説明

溶液において粒子を縣濁または再縣濁するための方法、およびそれに適応した装置

磁気牽引性粒子を縣濁または再縣濁するための方法が提供される。ここで、少なくとも一つの混合容器(10)であって、該混合容器(10)の底部(11)に少なくとも部分的に沈殿する、磁気牽引性粒子(40)を含む混合物(30)によって少なくとも部分的に満たされた混合容器(10)が準備される。混合バー(1)が混合物(30)の中に浸漬されている間、磁場発生装置(4)によって、混合バー(1)の少なくとも前端区域(3)において作動する有効磁場がスイッチオンされる。その後、磁気牽引性粒子(40)の少なくとも一部が混合容器(10)の底部(11)から浮揚し、かつ混合バーに付着する粒子部分が最小となるように、混合バーとともに磁場を動かし、混合容器(10)の底部(11)から混合バーとともに磁場を遠ざける。磁場をスイッチオンしたときの底部からの距離よりも大きな、あらかじめ定められた底部からの距離において磁場をスイッチオフする。その後、混合物(30)中に存在する磁気牽引性粒子が十分に縣濁または再縣濁されるまで、混合バー(1)の前端(3)にスイッチオンされる磁場を存在させることなく、混合バー(1)の反復混合運動を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断または分析目的のために使用される、例えば、液体混合物において、粒子を縣濁するための方法、特に、強磁性および/または常磁性粒子などの磁気牽引性粒子(magnetically attractable particles)およびビーズを縣濁するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分析または診断的研究のためのサンプル調製およびサンプル処理の分野では、磁気牽引性粒子、特に、生物学的標的分子または汚染物質のいずれかが結合し得る磁気牽引性粒子の利用に依存する、処理過程の使用が増大している。磁気牽引性粒子は、適切な磁場によって、それらが縣濁される混合物から分離され得る。これは特に自動化プロセスに当てはまり、これにより、大規模な遠心分離工程無しに、多数のサンプルを短時間で分析することが可能となる。これによって、大規模なサンプルの交代が可能となり、広範に、特に並行して行われる研究の複雑性を相当程度下げることが可能となる。重要な適用分野は、生物学または医学サンプルの精製、特に生物学的標的分子の分離および単離全般、医学診断学、および、可能性のある医薬品を特定するための薬学的スクリーニング法である。
【0003】
磁気牽引性粒子の分離法は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、および特許文献9に開示されている。それらに記載されている方法の基本原理は、分離装置、例えば、磁気バーが、通常は液状の混合物の中に浸漬され、該混合物中の磁気牽引性粒子が磁場の作用によってこの分離装置の表面上に濃縮されるという事実に依存する。その後、粒子が付着した分離装置は、該液体から取り出される。
【0004】
磁性粒子を混合および分離するための外部磁場の適用が、特許文献10に記載されている。このために、特別に設計された混合容器の周囲に、可変磁場の生起が可能となるように、磁極片が配置される。
【0005】
さらに、粒子を混ぜ合せるためには、例えば、特許文献11に記載されるように、混合バーを用い、混合物を回転によって動かし、それによって混合物中の粒子をグルグル回すことが知られる。しかしながら、回転性溶液は特に、自動化並行処理では、きわめて大がかりなものになる。
【0006】
特に、磁性粒子が、分離および/または精製プロセスにおいて、例えば、結合または洗浄プロセスにおいて、複数の溶液と接触する場合、溶液または混合物中の粒子が十分に縣濁されず、底部に沈殿していると、磁性粒子に結合する標的分子の収率に損失が生じたり、あるいは、精製が不十分に終わることがよくある。さらに、このようなプロセスに使用される粒子それ自体が、沈降しやすい傾向を強く示す。したがって、記載のプロセスにおいては、機械的混合運動によって、それぞれ、少なくとも一時的に磁性粒子を平衡状態に維持するか、または、沈殿した粒子を再縣濁するように、努力が為されている。
【0007】
従来技術プロセスの実際の適用の際に出現する一つの問題点は、標的分子、特に生物学的標的分子、または汚染物質によってコートされた粒子は、磁場発生の際、もはや、粒子として、および磁石における磁性粒子の直接または間接の集合体として、磁石に付着せず、むしろ、それぞれ、集塊または薄片として付着することである。このため、例えば、粒子の洗浄、または付着成分の溶出のために磁石から解放された後、粒子は、やっと縣濁させてもひどく低調であり、かつ、きわめて速やかに再沈殿する。これもまた、悪い精製結果を招く可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、特に溶液中に沈殿する粒子を、できるだけ簡単に、縣濁または再縣濁するための方法を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、磁気牽引性粒子を、それぞれ、縣濁または再縣濁するための方法によって解決される。該方法は:
*少なくとも一つの混合容器であって、該混合容器の底部に少なくとも部分的に沈殿する、磁気牽引性粒子を含む混合物によって少なくとも部分的に満たされた混合容器を準備する工程;
*混合容器の底部に向けられた前端を持つ少なくとも一つの混合バーであって、少なくとも該前端区域において、任意に磁場を発生するための磁場発生装置を有する混合バーを準備する工程;
*混合バーが混合物の中に浸漬されている間、磁場発生装置によって、混合バーの少なくとも前端区域において作動する有効磁場をスイッチオンする工程;
*磁気牽引性粒子の少なくとも一部が混合容器の底部から浮揚し、かつ混合バーに付着する粒子部分が最小となるように、磁場の動きによって混合容器の底部から磁場を遠ざける工程;
