溶接形鋼の製造方法および製造装置
【課題】所定の長さを有する溶接H形鋼を、安定した歩留りで、かつ作業工数の増加をできるだけ抑制しながら、製造する。
【解決手段】ウェブ材2およびフランジ材3a、3bの溶接の前にそれぞれの長手方向へ発生する第1の品質不良部の範囲と、この溶接以降に長尺の溶接H形鋼7の長手方向へ発生する1または2以上の第2の品質不良部の範囲と、一定の製品長さを有する定尺製品、および、一定の範囲の製品長さを有する乱尺製品それぞれの製品寸法情報を求め、求めた第1の品質不良部情報、第2の品質不良部情報、及び製品寸法情報に基づいて、溶接不良部検出装置15の設置位置と、切断装置6による切断位置との間の長さの長尺の溶接形鋼5から、第1の品質不良部および第2の品質不良部を避けて、少なくとも定尺製品を切り出すように、切断装置6を制御する。
【解決手段】ウェブ材2およびフランジ材3a、3bの溶接の前にそれぞれの長手方向へ発生する第1の品質不良部の範囲と、この溶接以降に長尺の溶接H形鋼7の長手方向へ発生する1または2以上の第2の品質不良部の範囲と、一定の製品長さを有する定尺製品、および、一定の範囲の製品長さを有する乱尺製品それぞれの製品寸法情報を求め、求めた第1の品質不良部情報、第2の品質不良部情報、及び製品寸法情報に基づいて、溶接不良部検出装置15の設置位置と、切断装置6による切断位置との間の長さの長尺の溶接形鋼5から、第1の品質不良部および第2の品質不良部を避けて、少なくとも定尺製品を切り出すように、切断装置6を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接形鋼の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の溶接形鋼(以降の説明では「溶接H形鋼」を例にとる)の製造方法を模式的に示す説明図である。
図1に示すように、溶接H形鋼1は、長手方向へ送給される一枚の長尺のウェブ材2と、長手方向へ送給される二枚の長尺のフランジ材3a、3bとを、例えば高周波加熱装置(図示しない)により加熱してから断面H形に組み合わせ、断面H形に組み合わされたウェブ材2およびフランジ材3a、3bをフラッシュバット溶接機4により溶接する。溶接された長尺の溶接H形鋼5は、さらに搬送され、同期して走行する切断装置6によって注文寸法よりも若干長い所定の長さに切断されることにより、所定の長さを有する溶接H形鋼7が注文本数と歩留りを考慮して切り出される。所定の長さに切り出された溶接H形鋼7は、下方に配置されるクロップ脱下装置(図示しない)に収容され、製品長さを有する溶接H形鋼1が製造される。
【0003】
溶接された長尺の溶接形鋼5には、(a)フラッシュバット溶接機4による溶接を行われる前の時点で発生し、ウェブ材2およびフランジ材3a、3bそれぞれの表面に長手方向へ向けて延びて存在する1または2以上のウェブ疵、フランジ疵が存在する部分(本明細書では「第1の品質不良部」という)、(b)フラッシュバット溶接機4による溶接以降の時点で発生し、フランジ材3a、3bに対するウェブ材2の偏芯や、ウェブ材2およびフランジ材3a、3bの溶接不良が長手方向へ向けて1または2以上延びて存在する部分(本明細書では「第2の品質不良部」という)といった品質不良部8が含まれている。
【0004】
さらに、長尺の溶接形鋼5には、(c)複数のコイルを順次継いで構成される長尺のウェブ材、および複数のコイルを順次継いで構成される長尺のフランジ材3a、3bそれぞれのコイルの継ぎ部である横継ぎ部、または、これら長尺のウェブ材、フランジ材それぞれの長手方向の溶接開始点及び終了点の間であるオープン部(ライントラブル等でラインが停止した場合の立ち下げ立ち上げ部であって、定常状態で溶接が行われなかった部分)も、含まれる。
【0005】
この品質不良部8を含む製品が出荷されることを防ぐとともに歩留りの低下を抑制するため、図1に示すように、ウェブ疵検出器9、ウェブ横継ぎ検出器10、フランジ疵検出器11、フランジ横継ぎ検出器12、スパーク検出器13、偏芯検出器14さらには溶接不良検出器15を配置しておき、品質不良部8が発生した場合には各検出器9〜15に附帯されたマーキング装置(図示しない)により品質不良部8にマーキングを行なっておき、切断機6による切断後に、品質不良部8を含む溶接H形鋼7は一旦オフラインして詳細に検査し、品質不良部8を除去した残り長さが他の注文寸法よりも長い場合には、この品質不良部8を切断・除去して他の注文に振り当てることが行なわれてきた。
【0006】
図2は、このようにして、長さが70mの長尺の溶接H形鋼5から所定の長さ(10m)の溶接H形鋼7が切り出される状況の一例を模式的に示す説明図である。
この例では、長尺の溶接H形鋼5には、ウェブ疵およびフランジ疵8aが長手方向へ1mの範囲で発生した第1の品質不良部8と、ウェブ横継ぎ部8bが長手方向へ2mの範囲で存在する第3の品質不良部8と、フランジ横継ぎ部8bが長手方向へ1mの範囲で存在する第3の品質不良部8とが存在するので、10m長の溶接H形鋼を4本と、8m長さの溶接H形鋼2本と、2m、10m、2mの長さのスクラップとなる。
【0007】
このようにして長尺の溶接H形鋼5から所定の長さを有する溶接H形鋼7を切り出すと、品質不良部8の発生位置や発生範囲によって歩留りが顕著に変動し、安定した歩留りで溶接H形鋼を製造することが難しかった。また、品質不良部8を含む溶接H形鋼7を一旦オフラインしてからこの品質不良部8を切断・除去する必要もあり、作業工数の増加も否めなかった。
【0008】
特許文献1には、連続製造される長尺の形鋼と同期走行しながら切断する切断装置において、連続して採取可能な被切断材料の有効残長を求める有効残長演算部と、ロット毎の切断実績に基づき切断平均長さ以下の切断の可否を演算する切断実績管理部と、有効残長演算部から入力される有効残長と、切断実績管理部から入力される切断平均長さ以下の切断の可否に基づき、所定の製品切断長さの切断最大長さ、切断平均長さ、切断最小長さの各種組合せの全パターンについて繰り返しシミュレーション演算し、切下げ量が最小となる最適な切断長さの組合せパターンを演算設定する組合せ演算部とを備える切断制御装置を設けることによって、不良箇所やミル停機によるアニール未処理場所が発生しても、切下げ量を常に最小として、連続ラインにおける乱尺切断での製品歩留を向上させる発明が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−204926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、溶接H形鋼には、フラッシュバット溶接器によるウェブ材およびフランジ材の溶接を行われる前の時点で発生する第1の品質不良部および第3の品質不良部のみならず、この溶接以降の時点で発生する第2の品質不良部も発生する。このため、特許文献1により開示された発明における有効残長演算部により、連続して採取可能な被切断材料の有効残長を正確に求めることが難しく、所定の長さを有する溶接H形鋼を、安定した歩留りで、かつ作業工数の増加をできるだけ抑制しながら、製造することは困難である。
【0011】
本発明の目的は、広義には、複数の材料を組み合わせて連続して製造される長尺の製品を、同期走行しながら切断機によって切断する際に、ライン効率を低下させずに歩留まりを向上させるための最適な切断長さを設定する技術を提供することであり、具体的には、所定の長さを有する溶接H形鋼を、安定した歩留りで、かつ作業工数の増加をできるだけ抑制しながら、製造することができる溶接形鋼の製造方法および製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のウェブ材、および複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のフランジ材を所定の断面形状に組み合わせて溶接を行うことにより長尺の溶接形鋼とし、引き続き搬送される長尺の溶接形鋼と同期して走行する切断装置によって長尺の溶接形鋼から溶接形鋼を切断して製造する際に、溶接の前のウェブ材およびフランジ材の品質不良部を疵検査装置で検出し、この検出結果と複数のコイルの継ぎ部である位置の情報とを合わせて、第1の品質不良部情報を求め、溶接以降に長尺の溶接形鋼に発生する溶接不良部を検出する溶接不良部検出装置で検出された溶接不良部の情報を第2の品質不良部情報として求め、一定の製品長さを有する定尺製品、および、一定の範囲の製品長さを有する乱尺製品それぞれの製品寸法情報を求め、求めた第1の品質不良部情報、第2の品質不良部情報、及び製品寸法情報に基づいて、溶接不良部検出装置の設置位置と、切断装置による切断位置との間の長さの長尺の溶接形鋼から、第1の品質不良部および第2の品質不良部を避けて、少なくとも定尺製品を採取することを特徴とする溶接形鋼の製造方法である。
