説明

溶接部の系統的冷間加工

【課題】 部品の寸法を当初のままに維持しつつ部品を溶接する方法を提供する。
【解決手段】 部品(10)を溶接する方法は、部品の関心特徴形状の付近に位置する溶接領域(120)を選択する工程と;第1の溶接部(126、158)の凝固により、所望の位置から特徴形状の偏移が起こるように、溶接領域(120)の一部に溶接部(22)を塗布する工程と;材料が第1の溶接部(126、158)から外側へ押し出される程度まで、第1の溶接部(126、158)に塑性変形を与えるように、第1の溶接部(126、158)を冷間加工する工程とを含む。特徴形状の偏移は、少なくとも部分的に反転される。方法は、欠陥に一連の互いに離間する仮付け溶接部(126)を塗布し、冷間加工する工程と、次に、仮付け溶接部(126)の間に一連の溶接部を塗布し、冷間加工する工程とを含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、溶接方法に関し、特に、溶接修理を受ける部品を系統的に冷間加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの装置は、複雑で高価な金属部品を含む。それらの部品が損傷又は磨耗した場合、可能であれば、それらの部品を交換するのではなく修理することが望ましい。相対的に小さな欠陥であっても、部品を使用不可能な状態にしてしまうこともある。例えば、ガスタービンエンジンは、通常、1つ以上の環状ケーシングを含み、それらのケーシングは、装着フランジ及びボルト穴などの特徴形状を含む。それらの特徴形状の許容寸法差は、数千分の1インチ程度である。
【0003】
従来の技術において、溶接修理は、よく知られている。溶接修理は、鍛造品、鋳造品又は溶接アセンブリなどの複雑な部品の亀裂の修理又は寸法復元に特に有用である。溶接修理中、部品の一部は、軟化し、流動して、溶接パッドルを形成するまで、例えば、集中火炎又は電流によって加熱される。この工程の間に、充填材料が溶接パッドルの中へ溶け込む。熱が取り除かれると、溶接パッドルは冷却し、再び凝固する。凝固工程中、相当な量の収縮が起こり、溶接部は、残留引張応力の状態に放置される。その結果、溶接部自体に亀裂が発生する可能性があり、更に、部品の溶接部付近の特徴形状に溶接ひずみが起こる。
【0004】
部品を溶接修理する作業を経済的に実現できるか否かは、この溶接部から始まるひずみの制御の可否と、ひずんだ部品を許容できる状態に復元するために必要とされる工具の装備及び労力にかかる費用によって大きく左右される。ひずみを制御する従来の方法は、拘束固定具を含み、それらの固定具は、所望の特徴形状を過剰に拘束する。過剰拘束された領域は、ひずみを引き起こす溶接部の応力を補償する。その後、残留する変形は、拘束熱処理、金属溶射盛り上げ及び機械加工などの技術により修正される。
【0005】
しかし、それらの技術があっても、溶接修理技術の制御が不可能である又は復元のためのコストが高すぎるなどの理由により、多くの部品において、特徴形状を交換することが必要になる。
【特許文献1】米国特許第4,491,001号公報
【特許文献2】米国特許第5,296,675号公報
【特許文献3】米国特許第5,735,044号公報
【特許文献4】米国特許第5,846,057号公報
【特許文献5】米国特許第6,238,187号公報
【特許文献6】米国特許第6,607,114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、部品の寸法を当初のままに維持しつつ、部品を溶接する方法が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の要求は、本発明により満たされる。本発明は、1つの面によれば、部品を溶接する方法であって、部品の関心特徴形状の付近に位置する溶接領域を選択する工程と;第1の溶接部の凝固により、所望の位置から特徴形状の偏移が起こるように、溶接領域の一部に第1の溶接部を塗布する工程と;材料が第1の溶接部から外側へ押し出され、偏移が少なくとも部分的に反転される程度まで、第1の溶接部に塑性変形を与えるように、第1の溶接部を冷間加工する工程とを含む方法を提供する。
【0008】
本発明の別の面によれば、部品を修理する方法は、部品の関心特徴形状の付近に位置する欠陥を選択する工程と;第1の仮付け溶接部が所望の位置から特徴形状の偏移を引き起こすように、欠陥に第1の仮付け溶接部を塗布する工程と;第1の仮付け溶接部に塑性変形を与え、第1の仮付け溶接部から外側へ材料を押し出し、偏移を少なくとも部分的に反転させるように、第1の仮付け溶接部を冷間加工する工程と;欠陥に少なくとも1つの後続仮付け溶接部を塗布する工程と;後続仮付け溶接部が塗布された後、各々の後続仮付け溶接部を冷間加工する工程とを含む。
