説明

溶接スパッタ用耐熱シート

【課題】溶接箇所近傍の非溶接箇所へ容易に脱着することが可能であって、しかも耐久性に優れ繰り返し多数回使用することが可能な溶接スパッタ用耐熱シートを提供する。
【解決手段】被溶接物の溶接箇所近傍の磁性体からなる構造物に貼付して溶接時の溶接スパッタの前記構造物への付着を防止する溶接スパッタ用耐熱シートにおいて、前記溶接スパッタの温度への耐熱性を有する不燃性繊維層2と、該不燃性繊維層2に塗布した接着剤層4と、接着剤層4に塗布した磁石体層6とから構成され、接着剤層4は硬化後に折り曲げ可能な柔軟性を有し、磁石体層6は粒子状又は繊維状の磁石体によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被溶接物の溶接箇所近傍に貼付して溶接時の溶接スパッタの非溶接箇所への付着を防止する溶接スパッタ用耐熱シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば船体などの金属製の構造物は、金属部品同士をアーク溶接によって溶接して組立や補修を行うことがある。アーク溶接を行う際には、溶接中に粒径約数μm〜数mm程度の溶接スパッタと称される微粒子が飛散する。溶接スパッタは、被溶接物の非溶接箇所にまで飛散して付着し、前記非溶接個所での組立性の低下、腐食の発生、外観の悪化といった事態を生じさせる原因となる。
【0003】
そこで、前記非溶接箇所への溶接スパッタの付着を防止するために、従来、溶接スパッタが飛散する可能性がある非溶接個所を不燃性布によって養生した上で、溶接箇所の溶接を行うことで、非溶接個所への溶接スパッタの付着を防止し、非溶接個所の品質低下を防止していた。
【0004】
図9は従来の溶接スパッタ付着防止対策を施した溶接箇所周辺の模式図である。図9においては、例えば船室などの構造物内部の床面と壁面を溶接する場面を表している。
図9において、112は床面であり、床面には互いに垂直の関係の2枚の壁面114と116が立設されている。そして、床面112と壁面116の間の110が図9における溶接箇所である。
【0005】
図9において、溶接箇所110を溶接する場合、溶接箇所110周辺の非溶接箇所である床面112に溶接スパッタの温度への耐熱性を有する布である不燃性布101を配置する。そして、不燃性布101を複数の固定用マグネット105で床面112に固定するとともに、不燃性布101の端部をテープ103によって床面112に固定することで、床面112を不燃性布101によって養生する。同様に、溶接箇所110周辺の非溶接箇所である壁面114及び壁面116にも、固定用マグネット105及びテープ103によって不燃性布101を固定して養生する。
これにより、非溶接箇所である床面112、壁面114、壁面116は不燃性布101で養生されているため、溶接箇所110で溶接を行う際に飛散した溶接スパッタは不燃性布101に付着する。従って、非溶接箇所である床面112、壁面114、壁面116に溶接スパッタが付着することなく溶接箇所110の溶接が可能となる。なお、溶接終了後は不燃性布101は床面112、壁面114、壁面116から取り外す。
【0006】
しかしながら、図9に示したように、非溶接箇所に不燃性布をマグネットとテープで固定して養生する場合、養生範囲が広く設置に時間がかかる。しかも、広い範囲を養生するためには、固定用マグネットも磁力が高いものが必要で且つ多くの個数を必要とするため、多数の重い固定用マグネットの溶接作業場への搬入労力の負荷が高くなる。さらに、養生する必要のある床面や壁面が既に塗装がされた塗装面であるときには、テープを剥がす際に塗装が剥がれる可能性が高く、その部分を再塗装する必要が生じることとなる。
【0007】
そこで、特許文献1には、不燃性の基紙の片面に粘着材を塗布して形成したスパッタ付着防護粘着テープが開示されている。図10は特許文献1に開示された従来の溶接スパッタ付着防止対策を施した溶接箇所周辺の模式図である。特許文献1に開示された技術によれば、図10に示したように、ステンレス鋼からなる試験板121を溶接する際に、溶接箇所122と平行に溶接箇所122から離れた鋼板表面に溶接スパッタ付着防護粘着テープ123を貼り付ける。これにより、溶接箇所122で溶接を行う際に飛散した溶接スパッタは溶接スパッタ付着防護粘着テープ123に付着する。従って、試験板121の非溶接箇所に溶接スパッタが付着することなく溶接箇所122の溶接が可能となる。なお、溶接終了後は溶接スパッタ付着防護粘着テープ123は取り外す。
