説明

溶接装置

【課題】電極板を溶接するときの固体粒子の飛散を抑制する。
【解決手段】本発明の溶接装置50は、電池セルの一部を構成する正極板及び負極板の少なくとも一方の電極板の溶接対象部に溶接を行う溶接装置である。電極板に溶接を施すときに、電極板の溶接対象部27が収容される溶接室60と、溶接室60の内部60aで溶接対象部27を溶接する溶接処理部70と、溶接室60の内部60aから吸気する吸気部80と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルの電極板を溶接するための溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池セルは、電気自動車や定置用電源装置、発電装置等の各種の電気システムに用いられている。電池セルの一例として、積層型の電池セルが知られている。積層型の電池セルは、正極の電極板と負極の電極板とが、セパレータを介して交互に繰り返し積層された電極体を有する。電極板は、集電材の両面に電極活物質層が形成された構造である。一般に、電極板は、電極活物質層の非形成領域(例えばタブ)を有する。複数の電極板は、正極又は負極ごとにタブが束ねられてリード等と接合され、リードを介して外部接続用の電極端子等と電気的に接続される。
【0003】
タブの接合方法としては、例えば特許文献1に開示されている超音波溶接法等の溶接法が挙げられる。超音波溶接装置は、アンビルとホーンとの間にタブを挟み込んで加圧するとともに、ホーンからタブに超音波振動を付与する。超音波溶接装置は、タブを互いに押し合わせた状態で擦り合わせることにより、タブを溶接可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−134971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な溶接法(例えば、レーザー溶接、MAG溶接など)では、溶接時のスパッタ等に起因して、金属粒子等の固体粒子が発生する。また、超音波溶接法にあっては、タブ等の溶接対象部が擦り合わされることによって、金属粒子が発生する。上述の従来技術において、溶接時に発生した金属粒子は、例えば電極体に付着して電池セルの内部に残留することがありえる。金属粒子が電池セルの内部に残留すると、金属粒子を介して短絡が生じる可能性がある。また、金属粒子が、溶接装置の内部や溶接装置の外部の設備に飛散し、溶接装置や設備のメンテナンスに要する手間やコストが増加する可能性もある。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑み成されたものであって、電極板を溶接するときの固体粒子の飛散を抑制することが可能な溶接装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の溶接装置は、電池セルの一部を構成する正極板及び負極板の少なくとも一方の電極板の溶接対象部に溶接を行う溶接装置であって、前記電極板に溶接を施すときに、前記電極板の溶接対象部が収容される溶接室と、前記溶接室の内部で前記溶接対象部を溶接する溶接処理部と、前記溶接室の内部から吸気する吸気部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記の溶接装置は、電極板に溶接を施すときに、電極板の溶接対象部が収容される溶接室の内部で、溶接処理部が溶接対象部を溶接し、吸気部が溶接室の内部から吸気するので、一方の電極板を溶接するときの固体粒子を効果的に回収することができ、固体粒子の飛散が抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極板を溶接するときの固体粒子の飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】電池セルの構成例を示す説明図である。
【図2】(a)は電極体の平面図、(b)は電極体の断面図である。
【図3】第1実施形態の溶接装置を示す平面図である。
【図4】第1実施形態の溶接装置を示す側面図である。
【図5】第1実施形態の溶接装置を示す断面図である。
【図6】第1実施形態における通気部材を示す説明図である。
【図7】第1実施形態の溶接装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態の溶接装置を示す平面図である。
【図9】第2実施形態の溶接装置を示す断面図である。
【図10】第3実施形態の溶接装置を示す平面図である。
【図11】第3実施形態の溶接装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[電池セル]
図1は、電池セルの構成例を示す説明図、図2(a)は電極板の積層方向からみた電極体の平面図、図2(b)は図2(a)のA−A’線断面図である。図1及び図2に示す電池セル1は、例えばリチウムイオン二次電池である。電池セル1は、電池容器2、電極体3、正極端子4、及び負極端子5を備える。電池セル1は、電池容器2の内側に電解液が貯留された状態で使用される。
【0012】
電池容器2は、容器本体9及び蓋体10を有する。本実施形態の容器本体9は、開口9aを有する箱形状である。蓋体10は、容器本体9の開口9aを塞いでいる。蓋体10は、容器本体9と溶接等によって接合されている。容器本体9及び蓋体10は、例えばアルミニウム製である。なお、本発明の適用範囲は、電池容器2の形状や材質に限定されない。電池容器2の外面や内面に、絶縁性の塗料等で塗装が施されていてもよい。
【0013】
電極体3は、電池容器2に収容されている。電極体3は、複数の正極の電極板(以下、正極板6という)、複数の負極の電極板(以下、負極板7という)、セパレータ8、リード(導電部材)25、及びリード(導電部材)35を有する。電極体3において、正極板6及び負極板7は、セパレータ8を介して交互に繰り返し積層されている。
【0014】
複数の正極板6は、リード25を介して、正極端子4と電気的に接続されている。複数の負極板7は、リード35を介して、負極端子5と電気的に接続されている。正極端子4は、絶縁スリーブ12を介して電池容器2の蓋体10に取付けられている。負極端子5は、絶縁スリーブ13を介して電池容器2の蓋体10に取付けられている。電池セル1は、正極端子4及び負極端子5を介して、電池セル1の外部との間で充放電可能である。
【0015】
本実施形態のセパレータ8は、フィルム状の部材を折り曲げ縁部同士が互いに対向する袋形状に形成されている。本実施形態において、セパレータ8は、負極板7を包装している。本実施形態において、負極板7を包装したセパレータ8と正極板6とが交互に積層されている。これにより、隣り合う正極板6と負極板7との間に袋状のセパレータ8の互いに対向するフィルム状の部材の一方が介装されることとなる。このように、電極体3は、正極板6と負極板7とが互いに接触しないように構成されている。なお、正極板6がセパレータ8に包装されていてもよい。また、セパレータは、正極板6と負極板7との間ごとに独立した部材を介装する構成であっても構わない。
【0016】
電極体3の縁端には、絶縁性の固定部材11が設けられている。固定部材11は、互いに積層された正極板6と負極板7とセパレータ8とを互いに固定する。本実施形態の固定部材11は、固定用テープであり、電極体3の側面のうちで電極板の積層方向(S方向)に沿う側面に貼設されている。固定部材11は、電極体3のT方向の両縁端のそれぞれに配置されている。固定部材11は、電極体3の各縁端においてU方向の複数箇所に配置されている。
【0017】
図2(a)及び図2(b)に示すように、正極板6は、集電材22の両面に電極活物質層23が形成された構造である。正極板6は、電極活物質層23が形成されている本体部20と、電極活物質層23が形成されていない領域を含むタブ21とを有する。本体部20は、例えば平面視略矩形である。タブ21は、例えば帯状であり、本体部20からU方向に延びている。集電材22は、導電性の薄板やシートである。本実施形態の集電材22は、アルミニウム製のシートである。電極活物質層23は、正極活物質で形成されている。正極活物質は、電池容器2の内部に貯留される電解液の種類等に応じて、適宜選択される。
【0018】
