溶接部の組織形状の画像化方法及びその装置
【課題】溶接部の組織形状を非破壊検査で迅速かつ正確(明瞭)に画像化する。
【解決手段】被検査体Sの溶接方向と直交する断面を超音波ビームBで走査しながら被検査体内部からの反射信号を受信し、受信した反射信号に基づいて走査した断面を画像化して溶接部2の組織を検査するための溶接部の組織形状の画像化に際して、平均点数mで移動平均波形Raを減算することで、受信信号の低周波成分を除去して、溶接部の組織からの反射信号を抽出し、抽出された反射信号のみを増幅したり、被検査体の溶接方向に対して異なる複数の位置で、溶接方向と直交する断面を集束された超音波ビームで走査して、得られた超音波の受信信号に基づいて走査した断面を画像化し、溶接方向に対する複数の位置で走査して得られた複数の画像を重ね、重なり合う画素の最大値を保持することにより、溶接部の組織からの反射波を強調する。
【解決手段】被検査体Sの溶接方向と直交する断面を超音波ビームBで走査しながら被検査体内部からの反射信号を受信し、受信した反射信号に基づいて走査した断面を画像化して溶接部2の組織を検査するための溶接部の組織形状の画像化に際して、平均点数mで移動平均波形Raを減算することで、受信信号の低周波成分を除去して、溶接部の組織からの反射信号を抽出し、抽出された反射信号のみを増幅したり、被検査体の溶接方向に対して異なる複数の位置で、溶接方向と直交する断面を集束された超音波ビームで走査して、得られた超音波の受信信号に基づいて走査した断面を画像化し、溶接方向に対する複数の位置で走査して得られた複数の画像を重ね、重なり合う画素の最大値を保持することにより、溶接部の組織からの反射波を強調する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いられるホイールの溶接部や、鋼板の付き合わせ溶接部、隅肉溶接部、鋼管溶接部の品質評価に用いるのに好適な、溶接部の組織形状を非破壊検査で迅速かつ正確(明瞭)に画像化することが可能な溶接部の組織形状の画像化方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接部の品質をチェックする方法として、以下の方法が挙げられる。
【0003】
(1)破壊検査
被検査体よりサンプルを切り出して、断面を研磨後、腐食液で腐食して観察、測定する。
【0004】
(2)間接測定
例えば、ホイール溶接部の品質評価方法として特許文献1に開示されている評価方法がある。この方法は、ホイール溶接部の溶接中のリム外側表面温度分布と溶接部の物理的性状(溶け込み形状、溶け込み深さ、強度など)との関係をあらかじめ求めておく工程と、ホイールの実溶接時、ホイール溶接部の溶接中のリム外側表面温度分布を計測し、該計測データと、先に求めてあるリム外側表面温度分布と溶接部の物理的性状との関係を比較して、ホイールの溶接部の物理的性状を推定する工程とからなる。
【0005】
(3)非破壊試験
特許文献2に代表される超音波を用いた溶接断面の画像化方法が考案されている。溶接部の組織は一般的に母材部分よりも粒が粗大である。その為、結晶粒径が異なるため、溶接部の組織と母材部分では音速に極僅かな差が生じる。超音波の周波数を、例えば、20MHz〜50MHzというように高くして、かつ音響レンズやアレイプローブなどにより細く絞られた(集束された)超音波ビームで溶接方向と直交する断面をスキャン(走査)しながら反射波を受信して、受信した信号を輝度変換して画像化すると、溶接部の組織と母材部分との境界面の形状を可視化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−101760号公報
【特許文献2】特開2008−111742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の溶接部の品質評価方法には以下の問題がある。
【0008】
(1)破壊試験
製品そのものを破壊するわけにはいかないので、一定量のサンプルによるテストを繰り返し、テストと同一の溶接条件で製品が溶接されているものとして、品質を保証する方法であるため、製品ごとの検査はされていない。また判定に時間と費用がかかる。
【0009】
(2)間接測定(特許文献1)
溶接中の被検査体の表面温度分布と溶接部の物理的性状との関係にはばらつきがあるのが普通であり、良品を不良品と判定したり、逆に不良品を良品と判定したりすることがある。
【0010】
(3)非破壊試験(特許文献2)
溶接部の組織からの反射波は非常に微弱なものであり、受信した信号を増幅し、該増幅された信号を輝度変換して画像化する。このとき、集束された超音波ビームを用いるため、溶接部の組織からの反射波が得られないことがある。また、受信信号を増幅する際に、溶接部の組織からの反射波以外の信号、たとえば、表面反射波や送信波の尾引き、超音波プローブ内の残響なども強調され、明瞭な画像を得難い。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、破壊試験や間接測定によるのではなく、非破壊試験において溶接部の組織を明瞭に可視化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は被検査体の溶接方向と直交する断面を超音波ビームで走査しながら被検査体内部からの反射信号を受信し、受信した反射信号に基づいて走査した断面を画像化して溶接部の組織を検査するための溶接部の組織形状の画像化方法において、溶接部の組織からの反射波を強調することにより、前記課題を解決したものである。
【0013】
前記画像化の際に、受信して離散値化された信号波形Rbに対して、移動平均点数mで移動平均波形Raを減算することで、受信信号の低周波成分を除去して、溶接部の組織からの反射信号を抽出し、抽出された反射信号のみを増幅することにより、より明瞭に溶接部の組織からの反射波を強調することができる。
【0014】
前記移動平均波形Raを算出する際に、抽出したい周波数の一波長の長さをPt[sec]、離散値化のサンプリング周波数Sp[Hz]として、移動平均点数mをPt×Sp[点]とすることが良い。
【0015】
又、被検査体の溶接方向に対して異なる複数の位置で、溶接方向と直交する断面を集束された超音波ビームで走査して、得られた超音波の受信信号に基づいて走査した断面を画像化し、溶接方向に対する複数の位置で走査して得られた複数の画像を重ね、重なり合う画素の最大値を保持することにより、溶接部の組織からの反射波を強調することができる。
【0016】
又、前記超音波ビームの送受信を所定の周波数で繰返すと共に、受信した反射信号を超音波ビームの送信と同期して加算することにより、溶接部の組織からの反射波を強調することができる。
【0017】
ここで、前記超音波ビームの最大走査速度がVm[mm/sec]で、走査ピッチがD[mm]、同期加算の平均点数がK[点]のとき、超音波の繰返し送受信周波数Kp[Hz]を次式
Kp=Vm×(1/D)×K
により決定することができる。
【0018】
本発明は、又、被検査体の溶接方向と直交する断面を超音波ビームで走査しながら被検査体内部からの反射信号を受信し、受信した反射信号に基づいて走査した断面を画像化して溶接部の組織を検査するための溶接部の組織形状の画像化装置において、溶接部の組織からの反射波を強調する手段を備えたことを特徴とする溶接部の組織形状の画像化装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
従来技術では、画像化して得られた断面形状をより明瞭にするために、輝度を増幅するなどした際、強調したい信号以外の信号(ノイズ)も一緒に増幅してしまうため、明瞭な画像を得ることが難しかった。例えば、形状をより鮮明に見るために、輝度を増幅して表示すると、表面反射波または送信波の尾引きや探触子内部の残響も一緒に強調されてしまうという問題があった。さらに超音波ビームを集束しているために、溶接部の組織形状の影響を受けやすく、部分的に形状に「抜け」が出来るという問題もあった。ここで、「抜け」とは画像において不明瞭な部分のことである。
