説明

溶存ガス供給装置

【課題】 ガス透過性膜を用いる溶存ガス供給装置において、液相に溶存ガスを長期間連続して安定的に供給することができる溶存ガス供給装置を提供する。
【解決手段】 加圧ガス供給源11と、ガス透過性膜1aを介して液相に上記ガスを溶解させる手段であって、上記ガス透過性膜1aに接する加圧ガス側に加圧ガス溜空間部2aを有し、上記加圧ガス溜空間部2aの一部で上記加圧ガス供給源11と連通し、かつ、上記加圧ガス溜空間部2aの別の一部には溜まったドレインを排出する開閉弁3を有するガス溶解手段4を備えた溶存ガス供給装置において、上記加圧ガス溜空間部2aの内圧を検出する圧力検出機構10及びこの圧力検出機構10で検出された内圧があらかじめ設定された圧力値を超えると上記開閉弁3を開にする弁開閉制御機構20を設けたことを特徴とする溶存ガス供給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス、例えば、炭酸ガス、酸素ガス等を、水等の液相、例えば、生物の飼育・育成、観賞用等の水槽水、湖沼等の水質浄化のために水棲植物の生育を促進させる際の湖沼水、浴用炭酸水を製造するための温水、微生物、細胞等の培養液等の液相(対象液)に溶解させる溶存ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な溶存ガス供給方法として、例えば、液相に直接ガスを噴出させる方法、これと撹拌を併用する方法等が挙げられるが、これらの方法は、相当量の溶解しないガスが大気中に放出されるため、ガスの浪費が著しい。
上記方法よりも効率的な溶存ガス供給方法として、ガス透過性膜を介して液相にガスを溶解させる方法、例えば、末端を閉じたシリコンチューブ(ガス透過性膜の一種)や一部にガス透過性膜を有する密閉容器等を液相に配置し、その内部に加圧ガスを送給する方法等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−334488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる従来のガス透過性膜を用いる溶存ガス供給方法においては、加圧ガスを長期間連続で送給して液相に溶解させているうちに、このガス透過性膜に接する加圧ガス側の加圧ガス溜空間部内にドレインが徐々に溜まり、そして、この溜まったドレインが加圧ガスの送給を遮断したり、ガス透過性膜の一部を塞いだりして液相へのガス透過を妨げ、その結果、液相への溶存ガス供給量が漸次減少していくという問題点がある。
【0004】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ガス透過性膜を用いる溶存ガス供給装置において、液相に溶存ガスを長期間連続して安定的に供給することができる溶存ガス供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、上記加圧ガス溜空間部内に溜まったドレインによるガス透過性膜のガス透過の妨げが増すにつれ、この加圧ガス溜空間部の内圧が徐々に上昇すること、そして、この内圧がある値を超えた時にドレインを上記加圧ガス溜空間部外に自動的に排出してドレインによるガス透過性膜のガス透過の妨げを解消するようにすれば、液相に溶存ガスを長期間連続して安定的に供給することができること等の新知見を得、これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の溶存ガス供給装置は、加圧ガス供給源と、ガス透過性膜を介して液相に上記ガスを溶解させる手段であって、上記ガス透過性膜に接する加圧ガス側に加圧ガス溜空間部を有し、上記加圧ガス溜空間部の一部で上記加圧ガス供給源と連通し、かつ、上記加圧ガス空間部の別の一部には溜まったドレインを排出する開閉弁を有するガス溶解手段を備えた溶存ガス供給装置において、
上記加圧ガス溜空間部の内圧を検出する圧力検出機構及びこの圧力検出機構で検出された内圧があらかじめ設定された圧力値を超えると上記開閉弁を開にする弁開閉制御機構を設けたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の溶存ガス供給装置の好適形態は、上記開閉弁が上記圧力検出機構と上記弁開閉制御機構の両機能を有する安全弁であることを特徴とする。
【0008】