*磁場をスイッチオンしたときの底部からの距離よりも大きな、あらかじめ定められた底部からの距離において磁場をスイッチオフする工程;
*混合物中に存在する磁気牽引性粒子を、それぞれ、縣濁または再縣濁するために、混合バーの前端にスイッチオンされる磁場を存在させることなく、混合バーの反復混合運動を実施する工程、
を含む。
【0010】
本記載において、「磁気牽引性粒子」とは、磁場によって引き付けることが可能な粒子およびビーズとして理解すべきである。したがって、実例は、強磁性、フェリ磁性、常磁性、および/または超常磁性物質ならびに磁化可能物質を有する粒子およびビーズである。磁性粒子または磁化可能粒子は、多くの場合、最終的に、生物学的標的分子または汚染物質の結合をもたらす、非磁性または磁化可能物質から構成される表面を少なくとも部分的に示す。このような粒子のサイズは、約500 nmから約25μmの範囲であり得る。
【0011】
混合容器は、特に、分析および診断学の分野で通常使用されるいずれの容器であってもよい。例えば、それは、化学的、生物学的、および/または医学的用途のための、単一で、分離、独立した反応容器、または、一つ以上の、さらに別の、通常は同型の反応容器と共にユニットを形成する反応容器、例えば、いわゆるマルチウェルプレートの形状を取る反応容器であってもよい。これらの反応容器は、積層可能プレートとして組み合わせることも可能である。このようなプレートは、一般に、バイオテクノロジー分野では、それぞれ、生物サンプルの手動的または自動化精製、または、特異的成分、例えば、核酸またはタンパク質の単離、または、アッセイ、PCRなどの下流処理のために使用される。その実施の際、磁気牽引性粒子を含む混合物を含むものは、どのような反応容器または混合容器であってもよい。混合物は、更なる物質を、例えば、溶解または縣濁状態で含むことが可能である。
【0012】
一般に、磁性粒子は、未処理または前処理したサンプルに、粉末または縣濁液として加えられる。最初、粒子の多くは底に沈む。磁性粒子が縣濁液の形で存在し、サンプルまたは混合物が添加される場合も、こうなるはずである。通常、本発明による方法を適用する時点で、磁気牽引性粒子は、主に、混合容器の底部に配置される、すなわち、該粒子は沈殿する。この場合、混合物中の粒子は再縣濁される。一方で、それぞれ、サンプルまたは混合物が加えられる前に、粉末状粒子が混合容器中に存在することも可能である。この場合、本法は、混合容器の底部に蓄積した磁気牽引性粒子を縣濁するために使用される。
【0013】
それぞれ、縣濁または再縣濁するために使用される混合バーは、少なくとも一つの磁場発生装置を有する。この装置の機能は、任意に、特に混合バーの前端区域において、任意に有効な磁場を生成することであり、すなわち、該前端区域において有効磁場はスイッチオンおよびオフすることが可能である。ある部位で磁場を「スイッチオン」するとは、有効磁場がその部位において生成されること(例えば、そこに配されるソレノイド(電磁石)をスイッチオンすることによって)、あるいは、磁場がその部位に移送されること(例えば、永久磁石を動かすことによって)を意味する。後者の条件の場合、磁場は、全磁化力がその部位において活性である場合にのみスイッチオンされていると見なされ、すなわち、磁場がその部位に向かってまだ動いているときは、磁場はまだスイッチオンされているとは見なされない。一方、「スイッチオフ」という用語は、それぞれ、前端区域において有効磁場がもはや生成されていないか、または、以前に生成された磁場が取り除かれることを意味する。磁場は、それが、混合物中の粒子の動き、特に、混合バーへの牽引を可能とする場合、本発明の意味において「有効」である。したがって、「スイッチオン」および「スイッチオフ」は、特に、混合バーの前端区域における磁場の任意的発生を指す。一般に、磁場は、混合バーの前端区域に生成されるだけでなく、バーの長さに亘って拡張することが可能である。しかしながら、混合バーの前端に対して反対の磁極が、同様に混合物の中に浸漬されるのは回避することが好ましい。必要な磁場の強度は、溶液の粘度、および、粒子のサイズ、重量、および磁性物質に応じて選ばなければならないことは言うまでもない。
【0014】
既に容器の中に浸漬させるか、または溶液と接触させた混合バーを用いると、混合容器の底部に存在する粒子は、先ず、該底部から、混合バーの前端に向かって引き寄せられる。これは、例えば、混合バーの前端を、好ましくは磁場を発生する装置にそって、混合容器の底部に向かって動かすことによって起こる。しかしながら、混合バーの前端を底部に接触させることは、不要であるばかりでなく、構造およびプロセスの安全性の点からも望ましくない。特に、混合バーの前端が、底部に近接して、したがって、そこに配される粒子に近接して配置されると、磁場発生装置によって、前端区域において粒子を混合バーの方に引きつける磁場が生成される。任意に、混合バーは、既に磁場を発生している磁場発生装置と共に、混合容器の底部に向かって移動させることが可能であり、あるいは、既に混合容器の底部に近接して配置されている混合バーの前端に向かって、既に磁場を発生している磁場発生装置を移動させることが可能である。次に、この磁場発生装置は、少なくとも部分的に、底部から引き離され、好ましくは混合バーと一緒に混合物から取り出される。特に、生成された磁場の強度ならびに磁場が混合物から引き出される加速度および速度は、沈殿した磁性粒子が、底部から混合物中には移動するが、必ずしも混合バーには付着することがないように、調整されることが好ましい。
【0015】