【0009】
本発明は、添付の図面と関連させて以下の説明を参照することにより、最もよく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面を参照すると、図中、同一の図中符号は、一貫して同一の要素を示す。図1は、修理されるべき部品10の一例を示す。図示される例においては、部品10は、ガスタービンエンジンの燃焼ケーシングであるが、本発明の方法が、溶接可能であるどのような部品と組み合わせて使用されてもよいことは理解されるであろう。また、本発明の方法は、既存の部品の品質を改善するため又は新たな部品を製造するために使用されてもよい。ケース10は、ほぼ円筒形の後方部分12と、テーパ部分16により結合されたほぼ円筒形の前方部分14とを有する。前方部分14の前端部の周囲から、半径方向に直立する前方フランジ18が延出する。
【0011】
ケーシング10は、前方フランジ18の付近の前方部分14に位置する典型的な欠陥20を有する。この特定の例においては、欠陥20は、ケーシング10の厚さの一部に形成された外側打痕の形態をとる。本発明の方法は、亀裂又は穴などの、溶接により修理できる他の任意の種類の欠陥にも等しく適用可能である。そのような欠陥20は、欠陥より大きな充填材料の盛り上がりを形成し、次に、外面がケーシング10の周囲部分と整合するように、余分な材料を除去することにより修理可能である。
【0012】
図2、図3及び図4は、従来の技術によって実行される溶接修理の効果を示す。これらの図においては、溶接部22は、欠陥20の内部に充填材料を付着させることにより形成される。塗布後に冷却すると、溶接部22は収縮し、残留引張応力を発生させて、付近の特徴形状を3つの主方向の全てにおいてひずませる。実際には、それらの特徴形状は、溶接部22の中心に向かって「引っ張られる」。図2、図3及び図4において破線により示されるように、前方フランジ18は、軸方向、半径方向及び周囲方向にひずむ。図をわかりやすくするために、ひずみの程度は、大幅に誇張して示されている。しかし、前方フランジ18などの部品は、通常、数千分の1インチ程度のごくわずかな許容寸法差しか有していないため、相対的に少量のひずみであっても、ケーシング10が使用不可能になる可能性がある。溶接部の引張応力を解放するために、溶接部を後熱処理すること及び/又はピーニングすることは知られている。しかし、それらの処理は、部品の寸法を復元することに関しては全く役に立たない。
【0013】
従って、本発明は、溶接修理が複数の小さな工程を経て完了し、次の溶接が完了する前に、各々の溶接により発生したひずみが冷間加工工程によって反転されるような方法を提供する。図5は、ケーシング10とほぼ同一のケーシング100に適用される場合の本発明の方法を示す。ケーシング100は、円筒形の前方部分114と前方フランジ118とを含む。ケーシング100に、第1の端部122及び第2の端部124を有する溶接領域120が位置している。一般に、「溶接領域」という用語は、任意に充填材料を加えられながら、熱を与えることにより溶接部を形成することが望まれるあらゆる領域を表すために使用される。多くの場合、溶接領域120は、一体に接合されるか又は充填されることが必要な亀裂、凹部、打痕などの何らかの種類の欠陥である。方法の第1の工程は、周知の手順に従って溶接領域120を適切に準備することである。例えば、グリース、油及び異物を除去するために、溶接領域120に対して、化学洗浄又は機械洗浄を実行してもよい。溶接機器が出入りできるようにし、完全溶け込み溶接を可能にするために、必要に応じて、溶接領域120を許容できる形状まで研削するか又は他の方法により整形してもよい。
【0014】
溶接部の準備が完了した後、第1の仮付け溶接部126が溶接領域120に塗布される。当該技術において知られているように、「仮付け溶接部」は、溶接熱及びオプションである充填材料を短時間加えることにより融合溶接される部品の狭い領域である。第1の仮付け溶接部126を形成するために、周知のどのような溶接方法が使用されてもよい。適切な処理の一例は、タングステン不活性ガス(TIG)溶接である。第1の仮付け溶接部126を形成する目的は、迅速に接合部を形成すること、すなわち、使用される熱入力及びひずみを最小限に抑えることである。加熱及びひずみが溶接領域120に対して対称になるように、第1の仮付け溶接部126は、溶接領域120のほぼ中心に塗布されるのが好ましい。
