説明

溶接制御装置、溶接制御方法およびそのプログラム

【課題】炭酸ガス主体のシールドガスを用いても1周期あたり1溶滴移行が可能であり、何らかの外乱で溶滴移行の規則性がくずれても即座に正常状態に復帰させることができる技術を提供する。
【解決手段】ワイヤ先端205からの溶滴の離脱を検出する溶滴離脱検出部と、溶滴を離脱させる第1パルス201と、溶滴を整形する第2パルス202とを交互に生成して溶接電源に出力する波形生成器とを備える溶接制御装置において、波形生成器は、第1パルス201のピーク期間、立下りスロープ期間またはベース期間において溶滴の離脱が検出されなかった場合213に、第1パルス201のベース期間終了後に、第2パルス202とはパルスピーク電流および/またはパルス幅の異なるパルス形状を有する第3パルスを生成して溶接電源に出力することにより溶滴移行規則性のずれを修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接制御装置に係り、特に、炭酸ガス単体または炭酸ガスを主成分として含む混合ガスを、シールドガスとして用いるパルスアーク溶接を行う溶接制御装置、溶接制御方法およびそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
Ar−5〜30%CO2混合ガスをシールドガスとして用いるMAG溶接方法は、溶滴が細粒化することに起因して、スパッタ発生量を低減できることから、従来から広い分野で適用されている。特に、高品質な溶接を必要とする分野では、溶接電流を100〜350Hz程度のパルス電流として出力することにより、1パルス1溶滴移行としたパルスMAG溶接方法の適用が広がってきている。
【0003】
しかしながら、Arガスは、炭酸ガスと比較すると価格が高価であることから、通常の溶接施工に際しては、炭酸ガス単体または炭酸ガスを主成分とした混合ガスをシールドガスとして用いることが多い。
【0004】
一方、炭酸ガス単体または炭酸ガスを主成分とした混合ガスを、シールドガスとして用いた場合、MAG溶接方法と比較して溶滴が粗大化し、アーク力によって不規則に振動したり変形したりするため、母材との短絡やアーク切れを発生させ易く、溶滴移行も不規則となり、スパッタおよびヒュームが多量発生するという問題がある。
【0005】
このような問題に対し、特許文献1および特許文献2では、炭酸ガスシールドアーク溶接においてパルス溶接を適用し、特許文献1では、パルスパラメータを規定することにより、また、特許文献2では、パルスパラメータおよびワイヤ成分を規定することにより、それぞれ炭酸ガスアーク溶接でも1パルス1溶滴移行を実現する方法が提案されている。この従来の方法は、ピーク電流印加前にワイヤ先端に充分な大きさの溶滴を形成させておくことにより、ピーク電流の電磁ピンチ力が溶滴のくびれを早く生じさせ、アーク力によって溶滴がワイヤ方向に押し戻される前に溶滴をワイヤから離脱させることができるとするものである。
【0006】
また、炭酸ガスシールドアーク溶接方法に関し、特許文献3では、溶接電源の出力制御方法として外部特性切り替え制御を行うことにより、スパッタのさらなる低減を達成する溶接方法が提案されている。
【0007】
特許文献4では、炭酸ガスを主成分とするシールドガスを用いたパルスアーク溶接機の出力制御装置に関し、電圧または抵抗の増加により溶滴離脱を検出し、検出した時点から一定期間、電流を低下させることにより、スパッタを抑制するとしている。
【0008】
さらに、特許文献5では、炭酸ガスを主成分とするシールドガスを用い、ワイヤ送給量が増加するに伴い、パルス期間、ベース期間を短く設定する第1パルスと、第1パルスよりもパルス期間を短く設定した第2パルスとからなる異なる2種類のパルス波形を出力するパルスアーク溶接機を用いて、スパッタを抑制するとしている。
【0009】
また、これまでに、本願発明者らは、炭酸ガス単体または炭酸ガスを主成分とする混合ガスを、シールドガスとして用いた1周期あたりパルスピーク電流レベルが異なる2種類のパルス波形を交互に出力させるパルスアーク溶接方法において、1周期あたり1溶滴を移行させると同時に、コンタクトチップと母材間の距離が変化した場合でも1周期あたり1溶滴移行を乱さない範囲で、溶滴を整形する役割を担った第2パルスについてのピーク電流(Ip2)、ベース電流(Ib2)、ピーク期間(Tp2)、ベース期間(Tb2)の1種以上を調整することにより、アーク長を一定に制御するパルスアーク溶接方法を提案している(特許文献6参照)。
【0010】
特許文献6に記載のパルスアーク溶接方法について図14を参照して説明する。図14は、従来のパルスアーク溶接方法で生成されるパルス波形による溶接ワイヤ先端部の時系列変化を模式的に示す説明図である。この従来のパルスアーク溶接方法を実行する従来の溶接制御装置は、図14において下側に示すように、パルス波形が異なる2種類のパルス電流(パルス信号)として、第1パルス901と第2パルス902とを交互に生成して溶接電源に出力する。ここで、第1パルス901および第2パルス902のパルスパラメータは以下の条件を満たすように設定される。すなわち、第1パルス901のピーク電流(第1パルスピーク電流)Ip1を300〜700A、その期間(第1パルスピーク期間)Tp1を0.3〜5.0ms、ベース電流(第1パルスベース期間)Ib1を30〜200A、その期間(第1パルスベース期間)Tb1を0.3〜10msとする。また、第2パルス902のピーク電流(第2パルスピーク電流)Ip2を、Ip2<Ip1、かつ、200〜600A、その期間(第2パルスピーク期間)Tp2を1.0〜15ms、ベース電流(第2パルスベース電流)Ib2を30〜200A、その期間(第2パルスベース期間)Tb2を3.0〜20msとする。なお、第1パルス901および第2パルス902の波形形状には、詳細には、図15に示すようにベース電流からピーク電流へ至る立上りスロープ期間(第1パルス立上りスロープ期間Tup1、第2パルス立上りスロープ期間Tup2)やピーク電流からベース電流へ至る立下りスロープ期間(Tdown)が含まれる。
【0011】
このような条件によりパルスアーク溶接を実施すると、図14において上側に時系列に示すように、図示しない被溶接材との間にアーク904が生起される溶接ワイヤ(以下、単にワイヤという)のワイヤ先端905の溶滴形成および溶滴移行が行われる。まず、911の状態は、それ以前のパルス周期にて溶滴が離脱した後の第2パルスピーク期間中にワイヤ先端905に溶滴が成長し、さらに第2パルスベース期間の後期に至ったときの溶滴の様子を示している。このとき、第2パルスピーク電流から第2パルスベース電流へと電流値が急激に減少するため、ワイヤ先端905において押上げ力が弱まり、溶滴は、911に示すようにワイヤ先端905において垂下がるように整形される。
【0012】
続いて、第1パルスピーク期間に入ると、ワイヤ中のピーク電流による電磁ピンチ力により、溶滴は、912に示すように、くびれ906を形成する変化をしながら急速に離脱を行う。溶接制御装置は、溶滴907のワイヤ先端905からの離脱を検知すると、検出時の電流から第1パルスベース電流へと電流値を急激に減少させて、溶滴離脱後のワイヤ側にアークが移動する瞬間においては、913に示すように、第1パルスベース期間に移行させて、電流が充分に下がっている状態にする。このことにより、ワイヤのくびれ906部分の飛散や離脱後の残留融液の飛散による小粒スパッタを大幅に低減できる。
【0013】
続いて、第2パルスピーク期間では、溶接制御装置は、溶滴離脱後のワイヤに残留した残留融液が離脱や飛散をしないレベルに第2パルスピーク電流を設定し、この第2パルスで溶滴を914に示すように成長させる。そして、溶接制御装置は、第2パルスベース期間では、915に示すように溶滴の整形を行う。そして、溶滴は、再び911の状態に戻って整形される。このため、溶接制御装置は、通常は、1周期あたり1溶滴の移行を極めて規則正しく実現できる。
【特許文献1】特開平7−290241号公報(段落0011、図1)
【特許文献2】特開平7−47473号公報(段落0007−0008、図1)
【特許文献3】特開平8−267238号公報(段落0017−0018、図8)
【特許文献4】特開平8−229680号公報(段落0036、図10)
【特許文献5】特開平10−263815号公報(段落0026、図2)
【特許文献6】特開2007−237270号公報(段落0026−0028、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1ないし特許文献3による方法は、いずれもシールドガスとして安価な炭酸ガスを用いながらも、1パルス1溶滴移行を可能とし、溶滴移行の規則性を向上させると共に、パルスなし溶接と比較すると大粒のスパッタ発生量を低減できるものである。しかしながら、特許文献1ないし特許文献3の方法は、パルスピーク期間途中に溶滴を離脱させることから、溶滴離脱時のワイヤ先端のくびれ部分が飛散することによる小粒スパッタや溶滴離脱後のワイヤに残留した融液の飛散による小粒スパッタが多発する問題点がある。
【0015】
特許文献4による出力制御装置では、溶滴離脱を検知後、所定期間、電流を低下させることにより、スパッタを抑制することを可能としているが、この方法では、溶適離脱の有無に関わらず、すべてのパルスにおいて、パルスピーク電流が同一であるため、パルスピーク電流を、溶滴離脱が可能となるパルスピーク電流となるように比較的高く設定すると、溶滴離脱後のワイヤに残留した溶融金属が、強力なアーク力によって、離脱後の次のパルスピーク印加時に飛散し、大粒スパッタを発生させることがある。また、溶滴形成時の過熱が大きいため、ヒューム発生量も多い。これを抑制するためにパルスピーク電流を比較的低く設定すると、パルスピーク期間にて溶滴が離脱できなくなるという問題点があった。