これは、磁場が常に動いており、特に、底部の近くでは保持時間が最小化されるという事実によって達成されることが好ましい。永久磁石を用いる場合、これは、磁石を先ず底部に向かって動かすことによって(混合バーと一緒に動かしてもよいし、あるいは、そこに存在する混合バーの前端に向かって動かしてもよい)実現することが可能である。磁石が底部に対し、粒子の磁場による牽引が可能とされるほど十分な距離にあると、磁石の動きの反転が起こり、磁石は再び混合バーにそって底部から遠ざけられる。底部に近接する磁石の保持時間は、粒子が該磁石の方に移動はするが、好ましくは、少なくとも混合バーに完全には集中しないように正確に選ぶべきである。混合バーにおける粒子の一部の付着は、一般に、注意深く条件を調整したとしても、完全には回避することはできないが、その一部はできるだけ小さく維持すべきである。底部に対する混合バーの最小距離は、好ましくは0.1から2 mm、より好ましくは0.3から1 mm、もっとも好ましくは0.5から0.6 mmである。磁石の動きが反転する前に、バーの内部チップに対する磁石の最小距離は、好ましくは>0から10 mm、より好ましくは0.3から8 mm、もっとも好ましくは0.5から5 mmである。このようにして、磁石の下(遠位)端から、混合バーの下(遠位)内端までの距離に関する、上記特定の範囲は、好ましくは、平行に走る輪郭と、それらの下端における異なる輪郭を共に持つ二つの場合を含むことが好ましい。
【0016】
ソレノイドを用いると、底部からまだ遠い距離において、それらソレノイドをスイッチオンすることができる。これらの状況下では、プロセスの第1工程、すなわち、粒子の浮揚は、永久磁石を用いる第1工程にしたがって進行することが好ましい。ソレノイドが底部に近接するまで活性化されないと、磁場の動きは、磁場の発生と、混合バーに向かう粒子の加速の直後に、底部から遠ざけられる混合バーと共に起こることになる。
【0017】
底部に対する、磁石を一体化させた混合バーの距離が最小である(好ましくは、0.1から2 mm、より好ましくは0.3から1 mm、もっとも好ましくは0.5から0.6 mmである)部位において、0.5から1.5 Tの範囲の磁場強度を持つ活性化磁石の保持時間は、好ましくは0.02から5 s、より好ましくは0.04から3 s、さらに好ましくは0.1から0.5 s、もっとも好ましくは0.2 sである。永久磁石を用いる場合、該磁石の横断経路は、先ず、容器の底部に向かう横断速度(好ましくはa1*t1)に達するまで、動いていない磁石を加速すべきである。その際、磁石は、混合バーと一緒に加速されるか、または、容器の底部に既により近接している混合バーに向かって加速される。任意に、磁石は、さらに続けて、容器の底部に向かう一定の横断速度a1*t1を持つことが可能であり、その際またしても、磁石は、混合バーと同時に動くか、または、混合バーに向かって動く。次いで、磁石は、速度0となるまで負の加速度(好ましくはa2*t2)によって加速される。この負の加速度は、正の加速度の直後に起こることも可能である。したがって、混合バーは、負に加速することも可能であるし、または、あらかじめ加速して速度0とすることも可能である。この経路の横断後、磁石と混合バーは、容器の底部に対する磁石および混合バーの距離がそれぞれ最小となる位置において、速度0となることが好ましい。この横断経路は、下記の関数:
【数1】

に基づくことが好ましい。式中、a1は、それぞれ、磁石または混合バーの加速度であり、t1は、それぞれ、磁石または混合バーの、容器の底部に向かう横断速度に達するのに必要な時間であり、t3は、容器の底部に向かう一定の横断速度における時間であり、t2は、それぞれ、磁石または混合容器の、容器の底部に向かう横断速度を0に下げるのに要する時間であり、sは経過距離であり、ここで、好ましくは、a1 = −a2 t1 = t2である。このようにして、混合バーの横断経路は、磁石の経路と平行であってもよいし、またはそれと異なってもよい。混合バーの横断経路を規定する関数は、磁石のものと一致すべきであるが、磁石および混合バーの特異的パラメータは異なる値である。磁石および混合バーの横断経路が異なる場合、磁石が、容器の底部に対し最小距離の位置に速度0で達した場合、同様に混合バーも、容器の底部に対し最小距離を示し、速度0を有することが少なくとも確保されるべきである。
【0018】
その後、磁石の上記特定の保持時間は、底部に対する最小距離にしたがうことが好ましく、それから、磁石は、混合バーと一緒に、前述の経路と同様ではあるが、容器の開口部に向かう横断経路をたどることが好ましい。加速の期間t1およびt2は、好ましくは0.02から5 s、より好ましくは0.04から3 s、さらに好ましくは0.1から0.5 sの範囲にある。
【0019】
しかしながら、下方移動、容器の底部からの最小距離における停止、保持時間、および上方移動の動作順序が、一般に上述にしたがう限り、上述の横断経路は、混合バーについても、磁石についても、例えば、上述のものとは異なる関数によって独立に表されることも考えられる。
【0020】
底部に対する最小距離に達する前にスイッチオンされるソレノイドを使用する場合、横断経路は、永久磁石におけるものと同様にすべきである。底部に対する最小距離に達するまでスイッチオンされないソレノイドを用いる場合、横断経路は、上述の、容器の開口部に向かう永久磁石の横断経路と一致すべきである。
【0021】
粒子が、十分に、例えば、選ばれた高さに浮揚されると、それらは解放される、すなわち、該粒子の運動方向はもはや磁場によって影響されない。これは、磁場をスイッチオフすることによって、または、混合バーから磁場発生装置を除去することによって起こることが好ましい。粒子が解放されるのと同時に、または解放後間もなく、混合バーは、混合運動に設定されて、粒子を、溶液中にできるだけ均一に分布するようにする。混合運動は、典型的には、混合バーの上下反復運動、すなわち、混合バーの垂直運動である。一般に、混合バーの回転運動、または垂直および回転運動の組み合わせも同様に可能である。混合行程の数は定められないが、通常、混合物においてどの程度の粒子の均一分布が望まれるかに応じて、オペレータによって決められる。したがって、縣濁または再縣濁の程度が、それぞれ、オペレータの基準にまかせられるか、または、現在のシステムで可能な最善の粒子の縣濁または再縣濁と一致するのであれば、粒子は、それぞれ、十分に縣濁または再縣濁されることが好ましい。多くの場合、浮揚、縣濁後再沈殿した粒子部分が依然として比較的小型であるならば、粒子は十分に縣濁される。