電極体3を構成する複数の正極板6のそれぞれのタブ21は、タブ21の先端側で束ねられてタブ束24を形成している。複数の正極板6のそれぞれのタブ21が束ねられたタブ束24は、リード25と溶接部26にて溶接されている。リード25は、例えば帯状であり、正極板6のタブ21と溶接された端部とは反対側の端部が正極端子4と接合されている。すなわち、正極板6は、リード25を介して正極端子4と電気的に接続されている。
【0019】
負極板7は、正極板6と同様の形状及び寸法であり、集電材32の両面に電極活物質層33が形成された構造である。負極板7は、電極活物質層33が形成されている本体部30と、電極活物質層33が形成されていない領域を含むタブ31とを有する。複数の負極板7は、タブ31の先端側で束ねられてダブ束34を形成している。複数の負極板7のそれぞれのタブ31が束ねられたタブ束34は、リード35と溶接部36にて溶接されている。負極板7は、リード35を介して負極端子5と電気的に接続されている。本実施形態の集電材32は、銅製のシートである。電極活物質層33は、負極活物質で形成されている。負極活物質は、電池容器2の内部に貯留される電解液の種類等に応じて、適宜選択される。
【0020】
上記の電池セル1の製造方法は、例えば、電極体3を形成する工程と、蓋体10に取り付けられた電極端子と電極体3のリードとを電気的に接続する工程と、電極端子と電気的に接続された電極体3を容器本体9に収容して容器本体9と蓋体10とを接合する工程と、電池容器2の内部に電解液を注入する工程と、を有する。上記の電極体3を形成する工程は、例えば正極板6と負極板7とがセパレータ8を介して繰り返し積層された積層体を形成する工程と、積層体を構成する複数の正極板6のタブ21を束ねたタブ束24とリード25を溶接する第1溶接工程と、積層体を構成する複数の負極板7のタブ31を束ねたタブ束34とリード35を溶接する第2溶接工程と、を有する。次に説明する溶接装置は、上記の第1溶接工程と第2溶接工程の少なくとも一方で用いられる。下記の実施形態では、正極のタブ束24を溶接する場合を例に説明するが、負極のタブ束34を溶接する場合も同様である。
【0021】
[第1実施形態]
図3は第1実施形態の溶接装置の構成を模式的に示す平面図、図4は、第1実施形態の溶接装置の構成を模式的に示す側面図、図5は図3のB−B’線断面図、図6は通気部材の平面図である。
【0022】
第1実施形態の溶接装置(溶接システム)50は、溶接室60、溶接処理部70、吸気部80、及び溶接装置50の各部を制御する制御部51を備える。本実施形態の溶接装置50は、リード25とリード35の少なくとも一方が、溶接される前の電極体(以下、積層体3aという)に対して、超音波溶接により溶接を施すことができる。本実施形態において、溶接が施される溶接対象部27は、積層体3aに含まれる複数の正極板6においてタブ21(正極のタブ束24)の先端側に設定されている。溶接対象部27は、溶接後に、図2に示した溶接部26になる。溶接装置50は、正極板6と負極板7のうちの一方の電極板(ここでは正極板6)を溶接するときに、正極板6と負極板7のうちの一方の電極板(ここでは正極板6)のみの溶接対象部27を溶接室60の内部60aに収容して、溶接室60の内部60aで溶接対象部27を溶接処理部70により溶接する。
【0023】
溶接室60の内部60aには、溶接対象部27の摩擦や溶接時のスパッタ等によって、金属粒子(固体粒子)が発生することがある。溶接装置50は、吸気部80によって溶接室60の内部60aを吸気し、溶接室60の内部60aのガスGとともに溶接室60の内部60aの金属粒子を回収可能である。溶接室60の壁部は、溶接室60の外部60bから内部60aへガスGが流入可能な通気部材61を有する。吸気部80の吸気に伴って、溶接室60の外部のガスGは、通気部材61を通って溶接室60の内部60aに流入する。通気部材61は、溶接室の内部60aから外部60bに金属粒子が流出することを抑制可能である。
【0024】
次に、本実施形態の溶接装置50の構成要素について詳しく説明する。
本実施形態の溶接装置50は、ステージ52及び固定部53を備える。積層体3aは、例えば搬送ロボットR(図4参照)によって電池セル1の製造ラインの上流側から、ステージ52の上面52aの所定の位置に搬入(ロード)される。搬送ロボットRは、積層体3aの電極板の積層方向を上面52aの法線方向に向けて、積層体3aを上面52aに載置する。本実施形態において、正極のタブ束24及び負極のタブ束34のそれぞれの先端部は、上面52aに接触して配置される。搬送ロボットRは、溶接後の積層体3a又は電極体3を、ステージ52から搬出(アンロード)することができる。
【0025】
以下の説明では、図3等に示すXYZ座標系を参照して、各部の位置関係等を説明する。このXYZ直交座標系において、Z方向は積層体3aにおける電極板の積層方向であり、Y方向は後述する電極本体部3bから正極のタブ束24及び負極のタブ束34が突出する方向、X方向は正極のタブ束24と負極のタブ束34とが隣接する方向である。
【0026】
本実施形態の搬送ロボットRは、積層体3aを把持可能なロボットハンドHを備える。搬送ロボットRは、ロボットハンドHで積層体3aを把持して搬送可能である。本実施形態のロボットハンドHは、積層体3aを把持して、正極のタブ束24が突出する方向と平行な方向(Y方向)の軸周りに積層体3aを回転もしくは、X方向に移動可能である。ここでは、ロボットハンドHは、積層体3aの上下関係が反転するように、積層体3aを回転可能もしくは、X方向に移動可能である。
【0027】
なお、搬送ロボットRは、溶接装置50の一部でもよいし、溶接装置50の外部の装置でもよい。固定部53は、搬送ロボットRの一部でもよい。例えば、搬送ロボットRは、ロボットハンドHで積層体3aを把持した状態でステージ52の所定の位置に移動することによって、積層体3aをステージ52に対して固定してもよい。積層体3aは、上記の搬送ロボットRの代わりに、手動でステージ52の上面52aに載置されても構わない。積層体3aは、上記の搬送ロボットRの代わりに、ステージ52から手動で搬送されても構わない。
【0028】
固定部53は、ステージ52に積層体3aを着脱可能に固定する。溶接装置50の制御部51は、固定部53を制御してステージ52に積層体3aを固定させる。本実施形態の固定部53は、押圧板54及び押圧板駆動部55を有する。押圧板54は、ステージ52の上面52aを向く下面54aを有する。押圧板駆動部55は、制御部51に制御されて押圧板54を、ステージ52の上面52aに対して積層体3aにおける電極板の積層方向(Z方向)に進退移動させる。
【0029】
ステージ52に積層体3aが配置されているときに、押圧板駆動部55は、押圧板54の下面54aが積層体3aをステージ52の上面52aに向かって(−Z方向)押圧するように、押圧板54を下方に移動可能である。押圧板54は、積層体3aにおいて、複数の正極板6の本体部20及び複数の負極板7の本体部30が積層された部分(以下、電極本体部3bという)を押圧する。積層体3aは、積層方向にステージ52の上面52aと押し合わされて、ステージ52に固定される。積層体3aは、正極のタブ束24と負極のタブ束34が上面52aに平行な方向に並ぶように、固定される。押圧板駆動部55は、押圧板54の下面54aが積層体3aに接触しているときに、押圧板54を上方に移動させて、積層体3aの固定を解除することができる。また押圧板駆動部55による積層体3aの押圧の代わりに、ステージ52上において手動で固定しても構わない。
【0030】
なお、積層体3aにおいて、複数の電極板の互いの相対位置が固定部材11(図1参照)等によって固定されており、固定部53は、積層体3aを減圧吸着により着脱可能に固定する構成でもよい。積層体3aは、積層体3aを保護する保護部材を介して、固定されてもよい。
【0031】
本実施形態の溶接室60は、ステージ52の上面52aに配置可能である。溶接室60は、少なくとも溶接時に、積層体3aの固定位置からタブ束24の突出方向(+Y方向)に配置される。溶接室60は、タブ束24の溶接対象部27を含む先端部28を収容するように、配置される。溶接室60の内部60aに先端部28が収容された状態で、電極本体部3b及び負極板7のタブ束34が溶接室60の外部に配置されるように、溶接室60の外寸が設定されている。
【0032】