【0013】
別の観点からは、本発明は、複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のウェブ材、および複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のフランジ材を所定の断面形状に組み合わせて溶接することにより長尺の溶接形鋼とするフラッシュバット溶接機と、搬送される長尺の溶接形鋼と同期して走行しながら、長尺の溶接形鋼から所定の長さを有する溶接形鋼を切断する切断装置と、切断された所定の長さを有する溶接形鋼の下方に配置されて、所定の長さを有する溶接形鋼を収容するクロップ脱下装置と、溶接の前のウェブ材およびフランジ材の品質不良部を疵検査装置で検出し、この検出結果と複数のコイルの継ぎ部である位置の情報とを合わせて、第1の品質不良部情報を求め、溶接以降に長尺の溶接形鋼に発生する溶接不良部を検出する溶接不良部検出装置で検出された溶接不良部の情報を第2の品質不良部情報として求め、さらに、一定の製品長さを有する定尺製品、および、一定の範囲の製品長さを有する乱尺製品それぞれの製品寸法情報を求め、求めた第1の品質不良部情報、第2の品質不良部情報、及び製品寸法情報に基づいて、溶接不良部検出装置の設置位置と、切断装置による切断位置との間の長さの長尺の溶接形鋼から、第1の品質不良部および第2の品質不良部を避けて、少なくとも定択製品を切り出すように、切断装置を制御する制御装置とを備えることを特徴とする溶接形鋼の製造装置である。
【0014】
これらの本発明では、長尺の溶接形鋼の先端または取り合わせ済み位置から先頭の不良部間において定尺品を複数本採取することが望ましい。
これらの本発明では、取り合わせ済み位置から先頭の不良部間の残長が許容範囲内(定数以下)となる場合には、不良部前取り合わせを終了することが望ましい。
【0015】
これらの本発明では、長尺のウェブ材、および長尺のフランジ材それぞれのコイルの継ぎ部である横継ぎ部において乱尺品の採取が選択される場合には、定尺を一本取り消し、乱尺品を採取することが望ましい。
【0016】
これらの本発明では、定尺品の取り合わせ済み位置から先頭の不良部間の残長が最小となるように乱尺品を採取することが望ましい。
これらの本発明では、一の不良部とこれに続く他の一の不良部との間に乱尺品等の成品採取が可能であった場合に、不良部を切断機で自動で切断せず、後工程で不良部を切断し、成品を採取することが望ましい。
【0017】
これらの本発明では、一の不良部とこれに続く他の一の不良部との間に乱尺品等の成品採取が不可能であった場合、二つの不良部をまとめてスクラップとして処理することが望ましい。
【0018】
さらに、これらの本発明では、クロップ脱下装置への脱下不可長、脱下可能長、検査場へ取り込み不可長、取り合わせ最大長の各長さの少なくとも一の長さを考慮して、不良部を含むクロップ部を切断することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、所定の長さを有する溶接H形鋼を、安定した歩留りで、かつ作業工数の増加をできるだけ抑制しながら、製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、従来の溶接H形鋼の製造方法を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は、長さが70mの長尺の溶接H形鋼から所定の長さ(10m)の溶接H形鋼7が切り出される状況の一例を模式的に示す説明図である。
【図3】図3は、本発明に係る溶接H形鋼1の製造装置の構成例を示す説明図である。
【図4】図4は、本発明に係る製造装置により、図2に示す場合と同様に、長さが70mの長尺の溶接H形鋼から所定の長さ(10m)の溶接H形鋼が切り出される状況の一例を模式的に示す説明図である。
【図5】図5(a)は、定尺品を採取するための取り合わせ処理を示す説明図であり、図5(b)は、定尺品の取り合わせ処理後に、残長部で乱尺品を採取するための取り合わせ処理を示す説明図である。
【図6】図6(a)は、不良部を成品に含む処理を示す説明図であり、図6(b)は、不良部を製品に含まない処理を示す説明図である。
【図7】図7は、各種長さを考慮したクロップ部切断処理を示す説明図である。
【図8】図8は、各種長さを考慮したクロップ部切断処理を示す説明図である。
【図9】図9は、各種長さを考慮したクロップ部切断処理を示す説明図である。
【図10】図10は、各種長さを考慮したクロップ部切断処理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図3は、本発明に係る溶接H形鋼1の製造装置20の構成例を示す説明図である。なお、以降の説明では、図1に示す製造装置と同じ構成要素には同一の符号を付することにより、重複する説明を適宜省略する。
【0022】
この製造装置20は、フラッシュバット溶接機4と、切断装置6と、図示しないクロップ脱下装置と、制御装置21とを備えるので、これらの構成要素について説明する。
【0023】
[フラッシュバット溶接機4]
フラッシュバット溶接機4は、送給される長尺のウェブ材2と、同じ速度で送給される長尺のフランジ材3a、3bとを断面H形に組み合わせて溶接することにより、長尺の溶接H形鋼5を製造する。
【0024】
長尺のウェブ材2、および長尺のフランジ材3a、3bのいずれも、複数のコイルを順次継いで構成される。各コイルの継ぎ部を検出するためのウェブ横継ぎ検出器10およびフランジ横継ぎ検出器12が配置される。ウェブ横継ぎ検出器10およびフランジ横継ぎ検出器12は、いずれも、第3の品質不良部である各コイルの継ぎ部を検出してトラッキングすることにより、第3の品質不良部を連続して制御装置21へ出力する。
【0025】
また、ウェブ疵検出器9およびフランジ疵検出器11が配置される。ウェブ疵検出器9およびフランジ疵検出器11は、いずれも、フラッシュバット溶接機4による溶接を行われる前の時点で発生し、ウェブ材2およびフランジ材3a、3bそれぞれの表面に長手方向へ向けて延びて存在する1または2以上のウェブ疵、フランジ疵が存在する部分である第1の品質不良部を検出してトラッキングすることにより、第1の品質不良部を連続して制御装置21へ出力する。
【0026】
また、フラッシュバット溶接機4の下流には、スパーク検出器13、偏芯検出器14さらには溶接不良検出器15が配置される。
スパーク検出器13および溶接不良検出器15は、いずれも、フラッシュバット溶接機4による溶接以降に長尺の溶接形鋼5の長手方向へ発生する1または2以上の第2の品質不良部である溶接不良部の範囲を検出してトラッキングすることにより、第2の品質不良部を連続して制御装置21へ出力する。
【0027】
また、偏芯検出器14は、フラッシュバット溶接機4による溶接以降に長尺の溶接形鋼5の長手方向へ発生する1または2以上の、フランジ材3a、3bに対するウェブ材2の偏芯である第2の品質不良部の範囲を検出してトラッキングすることにより、第2の品質不良部を連続して制御装置21へ出力する。
【0028】
フラッシュバット溶接機4は、この種の溶接機として慣用されるものを用いればよく、当業者にとっては周知であるので、フラッシュバット溶接機4に関するこれ以上の説明は省略する。
【0029】
[切断装置6]
切断装置6は、搬送される長尺の溶接H形鋼5と同期して走行しながら、長尺の溶接H形鋼5から所定の長さを有する溶接形鋼7を切断するためのものである。切断装置21は、後述する制御装置21から出力される制御信号により、長尺の溶接H形鋼5の切断位置や切断開始タイミング等の切断条件を制御される。
【0030】
所定の長さを有する溶接H形鋼7の一方の切り出し位置は、長尺の溶接H形鋼7の品質良好部の範囲の端部を起点として、設定されることが、切捨て量を少なくするためには望ましい。
【0031】
切断装置6は、この種の切断装置として慣用されるものを用いればよく、当業者にとっては周知であるので、切断装置6に関するこれ以上の説明は省略する。
[クロップ脱下装置]