【0016】
さらに、特許文献5では、ワイヤ送給量が増加するに伴い、パルス期間、ベース期間を短く設定する第1パルスと、第1パルスよりもパルス期間を短く設定した第2パルスとからなる異なる2種類のパルス波形を出力するパルスアーク溶接方法により、スパッタを低減できるとしているが、ワイヤ送給量の増大に伴い、第1パルス期間、第1ベース期間を短く設定すると、第2パルスによる電磁ピンチ力を受ける前段階において、ワイヤ先端の溶滴形状が整えられず、電磁ピンチ力が有効に作用しなくなる。そのため、1周期あたり1溶滴の規則的な移行が困難となり、大粒スパッタを発生させるという問題点があった。
【0017】
また、特許文献6では、1周期あたりパルスピーク電流レベルの異なる2種類のパルス波形を交互に出力させることにより、小粒スパッタや溶滴離脱後の次のパルスピーク印加時に飛散する大粒スパッタを大幅に低減できると共に、広いワイヤ送給速度範囲で1周期あたり1溶滴移行を可能とすることができる。しかしながら、溶滴を離脱させるべき第1パルスにおいて、何らかの外乱により溶滴の離脱に失敗した場合、それ以降の溶滴移行の規則性がくずれ、正常状態に復活するまでに数周期かかるため、その期間、スパッタおよびヒュームを増大させてしまうという問題点があった。
【0018】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、炭酸ガス主体のシールドガスを用いても1周期あたり1溶滴移行が可能であり、何らかの外乱で溶滴移行の規則性がくずれても即座に正常状態に復帰させることができる溶接制御装置、溶接制御方法およびそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、本発明のうち請求項1に記載の溶接制御装置は、炭酸ガス単体または炭酸ガスが主成分である混合ガスをシールドガスとするアーク溶接において溶接ワイヤ先端からの溶滴の離脱を検出する溶滴離脱検出部と、前記溶滴を離脱させる第1パルスと、前記溶滴を整形する第2パルスとを交互に生成して溶接電源に出力すると共に前記溶滴の離脱が検出された場合に直ちに前記第1パルスの電流値を検出時の電流値よりも低い所定値に切り替える波形生成器とを備える溶接制御装置において、前記波形生成器が、前記第1パルスのピーク期間、立下りスロープ期間またはベース期間において前記溶滴の離脱が検出されなかった場合に、前記第1パルスのベース期間終了後に、前記第2パルスとはパルスピーク電流および/またはパルス幅の異なるパルス形状を有する第3パルスを生成して前記溶接電源に出力することにより溶滴移行規則性のずれを修正することを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、溶接制御装置は、通常は第1パルスと第2パルスとを交互に生成して溶接電源に出力し、何らかの外乱で溶滴移行の規則性がくずれたときに、波形生成器によって、第1パルスに続いて第2パルスとは異なる第3パルスを出力する。ここで、第3パルスを、溶滴を強制的に離脱させるためのパルスとすることもできるし、溶滴をスムーズに離脱できるように改めて整形し直すためのパルスとすることもできる。これにより、本発明の溶接制御装置では、溶滴移行の規則性がくずれたときに正常状態に復帰させるまでに要する期間を、従来の装置よりも短くさせることができる。したがって、正常状態に復帰させるまでに要する期間に発生するスパッタおよびヒュームを低減できる。
【0021】
また、請求項2に記載の溶接制御装置は、請求項1に記載の溶接制御装置であって、前記波形生成器が、前記第3パルスのピーク期間または立下りスロープ期間において前記溶滴の離脱が検出された場合に直ちに当該第3パルスの電流値を検出時の電流値よりも低い所定値に切り替え、前記所定値の電流について予め定められた期間の終了後に、前記第2パルスを生成して前記溶接電源に出力することを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、溶接制御装置は、何らかの外乱で溶滴移行の規則性がくずれたときに、波形生成器によって、第1パルスに続いて、溶滴を強制的に離脱させるためのパルスとしての第3パルスを出力する。そして、溶接制御装置は、第3パルスを出力し溶滴の離脱を確認した後に第2パルスを出力するので、その第2パルスに続いて、再び第1パルスと第2パルスとを交互に出力することができる。したがって、本発明の溶接制御装置は、溶滴移行の規則性がくずれたときに正常状態に復帰させるまでに要する期間を、従来の装置よりも短くさせることができる。
【0023】
また、請求項3に記載の溶接制御装置は、請求項2に記載の溶接制御装置であって、前記波形生成器が、前記第3パルスのピーク期間または立下りスロープ期間において前記溶滴の離脱が検出されなかった場合に、前記溶滴の離脱が検出されるまで予め設定された回数を最大として連続して前記第3パルスを繰り返し生成して前記溶接電源に出力することを特徴とする。
【0024】
かかる構成によれば、溶接制御装置は、溶滴を強制的に離脱させるためのパルスとしての第3パルスを1度出力した後に溶滴の離脱を確認できなかったとしても、第3パルスを連続して出力することができるので、溶滴を強制的に離脱させることによって、正常状態に復帰させるまでに要する期間を、従来の装置よりも短くすることができる。
【0025】
また、請求項4に記載の溶接制御装置は、請求項2または請求項3に記載の溶接制御装置であって、前記第3パルスについての前記所定値が、前記第3パルスのベース期間の電流値を示すベース電流であり、前記予め定められた期間が、前記第3パルスのベース期間であり、前記第3パルスのピーク電流Ip3が300〜700A、前記第3パルスの立上りスロープ期間Tu3が5.0ms以下、前記第3パルスのピーク期間Tp3が0.3〜5.0ms、前記第3パルスの立下りスロープ期間Td3が10.0ms以下、前記第3パルスのベース電流Ib3が30〜200A、前記第3パルスのベース期間Tb3が0.3〜10msの各条件を満たすことを特徴とする。
【0026】
かかる構成によれば、溶接制御装置は、ピーク電流Ip3やピーク期間Tp3が条件を満たす第3パルスを生成することで、この第3パルスが、溶滴を離脱させる過程において充分な電磁ピンチ力を確保させることに寄与できる。また、溶接制御装置は、立上りスロープ期間Tu3や立下りスロープ期間Td3が条件を満たす第3パルスを生成することで、この第3パルスが、アーク力や電磁ピンチ力の急激な変化を防止し、溶滴においてアークの発生点を徐々に移動させることに寄与できる。また、溶接制御装置は、ベース電流Ib3やベース期間Tb3が条件を満たす第3パルスを生成することで、この第3パルスが、溶滴離脱後にワイヤ側にアークが移動する過程において、アーク切れを起こさず、かつ、小粒スパッタ発生を抑制することに寄与できる。
【0027】
また、請求項5に記載の溶接制御装置は、請求項1に記載の溶接制御装置であって、前記波形生成器が、前記第3パルスのピーク期間、立下りスロープ期間またはベース期間において前記溶滴の離脱が検出されなかった場合に、当該第3パルスのベース期間の終了後に、前記第1パルスを生成して前記溶接電源に出力することを特徴とする。
【0028】
かかる構成によれば、溶接制御装置は、何らかの外乱で溶滴移行の規則性がくずれたときに、波形生成器によって、第1パルスに続いて、溶滴をスムーズに離脱できるように改めて整形し直すためのパルスとしての第3パルスを出力する。そして、溶接制御装置は、第3パルスを出力し第3パルスのベース期間の終了まで溶滴の離脱が検出されない場合に、その第3パルスに続いて、溶滴を離脱させるために通常用いている第1パルスを出力する。そのため、第3パルスにより整形し直した溶滴を、第1パルスによって離脱させれば、再び第1パルスと第2パルスとを交互に出力することができる。したがって、本発明の溶接制御装置は、溶滴移行の規則性がくずれたときに正常状態に復帰させるまでに要する期間を、従来の装置よりも短くさせることができる。
【0029】
また、請求項6に記載の溶接制御装置は、請求項5に記載の溶接制御装置であって、前記第3パルスのピーク電流Ip3が100〜400A、前記第3パルスのピーク期間Tp3が0.3〜10.0ms、前記第3パルスのベース電流Ib3が30〜200A、前記第3パルスのベース期間Tb3が0.3〜15msの各条件を満たすことを特徴とする。
【0030】
かかる構成によれば、溶接制御装置は、ピーク電流Ip3やピーク期間Tp3が条件を満たす第3パルスを生成することで、この第3パルスが、溶滴を整形する過程において溶滴を安定に形成することに寄与できる。また、溶接制御装置は、第3パルスのベース電流Ib3やベース期間Tb3が条件を満たす第3パルスすることで、この第3パルスが、溶滴を整形する過程において、アーク切れを起こさず、安定に溶滴を整形することに寄与できる。
【0031】