更に、本発明の溶存ガス供給装置の他の好適形態は、上記加圧ガス供給源の1に対して、上記ガス溶解手段の複数を上記加圧ガス供給源に並列に連通してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガス透過性膜を用いる溶存ガス供給装置において、上記ガス溶解手段におけるガス透過性膜の加圧ガス側の加圧ガス溜空間部の内圧が上昇してあらかじめ設定された圧力値を超えると、自動的に開閉弁を開にして、この加圧ガス溜空間部内に溜まったドレインをガス溜空間部外に排出する等としてドレインによるガス透過性膜のガス透過の妨げを解消するようにしたため、液相に溶存ガスを長期間連続して安定的に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の溶存ガス供給装置について詳細に説明する。
【0011】
本発明の溶存ガス供給装置は、水槽で生物を飼育・生育、観賞等したり、湖沼等の水質浄化のため水棲植物の生育を促進させたり、温浴効果が期待される浴用炭酸水を製造したり、更には、微生物や細胞を培養したりする等の際の水等の液相(対象液)に溶存ガスを供給するための装置として使用される。
【0012】
上記加圧ガス供給源のガスとしては、例えば、炭酸ガス、酸素ガス、空気等が挙げられるが、これらには限定されない。
また、この加圧ガス供給源における加圧ガス源(加圧ガス貯蔵手段等)としては、例えば、ガスボンベ、コンプレッサー等が通常好適に用いられる。
更に、この加圧ガス供給源として、常法に従い、加圧ガス源の下流にガス圧力調節手段、例えば、減圧弁、調圧弁等、圧力計、ガス流量調節手段、例えば、ガス流量調節弁(例えば、オリフィス、ニードル弁等)、ガス流量計(例えば、面積式流量計、マスフローコントローラ等)等の各種手段等を必要により設けることができる。このようにすることにより、ガス供給圧力を定圧にしたり、ガス流量を調節したり等して、上記ガス溶解手段におけるガスの膜(ガス透過性膜)透過に適したガス圧力、ガス流量に適宜調整される。
そして、上記加圧ガス供給源の下流には、液相に接する上記ガス溶解手段における加圧ガス溜空間部の一部が連通状態で連結されている。上記加圧ガス溜空間部の上記加圧ガス供給源との連結位置については、具体的には、上記ガス溶解手段を液相に水平に配置するような場合で、後記するガス溶解手段の態様例(1)や(3)のときにはその一端(上流側の先端部)に、その態様例(2)のときには適宜の部分に、そして、上記ガス溶解手段を液相に垂直に配置するような場合では、その態様例(1)〜(3)のいずれのときにもその上端部とするのが好ましい。
【0013】
上記ガス透過性膜を介して液相にガスを溶解させるガス溶解手段は、上記のごとく、このガス透過性膜に接する加圧ガス側に、加圧ガスを貯留しつつ継続的に膜透過させるための上記加圧ガス溜空間部を有し、そして、この加圧ガス溜空間部の別の一部には、加圧ガス溜空間部内に徐々に溜まったドレインを排出するための開閉弁を有している。
【0014】
上記ガス溶解手段の態様としては、液相にガスを効率的に溶解させ得るものであればよく、特に限定されないが、次のようなものが例示される(図1(a)〜(c)の概略説明図参照)。
なお、開閉弁については、ここでは省略し、後記する。
(1)図1(a)に示すごとく、管状(チューブ状)のガス透過性膜1aの一方の側(外側又は内側)には液相Lが、他方の側(内側又は外側)には加圧ガス溜空間部2a内の加圧ガスが接するように構成されているもの(Gは加圧ガスで、以下同じ。)(同図は、ガス透過性膜1aの外側に液相Lが、内側に加圧ガスが接する場合の例示)。
(2)図1(b)に示すごとく、平膜状のガス透過性膜1bの一方の側には液相Lが、他方の側には加圧ガス溜空間部2b内の加圧ガスが接するように構成されているもの。
(3)図1(c)に示すごとく、ガス透過性膜1cである複数の中空糸膜の先端及び末端が開口状態を保ったままポッティング材pで固定された集合体で、その各端部には共通開口空間部2c’(この共通開口空間部も加圧ガス溜空間部として機能する。)を有するものであって、上記態様例(1)の場合と同様に、ガス透過性膜1cの一方の側(外側又は内側)には液相Lが、他方の側(内側又は外側)には加圧ガス溜空間部2c内の加圧ガスが接するように構成されているもの(この集合体の軸方向の水平断面の中空糸膜配置形状は、特に制限されないが、略円形状が好適。)(同図は、ガス透過性膜1cの外側に液相Lが、内側に加圧ガスが接する場合の例示。)。 等