クロップ脱下装置は、切断された所定の長さを有する溶接形鋼7の下方に配置されて、所定の長さを有する溶接形鋼7を収容するためのものである。本発明では、適宜手段によりこのクロップ脱下装置における溶接H形鋼7の収容状況を検出し、検出結果を後述する制御装置21へ出力するように構成されている。
【0032】
クロップ脱下装置は、この種のクロップ脱下装置として慣用されるものを用いればよく、当業者にとっては周知であるので、クロップ脱下装置に関するこれ以上の説明は省略する。
【0033】
[制御装置21]
制御装置21は、(a)ウェブ疵検出器9およびフランジ疵検出器11により検出される、フラッシュバット溶接機4による溶接の前にウェブ材2およびフランジ材3a、3bそれぞれの長手方向へ発生する1または2以上の第1の品質不良部の範囲と、(b)スパーク検出器13、偏芯検出器14さらには溶接不良検出器15により検出される、フラッシュバット溶接機4による溶接以降に長尺の溶接形鋼5の長手方向へ発生する1または2以上の第2の品質不良部の範囲と、(c)ウェブ横継ぎ検出器10およびフランジ横継ぎ検出器12により検出される、複数のコイルの継ぎ部である横継ぎ部またはオープン部を含んでウェブ材2およびフランジ材3a、3bそれぞれの長手方向へ発生する1または2以上の第3部の範囲とを、連続的に入力される。
【0034】
制御装置21は、第1の品質不良部、第2の品質不良部、および第3部の範囲に関する情報と、溶接H形鋼1の生産計画(長さ毎の生産本数)とに基づいて、長尺の溶接H形鋼5のうちで第1の品質不良部の範囲および第2の品質不良部の範囲を除く1または2以上の品質良好部の範囲から、所定の長さを有する溶接H形鋼7を切断することができるように制御信号を出力することによって、切断装置6を制御する。
【0035】
本発明に係る製造装置20は、以上のように構成される。次に、この本発明に係る製造装置20により溶接H形鋼1を製造する状況を説明する。
図1に示す製造装置20では、はじめに、複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のウェブ材2、および複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のフランジ材3a、3bを断面H形に組み合わせ、フラッシュバット溶接機4により溶接することにより長尺の溶接H形鋼5を製造する。
【0036】
次に、溶接後に引き続き搬送される長尺の溶接H形鋼5と同期して走行する切断装置6によって長尺の溶接H形鋼5から所定の長さを有する溶接H形鋼7を切断する。切断された所定の長さを有する溶接H形鋼7は、下方に配置されるクロップ脱下装置に収容される。このようにして、この製造装置20により、製品長さを有する溶接形鋼1が製造される。
【0037】
この際に、この製造装置20では、制御装置21において、フラッシュバット溶接機4による溶接の前にウェブ材2およびフランジ材3a、3bそれぞれの長手方向へ発生する1または2以上の第1の品質不良部の範囲と、フラッシュバット溶接機4による溶接以降に長尺の溶接H形鋼5の長手方向へ発生する1または2以上の第2の品質不良部の範囲と、複数のコイルの継ぎ部である横継ぎ部またはオープン部を含んでウェブ材2およびフランジ材3a、3bそれぞれの長手方向へ発生する1または2以上の第3部の範囲とを連続的に求める。
【0038】
そして、この結果と生産計画(一定の製品長さを有する定尺製品、および、一定の範囲の製品長さを有する乱尺製品それぞれの製品寸法情報)とに基づいて、長尺の溶接H形鋼5のうちで第1の品質不良部の範囲および第2の品質不良部の範囲の範囲を除く1または2以上の品質良好部の範囲から、所定の長さを有する溶接H形鋼7を切断することによって、溶接H形鋼1を製造する。
【0039】
すなわち、本発明では、長尺の溶接H形鋼5を構成するウェブ材2およびフランジ材3a、3bに対して、第1の品質不良部〜第2の品質不良部の位置情報を追跡するためのウェブ疵検出器9、ウェブ横継ぎ検出器10、フランジ疵検出器11、フランジ横継ぎ検出器12を設ける。そして、ウェブ材2およびフランジ材3a、3bが溶接されて長尺の溶接H形鋼5となった後は、トラッキングされた第1の品質不良部〜第2の品質不良部の位置情報を重畳して、長尺の溶接H形鋼5における品質不良部の正確な位置情報をトラッキングし続ける。これにより、長尺の溶接H形鋼5になる前に検出したウェブ材2およびフランジ材3a、3bの不良部も、切断機6に到達するまでの間追跡することができる。このため、長尺の溶接H形鋼5になる前か後かのどちらで検出したかには関係なく、品質不良部を切断機6の位置まで追跡することや、切断機6とクロップ脱下装置での除去することができる。
【0040】
次に、本発明では、制御装置21に入力される第1の品質不良部〜第2の品質不良部の情報と、制御装置21に入力される生産計画に基づいた複数のオーダー長さの情報とに基づいて、溶接H形鋼7の切断長さを設定する。このオーダー長さは、一般に複数の長さの組合せであるので、最適な切断長さを設定して製品歩留まりを向上することができる。
【0041】
本発明では、第1の品質不良部〜第2の品質不良部が近接して連続して存在する場合には、近接する複数の品質不良部を1つの製品にまとめて切断するように切断長さを設定することが望ましい。同期走行する切断機6により連続して短い長さを切断するためには、ライン速度を低下する必要があるため、品質不良部が近接して連続して発生した場合には、その部分を纏めて切断することができるような長さで長尺の溶接H形鋼5を切断することにより、ラインの効率が低下することを防止できるからである。
【0042】
また、本発明では、クロップ脱下装置の状況によって切断長さを変更することが望ましい。クロップ脱下装置が使用できない状況である場合には、長尺の溶接H形鋼5をライン下流まで流してから品質不良部を取り除けるような長さを切断機6に設定することにより、クロップ脱下装置が使用できない場合であってもラインを停止しなくて済むからである。
【0043】
さらに、本発明では、切断機6への切断長さの設定値と、切断長さの実績値とを比較して、余長を計算し切断長さの設定に反映させることが望ましい。
図4は、本発明に係る製造装置20により、図2に示す場合と同様に、長さが70mの長尺の溶接H形鋼から所定の長さ(10m)の溶接H形鋼7が切り出される状況の一例を模式的に示す説明図である。
【0044】
本発明に係る製造装置20によれば、長10m長の溶接H形鋼を5本と、8m長さの溶接H形鋼2本と、3mの長さのスクラップと、1mの未取り合わせとが得られる。図2に示す場合に比較して、大幅に歩留りが向上することがわかる。
【0045】
また、本発明に係る製造装置20によれば、溶接H形鋼7をオフラインで再度切断する必要がないため、生産性を大幅に高めることが可能である。
次に、制御装置21により、長尺の溶接H形鋼5からの溶接H形鋼7の切り出し位置を決定するロジックを説明する。
【0046】
図5(a)は、長尺の溶接H形鋼5から定尺の溶接H形鋼7を優先的に切り出す状況を示す説明図であり、図5(b)は、長尺の溶接H形鋼5から乱尺の溶接H形鋼7を優先的に切り出す状況を示す説明図である。
【0047】
図5(a)に示すロジックでは、長尺の溶接H形鋼5の品質良好部の範囲から、規格化された長さを有する定尺の溶接H形鋼7を切断可能な最大数切断し、切断後に残存する品質良好部の長さが予め定められた長さ未満となった場合に、品質良好部の範囲からの定尺の溶接H形鋼7の切断を終了する。このようにして、材料先端または取り合わせ済み位置から先端の不良部間に定尺品(オーダー長+余長)を複数本採取することができる。
【0048】
ただし、図5(a)の下図に示すように、横継ぎ部でR品採取選択時には、定尺の切り出しを一本取り消し、必ずR品を採取する。また、許容範囲外の時は、この間でR品取り合わせを行なう。後述するように、この処理は、残長を最小限にすることを目的とする。
【0049】
図5(b)に示すロジックは、長尺の溶接H形鋼5の品質良好部の範囲から、予め定められた長さを有する定尺の溶接H形鋼7を切断可能な最大数切断し、切断後に残存する品質良好部の長さが予め定められた長さ未満となった場合に、この品質良好部の範囲から、定尺の溶接H形鋼よりも長さが短い乱尺の溶接H形鋼を切断し、切り出し後に残存する品質良好部の長さが予め定められた長さ未満となった場合に、品質良好部の範囲からの乱尺の溶接H形鋼の切断を終了する。このようにして、定尺取り合わせ済みの位置から先頭の不良部間の残長が最小になるようにR品(余長付加)を採取することができる。