また、請求項7に記載の溶接制御方法は、炭酸ガス単体または炭酸ガスが主成分である混合ガスをシールドガスとするアーク溶接において溶接ワイヤ先端からの溶滴の離脱を検出する溶滴離脱検出部と、前記溶滴を離脱させる第1パルスと、前記溶滴を整形する第2パルスとを交互に生成して溶接電源に出力すると共に前記溶滴の離脱が検出された場合に直ちに前記第1パルスの電流値を検出時の電流値よりも低い所定値に切り替える波形生成器とを備える溶接制御装置の溶接制御方法において、前記溶接制御装置が、前記溶滴離脱検出部によって、前記第1パルスのピーク期間、立下りスロープ期間またはベース期間において前記溶滴の離脱が検出されなかった場合に、前記波形生成器によって、前記第1パルスのベース期間終了後に、前記第2パルスとはパルスピーク電流および/またはパルス幅の異なるパルス形状を有する第3パルスを生成して前記溶接電源に出力することにより溶滴移行規則性のずれを修正する前記第2パルスとはパルスピーク電流および/またはパルス幅の異なるパルス形状を有する第3パルスを生成して前記溶接電源に出力することにより溶滴移行規則性のずれを修正することを特徴とする。
【0032】
かかる手順によれば、溶接制御装置は、通常は第1パルスと第2パルスとを交互に生成して溶接電源に出力し、何らかの外乱で溶滴移行の規則性がくずれたときに、波形生成器によって、第1パルスに続いて第2パルスとは異なる第3パルスを出力する。これにより、本発明の溶接制御方法では、溶滴移行の規則性がくずれたときに正常状態に復帰させるまでに要する期間を、従来の方法よりも短くさせることができる。したがって、正常状態に復帰させるまでに要する期間に発生するスパッタおよびヒュームを低減できる。
【0033】
また、請求項8に記載の溶接制御プログラムは、炭酸ガス単体または炭酸ガスが主成分である混合ガスをシールドガスとするアーク溶接において溶接電源に出力するパルス波形の信号を生成するために、コンピュータを、溶接ワイヤ先端から溶滴を離脱させる第1パルスと、前記溶滴を整形する第2パルスとを交互に生成して前記溶接電源に出力する手段、前記溶滴の離脱が検出された場合に直ちに前記第1パルスの電流値を検出時の電流値よりも低い所定値に切り替える手段、前記第1パルスのピーク期間、立下りスロープ期間またはベース期間において前記溶滴の離脱が検出されなかった場合に、前記第1パルスのベース期間終了後に、前記第2パルスとはパルスピーク電流および/またはパルス幅の異なるパルス形状を有する第3パルスを生成して前記溶接電源に出力することにより溶滴移行規則性のずれを修正する手段として機能させることを特徴とする。このように構成されることにより、このプログラムをインストールされたコンピュータは、このプログラムに基づいた各機能を実現することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、溶接制御装置は、何らかの外乱で溶滴移行の規則性がくずれたときに、溶滴を離脱させる第1パルスに続いて、溶滴を整形する第2パルスとは異なる第3パルスを出力するので、溶滴移行の規則性を正常状態に復帰させるまでに要する期間を従来よりも短縮できる。したがって、正常状態に復帰させるまでに要する期間に発生するスパッタおよびヒュームを低減できる。その結果、仮に溶滴移行の規則性がくずれたとしてもそのときの溶接の品質の低下を最小限に食い止めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明の溶接制御装置および溶接制御方法を実施するための最良の形態(以下「実施形態」という)について説明する。まず、本発明の溶接制御方法の概要、この溶接制御方法のうち2種類の手法を説明した上で、従来技術と対比したときの特長、本発明の溶接制御方法を実現する溶接制御装置の構成およびその動作について順次説明していくこととする。
【0036】
[溶接制御方法の概要]
図1は、本発明の溶接制御装置が生成するパルス波形による溶接ワイヤ先端部の時系列変化を模式的に示す説明図である。本発明の溶接制御装置は、炭酸ガス単体または炭酸ガスが主成分である混合ガスをシールドガスとするアーク溶接においてパルス電流(パルス信号)によって1周期あたり1溶滴の溶滴移行の規則性を実現するものである。本発明の溶接制御装置は、図1において下側に示すように、通常は、パルス波形が異なる2種類のパルス電流(パルス信号)として、第1パルス201と第2パルス202とを交互に生成して溶接電源に出力する。ここで、第1パルス201および第2パルス202の波形形状の詳細を図15に示す。第1パルス201および第2パルス202のパルスパラメータは、例えば、図14を参照して説明した条件を満たすように設定される。
【0037】
このような条件によりパルスアーク溶接を実施すると、図1において上側に時系列に示すように、図示しない被溶接材との間にアーク204が生起される溶接ワイヤ(以下、単にワイヤという)のワイヤ先端205の溶滴形成および溶滴移行が行われる。まず、211の状態は、それ以前のパルス周期にて溶滴が離脱した後の第2パルスピーク期間中にワイヤ先端205に溶滴が成長し、さらに第2パルスベース期間の後期に至ったときの溶滴の様子を示している。このとき、第2パルスピーク電流から第2パルスベース電流へと電流値が急激に減少するため、ワイヤ先端205において押上げ力が弱まり、溶滴は、211に示すようにワイヤ先端205において垂下がるように整形される。続いて、第1パルスピーク期間に入ると、ワイヤ中のピーク電流による電磁ピンチ力により、溶滴は、212に示すように、くびれ206を形成する変化をする。
【0038】
ここで、例えば、ワイヤ送給速度変動や溶融池変動等の何らかの外乱により、第1パルスピーク期間、第1パルス立下りスロープ期間、または第1パルスベース期間にて、溶滴の離脱を検知しない場合が生じたとする。図1においては、213に示すように、第1パルスベース期間にて溶滴の離脱を検知しなかった場合を示している。このように第1パルスピーク期間、第1パルス立下りスロープ期間、または第1パルスベース期間にて、溶滴の離脱を検知しなかった場合には、本発明の溶接制御装置は、第1パルスベース期間終了後に、第2パルス202とはパルスピーク電流および/またはパルス幅の異なるパルス形状を有するパルス電流(パルス信号)を示す第3パルス203を生成して溶接電源に出力する。どのように異なるパルス形状であるかについては後記する。
【0039】
第3パルスを出力する目的は、1周期あたり1溶滴の溶滴移行の規則性のずれを修正し、早く正常状態に復帰させることである。そのためには、2つの手法がある。第1手法は、ワイヤ先端205から離脱できなかった溶滴を第3パルスにより強制的に離脱させて第3パルスに続けて第2パルスを出力する方法である。第2手法は、ワイヤ先端205から離脱できなかった溶滴を第3パルスにより整形し直し、第3パルスに続けて出力する第1パルスで溶滴を離脱させる方法である。本発明の溶接制御装置は、後記するように、第1手法および第2手法にそれぞれ適した形状の波形を有した第3パルスを出力する。この第3パルス203の波形形状には、詳細には、図2に示すように、ベース電流Ib3からピーク電流Ip3へ至る立上りスロープ期間Tu3やピーク電流Ip3からベース電流Ib3へ至る立下りスロープ期間Td3が含まれる。
【0040】
[第1手法の概要]
第1手法では、第3パルスのピーク電流(第3パルスピーク電流)を、例えば、図1に示すように、第2パルスピーク電流より高くする。これを第3パルスの第1実施形態とする。これにより、第3パルスは、ワイヤ先端205から離脱できなかった溶滴を、214に示すように、強制的に離脱させることが可能である。この場合、溶接制御装置は、溶滴207のワイヤ先端205からの離脱を検知すると、検出時の電流から、例えば図1に示すように第3パルスベース電流へと電流値を急激に減少させて、溶滴離脱後のワイヤ側にアークが移動する瞬間においては、214に示すように、第3パルスベース期間に移行させて、電流が充分に下がっている状態にする。このことにより、ワイヤのくびれ206部分の飛散や離脱後の残留融液の飛散による小粒スパッタを大幅に低減できる。
【0041】
また、第3パルスの出力に続いて、第2パルスを出力すると、第2パルスピーク期間では、溶接制御装置は、溶滴離脱後のワイヤに残留した残留融液が離脱や飛散をしないレベルに第2パルスピーク電流を設定し、この第2パルスで溶滴を215に示すように成長させる。そして、溶接制御装置は、第2パルスベース期間では、216に示すように溶滴の整形を行う。そして、溶滴は、再び211の状態に戻って整形される。このため、溶接制御装置は、溶滴移行の規則性のずれを修正し、従来よりも早く正常状態に復帰させることができる。
【0042】
[第2手法の概要]
第2手法では、例えば、第3パルスのピーク電流(第3パルスピーク電流)を、第2パルスピーク電流より低くする。これを第3パルスの第2実施形態とする。これにより、第3パルスは、ワイヤ先端205から離脱できなかった溶滴を、211に示すように、ワイヤ先端205において垂下がるように整形する。そして、第3パルスの出力に続いて、第1パルスを出力すると、第1パルスピーク期間において、ワイヤ中のピーク電流による電磁ピンチ力により、溶滴は、212に示すように、くびれ206を形成する変化をしながら、214に示すように急速に離脱を行う。以降は、第2パルス、第1パルスを順に交互に出力できるので、溶滴移行の規則性のずれを修正できる。
【0043】
[第1手法の好適なパラメータ条件]
第1手法では、離脱できなかった溶滴を第3パルスにより強制的に離脱させるので、図2に波形を示す第3パルスの第1実施形態におけるパルスパラメータの条件を以下の通りに設定することが好ましい。
【0044】
<ピーク電流Ip3>