【0015】
上記ガス溶解手段の態様例(1)及び(3)において、管状又は中空糸膜(管状の一種)のガス透過性膜の内側を上記加圧ガス溜空間部とする(外側を液相とする)場合には、これらのガス透過性膜自体が送給される加圧ガスに対し耐圧性を有していればよいが、その逆の外側を加圧ガス溜空間部とする(内側を液相とする)場合には、ハウジング部材等で耐圧性の加圧ガス溜空間部が形成される。
なお、上記態様例(3)は、ガス溶解モジュールとして公知であり、外部灌流式通液法(中空糸膜の外側に液相、内側に加圧ガス)又は内部灌流式通液法(中空糸膜の内部に液相、外側に加圧ガス)がある。
また、上記態様例(2)において、平膜状のガス透過性膜は、それ自体耐圧性のもの、あるいは剛材の合成樹脂、金属等の補強材で耐圧性が付与されたものが用いられ、また、上記加圧ガス溜空間部は、ガス透過性膜の部分を除いて、ハウジング部材等で耐圧性を有するように形成される。
更に、上記ガス溶解手段におけるガス透過性膜は、上記のごとく、その液相に接する部分の全面(上記態様例(1)及び(3))でもよく、また、一部(上記態様例(2))でもよい。
【0016】
上記ガス透過性膜の材質としては、ガスは透過するが水等の液相は透過しないものであればよく、特に制限されないが、例えば、シリコンゴム、セグメント化ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマーとポリオレフィンとのポリマーブレンド等が挙げられる。
なお、上記ガス透過性膜は、長期間の使用により徐々に親水化して水が逆透過する虞がない非多孔質膜であることが好ましい。
また、上記管状のガス透過性膜の内径、長さ等、平膜状のガス透過性膜の面積等、中空糸膜の内径、本数、長さ等は、液相量、必要溶存ガス濃度、溶存ガス消費量等を総合的に勘案する等して、適宜選択決定すればよい。
【0017】
上記加圧ガス溜空間部における別の一部への開閉弁の取り付けについては、溜まったドレインを効果的に排出できる位置である、加圧ガス供給源との連結部と反対側の部分が好適である。例えば、上記ガス溶解手段を液相に水平に配置するような場合で、上記態様例(1)や(3)のときには上記加圧ガス溜空間部の末端部に、上記態様例(2)のときには上記加圧ガス溜空間部における加圧ガス供給源との連結部と反対側の部分に、そして、上記ガス溶解手段を液相に垂直に配置するような場合では、上記態様例(1)〜(3)のいずれのときにもその下端部に取り付けるのが好ましい。
また、上記開閉弁としては、一般的には、例えば、通電開の電磁弁等が好適例として挙げられる。
【0018】
次に、本発明は、上記したごとく、上記ガス溶解手段において、加圧ガス溜空間部内に溜まったドレインによるガス透過性膜のガス透過の妨げが増すにつれ、この加圧ガス溜空間部の内圧が徐々に上昇するという本発明者の新知見に基づくものであって、その最も特徴とする点は、このドレインを、上記加圧ガス溜空間部において上昇する内圧値を指標として制御される上記開閉弁により、上記加圧ガス溜空間部外へ自動的に排出して、ドレインによるガス透過性膜のガス透過の妨げを解消するようにしたことにある。
【0019】
上記加圧ガス溜空間部の内圧の上昇は、溜まったドレインがガス透過性膜を塞いでガス透過を妨げることによるものであって、その上昇状況は、ドレインの生成(液相からガス透過性膜を介して加圧ガス溜空間部に水蒸気(ガス)が入る(透過する)と、この水蒸気は温度の低下により結露し、ドレインになる。)の状態の他、溶解手段の態様やその設置方法等によっても異なる。
すなわち、生成し、溜まったドレインが直ちにガス透過性膜を塞ぐようになる場合には、その時からこの内圧が徐々に上昇し始め、また、生成したドレインがガス透過性膜部外の空間部に先ず溜り、その後、ガス透過性膜を塞ぐようになる場合には、このガス透過性膜を塞ぐようになった時からこの内圧が徐々に上昇し始める。
前者の例としては、上記溶解手段の態様例(1)の水平配置された溶解手段(図1(a))の場合が挙げられ、また、後者の例としては、態様例(2)の水平配置された溶解手段(図1(b))や態様例(3)で垂直に配置された溶解手段(図1(c))の場合(生成したドレインは、それぞれ、加圧ガス溜空間部2b、下方の共通開口空間部2c’に先ず溜り、その後、ガス透過性膜1b、1cを塞ぐようになる)が挙げられる。
【0020】