【0050】
このように、
図5(a)は、定尺品を採取するための取り合わせ処理を示す。取り合わせ処理で一番最初に行われる処理である。長尺の溶接形鋼の先端または取り合わせ済み位置から先頭の不良部間に定尺品(オーダー長+余長)を取れる分だけ複数本採取する。取り合わせ済み位置から先頭の不良部間の残長が許容範囲内(定数以下)になったら、不良部前取り合わせを終了する。ただし、横継ぎ部で乱尺品採取選択時は、定尺を一本取り消し、必ず乱尺品を採取する。定尺品の採取で終わると残長が多くなる場合があるが、(定尺品1本+残長)の長さから乱尺品を採取することとすれば、最終的な残長を最小にして、これを防ぐことができるからである。
【0051】
図5(b)は、定尺品の取り合わせ処理後に、残長部で乱尺品を採取するための取り合わせ処理を示す。すなわち、定尺品取り合わせ済み位置から先頭の不良部間の残長が最小となるように乱尺品を採取する。このように、図5(b)に示す処理は、残長部をできる限り少なくするため、残長部から定尺品の採取ができない場合、乱尺品を採取し、残長部(スクラップ部)を最小にするものである。これにより、歩留まりが向上する。
【0052】
図6(a)は、不良部を成品に含む処理を示す。図6(a)は、一の不良部とこれに続く他の一の不良部との間に乱尺品等の成品採取が可能であった場合、不良部を切断機で自動切断せず、後工程で不良部を切断し、成品を採取する処理を示す。すなわち、複数ヶ所の不良部を自動切断する場合、その不良部を切断するためにライン速度を下げないといけないため効率が低下する。このため、ライン速度を下げず、後工程で成品を採取するものである。
【0053】
図6(b)は、不良部を製品に含まない処理を示す。図6(b)は、一の不良部とこれに続く他の一の不良部との間に乱尺品等の成品採取が不可能であった場合、複数の不良部を1つの纏まりと考え、スクラップとして処理する。これにより、ライン速度を下げずに効率良く操業することができる。
【0054】
図7〜10は、不良部を含むクロップ部を切断するために、クロップ脱下装置への脱下不可長、脱下可能長、検査場へ取り込み不可長、取り合わせ最大長の各長さを考慮したクロップ部切断処理を示す。なお、図7〜10は、No.1〜17の各ケースでクロップ処理を分けて示すが、最大の目的は、これも、ライン速度を下げずに効率良く操業することである。
【0055】
すなわち、クロップ脱下装置は、スクラップを落とす装置且つ場所であるが、この装置の間口よりもスクラップが長い場合は間口に落とすことが不可能であるという理由によりクロップ脱下装置への脱下不可長(脱下可能長)がある。
【0056】
また、切断された溶接H形鋼は検査場へ搬送されるが、検査場が収納できる本数は限られているため、短いサイズの溶接H形鋼が連続した場合、検査場が満杯となりライン速度を落とさなければいけない事態となるので、検査場を効率良く運用するため、短いサイズが連続した場合には複数本を取り合わせて切断するため、検査場へ取り込み不可長が存在する。
【0057】
さらに、検査場の間口サイズをオーバーしないサイズの溶接H形鋼を搬送するために取り合わせ最大長が存在する。
図7〜10は、これらの各長さを考慮してライン速度を下げずに効率良く操業するための方法を示す。
【0058】
このようにして、本発明によれば、所定の長さを有する溶接H形鋼を、安定した歩留りで、かつ作業工数の増加をできるだけ抑制しながら、製造することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 溶接H形鋼
2 ウェブ材
3a、3b フランジ材
4 フラッシュバット溶接機
5 長尺の溶接H形鋼
6 切断装置
7 所定の長さの溶接H形鋼
8 品質不良部
9 ウェブ疵検出器
10 ウェブ横継ぎ検出器
11 フランジ疵検出器
12 フランジ横継ぎ検出器
13 スパーク検出器
14 偏芯検出器
15 溶接不良検出器
20 本発明に係る製造装置
21 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接形鋼の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の溶接形鋼(以降の説明では「溶接H形鋼」を例にとる)の製造方法を模式的に示す説明図である。
図1に示すように、溶接H形鋼1は、長手方向へ送給される一枚の長尺のウェブ材2と、長手方向へ送給される二枚の長尺のフランジ材3a、3bとを、例えば高周波加熱装置(図示しない)により加熱してから断面H形に組み合わせ、断面H形に組み合わされたウェブ材2およびフランジ材3a、3bをフラッシュバット溶接機4により溶接する。溶接された長尺の溶接H形鋼5は、さらに搬送され、同期して走行する切断装置6によって注文寸法よりも若干長い所定の長さに切断されることにより、所定の長さを有する溶接H形鋼7が注文本数と歩留りを考慮して切り出される。所定の長さに切り出された溶接H形鋼7は、下方に配置されるクロップ脱下装置(図示しない)に収容され、製品長さを有する溶接H形鋼1が製造される。
【0003】
溶接された長尺の溶接形鋼5には、(a)フラッシュバット溶接機4による溶接を行われる前の時点で発生し、ウェブ材2およびフランジ材3a、3bそれぞれの表面に長手方向へ向けて延びて存在する1または2以上のウェブ疵、フランジ疵が存在する部分(本明細書では「第1の品質不良部」という)、(b)フラッシュバット溶接機4による溶接以降の時点で発生し、フランジ材3a、3bに対するウェブ材2の偏芯や、ウェブ材2およびフランジ材3a、3bの溶接不良が長手方向へ向けて1または2以上延びて存在する部分(本明細書では「第2の品質不良部」という)といった品質不良部8が含まれている。
【0004】
さらに、長尺の溶接形鋼5には、(c)複数のコイルを順次継いで構成される長尺のウェブ材、および複数のコイルを順次継いで構成される長尺のフランジ材3a、3bそれぞれのコイルの継ぎ部である横継ぎ部、または、これら長尺のウェブ材、フランジ材それぞれの長手方向の溶接開始点及び終了点の間であるオープン部(ライントラブル等でラインが停止した場合の立ち下げ立ち上げ部であって、定常状態で溶接が行われなかった部分)も、含まれる。
【0005】
この品質不良部8を含む製品が出荷されることを防ぐとともに歩留りの低下を抑制するため、図1に示すように、ウェブ疵検出器9、ウェブ横継ぎ検出器10、フランジ疵検出器11、フランジ横継ぎ検出器12、スパーク検出器13、偏芯検出器14さらには溶接不良検出器15を配置しておき、品質不良部8が発生した場合には各検出器9〜15に附帯されたマーキング装置(図示しない)により品質不良部8にマーキングを行なっておき、切断機6による切断後に、品質不良部8を含む溶接H形鋼7は一旦オフラインして詳細に検査し、品質不良部8を除去した残り長さが他の注文寸法よりも長い場合には、この品質不良部8を切断・除去して他の注文に振り当てることが行なわれてきた。
【0006】
図2は、このようにして、長さが70mの長尺の溶接H形鋼5から所定の長さ(10m)の溶接H形鋼7が切り出される状況の一例を模式的に示す説明図である。
この例では、長尺の溶接H形鋼5には、ウェブ疵およびフランジ疵8aが長手方向へ1mの範囲で発生した第1の品質不良部8と、ウェブ横継ぎ部8bが長手方向へ2mの範囲で存在する第3の品質不良部8と、フランジ横継ぎ部8bが長手方向へ1mの範囲で存在する第3の品質不良部8とが存在するので、10m長の溶接H形鋼を4本と、8m長さの溶接H形鋼2本と、2m、10m、2mの長さのスクラップとなる。
【0007】
このようにして長尺の溶接H形鋼5から所定の長さを有する溶接H形鋼7を切り出すと、品質不良部8の発生位置や発生範囲によって歩留りが顕著に変動し、安定した歩留りで溶接H形鋼を製造することが難しかった。また、品質不良部8を含む溶接H形鋼7を一旦オフラインしてからこの品質不良部8を切断・除去する必要もあり、作業工数の増加も否めなかった。
【0008】