本実施形態の溶接室60は、ステージ52の上面52aに向って開口した略箱形状である。溶接室60は、ステージ52の上面52aと対向して配置される天板部62(図4参照)、及び天板部62と上面52aとの間に環状に配置される側部63(図3参照)を有する。図3では、天板部62の図示を省略している。
【0033】
側部63は、第1側板部64、第2側板部65、第3側板部66、及び通気部材61を有する。図4では、第3側板部66の図示を省略している。第1側板部64、第2側板部65、第3側板部66、及び天板部62は、一体的に形成されている。通気部材61は、天板部62、第1側板部64、及び第2側板部65と接合されている。
【0034】
側部63において天板部62と反対側を向く端面は、ほぼ平面である。この端面がステージ52の上面52aと接触するように、溶接室60は配置される。ステージ52において、溶接室60の側部63と接触する部分の上面52aは、ほぼ平面である。すなわち、溶接室60は、側部63の上記の端面とステージ52の上面52aとの間に隙間が生じないように、ステージ52に配置される。本実施形態において、溶接室60の内部60aは、ステージ52に配置された溶接室60の天板部62、側部63、及びステージ52の上面52aに囲まれる領域を含む。
【0035】
なお、溶接装置50は、溶接室60がステージ52に配置された状態で、側部63の上記の端面とステージ52の上面52aとの間に封止可能な封止部材を備えていてもよい。上記の封止部材は、例えばオーリングであり、溶接室60とステージ52とを押し合わせたときに、側部63の上記の端面とステージ52の上面52aとの間の隙間を埋めるように、弾性変形する。
【0036】
第1側板部64は、電極本体部3bの固定位置(固定部53)からタブ束24の突出方向(+Y方向)に離れて配置される。第1側板部64は、挿通孔64aを有する。本実施形態の挿通孔64aは、ステージ52の上面52aに向って開いた切欠状である。挿通孔64aの内周面64bは、第1側板部64においてステージ52の上面52aと対向する端面と連続している。溶接室60の内部60aにタブ束24の先端部28(図3参照)が収容された状態で、タブ束24の先端部28と電極本体部3bとを繋ぐタブ束24の一部(連続部29)は、挿通孔64aの内側に配置(挿通)される。
【0037】
本実施形態の溶接室60は、挿通孔64aの内周面64bとタブ束24の連続部29の外面との間を塞ぐ第1閉塞部67を有する。第1閉塞部67は、例えばゴム等の絶縁性の弾性材料で形成される。本実施形態の第1閉塞部67は、挿通孔64aの内周の内側と外側とにまたがって、配置されている。第1閉塞部67は、溶接室60の側部63の内周面側に固定されている。第1閉塞部67は、天板部62とは反対側(−Z方向)を向く端面が側部63の上記の端面と略面一である。
【0038】
第1閉塞部67は、溶接室60がステージ52に配置された状態で、タブ束24の連続部29の厚み分だけステージ52に向って押圧されて弾性変形する。第1閉塞部67は、弾性変形の反発力でタブ束24の連続部29と密着する。第1閉塞部67は、挿通孔64aの内周面64bとタブ束24の連続部29の外面との間を、ガスG及び金属粒子の流出が抑制されるように塞ぐことができる。また、第1閉塞部67は、弾性変形の反発力でタブ束24の連続部29をステージ52の上面52aに向って押圧し、連続部29でタブ束24をステージ52の上面52aに固定することができる。
【0039】
なお、第1閉塞部67は、側部63よりも天板部62とは反対側に突出しており、溶接室60をステージ52に配置したときの弾性変形によって側部63の上記の端面と略面一になる構成でもよい。溶接室60がステージ52に配置された状態で、第1閉塞部67とステージ52の上面52aとの間に、隙間があっても構わない。
【0040】
第2側板部65は、第1側板部64に対向して、積層体3aの先端部28を第1側板部64と挟むように配置される。第2側板部65は、溶接室60の内部60aと外部とを結ぶ貫通孔65aを有する。詳しくは後述するが、溶接処理部70の一部(ホーン71)が貫通孔65aに挿通されて、溶接室60の内部に配置される。本実施形態において、貫通孔65aの縁端全体は、第2側板部65の外周よりも内側に配置されている。なお、貫通孔65aは、その縁端の一部が第2側板部65の外周と連続する切欠状でも構わない。
【0041】
通気部材61は、正極のタブ束24と負極のタブ束34との間の、第1側板部64と第2側板部65との間に配置される。図6に示すように、本実施形態の通気部材61は、板状部61a、及び板状部61aに設けられた通気孔61bを有する。板状部61aは、片面側が溶接室60の内部60aに面しており、もう片面側が溶接室60の外部に面している。本実施形態の通気孔61bは、板状部61aの外縁部を除く部分にて、Y方向に延びている。本実施形態において、複数の通気孔61bがZ方向に等間隔で配列されている。
【0042】
図5に示すように、通気孔61bは、通気部材61が面する溶接室60の外部60bから内部60aに向うにつれて、内径が縮小するノズル状である。なお、図5に示す溶接室60の外部60bは、後述する収容室90の内部である。通気孔61bは、溶接室60の内部60a側の開口面積が、溶接室60の外部60b側の開口面積よりも小さい。したがって、金属粒子が溶接室60の内部60aから通気孔61bに入り込みにくくなる。また、溶接室60の外部60bから内部60aに向うガスGの流れと比較して、溶接室60の内部60aから外部60bに向うガスの流れが、通気孔61bに入り込みにくくなる。したがって、金属粒子は、溶接室60の内部60aから外部60bに向うガスの流れに同伴して、通気部材61を通過することが抑制される。また、通気孔61bを通って溶接室60の外部60bから内部60aに向うガスGは、通気孔61bがノズル状であるので、通気孔61bに流入するときと比較して通気孔61bから流出するときの速度が増加する。したがって、通気孔61bから流出するガスの流れに逆らって金属粒子が移動する確率が低くなり、金属粒子が溶接室60の内部60aから通気部材61を通過することが抑制される。
【0043】
第3側板部66は、通気部材61に対向して、積層体3aの先端部28を通気部材61と挟むように配置される。第3側板部66は、溶接室60の内部60aと外部とを結ぶ吸気孔66aを有する。吸気孔66aは、吸気部80と接続されている。溶接室60の内部60aのガスGは、吸気孔66aを通して吸気部80に吸引される。
【0044】
本実施形態の溶接装置50は、溶接室60と隣接して配置された収容室90を備える。本実施形態において、溶接室60及び収容室90は、同一の容器57に設けられている。詳しくは、容器57は、ステージ52の上面52aに向って開口した略箱形状である。容器57の内部には、容器57の内部を2つの部屋に仕切るように、通気部材61が配置されている。2つの部屋の一方が溶接室60であり、他方が収容室90である。すなわち、通気部材61は、溶接室60の壁部と収容室90の壁部とを兼ねている。図5に示すように、本実施形態において、容器57の内部は、溶接室60の内部60a及び収容室90の内部(溶接室60の外部全体のうちの外部60b)を含む。容器57の外部は、溶接室60の外部であって、かつ収容室90の外部である空間を含む。
【0045】
本実施形態の収容室90は、通気部材61に関して溶接室60と対称的に設けられている。収容室90は、図3に示す第1側板部91、第2側板部92、第3側板部93、通気部材61、及び図5に示す天板部94を有する。図3では、天板部94の図示を省略している。第1側板部91は、電極本体部3bの固定位置(固定部53)からタブ束34の突出方向(+Y方向)に離れて配置される。第2側板部92は、第1側板部91に対向して、負極のタブ束34を第1側板部91と挟むように配置される。第3側板部93は、通気部材61に対向して、負極のタブ束34を通気部材61と挟むように配置される。天板部94は、ステージ52の上面52aと対向して配置される。
【0046】
第1側板部91は、挿通孔91aを有する。本実施形態の挿通孔91aは、ステージ52の上面52aに向って開いた切欠状である。本実施形態において、収容室90の挿通孔91aは、溶接室60の挿通孔64aよりも大口径である。溶接室60に正極のタブ束24の溶接対象部27が収容されたときに、負極のタブ束34は、通気部材61に対して正極のタブ束24と対称的に、収容室90の内部に収容される。積層体3aが積層方向の上下を反転させてステージ52に配置される場合に、負極のタブ束34の溶接対象部が溶接室60に収容されると、正極のタブ束24の溶接対象部27は収容室90に収容される。