【0008】
また、特許文献2には、耐熱性繊維からなる絡合不織布の片面に易密着性かつ易剥離性の発泡樹脂体を有するスパッタ用耐熱シートが開示されている。これは、易密着性かつ易剥離性の発泡樹脂体を、溶接箇所近傍の非溶接箇所への耐熱性繊維の着脱の機構として使用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−237873号公報
【特許文献2】特許第3436820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、不燃性の基紙に粘着材を塗布した粘着テープを、溶接後に非溶接箇所から取り外す必要がある。そのため、テープは1度貼ると貼り直しが困難であるので、スパッタ付着防護粘着テープを貼る作業は慎重を期する必要があり作業時間がかかる。またスパッタ付着防護粘着テープは繰り返し使用することができず、使い捨てとなるため、作業箇所が多い場合には大量のスパッタ付着防護粘着テープを捨てることになりコストがかかる。また、養生する必要のある床面や壁面が既に塗装がされた塗装面であるときには、テープを剥がす際に塗装が剥がれる可能性が高く、その部分を再塗装する必要が生じることとなる。
【0011】
また、特許文献2に開示された技術では、発泡樹脂体は耐久性に劣るため、スパッタ用耐熱シートを繰り返して多数回使用することが難しい。
【0012】
従って、本発明は係る従来技術の問題に鑑み、溶接箇所近傍の非溶接箇所へ容易に脱着することが可能であって、しかも耐久性に優れ繰り返し多数回使用することが可能な溶接スパッタ用耐熱シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明においては、被溶接物の溶接箇所近傍の磁性体からなる構造物に貼付して溶接時の溶接スパッタの前記構造物への付着を防止する溶接スパッタ用耐熱シートにおいて、前記溶接スパッタの温度への耐熱性を有する不燃性繊維層と、該不燃性繊維層に塗布した接着剤層と、該接着剤層に塗布した磁石体層と、から構成され、前記接着剤層は、硬化後に折り曲げ可能な柔軟性を有し、前記磁石体層は、粒子状又は繊維状の磁石体によって形成されていることを特徴とする。
【0014】
これにより、本発明の溶接スパッタ用耐熱シートは前記磁石体層の磁力により溶接箇所近傍の磁性体からなる構造物へ容易に脱着することが可能となる。また、前記接着剤層を固化後も柔軟性を有するものとするとともに、前記磁石体層を粒子状又は繊維状の磁石体とすることで、溶接スパッタ用耐熱シート1全体が柔軟性に優れるので、折りたたむことによって持ち運び性に優れ、取付面に凸部が存在しても容易に取り付けることが可能となる。しかも、磁石体層は磁石体によって形成しているため耐久性に優れ、繰り返し脱着して使用することができる。
【0015】
前記繊維状の磁石体は、直径0.5mm以下且つ長さ2mm以下であって、前記磁石体層は、前記繊維状の磁石体が複数ランダム方向に配置されているとよい。
例えば磁気繊維、磁気を帯びた鋼線などの繊維状の磁石体は容易に安価に入手することができるので、前記磁石体として繊維状の磁石体を使用することで磁石体を容易に安価に入手することができる。さらに、繊維状の磁石体を、直径0.5mm以下且つ長さ2mm以下としてランダム方向に複数配置することで、磁気層が柔軟性に優れたものとなり、溶接スパッタ用耐熱シート全体がより柔軟性に優れたものとなる。
【0016】
また、前記磁石体層は、前記不燃性繊維層の片側表面全面に接着されているとよい。
磁石体が不燃性繊維層の全面に均一に存在することで、薄く、折り曲げ性能に優れたシートとすることができる。また、任意の形状に切断して使用することもでき、取り付け箇所の形状に応じて切断することで幅広い箇所に適用が可能となる。さらに、不燃性繊維層の全面に磁石体を接着すればよいため、製作が容易である。
【0017】
また、前記磁石体層は、前記不燃性繊維層の片側表面に、その外周部周縁に接着されているとよい。
これにより、例えば窓やマンホールのような磁力による溶接スパッタ用耐熱シートの固定に寄与しない箇所が取付面に存在する場合、該箇所に相当する位置には磁石体層を存在させる必要がなく、固定に寄与しない磁石体層の存在を少なくすることができる。