上記ガス溶解手段における開閉弁の開閉は、上記したごとく、上記加圧ガス溜空間部の内圧を検出する圧力検出機構と、これにより検出された内圧がある設定された圧力値を超えると弁を開とする弁開閉制御機構とにより制御されていて、上記加圧ガス溜空間部内に徐々に溜まったドレインは、上記両機構により、自動的に上記加圧ガス溜空間部外に排出される。
また、このドレインの排出によって、上記加圧ガス溜空間部の内圧が設定の圧力値を下回ると、この開閉弁が閉になるように上記弁開閉制御機構によって制御されていて、再びガス透過性膜を介してのガスの溶解が継続される。
上記構成により、上記加圧ガス溜空間部内に溜まったドレインがこの加圧ガス溜空間部外に、ガスの浪費を防止しつつ、効果的に、かつ、自動的に排出してドレインによるガス透過性膜のガス透過の妨げを解消するようにしたため、長期間連続して安定的に溶存ガスを供給することができる。
【0021】
上記圧力検出機構は、上記ガス溶解手段の上流近傍のガス送給路又はこのガス溶解手段の適宜の位置に取り付けられる。
この圧力検出機構としては、特に制限なく、通常のものが有効に用いられるが、例えば、半導体式圧力センサー(圧力を電圧に変換するもの等)等を好適例として挙げることができる。
また、上記弁開閉制御機構としては、検出された上記加圧ガス溜空間部の内圧があらかじめ設定された圧力値を超えると弁を開(常時閉)とする制御がなされるものであれば、特に制限はなく、通常のものが有効に用いられる。
【0022】
なお、上記加圧ガス溜空間部内に溜まったドレインを排出する方法として、タイマーにより一定時間毎に開閉弁を開にする方法も考えられる。
しかしながら、このタイマー設定法では、ドレインの生成速度、生成量等は、ガス透過性膜のガス透過度、液相の温度、送給するガス圧力等、種々の要因により変動することから、溜まったドレインを排出するための適切なタイマー設定が困難であり、このため短目の時間設定になり易く、従って、供給ガスの浪費につながる。
【0023】
更に、本発明の溶存ガス供給装置においては、上記開閉弁として、上記圧力検出機構と弁開閉制御機構の両機能を有する安全弁を用いるのが好ましい。
上記安全弁として、各種開放圧力値が設定できるもの、一定の開放圧力値に設定されたもの等を用いることにより、上記加圧ガス溜空間部の内圧がこの設定圧力値を超えると、弁が開となってドレインが自動的に加圧ガスによって排出され、そして、この加圧ガス溜空間部の内圧が設定圧力値を下回ると弁が閉に復帰され(全てのドレインが排出されるとは限らない。)、再びガスの効率的溶解が継続される。
本発明の溶存ガス供給装置のこの形態は、上記加圧ガス溜空間部の末端部、下端部等、溜まったドレインが効果的に排出できる位置に単に安全弁を取り付けるという極めて簡単な構造で、しかも、長期間連続して安定的に溶存ガスを供給できるものであり、好適である。
【0024】
また、本発明の溶存ガス供給装置の他の好適形態は、上記加圧ガス供給源の1に対して、上記ガス溶解手段の複数をこの加圧ガス供給源に並列に連通状態で連結したものである。
この形態においては、並列に連結された複数の上記ガス溶解手段の上流に、それぞれガス流量調節弁を設けることもできる。
また、複数の上記ガス溶解手段の弁の開閉を、上記圧力検出機構と弁開閉制御機構とによって行う場合には、上記ガス溶解手段毎にこれらの圧力検出機構と弁開閉制御機構とを設ける。
上記ガス溶解手段のセット数については、液相量、必要溶存ガス濃度、溶存ガス消費量等を総合的に勘案する等して適宜選択決定される。
上記構成としたため、構造が簡単である上に、大容量の液相に効率的に長期間連続して安定的に溶存ガスを供給することができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を図面を参照しつつ若干の実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
図2は、本発明の溶存ガス供給装置の一実施例を示す概略説明図である。
同図に示した溶存ガス供給装置は、加圧ガス源であるガスボンベ11の下流に調圧弁12、圧力計13、ガス流量調節弁14及びガス流量計15が順次連通状態で連結されてなる加圧ガス供給源16と、この加圧ガス供給源16の下流にその一端(先端部)が連通状態で連結された管状のガス溶解手段4(図1(a)に示した態様例)を備えている。