【0047】
なお、収容室90は、正極のタブ束24の溶接対象部27が溶接室60の内部60aに収容されているときに、負極のタブ束34の全部を収容可能であってもよいし、負極のタブ束34の全部と、電極本体部3bの一部又は全部とを収容可能であってもよい。
【0048】
本実施形態の溶接装置50は、容器57を移動可能な容器移動部100を備える。図4に示すように、容器移動部100は、容器57の天板部に接続されたアーム101、及びアーム101を駆動するアーム駆動部102を有する。容器57の天板部は、溶接室60の天板部62及び収容室90の天板部94である。本実施形態のアーム駆動部102は、アーム101をX方向、Y方向及びZ方向の3方向に移動させることができる。容器移動部100は、容器57を移動させてステージ52に配置することができる。
【0049】
制御部51は、アーム駆動部102を制御してアーム101を移動させ、容器57の位置を制御可能である。制御部51は、溶接室60の内部にタブ束24の溶接対象部27が収容されるように、容器57の位置を制御可能である。本実施形態の制御部51は、固定部53による積層体3aの固定位置から求まるタブ束24のステージ52上での位置に基づいて、容器57の位置を制御する。ただし、手動による位置調整・移動でも構わない。
【0050】
なお、溶接装置50は、ステージ52上のタブ束24の位置を検出する位置検出センサ、例えばイメージセンサ等を備えていてもよい。制御部51は、位置検出センサの検出結果に基づいて、容器57の位置を制御してもよい。溶接装置50は、位置検出センサの検出結果を解析する解析部を備えていてもよく、例えば、上記位置検出センサがイメージセンサであって、上記の解析部が画像解析部であってもよい。制御部51は、上記の解析部を有していてもよい。
【0051】
本実施形態の溶接装置50は、ステージ52に配置されたリード移動部58を備える。リード移動部58は、リード25を移動させることができる。本実施形態のリード移動部58は、溶接室60がステージ52に配置されたときに、溶接室60の内部60aに配置される。制御部51は、ステージ52に配置された積層体3aの溶接対象部27にリード25が重なるように、リード移動部58を制御してリード25を移動させることができる。溶接装置50が上記の位置検出センサを備えている場合に、制御部51は、位置検出センサに基づいてリード移動部58を制御してもよい。
【0052】
溶接処理部70は、ホーン(溶融処理部)71、ホーン駆動部72、及び第2閉塞部73を有する。本実施形態のホーン駆動部72は、ステージ52上の溶接室60の外部に配置されている。ホーン71は、ホーン駆動部72に接続されている。ホーン71は、溶接時に、溶接室60の外部から内部60aに延びて配置される。第2閉塞部73は、溶接室60の外部においてホーン71に取付けられている。
【0053】
ホーン71は、貫通孔65aに挿通されてY方向に延びる第1部分74と、第1部分74からステージ52の上面52aに向って延びる第2部分75とを有する。ホーン駆動部72は、ホーン71を移動可能なホーン移動部(移動部)76、及びホーン71に超音波振動を付与可能な振動付与部77を有する。
【0054】
本実施形態のホーン移動部76は、ホーン71をY方向及びZ方向に移動可能である。ホーン移動部76は、ホーン71の第2部分75が溶接対象部27をステージ52の上面52aに向けて押圧するように、ホーン71を移動可能である。振動付与部77は、ホーン71の第2部分75の先端面75aが溶接対象部27に接触しているときに、ホーン71を介して溶接対象部27に超音波振動を付与することができる。
【0055】
第2閉塞部73は、ホーン71の第1部分74に取付けられている。第2閉塞部73は、ホーン71に付随して移動する。ホーン71の第2部分75の先端面75aが溶接対象部27に接触しているときに、第2閉塞部73が溶接室60の第2側板部65と接触するように、ホーン71に対する第2閉塞部73の相対位置が設定されている。
【0056】
本実施形態の第2閉塞部73は、略板状である。図5に示すように、第2閉塞部73は、その外周全体が第2側板部65の貫通孔65aの内周65bよりも外側に張り出すことが可能なように、形状及び寸法が設定されている。第2閉塞部73は、少なくともホーン71の第2部分75が溶接対象部27に接触しているときに、ホーン71の第1部分74のうちで貫通孔65aに挿通されている部分と、溶接室60の外部側の貫通孔65aの内周との間を、ガスG及び金属粒子が溶接室60の外部に向って流出しないように、塞ぐことができる。本実施形態では、ホーン71の第1部分が貫通孔65aの内側を貫通孔65aの径方向(X方向及びZ方向)に移動したときにも同様に、第2閉塞部73が第1部分74と貫通孔65aの内周65bとの間を塞ぐように、第2閉塞部73の寸法がホーン71の可動範囲の分だけ貫通孔65aの内径よりも大きく設定されている。
【0057】
なお、ホーン71の第2部分75が溶接対象部27に接触しているときに、ホーン71の第1部分74と、溶接室60の外部側の貫通孔65aの内周との間に隙間があっても構わない。ホーン71の第2部分75が溶接対象部27から離れているときに、例えば溶接室60の内部60aを吸気していないときに、第2閉塞部73は、ホーン71の第1部分74と、溶接室60の貫通孔65aの内周との間を塞いでいなくとも構わない。
【0058】
制御部51は、ホーン移動部76を制御して、ホーン71を移動させることができる。制御部51は、ホーン71が溶接室60の外部に配置されているときに、ホーン71が溶接室60の貫通孔65aに挿通されて、第2部分75が溶接室60の内部60aに配置されるように、ホーン移動部76を制御可能である。制御部51は、第2部分75が溶接室60の内部に配置されているときに、第2部分75の先端面75aが溶接対象部27を押圧するように、ホーン移動部76を制御可能である。制御部51は、第2部分75の先端面75aが溶接対象部27を押圧しているときに、ホーン71を介して溶接対象部27に超音波振動が付与されるように、振動付与部77を制御可能である。制御部51は、溶接後の溶接対象部27(溶接部26)から第2部分75の先端面75aが離れるように、ホーン移動部76を制御可能である。
【0059】
本実施形態の吸気部80は、吸気本体部81と、溶接室60の内部60aからガスGを吸気本体部81に導く通気管82を有する。通気管82の一端は、溶接室60の第3側板部66に設けられた吸気孔66aに接続されている。通気管82の他端は、吸気本体部81に接続されている。溶接室60の内部60aのガスGは、吸気孔66a及び通気管82の内部を通って、吸気本体部81へ流れることができる。
【0060】
本実施形態の通気管82は、屈曲可能な材料で形成されており、吸気孔66aに接続された状態で溶接室60に追従して、移動可能である。吸気本体部81は、例えば、溶接室60の内部60aからのガスGに同伴した金属粒子を回収可能なフィルタ、及びフィルタを介してガスGを吸引可能なポンプ等の吸引器を有する。なお、通気管82が、ステージ52と固定されており、溶接室60がステージ52に配置されることによって吸気孔66aと接続される構成でも構わない。この場合に、通気管82は、実質的に変形しない材料で形成されていても構わない。
【0061】
制御部51は、吸気本体部81を制御して、溶接室60の内部60aのガスGを吸気孔66aから吸引させることができる。制御部51は、溶接前にガスGの吸引を吸気本体部81に開始させることができる。制御部51は、溶接後に、吸気本体部81によるガスGの吸引を停止させることができる。
【0062】
本実施形態の制御部51は、メモリ及びCPU等を有するコンピュータシステムと、ハードディスク等の不揮発性の記憶媒体と、コンピュータシステムの外部の装置との通信を実行可能なインターフェースと有する。上記の記憶媒体には、コンピュータシステムを制御するオペレーティングシステム(OS)がインストールされている。上記の記憶媒体には、上述したような溶接装置50の各部の動作の制御を、制御部51に実行させるプログラムが記録されている。