【0022】
本発明による方法を用いると、沈殿した粒子は、溶液において、効果的に底部から浮揚させ、それぞれ、縣濁または再縣濁させることが可能であることが実験から示された。したがって、これは、言葉の真の意味での分離プロセスではなく、すなわち、粒子はできるだけ定量的に磁石、またはそれを取り囲む付属物(bush)に保持され、混合容器から取り出されるというのではなく、粒子は単に再縣濁されるだけで、それも、特に、最適結合、洗浄作用、溶出などを実現するために再縣濁されることが好ましい。磁場は、沈殿した粒子を浮揚させるためだけに使用されることが好ましく、一方、混合バーの混合運動による、溶液中の粒子の分配は、磁場がスイッチオフされると起こる。
【0023】
したがって、本発明による方法は、底部から既に浮揚している粒子の、単なる分配を、比較的穏やかな混合運動によって起こすことが可能であるという利点を有する。磁場を使用しない場合必要とされる、もっぱら強い混合運動による、沈殿した粒子をぐるぐる回すことは必要とされない。したがって、本発明による方法では、溶液は、非常に強く動かす必要はなく、そのため、自動化平行処理の際、隣接する混合容器同士の交差汚染の危険は顕著に最小化される。
【0024】
さらに、本発明の方法によれば、混合バーは、沈殿した粒子を浮揚させるために、完全に底部まで運ぶ必要はなく、単に、底部に接近させるだけでよい。したがって、混合容器の底部に対する混合バーの衝撃は回避される。磁場を使用せず、もっぱら混合バーの混合運動によって沈殿した粒子をぐるぐる回す場合、混合バーは、直接底部に着地させなければならない。なぜなら、そうしないと、粒子の大部分がぐるぐる回されない危険性があるからである。特に、平坦な底部を持たない容器では、単なる機械的混合では、粒子は縣濁または再縣濁されず、むしろ、底部に押し付けられる可能性がある。さらに、このような、単なる機械的再縣濁法は、それぞれ、底部と混合容器の間の衝突、および、それに関連する底部の損傷および混合物の排出を阻止または最小化するために、高度に複雑な設計工学を必要とする。
【0025】
上述の問題点は、磁気牽引性粒子を、それぞれ、縣濁または再縣濁する方法による別の態様にしたがって解決することが可能である。ここに、その方法は:
*溶液によって少なくとも部分的に満たされた、少なくとも一つの混合容器であって、該混合容器の底部には磁気牽引性粒子が沈殿している混合容器を準備する工程;
*混合容器の底部に向けられた前端を持つ少なくとも一つの混合バーであって、該前端区域において、任意に磁場を発生させるための磁場発生装置を含む混合バーを準備する工程を含み;
*該方法によって、磁気牽引性粒子の少なくとも一部は、溶液中に浸漬された混合バーの前端に生成された磁場によって浮揚され、次いで、混合バーの前端に磁場を生成させること無く、混合バーの反復混合運動によって、溶液において、それぞれ、縣濁または再縣濁される。
【0026】
本態様は、上述および後述の態様の個別局面および特徴、特に混合バーの構造、磁場の発生法、混合運動の時間スケジュール、および磁場の発生に関する局面および特徴と適宜組み合わせることが可能である。
【0027】
もう一つの態様によれば、磁気牽引性粒子を縣濁または再縣濁するための装置が提供される。該装置は:
*前端を有する混合バーであって、該前端区域において任意に磁場を発生させるための磁場発生装置を含む混合バーを少なくとも一つ含み;
*ここに、この方法を実施するための装置は、本明細書に記載される態様の内の一つにしたがって構築される。
【0028】
下記において、本発明は、添付の図面に示される態様に基づいて説明されるが、これらの態様から、さらに別の利点および改良が明らかである。しかしながら、本発明は、具体的に記載される態様のみに限定されるものではなく、都合よく改良、および改変することが可能である。本発明によるさらに別の態様を達成するために、ある態様の個別的特徴同士、および、ある態様の特徴と別の態様の特徴を適切に組み合わせることは本発明の範囲内にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】DE 44 21 058
【特許文献2】DE 103 31 254
【特許文献3】DE 10 2005 004 664
【特許文献4】WO 94/18565
【特許文献5】WO 99/42832
【特許文献6】WO 02/40173
【特許文献7】WO 2005/044460
【特許文献8】US 5 942 124
【特許文献9】US 6 448 092
【特許文献10】WO 2006/010584
【特許文献11】US 2006/0118494
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1Aおよび1Bは、混合バーの第1および第2態様を示す。
【図2】図2は、混合バーの第3態様を示す。
【図3−1】図3Aから3Eは、本発明による方法の態様の1つの操作手順を示す。
【図3−2】図3Aから3Eは、本発明による方法の態様の1つの操作手順を示す。
【図3−3】図3Aから3Eは、本発明による方法の態様の1つの操作手順を示す。
【図4−1】図4Aから4Eは、本発明による方法の別の態様の1つの操作手順を示す。
【図4−2】図4Aから4Eは、本発明による方法の別の態様の1つの操作手順を示す。
【図4−3】図4Aから4Eは、本発明による方法の別の態様の1つの操作手順を示す。
【図5】図5は、本発明による方法の別の態様に相当する、可動式永久磁石を有する混合バーのリフトダイアグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面に示した態様は、実尺ではなく、単に、対応する態様の具体的表示を支援するものであるにすぎない。したがって、個々の特徴は、より大きな、またはより小さなスケールで描写することが可能である。これらの図面において、同一要素には、同じ参照数字が付与される。