特許文献1には、連続製造される長尺の形鋼と同期走行しながら切断する切断装置において、連続して採取可能な被切断材料の有効残長を求める有効残長演算部と、ロット毎の切断実績に基づき切断平均長さ以下の切断の可否を演算する切断実績管理部と、有効残長演算部から入力される有効残長と、切断実績管理部から入力される切断平均長さ以下の切断の可否に基づき、所定の製品切断長さの切断最大長さ、切断平均長さ、切断最小長さの各種組合せの全パターンについて繰り返しシミュレーション演算し、切下げ量が最小となる最適な切断長さの組合せパターンを演算設定する組合せ演算部とを備える切断制御装置を設けることによって、不良箇所やミル停機によるアニール未処理場所が発生しても、切下げ量を常に最小として、連続ラインにおける乱尺切断での製品歩留を向上させる発明が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−204926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、溶接H形鋼には、フラッシュバット溶接器によるウェブ材およびフランジ材の溶接を行われる前の時点で発生する第1の品質不良部および第3の品質不良部のみならず、この溶接以降の時点で発生する第2の品質不良部も発生する。このため、特許文献1により開示された発明における有効残長演算部により、連続して採取可能な被切断材料の有効残長を正確に求めることが難しく、所定の長さを有する溶接H形鋼を、安定した歩留りで、かつ作業工数の増加をできるだけ抑制しながら、製造することは困難である。
【0011】
本発明の目的は、広義には、複数の材料を組み合わせて連続して製造される長尺の製品を、同期走行しながら切断機によって切断する際に、ライン効率を低下させずに歩留まりを向上させるための最適な切断長さを設定する技術を提供することであり、具体的には、所定の長さを有する溶接H形鋼を、安定した歩留りで、かつ作業工数の増加をできるだけ抑制しながら、製造することができる溶接形鋼の製造方法および製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のウェブ材、および複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のフランジ材を所定の断面形状に組み合わせて溶接を行うことにより長尺の溶接形鋼とし、引き続き搬送される長尺の溶接形鋼と同期して走行する切断装置によって長尺の溶接形鋼から溶接形鋼を切断して製造する際に、溶接の前のウェブ材およびフランジ材の品質不良部を疵検査装置で検出し、この検出結果と複数のコイルの継ぎ部である位置の情報とを合わせて、第1の品質不良部情報を求め、溶接以降に長尺の溶接形鋼に発生する溶接不良部を検出する溶接不良部検出装置で検出された溶接不良部の情報を第2の品質不良部情報として求め、一定の製品長さを有する定尺製品、および、一定の範囲の製品長さを有する乱尺製品それぞれの製品寸法情報を求め、求めた第1の品質不良部情報、第2の品質不良部情報、及び製品寸法情報に基づいて、溶接不良部検出装置の設置位置と、切断装置による切断位置との間の長さの長尺の溶接形鋼から、第1の品質不良部および第2の品質不良部を避けて、少なくとも定尺製品を採取することを特徴とする溶接形鋼の製造方法である。
【0013】
別の観点からは、本発明は、複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のウェブ材、および複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のフランジ材を所定の断面形状に組み合わせて溶接することにより長尺の溶接形鋼とするフラッシュバット溶接機と、搬送される長尺の溶接形鋼と同期して走行しながら、長尺の溶接形鋼から所定の長さを有する溶接形鋼を切断する切断装置と、切断された所定の長さを有する溶接形鋼の下方に配置されて、所定の長さを有する溶接形鋼を収容するクロップ脱下装置と、溶接の前のウェブ材およびフランジ材の品質不良部を疵検査装置で検出し、この検出結果と複数のコイルの継ぎ部である位置の情報とを合わせて、第1の品質不良部情報を求め、溶接以降に長尺の溶接形鋼に発生する溶接不良部を検出する溶接不良部検出装置で検出された溶接不良部の情報を第2の品質不良部情報として求め、さらに、一定の製品長さを有する定尺製品、および、一定の範囲の製品長さを有する乱尺製品それぞれの製品寸法情報を求め、求めた第1の品質不良部情報、第2の品質不良部情報、及び製品寸法情報に基づいて、溶接不良部検出装置の設置位置と、切断装置による切断位置との間の長さの長尺の溶接形鋼から、第1の品質不良部および第2の品質不良部を避けて、少なくとも定択製品を切り出すように、切断装置を制御する制御装置とを備えることを特徴とする溶接形鋼の製造装置である。
【0014】
これらの本発明では、長尺の溶接形鋼の先端または取り合わせ済み位置から先頭の不良部間において定尺品を複数本採取することが望ましい。
これらの本発明では、取り合わせ済み位置から先頭の不良部間の残長が許容範囲内(定数以下)となる場合には、不良部前取り合わせを終了することが望ましい。
【0015】
これらの本発明では、長尺のウェブ材、および長尺のフランジ材それぞれのコイルの継ぎ部である横継ぎ部において乱尺品の採取が選択される場合には、定尺を一本取り消し、乱尺品を採取することが望ましい。
【0016】
これらの本発明では、定尺品の取り合わせ済み位置から先頭の不良部間の残長が最小となるように乱尺品を採取することが望ましい。
これらの本発明では、一の不良部とこれに続く他の一の不良部との間に乱尺品等の成品採取が可能であった場合に、不良部を切断機で自動で切断せず、後工程で不良部を切断し、成品を採取することが望ましい。
【0017】
これらの本発明では、一の不良部とこれに続く他の一の不良部との間に乱尺品等の成品採取が不可能であった場合、二つの不良部をまとめてスクラップとして処理することが望ましい。
【0018】
さらに、これらの本発明では、クロップ脱下装置への脱下不可長、脱下可能長、検査場へ取り込み不可長、取り合わせ最大長の各長さの少なくとも一の長さを考慮して、不良部を含むクロップ部を切断することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、所定の長さを有する溶接H形鋼を、安定した歩留りで、かつ作業工数の増加をできるだけ抑制しながら、製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、従来の溶接H形鋼の製造方法を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は、長さが70mの長尺の溶接H形鋼から所定の長さ(10m)の溶接H形鋼7が切り出される状況の一例を模式的に示す説明図である。
【図3】図3は、本発明に係る溶接H形鋼1の製造装置の構成例を示す説明図である。
【図4】図4は、本発明に係る製造装置により、図2に示す場合と同様に、長さが70mの長尺の溶接H形鋼から所定の長さ(10m)の溶接H形鋼が切り出される状況の一例を模式的に示す説明図である。
【図5】図5(a)は、定尺品を採取するための取り合わせ処理を示す説明図であり、図5(b)は、定尺品の取り合わせ処理後に、残長部で乱尺品を採取するための取り合わせ処理を示す説明図である。
【図6】図6(a)は、不良部を成品に含む処理を示す説明図であり、図6(b)は、不良部を製品に含まない処理を示す説明図である。
【図7】図7は、各種長さを考慮したクロップ部切断処理を示す説明図である。
【図8】図8は、各種長さを考慮したクロップ部切断処理を示す説明図である。
【図9】図9は、各種長さを考慮したクロップ部切断処理を示す説明図である。
【図10】図10は、各種長さを考慮したクロップ部切断処理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図3は、本発明に係る溶接H形鋼1の製造装置20の構成例を示す説明図である。なお、以降の説明では、図1に示す製造装置と同じ構成要素には同一の符号を付することにより、重複する説明を適宜省略する。
【0022】
この製造装置20は、フラッシュバット溶接機4と、切断装置6と、図示しないクロップ脱下装置と、制御装置21とを備えるので、これらの構成要素について説明する。
【0023】
[フラッシュバット溶接機4]
フラッシュバット溶接機4は、送給される長尺のウェブ材2と、同じ速度で送給される長尺のフランジ材3a、3bとを断面H形に組み合わせて溶接することにより、長尺の溶接H形鋼5を製造する。
【0024】