【0063】
なお、制御部51は、溶接装置50の各部の制御に要する各種処理を実行するBASIC等の論理回路を含んでいてもよい。制御部51の機能は、ソフトウエアで実現されてもよいし、ハードウエアで実現されてもよく、ハードウエアとソフトウエアとの組合せで実現されても構わない。また、制御部51に、入力信号を入力可能な入力装置が接続されていてもよい。入力装置は、キーボード、マウス等の入力機器、あるいはコンピュータシステムの外部の装置からのデータを入力可能な通信装置等を含む。制御部51は、液晶表示ディスプレイ等の表示装置を含んでいてもよいし、表示装置と接続されていてもよい。
【0064】
次に、図7を参照しつつ、溶接を行うときの溶接装置50の一連の動作について説明する。図7は、第1実施形態の溶接装置の動作を示すフローチャートである。上述のように、本実施形態の制御部51は、上記のプログラムにしたがって溶接装置50の各部の動作を制御し、溶接装置50が行う各処理を各部に実行させる。
【0065】
本実施形態では、積層体3aがステージ52の上面52aに搬送ロボットRによって載置された後に、制御部51は、固定部53の押圧板駆動部55を制御して、押圧板駆動部55に固定処理を実行させる(ステップS1)。固定処理は、積層体3aをステージ52に固定する処理である。制御部51は、搬送ロボットRの動作を示す情報、例えばロボットハンドHの位置情報に基づいて固定部53を制御してもよいし、上記の位置検出センサ等から得られる情報に基づいて固定部53を制御してもよい。
【0066】
制御部51は、ステップS1の後に容器移動部100を制御して、容器移動部100に容器配置処理を実行させる(ステップS2)。容器配置処理は、溶接対象部27が溶接室60の内部60aに収容(配置)されるように、溶接室60をステージ52に配置する処理である。制御部51は、容器配置処理の後に、リード移動部58を制御してリード移動部58にリード移動処理を実行させる(ステップS3)。リード移動処理は、溶接室60の内部60aに収容された溶接対象部27にリード25が重なるように、リード25を移動させる処理である。
【0067】
制御部51は、溶接処理部70のホーン71の先端面75aが溶接室60の側部63の外側に配置されている場合に、溶接処理部70のホーン移動部76を制御して、ホーン移動部76に第1移動処理を実行させる(ステップS4)。第1移動処理は、ホーン71の先端面75aが溶接室60の側部63の内側に配置されるように、ホーン71を移動させる処理である。ステップS4は、次のステップS5が実行される前の任意のタイミングで、実行される。例えば、ステップS3とステップS4は、並行して実行されても構わない。
【0068】
制御部51は、リード移動処理の後にホーン71の先端面75aが溶接室60の内部に配置されている状態で、ホーン移動部76を制御してホーン移動部76に第2移動処理を実行させる(ステップS5)。第2移動処理は、溶接対象部27と重なる部分のリード25にホーン71の先端面75aが接触するように、ホーン71を移動させる処理である。本実施形態の制御部51は、ホーン71の先端面75aとステージ52の上面52aとの間に、リード25と溶接対象部27とが挟み込まれて互いに押し合うように、ステップS5でホーン移動部76を制御する。なお、ステップS4とステップS5は、一連の動作でも構わない。
【0069】
制御部51は、ステップS5の後にホーン71によって溶接対象部27が押圧されている状態で、吸気本体部81を制御して吸気本体部81に吸気処理を開始させる(ステップS6)。吸気処理は、溶接室60の内部60aからガスGを吸引する処理である。これにより、図5に示したように、溶接室60の通気部材61が面する溶接室60の外部60b(収容室90の内部)のガスGが、通気部材61の通気孔61bを通って溶接室60の内部60aに流入する。また、収容室90の内部のガスGが溶接室60の内部60aに流入するのに伴って、容器57の外部のガスGが収容室90の挿通孔91aを通って収容室90の内部に流入する。
【0070】
吸気処理において、溶接室60の第1側板部64の挿通孔64aと、挿通孔64aの内側のタブ束24との間が第1閉塞部67によって塞がれるので、容器57の外部のガスは、挿通孔64aを通って溶接室60の内部60aに流入することが抑制される。同様理由により、容器57の外部のガスは、第2側板部65の貫通孔65aが第2閉塞部73によって塞がれるので容器57の内部に流入することが抑制される。したがって、容器57の外部のガスGは、収容室90の挿通孔91aから収容室90の内部及び通気部材61を経由して、溶接室60の内部60aに流入するようになる。本実施形態において、通気部材61に対向する第3側板部66に吸気孔66aが設けられているので、通気孔61bから吸気孔66aへのガスGの流れがよどみにくくなる。したがって、溶接室60の内部60aの金属粒子がガスGに同伴して吸気部80へ移動しやすくなり、金属粒子を効果的に回収することができる。
【0071】
制御部51は、吸気処理の実行中に、溶接処理部70の振動付与部77を制御して、振動付与部77に溶接処理(第1溶接工程)を実行させる(ステップS7)。溶接処理は、ホーン71を介して溶接対象部27とリード25とを振動させる処理である。溶接処理において、溶接対象部27とリード25は、互いに押し合わされた状態で擦り合わされて、互いに溶接される。溶接処理において、溶接対象部27に含まれる複数の正極のタブ21は、互いに押し合わされた状態で擦り合わされて、互いに溶接される。このようにして、図2に示した溶接部26が形成される。
【0072】
溶接処理中に発生した金属粒子は、吸気部80へ吸引されるガスGに同伴して、吸気部80によって回収される。したがって、金属粒子は、溶接室60の外部へ飛散することが抑制される。また、上述のように、第1側板部64の挿通孔64aが塞がれているので、金属粒子が挿通孔64aを通って容器57の外部に飛散することが抑制される。また、第2側板部65の貫通孔65aが第2閉塞部73によって塞がれているので、金属粒子が貫通孔65aを通って容器57の外部に飛散することも抑制される。また、通気部材61は、金属粒子が溶接室60の内部60aから外部60b(収容室90の内部)に向って通気部材61を通過することを抑制するので、金属粒子が通気部材61を通って容器57の外部に飛散することも抑制される。また、溶接処理中に、積層体3aの少なくとも負極のタブ束34の一部は、収容室90に収容されており、ガスGの流れにおいて溶接室60よりも上流に配置される。金属粒子は、ガスGの流れに逆流して移動しにくいので、積層体3aの少なくとも負極のタブ束34の一部に金属粒子が付着することが抑制される。
【0073】
制御部51は、溶接対象部27とリード25とが溶接された後に、溶接処理部70の振動付与部77を制御して振動付与部77に溶接処理を停止させる(ステップS8)。制御部51は、溶接処理の停止後に、溶接処理部70のホーン移動部76を制御して、ホーン移動部76に第3移動処理を実行させる(ステップS9)。第3移動処理は、ホーン71の先端面75aが溶接部26から上方に離れるように、ホーン71を移動させる処理である。制御部51は、第3移動処理の後に、吸気本体部81を制御して吸気本体部81に吸気処理を停止させる(ステップS10)。吸気処理の停止は、溶接処理の停止後の任意のタイミングで、実行されてもよい。
【0074】
制御部51は、容器移動部100を制御して、容器移動部100に容器退避処理を実行させる(ステップS11)。容器退避処理は、容器57がステージ52の上面52aから上方に離れるように、容器57を移動させる処理である。制御部51は、ステップS11で必要に応じて、溶接処理部70のホーン移動部76を制御して、ホーン移動部76に第4移動処理を実行させる。第4移動処理は、容器57とホーン71とが干渉しないようにホーンを上方に移動させる処理である。制御部51は、容器退避処理の後に、固定部53の押圧板駆動部55を制御して押圧板駆動部55に固定解除処理を実行させる。固定解除処理は、溶接後の積層体3aに対するステージ52との固定を解除する処理である。
【0075】