ピーク電流(第3パルスピーク電流)Ip3は300〜700Aとする。このピーク電流Ip3は、溶滴を離脱させる過程において充分な電磁ピンチ力を確保するために大きく寄与する。ピーク電流Ip3が300A未満であると、電磁ピンチ力が弱く、溶滴移行の規則性を復帰させることができない。一方、ピーク電流Ip3が700Aを超えると、溶滴を押し上げるアーク力が強くなり過ぎてしまい、離脱した溶滴がスパッタとなる可能性があるだけでなく、装置重量やコストが上昇する問題も生じる。ピーク電流Ip3として、より好ましい範囲は、400〜600Aである。
【0045】
<立上りスロープ期間Tu3>
立上りスロープ期間(第3パルス立上りスロープ期間)Tu3は5.0ms以下とする。この立上りスロープ期間Tu3は、急激なアーク力の増加を防ぎ、徐々にアークの発生点を溶滴の上方部へ移動させるために寄与する。これにより、第3パルスにおける溶滴離脱が成功し易くなる。立上りスロープ期間Tu3が5.0msを超えると、溶滴を離脱させる電磁ピンチ力よりも、溶滴を押し上げるアーク力の方が強くなり、離脱した溶滴がスパッタとなる可能性が高くなってしまうので好ましくない。
【0046】
<ピーク期間Tp3>
ピーク期間(第3パルスピーク期間)Tp3は0.3〜5.0msとする。このピーク期間Tp3は、ピーク電流Ip3と同様に、溶滴を離脱させる過程において充分な電磁ピンチ力を確保するために大きく寄与する。ピーク期間(パルス幅)Tp3が0.3ms未満であると、電磁ピンチ力により溶滴を離脱させることができず、溶滴移行の規則性を復帰させることができない。一方、ピーク期間Tp3が5.0msを越えると、アーク力が溶滴を大きく押し上げるため、離脱検出時の電流値から即座に電流値をベース電流Ib3へ低下させたとしても、小粒スパッタを抑制する効果が生じにくくなってしまう。
【0047】
<立下りスロープ期間Td3>
立下りスロープ期間(第3パルス立下りスロープ期間)Td3は10.0ms以下とする。この立下りスロープ期間Td3は、ピーク電流Ip3からベース電流Ib3に至る過程において急激なピンチ力の低下を防ぐために寄与する。仮に溶滴が離脱し終えない途中で第3パルスの波形がベース電流Ib3へ変化してしまうと、溶滴の離脱が失敗する場合がある。しかしながら、立下りスロープ期間Td3が10.0ms以下の条件を満たすことで、溶滴の離脱が失敗する頻度を大幅に低減することができる。一方、立下りスロープ期間Td3が10.0msを越えてしまうと、離脱時の電流値が比較的高い電流値を有した状態で溶滴離脱が起こるため、離脱検出時の電流値から即座に電流値をベース電流Ib3へ低下させたとしても、小粒スパッタを抑制する効果が生じにくくなってしまう。
【0048】
<ベース電流Ib3>
ベース電流(第3パルスベース電流)Ib3は30〜200Aとする。この第3ベース電流Ib3は、溶滴離脱後にワイヤ側にアークが移動する過程において、アーク切れを起こさず、小粒スパッタ発生を抑制することに大きく寄与する。第3ベース電流Ib3が30A未満であると、アーク切れ、短絡が発生し易くなる。一方、第3ベース電流Ib3が200Aを超えると、溶滴からワイヤへアークが移動する瞬間において、ワイヤ側に残留する融液に寄与するアーク力が大きくなり、小粒スパッタを抑制することができなくなる。
【0049】
<ベース期間Tb3>
ベース期間(第3パルスベース期間)Tb3は0.3〜10msとする。このベース期間Tb3は、ベース電流Ib3と同様に、溶滴離脱後にワイヤ側にアークが移動する過程において、アーク切れを起こさず、小粒スパッタ発生を抑制することに大きく寄与する。ベース期間Tb3が0.3ms未満であると、ワイヤに残留した融液を整形するためには不十分であり、小粒スパッタを抑制することができなくなる。一方、ベース期間Tb3が10msを越えると、溶滴と溶融池との間で短絡が生じ易くなり、溶滴移行の規則性を乱すことになる。また、溶接電流の上限が抑制され、高ワイヤ送給速度条件における溶接が困難となる。
【0050】
[第2手法の好適なパラメータ条件]
第2手法では、溶滴を第3パルスにより整形し直し、第3パルスに続けて出力する第1パルスで溶滴を離脱させるので、図2に波形を示す第3パルスの第2実施形態におけるパルスパラメータの条件を以下の通りに設定することが好ましい。
【0051】
<ピーク電流Ip3>
ピーク電流(第3パルスピーク電流)Ip3は100〜400Aとする。このピーク電流Ip3は、溶滴を形成する過程において、溶滴を安定に整形することに大きく寄与する。ピーク電流Ip3が100A未満であると、アーク力が不十分であるため、溶滴を再度持ち上げることができず、次の第1パルスで溶滴を離脱させることができない。また、溶接電流の上限が抑制され、ワイヤを高速で送給する条件において溶接を行うことが困難となる。一方、ピーク電流Ip3が400Aを超えると、ワイヤの溶融が過度に進む上に、アーク力が強くなり過ぎるので、第3パルスピーク電流の印加時に、溶滴が離脱したり飛散したりして、スパッタを発生させてしまう。ピーク電流Ip3として、より好ましい範囲は、200〜300Aである。
【0052】
<ピーク期間Tp3>
ピーク期間(第3パルスピーク期間)Tp3は0.3〜10.0msとする。このピーク期間Tp3は、ピーク電流Ip3と同様に、溶滴を整形する過程において溶滴を安定に形成することに大きく寄与する。ピーク期間(パルス幅)Tp3が0.3ms未満であると、溶滴を再度持ち上げることができず、次の第1パルスで溶滴を離脱させることができない。一方、ピーク期間Tp3が10.0msを越えると、ワイヤの溶融が過度に進む上に、第3パルスの期間中に、溶滴が離脱したり飛散したりして、スパッタを発生させてしまい、1周期1溶滴の溶滴移行の規則性を復帰させることができない。
【0053】
<ベース電流Ib3>
ベース電流(第3パルスベース電流)Ib3は30〜200Aとする。この第3ベース電流Ib3は、溶滴を整形する過程において、アーク切れを起こさず、安定に溶滴を整形することに大きく寄与する。第3ベース電流Ib3が30A未満であると、アーク切れ、短絡が発生し易くなる。一方、第3ベース電流Ib3が200Aを超えると、溶滴に寄与するアーク力が大きくなると共に、ベース期間Tb3での溶融が過大となり、溶滴がふらつき、安定に整形できなくなる。
【0054】
<ベース期間Tb3>
ベース期間(第3パルスベース期間)Tb3は0.3〜15msとする。このベース期間Tb3は、ベース電流Ib3と同様に、溶滴を整形する過程において、アーク切れを起こさず、安定に溶滴を整形することに大きく寄与する。ベース期間Tb3が0.3ms未満であると、溶滴を充分に整形させることができず、次の第1パルスにおいて、溶滴の離脱方向にばらつきが生じる。一方、ベース期間Tb3が15msを越えると、ベース期間での溶融量が過大となり、溶滴と溶融池の間で短絡が生じ易くなり、溶滴移行の規則性を復帰させることができない。
【0055】
[外乱が生じたときの溶滴移行の概要]
外乱が生じたときの溶滴移行について、本発明の溶接制御方法を従来の方法と比較するために、以下の溶接条件1でパルスアーク溶接を実施したときのパルス波形の例について図3および図4を参照して説明する。図3は、本発明の溶接制御装置による溶滴の離脱検知の一例を説明するグラフであって、溶接電流および溶接電圧の波形と離脱検知信号とをそれぞれ示している。図4は、図3のグラフの比較例であって、第3パルスを用いない従来の溶接制御装置による溶滴の離脱検知を説明するグラフである。
【0056】
(溶接条件1)
ワイヤ :JIS Z3312 YGW11 1.2mmφ
炭酸ガス :100%CO
試験板 :SM490A
チップ母材間距離:25mm
溶接速度 :30cm/min
ワイヤ送給速度 :16.0m/min
溶接電流 :305A
アーク電圧 :37V
【0057】
従来の溶接制御装置は、図4の301に示す期間(0〜約50ms)では、第1パルスと、それよりもピーク電流の低い第2パルスとを交互に出力することで、1周期あたり1溶滴移行の溶滴移行の規則性が実現されている。具体的には、4周期の間に4回の離脱が検知されている。この301に示す期間では、スパッタおよびヒュームの発生が少なかった。図4のグラフにおいて5回目の離脱が検知されるべきタイミング302は、第1パルスピーク期間、または、それに続く第1パルス立下りスロープ期間、または、それに続く第1パルスベース期間を示している。しかしながら、このタイミング302において、何らかの外乱により、溶滴の離脱を検知せず、そのまま自然にまかせておくと、図4の303に示す期間(約50〜約190ms)では、溶滴移行の規則性がくずれる。具体的には、6周期連続して離脱が検知されず、7周期目には一度検知されるが、8周期目には検知されず、9周期目以降にようやく溶滴移行の規則性が復帰している。この303に示す期間では、スパッタおよびヒュームの発生が増大した。
【0058】
一方、本発明の溶接制御装置は、図3の311に示す期間(0〜約120ms)では、8周期の間に8回の溶滴離脱を検知しており、溶滴移行の規則性が実現されている。図3のグラフにおいて9周期目の離脱が検知されるべきタイミング312は、第1パルスピーク期間、または、それに続く第1パルス立下りスロープ期間、または、それに続く第1パルスベース期間を示している。しかしながら、このタイミング312において、何らかの外乱により、溶滴の離脱を検知しなかったので、本発明の溶接制御装置は、第1パルスベース期間終了後のタイミング313に第3パルスを出力する。これにより、直後の10周期目の離脱が検知されるべきタイミングから溶滴移行の規則性が復帰している。したがって、溶滴移行の規則性がくずれる期間は、従来の方法に比べて大幅に減少した。その結果、従来の方法に比べて、スパッタおよびヒュームの発生が大幅に減少した。