長尺のウェブ材2、および長尺のフランジ材3a、3bのいずれも、複数のコイルを順次継いで構成される。各コイルの継ぎ部を検出するためのウェブ横継ぎ検出器10およびフランジ横継ぎ検出器12が配置される。ウェブ横継ぎ検出器10およびフランジ横継ぎ検出器12は、いずれも、第3の品質不良部である各コイルの継ぎ部を検出してトラッキングすることにより、第3の品質不良部を連続して制御装置21へ出力する。
【0025】
また、ウェブ疵検出器9およびフランジ疵検出器11が配置される。ウェブ疵検出器9およびフランジ疵検出器11は、いずれも、フラッシュバット溶接機4による溶接を行われる前の時点で発生し、ウェブ材2およびフランジ材3a、3bそれぞれの表面に長手方向へ向けて延びて存在する1または2以上のウェブ疵、フランジ疵が存在する部分である第1の品質不良部を検出してトラッキングすることにより、第1の品質不良部を連続して制御装置21へ出力する。
【0026】
また、フラッシュバット溶接機4の下流には、スパーク検出器13、偏芯検出器14さらには溶接不良検出器15が配置される。
スパーク検出器13および溶接不良検出器15は、いずれも、フラッシュバット溶接機4による溶接以降に長尺の溶接形鋼5の長手方向へ発生する1または2以上の第2の品質不良部である溶接不良部の範囲を検出してトラッキングすることにより、第2の品質不良部を連続して制御装置21へ出力する。
【0027】
また、偏芯検出器14は、フラッシュバット溶接機4による溶接以降に長尺の溶接形鋼5の長手方向へ発生する1または2以上の、フランジ材3a、3bに対するウェブ材2の偏芯である第2の品質不良部の範囲を検出してトラッキングすることにより、第2の品質不良部を連続して制御装置21へ出力する。
【0028】
フラッシュバット溶接機4は、この種の溶接機として慣用されるものを用いればよく、当業者にとっては周知であるので、フラッシュバット溶接機4に関するこれ以上の説明は省略する。
【0029】
[切断装置6]
切断装置6は、搬送される長尺の溶接H形鋼5と同期して走行しながら、長尺の溶接H形鋼5から所定の長さを有する溶接形鋼7を切断するためのものである。切断装置21は、後述する制御装置21から出力される制御信号により、長尺の溶接H形鋼5の切断位置や切断開始タイミング等の切断条件を制御される。
【0030】
所定の長さを有する溶接H形鋼7の一方の切り出し位置は、長尺の溶接H形鋼7の品質良好部の範囲の端部を起点として、設定されることが、切捨て量を少なくするためには望ましい。
【0031】
切断装置6は、この種の切断装置として慣用されるものを用いればよく、当業者にとっては周知であるので、切断装置6に関するこれ以上の説明は省略する。
[クロップ脱下装置]
クロップ脱下装置は、切断された所定の長さを有する溶接形鋼7の下方に配置されて、所定の長さを有する溶接形鋼7を収容するためのものである。本発明では、適宜手段によりこのクロップ脱下装置における溶接H形鋼7の収容状況を検出し、検出結果を後述する制御装置21へ出力するように構成されている。
【0032】
クロップ脱下装置は、この種のクロップ脱下装置として慣用されるものを用いればよく、当業者にとっては周知であるので、クロップ脱下装置に関するこれ以上の説明は省略する。
【0033】
[制御装置21]
制御装置21は、(a)ウェブ疵検出器9およびフランジ疵検出器11により検出される、フラッシュバット溶接機4による溶接の前にウェブ材2およびフランジ材3a、3bそれぞれの長手方向へ発生する1または2以上の第1の品質不良部の範囲と、(b)スパーク検出器13、偏芯検出器14さらには溶接不良検出器15により検出される、フラッシュバット溶接機4による溶接以降に長尺の溶接形鋼5の長手方向へ発生する1または2以上の第2の品質不良部の範囲と、(c)ウェブ横継ぎ検出器10およびフランジ横継ぎ検出器12により検出される、複数のコイルの継ぎ部である横継ぎ部またはオープン部を含んでウェブ材2およびフランジ材3a、3bそれぞれの長手方向へ発生する1または2以上の第3部の範囲とを、連続的に入力される。
【0034】
制御装置21は、第1の品質不良部、第2の品質不良部、および第3部の範囲に関する情報と、溶接H形鋼1の生産計画(長さ毎の生産本数)とに基づいて、長尺の溶接H形鋼5のうちで第1の品質不良部の範囲および第2の品質不良部の範囲を除く1または2以上の品質良好部の範囲から、所定の長さを有する溶接H形鋼7を切断することができるように制御信号を出力することによって、切断装置6を制御する。
【0035】
本発明に係る製造装置20は、以上のように構成される。次に、この本発明に係る製造装置20により溶接H形鋼1を製造する状況を説明する。
図1に示す製造装置20では、はじめに、複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のウェブ材2、および複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のフランジ材3a、3bを断面H形に組み合わせ、フラッシュバット溶接機4により溶接することにより長尺の溶接H形鋼5を製造する。
【0036】
次に、溶接後に引き続き搬送される長尺の溶接H形鋼5と同期して走行する切断装置6によって長尺の溶接H形鋼5から所定の長さを有する溶接H形鋼7を切断する。切断された所定の長さを有する溶接H形鋼7は、下方に配置されるクロップ脱下装置に収容される。このようにして、この製造装置20により、製品長さを有する溶接形鋼1が製造される。
【0037】
この際に、この製造装置20では、制御装置21において、フラッシュバット溶接機4による溶接の前にウェブ材2およびフランジ材3a、3bそれぞれの長手方向へ発生する1または2以上の第1の品質不良部の範囲と、フラッシュバット溶接機4による溶接以降に長尺の溶接H形鋼5の長手方向へ発生する1または2以上の第2の品質不良部の範囲と、複数のコイルの継ぎ部である横継ぎ部またはオープン部を含んでウェブ材2およびフランジ材3a、3bそれぞれの長手方向へ発生する1または2以上の第3部の範囲とを連続的に求める。
【0038】
そして、この結果と生産計画(一定の製品長さを有する定尺製品、および、一定の範囲の製品長さを有する乱尺製品それぞれの製品寸法情報)とに基づいて、長尺の溶接H形鋼5のうちで第1の品質不良部の範囲および第2の品質不良部の範囲の範囲を除く1または2以上の品質良好部の範囲から、所定の長さを有する溶接H形鋼7を切断することによって、溶接H形鋼1を製造する。
【0039】
すなわち、本発明では、長尺の溶接H形鋼5を構成するウェブ材2およびフランジ材3a、3bに対して、第1の品質不良部〜第2の品質不良部の位置情報を追跡するためのウェブ疵検出器9、ウェブ横継ぎ検出器10、フランジ疵検出器11、フランジ横継ぎ検出器12を設ける。そして、ウェブ材2およびフランジ材3a、3bが溶接されて長尺の溶接H形鋼5となった後は、トラッキングされた第1の品質不良部〜第2の品質不良部の位置情報を重畳して、長尺の溶接H形鋼5における品質不良部の正確な位置情報をトラッキングし続ける。これにより、長尺の溶接H形鋼5になる前に検出したウェブ材2およびフランジ材3a、3bの不良部も、切断機6に到達するまでの間追跡することができる。このため、長尺の溶接H形鋼5になる前か後かのどちらで検出したかには関係なく、品質不良部を切断機6の位置まで追跡することや、切断機6とクロップ脱下装置での除去することができる。
【0040】
次に、本発明では、制御装置21に入力される第1の品質不良部〜第2の品質不良部の情報と、制御装置21に入力される生産計画に基づいた複数のオーダー長さの情報とに基づいて、溶接H形鋼7の切断長さを設定する。このオーダー長さは、一般に複数の長さの組合せであるので、最適な切断長さを設定して製品歩留まりを向上することができる。
【0041】
本発明では、第1の品質不良部〜第2の品質不良部が近接して連続して存在する場合には、近接する複数の品質不良部を1つの製品にまとめて切断するように切断長さを設定することが望ましい。同期走行する切断機6により連続して短い長さを切断するためには、ライン速度を低下する必要があるため、品質不良部が近接して連続して発生した場合には、その部分を纏めて切断することができるような長さで長尺の溶接H形鋼5を切断することにより、ラインの効率が低下することを防止できるからである。
【0042】
また、本発明では、クロップ脱下装置の状況によって切断長さを変更することが望ましい。クロップ脱下装置が使用できない状況である場合には、長尺の溶接H形鋼5をライン下流まで流してから品質不良部を取り除けるような長さを切断機6に設定することにより、クロップ脱下装置が使用できない場合であってもラインを停止しなくて済むからである。