【0015】
第1の仮付け溶接部126が冷却し、凝固するにつれて、第1の仮付け溶接部126は著しく収縮する。その結果、材料の3つの主方向の全てにおいて残留引張応力が発生する。この残留引張応力は、前方フランジ118において、軸方向、半径方向及び周囲方向の偏移(すなわち、弾性偏向)として観測される。
【0016】
次に、第1の仮付け溶接部126は、初期寸法を復元するために冷間加工される。図6は、第1の仮付け溶接部126を冷間加工するのに適する代表的な手段であるプレス128を示す。プレス128は、互いに離間する第1の端部132及び第2の端部134を有するほぼC字形の本体130を具備する。第1の端部132には、周知の種類の油圧シリンダ136が装着される。シリンダ136のロッド138は、相対的に小さなボタン形の第1のアンビル140をその端部で支持する。プレス128の本体130の第2の端部には、相対的に小さなボタン形の第2のアンビル142が装着される。油圧シリンダ136は、図示されるポンプ144、液体だめ146及び制御弁148などの加圧油圧油の流れをシリンダへ送り出すための適切な手段に接続される。
【0017】
プレス128は、冷間加工処理を実行するための適切なツールの一例であるにすぎない。溶接領域120に相当に大きな圧縮力を加え、溶接領域120を冷間加工できる任意の装置が使用されてもよい。
【0018】
冷間加工処理は、図7、図8及び図9に示される。それらの図において、前方フランジ118の所望の位置(多くの場合、元の位置である)は、破線で示され、実際の位置は、実線で示されている。冷間加工工程は、第1のアンビル140及び第2のアンビル142が同一線上に並び、第1の仮付け溶接部126と整列されるようにプレス128を位置決めする(図7を参照)ことにより実行される。図8に示されるように、その後、アンビル140及び142を第1の仮付け溶接部126の両側に当接し、第1の仮付け溶接部126を圧縮するために、シリンダ136が作動される。第1の仮付け溶接部126を著しく強く圧縮し、冷間加工するために、十分な圧力が加えられる。第1の仮付け溶接部126の引張応力は解放され、第1の仮付け溶接部126は、残留圧縮応力の状態になる。材料は、互いに圧接され、矢印「F」により示されるように、第1の仮付け溶接部126の中心から外側へ押し出される。本質的に、溶接部の凝固により起こったひずみは反転される。その結果、前方フランジ118などの付近の特徴形状は、元の位置に向かって戻り、矢印「A」により示されるように、特徴形状の偏移は反転される。冷間加工処理が完了すると、第1のアンビル140及び第2のアンビル142は、引き戻される(図9を参照)。前方フランジ118が所望の位置に戻るまで、冷間加工処理は継続される。
【0019】
冷間加工手順の処理制御は、いくつかの方法により実現されてもよい。冷間加工工程を実行する場合、動作パラメータは、非常に大きく変動することがある。アンビルの大きさ及び形状、圧縮の持続時間、アンビルの移動速度並びに加えられる圧力の全てが変動する可能性がある。正しいパラメータを直接判定しようとするのではなく、部品の特徴形状の観測及び/又は測定により、処理が制御されてもよい。例えば、先に説明したように、1つ以上の方向の前方フランジ118の偏移が観測されることもあり、その偏移が0に減少するまで、又は少なくとも標準許容差の範囲内に到達するまで、冷間加工手順が継続されてもよい。この制御方法により、測定の複雑さが最小限に抑えられると共に、前方フランジ118を所望の位置まで戻すために要求される補足的な手直し作業も、最小限に抑えられる。この処理では、成果を直接観測でき、また、所望の結果を越えて作業を進めすぎてしまう事態を避けるために、必要に応じて一連の漸進工程として方法を実行できるので、特に好都合である。
【0020】
1回目の冷間加工工程の後、第1の仮付け溶接部126と同様に、第2の仮付け溶接部150が溶接領域120に塗布される。第2の仮付け溶接部150は、第1の仮付け溶接部126と溶接領域120の第1の端部122とのほぼ中間の場所に塗布されるのが好ましい。第2の仮付け溶接部150が凝固した後、第2の仮付け溶接部150は、先に説明したように冷間加工される。
【0021】