【0059】
[第1手法における溶滴移行]
第1手法において、前記した溶接条件1でパルスアーク溶接を実施したときのパルス波形の例について図5を参照して説明する。図5は、本発明の溶接制御装置が生成する第3パルスの第1実施形態を説明するグラフであって、溶接電流および溶接電圧の波形と離脱検知信号とをそれぞれ示している。図5のグラフにおいてタイミング401は、第1パルスの離脱検知の指標となる期間(ピーク期間、立下りスロープ期間、ベース期間)を示している。しかしながら、このタイミング401において、何らかの外乱により、溶滴の離脱を検知しなかったので、本発明の溶接制御装置は、第1パルスベース期間終了後に第3パルスを出力している。
【0060】
第3パルスピーク期間または第3パルス立下りスロープ期間の中で溶滴の離脱を検知したタイミング402において、検知するやいなや、本発明の溶接制御装置は、第3パルスの電流値を検出時の電流値よりも低い所定値に切り替え、所定値の電流について予め定められた期間の終了後に、図5において403で示すように、第2パルスを生成して溶接電源に出力する。これにより、ワイヤのくびれ部分の飛散や離脱後の残留融液の飛散による小粒スパッタを大幅に低減できる。
【0061】
図5では、第3パルスを1度出力しただけで溶滴の離脱を検知するものとしたが、万が一、検知できなかった場合に備えて、溶滴の離脱が検出されるまで予め設定された回数を最大として連続して第3パルスを繰り返し生成して溶接電源に出力することもできる。このときの繰返条件としては、最大回数を例えば5〜6回とすることができる。また、第3パルスピーク期間または第3パルス立下りスロープ期間の途中に、次回の第3パルスを出力することができる。
【0062】
[第2手法における溶滴移行]
第2手法において、前記した溶接条件1でパルスアーク溶接を実施したときのパルス波形の例について図6を参照して説明する。図6は、本発明の溶接制御装置が生成する第3パルスの第2実施形態を説明するグラフであって、溶接電流および溶接電圧の波形と離脱検知信号とをそれぞれ示している。図6のグラフにおいてタイミング501は、第1パルスの離脱検知の指標となる期間(ピーク期間、立下りスロープ期間、ベース期間)を示している。しかしながら、このタイミング501において、何らかの外乱により、溶滴の離脱を検知しなかったので、本発明の溶接制御装置は、第1パルスベース期間終了後に、溶滴を再度持ち上げながら形状を整えるために、第3パルスを出力している。
【0063】
図6のグラフにおいてタイミング502は、第3パルスピーク期間、または、第3パルス立下りスロープ期間、または、第3ベース期間のいずれかのタイミングを示している。
本発明の溶接制御装置は、タイミング502において、溶滴の離脱を検出しなかった場合に、第3パルスベース期間の終了後に、第1パルスを生成して溶接電源に出力する。そして、本発明の溶接制御装置は、第1パルスピーク期間または第1パルス立下りスロープ期間の中で、溶滴の離脱を検知したタイミング503において、検知するやいなや、即座に第1パルスの電流値を検出時の電流値よりも低い所定値(第1パルスベース電流)に切り替え、所定値の電流(第1パルスベース電流)について予め定められた期間(第1パルスベース期間)の終了後に、第2パルスを生成して溶接電源に出力する。したがって、溶滴移行の規則性を損なわず、スパッタおよびヒュームを増加させることがない。
【0064】
[溶接システムの構成]
図7は、本発明の溶接制御装置を含む溶接システムの一例を模式的に示す構成図である。溶接システム100は、図7に示すように、主として、ワイヤ送給装置101と、溶接電源102と、溶接制御装置103と、アーク溶接ロボット104と、ロボット制御装置105とを備えている。
【0065】
ワイヤ送給装置101は、溶接制御装置103を介して溶接電源102と接続されている。溶接電源102は、給電によりワイヤ送給装置101を駆動する。溶接制御装置103が溶接指令信号としてのパルス信号(パルス電流)を溶接電源102に出力すると、溶接電源102からの給電によりワイヤ送給装置101が駆動されて、ワイヤ5を送り出すローラ等からなるワイヤ送給路を通してワイヤ5がトーチ107に送給される。
【0066】
アーク溶接ロボット104は、例えば、6軸構成の多関節型の溶接ロボットであり、手首部分には、トーチ107が取り付けられている。アーク溶接ロボット104は、ロボット制御装置105からの指令に基づいて内部の図示しないモータの動作により、各関節を動かすことにより、トーチ107を移動させることができる。トーチ107は、ワイヤを被溶接材Wに向けて送り出すものである。この送り出されたワイヤと被溶接材Wとの間にアーク6が形成されることで溶接が行われる。
【0067】
ロボット制御装置105は、アーク溶接ロボット104と、図示しない教示ペンダントとに接続されており、教示ペンダントから入力されたコマンド(インチング指令)または予め記憶された所定の教示プログラムで指示される溶接経路や溶接作業条件に基づいて、アーク溶接ロボット104を制御するものである。
【0068】
なお、溶接制御装置103と、ロボット制御装置105とは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力インタフェース等を備えている。
【0069】
[溶接制御装置の構成]
図8は、本発明の溶接制御装置の構成を示すブロック図である。図8では、溶接制御装置103と、この溶接制御装置103から出力されるパルス信号(パルス電流)によりワイヤ5をトーチ107に送り込む給電を行う溶接電源102とを示している。出力制御素子1は、図示しない3相交流電源に接続されており、この出力制御素子1に与えられた電流は、トランス2、ダイオードからなる整流部3、直流リアクトル8および溶接電流を検出する電流検出器9を介して、コンタクトチップ4に与えられる。なお、コンタクトチップ4は、破線で示すように、トーチ107内に収納されている。トランス2の低位電源側には、被溶接材Wが接続されており、コンタクトチップ4内を挿通して給電されるワイヤ5と、被溶接材Wとの間にアーク6が生起される。コンタクトチップ4と被溶接材Wとの間の溶接電圧は、電圧検出器10により検出されて出力制御器15に入力される。この出力制御器15には、電流検出器9から溶接電流の検出値も入力される。これにより、出力制御器15は、入力される溶接電圧および溶接電流の検出値(フィードバック信号)を基に、ワイヤ5に給電する溶接電流おび溶接電圧の指令値を決定し、指令信号を出力して出力制御素子1を制御することによって溶接出力を制御する。また、出力制御器15は、波形生成器20から入力される第1パルスないし第3パルスの波形形状を示す信号に基づいて、出力制御素子1に出力する信号を変化させることによって、パルスアークを制御する。
【0070】
図8において破線で示す溶滴離脱検出部18は、所定条件を満たすときに、ワイヤ先端からの溶滴の離脱または離脱直前を検出するものである。本実施形態では、溶滴離脱検出部18は、波形生成器20から離脱検出許可信号が入力された期間のみ、溶滴の離脱または離脱直前を検出する処理を有効とする。このうち、離脱を検知する方法としては、例えば、第3パルスピーク期間Tp3(図2参照)、または、第3パルス立下りスロープ期間Td3(図2参照)において、電源外部特性が定電圧特性であれば、溶滴離脱によってアーク長が長くなる際の電流低下を捉えればよい。一方、第3パルスピーク期間Tp3、または、第1パルス立下りスロープ期間Td3において、電源外部特性が定電流特性であれば、溶滴離脱によるアーク電圧の急増を捉えればよい。また、第3パルスピーク期間Tp3、または、第3パルス立下りスロープ期間Td3において、溶接電流、溶接電圧またはアーク抵抗(アークインピーダンス=溶接電圧/溶接電流)等について1階または2階の時間微分信号を離脱検知として用いてもよい。本実施形態では、以下の理由により、2階の時間微分信号を溶滴の離脱(または離脱の直前)の検知に用いることとする。
【0071】
ここで、溶滴の離脱を検出する原理について図9を参照して説明する。図9は、本発明の溶接制御装置が液滴の離脱を検知する方法を説明するためのグラフであって、(a)は溶接電圧の時間変化、(b)は溶接電圧の1階時間微分の時間変化、(c)は溶接電圧の2階時間微分の時間変化をそれぞれ示している。溶滴が離脱する場合、ワイヤ先端に存在する溶滴の根元がくびれ、そのくびれが進行する結果、溶接電圧およびアーク抵抗(=溶接電圧/溶接電流)が上昇する。また、溶滴が離脱するとアーク長が長くなるため、溶接電圧およびアーク抵抗が上昇する。さらに、溶接電圧やアーク抵抗の時間微分値も常に上昇している。図9(a)に示すグラフでは、601で示すタイミングで溶滴が離脱した。したがって、601で示すタイミングについて、例えば図9(a)に示す溶接電圧の傾斜の急激な時間変化や、図9(b)に示す溶接電圧の時間微分値(dV/dt)の傾斜の急激な変化を検出して演算により求め、その結果を所定のしきい値と比較することによって、溶滴の離脱を判定することが可能である。なお、図9(b)および図9(c)の時間軸の範囲は、図9(a)に示す時間範囲602を表している。
【0072】