【0032】
図1Aは、混合バー101の第1態様を示す。この混合バーは、例えば、長い、円筒形状を有していてもよい。混合バー101は、例えば、通常、非磁性材料からなる、円筒形または回転対称の外面カバー102を有する。カバー102の材料は、好ましくは、磁場の強度を下げないか、下げるとしてもごく僅かとなるように選ばれることが好ましい。例えば、カバー102は、例えば、かなりの程度まで寸法安定性を有する、不活性合成材料からなることができる。寸法安定性を実現するために、カバー102の材料の厚みは、適切に選択することが可能である。さらに、カバーは、例えば、カバー102の内側に付加構造を設けることによって強化することが可能であり、その際、その構造は、カバー102とは異なる別の材料からなることもできる。複合材料も可能である。さらに、カバー102は、その外側に構造を持つことも可能である。カバーは、通常、その前端103において閉鎖される。この端は、同時に、混合バー101の前端103を形成する。
【0033】
第1態様によるこの混合バー101では、カバー102の内部に、永久磁石104が移動可能に、特に、カバー102の長手方向に移動可能に配置される。永久磁石104は、バー105によって、カバー102の中を長手方向に動かすことが可能である、すなわち、永久磁石は、特に、前端区域103から取り出し、再び前端区域103の中に収めることも可能である。これは、例えば、ここには図示されない適切なデバイス操作によって実施される。混合バー101も、例えば、長手方向に移動可能である。それによって、混合バー101および永久磁石104は、互いに独立に動かすことが可能である。この態様では、可動式永久磁石104は磁場発生装置を表す。
【0034】
混合バー101は、図1Aに示すように混合容器110の中に挿入することが可能である。混合容器110は、例えば、寸法安定性を有する軟らかい材料で、部分的に可撓性である材料からなることができる。例えば、合成材料を、混合容器のために使用することが可能である。したがって、混合容器(類)110の材料は、カバー102の材料よりも軟らかくてもよい。通常、隣り合わせに置かれるいくつかの混合容器110は組み合わせて、ここには図示されないプレートとすることが可能である。
【0035】
図1Aは、尖った、例えば、テーパー状の底部111を持つ混合容器110を示す。混合バー101の前端103は、混合容器110の形状に適合し、同様に、尖った、例えば、テーパー状の形状を取ることも可能である。混合容器の底部111、および混合バーの前端103については、他の形状も可能であり、例えば、凹形、円錐形、平坦形、または丸形であってもよい。混合容器の底部111、および混合バー前端103の形状については、自由曲面(free formed surface)も考えられるが、ただし、構築、生産、および手順の観点からは上記のものよりも好ましくない。永久磁石104は、その頂上(図示した例ではそのN極)が、混合バー103が完全に沈められた場合でも、常に液面の上にあるように決定される縦寸法を有すると有利である。
【0036】
永久磁石104は、図1Aに示す態様にしたがって、主に混合バー110の長手方向に延びる磁場を生成する。これは、図1Aでは、両極(N極およびS極)の配置によって示される。磁場はさらに、別の向き、例えば、混合バー101の長軸に対し側方の向きを示すことも可能である。永久磁石104は、図1Aでは、混合バー101の長手方向に比較的短く描かれている。さらに、永久磁石104は、長手方向に別の寸法を持つことが可能である、例えば、もっと大幅に長くすることも可能である。さらに、永久磁石104は、二つ以上の永久磁石によって形成することも可能である。
【0037】
永久磁石104によって生成される磁場の、混合バー101の前端103に対する空間位置は、永久磁石104を移動させることによって変更することが可能である。永久磁石104を、混合バー101の前端103に向かって移動させると、永久磁石104によって生成される磁場は、そこで有効となる。したがって、混合バー101の前端において「有効な」磁場が「スイッチオン」される。しかしながら、永久磁石104が、混合バー101の前端103からあまりに遠く引き離されると、永久磁石104によって、前端103において生成される磁場の有効性は、磁気牽引性粒子を浮揚させるのに有効な磁場がもはや無くなる程度にまで弱められる。したがって、磁場は、混合バー101の前端103において「スイッチオフ」される。
【0038】
磁場をスイッチオンおよびオフするためのもう一つの態様が、図1Bに示される。これは、図1Aの永久磁石104と比べると、長手方向に比較的長い永久磁石106を含み、該磁石は、例えば、強磁性材料から形成される保護カバー107によって囲まれる。永久磁石106も、保護カバー107も、混合バー101の長手方向に移動可能に配置することが可能であり、かつ、ここには図示されていない、対応する操作デバイスによって独立に動かすことが可能である。磁場を「スイッチオン」するには、例えば、ここに図示される永久磁石106のS極を露出するように、保護カバー107を、前端103から引っ込めることができる。そうすることによって、磁場のストリームライン(streamline)が、カバー102に貫通し、混合バー101を越えて進行することが可能となる。磁場を「スイッチオフ」するには、保護カバー107を再び永久磁石106の上に被せ、それによって、該永久磁石によって生成され、周囲(periphery)に向かう磁場を遮蔽する。または、永久磁石106を、前端103から引っ込めることもできる。この態様では、永久磁石106は、保護カバー107と共に、磁場発生装置を表す。
【0039】