また、磁石体層を全面に形成した溶接スパッタ用耐熱シートと同じ厚さの磁石体層を形成する場合には、少ない磁石体で溶接スパッタ用耐熱シートを製作することができる。
【0018】
また、前記磁石体層は、前記不燃性繊維層の片側表面に、その外周部周縁を含んで格子状に接着されているとよい。
これにより、溶接スパッタ用耐熱シートを取り付ける面が格子状である場合、取り付け面が存在しない位置には磁石体層を存在させる必要がなく、固定に寄与しない磁石体層の存在を少なくすることができる。
また、磁石体層を全面に形成した溶接スパッタ用耐熱シートと同じ厚さの磁石体層を形成する場合には、少ない磁石体量で溶接スパッタ用耐熱シートを製作することができ、しかも磁気が存在しない部分一箇所ごとの面積が小さいので磁気が存在しない部分で溶接スパッタ用耐熱シートが浮き上がることを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
溶接箇所近傍の非溶接箇所へ容易に脱着することが可能であって、しかも耐久性に優れ繰り返し多数回使用することが可能な溶接スパッタ用耐熱シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係る溶接スパッタ用耐熱シートの一部断面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】実施形態1に係る溶接スパッタ用耐熱シートを使用した溶接箇所周辺の模式図である。
【図4】実施形態1に係る溶接スパッタ用耐熱シートを使用した溶接箇所周辺の別の例の模式図である。
【図5】実施形態2に係る溶接スパッタ用耐熱シートの磁気層の断面図である。
【図6】実施形態2に係る溶接スパッタ用耐熱シートを使用した溶接箇所周辺の模式図である。
【図7】実施形態3に係る溶接スパッタ用耐熱シートの磁気層の断面図である。
【図8】実施形態3に係る溶接スパッタ用耐熱シートを使用した溶接箇所周辺の模式図である。
【図9】従来の溶接スパッタ付着防止対策を施した溶接箇所周辺の模式図である。
【図10】従来の別の例の溶接スパッタ付着防止対策を施した溶接箇所周辺の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例】
【0022】
(実施形態1)
まず、実施形態1に係る溶接スパッタ用耐熱シートの構成について説明する。
図1は、実施形態1に係る溶接スパッタ用耐熱シートの一部断面図である。また、図2は図1におけるA−A断面図であって、溶接スパッタ用耐熱シートの磁気層の断面図である。
【0023】
図1に示すように、実施形態1に係る溶接スパッタ用耐熱シート1は、不燃性繊維層2と、接着剤層4と、磁石体層6とから構成される。つまり、不燃性繊維層2の片面に接着剤層4によって磁石体層6が接着されている。
【0024】
不燃性繊維層2は、溶接スパッタの温度への耐熱性を有する必要があり、不燃性繊維層2として例えばアラミド系繊維、カーボン系繊維、フッ素系繊維製の布を使用することができる。溶接スパッタに対する耐熱性を損なわず、持ち運びのために重くなりすぎず、しかも折りたたみ可能な程度の柔軟性を損なわないためには、不燃性繊維層2は1m×1m以内の大きさで、0.5mm〜2mmの厚みとすることが好ましい。
【0025】
接着剤層4は、硬化後も柔軟性を有するものを使用する。ここで前記柔軟性とは、溶接スパッタ用耐熱シート1全体を折り曲げる際に接着剤層4がその障害とならない程度の柔軟性であればよい。接着剤層4を構成する接着剤として例えば耐熱エポキシ系接着剤を使用することができる。接着剤層4の柔軟性を確保するために、接着剤層4の厚みは0.5mm以下とすることが好ましい。
【0026】
磁石体層6は、磁石体層6が溶接スパッタ用耐熱シート1全体を折り曲げる際の障害とならないように、磁性体粒子を使用する。また磁気層6として磁気繊維又は磁気を帯びた鋼線などの繊維状の磁石体を使用することもできる。磁石体層6として磁気繊維又は磁気を帯びた鋼線などの繊維状の磁石体を使用する場合には、繊維状の磁石体の直径と長さを制限し、直径0.5mm以下の繊維状の磁石体を2mm以下に切断し、ランダムな方向に分布させることで、溶接スパッタ用耐熱シート1全体を折り曲げる際の障害となることを防止できる。磁石体層6の柔軟性を確保するために、磁石体層6の厚みは0.5mm以下とすることが好ましい。