しかしながら、例えば、溶接進行中に電流や電圧等の溶接条件を変化させた場合や、開先内におけるウィービング溶接等によってワイヤ突出し長さが変化する場合には、溶滴の離脱を正確に検出することが難しい。具体的には、溶接中に、チップ−母材間距離(ワイヤ突出し長さ)を3段階(30mm、25mm、20mm)に変化させた場合には、図9(a)に示すように、チップ−母材間距離が短い場合には、電圧の立上りは緩く、チップ−母材間距離が長い場合には、電圧の立上りが急峻になる。この場合、各電圧値レベルも異なる。
【0073】
したがって、チップ−母材間距離(ワイヤ突出し長さ)を3段階(30mm、25mm、20mm)に変化させた場合には、図9(b)に示すように、電圧の時間微分値(dv/dt)も異なることになる。すなわち、ワイヤ突出し長さが溶接中に変化した場合には、溶滴の離脱による電圧の変化と、突出し長さの変化による電圧の変化とが重なってしまうので、溶滴の離脱を正確に検出できなくなる。このことは、ワイヤ突出し長さだけではなく、溶接中に溶接条件を変化させた場合も同様であり、さらに、溶接電圧だけではなくアーク抵抗でも同様である。
【0074】
一方、チップ−母材間距離(ワイヤ突出し長さ)を3段階(30mm、25mm、20mm)に変化させたとしても、溶接電圧の2階時間微分値(d2V/dt2)は、図9(c)に示すように、ほぼ同一値である。つまり、溶接電圧の2階時間微分値(d2V/dt2)は、ワイヤ突出し長さや溶接条件等の影響を大きくは受けない。そこで、本実施形態では、溶接中の溶接電圧の2階時間微分値を演算することで、溶滴の離脱(または離脱の直前)を検出し、検出した直後に溶接電流を低くなるように制御することとした。これにより、溶接中にワイヤ突出し長さや溶接条件等が変化した場合においても、溶滴の離脱を正確に検出することができる。
【0075】
本実施形態では、溶滴離脱検出部18は、図8に示すように、溶接電圧微分器11と、2階微分器12と、2階微分値設定器13と、比較器14とを備え、波形生成器20から離脱検出許可信号が入力されているときに、それぞれの処理を行うこととした。
【0076】
溶接電圧微分器11は、電圧検出器10により検出された電圧値(溶接中の溶接電圧値)を時間微分する。この微分電圧値は、2階微分器12により、さらに時間微分され、その算出結果である2階微分値は、比較器14に入力される。
【0077】
2階微分値設定器13は、ワイヤ先端から溶滴が離脱するときの溶接電圧の2階微分値(または溶滴離脱直前のくびれに相当する2階微分値)に相当するしきい値を、2階時間微分値として設定するものである。
【0078】
比較器14は、2階微分器12から入力する溶接中の溶接電圧値の2階微分値(2階微分検出値)と、2階微分値設定器13で設定された2階微分値(2階微分設定値)とを比較するものである。比較器14は、2階微分検出値が2階微分設定値を超えた瞬間に、溶滴がワイヤ先端から離脱したもの(または離脱直前であるもの)と判定し、その旨を示す溶滴離脱検出信号を波形生成器20に出力する。つまり、溶滴離脱検出信号は、溶滴の離脱(または離脱直前)を検出した場合に出力される信号である。
【0079】
波形設定器19は、第1パルス、第2パルスおよび第3パルスにおけるパルスパラメータ(ピーク電流、パルスピーク期間、ベース電流、パルスベース期間、立上りスロープ期間、立下がりスロープ期間等)を波形生成器20に設定するものである。本実施形態では、波形設定器19は、図示しない記憶手段に予め記憶されたパルスパラメータの各値を波形生成器20に入力する。
【0080】
波形生成器20は、パルス波形が異なる2種類のパルス信号として溶滴を離脱させる第1パルスと、溶滴を整形する第2パルスとを交互に生成して溶接電源102に出力すると共に溶滴の離脱が検出された場合に直ちに第1パルスの電流値を検出時の電流値よりも低い所定値に切り替えるものである。波形生成器20は、溶滴離脱検出部18から溶滴離脱検出信号が入力された場合に、波形設定器19で設定された設定値に基づいて、第1パルスベース期間(波形設定器19で設定された出力補正期間)では、検出時の溶接電流より低い溶接電流(第1パルスベース電流)になるように、出力制御器15の出力を補正するための信号(出力補正信号)を出力制御器15に出力する。また、溶滴離脱検出信号が入力されて第1パルスベース期間(波形設定器19で設定された出力補正期間)が終了した場合に、波形生成器20は、波形設定器19で設定されたパルス形状となるように、第2パルスの波形信号を出力し、続いて、再び、第1パルス、第2パルスによる交互出力を繰り返す。
【0081】
また、本実施形態の波形生成器20は、第1パルスを出力後、第1パルスベース期間(第1ベース期間という)が経過するまでに、溶滴離脱検出信号が入力されない場合には、波形設定器19で設定されたパルス形状となるように、第3パルスの波形信号を出力する。その詳細は、波形生成器20の動作と共に後記する。
【0082】
[溶接制御装置の動作]
(第1手法)
次に、本実施形態の溶接制御方法の第1手法による溶接制御装置103の動作として主に波形生成器20のパルス生成処理について図10を参照(適宜図8参照)して説明する。図10は、本発明の溶接制御装置のパルス生成処理の一例を示すフローチャートである。溶接制御装置103の波形生成器20は、波形設定器19で設定された第1パルスの出力タイミングでなければ(ステップS1:No)、待機し、第1パルスの出力タイミングになると(ステップS1:Yes)、第1パルスを出力制御器15に出力する(ステップS2)。通常のように、溶接制御装置103の溶滴離脱検出部18が、溶滴の離脱を検知した場合(ステップS3:Yes)、溶接制御装置103の波形生成器20は、溶滴離脱検出信号に基づいて、低電流(第1パルスベース電流)へ切り替える(ステップS4)。波形生成器20は、波形設定器19で設定された第2パルスの出力タイミングでなければ(ステップS5:No)、待機し、第2パルスの出力タイミングになると(ステップS5:Yes)、第2パルスを出力する(ステップS6)。そして、波形生成器20は、ステップS1に戻る。これにより、通常の場合、溶接制御装置103は、1周期あたり1溶滴の溶滴移行の規則性を実現できる。
【0083】
また、通常とは異なって、溶滴を離脱させるための第1パルスを出力したにもかかわらず、前記したステップS3において、何らかの理由で溶滴離脱検出部18が、溶滴の離脱を検知しなかった場合(ステップS3:No)、波形生成器20は、第1ベース期間が終了していなければ(ステップS7:No)、溶滴の離脱検知の判別を繰り返す。溶滴の離脱を検知できずに第1ベース期間が終了すると(ステップS7:Yes)、波形生成器20は、溶滴を強制的に離脱させるための第3パルスを出力する(ステップS8)。そして、この第3パルスを出力した後で、溶滴離脱検出部18が、溶滴の離脱を検知した場合(ステップS9:Yes)、波形生成器20は、ステップS4に戻り、低電流に切り替える。このときの低電流は、例えば、第3パルスベース電流である。つまり、波形生成器20は、溶滴離脱検出信号が入力されて第3パルスベース期間(波形設定器19で設定された出力補正期間)が終了した場合に、波形設定器19で設定されたパルス形状となるように、第3パルスに続いて第2パルスの波形信号を出力し、続いて、再び、第1パルス、第2パルスによる交互出力を繰り返す。これにより、溶接制御装置103は、溶滴移行の規則性を復帰させることができる。
【0084】
また、第3パルスを出力した後で、溶滴離脱検出部18が、溶滴の離脱を検知しなかった場合(ステップS9:No)、波形生成器20は、繰り返し条件を満足していなければ(ステップS10:No)、ステップS8に戻って、溶滴の離脱が検出されるまで第3パルスを繰り返し出力する。そして、波形生成器20は、溶滴の離脱を検知できずに繰り返し条件を満たすと(ステップS10:Yes)、ステップS1に戻り、第1パルスを出力する。
【0085】
(第2手法)
次に、本実施形態の溶接制御方法の第2手法による溶接制御装置103の動作として主に波形生成器20のパルス生成処理について図11を参照(適宜図8および図10参照)して説明する。図11は、本発明の溶接制御装置のパルス生成処理の他の例を示すフローチャートである。溶接制御装置103の行う動作のうち、ステップS1からステップS7は、図10に示したものと同様なので説明を省略する。
【0086】
溶接制御装置103の波形生成器20は、溶滴の離脱を検知できずに第1ベース期間が終了すると(ステップS7:Yes)、ステップS8において、離脱しなかった溶滴を整形し直すための第3パルスを出力する(ステップS8)。そして、この第3パルスを出力した後で、溶滴離脱検出部18が、溶滴の離脱を検知しない場合(ステップS9:No)、波形生成器20は、第3ベース期間が終了していなければ(ステップS20:No)、溶滴の離脱検知の判別を繰り返す。そして、溶滴の離脱を検知せずに第3ベース期間が終了すると(ステップS20:Yes)、ステップS1に戻り、整形された溶滴を離脱させるための第1パルスを出力する。つまり、波形生成器20は、溶滴離脱検出信号が入力されずに第3パルスベース期間(波形設定器19で設定された出力補正期間)が終了した場合に、波形設定器19で設定されたパルス形状となるように、第3パルスに続いて第1パルスの波形信号を出力し、続いて第2パルスを出力する。以降、再び、第1パルス、第2パルスによる交互出力を繰り返すこととなる。これにより、溶接制御装置103は、溶滴移行の規則性を復帰させることができる。なお、ステップS9において、仮に、溶滴の離脱を検知した場合(ステップS9:Yes)、第1手法と同様に、ステップS4に戻り、低電流(例えば、第3パルスベース電流)に切り替えることができる。