後の溶接処理の間に溶接領域120を安定させるために、仮付け溶接工程及びそれに続く冷間加工工程は、溶接領域120全体が十分に「仮付け」されるまで順次繰り返される。溶接領域120に塗布される仮付け溶接部の数及び間隔は、周知の手順に従って判定される。図示される例においては、それぞれ図中符号126、150、152、154及び156により示される第1、第2、第3、第4及び第5の仮付け溶接部が、約2.5cm(1インチ)間隔で配置され、溶接領域120の中心に対して交互に順次塗布される。この工程シーケンスを使用することにより、ひずみは最小限になり、冷間加工処理が、1回の溶接により発生されるひずみより大きなひずみを復元することを要求されることは全くない。
【0022】
仮付け溶接が完了した後、溶接領域120は、複数回の小さな漸進工程を経て完全に溶接される。一般に、各溶接部は、隣接する仮付け溶接部の間に延出する。図10は、それぞれ図中符号158、160、162及び164により示される第1、第2、第3及び第4の溶接部の例を示す。各溶接部が凝固するたびに、溶接部は、先に仮付け溶接部に関連して説明した方法により冷間加工される。溶接後に冷間加工を実行するというこの作業シーケンスは、溶接部が所望の程度に被覆されるまで繰り返される。仮付け溶接部の場合と同様に、この処理は、1回の溶接により発生されるひずみより大きなひずみを復元することを全く要求されない。特定の用途において要求される条件に応じて、溶接領域120は、完全に接合されてもよいし、あるいは100%未満の範囲で部分的に被覆されてもよい。図示される「盛り上げ」型の修理の場合、一般に、100%の被覆が使用されるであろう。
【0023】
必要に応じて、上述のような溶接及び冷間加工の方法の後に、冷間加工の利点を保持しつつ、ケーシング100の全体又は一部が熱処理されてもよい。周知の技術を使用して、金属溶射盛り上げ及び機械加工などの補足的な手順が、前方フランジ118に対して必要な程度に実行されてもよい。
【0024】
図11〜図16は、ケーシング100とほぼ同様である燃焼ケーシング210に関して、別の修理処理の例を示す。ケーシング210は、ほぼ円筒形の前方部分214を有する。前方部分214の前端部に沿って、半径方向に直立する前方フランジ218が延出する。この例においては、図11及び図12に示されるように、ケーシング210は、前方フランジ218の付近の前方部分214に、ケーシング210の厚さ全体に及ぶ亀裂266を有する。
【0025】
処理の第1の工程は、周知の手順に従って、亀裂266の周囲の領域を適切に準備することである。例えば、グリース、油及び異物を除去するために、亀裂266に対して化学洗浄又は機械洗浄を実行してもよい。亀裂266は、完全に研削されるか又は他の方法により除去され、先に亀裂があった場所に、例えば、約1.5mm(0.060インチ)の幅の狭い切り溝268が形成される。準備が完了した溶接領域は、図13及び図14に示される。ケーシング210の厚さに応じて、完全な溶接部の溶け込みを確保するために、面取り領域270が亀裂の場所の両側に研削により形成されてもよい。
【0026】
ケーシング210の準備が完了した後、図15及び図16に示される一連の仮付け溶接部272が、ケーシング210の両側に塗布される。仮付け溶接部272は、先に説明したように、切り溝268の中心に対して交互に順次塗布される。各仮付け溶接部272が塗布されるたびに、仮付け溶接部272は、ケーシング210の溶接前の寸法を復元するために、先に説明したように、例えば、図6に示されるプレス128を使用して冷間加工される。冷間加工処理は、部品の特徴形状の観測及び/又は測定により制御されてもよい。例えば、冷間加工手順の間に、前方フランジ218の位置を測定するために、周知の種類のダイアル式移動距離指示器274が使用されてもよい。
【0027】
仮付け溶接が完了した後、切り溝268は、複数回の小さな漸進工程を経て完全に溶接される。一般に、各溶接部は、隣接する仮付け溶接部の間に延出する。図17及び図18は、図中符号276により示されるいくつかの溶接部の例を示す。各溶接部が凝固するたびに、溶接部は、仮付け溶接部272に関して先に説明した方法により冷間加工される。溶接に続いて冷間加工を実行するこのシーケンスは、所望の範囲で溶接部が被覆されるまで繰り返される。仮付け溶接部の場合と同様に、この処理は、1回の溶接により発生するひずみより大きなひずみを復元することを全く要求されない。溶接及び冷間加工が完了したならば、熱処理及び仕上げ加工などの補足的な手順が、ケーシング210に対して実行されてもよい。
【0028】
図19〜図22は、更に別の修理方法の例を示す。図示される例においては、燃焼ケーシング310は、ケーシング210とほぼ同様であり、ほぼ円筒形の前方部分314を有する。前方部分314の前端部に沿って、半径方向に直立する前方フランジ318が延出する。この例では、ケーシング310は、前方フランジ318の付近の前方部分134に位置する打痕のような損傷領域366を有する。