【0020】
本発明によれば、被検査体の溶接方向と直交する断面で超音波ビームを走査し、走査して得られた各受信信号に現われるベースノイズを移動平均処理で抽出し、これを受信信号から減算した後、減算後の信号の振幅を増幅したことで明瞭に溶接部の組織の形状を画像化することが可能となった。さらに溶接線の長手方向に対して複数箇所で画像化した画像を重ね合わせて、重なり合う画素について振幅を比較して、画素の値の最大値を抽出することで、溶接部の組織形状の「抜け」を低減させ、より明瞭な可視化が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を示す、一部ブロック図を含む斜視図
【図2】前記実施形態における同期加算平均処理の一例を説明する図
【図3】同じく矩形パルス信号の変換部の動作イメージを説明する図
【図4】本発明における溶接部の組織と母材との境界から反射が得られる原理を説明する図
【図5】前記実施形態における移動平均信号の減算処理を説明する図
【図6】同じく移動平均信号の減算処理の効果を示す図
【図7】本発明による最大輝度の抽出処理の必要性を示す図
【図8】前記実施形態における最大輝度の抽出処理を説明する図
【図9】同じく測定した波形をメモリに格納する方法を説明する図
【図10】前記最大輝度の抽出処理における画像変換を説明する図
【図11】最大輝度の抽出処理前の画像の例を示す図
【図12】最大輝度の抽出処理の効果を示す図
【図13】本発明の実施例における画像化方法全体の手順を示すフローチャート
【図14】同じく1断面画像化方法及び画像化結果の例を示す図
【図15】同じく最大輝度の抽出処理の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための実施形態について、図1を用いて説明する。図1において、Sは被検査体、1は母材、2は溶接部の組織、3は超音波プローブ、Bは超音波ビーム(以下、単にビームとも称する)、4はC方向(被検査体の横断(クロス)方向)走査手段、5はL方向(被検査体の長手方向)走査手段、6は超音波送信手段、7は超音波受信手段、8はA/D変換部、9は信号処理部であり、10は移動平均波形の減算部、11は最大輝度の抽出処理部、12は出力部である。
【0023】
被検査体Sに対して、超音波プローブ3をC方向走査手段4で走査しながら、予め設定した測定ピッチD[mm]毎に、超音波送信手段6で超音波プローブ3の振動子を駆動させて超音波を送信し、被検査体Sから反射してきた超音波信号を超音波受信手段7で受信し、A/D変換部8で離散値変換を行い、信号処理部9に受信信号を繰り返し取り込んでいく。このとき、音響結合方法は、全没水浸法、局部水浸法、直接接触法、薄膜結合法のいずれの方法でもかまわない。
【0024】
超音波プローブ3で受信された反射波は超音波受信手段7で初期増幅および主増幅、フィルタ処理が施され、A/D変換部8によりアナログ信号から離散値変換されて、信号処理部9に送られる。
【0025】
被検査体Sの溶接部2の組織からの反射波は通常の探傷で捕まえる反射信号よりもかなり微弱なものであり、電気ノイズに対して信号対ノイズ比を向上させるために、離散値変換前後で同期加算の平均処理を施すことが好ましい。以下に同期加算平均処理の一例を述べる。
【0026】
図2に同期加算の平均処理の例を説明するための図を示す。図2において、13はC方向走査手段4を制御して超音波プローブをC方向に走査するためのC方向走査手段の制御部、14は超音波プローブ3のC方向における位置を検出して、予め設定された間隔D[mm]でパルス信号を出力するC方向位置の検出手段、15はC方向位置検出手段14より入力されたパルス信号を変換してパルス信号を出力する矩形パルス信号の変換部である。
【0027】
C方向走査手段の制御部13によりC方向走査手段4は制御されて超音波プローブ3を走査する。このとき、C方向走査手段4の最大走査速度をVm[mm/sec]、走査ピッチをD[mm]、同期加算の平均点数をK[点]とする。予め、走査ピッチD[mm]毎にC方向位置の検出手段14から矩形パルス信号(たとえば、TTLレベル信号)が出力されるように設定しておく。超音波プローブ3をC方向走査手段4で走査したとき、走査ピッチD[mm]毎に矩形パルス信号が出力され、この矩形パルス信号は矩形パルス信号の変換部15に入力される。ここで、走査ピッチD(mm)は測定空間分解能である。
【0028】
図3は矩形パルス信号の変換部15の動作イメージを説明する図である。図3(A)は矩形パルス信号の変換部15に入力される信号、図3(B)は矩形パルス信号の変換部15から出力される信号である。図3に示すように矩形パルス信号の変換部15に入力されるD[mm]毎のパルス信号に同期して、次式で示される繰返し周波数(PRF)Kp[Hz]で矩形パルス信号をK回出力する。
【0029】
Kp=Vm×(1/D)×K・・・(1)
【0030】
予め設定されたD[mm]毎に矩形パルス信号がK回出力されるので、このパルスに同期させて超音波の送受信を行い、K個の受信信号を取得して、同期加算の平均点数K[点]の同期加算の平均処理を行う。このようにすることで、C方向走査手段4の加減速に関係なく、所定のD[mm]毎に同期加算の平均された受信信号を取得することができる。
【0031】
同期加算の平均処理は、A/D変換部8で離散値化した後、信号処理部9で行っても良いし、専用のハードウエアで処理を行い、D/A変換された出力結果をA/D変換部8で取り込むようにしても良く、その処理手順は本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに変形することが可能である。
【0032】
C方向に走査して超音波を送受信する際に、送信する超音波のビームサイズは小さいことが好ましい。図4に超音波による母材と溶接部の組織の境界からの反射が得られるメカニズムを示す。
【0033】
溶接部2の組織は母材1よりも結晶粒が粗大で、結晶ごとに音速が異なる。ビームサイズが大きい場合、図4(A)のように、結晶方位による音速の違いが平均化されてしまい、母材1と溶接部2とで音速がほぼ同じになってしまい、境界面からの反射波を得難くなる。一方でビームサイズを小さくすると、図4(B)のように、音速の平均化の影響は小さく、溶接部2と母材1とで音速がわずかに異なり、ビームサイズが大きいときよりも反射波を得やすくなる。したがって、超音波ビームBのビームサイズは小さいことが好ましく、そのビームサイズは溶接部2の組織の平均粒径まで絞ることが好ましい。具体的には、好ましいビームサイズは、ホイールのリム溶接では70〜100μ程度、UOE鋼管や電縫溶接管などでは、300〜1000μ程度である。ビームサイズが小さい超音波ビームを送信する手段としては、超音波プローブ3は、単一の振動子からなるプローブ、または複数の振動子が1次元または2次元に配置されたアレイプローブのいずれを用いてもかまわない。単一の振動子からなるプローブを用いるときは、送信周波数を、たとえば、50MHz程度と高く設定し、音響レンズにより超音波ビームを絞る。アレイプローブを用いるときは、単一の振動子からなるプローブを用いるときと同様に、送信周波数は高くして、各振動子の送信タイミングを制御することで、超音波ビームを絞る。
【0034】
被検査体Sに対して、超音波送信手段6により超音波プローブ3の振動子を駆動して超音波を送信する。溶接部2の組織から得られる反射波は非常に微弱な信号のため、電気ノイズに対して、S/Nを確保するために、超音波の送信電圧は200〜300V以上が好ましい。
【0035】
A/D変換部8で離散値化された信号は、移動平均波形の減算部10に送られる。A/D変換部8で離散値化された波形の振幅をそのまま増幅して、輝度変換すると、溶接部2の組織からの反射エコー以外のエコー、たとえば、TパルスまたはSエコーの尾引きや、超音波プローブ内部の残響ノイズといった低周波のベースノイズも同時に増幅されてしまい、結果として明瞭な画像を得ることができない。ここで、Tパルスは直接接触法における送信パルス、Sエコーは水浸法における被検査体表面からの反射エコーのことである。