【0043】
さらに、本発明では、切断機6への切断長さの設定値と、切断長さの実績値とを比較して、余長を計算し切断長さの設定に反映させることが望ましい。
図4は、本発明に係る製造装置20により、図2に示す場合と同様に、長さが70mの長尺の溶接H形鋼から所定の長さ(10m)の溶接H形鋼7が切り出される状況の一例を模式的に示す説明図である。
【0044】
本発明に係る製造装置20によれば、長10m長の溶接H形鋼を5本と、8m長さの溶接H形鋼2本と、3mの長さのスクラップと、1mの未取り合わせとが得られる。図2に示す場合に比較して、大幅に歩留りが向上することがわかる。
【0045】
また、本発明に係る製造装置20によれば、溶接H形鋼7をオフラインで再度切断する必要がないため、生産性を大幅に高めることが可能である。
次に、制御装置21により、長尺の溶接H形鋼5からの溶接H形鋼7の切り出し位置を決定するロジックを説明する。
【0046】
図5(a)は、長尺の溶接H形鋼5から定尺の溶接H形鋼7を優先的に切り出す状況を示す説明図であり、図5(b)は、長尺の溶接H形鋼5から乱尺の溶接H形鋼7を優先的に切り出す状況を示す説明図である。
【0047】
図5(a)に示すロジックでは、長尺の溶接H形鋼5の品質良好部の範囲から、規格化された長さを有する定尺の溶接H形鋼7を切断可能な最大数切断し、切断後に残存する品質良好部の長さが予め定められた長さ未満となった場合に、品質良好部の範囲からの定尺の溶接H形鋼7の切断を終了する。このようにして、材料先端または取り合わせ済み位置から先端の不良部間に定尺品(オーダー長+余長)を複数本採取することができる。
【0048】
ただし、図5(a)の下図に示すように、横継ぎ部でR品採取選択時には、定尺の切り出しを一本取り消し、必ずR品を採取する。また、許容範囲外の時は、この間でR品取り合わせを行なう。後述するように、この処理は、残長を最小限にすることを目的とする。
【0049】
図5(b)に示すロジックは、長尺の溶接H形鋼5の品質良好部の範囲から、予め定められた長さを有する定尺の溶接H形鋼7を切断可能な最大数切断し、切断後に残存する品質良好部の長さが予め定められた長さ未満となった場合に、この品質良好部の範囲から、定尺の溶接H形鋼よりも長さが短い乱尺の溶接H形鋼を切断し、切り出し後に残存する品質良好部の長さが予め定められた長さ未満となった場合に、品質良好部の範囲からの乱尺の溶接H形鋼の切断を終了する。このようにして、定尺取り合わせ済みの位置から先頭の不良部間の残長が最小になるようにR品(余長付加)を採取することができる。
【0050】
このように、
図5(a)は、定尺品を採取するための取り合わせ処理を示す。取り合わせ処理で一番最初に行われる処理である。長尺の溶接形鋼の先端または取り合わせ済み位置から先頭の不良部間に定尺品(オーダー長+余長)を取れる分だけ複数本採取する。取り合わせ済み位置から先頭の不良部間の残長が許容範囲内(定数以下)になったら、不良部前取り合わせを終了する。ただし、横継ぎ部で乱尺品採取選択時は、定尺を一本取り消し、必ず乱尺品を採取する。定尺品の採取で終わると残長が多くなる場合があるが、(定尺品1本+残長)の長さから乱尺品を採取することとすれば、最終的な残長を最小にして、これを防ぐことができるからである。
【0051】
図5(b)は、定尺品の取り合わせ処理後に、残長部で乱尺品を採取するための取り合わせ処理を示す。すなわち、定尺品取り合わせ済み位置から先頭の不良部間の残長が最小となるように乱尺品を採取する。このように、図5(b)に示す処理は、残長部をできる限り少なくするため、残長部から定尺品の採取ができない場合、乱尺品を採取し、残長部(スクラップ部)を最小にするものである。これにより、歩留まりが向上する。
【0052】
図6(a)は、不良部を成品に含む処理を示す。図6(a)は、一の不良部とこれに続く他の一の不良部との間に乱尺品等の成品採取が可能であった場合、不良部を切断機で自動切断せず、後工程で不良部を切断し、成品を採取する処理を示す。すなわち、複数ヶ所の不良部を自動切断する場合、その不良部を切断するためにライン速度を下げないといけないため効率が低下する。このため、ライン速度を下げず、後工程で成品を採取するものである。
【0053】
図6(b)は、不良部を製品に含まない処理を示す。図6(b)は、一の不良部とこれに続く他の一の不良部との間に乱尺品等の成品採取が不可能であった場合、複数の不良部を1つの纏まりと考え、スクラップとして処理する。これにより、ライン速度を下げずに効率良く操業することができる。
【0054】
図7〜10は、不良部を含むクロップ部を切断するために、クロップ脱下装置への脱下不可長、脱下可能長、検査場へ取り込み不可長、取り合わせ最大長の各長さを考慮したクロップ部切断処理を示す。なお、図7〜10は、No.1〜17の各ケースでクロップ処理を分けて示すが、最大の目的は、これも、ライン速度を下げずに効率良く操業することである。
【0055】
すなわち、クロップ脱下装置は、スクラップを落とす装置且つ場所であるが、この装置の間口よりもスクラップが長い場合は間口に落とすことが不可能であるという理由によりクロップ脱下装置への脱下不可長(脱下可能長)がある。
【0056】
また、切断された溶接H形鋼は検査場へ搬送されるが、検査場が収納できる本数は限られているため、短いサイズの溶接H形鋼が連続した場合、検査場が満杯となりライン速度を落とさなければいけない事態となるので、検査場を効率良く運用するため、短いサイズが連続した場合には複数本を取り合わせて切断するため、検査場へ取り込み不可長が存在する。
【0057】
さらに、検査場の間口サイズをオーバーしないサイズの溶接H形鋼を搬送するために取り合わせ最大長が存在する。
図7〜10は、これらの各長さを考慮してライン速度を下げずに効率良く操業するための方法を示す。
【0058】
このようにして、本発明によれば、所定の長さを有する溶接H形鋼を、安定した歩留りで、かつ作業工数の増加をできるだけ抑制しながら、製造することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 溶接H形鋼
2 ウェブ材
3a、3b フランジ材
4 フラッシュバット溶接機
5 長尺の溶接H形鋼
6 切断装置
7 所定の長さの溶接H形鋼
8 品質不良部
9 ウェブ疵検出器
10 ウェブ横継ぎ検出器
11 フランジ疵検出器
12 フランジ横継ぎ検出器
13 スパーク検出器
14 偏芯検出器
15 溶接不良検出器
20 本発明に係る製造装置
21 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のウェブ材、および複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のフランジ材を所定の断面形状に組み合わせて溶接を行うことにより長尺の溶接形鋼とし、引き続き搬送される当該長尺の溶接形鋼と同期して走行する切断装置によって当該長尺の溶接形鋼から溶接形鋼を切断して製造する際に、
前記溶接の前の前記ウェブ材およびフランジ材の品質不良部を疵検査装置で検出し、この検出結果と前記複数のコイルの継ぎ部である位置の情報とを合わせて、第1の品質不良部情報を求め、
前記溶接以降に前記長尺の溶接形鋼に発生する溶接不良部を検出する溶接不良部検出装置で検出された溶接不良部の情報を第2の品質不良部情報として求め、
一定の製品長さを有する定尺製品、および、一定の範囲の製品長さを有する乱尺製品それぞれの製品寸法情報を求め、
求めた前記第1の品質不良部情報、前記第2の品質不良部情報、及び製品寸法情報に基づいて、溶接不良部検出装置の設置位置と、前記切断装置による切断位置との間の長さの長尺の溶接形鋼から、前記第1の品質不良部および前記第2の品質不良部を避けて、少なくとも前記定尺製品を採取することを特徴とする溶接形鋼の製造方法。
【請求項2】
前記長尺の溶接形鋼の先端または取り合わせ済み位置から先頭の不良部間において定尺品を複数本採取する請求項1に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項3】
取り合わせ済み位置から先頭の不良部間の残長が許容範囲内となる場合には、不良部前取り合わせを終了する請求項2に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項4】