【0029】
損傷領域366を元の形状及び寸法に近い形状及び寸法に戻すために、周知の方法により、オプションとして損傷領域366を冷間加工してもよい。次に、損傷領域366の周囲の領域が周知の手順に従って準備される。例えば、グリース、油及び異物を除去するために、化学洗浄又は機械洗浄が損傷領域366に対して実行されてもよい。異物を完全に除去し、溶接修理のために一様な基板を形成するために、損傷領域366は完全に削り取られる。環状拘束リング320は、固定部材322により前方フランジ318に装着される。図19及び図20には、拘束リング320の一部のみが示される。拘束リング320を使用する目的は、溶接修理中、ケーシングの丸い形状を維持することである。
【0030】
ケーシング310の準備が完了した後、図21及び図22に示されるように、ケーシング310の損傷領域366の場所に、一連の軸方向に延出する溶接部372が塗布される。領域の完全な被覆を確保するために、各溶接部372は、隣接する溶接部372とわずかに重なり合う。図示される例においては、各溶接ビード372の長さは約5cm(2インチ)であり、幅は約2.5mm(0.1インチ)である。いくつかの溶接部372が塗布された後、ケーシング310の溶接前の寸法を復元するために、溶接部372は、先に説明したように、例えば、図6に示されるプレス128を使用して冷間加工される。冷間加工処理は、部品の特徴形状の観測及び/又は測定により制御されてもよい。例えば、冷間加工手順の間に、前方フランジ318の位置を測定するために、周知の種類のダイアル式移動距離指示器374が使用されてもよい。
【0031】
溶接に続いて冷間加工を実行するこのシーケンスは、所望の範囲の溶接部の被覆が実現されるまで繰り返される。損傷領域366全体が溶接されたならば、拘束リング320は除去される。軸方向偏移が残留している場合には、更に冷間加工を実行することにより、偏移を除去してもよい。溶接及び冷間加工が完了した後、熱処理及び仕上げ加工などの補足的な手順が、ケーシング210に対して実行されてもよい。以上説明した方法は、多数の異なる種類の部品及び部品欠陥に対して使用されてもよい。この処理の工具に要求される条件は最小限である。溶接部を塗布するために必要とされる取り付け装備を除いて、必要とされる工具又は取り付け具は、冷間加工のためのプレス128又はそれと同等の工具と、溶接部の場所に到達するために必要とされる何らかのアダプタ又は他の工具のみである。幾何学的特徴形状をその所望の位置にきわめて近い位置まで復元させる本発明の機能は、金属溶射盛り上げ及び機械加工などの溶接後のコストのかかる手順並びにそれと関連する作業時間を最小限にし、場合によっては不要にする。
【0032】
以上、系統的に溶接修理を実行する方法を説明した。本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明の趣旨の範囲から逸脱せずに、それらの実施形態に対して種々の変形を実施できることは、当業者には明らかであろう。従って、上記の本発明の好ましい実施形態及び本発明を実施するための最良の態様の説明は、単に例示を目的として提示され、本発明を限定するものではなく、本発明は、特許請求の範囲により定義される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】修理されるべき欠陥を有する部品の斜視図である。
【図2】溶接部が配置された図1の部品の部分横断面図である。
【図3】図2の部品の一部の平面図である。
【図4】図3の部品の一部の正面図である。
【図5】仮付け溶接シーケンスの一例を示す図1の部品の一部の平面図である。
【図6】図1の部品に対して冷間加工作業を実行するためのプレスと共に図1の部品を示す部分横断面図である。
【図7】冷間加工作業の開始時における図1の部品の部分横断面図である。
【図8】冷間加工作業中の図1の部品の部分横断面図である。
【図9】冷間加工作業の完了後の図1の部品の部分横断面図である。
【図10】溶接シーケンスの一例を示す図1の部品の一部の平面図である。
【図11】修理されるべき欠陥を有する別の部品の一部の平面図である。
【図12】図11の線12‐12に沿った断面図である。
【図13】準備工程が完了した後の図11の部品の平面図である。
【図14】図13の線14‐14に沿った断面図である。
【図15】仮付け溶接シーケンスの一例を示す図11の部品の平面図である。