【0036】
そこで、移動平均波形の減算部10では、図5に示すように、受信しA/D変換された波形に対してベースノイズのみを抽出し、このベースノイズを波形形状から減算し、その後、増幅することで、被検査体S内部からの反射波のみを強調する。波形の移動平均点数mは、送信波形パルスの一波長の長さをPt[sec]、離散値のサンプリング周波数をSp[Hz]として、次式で求められる値にすることが好ましい。
【0037】
m=Pt×Sp ・・・(2)
【0038】
送信パルスの一波長の長さPtは、被検査体Sの底面反射波のエコーを事前に測定し、測定された波形形状から決定する。被検査体Sの組織による周波数の減衰を考慮しなくて良い場合には、水浸法(全没水浸法や局部水浸法、水柱法を含む)の場合は、被検査体Sの表面反射波を用いて一波長の長さを測定し、その波形から決定しても良い。また、一度画像化した後、任意に強調したい反射波形を選択し、その波形形状からPtを決定しても良い。
【0039】
強調したい周波数の一波長の長さ分だけ移動平均処理を行うと、図5に示すように、送信波形パルスまたは抽出した周波数成分の波形のみが相殺されて、ベースノイズのみを抽出することができ、このベースノイズを元信号から減算することで、ベースノイズを除去することができる。ゆえに移動平均波形の減算処理を実施することで、ベースノイズは強調されずに溶接部2の組織からの反射エコーのみを増幅することが可能となる。移動平均波形の減算処理は、一断面分に相当する超音波波形を受信した後に一括して計算しても良いし、走査しながら超音波の送受信毎に計算しても良い。
【0040】
図6に移動平均波形の減算処理の効果を示す。図6は、周波数50MHz、焦点近傍での超音波ビームサイズが70μm程度の超音波ビームを用いて、ホイールのリム溶接部分を画像化した例である。超音波プローブをXY走査(スキャン)可能なスキャナーに取り付け、C方向に走査しながら超音波の送受信を行い、受信信号をA/D変換装置で離散値化して計算機に取り込み、輝度変換して表示したものである。図6(A)は移動平均波形の減算処理を実施する前の例であり、図6(B)は図6(A)に対して移動平均波形の減算処理を実施した例である。A/D変換装置のサンプリング点数は500MHzとしている。移動平均波形の減算処理に用いる波形は50MHzの周波数成分のみを残せるように、(2)式を用いてm=10点として計算している。
【0041】
図6(A)では、溶接部2の組織の反射以外にも低周波成分が増幅されているのがわかる。しかし、本発明を実施した図6(B)では低周波成分が除去され、溶接部2の組織が明瞭に画像化されていることがわかる。
【0042】
次に、最大輝度の抽出処理部11について説明する。超音波の反射波形の振幅を輝度変換して断面形状を画像化すると、図7に示す例のように、部分的に「抜け」が生じてしまうことがある。これを解決するために、最大輝度の抽出処理を施す。
【0043】
最大輝度の抽出処理について、主に図1と図8を用いて説明する。図8は図1および図2における最大輝度の抽出処理部11の詳細を示す図であり、16はL方向走査手段5の制御部、17はメモリ制御部、18は画像変換部、19は最大輝度の計算部である。
【0044】
まず、図1において位置P1においてC方向走査手段4で超音波プローブ3を走査しながら、超音波を送受信し、受信した信号をA/D変換部8で離散値変換して、信号処理部9に送る。信号処理部9で前述の同期加算の平均処理や移動平均波形の減算処理などの前処理が行われ、最大輝度の抽出処理部11の内部にあるメモリM1〜Mnに格納される。メモリ制御部17はL方向走査手段の制御部16から、超音波で計測した位置の情報を取得して、位置P1で計測した受信信号であればメモリM1に、位置P2で計測した受信信号でればメモリM2にというように、位置Pnで計測した受信信号をメモリMnに格納する。
【0045】
位置Psで測定した波形をメモリMsに格納する方法について、図9を用いて説明する。
【0046】
図9中、D1〜DmはC方向に対して波形を測定した位置である。図9ではC方向に対してm点の位置で波形を測定したと仮定する。この場合、各波形はA/D変換部8によって離散値化され、前述の移動平均波形の減算処理といった前処理が施され、メモリMsに格納される。A/D変換部8では波形をSd点に離散値化する。メモリMsは二次元のマトリクスになっている。メモリM1〜Mnはそれぞれ、二次元構造としている。以下、位置Psにおいて、C方向の位置D、波形の伝搬時間方向tにおける離散値化された値はMs(x、t)と表記することにする。
【0047】
メモリM1〜Mnに格納された波形データは、図8に示す如く、画像変換部18を介して、画像データB1〜Bnに変換される。超音波の受信信号および、同期加算の平均処理や移動平均波形の減算処理などの前処理された超音波の受信信号は、図9(A)に示すような、正負の振幅を持った波形形状をしている。画像変換部18で超音波の受信信号から画像に変換するには、図10(A)のように正負に振幅を持った波形に対して全波整流を行い、図10(B)に示す、負の振幅を正側に折り返した形状に一度変換する。その後、全波整流された波形の振幅に輝度を割り当てる。割り当ての関係を次式に示す。
【0048】
【数1】
【0049】
メモリに格納されている、C方向に走査して得られた波形全てに、この動作を繰り返し行い、超音波波形から画像を作成する。以下、画像Bn上の任意の位置(x,y)における輝度をBn(x,y)と表記することにする。ここで、xはC方向、yは深さ方向の位置である。
【0050】
作成された画像B1〜Bnから次式に示すように重なり対応する各画素データを比較して最大輝度を抽出し、出力画像Bを作成する。
【0051】
B(x,y)=Max{Bs(x,y) ;s=1〜n} ・・・(4)
【0052】
図11は最大輝度の抽出処理に用いる画像の例であり、長手方向に0.5mmずつP1、P2、P3、P4の各位置で、周波数50MHz、超音波ビームBの焦点近傍でのビームサイズ径が70μm程度を送信可能なプローブ3で0.1mmピッチで超音波を送受信して、A/D変換後に前述の移動平均波形の減算処理を実施して、全波整流し、得られた信号振幅を輝度変換して作成した画像である。P1〜P4の4枚の画像の最大輝度を抽出して画像化した結果が図12である。図11の各画像と比較して、図12は溶接部2の組織が明瞭に可視化できており、最大輝度の抽出処理の効果を確認することができる。
【0053】
なお、超音波の送受信の方式は垂直法に限定されず、斜角法やタンデム法に適用してもかまわない。
【0054】
又、本発明の適用対象はホイール溶接部に限定されず、鋼板の付き合わせ溶接部、隅肉溶接部、鋼管の溶接部等にも同様に適用可能である。
【実施例】
【0055】
UOE鋼管溶接部の組織形状に対し、タンデム法を適用して、本発明による画像化を行なった。
【0056】
図13に本実施例における画像化方法全体のフローチャートを示す。管軸方向に走査(スキャン)しながら1断面におけるビーム走査および画像化を複数行ない、得られた複数の1断面画像を最大輝度抽出処理により合成し、溶接部の画像を取得している。
【0057】
具体的には、図13の左側に示したステップ100で、プローブ30を管軸方向(図14の紙面に垂直な方向)走査開始位置に合わせる。
【0058】
次いで、ステップ110で1断面の画像化を実行する。具体的には、図13の右側に示す如く、先ずステップ111で、ビームBを走査開始位置(図14では左側の位置)に合わせる。
【0059】
次いでステップ112でタンデム法による測定を行う。
【0060】