【0087】
なお、溶接制御装置103は、一般的なコンピュータを、前記した溶滴離脱検出部18、波形設定器19および波形生成器20として機能させる溶接制御プログラムにより動作させることで実現することもできる。この制御プログラムは、通信回線を介して提供することも可能であるし、CD−ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0088】
本実施形態によれば、溶接制御装置103は、何らかの外乱により、第1パルスピーク期間Tp1またはそれに続く第1パルス立下りスロープ期間Tdownまたはそれに続く第1パルスベース期間Tb1にて溶滴の離脱を検知しなかった場合には、第1パルスベース期間Tb1終了後に、第2パルスとは異なるパルス形状を有する第3パルスを出力する。第3パルスの第1実施形態により、離脱できなかった溶滴を強制的に離脱させることもできる。また、第3パルスの第2実施形態により、離脱できなかった溶滴を整形し直し、その後、第1パルスにより離脱させることもできる。ゆえに、溶接制御装置103は、何らかの外乱により発生した溶滴移行の規則性のずれを修正し、即座に正常状態に復帰させることができる。その結果、1周期あたり1溶滴の溶滴移行の規則性により、大粒スパッタを低減すると共に、溶滴離脱時のワイヤ先端のくびれ部分の飛散による小粒スパッタや溶滴離脱後のワイヤに残留した融液の飛散による小粒スパッタを大幅に低減することができる。さらに、溶滴移行の規則性を実現することにより、溶接アークを安定化すると同時に、スパッタ発生量およびヒューム発生量を大幅に低減できる。
【0089】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、溶接制御装置103を含む溶接システム100には、アーク溶接ロボット104を含むものとしたが、本発明はロボット溶接が必須ではない。例えば、溶接制御装置103および溶接電源102を用いて、人手を介した半自動トーチにより実現することもできる。また、パルスアーク溶接に用いるシールドガスは、100%CO2に限定されず、炭酸ガスが主成分(50%以上)である混合ガスでもよい。また、この混合ガスにAr等の不活性ガスを含んでもよい。
【0090】
また、本実施形態では、第1パルス201および第2パルス202は、そのピーク電流が異なるものとして説明したが、そのパルス幅が異なるものとしてもよい。また、ピーク電流とパルス幅とが両方とも異なっていてもよい。つまり、これら2種類のパルスは、溶滴を離脱させる役割と、溶滴を整形する役割に応じてパルス波形が異なっていればよい。
【実施例】
【0091】
本発明の効果を確認するために、本実施形態の溶接制御方法の第1手法および第2手法について実験を行った。
【0092】
(第1手法の実験方法)
下記の溶接条件2、表1および表2に示す第3パルスのパルスパラメータ(適宜図2参照)をそれぞれ用いて、炭酸ガスをシールドガスとして用いたパルスアーク溶接を行い、スパッタ発生量およびヒューム発生量を測定した。このとき、図12(a)および図12(b)に示す2つの銅製の捕集箱108内にて溶接を行ない、スパッタを捕集した。図12は本発明の溶接制御装置によるスパッタ発生量を測定するためのスパッタ捕集方法の説明図であって、(a)は捕集箱を正面斜視図、(b)捕集箱の側面から内部を透視した図をそれぞれ示している。2つの捕集箱108の間に、被溶接材Wを置き、トーチ107を被溶接材W上に配置して溶接を実施した。そのとき発生するスパッタ111を、捕集箱108の上半部に設けた開口109を介して、捕集箱108内に捕集した。また、ヒューム発生量については、JIS Z3930に準じた方法を用いて測定した。また、図13に、このときに用いた第1パルス201および第2パルス202のパルスパラメータの設定値を示す。
【0093】
(溶接条件2)
ワイヤ :JIS Z3312 YGW11 1.2mmφ
炭酸ガス :100%CO
試験板 :SM490A
チップ母材間距離:25mm
トーチ前進角 :30°
溶接速度 :40cm/min
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
(第1手法の実験結果)
表1および表2において、特開2007−237270号公報の実施例に基づいて、スパッタ発生量が4.0[g/min]未満、ヒューム発生量が400[mg/min]未満のものを良(○)として表記した。良(○)のうち、スパッタ発生量が2.0[g/min]未満、ヒューム発生量が300[mg/min]未満のものを良好(◎)として表記した。表1に示す実施例1〜実施例13は、前記した第1手法の好適なパラメータ条件を満たすものであり、評価はいずれも良好(◎)であった。なお、表1において、第1手法の好適なパラメータ条件の上限または下限近傍の範囲内の数値を太字で示した。
【0097】
表2に示す実施例14〜実施例23は、第3パルスを用いたが、前記した第1手法の好適なパラメータ条件のうち条件を満たさないパルスパラメータを有するものであり、評価はいずれも良(○)であった。なお、表2において、第1手法の好適なパラメータ条件の下限値に満たないか、または、上限値を超えるような範囲外の数値を太字で示した。また、実施例14〜実施例23については、実施例1〜実施例13よりもスパッタ発生量およびヒューム発生量が増大したが、いずれも、スパッタ発生量4.0[g/min]未満であり、ヒューム発生量400[mg/min]を超えるものではない。
【0098】
表2に示す実施例14〜実施例23について、スパッタ発生量およびヒューム発生量が良(○)であった理由は以下の通りである。
<実施例14>Ip3が第1手法の好適なパラメータ条件の下限値(以下、単に下限値という)以下であるため、溶滴が離脱しにくく、1周期あたり1溶滴移行を復活させにくく、スパッタ、ヒュームを増大させる。
<実施例15>Ip3が第1手法の好適なパラメータ条件の上限値(以下、単に上限値という)以上であるため、ピーク期間に溶滴を押上げるアーク力が強くなり易く、離脱した溶滴がスパッタとなる上、溶滴過熱が大きいためヒュームを増大させる。
<実施例16>Tu3が上限値以上であるため、溶滴を押上げるアーク力が強くなり易く、離脱した溶滴がスパッタとなり易い。
<実施例17>Tp3が下限値以下であるため、溶滴が離脱にくく、1周期あたり1溶滴移行を復活させにくく、スパッタ、ヒュームを増大させる。
<実施例18>Tp3が上限値以上であるため、ピーク期間中に溶滴離脱が頻発し、小粒スパッタおよびヒュームが増大する上、1周期あたり1溶滴移行を復活させにくい。
<実施例19>Td3が上限値以上であるため、高電流で溶滴離脱が起こるため、小粒スパッタを抑制しにくい。
<実施例20>Ib3が下限値以下であるため、アーク切れ、短絡が頻発しスパッタおよびヒュームを増大させる。
<実施例21>Ib3が上限値以上であるため、溶滴からワイヤへアークが移動する瞬間において、ワイヤ側に残留する融液を吹き飛ばし易くなり、小粒スパッタおよびヒュームを増大させる。
<実施例22>Tb3が下限値以下であるため、溶滴からワイヤへアークが移動する瞬間において、ワイヤ側に残留する融液を整形しにくく、小粒スパッタおよびヒュームを増大させる。
<実施例23>Tb3が上限値以上であるため、溶滴と溶融池の間で短絡が生じ易くなり、小粒スパッタおよびヒュームを増大させる。
【0099】
(第2手法の実験方法)
前記した溶接条件2、下記の表3および表4に示す第3パルスのパルスパラメータ(適宜図2参照)をそれぞれ用いて、炭酸ガスをシールドガスとして用いたパルスアーク溶接を行い、スパッタ発生量およびヒューム発生量を測定した。このとき、第1手法の実験方法と同様に、図12に示した方法でスパッタ発生量を測定し、ヒューム発生量については、JIS Z3930に準じた方法を用いて測定した。さらに、同様に、図13に示した第1パルス201および第2パルス202のパルスパラメータの設定値を用いた。
【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

【0102】
(第2手法の実験結果)
表3および表4において、第1手法の評価基準と同じように、スパッタ発生量およびヒューム発生量を評価した。表3に示す実施例24〜実施例31は、前記した第2手法の好適なパラメータ条件を満たすものであり、評価はいずれも良好(◎)であった。なお、表3において、第2手法の好適なパラメータ条件の上限または下限近傍の範囲内の数値を太字で示した。
【0103】
表4に示す実施例32〜実施例39は、第3パルスを用いたが、前記した第2手法の好適なパラメータ条件のうち条件を満たさないパルスパラメータを有するものであり、評価はいずれも良(○)であった。なお、表4において、第2手法の好適なパラメータ条件の下限値に満たないか、または、上限値を超えるような範囲外の数値を太字で示した。また、実施例32〜実施例39については、実施例24〜実施例31よりもスパッタ発生量およびヒューム発生量が増大したが、いずれも、スパッタ発生量4.0[g/min]未満であり、ヒューム発生量400[mg/min]を超えるものではない。
【0104】
表4に示す実施例32〜実施例39について、スパッタ発生量およびヒューム発生量が良(○)であった理由は以下の通りである。
<実施例32>Ip3が第2手法の好適なパラメータ条件の下限値(以下、単に下限値という)以下であるため、溶滴を再度持ち上げにくい。また、1周期あたり1溶滴移行を復活させにくく、スパッタ、ヒュームを増大させる。