また、図2に示すように、磁石体層6は溶接スパッタ用耐熱シート1の全面に形成されている。
【0027】
次に、実施形態1に係る溶接スパッタ用耐熱シートの製作方法について説明する。
まず、不燃性繊維層2を用意し、その片面全面に接着剤を塗布して接着剤層4を形成する。そして、接着剤層4上に磁性体粒子、前記繊維状の磁石体を配して接着することにより溶接スパッタ用耐熱シート1が製作される。不燃性繊維層2に接着剤で磁石体を接着するだけで、簡単に発明の溶接スパッタ用耐熱シートを製作することができる。
【0028】
次に、実施形態1に係る溶接スパッタ用耐熱シートの使用形態について説明する。
図3は実施形態1に係る溶接スパッタ用耐熱シートを使用した溶接箇所周辺の模式図である。図3においては、例えば船室などの構造物内部の床面と壁面を溶接する場合を表している。
図3において、12は床面であり、床面には互いに垂直の関係の2枚の壁面14と16が立設されている。床面12及び壁面14、16は例えば鉄などの磁性体によって形成されている。壁面14には凸部であるリブ18が設けられている。そして、床面12と壁面16の間の10が図3における溶接箇所である。
【0029】
図3において、溶接箇所10を溶接する場合、溶接箇所10周辺の非溶接箇所である床面12に図1〜図2に示した溶接スパッタ用耐熱シート1を取り付ける。溶接スパッタ用耐熱シート1は、磁石体層6を床面12側にして、磁石体層6の有する磁力によって床面12に固定する。同様に、溶接箇所10周辺の非溶接箇所である壁面14及び壁面16にも、溶接スパッタ用耐熱シート1を取り付ける。
上記のように溶接スパッタ用耐熱シートを取り付けることで、非溶接箇所である床面12、壁面14、壁面16が溶接スパッタ用耐熱シート1によって不燃性繊維層2が表面となって養生される。従って、溶接箇所10で溶接を行う際に飛散した溶接スパッタは溶接スパッタ用耐熱シート1の不燃性繊維層2に付着する。よって、非溶接箇所である床面12、壁面14、壁面16に溶接スパッタが付着することなく溶接箇所10の溶接が可能となる。なお、溶接終了後は溶接スパッタ用耐熱シート1は床面12、壁面14、壁面16から取り外す。
【0030】
実施形態1によれば、溶接スパッタ用耐熱シート1は磁石体層6の磁力により床面12、壁面14、壁面16に固定されるため、溶接スパッタ用耐熱シート1の脱着が容易になる。しかも、磁石体層6は磁性体粒子、又は繊維状の磁石体によって形成しているため耐久性に優れ、繰り返し脱着して使用することができる。
【0031】
また、溶接スパッタ用耐熱シート1は、磁石体が全面に均一に存在するため、薄く、折り曲げ性能に優れたシートとすることができる。また、任意の形状に切断して使用することもでき、取り付け箇所の形状に応じて切断することで幅広い箇所に適用が可能となる。また、不燃性繊維層2の全面に磁性体粒子、前記磁気繊維又は前記鋼線などの磁石体を接着すればよいため、製作が容易である。
【0032】
さらに、図3に示したように、壁面14にリブ18のような凸部が形成されている場合であっても、溶接スパッタ用耐熱シート1の脱着は以下で説明するように容易である。前述のように、接着剤層4は硬化後も柔軟性を有する接着剤を使用し、磁石体層6も溶接スパッタ用耐熱シート1全体を折り曲げる際の障害とならないように形成しているので、溶接スパッタ用耐熱シート1全体を折り曲げ可能である。そのため、図3に示すようにリブ18のような凸部を覆うように溶接スパッタ用耐熱シート1を折り曲げて、溶接スパッタ用耐熱シート1を壁面14に取り付けることができる。
【0033】
図4は、実施形態1に係る溶接スパッタ用耐熱シートを使用した溶接箇所周辺の別の例の模式図である。
図4においては、壁面14にリブ18が設けられておらず、多数のボルト20が設けられていること以外は図3と同じである。このように、複数の凸部(ボルト20)が壁面に設けられている場合でも、溶接スパッタ用耐熱シート1の壁面14への脱着が容易である。
【0034】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る溶接スパッタ用耐熱シートの磁気層の断面図である。