ステップ113で肉厚方向の走査が完了したか否かを判定し、完了していない場合には、ステップ114で、プローブ30のアレイ設定を変更することによって、ビームを肉厚方向に1ピッチ分(例えば0.5mm)移動(電子走査)して、ステップ112に戻る。
【0061】
一方、ステップ113の判定結果が正であり、肉厚方向の走査が完了したと判定されるときには、ステップ115に進み、管軸と垂直な方向(図14の左右方向)の走査が完了したか否かを判定する。判定結果が否であった場合にはステップ116に進み、ビームBを管軸と垂直方向に1ピッチ分(例えば0.1mm)移動(機械走査)する。次いでステップ117に進み、ビームBを肉厚方向走査開始位置(例えば被検査体Sの表面位置)に合わせて、ステップ112に戻る。
【0062】
一方、ステップ115の判定結果が正であり、管軸と垂直な方向の走査が完了したと判定されたときには、ステップ118に進み、測定結果から1断面の画像を作成して、1断面画像化を終了する。
【0063】
ステップ111から118を繰り返して、ステップ110の1断面の画像化を実行した後、図13左側のステップ120に進み、管軸方向走査が完了したか否かを判定する。判定結果が否である場合にはステップ130に進み、プローブ30を管軸方向に1ピッチ分(例えば10mm)移動して、ステップ110に戻り、次の1断面における画像化を実行する。
【0064】
ステップ120の判定結果が正であり、管軸方向の走査が完了したと判定されるときには、ステップ140に進み、最大輝度抽出処理画像の作成が完了したか否かを判定する。判定結果が否である場合には、ステップ150に進み、画像化領域中の一点を指定し、ステップ160で、全画像の輝度読取が完了したか否かを判定する。
【0065】
ステップ160の判定結果が否である場合には、ステップ170へ進み、取得した画像から指定点に対応する画素の輝度を読み取り、ステップ160に戻る。
【0066】
一方、ステップ160の判定結果が正であり、全画像の輝度読取が完了したと判定されたときには、ステップ180に進み、得られた輝度中の最大輝度を抽出して、ステップ140に戻る。
【0067】
一方、ステップ140の判定結果が正であり、最大輝度抽出処理画像の作成が完了したと判定されるときには、ステップ190に進み、得られた最大輝度を合成して画像を作成し、処理を終了する。
【0068】
図14に本実施例における1断面の画像化方法及び画像化結果の例を示す。プローブとしては周波数10MHzのアレイプローブ30を用い、水浸法により計測を行なっている。アレイプロープ30は遅延時間制御および音響レンズにより送信ビーム・受信ビームの集束を行なっており、ビーム径は約1mmである。超音波ビームBの走査は、肉厚方向についてはアレイプローブ30の送受信振動子選択および遅延時間制御による電子走査より行なっており、管軸と垂直方向については機械走査により行なっている。この方法で、肉厚方向に0.5mmピッチ、管軸と垂直方向に0.1mmピッチでビーム走査を行ないつつ計測を行ない、検出した反射信号に基づき画像化を行なった。計測対象は、厚さ38mmのUOE鋼管溶接部であり、画像化範囲は肉厚方向外面から内面まで、管軸と垂直方向は溶接部を中心に50mmの範囲である。
【0069】
図15に本実施例における最大輝度の抽出処理の例を示す。図14に記載の方法による1断面の画像化を、管軸方向10mmピッチで移動しながら10回実行し、得られた10断面の画像から最大輝度の抽出処理を行なって画像を合成した。これにより、1回の画像化では溶接部の境界線上の全ての点において信号が得られない場合でも溶接部の境界線全体を画像化することが可能である。図15には比較のため、UOE鋼管溶接部の断面マクロ写真の例を示している。写真との比較から、本実施例ではUOE鋼管溶接部の溶接部と母材の境界線、および溶接部中央(溶接組織の向きが変化している)が画像化できていることがわかる。
【符号の説明】
【0070】
S…被検査体
1…母材
2…溶接部
3…超音波プローブ
B…超音波ビーム
4…C方向走査手段
5…L方向走査手段
6…超音波送信手段
7…超音波受信手段
8…A/D変換部
9…信号処理部
10…移動平均波形の減算部
11…最大輝度の抽出処理部
12…出力部
13…C方向走査手段の制御部
14…C方向位置検出手段
15…矩形パルス信号の変換部
16…L方向走査手段の制御部
17…メモリ制御部
18…画像変換部
19…最大輝度の計算部
30…アレイプローブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いられるホイールの溶接部や、鋼板の付き合わせ溶接部、隅肉溶接部、鋼管溶接部の品質評価に用いるのに好適な、溶接部の組織形状を非破壊検査で迅速かつ正確(明瞭)に画像化することが可能な溶接部の組織形状の画像化方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接部の品質をチェックする方法として、以下の方法が挙げられる。
【0003】
(1)破壊検査
被検査体よりサンプルを切り出して、断面を研磨後、腐食液で腐食して観察、測定する。
【0004】
(2)間接測定
例えば、ホイール溶接部の品質評価方法として特許文献1に開示されている評価方法がある。この方法は、ホイール溶接部の溶接中のリム外側表面温度分布と溶接部の物理的性状(溶け込み形状、溶け込み深さ、強度など)との関係をあらかじめ求めておく工程と、ホイールの実溶接時、ホイール溶接部の溶接中のリム外側表面温度分布を計測し、該計測データと、先に求めてあるリム外側表面温度分布と溶接部の物理的性状との関係を比較して、ホイールの溶接部の物理的性状を推定する工程とからなる。
【0005】
(3)非破壊試験
特許文献2に代表される超音波を用いた溶接断面の画像化方法が考案されている。溶接部の組織は一般的に母材部分よりも粒が粗大である。その為、結晶粒径が異なるため、溶接部の組織と母材部分では音速に極僅かな差が生じる。超音波の周波数を、例えば、20MHz〜50MHzというように高くして、かつ音響レンズやアレイプローブなどにより細く絞られた(集束された)超音波ビームで溶接方向と直交する断面をスキャン(走査)しながら反射波を受信して、受信した信号を輝度変換して画像化すると、溶接部の組織と母材部分との境界面の形状を可視化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−101760号公報
【特許文献2】特開2008−111742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の溶接部の品質評価方法には以下の問題がある。
【0008】
(1)破壊試験
製品そのものを破壊するわけにはいかないので、一定量のサンプルによるテストを繰り返し、テストと同一の溶接条件で製品が溶接されているものとして、品質を保証する方法であるため、製品ごとの検査はされていない。また判定に時間と費用がかかる。
【0009】
(2)間接測定(特許文献1)
溶接中の被検査体の表面温度分布と溶接部の物理的性状との関係にはばらつきがあるのが普通であり、良品を不良品と判定したり、逆に不良品を良品と判定したりすることがある。
【0010】
(3)非破壊試験(特許文献2)
溶接部の組織からの反射波は非常に微弱なものであり、受信した信号を増幅し、該増幅された信号を輝度変換して画像化する。このとき、集束された超音波ビームを用いるため、溶接部の組織からの反射波が得られないことがある。また、受信信号を増幅する際に、溶接部の組織からの反射波以外の信号、たとえば、表面反射波や送信波の尾引き、超音波プローブ内の残響なども強調され、明瞭な画像を得難い。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、破壊試験や間接測定によるのではなく、非破壊試験において溶接部の組織を明瞭に可視化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は被検査体の溶接方向と直交する断面を超音波ビームで走査しながら被検査体内部からの反射信号を受信し、受信した反射信号に基づいて走査した断面を画像化して溶接部の組織を検査するための溶接部の組織形状の画像化方法において、溶接部の組織からの反射波を強調することにより、前記課題を解決したものである。
