説明

溶接用シールドガス

【課題】 ランニングコストが低廉でかつ、高い溶接性能をえることのできる新しい組成のシールドガスを提供する。
【解決手段】 軟鋼や低合金鋼のガスシールドアーク溶接に使用するシールドガスであって、窒素ガスと炭酸ガスとの二成分系の混合ガスであり、混合ガスの配合比率を窒素ガス6〜70Vol%、残り炭酸ガスとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスシールドアーク溶接で軟鋼や低合金鋼を溶接する際に使用するシールドガスの組成に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスシールドアーク溶接としては、消耗電極式のシールドガス溶接法であるMIG溶接やMAG溶接、あるいは、非消耗電極式のシールドガス溶接法であるTIG溶接が知られている。これらの溶接方法に使用されるシールドガスとしては、MIG溶接にあってはアルゴンガスをベースに2Vol%程度の酸素ガスを添加した混合ガスが、MAG溶接にあっては、アルゴンガスをベースに20Vol%程度の炭酸ガスを添加した混合ガスが、また、TIG溶接にあっては、アルゴンガスやヘリウムガスが使用されている。
【0003】
そして、軟鋼や490Mpa級高張力鋼あるいは低合金鋼の溶接であってもそのシールドガス組成は大きく異なることはなく、例えば、アルゴンガスをベースに酸素ガスとヘリウムガスの3種ガスの混合ガスを使用する技術が知られている。(特許文献1)
【特許文献1】特開平11−291040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来のものも、不活性ガスであるアルゴンガス及びヘリウムガスを90Vol%以上使用していることから、ランニングコストが高く、経済的ではないという問題があった。また、炭酸ガスをシールドガスとして使用するガスシールドアーク溶接も知られているが、炭酸ガスは地球温暖化の要因とされ、環境汚染の原因となるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、ランニングコストが低廉でかつ、高い溶接性能をえることのできる新しい組成のシールドガスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために本発明は軟鋼や低合金鋼の溶接用のシールドガスを、窒素ガスと炭酸ガスとの混合ガスで構成し、混合ガスの配合比率を窒素ガス6〜70Vol%、残り炭酸ガスとしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、ガスシールドアーク溶接に使用するシールドガスを窒素ガスと炭酸ガスとの混合ガスで構成し、混合ガスの配合比率を窒素ガス6〜70Vol%、残り炭酸ガスとしていることから、コスト的に安価でありかつ、環境にやさしいものでながら、従来の不活性ガスをベースとするシールドガスを使用した溶接と遜色のない溶接結果を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る軟鋼溶接用シールドガスは、炭酸ガスと窒素ガスとの混合ガスで構成してあり、主として、MIG溶接やMAG溶接等の消耗電極式シールドガス溶接法に適用される。
【実施例】
【0009】
板厚2.3mmの軟鋼板(SS400)の突き合わせ部を、Ti・Al入りの1.2mmφ溶接ワイヤを使用して、溶接電流を100Aに固定するとともに、溶接速度を30cm/minに固定し、窒素ガスと炭酸ガスの混合割合を変化させてMAG溶接機を使用して溶接した。この場合、窒素ガス混合量は95Vol%から70Vol%までは5Vol%ごとに、70Vol%以下では10Vol%ごとに変化させた。
【0010】
その結果を、溶接部でのブローホール発生状態による溶接評価として図1に示す。
図1によれば、窒素ガス濃度が70Vol%よりも多い場合には、アークが安定せず、溶接部表面や溶接部内にブローホールが多数見られ、溶接の評価として不可であった。
【0011】
図1の結果から、窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスで窒素ガスの混合割合が70Vol%よりも少ない場合には、溶接欠陥の発生を少なくすることができ、アルゴンガス等の不活性ガスをベースとする混合ガスを使用するものと遜色のない溶接を行うことができ、溶接用シールドガスとして十分使用することができることがわかる。
【0012】
また、炭酸ガスは地球温暖化に影響を及ぼすガスとして知られていることから、炭酸ガスの混入割合は少ないほうがよいが、京都議定書での炭酸ガス削減目標である6%以上削減することで地球環境にやさしい溶接用シールドガスとすることができる。
【0013】
なお、溶接用シールドガスとして使用する混合ガスは、窒素ガスボンベや液体窒素貯蔵容器等の高純度の窒素ガスを貯蔵している窒素ガス貯蔵容器からの窒素ガスと、炭酸ガスガスボンベ等の炭酸ガス貯蔵容器からの炭酸ガスとを溶接現場で、窒素ガスの混合濃度が70〜6Vol%となるように混合して使用したり、予め窒素ガスの混合濃度が70〜6Vol%のうちの所要の濃度に調整されて貯蔵されている炭酸ガス−窒素混合ガス容器から取り出して使用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、軟鋼や490Mpa級高張力鋼あるいは低合金鋼の消耗電極式ガスシールドアーク溶接法のシールドガスとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】シールドガス中の混合割合によるブローホールの有無によるによる溶接評価を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟鋼や低合金鋼のガスシールドアーク溶接に使用するシールドガスであって、窒素ガスと炭酸ガスとの混合ガスであり、混合ガスの配合比率を窒素ガス6〜70Vol%、残り炭酸ガスとしたことを特徴とする溶接用シールドガス。


【図1】
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【公開番号】特開2006−82094(P2006−82094A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266944(P2004−266944)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000158301)岩谷瓦斯株式会社 (56)
【Fターム(参考)】