また、図1のように図示はしないが、実施形態2における溶接スパッタ用耐熱シート1’は、実施形態1で図1を用いて示した溶接スパッタ用耐熱シート1と同様に不燃性繊維層2の片面に接着剤層4によって磁石体層6’が接着されているものであり、製作手順は実施形態1と同様である。
【0035】
図5に示すように、磁石体層6’は、溶接スパッタ用耐熱シート1の外縁部に接着されている。従って、溶接スパッタ用耐熱シート1には外周側に磁石体層6’が存在する磁気存在部1aと、その内側に磁石体層6’が存在しない磁気不存在部1bが形成される。
【0036】
次に、実施形態2に係る溶接スパッタ用耐熱シートの使用形態について説明する。
図6は実施形態2に係る溶接スパッタ用耐熱シートを使用した溶接箇所周辺の模式図である。図6においては、壁面14にリブ18が設けられておらず、窓22が設けられていることと、壁面14に図2に示した溶接スパッタ用耐熱シート1でなく図5に示した溶接スパッタ用耐熱シート1’を取り付けていること以外は図3と同じである。
【0037】
図5において、溶接箇所10を溶接する場合、溶接箇所10周辺の非溶接箇所である床面12に図2に示した溶接スパッタ用耐熱シート1を取り付ける。溶接スパッタ用耐熱シート1は、磁石体層6を床面12側にして、磁石体層6の有する磁力によって床面12に固定する。同様に、壁面16にも、溶接スパッタ用耐熱シート1を取り付ける。そして、壁面14には、窓22を磁気存在部1aが取り囲み磁気不存在部1bで覆うようにして溶接スパッタ用耐熱シート1’を磁石体層6’を壁面14側にして取り付ける。なお、図6において溶接スパッタ用耐熱シート1の磁気存在部1aと磁気不存在部1bは便宜上色の濃さを変えて表示している。
【0038】
図6に示したように溶接スパッタ用耐熱シート1、1’を取り付けることで、非溶接箇所である床面12、壁面14、壁面16は溶接スパッタ用耐熱シート1、1’によって不燃性繊維層2が表面となって養生される。従って、溶接箇所10で溶接を行う際に飛散した溶接スパッタは溶接スパッタ用耐熱シート1、1’の不燃性繊維層2に付着する。よって、非溶接箇所である床面12、壁面14、壁面16に溶接スパッタが付着することなく溶接箇所10の溶接が可能となる。なお、溶接終了後は溶接スパッタ用耐熱シート1、1’は床面12、壁面14、壁面16から取り外す。
【0039】
実施形態2によれば、実施形態1と同様に溶接スパッタ用耐熱シート1’は、脱着が容易であり、しかも、耐久性に優れ繰り返し脱着して使用することができる。
さらに、窓22のような磁力による溶接スパッタ用耐熱シートの固定に寄与しない箇所がある場合、該箇所に相当する位置には磁石体層を存在させる必要がなく、固定に寄与しない磁気層の存在を少なくすることができる。
【0040】
さらに、磁石体層を全面に形成した溶接スパッタ用耐熱シート1と同じ厚さの磁石体層を形成する場合には、少ない磁石体で溶接スパッタ用耐熱シート1’を製作することができる。
【0041】
(実施形態3)
図7は、実施形態3に係る溶接スパッタ用耐熱シートの磁気層の断面図である。
また、図1のように図示はしないが、実施形態3における溶接スパッタ用耐熱シート1’’は、実施形態1で図1を用いて示した溶接スパッタ用耐熱シート1と同様に不燃性繊維層2の片面に接着剤層4によって磁石体層6’’が接着されているものであり、製作手順は実施形態1と同様である。
【0042】
図7に示すように、磁石体層6’’は、溶接スパッタ用耐熱シート1の外縁に接着されるとともにその内部に格子状に接着されている。従って、溶接スパッタ用耐熱シート1には磁石体層6’’が存在する磁気存在部1cと、磁石体層6’’が存在しない磁気不存在部1dが形成される。
【0043】
次に、実施形態3に係る溶接スパッタ用耐熱シートの使用形態について説明する。
図8は実施形態3に係る溶接スパッタ用耐熱シートを使用した溶接箇所周辺の模式図である。図8においては、壁面14が格子状に形成された手摺り24であることと、壁面14に図2に示した溶接スパッタ用耐熱シート1でなく図7に示した溶接スパッタ用耐熱シート1’’を取り付けていること以外は図3と同じである。
【0044】