なお、上記の第3移動処理と第4移動処理は、一連の動作でも構わない。また、制御部51は、ホーン移動部76を制御してホーン移動部76にホーン退避処理を実行させた後に、上記の容器退避処理を実行させてもよい。ホーン退避処理は、ホーン71を溶接室60の内部60aから第2側板部65の貫通孔65aを通して容器57の外部に退避させる処理である。この場合に、制御部51は、容器退避処理の開始前まで吸気部80に吸気処理を継続させてもよい。
【0076】
本実施形態において、制御部51は、固定解除処理の後に搬送ロボットRを制御して、溶接後の積層体3aの上下を反転させる反転処理もしくは横移動させる処理を搬送ロボットRに実行させる。搬送ロボットRは、反転処理の前に正極のタブ束24が配置されていたステージ52上の位置に、負極のタブ束34が配置されるように、溶接後の積層体3aの上下を反転させるかもしくはX方向に横移動させる。制御部51は、反転処理の後に上記のステップS1〜S11と同様の処理を溶接装置50の各部に実行させて、負極のタブ束34とリード35とを溶接する処理(第2溶接工程)を実行させる。これにより、図2に示した正極のタブ束24の溶接部26及び負極のタブ束34の溶接部36が形成された積層体3a(電極体3)が製造される。製造された電極体3は、例えば搬送ロボットRによってステージ52から電池セル1の製造ラインの下流側へ、搬出される。
【0077】
以上のように第1実施形態の溶接装置50は、正極板6の溶接対象部27が溶接室60の内部60aに収容された状態で、溶接処理部70が溶接対象部27を溶接し、吸気部80が溶接室60の内部60aから吸気する。したがって、正極板6を溶接するときの金属粒子を効果的に回収することができ、金属粒子の飛散が抑制される。また、負極板7のタブ31を溶接するときにも、同様の理由により、金属粒子の飛散が抑制される。したがって、金属粒子が電極体3に付着することが抑制され、電池容器2の内部に金属粒子が混入し難くなる。よって、金属粒子によって正極板6と負極板7とが短絡すること等が抑制され、電池セル1の信頼性を高めること等ができる。また、金属粒子の飛散が抑制されるので、溶接装置50や溶接装置50が配置される設備等において、金属粒子を除去するためのメンテナンスを簡略化すること等もできる。
【0078】
なお、第1実施形態の溶接装置50は、溶接室60に隣接する収容室90を備えているが、収容室90を備えていなくともよい。これにより、溶接室60の移動に必要な力を減らすことができ、例えば容器移動部100を小型にすることができる。
また、第1実施形態において、通気部材61は、等間隔で配列された複数の通気孔を有しているが、複数の通気孔61bの間隔が一様でなくとも構わない。例えば、通気孔61bは、通気部材61の中心部付近に密集して(各通気孔61同士の間隔を狭く)配置されてもよい。一般に金属粒子はガスよりも比重が大きいので、溶接室60において下方に向うほど金属粒子が存在する確率は高くなると考えられる。溶接室60の下方側の通気孔61bの数を減らすことによって、金属粒子が通気孔61b通る確率を下げることできる。また、通気部材61の通気孔61bの数は、1つでも構わない。
また、第1実施形態の通気部材61は、溶接室60の側部63の一部を構成しているが、天板部62の一部又は全部を構成していてもよい。また、溶接室60が通気部材61を有していない構成でも、吸気部80が溶接室60の内部60aのガスGを吸引することにより、金属粒子の飛散を抑制する効果は得られる。
【0079】
[第2実施形態]
次に、図8及び図9を参照して第2実施形態の溶接装置について説明する。図8は、第2実施形態の溶接装置の構成を模式的に示す平面図、図9は、第2実施形態における溶接室の内部を模式的に示す図である。
【0080】
本実施形態の溶接装置50Bは、第1の溶接室60A、及び第2の溶接室60Bを備える。第1の溶接室60Aと第2の溶接室60Bは、ステージ52上に配置される積層体3aの正極のタブ束24と負極のタブ束34が並ぶ方向(X方向)に、並んで配置される。第1の溶接室60Aと第2の溶接室60Bは、Y方向に平行な対称軸に対して、互いに対称的な構造である。溶接装置50Bは、正極のタブ束24の溶接対象部27を第1の溶接室60Aの内部に収容するとともに、負極のタブ束34の溶接対象部37を第2の溶接室60Bの内部に収容することができる。
【0081】
第1の溶接室60Aは、第1実施形態と位置関係が同様の天板部62、第1側板部64、第2側板部65、及び第3側板部66を有する。本実施形態の第2側板部65は、第1実施形態の貫通孔65aの代わりに、吸気孔66aと同様の吸気孔69aが設けられている。本実施形態の第3側板部66は、第1実施形態の吸気孔66aの代わりに、貫通孔65aと同様の貫通孔69bが設けられている。第2側板部65の吸気孔69bは、吸気部80と接続されている。
【0082】
本実施形態の吸気部80は吸気本体部81、第1の通気管82、及び第2の通気管83を有する。吸気孔69aは、第1の通気管82を介して吸気本体部81に接続されている。吸気本体部81は、第1の溶接室60Aの内部60Aa(図9参照)のガスGを、吸気孔69a及び第1の通気管82を介して、吸引可能である。吸気本体部81は、第2の溶接室60Bの内部60BaのガスGについても同様に、第2の通気管83を介して、吸引可能である。本実施形態の吸気本体部81は、第1の通気管82に接続された第1のバルブ(図示略)と、第2の通気管83に接続された第2のバルブ(図示略)とを有している。制御部51は、吸気本体部81の第1のバルブの開閉と、第2のバルブの開閉とを独立して制御することができる。
【0083】
なお、第1の通気管82と第2の通気管83とが合流して、同じ吸引器(ポンプ)と接続されていても構わない。第1の溶接室60Aの内部60Aaを吸気する吸気部とは別の吸気部で、第2の溶接室60Bの内部60Baを吸気する構成でも構わない。また、1つの溶接室の内部を複数の吸気部で吸気する構成でも構わない。
【0084】
第1の溶接室60Aには、第1実施形態の通気部材61の代わりに第4側板部68が設けられている。第1の溶接室60Aの天板部62(図9参照)には、第1実施形態の通気部材61と同様の第1の通気部材61Aが取付けられている。第2の溶接室60Bについても同様に、第2の通気部材61Bが取付けられている。
【0085】
第4側板部68は、片面が第1の溶接室60Aの内部60Aaに面しており、もう片面が第2の溶接室60Bの内部60Baに面している。第4側板部68は、第1の溶接室の60Aの壁部と第2の溶接室60Bの壁部とを兼ねている。第4側板部68は、第1の溶接室の60Aの内部60Aaと第2の溶接室60Bの内部60Baとの間で、ガスGが流出しないように設けられている。
【0086】
第1の溶接処理部70Aと第2の溶接処理部70Bは、X方向にて互いに向い合うように、配置されている。第1の溶接室60A及び第2の溶接室60Bは、X方向にて第1の溶接処理部70Aと第2の溶接処理部70Bとの間に配置される。第1の溶接処理部70A及び第2の溶接処理部70Bは、それぞれ、第1実施形態の溶接処理部70と同様である。
【0087】
第1の溶接室60Aの内部60Aaには、第1実施形態のリード移動部58と同様の第1のリード移動部58Aが配置される。第1の溶接処理部70Aは、第1の溶接室60Aの内部60Aaに配置された正極のタブ束24の溶接対象部27にリード25が重なるように、第1のリード移動部58Aによりリード25を移動させ、ホーン71を介して超音波振動を印加して、溶接を施すことができる。第2の溶接室60Bの内部60Baには、第2のリード移動部58Bが配置される。第2のリード移動部58Bは、負極のタブ束34の溶接対象部37に重なるようにリード35を移動可能である。第2の溶接処理部70Bは、第2の溶接室60Bの内部60Baに配置された負極のタブ束34の溶接対象部37にリード25が重なるように、リード移動部58Bによりリード25を移動させ、第1の溶接処理部70Aと同様にして、溶接を施すことができる。制御部51は、第1の溶接処理部70A及び第2の溶接処理部70Bをそれぞれ制御することができる。
【0088】
制御部51は、第1実施形態で説明したステップS1及びステップS2(図7参照)と同様の処理を実行させて、正極のタブ束24の溶接対象部27を第1の溶接室60Aに収容させるとともに、負極のタブ束34の溶接対象部37を第2の溶接室60Bに収容させる。また、制御部51は、ステップS3からステップS5(図7参照)と同様の処理を実行させて、第1の溶接室60A内の溶接対象部27にリード25を配置させた後に、溶接対象部27とリード25とをホーン71Aで押圧させる。制御部51は、第2の溶接室60B内の溶接対象部37に対しても同様に、リード35を配置させた後に、溶接対象部37とリード35とをホーン71Bで押圧させる。