このガス溶解手段4は、その外側が液相(対象液)に接する管状のガス透過性膜1a(例えば、シリコンゴム製チューブ等)と、その中空部の加圧ガス溜空間部2aと、その他端(末端部)に連通状態で連結されたドレイン排出用の開閉弁である電磁弁3とを有している。
そして、この溶存ガス供給装置は、更に、ガス溶解手段4の先端部近傍の位置に設けられた、加圧ガス溜空間部2aの内圧を検出する圧力検出機構10と、この検出された内圧があらかじめ設定された圧力値を超えると電磁弁(常時閉)3を開とする弁開閉制御機構20を備えている。
なお、加圧ガス供給源16として、ガス流量調節弁14、ガス流量計15の取り付け等を適宜省略して調圧弁12のみにより、ガスの圧力と流量を調節するようにすることもできる。
【0027】
次に、本実施例の溶存ガス供給装置の使用方法について説明する。
先ず、溶存ガス供給装置におけるガス溶解手段4(内径3mm、長さ1mのシリコン製チューブ)を液相(60Lの水槽)に水平に配置し、ガスボンベ11(炭酸ガス)の圧力及びガス流量を調圧弁12、ガス流量調節弁14等により適切に調整して(ガス圧力20kPa、ガス流量5ml/分)中空部の加圧ガス溜空間部2aに加圧ガスを送給する(加圧ガス送給開始時は、加圧ガス溜空間部2aの内圧は低いが、平衡時には5kPaに達する。)。送給された加圧ガスは、加圧ガス溜空間部2aを形成するガス透過性膜1aを透過して液相に徐々に溶解されていく。
なお、この加圧ガス送給開始時の加圧ガス溜空間部2aの内圧は、ドレインの生成がなくガス透過性膜1aよりのガス透過が良好であるため、調圧弁12により調整された圧力よりも低い。
【0028】
加圧ガスの送給時間の経過と共に、加圧ガス溜空間部2a内にドレインが徐々に溜まり、そして、ガス透過性膜1aのガス透過の妨げが増すにつれ、加圧ガス溜空間部2aの内圧が上昇してくる(加圧ガスの送給開始後24時間、内圧10kPa)。
圧力検出機構10で検出された加圧ガス溜空間部2aの内圧があらかじめ設定された圧力値(10kPa)を超えると、弁開閉制御機構20により電磁弁3が通電開になってドレインが加圧ガス溜空間部2a外に自動的に若干のガスと共に排出され、そして、加圧ガス溜空間部2aの内圧が短時間で設定の圧力値を下回ると、弁開閉制御機構20により電磁弁3が閉になり、再びガスの効率的溶解が継続される。
本実施例の溶存ガス供給装置によれば、溶存ガスを長期間連続して安定的に供給することができる。
【0029】
(実施例2)
図3は、本発明の溶存ガス供給装置の他の実施例を示す概略説明図である。
なお、以下の実施例において、上記の実施例1の場合と実質的に同一の部材・箇所については同一の符号を付し、その説明を省略する。
同図に示した溶存ガス供給装置は、電磁弁3、圧力検出機構10及び弁開閉制御機構20の代わりに単に加圧ガス溜空間部2aの末端部に開閉弁として安全弁3’が設けられている以外は、図2に示した溶存ガス供給装置と同様の構成を有する。
そして、この安全弁3’は、図2における加圧ガス溜空間部2aの内圧を検出する圧力検出機構10とこの検出された内圧があらかじめ設定された圧力値(作動圧)(10kPa)を超えると開閉弁の弁を開にする弁開閉機構20の両機能を有するものである。
なお、4’は、ガス溶解手段である。
【0030】
本実施例の溶存ガス供給装置を用いることにより、実施例1に記載したと実質的に同様にして、加圧ガス溜空間部2a内に溜まったドレインが、安全弁3’の作動(弁が開)により、加圧ガス溜空間部2a外に自動的に排出され、その後、短時間で安全弁3’が閉に復帰して、再びガスの効率的溶解が継続される。この時、ドレインのみが排出されることもあるし、ドレイン排出後、僅かな加圧ガスも排出されることもあるが、これらは安全弁3’の作動圧、ガス流速、ガス透過性膜のガス透過速度等の影響を受ける。
そして、本実施例の溶存ガス供給装置によれば、極めて簡単な構造で、しかも、実施例1に記載したと同様に溶存ガスを長期間連続して安定的に供給することができるという効果を奏する。
【0031】
(実施例3)
図4は、本発明の溶存ガス供給装置の更に他の実施例を示す概略説明図である。
同図に示した溶存ガス供給装置は、加圧ガス供給源16の1に対し、図3に示した溶存ガス供給装置における加圧ガス溜空間部2aとその末端部に連結された安全弁3’からなるガス溶解手段4’の複数を、加圧ガス供給源16の下流に並列に連通状態で連結、配置したものである。