図7において、溶接箇所10を溶接する場合、溶接箇所10周辺の非溶接箇所である床面12に図2に示した溶接スパッタ用耐熱シート1を取り付ける。溶接スパッタ用耐熱シート1は、磁石体層6を床面12側にして、磁石体層6の有する磁力によって床面12に固定する。同様に、壁面16にも、溶接スパッタ用耐熱シート1を取り付ける。そして、壁面14には、壁面14を構成する格子部分と溶接スパッタ用耐熱シート1’’の磁気存在部1cを合わせて溶接スパッタ用耐熱シート1’’を磁石体層6’’を壁面14側にして取り付ける。なお、図6において溶接スパッタ用耐熱シート1’’の磁気存在部1cと磁気不存在部1dは便宜上色の濃さを変えて表示している。
【0045】
図8に示したように溶接スパッタ用耐熱シート1、1’’を取り付けることで、非溶接箇所である床面12、壁面14、壁面16は溶接スパッタ用耐熱シート1、1’’によって不燃性繊維層2が表面となって養生される。従って、溶接箇所10で溶接を行う際に飛散した溶接スパッタは溶接スパッタ用耐熱シート1、1’’の不燃性繊維層2に付着する。よって、非溶接箇所である床面12、壁面14、壁面16に溶接スパッタが付着することなく溶接箇所10の溶接が可能となる。なお、溶接終了後は溶接スパッタ用耐熱シート1、1’’は床面12、壁面14、壁面16から取り外す。
【0046】
実施形態3によれば、実施形態1と同様に溶接スパッタ用耐熱シート1’’は、脱着が容易であり、しかも、耐久性に優れ繰り返し脱着して使用することができる。
さらに、溶接スパッタ用耐熱シートを取り付ける面が格子状である場合、取り付け面が存在しない位置には磁石体層を存在させる必要がなく、固定に寄与しない磁石体層の存在を少なくすることができる。
【0047】
さらに、磁石体層を全面に形成した溶接スパッタ用耐熱シート1と同じ厚さの磁石体層を形成する場合には、少ない磁石体量で溶接スパッタ用耐熱シート1’を製作することができ、しかも磁気不存在部1dの一箇所ごとの面積が小さいので磁気不存在部1dで溶接スパッタ用耐熱シート1’’が浮き上がることを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
溶接箇所近傍の非溶接箇所へ容易に脱着することが可能であって、しかも耐久性に優れ繰り返し多数回使用することが可能な溶接スパッタ用耐熱シートとして利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 溶接スパッタ用耐熱シート
2 不燃性繊維層
4 接着剤層
6 磁石体層
10 溶接箇所
12 床面
14、16 壁面
18 リブ
20 ボルト
22 窓
24 手摺り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶接物の溶接箇所近傍の磁性体からなる構造物に貼付して溶接時の溶接スパッタの前記構造物への付着を防止する溶接スパッタ用耐熱シートにおいて、
前記溶接スパッタの温度への耐熱性を有する不燃性繊維層と、
該不燃性繊維層に塗布した接着剤層と、
該接着剤層に塗布した磁石体層と、から構成され、
前記接着剤層は、硬化後に折り曲げ可能な柔軟性を有し、
前記磁石体層は、粒子状又は繊維状の磁石体によって形成されていることを特徴とする溶接スパッタ用耐熱シート。
【請求項2】
前記繊維状の磁石体は、直径0.5mm以下且つ長さ2mm以下であって、
前記磁石体層は、前記繊維状の磁石体が複数ランダム方向に配置されていることを特徴とする請求項1記載の溶接スパッタ用耐熱シート。
【請求項3】
前記磁石体層は、
前記不燃性繊維層の片側表面全面に接着されていることを特徴とする請求項1又は2記載の溶接スパッタ用耐熱シート。
【請求項4】
前記磁石体層は、
前記不燃性繊維層の片側表面に、その外周部周縁に接着されていることを特徴とする請求項1又は2記載の溶接スパッタ用耐熱シート。
【請求項5】
前記磁石体層は、
前記不燃性繊維層の片側表面に、その外周部周縁を含んで格子状に接着されていることを特徴とする請求項1又は2記載の溶接スパッタ用耐熱シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−170971(P2012−170971A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34075(P2011−34075)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】