図1Aおよび1Bに示す態様は、それぞれ、永久磁石または保護カバーを移動させることによって、磁場のスイッチオンおよびスイッチオフを誘発する。一方、図2は、磁場がソレノイド120によって生成される態様を示す。ソレノイド120は、例えば、嵩張った前端122を備えるコア121を有する。コア121は、磁場を発生するために、電流が流れることが可能なコイル123によって包まれる。磁場のスイッチオンおよびオフは、この態様では、対応する電流のスイッチオンおよびオフによって行われる。それぞれ、永久磁石または保護カバーを動かすための機械的操作デバイスは、ここに記載の態様では不要である。磁場発生装置は、この態様ではソレノイド120によって表される。一般に、磁場発生装置は、それが磁場のスイッチオンおよびオフを可能とするものである限り、いずれの種類のものであっても、本発明による方法において使用するのに好適である。
【0040】
図3Aから3Eを参照しながら、本発明による方法の一態様を以下に記載する。この態様では、図1Aに示す混合バーを使用するが、ただし長い永久磁石を有するものを使用する。しかしながら、図1Bおよび2に示す他の混合バー、または、異なるやり方で構築された混合バーを使用することも可能である。なお、混合バーは、少なくともその前端において、任意に磁場発生を可能とする。
【0041】
先ず、混合容器10が準備される。混合容器10は、その中に磁気牽引性粒子40が存在する、液体の混合物30を主に含んでもよい。下記では、粒子についてのみ言及する。例えば、粒子40は、混合物から沈殿した粒子40であってもよい。粒子40は、混合容器10の底部11に既に蓄積している。または、混合物30なしで、粉末または縣濁状態で粒子40だけが底部11に存在する混合容器10を準備し、次に、混合物30を混合容器10に移すことも可能である。
【0042】
粒子40は、磁場によって牽引される粒子またはビーズであってもよく、すなわち、粒子は、例えば、強磁性、フェリ磁性、常磁性、または超常磁性物質を含んでもよく、汚染物、または、核酸またはタンパク質などの生物学的標的分子に結合することが可能な表面を少なくとも部分的に有していてもよい。したがって、結合可能な表面は、磁性材料そのものによって構成されてもよく、あるいは、少なくとも部分的に、多くの場合完全に、非磁性材料、例えば、さらに官能基を有し得る、ポリマーまたはSiO2含有材料によって構成されてもよい。粒子は、典型的には、約500 nmから25μmの粒径、好ましくは約1から20μm、および特に好ましくは、約4から16μmの粒径を有する。粒子が、ある一定の粒径分布を有することは自明である。粒子40の表面に官能基が形成される場合もあり、この官能基形成は、それぞれ、実際の分析または診断用途に依存し、本発明の方法とは無関係である。このような磁性粒子は、種々の設計の、種々の用途のためのものが当該技術分野において既に知られる。
【0043】
混合物30は、上述の態様において存在し得る、均一、または不均一な混合物であって、本発明による方法の実施を可能にするに足る十分に低い粘度を示すものである限り、いずれの混合物であってもよい。特に、これらは、大部分が液体成分である混合物である。例えば、それは、分解液、結合液、洗浄液、または溶出液、あるいは、試験または分離の対象とされる、特定の、大抵は生物学的物質、または汚染物質を含む混合物であることができる。混合物が生物学的サンプルである場合、それは、未処理のまま、または、前処理した状態、例えば、分解産物として入手されたものでもよく、細胞残留物などの固体成分を含んでいてもよい。混合物のタイプは、本法の実施には無関係である。
【0044】
混合物30の中に、混合バー1が、その前端3から先ず、混合容器10の底部11に向けて浸漬される。これは、例えば、混合バー1を、その前後面(longitudinal dimension)に沿って下げることによって実施される。この、混合バー1の下方移動を、図3Aに矢印で示す。しかしながら、混合バー1の前端3は、混合物30の中にあらかじめ浸しておくことも可能であり、その後、単純に下降させる。
【0045】
混合バー1の下降と同時に、バー5を動かすことによって、永久磁石4を混合バー1の前端3に向かって滑らせる(移動させる)ことが可能であり、それによってそこで十分な強度の磁場が生成される。永久磁石3は、混合バーが下降されるとき、既に混合バー1の前端3にあってもよい。永久磁石3を混合バー1の前端3に連れて行く方法にかかわらず、混合バー1が混合容器10の底部11に接近した場合、永久磁石は、その時少なくとも断続的に前端3にある。この状態は、図3Bに描かれる。同図に示されるように、混合バー1の前端3は、混合容器の底部11には触らず、底部から、ある程度、通常、定められた距離隔てられることが好ましい。これによって一方では、混合バー1に対する混合容器10の一定範囲の相対的垂直配置が保証される。他方では、例えば、マルチウェルプレートを形成するように組み合わされた、いくつかの混合容器10の並行処理では、個々の混合容器の生産許容度は、特に、一体的に形成される混合容器を持つ、合成材料製プレートにおいて補償することができる。最後に、混合バーが底部にぶつかって、混合容器10を損傷し、混合物の放出を招く可能性を回避することができる。例えば、混合バーは、混合容器の底部11に対し約0.5から2 mmに近づけることが可能である。この距離は、大抵の用途において、混合バーと混合容器の底部と間の衝突を回避するのに十分であることが判明している。底部に対する距離は好ましくは0.1から2 mm、より好ましくは0.3から1 mm、もっとも好ましくは0.5から0.6 mmである。
【0046】
図3Bに示すように、粒子40は、混合バー1の前端区域3において、永久磁石4によって生成される磁場によって引き付けられ、そのため、底部から離れて混合物中に進入するが、それぞれ、混合バー1の外面またはカバー2にはほんの僅かの程度しかくっつくことがない。このようにして、混合バー1によって、粒子40を底部11から浮揚させ、該底部から引き離すことが可能である。そのために、混合バー1は、図3Cにおいて矢印によって示されるように、その前端3に存在する永久磁石4と共に引き上げられる。この上方運動は、付着粒子40の、混合バー1からの解離を回避するために、比較的ゆっくり行うことが可能である。しかしながら、この運動は過度にゆっくりにすべきではない。なぜなら、そうでないと、粒子の、混合バーにくっつく部分が、大きくなりすぎる可能性があるからである。