前記長尺のウェブ材、および前記長尺のフランジ材それぞれのコイルの継ぎ部である横継ぎ部において乱尺品の採取が選択される場合には、定尺を一本取り消し、乱尺品を採取する請求項2または請求項3に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項5】
前記定尺品の取り合わせ済み位置から先頭の不良部間の残長が最小となるように乱尺品を採取する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項6】
一の不良部とこれに続く他の一の不良部との間に乱尺品等の成品採取が可能であった場合に、不良部を前記切断機で切断せず、後工程で不良部を切断し、成品を採取する請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項7】
一の不良部とこれに続く他の一の不良部との間に乱尺品等の成品採取が不可能であった場合、前記二つの不良部をまとめてスクラップとして処理する請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項8】
クロップ脱下装置への脱下不可長、脱下可能長、検査場へ取り込み不可長、取り合わせ最大長の各長さの少なくとも一の長さを考慮して、不良部を含むクロップ部を切断する請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項9】
複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のウェブ材、および複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のフランジ材を所定の断面形状に組み合わせて溶接することにより長尺の溶接形鋼とするフラッシュバット溶接機と、
搬送される前記長尺の溶接形鋼と同期して走行しながら、当該長尺の溶接形鋼から所定の長さを有する溶接形鋼を切断する切断装置と、
切断された所定の長さを有する溶接形鋼の下方に配置されて、該所定の長さを有する溶接形鋼を収容するクロップ脱下装置と、
前記溶接の前の前記ウェブ材およびフランジ材の品質不良部を疵検査装置で検出し、この検出結果と前記複数のコイルの継ぎ部である位置の情報とを合わせて、第1の品質不良部情報を求め、前記溶接以降に前記長尺の溶接形鋼に発生する溶接不良部を検出する溶接不良部検出装置で検出された溶接不良部の情報を第2の品質不良部情報として求め、さらに、一定の製品長さを有する定尺製品、および、一定の範囲の製品長さを有する乱尺製品それぞれの製品寸法情報を求め、求めた前記第1の品質不良部情報、前記第2の品質不良部情報、及び製品寸法情報に基づいて、溶接不良部検出装置の設置位置と、前記切断装置による切断位置との間の長さの長尺の溶接形鋼から、前記第1の品質不良部および前記第2の品質不良部を避けて、少なくとも前記定択製品を切り出すように、前記切断装置を制御する制御装置と
を備えることを特徴とする溶接形鋼の製造装置。
【請求項1】
複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のウェブ材、および複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のフランジ材を所定の断面形状に組み合わせて溶接を行うことにより長尺の溶接形鋼とし、引き続き搬送される当該長尺の溶接形鋼と同期して走行する切断装置によって当該長尺の溶接形鋼から溶接形鋼を切断して製造する際に、
前記溶接の前の前記ウェブ材およびフランジ材の品質不良部を疵検査装置で検出し、この検出結果と前記複数のコイルの継ぎ部である位置の情報とを合わせて、第1の品質不良部情報を求め、
前記溶接以降に前記長尺の溶接形鋼に発生する溶接不良部を検出する溶接不良部検出装置で検出された溶接不良部の情報を第2の品質不良部情報として求め、
一定の製品長さを有する定尺製品、および、一定の範囲の製品長さを有する乱尺製品それぞれの製品寸法情報を求め、
求めた前記第1の品質不良部情報、前記第2の品質不良部情報、及び製品寸法情報に基づいて、溶接不良部検出装置の設置位置と、前記切断装置による切断位置との間の長さの長尺の溶接形鋼から、前記第1の品質不良部および前記第2の品質不良部を避けて、少なくとも前記定尺製品を採取することを特徴とする溶接形鋼の製造方法。
【請求項2】
前記長尺の溶接形鋼の先端または取り合わせ済み位置から先頭の不良部間において定尺品を複数本採取する請求項1に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項3】
取り合わせ済み位置から先頭の不良部間の残長が許容範囲内となる場合には、不良部前取り合わせを終了する請求項2に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項4】
前記長尺のウェブ材、および前記長尺のフランジ材それぞれのコイルの継ぎ部である横継ぎ部において乱尺品の採取が選択される場合には、定尺を一本取り消し、乱尺品を採取する請求項2または請求項3に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項5】
前記定尺品の取り合わせ済み位置から先頭の不良部間の残長が最小となるように乱尺品を採取する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項6】
一の不良部とこれに続く他の一の不良部との間に乱尺品等の成品採取が可能であった場合に、不良部を前記切断機で切断せず、後工程で不良部を切断し、成品を採取する請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項7】
一の不良部とこれに続く他の一の不良部との間に乱尺品等の成品採取が不可能であった場合、前記二つの不良部をまとめてスクラップとして処理する請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項8】
クロップ脱下装置への脱下不可長、脱下可能長、検査場へ取り込み不可長、取り合わせ最大長の各長さの少なくとも一の長さを考慮して、不良部を含むクロップ部を切断する請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項9】
複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のウェブ材、および複数のコイルを継いで構成されるとともにその長手方向へ送給される長尺のフランジ材を所定の断面形状に組み合わせて溶接することにより長尺の溶接形鋼とするフラッシュバット溶接機と、
搬送される前記長尺の溶接形鋼と同期して走行しながら、当該長尺の溶接形鋼から所定の長さを有する溶接形鋼を切断する切断装置と、
切断された所定の長さを有する溶接形鋼の下方に配置されて、該所定の長さを有する溶接形鋼を収容するクロップ脱下装置と、
前記溶接の前の前記ウェブ材およびフランジ材の品質不良部を疵検査装置で検出し、この検出結果と前記複数のコイルの継ぎ部である位置の情報とを合わせて、第1の品質不良部情報を求め、前記溶接以降に前記長尺の溶接形鋼に発生する溶接不良部を検出する溶接不良部検出装置で検出された溶接不良部の情報を第2の品質不良部情報として求め、さらに、一定の製品長さを有する定尺製品、および、一定の範囲の製品長さを有する乱尺製品それぞれの製品寸法情報を求め、求めた前記第1の品質不良部情報、前記第2の品質不良部情報、及び製品寸法情報に基づいて、溶接不良部検出装置の設置位置と、前記切断装置による切断位置との間の長さの長尺の溶接形鋼から、前記第1の品質不良部および前記第2の品質不良部を避けて、少なくとも前記定択製品を切り出すように、前記切断装置を制御する制御装置と
を備えることを特徴とする溶接形鋼の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−40654(P2012−40654A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185177(P2010−185177)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】
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