【0013】
前記画像化の際に、受信して離散値化された信号波形Rbに対して、移動平均点数mで移動平均波形Raを減算することで、受信信号の低周波成分を除去して、溶接部の組織からの反射信号を抽出し、抽出された反射信号のみを増幅することにより、より明瞭に溶接部の組織からの反射波を強調することができる。
【0014】
前記移動平均波形Raを算出する際に、抽出したい周波数の一波長の長さをPt[sec]、離散値化のサンプリング周波数Sp[Hz]として、移動平均点数mをPt×Sp[点]とすることが良い。
【0015】
又、被検査体の溶接方向に対して異なる複数の位置で、溶接方向と直交する断面を集束された超音波ビームで走査して、得られた超音波の受信信号に基づいて走査した断面を画像化し、溶接方向に対する複数の位置で走査して得られた複数の画像を重ね、重なり合う画素の最大値を保持することにより、溶接部の組織からの反射波を強調することができる。
【0016】
又、前記超音波ビームの送受信を所定の周波数で繰返すと共に、受信した反射信号を超音波ビームの送信と同期して加算することにより、溶接部の組織からの反射波を強調することができる。
【0017】
ここで、前記超音波ビームの最大走査速度がVm[mm/sec]で、走査ピッチがD[mm]、同期加算の平均点数がK[点]のとき、超音波の繰返し送受信周波数Kp[Hz]を次式
Kp=Vm×(1/D)×K
により決定することができる。
【0018】
本発明は、又、被検査体の溶接方向と直交する断面を超音波ビームで走査しながら被検査体内部からの反射信号を受信し、受信した反射信号に基づいて走査した断面を画像化して溶接部の組織を検査するための溶接部の組織形状の画像化装置において、溶接部の組織からの反射波を強調する手段を備えたことを特徴とする溶接部の組織形状の画像化装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
従来技術では、画像化して得られた断面形状をより明瞭にするために、輝度を増幅するなどした際、強調したい信号以外の信号(ノイズ)も一緒に増幅してしまうため、明瞭な画像を得ることが難しかった。例えば、形状をより鮮明に見るために、輝度を増幅して表示すると、表面反射波または送信波の尾引きや探触子内部の残響も一緒に強調されてしまうという問題があった。さらに超音波ビームを集束しているために、溶接部の組織形状の影響を受けやすく、部分的に形状に「抜け」が出来るという問題もあった。ここで、「抜け」とは画像において不明瞭な部分のことである。
【0020】
本発明によれば、被検査体の溶接方向と直交する断面で超音波ビームを走査し、走査して得られた各受信信号に現われるベースノイズを移動平均処理で抽出し、これを受信信号から減算した後、減算後の信号の振幅を増幅したことで明瞭に溶接部の組織の形状を画像化することが可能となった。さらに溶接線の長手方向に対して複数箇所で画像化した画像を重ね合わせて、重なり合う画素について振幅を比較して、画素の値の最大値を抽出することで、溶接部の組織形状の「抜け」を低減させ、より明瞭な可視化が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を示す、一部ブロック図を含む斜視図
【図2】前記実施形態における同期加算平均処理の一例を説明する図
【図3】同じく矩形パルス信号の変換部の動作イメージを説明する図
【図4】本発明における溶接部の組織と母材との境界から反射が得られる原理を説明する図
【図5】前記実施形態における移動平均信号の減算処理を説明する図
【図6】同じく移動平均信号の減算処理の効果を示す図
【図7】本発明による最大輝度の抽出処理の必要性を示す図
【図8】前記実施形態における最大輝度の抽出処理を説明する図
【図9】同じく測定した波形をメモリに格納する方法を説明する図
【図10】前記最大輝度の抽出処理における画像変換を説明する図
【図11】最大輝度の抽出処理前の画像の例を示す図
【図12】最大輝度の抽出処理の効果を示す図
【図13】本発明の実施例における画像化方法全体の手順を示すフローチャート
【図14】同じく1断面画像化方法及び画像化結果の例を示す図
【図15】同じく最大輝度の抽出処理の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための実施形態について、図1を用いて説明する。図1において、Sは被検査体、1は母材、2は溶接部の組織、3は超音波プローブ、Bは超音波ビーム(以下、単にビームとも称する)、4はC方向(被検査体の横断(クロス)方向)走査手段、5はL方向(被検査体の長手方向)走査手段、6は超音波送信手段、7は超音波受信手段、8はA/D変換部、9は信号処理部であり、10は移動平均波形の減算部、11は最大輝度の抽出処理部、12は出力部である。
【0023】
被検査体Sに対して、超音波プローブ3をC方向走査手段4で走査しながら、予め設定した測定ピッチD[mm]毎に、超音波送信手段6で超音波プローブ3の振動子を駆動させて超音波を送信し、被検査体Sから反射してきた超音波信号を超音波受信手段7で受信し、A/D変換部8で離散値変換を行い、信号処理部9に受信信号を繰り返し取り込んでいく。このとき、音響結合方法は、全没水浸法、局部水浸法、直接接触法、薄膜結合法のいずれの方法でもかまわない。
【0024】
超音波プローブ3で受信された反射波は超音波受信手段7で初期増幅および主増幅、フィルタ処理が施され、A/D変換部8によりアナログ信号から離散値変換されて、信号処理部9に送られる。
【0025】
被検査体Sの溶接部2の組織からの反射波は通常の探傷で捕まえる反射信号よりもかなり微弱なものであり、電気ノイズに対して信号対ノイズ比を向上させるために、離散値変換前後で同期加算の平均処理を施すことが好ましい。以下に同期加算平均処理の一例を述べる。
【0026】
図2に同期加算の平均処理の例を説明するための図を示す。図2において、13はC方向走査手段4を制御して超音波プローブをC方向に走査するためのC方向走査手段の制御部、14は超音波プローブ3のC方向における位置を検出して、予め設定された間隔D[mm]でパルス信号を出力するC方向位置の検出手段、15はC方向位置検出手段14より入力されたパルス信号を変換してパルス信号を出力する矩形パルス信号の変換部である。
【0027】
C方向走査手段の制御部13によりC方向走査手段4は制御されて超音波プローブ3を走査する。このとき、C方向走査手段4の最大走査速度をVm[mm/sec]、走査ピッチをD[mm]、同期加算の平均点数をK[点]とする。予め、走査ピッチD[mm]毎にC方向位置の検出手段14から矩形パルス信号(たとえば、TTLレベル信号)が出力されるように設定しておく。超音波プローブ3をC方向走査手段4で走査したとき、走査ピッチD[mm]毎に矩形パルス信号が出力され、この矩形パルス信号は矩形パルス信号の変換部15に入力される。ここで、走査ピッチD(mm)は測定空間分解能である。
【0028】
図3は矩形パルス信号の変換部15の動作イメージを説明する図である。図3(A)は矩形パルス信号の変換部15に入力される信号、図3(B)は矩形パルス信号の変換部15から出力される信号である。図3に示すように矩形パルス信号の変換部15に入力されるD[mm]毎のパルス信号に同期して、次式で示される繰返し周波数(PRF)Kp[Hz]で矩形パルス信号をK回出力する。
【0029】
Kp=Vm×(1/D)×K・・・(1)
【0030】
予め設定されたD[mm]毎に矩形パルス信号がK回出力されるので、このパルスに同期させて超音波の送受信を行い、K個の受信信号を取得して、同期加算の平均点数K[点]の同期加算の平均処理を行う。このようにすることで、C方向走査手段4の加減速に関係なく、所定のD[mm]毎に同期加算の平均された受信信号を取得することができる。