【0047】
混合バーの引き上げが、粒子40を付着させた混合バーの前端3が混合物3の中に浸漬したままの状態を可能とするほどの距離である場合、永久磁石4も、バー5によって、カバー2に対して相対的に引き上げられる、すなわち、混合バーの前端3から引き離される。したがって、永久磁石4は、比較的速やかに、例えば、急に(jerkily)引き上げることが可能である。急にとは、磁石が、100 mmの距離を、好ましくは0.05から1 s、より好ましくは0.2から0.4 s、もっとも好ましくは0.25から0.3 sの時間でカバーする速度を有することを意味する。ただし、上に挙げたデータは、速度の説明のためだけに向けられたものであり、方法はさらに、n>0によるn*100を構成することが可能であり、この場合関連する処理時間はn倍される。この手順の目的は、混合バー1の前端3における磁場の作用を、十分速やかに最小化またはスイッチオフし、それによって、粒子が、もはや混合バー1によって牽引されることがないようにすることである。前端3から永久磁石4を取り除くと、磁場は弱められ、もはや粒子40を引き付けるほど十分に強いものではなくなる。そのため、粒子40は解放され、すなわち、粒子の運動方向は、もはや磁場によっては決められない。
【0048】
永久磁石4を引き上げることによって、依然として縣濁されたままの、または、依然として混合バーに付着したままの粒子部分に属する粒子40が、混合バー1の外面にそって上方に移動することを避けるために、混合バー1の前端3から、永久磁石4を十分速やかに引き離し、それによって、粒子40が、摩擦および混合物30の粘度によってその動きに追随することができないようにすべきである。混合バー3の、好ましくは円錐形の前端は、粒子40の「移動」に対抗する。永久磁石4の、比較的速やかな持ち上げ(pulling up)は、図3Dにおいて長い矢印によって示される。通常、混合物30の中に有効磁場が生成されないように、永久磁石4は、混合物30よりも上の位置に運ばれる。
【0049】
分析および診断試験では、通常、比較的少量の、例えば、数ミリリットルの、それぞれ、液体または溶液が使用される。例えば、混合容器10は、底部11から計算して、例えば、約15 mmの高さまで充填することが可能である。次に、粒子40は、例えば、約10 mmの高さまで運び、そこで解放することが可能である。
【0050】
混合バー1および永久磁石4の持ち上げは、正確に上述のやり方で実施する必要はない。永久磁石4は、少なくとも部分的に、かつ、既に混合バー1が持ち上げられている場合、その後少し遅れて、引き上げることも可能である。実際に選ばれる方法とは無関係に、目標は、粒子40を底部11から浮揚し、これらを「上方」に運び、すなわち、混合容器の底部から引き離し、それらが、混合物30中に、より容易に縣濁可能となるようにすることである。これによって、底部11に沈殿する、ほぼ全ての粒子40が、混合バー1によって捕捉されるはずである。
【0051】
粒子40は、混合バー1に対し、付着しないか、または、ごく少量しか付着しないことが好ましい。粒子の最適縣濁状態では、磁場の作用によって、粒子を底部11から程よく遠ざけるだけで十分である。さらに、粒子40を十分遠くまで浮揚させ、そのために、続けて開始される、混合バー1の混合運動によって、それらの粒子が混合物中に簡単に分散可能となるようにすることで十分である。
【0052】
混合バーの前端3における磁場の「スイッチオン」に続く、混合バー1の混合運動は、図3Eに示される。本法のこの態様では、混合バー1は、繰り返し上昇、下降し、それによって、浮揚した粒子40を混合物30中に分配させる。この混合運動の持ち上げる高さおよび頻度は、一方では、十分な混合が保証されるように、他方では、一混合容器から隣接混合容器への「飛び跳ね(slopping)」が確実に回避されるように適応される。例えば、混合運動は、約1 Hzから約20 Hzの頻度で実施することが可能である。混合バー1の混合運動は、該混合バーが、溶液体積の相当部分を移動させる場合特に有効である。なぜなら、それによって液面が変動するからである。液面の変動は、図3Aおよび3Bを比べるとはっきりと見て取ることができる。さらに、特に、磁場によって支援される粒子40の取り込みが実施されず、沈殿した粒子をぐるぐる回すために比較的激しい混合運動を必要とする混合デバイスに比べ、この混合運動は、より穏やかなやり方で実施することが可能である。混合行程の間、混合バー1を持ち上げる高さは、例えば、液柱の30から100%であってもよい。
【0053】
他の混合運動も、例えば、混合バー1の回転も可能である。しかしながら、回転運動は、特に、それぞれ専用の混合バーを備える、いくつかの混合容器の並行処理においては、持ち上げ運動よりも、高度な機械的複雑性を要求する。したがって、たくさんの混合バーを、例えば、アレイ状に配置させる、それぞれ、対応する装置またはロボットにおいては、これらの混合バーは、単にその前後面に沿ってのみ移動可能であることが好ましい。その理由は、特に、このような運動は、既に混合バーの挿入に必要なので、さらに別の機械的要素が要求されることはないからである。
【0054】
その結果、本発明の方法によれば、図3Eに示すように、粒子40は、前端3まで、かつ、該前端よりも高いレベルを含む、混合物30の全体積において、高度に均一に、それぞれ、縣濁または再縣濁される。このようにして、本来の能力をより良く利用することが可能である。
【0055】
混合運動にも拘らず粒子40の部分的再沈降が起こった場合、これらの沈殿した粒子40は、永久磁石4によって再度捕捉することが可能である。部分的沈降を、図4Aに示す。部分的沈降が起こるかもしれないこととは無関係に、粒子40は、ある一定時間後、または規則的間隔で磁場を再びスイッチオンすることによって十分遠くにまで浮揚させて、粒子40の、それぞれ、確実な縣濁または再縣濁を可能とする。