【図16】図15の線16‐16に沿った断面図である。
【図17】溶接シーケンスの一例を示す図11の部品の平面図である。
【図18】図12の線18‐18に沿った断面図である。
【図19】修理されるべき欠陥を有する更に別の部品の平面図である。
【図20】図19の線20‐20に沿った断面図である。
【図21】溶接シーケンスの一例を示す図19の部品の平面図である。
【図22】図21の線22‐22に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0034】
100…ケーシング、114…前方部分、118…前方フランジ、126…第1の仮付け溶接部、128…プレス、150…第2の仮付け溶接部、158…第1の溶接部、160…第2の溶接部、210…燃焼ケーシング、214…前方部分、218…前方フランジ、266…亀裂、272…仮付け溶接部、276…溶接部、310…燃焼ケーシング、314…前方部分、318…前方フランジ、366…損傷領域、372…溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品(100)を溶接する方法において、
前記部品の関心特徴形状の付近に位置する溶接領域(120)を選択する工程と;
第1の溶接部(126、158)の凝固により、所望の位置から前記特徴形状の偏移が起こるように、前記溶接領域(120)の一部に前記第1の溶接部(126、158)を塗布する工程と;
材料が前記第1の溶接部(126、158)から外側へ押し出され、前記偏移が少なくとも部分的に反転される程度まで、前記第1の溶接部(126、158)に塑性変形を与えるように、前記第1の溶接部(126、158)を冷間加工する工程と
を含む方法。
【請求項2】
第2の溶接部(150、160)の凝固により、所望の位置から前記特徴形状の偏移が起こるように、前記損傷領域に前記第2の溶接部(150、160)を塗布する工程と;
材料が前記第2の溶接部(150、160)から外側へ押し出され、前記偏移が少なくとも部分的に反転される程度まで、前記第2の溶接部(150、160)に塑性変形を与えるように、前記第2の溶接部(150、160)を冷間加工する工程とを更に含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2の溶接部(150、160)は、前記第1の溶接部(126、158)と前記溶接領域(120)の第1の端部(122、132)との間の前記溶接領域(120)に塗布される請求項2記載の方法。
【請求項4】
複数の後続溶接部を塗布する工程と;
後続溶接部が塗布されるたびに、各溶接領域(120)を冷間加工する工程と;
選択された程度の溶接被覆が完了するまで、溶接部(22)を塗布する前記工程及び冷間加工する前記工程を繰り返す工程とを更に含む請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記溶接部の各々は、前記溶接領域(120)の中心に対して交互パターンを描くように塗布される請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記偏移を監視する工程と;
前記偏移がほぼ排除されるまで、前記第1の溶接部(126、158)の冷間加工を継続する工程とを更に含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記偏移を監視する工程と;
前記偏移がほぼ排除されるまで、前記第1の溶接部(126、158)を徐々に広く冷間加工する工程とを更に含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記特徴形状は、フランジ(118)である請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記冷間加工が完了した後、前記部品(100)を熱処理する工程を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記冷間加工が完了した後、前記特徴形状に金属溶射盛り上げ部を塗布する工程を更に含む請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−346750(P2006−346750A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−163095(P2006−163095)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】