【0031】
同期加算の平均処理は、A/D変換部8で離散値化した後、信号処理部9で行っても良いし、専用のハードウエアで処理を行い、D/A変換された出力結果をA/D変換部8で取り込むようにしても良く、その処理手順は本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに変形することが可能である。
【0032】
C方向に走査して超音波を送受信する際に、送信する超音波のビームサイズは小さいことが好ましい。図4に超音波による母材と溶接部の組織の境界からの反射が得られるメカニズムを示す。
【0033】
溶接部2の組織は母材1よりも結晶粒が粗大で、結晶ごとに音速が異なる。ビームサイズが大きい場合、図4(A)のように、結晶方位による音速の違いが平均化されてしまい、母材1と溶接部2とで音速がほぼ同じになってしまい、境界面からの反射波を得難くなる。一方でビームサイズを小さくすると、図4(B)のように、音速の平均化の影響は小さく、溶接部2と母材1とで音速がわずかに異なり、ビームサイズが大きいときよりも反射波を得やすくなる。したがって、超音波ビームBのビームサイズは小さいことが好ましく、そのビームサイズは溶接部2の組織の平均粒径まで絞ることが好ましい。具体的には、好ましいビームサイズは、ホイールのリム溶接では70〜100μ程度、UOE鋼管や電縫溶接管などでは、300〜1000μ程度である。ビームサイズが小さい超音波ビームを送信する手段としては、超音波プローブ3は、単一の振動子からなるプローブ、または複数の振動子が1次元または2次元に配置されたアレイプローブのいずれを用いてもかまわない。単一の振動子からなるプローブを用いるときは、送信周波数を、たとえば、50MHz程度と高く設定し、音響レンズにより超音波ビームを絞る。アレイプローブを用いるときは、単一の振動子からなるプローブを用いるときと同様に、送信周波数は高くして、各振動子の送信タイミングを制御することで、超音波ビームを絞る。
【0034】
被検査体Sに対して、超音波送信手段6により超音波プローブ3の振動子を駆動して超音波を送信する。溶接部2の組織から得られる反射波は非常に微弱な信号のため、電気ノイズに対して、S/Nを確保するために、超音波の送信電圧は200〜300V以上が好ましい。
【0035】
A/D変換部8で離散値化された信号は、移動平均波形の減算部10に送られる。A/D変換部8で離散値化された波形の振幅をそのまま増幅して、輝度変換すると、溶接部2の組織からの反射エコー以外のエコー、たとえば、TパルスまたはSエコーの尾引きや、超音波プローブ内部の残響ノイズといった低周波のベースノイズも同時に増幅されてしまい、結果として明瞭な画像を得ることができない。ここで、Tパルスは直接接触法における送信パルス、Sエコーは水浸法における被検査体表面からの反射エコーのことである。
【0036】
そこで、移動平均波形の減算部10では、図5に示すように、受信しA/D変換された波形に対してベースノイズのみを抽出し、このベースノイズを波形形状から減算し、その後、増幅することで、被検査体S内部からの反射波のみを強調する。波形の移動平均点数mは、送信波形パルスの一波長の長さをPt[sec]、離散値のサンプリング周波数をSp[Hz]として、次式で求められる値にすることが好ましい。
【0037】
m=Pt×Sp ・・・(2)
【0038】
送信パルスの一波長の長さPtは、被検査体Sの底面反射波のエコーを事前に測定し、測定された波形形状から決定する。被検査体Sの組織による周波数の減衰を考慮しなくて良い場合には、水浸法(全没水浸法や局部水浸法、水柱法を含む)の場合は、被検査体Sの表面反射波を用いて一波長の長さを測定し、その波形から決定しても良い。また、一度画像化した後、任意に強調したい反射波形を選択し、その波形形状からPtを決定しても良い。
【0039】
強調したい周波数の一波長の長さ分だけ移動平均処理を行うと、図5に示すように、送信波形パルスまたは抽出した周波数成分の波形のみが相殺されて、ベースノイズのみを抽出することができ、このベースノイズを元信号から減算することで、ベースノイズを除去することができる。ゆえに移動平均波形の減算処理を実施することで、ベースノイズは強調されずに溶接部2の組織からの反射エコーのみを増幅することが可能となる。移動平均波形の減算処理は、一断面分に相当する超音波波形を受信した後に一括して計算しても良いし、走査しながら超音波の送受信毎に計算しても良い。
【0040】
図6に移動平均波形の減算処理の効果を示す。図6は、周波数50MHz、焦点近傍での超音波ビームサイズが70μm程度の超音波ビームを用いて、ホイールのリム溶接部分を画像化した例である。超音波プローブをXY走査(スキャン)可能なスキャナーに取り付け、C方向に走査しながら超音波の送受信を行い、受信信号をA/D変換装置で離散値化して計算機に取り込み、輝度変換して表示したものである。図6(A)は移動平均波形の減算処理を実施する前の例であり、図6(B)は図6(A)に対して移動平均波形の減算処理を実施した例である。A/D変換装置のサンプリング点数は500MHzとしている。移動平均波形の減算処理に用いる波形は50MHzの周波数成分のみを残せるように、(2)式を用いてm=10点として計算している。
【0041】
図6(A)では、溶接部2の組織の反射以外にも低周波成分が増幅されているのがわかる。しかし、本発明を実施した図6(B)では低周波成分が除去され、溶接部2の組織が明瞭に画像化されていることがわかる。
【0042】
次に、最大輝度の抽出処理部11について説明する。超音波の反射波形の振幅を輝度変換して断面形状を画像化すると、図7に示す例のように、部分的に「抜け」が生じてしまうことがある。これを解決するために、最大輝度の抽出処理を施す。
【0043】
最大輝度の抽出処理について、主に図1と図8を用いて説明する。図8は図1および図2における最大輝度の抽出処理部11の詳細を示す図であり、16はL方向走査手段5の制御部、17はメモリ制御部、18は画像変換部、19は最大輝度の計算部である。
【0044】
まず、図1において位置P1においてC方向走査手段4で超音波プローブ3を走査しながら、超音波を送受信し、受信した信号をA/D変換部8で離散値変換して、信号処理部9に送る。信号処理部9で前述の同期加算の平均処理や移動平均波形の減算処理などの前処理が行われ、最大輝度の抽出処理部11の内部にあるメモリM1〜Mnに格納される。メモリ制御部17はL方向走査手段の制御部16から、超音波で計測した位置の情報を取得して、位置P1で計測した受信信号であればメモリM1に、位置P2で計測した受信信号でればメモリM2にというように、位置Pnで計測した受信信号をメモリMnに格納する。
【0045】
位置Psで測定した波形をメモリMsに格納する方法について、図9を用いて説明する。
【0046】
図9中、D1〜DmはC方向に対して波形を測定した位置である。図9ではC方向に対してm点の位置で波形を測定したと仮定する。この場合、各波形はA/D変換部8によって離散値化され、前述の移動平均波形の減算処理といった前処理が施され、メモリMsに格納される。A/D変換部8では波形をSd点に離散値化する。メモリMsは二次元のマトリクスになっている。メモリM1〜Mnはそれぞれ、二次元構造としている。以下、位置Psにおいて、C方向の位置D、波形の伝搬時間方向tにおける離散値化された値はMs(x、t)と表記することにする。
【0047】
メモリM1〜Mnに格納された波形データは、図8に示す如く、画像変換部18を介して、画像データB1〜Bnに変換される。超音波の受信信号および、同期加算の平均処理や移動平均波形の減算処理などの前処理された超音波の受信信号は、図9(A)に示すような、正負の振幅を持った波形形状をしている。画像変換部18で超音波の受信信号から画像に変換するには、図10(A)のように正負に振幅を持った波形に対して全波整流を行い、図10(B)に示す、負の振幅を正側に折り返した形状に一度変換する。その後、全波整流された波形の振幅に輝度を割り当てる。割り当ての関係を次式に示す。
