される。一枚の鋼板から形成する場合には、受枠17がプレス加工により或いは他の機械加工により形成され、プレス加工による場合は、傾斜受縁14aが屈曲加工により、また開口が打抜きにより形成される。受け枠17が1枚の鋼板から形成される場合には、補強材15は取付けても良いし、省いても良い。省く場合、差し筋19は受枠17を構成する鋼板に直接溶接して連結される。
【0019】
更に別の実施形態では、受枠17が複数の鋼板から形成され、補強材15上に組付けられる。図9は、このうちの好ましい1つの態様を示すもので、一側に凹所24を補強材15と同一ピッチが形成し、他側に傾斜受縁25aを形成した板材25と、一側に上記凹所24に対応する箇所に凹所27を形成した板材28を凹所24と凹所27同士で開口29が形成されるように突き合せて補強材上に載置するか、或いは補強材15に溶接にて固定してなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】免震設計の建築物と地盤との間に溝蓋を掛け渡した状態を示す図
【図2】地震により溝幅が狭まったときの状態を示す図
【図3】地震により溝幅が更に狭まり、溝蓋が地盤上に乗り上げた状態を示す図
【図4】受枠を地盤側の差し筋に取り付けた状態を示す図
【図5】コンクリートを打設した溝蓋の取付構造の断面図
【図6】本発明に係る溝蓋の取付構造で用いる受枠の要部の斜視図
【図7】図6に示す受枠を地盤に取付けた断面図
【図8】溝蓋が取付けられた溝蓋取付構造の断面図
【図9】受枠の別の例の要部の斜視図
【符号の説明】
【0021】
1、2、17・・受枠
2a、14a、25a・・傾斜受縁
3・・溝蓋
4・・傾斜縁
5・・カバー板
6、8、19・・差し筋
7、9、21・・アンカー
10、15・・補強材
13、14、25、28・・板材
11、22・・コンクリート層
16、29・・開口
18・・コンクリート躯体
24、27・・凹所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震設計されたビル等の建築物の周りに地震時における建築物の揺れを吸収するために形成される溝に設置される溝蓋の取付構造であって、上記建築物と、該建築物と溝を介して隣接する地盤のいずれか一方に固定され、溝蓋の一端が連結される第1の受枠と、上記建築物と地盤のいずれか他方に固定され、溝蓋の自由端側が摺動可能に載置される幅広の第2の受枠よりなり、第1及び第2の両受枠のうち、少なくとも第2の受枠には、上記建築物または地盤との間にコンクリートが打設される溝蓋の取付構造において、上記第2の受枠には1ないし複数のコンクリート打設用の開口が形成されることを特徴とする溝蓋の取付構造。
【請求項2】
上記第2の受枠が建築物または地盤に、該建築物又は地盤より突設される差し筋と、受枠下面の長手方向に適当間隔で並設される補強材を溶接することにより固定され、補強材間の受枠にはコンクリート打設用の開口が補強材に沿うようにして形成されることを特徴とする請求項1記載の溝蓋の取付構造。
【請求項3】
上記第2の受枠が一定の間隔を存して長手方向に延びる板材と、両板材を適当間隔で固定する補強材よりなり、補強材間がコンクリート打設用の開口とされることを特徴とする請求項2記載の溝蓋の取付構造。
【請求項4】
上記第2の受け枠が一枚の鋼板から或いは数枚の鋼板を組合せて形成されることを特徴とする請求項2記載の溝蓋の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−95385(P2008−95385A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278311(P2006−278311)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【Fターム(参考)】