【0089】
制御部51は、吸気部80を制御して、第1の溶接室60Aの内部60Aaを吸気する第1吸気処理を吸気部80に実行させる。制御部51は、吸気部80を制御して、第2の溶接室60Bの内部60Baを吸気する第2吸気処理を吸気部80に実行させる。本実施形態において、制御部51は、第1吸気処理と第2吸気処理を並行して実行させる。制御部51は、吸気処理の開始タイミング、停止タイミング、及び処理時間のうちの1以上を、第1吸気処理と第2吸気処理とで異ならせても構わない。
【0090】
制御部51は、第1吸気処理中に、第1の溶接処理部70Aを制御して第1溶接処理(第1溶接工程)を第1の溶接処理部70Aに実行させる。また、制御部51は、第2吸気処理中に、第2の溶接処理部70Bを制御して第2溶接処理(第2溶接工程)を第2の溶接処理部70Bに実行させる。本実施形態において、制御部51は、第1溶接処理と第2溶接処理を並行して実行させる。制御部51は、溶接処理の開始タイミング、停止タイミング、及び処理時間のうちの1以上を、第1溶接処理と第2溶接処理とで異ならせても構わない。
【0091】
本実施形態の溶接装置50Bにおいて、第1溶接処理中に発生する金属粒子は、第1吸気処理によって効果的に回収される。同様に、第2溶接処理中に発生する金属粒子は、第2吸気処理によって効果的に回収される。したがって、金属粒子を効果的に回収することができ、金属粒子の飛散が抑制される。また、溶接装置50Bは、正極のタブ束24の溶接と並行して負極のタブ束34の溶接を施すことができるので、電極体3を効率よく製造することができ、結果として電池セル1を効率よく製造可能になる。
【0092】
また、溶接装置50Bは、ステージ52に積層体3aを固定したままの状態で正極のタブ束24の溶接処理と負極のタブ束34の溶接処理を実行することができる。例えば、正極のタブ束と負極のタブ束とを同じ溶接室に入れ替えて収容し、正極のタブ束と負極のタブ束にそれぞれ溶接処理を実行する場合と比較して、溶接処理の間に積層体3aの位置や姿勢を調整する必要性が低くなる。したがって、電極体3を効率よく製造することができ、結果として電池セル1を効率よく製造可能になる。また、積層体3aの位置や姿勢を調整する機構を簡略化あるいは省略することが可能になり、電池セル1の製造コストを下げることが可能になる。
【0093】
また、第1の溶接処理部70Aと第2の溶接処理部70Bとが互いに向い合うように配置されているので、第1の溶接処理部70Aと第2の溶接処理部70Bの装置サイズによる配置上の制約が緩やかになる。また、吸気部80が、第1の溶接室60Aに対する吸気処理と第2の溶接室60Bとをともに実行可能であるので、吸気部の数を減らすことができ、溶接装置の構成をシンプルにすることができる。
【0094】
[第3実施形態]
次に、図10及び図11を参照して第3実施形態の溶接装置について説明する。図10は第3実施形態の溶接装置の構成を模式的に示す平面図、図11は、第3実施形態の溶接装置の構成を模式的に示す側面図である。
【0095】
本実施形態の溶接装置50Cは、ステージ52の上面52aに配置された搬送部150及び溶接室160を備える。本実施形態の溶接室160は、ステージ52に固定されている。搬送部150は、積層体3aを保持可能である。搬送部150は、積層体3aをステージ52の上面52aで移動させることができる。搬送部150は、積層体3aを保持して溶接室160の第1側板部64に向って進出し、積層体3aの正極のタブ束24の溶接対象部27を溶接室160の内部60aに搬入することができる。搬送部150は、積層体3aを保持して溶接室160の第1側板部64から退避し、溶接後の溶接対象部27を溶接室160の内部60aから搬出することができる。
【0096】
搬送部150は、保持体151、第1ガイド部152、第2ガイド部153、固定部53、及び保持体移動部154を有する。第1ガイド部152及び第2ガイド部153は、保持体151に取付けられている。搬送部150において、保持体151上と第1ガイド部152上と第2ガイド部153上とにわたって、積層体3aを載置することが可能になっている。
【0097】
保持体151は、その上面に積層体3aのうちの少なくとも電極本体部3bを載置可能である。保持体151には、保持体151の上面の法線方向(Z方向)に電極本体部3bの積層方向を向けて、電極本体部3bが載置される。固定部53は、保持体151に取付けられている。固定部53は、保持体151に載置された積層体3aを、保持体151に固定可能である。
【0098】
第1ガイド部152及び第2ガイド部153は、ステージ52の上面52aから上方に離れている。保持体151の上面と、第1ガイド部152の上面と、第2ガイド部153の上面は、ほぼ面一である。第1ガイド部152は、保持体151から溶接室160に向って突出している。第1ガイド部152は、溶接室160の挿通孔64aに挿通可能な寸法である。第2ガイド部153は、保持体151から収容室90に向って突出している。第2ガイド部153は、収容室90の挿通孔91aに挿通可能な寸法である。
【0099】
搬送部150が溶接室160に向って進出すると、第1ガイド部152の先端部は、溶接室160の挿通孔64aに挿通されて、溶接室160の内部60aに収容(搬入)される。第1ガイド部152の先端部が溶接室160の内部60aに収容されるとともに、第2ガイド部153の先端部は、収容室90の挿通孔91aに挿通されて、収容室90の内部に収容(搬入)される。
【0100】
保持体151の所定の位置に電極本体部3bを固定すると、第1ガイド部152の上面に正極のタブ束24の溶接対象部27を含む部分が配置されるとともに、第2ガイド部153の上面に負極のタブ束34の先端部が配置される。
【0101】
保持体移動部154は、保持体151を溶接室160及び収容室90に対して進退移動(Y方向)させることができる。制御部51は、保持体移動部154を制御して、保持体151を所定の距離だけ移動させることができる。
【0102】
本実施形態の溶接室160は、底板部161、扉(第1閉塞部)162、及び扉駆動部163を有する。底板部161は、底板部161は、ステージ52の上面52aに配置されている。底板部161は、ステージ52に対して固定されている。搬送部150の第1ガイド部152は、溶接室160の内部60aに収容された状態で、底板部161の上面に配置される。底板部161は、溶接時に第1ガイド部152を支持する。
【0103】
天板部62は、底板部161に対向して、積層体3aの先端部28を底板部161と挟むように配置されている。本実施形態において、溶接室160の内部60aは、通気部材61、天板部62、第1側板部64、第2側板部65、第3側板部66、及び底板部161に囲まれる空間である。
【0104】
扉162は、第1側板部64の挿通孔64aの近傍に配置されている。扉162は、挿通孔64aの内周の径方向(ここではZ方向)に移動可能に設けられている。扉162の位置に応じて、溶接室60に通じる挿通孔64aの開口の範囲が変化する。本実施形態において、扉162は、挿通孔64aの内周の内側のほぼ全体を塞ぐことが可能な位置から、溶接室60に通じる挿通孔64aの開口に少なくとも第1ガイド部152の先端部及びタブ束24の先端部28を通すことが可能な位置まで、移動(スライド)可能に設けられている。扉162は、ゴム等の弾性材料で形成されている。
【0105】
扉駆動部163は、扉162をZ方向に移動させることができる。扉駆動部163は、挿通孔64aに第1ガイド部152が挿通されている状態で扉162を下方に移動して、第1ガイド部152上のタブ束24を下方に押圧することができる。これにより、扉162は、挿通孔64aとタブ束24との間を、ガスG及び金属粒子の流出が抑制されるように塞ぐことができる。制御部51は、扉駆動部163を制御して、挿通孔64aの内側を扉162により閉止することができる。制御部51は、扉駆動部163を制御して、扉162により閉止された挿通孔64aの内側を開放することができる。