【0048】
【数1】
【0049】
メモリに格納されている、C方向に走査して得られた波形全てに、この動作を繰り返し行い、超音波波形から画像を作成する。以下、画像Bn上の任意の位置(x,y)における輝度をBn(x,y)と表記することにする。ここで、xはC方向、yは深さ方向の位置である。
【0050】
作成された画像B1〜Bnから次式に示すように重なり対応する各画素データを比較して最大輝度を抽出し、出力画像Bを作成する。
【0051】
B(x,y)=Max{Bs(x,y) ;s=1〜n} ・・・(4)
【0052】
図11は最大輝度の抽出処理に用いる画像の例であり、長手方向に0.5mmずつP1、P2、P3、P4の各位置で、周波数50MHz、超音波ビームBの焦点近傍でのビームサイズ径が70μm程度を送信可能なプローブ3で0.1mmピッチで超音波を送受信して、A/D変換後に前述の移動平均波形の減算処理を実施して、全波整流し、得られた信号振幅を輝度変換して作成した画像である。P1〜P4の4枚の画像の最大輝度を抽出して画像化した結果が図12である。図11の各画像と比較して、図12は溶接部2の組織が明瞭に可視化できており、最大輝度の抽出処理の効果を確認することができる。
【0053】
なお、超音波の送受信の方式は垂直法に限定されず、斜角法やタンデム法に適用してもかまわない。
【0054】
又、本発明の適用対象はホイール溶接部に限定されず、鋼板の付き合わせ溶接部、隅肉溶接部、鋼管の溶接部等にも同様に適用可能である。
【実施例】
【0055】
UOE鋼管溶接部の組織形状に対し、タンデム法を適用して、本発明による画像化を行なった。
【0056】
図13に本実施例における画像化方法全体のフローチャートを示す。管軸方向に走査(スキャン)しながら1断面におけるビーム走査および画像化を複数行ない、得られた複数の1断面画像を最大輝度抽出処理により合成し、溶接部の画像を取得している。
【0057】
具体的には、図13の左側に示したステップ100で、プローブ30を管軸方向(図14の紙面に垂直な方向)走査開始位置に合わせる。
【0058】
次いで、ステップ110で1断面の画像化を実行する。具体的には、図13の右側に示す如く、先ずステップ111で、ビームBを走査開始位置(図14では左側の位置)に合わせる。
【0059】
次いでステップ112でタンデム法による測定を行う。
【0060】
ステップ113で肉厚方向の走査が完了したか否かを判定し、完了していない場合には、ステップ114で、プローブ30のアレイ設定を変更することによって、ビームを肉厚方向に1ピッチ分(例えば0.5mm)移動(電子走査)して、ステップ112に戻る。
【0061】
一方、ステップ113の判定結果が正であり、肉厚方向の走査が完了したと判定されるときには、ステップ115に進み、管軸と垂直な方向(図14の左右方向)の走査が完了したか否かを判定する。判定結果が否であった場合にはステップ116に進み、ビームBを管軸と垂直方向に1ピッチ分(例えば0.1mm)移動(機械走査)する。次いでステップ117に進み、ビームBを肉厚方向走査開始位置(例えば被検査体Sの表面位置)に合わせて、ステップ112に戻る。
【0062】
一方、ステップ115の判定結果が正であり、管軸と垂直な方向の走査が完了したと判定されたときには、ステップ118に進み、測定結果から1断面の画像を作成して、1断面画像化を終了する。
【0063】
ステップ111から118を繰り返して、ステップ110の1断面の画像化を実行した後、図13左側のステップ120に進み、管軸方向走査が完了したか否かを判定する。判定結果が否である場合にはステップ130に進み、プローブ30を管軸方向に1ピッチ分(例えば10mm)移動して、ステップ110に戻り、次の1断面における画像化を実行する。
【0064】
ステップ120の判定結果が正であり、管軸方向の走査が完了したと判定されるときには、ステップ140に進み、最大輝度抽出処理画像の作成が完了したか否かを判定する。判定結果が否である場合には、ステップ150に進み、画像化領域中の一点を指定し、ステップ160で、全画像の輝度読取が完了したか否かを判定する。
【0065】
ステップ160の判定結果が否である場合には、ステップ170へ進み、取得した画像から指定点に対応する画素の輝度を読み取り、ステップ160に戻る。
【0066】
一方、ステップ160の判定結果が正であり、全画像の輝度読取が完了したと判定されたときには、ステップ180に進み、得られた輝度中の最大輝度を抽出して、ステップ140に戻る。
【0067】
一方、ステップ140の判定結果が正であり、最大輝度抽出処理画像の作成が完了したと判定されるときには、ステップ190に進み、得られた最大輝度を合成して画像を作成し、処理を終了する。
【0068】
図14に本実施例における1断面の画像化方法及び画像化結果の例を示す。プローブとしては周波数10MHzのアレイプローブ30を用い、水浸法により計測を行なっている。アレイプロープ30は遅延時間制御および音響レンズにより送信ビーム・受信ビームの集束を行なっており、ビーム径は約1mmである。超音波ビームBの走査は、肉厚方向についてはアレイプローブ30の送受信振動子選択および遅延時間制御による電子走査より行なっており、管軸と垂直方向については機械走査により行なっている。この方法で、肉厚方向に0.5mmピッチ、管軸と垂直方向に0.1mmピッチでビーム走査を行ないつつ計測を行ない、検出した反射信号に基づき画像化を行なった。計測対象は、厚さ38mmのUOE鋼管溶接部であり、画像化範囲は肉厚方向外面から内面まで、管軸と垂直方向は溶接部を中心に50mmの範囲である。
【0069】
図15に本実施例における最大輝度の抽出処理の例を示す。図14に記載の方法による1断面の画像化を、管軸方向10mmピッチで移動しながら10回実行し、得られた10断面の画像から最大輝度の抽出処理を行なって画像を合成した。これにより、1回の画像化では溶接部の境界線上の全ての点において信号が得られない場合でも溶接部の境界線全体を画像化することが可能である。図15には比較のため、UOE鋼管溶接部の断面マクロ写真の例を示している。写真との比較から、本実施例ではUOE鋼管溶接部の溶接部と母材の境界線、および溶接部中央(溶接組織の向きが変化している)が画像化できていることがわかる。
【符号の説明】
【0070】
S…被検査体
1…母材
2…溶接部
3…超音波プローブ
B…超音波ビーム
4…C方向走査手段
5…L方向走査手段
6…超音波送信手段
7…超音波受信手段
8…A/D変換部
9…信号処理部
10…移動平均波形の減算部
11…最大輝度の抽出処理部
12…出力部
13…C方向走査手段の制御部
14…C方向位置検出手段
15…矩形パルス信号の変換部
16…L方向走査手段の制御部
17…メモリ制御部
18…画像変換部
19…最大輝度の計算部
30…アレイプローブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の溶接方向と直交する断面を超音波ビームで走査しながら被検査体内部からの反射信号を受信し、受信した反射信号に基づいて走査した断面を画像化して溶接部の組織を検査するための溶接部の組織形状の画像化方法において、
溶接部の組織からの反射波を強調することを特徴とする溶接部の組織形状の画像化方法。
【請求項2】
前記画像化の際に、受信して離散値化された信号波形Rbに対して、移動平均点数mで移動平均波形Raを減算することで、受信信号の低周波成分を除去して、溶接部の組織からの反射信号を抽出し、抽出された反射信号のみを増幅することにより、溶接部の組織からの反射波を強調することを特徴とする請求項1に記載の溶接部の組織形状の画像化方法。
【請求項3】