<実施例33>Ip3が第2手法の好適なパラメータ条件の上限値(以下、単に上限値という)以上であるため、ワイヤの溶融が過度に進む上、アーク力が強くなり易く、溶滴がスパッタとなり易い。また、溶滴過熱が大きいためヒュームを増大させる。
<実施例34>Tp3が下限値以下であるため、溶滴を再度持ち上げにくい。また、1周期あたり1溶滴移行を復活させにくく、スパッタ、ヒュームを増大させる。
<実施例35>Tp3が上限値以上であるため、ワイヤの溶融が過度に進む上、ピーク期間中の溶滴がスパッタとなり易い。また、溶滴過熱が大きいためヒュームを増大させる。
<実施例36>Ib3が下限値以下であるため、アーク切れ、短絡が頻発しスパッタおよびヒュームを増大させる。
<実施例37>Ib3が上限値以上であるため、溶滴からワイヤへアークが移動する瞬間において、ワイヤ側に残留する融液を吹き飛ばし易くなり、小粒スパッタおよびヒュームを増大させる。
<実施例38>Tb3が下限値以下であるため、アーク切れ、短絡が頻発しスパッタおよびヒュームを増大させる。
<実施例39>Tb3が上限値以上であるため、溶滴からワイヤへアークが移動する瞬間において、ワイヤ側に残留する融液を吹き飛ばし易くなり、小粒スパッタおよびヒュームを増大させる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の溶接制御装置が生成するパルス波形による溶接ワイヤ先端部の時系列変化を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の溶接制御装置が生成する第3パルスの波形を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の溶接制御装置による溶滴の離脱検知の一例を説明するグラフであって、溶接電流および溶接電圧の波形と離脱検知信号とをそれぞれ示している。
【図4】図3のグラフの比較例として従来の溶接制御装置による溶滴の離脱検知を説明するグラフであって、溶接電流および溶接電圧の波形と離脱検知信号とをそれぞれ示している。
【図5】本発明の溶接制御装置が生成する第3パルスの第1実施形態を説明するグラフであって、溶接電流および溶接電圧の波形と離脱検知信号とをそれぞれ示している。
【図6】本発明の溶接制御装置が生成する第3パルスの第2実施形態を説明するグラフであって、溶接電流および溶接電圧の波形と離脱検知信号とをそれぞれ示している。
【図7】本発明の溶接制御装置を含む溶接システムの一例を模式的に示す構成図である。
【図8】本発明の溶接制御装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の溶接制御装置が液滴の離脱を検知する方法を説明するためのグラフであって、(a)は溶接電圧の時間変化、(b)は溶接電圧の1階時間微分の時間変化、(c)は溶接電圧の2階時間微分の時間変化をそれぞれ示している。
【図10】本発明の溶接制御装置のパルス生成処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の溶接制御装置のパルス生成処理の他の例を示すフローチャートである。
【図12】本発明の溶接制御装置によるスパッタ発生量を測定するためのスパッタ捕集方法の説明図であって、(a)は捕集箱を正面斜視図、(b)捕集箱の側面から内部を透視した図をそれぞれ示している。
【図13】本発明の溶接制御装置によるスパッタ発生量を測定する際に生成した第1パルスおよび第2パルスの波形およびパラメータ値をそれぞれ示している。
【図14】従来のパルスアーク溶接方法で生成されるパルス波形による溶接ワイヤ先端部の時系列変化を模式的に示す説明図である。
【図15】従来のパルスアーク溶接方法で生成される第1パルスおよび第2パルスの波形を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0106】
1 出力制御素子
2 トランス
3 整流部
4 コンタクトチップ
5 ワイヤ
6 アーク
8 直流リアクトル
9 電流検出器
10 電圧検出器
18 溶滴離脱検出部
19 波形設定器
20 波形生成器
100 溶接システム
102 溶接電源
103 溶接制御装置
107 トーチ
W 被溶接材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガス単体または炭酸ガスが主成分である混合ガスをシールドガスとするアーク溶接において溶接ワイヤ先端からの溶滴の離脱を検出する溶滴離脱検出部と、前記溶滴を離脱させる第1パルスと、前記溶滴を整形する第2パルスとを交互に生成して溶接電源に出力すると共に前記溶滴の離脱が検出された場合に直ちに前記第1パルスの電流値を検出時の電流値よりも低い所定値に切り替える波形生成器とを備える溶接制御装置において、
前記波形生成器は、
前記第1パルスのピーク期間、立下りスロープ期間またはベース期間において前記溶滴の離脱が検出されなかった場合に、前記第1パルスのベース期間終了後に、前記第2パルスとはパルスピーク電流および/またはパルス幅の異なるパルス形状を有する第3パルスを生成して前記溶接電源に出力することにより溶滴移行規則性のずれを修正することを特徴とする溶接制御装置。
【請求項2】
前記波形生成器は、
前記第3パルスのピーク期間または立下りスロープ期間において前記溶滴の離脱が検出された場合に直ちに当該第3パルスの電流値を検出時の電流値よりも低い所定値に切り替え、前記所定値の電流について予め定められた期間の終了後に、前記第2パルスを生成して前記溶接電源に出力することを特徴とする請求項1に記載の溶接制御装置。
【請求項3】
前記波形生成器は、
前記第3パルスのピーク期間または立下りスロープ期間において前記溶滴の離脱が検出されなかった場合に、前記溶滴の離脱が検出されるまで予め設定された回数を最大として連続して前記第3パルスを繰り返し生成して前記溶接電源に出力することを特徴とする請求項2に記載の溶接制御装置。
【請求項4】
前記第3パルスについての前記所定値は、前記第3パルスのベース期間の電流値を示すベース電流であり、
前記予め定められた期間は、前記第3パルスのベース期間であり、
前記第3パルスのピーク電流Ip3は300〜700A、
前記第3パルスの立上りスロープ期間Tu3は5.0ms以下、
前記第3パルスのピーク期間Tp3は0.3〜5.0ms、
前記第3パルスの立下りスロープ期間Td3は10.0ms以下、
前記第3パルスのベース電流Ib3は30〜200A、
前記第3パルスのベース期間Tb3は0.3〜10ms、
の各条件を満たすことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の溶接制御装置。
【請求項5】
前記波形生成器は、
前記第3パルスのピーク期間、立下りスロープ期間またはベース期間において前記溶滴の離脱が検出されなかった場合に、当該第3パルスのベース期間の終了後に、前記第1パルスを生成して前記溶接電源に出力することを特徴とする請求項1に記載の溶接制御装置。
【請求項6】
前記第3パルスのピーク電流Ip3は100〜400A、
前記第3パルスのピーク期間Tp3は0.3〜10.0ms、
前記第3パルスのベース電流Ib3は30〜200A、
前記第3パルスのベース期間Tb3は0.3〜15ms、
の各条件を満たすことを特徴とする請求項5に記載の溶接制御装置。
【請求項7】
炭酸ガス単体または炭酸ガスが主成分である混合ガスをシールドガスとするアーク溶接において溶接ワイヤ先端からの溶滴の離脱を検出する溶滴離脱検出部と、前記溶滴を離脱させる第1パルスと、前記溶滴を整形する第2パルスとを交互に生成して溶接電源に出力すると共に前記溶滴の離脱が検出された場合に直ちに前記第1パルスの電流値を検出時の電流値よりも低い所定値に切り替える波形生成器とを備える溶接制御装置の溶接制御方法において、
前記溶接制御装置は、
前記溶滴離脱検出部によって、前記第1パルスのピーク期間、立下りスロープ期間またはベース期間において前記溶滴の離脱が検出されなかった場合に、前記波形生成器によって、前記第1パルスのベース期間終了後に、前記第2パルスとはパルスピーク電流および/またはパルス幅の異なるパルス形状を有する第3パルスを生成して前記溶接電源に出力することにより溶滴移行規則性のずれを修正することを特徴とする溶接制御方法。
【請求項8】
炭酸ガス単体または炭酸ガスが主成分である混合ガスをシールドガスとするアーク溶接において溶接電源に出力するパルス波形の信号を生成するために、コンピュータを、
溶接ワイヤ先端から溶滴を離脱させる第1パルスと、前記溶滴を整形する第2パルスとを交互に生成して前記溶接電源に出力する手段、
前記溶滴の離脱が検出された場合に直ちに前記第1パルスの電流値を検出時の電流値よりも低い所定値に切り替える手段、
前記第1パルスのピーク期間、立下りスロープ期間またはベース期間において前記溶滴の離脱が検出されなかった場合に、前記第1パルスのベース期間終了後に、前記第2パルスとはパルスピーク電流および/またはパルス幅の異なるパルス形状を有する第3パルスを生成して前記溶接電源に出力することにより溶滴移行規則性のずれを修正する手段、
として機能させることを特徴とする溶接制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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