【0106】
制御部51は、搬送ロボットR(図4参照)等によって積層体3aが搬送部150に載置されると、固定部53を制御して、積層体3aを搬送部150に固定させる固定処理を固定部53に実行させる。制御部51は、必要に応じて扉駆動部163を制御して、タブ束24及び第1ガイド部152が挿通孔64aを挿通可能なように、挿通孔64aを開放状態にする。
【0107】
制御部51は、搬送部150の保持体移動部154を制御して、保持体移動部154に搬入処理を実行させる。搬入処理は、開放状態の挿通孔64aにタブ束24及び第1ガイド部152が挿通されるように、保持体151を移動させる処理である。制御部51は、搬入処理の後に、扉駆動部163を制御して扉駆動部163に扉閉止処理を実行させる。扉閉止処理は、扉162が第1ガイド部152上のタブ束24を下方に押圧するように、扉162を移動させる処理である。制御部51は、扉閉止処理の後に、上述したステップS4〜ステップS10(図7参照)の各処理を各部に実行させる。
【0108】
制御部51は、溶接対象部27の溶接後に、扉駆動部163を制御して扉駆動部163に扉開放処理を実行させる。扉開放処理は、扉162が第1ガイド部152上のタブ束24と非接触になるまで、扉162を上方に移動させる処理である。制御部51は、扉開放処理の後に、保持体移動部154を制御して保持体移動部154に搬出処理を実行させる。搬出処理は、溶接後の積層体3aが所定の位置に配置されるように、保持体151を移動させる処理である。制御部51は、搬出処理の後に、固定部53を制御して固定解除処理を固定部53に実行させる。固定解除処理は、溶接後の積層体3aの搬送部150に対する固定を解除する処理である。固定解除処理の後に、第1実施形態で説明した処理が、必要に応じて実行される。
【0109】
本実施形態の溶接装置50Cにあっては、溶接時の金属粒子を効果的に回収することができるので、金属粒子の飛散が抑制される。また、溶接を施す積層体3aを搬送部150によってステージ52に固定された溶接室160に搬送するようにしたので、溶接室160を移動させる機構を省略することができる。また、溶接室の移動に伴ってホーンを移動させる必要がなくなるので、ホーンの移動時間を減らすことができ、効率よく溶接を施すことが可能になる。
【0110】
なお、本発明の技術範囲は上述の実施形態に限定されるものではない。上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、各実施形態で説明した構成要素の1以上を用いない場合もある。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。上記の各実施形態では、溶接装置で電極板のタブとリードを溶接する例を説明したが、
上記の溶接装置は、リードを用いることなく、複数の電極板のタブを互いに溶接することに利用してもよい。上記の溶接装置は、電極板をリード以外の導電部材と溶接することに利用してもよい。上記の実施形態では、超音波溶接法で溶接する溶接装置を例に説明したが、本発明は、抵抗溶接等の各種溶接法にも適用可能である。溶接処理部の構成は、適用する溶接法に応じて、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0111】
1・・・電池セル、2・・・電池容器、3・・・電極体、3a・・・積層体、3b・・・電極本体部、4・・・正極端子、5・・・負極端子、6・・・正極板、7・・・負極板、8・・・セパレータ、9・・・容器本体、9a・・・開口、10・・・蓋体、11・・・固定部材、12、13・・・絶縁スリーブ20・・・本体部、21・・・タブ、22・・・集電材、23・・・電極活物質層、24・・・タブ束、25・・・リード、26・・・溶接部、27・・・溶接対象部、28・・・先端部、29・・・連続部、30・・・本体部、31・・・タブ、32・・・集電材、33・・・電極活物質層、34・・・タブ束、35・・・リード、36・・・溶接部、37・・・溶接対象部、50、50B、50C・・・溶接装置、51・・・制御部、
52・・・ステージ、52a・・・上面、53・・・固定部、54・・・押圧板、54a・・・下面、55・・・押圧板駆動部、57・・・容器、58・・・リード移動部、58A・・・第1のリード移動部、58B・・・第2のリード移動部、60・・・溶接室、60A・・・第1の溶接室、60B・・・第2の溶接室、60a、60Aa、60Ba・・・内部、60b・・・外部、61・・・通気部材、61A・・・第1の通気部材、61B・・・第2の通気部材、61a・・・板状部、61b・・・通気孔、62・・・天板部、63・・・側部、64・・・第1側板部、64a・・・挿通孔、64b・・・内周面、65・・・第2側板部、65a・・・貫通孔、65b・・・内周、66・・・第3側板部、66a・・・吸気孔、67・・・第1閉塞部、68・・・第4側板部、69a・・・吸気孔、69b・・・貫通孔、70・・・溶接処理部、70A・・・第1の溶接処理部、70B・・・第2の溶接処理部、71、71A、71B・・・ホーン、72・・・ホーン駆動部、73・・・第2閉塞部、74・・・第1部分、75・・・第2部分、75a・・・先端面、76・・・ホーン移動部、77・・・振動付与部、80・・・吸気部、81・・・吸気本体部、82・・・通気管、83・・・第2の通気管、90・・・収容室、91・・・第1側板部、91a・・・挿通孔、92・・・第2側板部、93・・・第3側板部、94・・・天板部、100・・・容器移動部、101・・・アーム、102・・・アーム駆動部、150・・・搬送部、151・・・保持体、152・・・第1ガイド部、153・・・第2ガイド部、154・・・保持体移動部、160・・・溶接室、161・・・底板部、162・・・扉(第1閉塞部)、163・・・扉駆動部、G・・・ガス、H・・・ロボットハンド、R・・・搬送ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルの一部を構成する正極板及び負極板の少なくとも一方の電極板の溶接対象部に溶接を行う溶接装置であって、
前記電極板に溶接を施すときに、前記電極板の溶接対象部が収容される溶接室と、
前記溶接室の内部で前記溶接対象部を溶接する溶接処理部と、
前記溶接室の内部から吸気する吸気部と、を備えることを特徴とする溶接装置。
【請求項2】
前記溶接室の内部に前記溶接対象部が収容されたときに、前記溶接室の外部に前記溶接対象部を除いた前記電極板の一部が配置され、
前記溶接室は、前記溶接対象部と前記電極板の一部とを繋ぐ連続部が挿通される挿通孔と、前記挿通孔の内周面と前記連続部の外面との間を塞ぐ第1閉塞部と、を有する請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記溶接室の壁部は、該溶接室の外部から内部へガスが流入可能な通気部材を有し、
前記通気部材は、前記溶接室の内部から外部への固体粒子の流出を抑制することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接装置。
【請求項4】
前記溶接室と隣接して前記通気部材に面するように配置され、前記溶接室に前記電極板の正極板と負極板のうちの一方の溶接対象部が収容されたときに、前記正極板と前記負極板のうちの他方の電極板の少なくとも一部が収容される収容室を備えることを特徴とする請求項3に記載の溶接装置。
【請求項5】
前記溶接室は、該溶接室の内部と外部とを結ぶ貫通孔を有し、
前記溶接処理部は、前記溶接室の外部から前記貫通孔に挿通されて前記溶接室の内部に延びて配置され、前記溶接対象部を溶融させる溶融処理部と、
前記溶融処理部を前記溶接対象部に対して進退移動させて前記溶接対象部に接触させる移動部と、
前記溶接処理部が前記溶接対象部に接触したときに前記貫通孔に挿通されている部分の前記溶融処理部と前記貫通孔の内面との間を塞いでいる第2閉塞部と、を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−204304(P2012−204304A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70764(P2011−70764)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】