前記移動平均波形Raを算出する際に、抽出したい周波数の一波長の長さをPt[sec]、離散値化のサンプリング周波数Sp[Hz]として、移動平均点数mをPt×Sp[点]とすることを特徴とする請求項2に記載の溶接部の組織形状の画像化方法。
【請求項4】
被検査体の溶接方向に対して異なる複数の位置で、溶接方向と直交する断面を集束された超音波ビームで走査して、得られた超音波の受信信号に基づいて走査した断面を画像化し、溶接方向に対する複数の位置で走査して得られた複数の画像を重ね、重なり合う画素の最大値を保持することにより、溶接部の組織からの反射波を強調することを特徴とする請求項1に記載の溶接部の組織形状の画像化方法。
【請求項5】
前記超音波ビームの送受信を所定の周波数で繰返すと共に、受信した反射信号を超音波ビームの送信と同期して加算することにより、溶接部の組織からの反射波を強調することを特徴とする請求項1に記載の溶接部の組織形状の画像化方法。
【請求項6】
前記超音波ビームの最大走査速度がVm[mm/sec]で、走査ピッチがD[mm]、同期加算の平均点数がK[点]のとき、超音波の繰返し送受信周波数Kp[Hz]を次式
Kp=Vm×(1/D)×K
により決定することを特徴とする請求項5に記載の溶接部の組織形状の画像化方法。
【請求項7】
被検査体の溶接方向と直交する断面を超音波ビームで走査しながら被検査体内部からの反射信号を受信し、受信した反射信号に基づいて走査した断面を画像化して溶接部の組織を検査するための溶接部の組織形状の画像化装置において、
溶接部の組織からの反射波を強調する手段を備えたことを特徴とする溶接部の組織形状の画像化装置。
【請求項8】
前記反射波を強調する手段が、前記画像化に際し、受信して離散値化された信号波形Rbに対して、移動平均点数mで移動平均波形Raを減算することで、受信信号の低周波成分を除去して、溶接部の組織からの反射信号を抽出し、抽出された反射信号のみを増幅することにより、溶接部の組織からの反射波を強調するものであることを特徴とする請求項7に記載の溶接部の組織形状の画像化装置。
【請求項9】
前記移動平均波形Raを算出する際に、抽出したい周波数の一波長の長さをPt[sec]、離散値化のサンプリング周波数Sp[Hz]として、移動平均点数mをPt×Sp[点]とすることを特徴とする請求項8に記載の溶接部の組織形状の画像化装置。
【請求項10】
前記反射波を強調する手段が、被検査体の溶接方向に対して異なる複数の位置で、溶接方向と直交する断面を集束された超音波ビームで走査して、得られた超音波の受信信号に基づいて走査した断面を画像化し、溶接方向に対する複数の位置で走査して得られた複数の画像を重ね、重なり合う画素の最大値を保持するものであることを特徴とする請求項7に記載の溶接部の組織形状の画像化装置。
【請求項11】
前記反射波を強調する手段が、前記超音波ビームの送受信を所定の周波数で繰返すと共に、受信した反射信号を超音波ビームの送信と同期して加算するものであることを特徴とする請求項7に記載の溶接部の組織形状の画像化装置。
【請求項12】
前記超音波ビームの走査の最大走査速度がVm[mm/sec]で、走査ピッチがD[mm]、同期加算平均点数がK[点]のとき、超音波の繰返し送受信周波数Kp[Hz]を次式
Kp=Vm×(1/D)×K
により決定することを特徴とする請求項11に記載の溶接部の組織形状の画像化装置。
【請求項1】
被検査体の溶接方向と直交する断面を超音波ビームで走査しながら被検査体内部からの反射信号を受信し、受信した反射信号に基づいて走査した断面を画像化して溶接部の組織を検査するための溶接部の組織形状の画像化方法において、
溶接部の組織からの反射波を強調することを特徴とする溶接部の組織形状の画像化方法。
【請求項2】
前記画像化の際に、受信して離散値化された信号波形Rbに対して、移動平均点数mで移動平均波形Raを減算することで、受信信号の低周波成分を除去して、溶接部の組織からの反射信号を抽出し、抽出された反射信号のみを増幅することにより、溶接部の組織からの反射波を強調することを特徴とする請求項1に記載の溶接部の組織形状の画像化方法。
【請求項3】
前記移動平均波形Raを算出する際に、抽出したい周波数の一波長の長さをPt[sec]、離散値化のサンプリング周波数Sp[Hz]として、移動平均点数mをPt×Sp[点]とすることを特徴とする請求項2に記載の溶接部の組織形状の画像化方法。
【請求項4】
被検査体の溶接方向に対して異なる複数の位置で、溶接方向と直交する断面を集束された超音波ビームで走査して、得られた超音波の受信信号に基づいて走査した断面を画像化し、溶接方向に対する複数の位置で走査して得られた複数の画像を重ね、重なり合う画素の最大値を保持することにより、溶接部の組織からの反射波を強調することを特徴とする請求項1に記載の溶接部の組織形状の画像化方法。
【請求項5】
前記超音波ビームの送受信を所定の周波数で繰返すと共に、受信した反射信号を超音波ビームの送信と同期して加算することにより、溶接部の組織からの反射波を強調することを特徴とする請求項1に記載の溶接部の組織形状の画像化方法。
【請求項6】
前記超音波ビームの最大走査速度がVm[mm/sec]で、走査ピッチがD[mm]、同期加算の平均点数がK[点]のとき、超音波の繰返し送受信周波数Kp[Hz]を次式
Kp=Vm×(1/D)×K
により決定することを特徴とする請求項5に記載の溶接部の組織形状の画像化方法。
【請求項7】
被検査体の溶接方向と直交する断面を超音波ビームで走査しながら被検査体内部からの反射信号を受信し、受信した反射信号に基づいて走査した断面を画像化して溶接部の組織を検査するための溶接部の組織形状の画像化装置において、
溶接部の組織からの反射波を強調する手段を備えたことを特徴とする溶接部の組織形状の画像化装置。
【請求項8】
前記反射波を強調する手段が、前記画像化に際し、受信して離散値化された信号波形Rbに対して、移動平均点数mで移動平均波形Raを減算することで、受信信号の低周波成分を除去して、溶接部の組織からの反射信号を抽出し、抽出された反射信号のみを増幅することにより、溶接部の組織からの反射波を強調するものであることを特徴とする請求項7に記載の溶接部の組織形状の画像化装置。
【請求項9】
前記移動平均波形Raを算出する際に、抽出したい周波数の一波長の長さをPt[sec]、離散値化のサンプリング周波数Sp[Hz]として、移動平均点数mをPt×Sp[点]とすることを特徴とする請求項8に記載の溶接部の組織形状の画像化装置。
【請求項10】
前記反射波を強調する手段が、被検査体の溶接方向に対して異なる複数の位置で、溶接方向と直交する断面を集束された超音波ビームで走査して、得られた超音波の受信信号に基づいて走査した断面を画像化し、溶接方向に対する複数の位置で走査して得られた複数の画像を重ね、重なり合う画素の最大値を保持するものであることを特徴とする請求項7に記載の溶接部の組織形状の画像化装置。
【請求項11】
前記反射波を強調する手段が、前記超音波ビームの送受信を所定の周波数で繰返すと共に、受信した反射信号を超音波ビームの送信と同期して加算するものであることを特徴とする請求項7に記載の溶接部の組織形状の画像化装置。
【請求項12】
前記超音波ビームの走査の最大走査速度がVm[mm/sec]で、走査ピッチがD[mm]、同期加算平均点数がK[点]のとき、超音波の繰返し送受信周波数Kp[Hz]を次式
Kp=Vm×(1/D)×K
により決定することを特徴とする請求項11に記載の溶接部の組織形状の画像化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−257384(P2011−257384A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102435(P2011−102435)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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