各加圧ガス溜空間部2aに溜まったドレインは、上記実施例2に記載したと同様にして各安全弁3’より各加圧ガス溜空間部2a外に自動的にその全部又は一部が排出され、その後、それぞれ、短時間で安全弁3’が閉に復帰して、再びガスの効率的溶解が継続される。
なお、複数のガス溶解手段4’の上流にそれぞれガス流量調節弁を設けることもできる。
そして、本実施例の溶存ガス供給装置によれば、構造が簡単である上に、1の加圧ガス供給源16で大容量の液相に溶存ガスを効率的に、かつ、長期間連続して安定的に供給することができる。
【0032】
(実施例4)
図5は、本発明の溶存ガス供給装置における中空糸膜をガス透過性膜とするガス溶解手段の態様を含む立設のガス溶解モジュール(外部灌流式通液法)を示す概略断面図である。
同図に示すガス溶解モジュールには、図1(c)に示した態様例のものがガス溶解手段4”として組み込まれていて、その下方の共通開口空間部2c’の下端部に安全弁3’が取り付けられている。
そして、加圧ガスGは、上方の共通開口空間部2c’よりガス透過性膜(中空糸膜)1cの中空部である加圧ガス溜空間部2cに送給され、一方、液相(対象液)Lは、下方の入口からガス透過性膜1cの外側を通過して上方の出口より流出する。
【0033】
加圧ガス溜空間部2c及び加圧ガス溜空間部として機能する共通開口空間部の下方のそれ2c’に溜まったドレインは、上記実施例2に記載したと同様にして安全弁3’より下方の共通開口空間部2c’外に自動的に排出され、その後、短時間で安全弁3’が閉に復帰して、再びガスの効率的溶解が継続される。
本発明の溶存ガス供給装置におけるガス溶解手段4”を組み込んだガス溶解モジュールを用いれば、ガス透過性膜1cと液相Lとの接触面積が著しく増大して液相Lへのガスのより効率的な溶解が可能となり、しかも、長期間連続して安定的に溶存ガスを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】は、本発明の溶存ガス供給装置におけるガス溶解手段の態様例を示す概略説明図である。
【図2】は、本発明の溶存ガス供給装置の一実施例を示す概略説明図である。
【図3】は、本発明の溶存ガス供給装置の他の実施例を示す概略説明図である。
【図4】は、本発明の溶存ガス供給装置の更に他の実施例を示す概略説明図である。
【図5】は、本発明の溶存ガス供給装置におけるガス溶解手段を含むガス溶解モジュールを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1a、1b、1c ガス透過性膜
2a、2b、2c 加圧ガス溜空間部
2c’ 共通開口空間部
3 電磁弁
3’ 安全弁
4、4’、4” ガス溶解手段
10 圧力検出機構
11 加圧ガス源
12 調圧弁
14 ガス流量調節弁
16 加圧ガス供給源
20 弁開閉制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ガス供給源と、ガス透過性膜を介して液相に上記ガスを溶解させる手段であって、上記ガス透過性膜に接する加圧ガス側に加圧ガス溜空間部を有し、上記加圧ガス溜空間部の一部で上記加圧ガス供給源と連通し、かつ、上記加圧ガス溜空間部の別の一部には溜まったドレインを排出する開閉弁を有するガス溶解手段を備えた溶存ガス供給装置において、
上記加圧ガス溜空間部の内圧を検出する圧力検出機構及びこの圧力検出機構で検出された内圧があらかじめ設定された圧力値を超えると上記開閉弁を開にする弁開閉制御機構を設けたことを特徴とする溶存ガス供給装置。
【請求項2】
上記開閉弁が上記圧力検出機構と上記弁開閉制御機構の両機能を有する安全弁であることを特徴とする請求項1記載の溶存ガス供給装置。
【請求項3】
上記加圧ガス供給源の1に対して、上記ガス溶解手段の複数を上記加圧ガス供給源に並列に連通してなることを特徴とする請求項1又は2記載の溶存ガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−160293(P2007−160293A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380985(P2005−380985)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(591101490)エイブル株式会社 (21)
【Fターム(参考)】