【0056】
粒子40を可能な限り捕捉するには、例えば、混合バー1の下方移動の際、永久磁石4を混合バー1の前端3に向けて動かし、そこに十分に強い磁場を生成する。バー5およびここに図示されない操作装置によって動かされる、永久磁石4の運動を、図4Bに長い矢印によって示す。ここに図示される態様では、矢印の長さは、下方運動の速度および持ち上げる高さを表し、混合バー1が永久磁石4と同時には動かず、永久磁石4が混合バー1に向かって動き、そのため、好ましくは永久磁石4と混合バー1とが同時に容器の底部に到達する場合、永久磁石の下方運動の速度および持ち上げる高さは、それぞれ、混合バー1の下方運動の速度よりも高く、持ち上げる高さよりも大きい。
【0057】
図4Cは、粒子40が、混合バー1の前端3によって、底部から混合物の中に再び引き込まれるところを示す。図4Dに示す混合バー1を引き上げ、次いで、永久磁石4に急激にパワーアップすると、前端3から浮揚された粒子40は、再びある一定の高さに運ばれ、そこで解放される。その後、混合バー1のさらに別の混合運動が続く。これは、図4Eに示される。
【0058】
混合バーによる、粒子40の、それぞれ、再捕捉または再縣濁は、例えば、混合運動の上下動中に実現することが可能である。さらに、混合運動は、該混合運動によって縣濁を拘束することがないよう、捕捉のために中断することも可能であるし、または、弛めることも可能である。
【0059】
この状況を明らかにするために、図5が参照される。この図は、混合バー1および永久磁石4を持ち上げる運動の、持ち上げる高さのダイヤグラムを示す。この図において、曲線50は、時間tに関する、それぞれ、混合バーまたはカバー2の持ち上げ運動を示し、曲線51は、永久磁石4の持ち上げ運動を示す。持ち上げる高さhは、別の基準レベル、例えば、混合容器10の底部11に対して相対的に表される。
【0060】
第1相61では、カバー2および永久磁石3は、一緒に下方に動かされ、次いで再び一緒に上方に予め規定した高さまで動かされ、その際、永久磁石4は、混合バーの前端区域3に配置される。この持ち上げ運動は、比較的ゆっくり行うことが可能であり、沈殿した粒子40の浮揚を助け、粒子は予め規定した高さに運ばれる。次に、第2相62では、それぞれ、カバー2または混合バー1の前端3から、永久磁石4を速やかに遠ざける動きが起こるが、一方、カバー2も僅かに引き上げることが可能である。前端3から永久磁石4を素早く引き上げることによって、粒子が解放される。続いて第3相63が来る。この相では主にカバー2のみが動かされて、混合運動を発生する。さらに永久磁石4を動かすことも可能である。その際、永久磁石は、混合物30の液体表面に対して十分な距離を持つべきである。この混合運動は、図5において、定期的または周期的に振動する(oscillating)持ち上げ運動によって描かれる。
【0061】
任意に、その後に、粒子40の新たな持ち上げおよび縣濁を実施してもよい。これは、相64によって示されるが、その場合、混合運動に比べて比較的ゆっくりした持ち上げ運動が起こり、永久磁石4は、それぞれ、カバー2または混合バー1の持ち上げ運動に対し非対称的に動かすことが可能である。このようにして、混合バー1の前端3が、混合容器10の底部11に近接して配置される場合、永久磁石4は、例えば、前端3に向かってきわめて急速に動かされる。これは、既に縣濁している粒子が再び下方に引っ張られるのを阻止するはずである。次に、カバー2の上方運動が、永久磁石4と共に起こるが、永久磁石は、所定の高さに達するまでは、混合バーの前端3から再び急速に引き上げられることはない。次いで、相65において、磁場無しの再混合が行われる。
【0062】
図5に示す相は、結合することも可能である。例えば、混合運動時に、磁場の支援による粒子の浮揚を実施することが可能である。
【0063】
本発明は、上述の態様には限定されず、特許請求の範囲に開示される範囲内における適切な改良を含む。添付の特許請求の範囲は、本発明を一般的用語で説明するための、第1方法であって、拘束的方法ではないと理解すべきである。
【符号の説明】
【0064】
1, 101 混合バー
2, 102 カバー
3, 103 混合バーの前端
4, 104 永久磁石
5, 105 バー
106 永久磁石
107 保護カバー
10, 110 混合容器
11, 111 混合容器の底部
30 混合物
40 粒子
50 混合容器の持ち上げ高さ曲線(lift curve)
51 永久磁石の持ち上げ高さ曲線
61 第1相
62 第2相
63 第3相
64 第4相
65 第5相
120 ソレノイド
121 コア
122 ソレノイドの端
123 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、磁気牽引性粒子を縣濁または再縣濁するための方法。
−少なくとも一つの混合容器(10)であって、該混合容器(10)の底部(11)に少なくとも部分的に沈殿する、磁気牽引性粒子(40)を含む混合物(30)によって少なくとも部分的に満たされた混合容器(10)を準備する工程;
−混合容器(10)の底部(11)に向けられた前端(3)を持つ少なくとも一つの混合バー(1)であって、少なくとも該前端区域(30)において、任意に磁場を発生するための磁場発生装置(4)を有する混合バー(1)を準備する工程;
−混合バー(1)が混合物(30)の中に浸漬されている間、磁場発生装置(4)によって、混合バー(1)の少なくとも前端区域(3)において作動する有効磁場をスイッチオンする工程;
−磁気牽引性粒子(40)の少なくとも一部が混合容器(10)の底部(11)から浮揚し、かつ混合バーに付着する粒子部分が最小となるように、混合バーとともに磁場の動きによって混合容器(10)の底部(11)から混合バーとともに磁場を遠ざける工程;
−磁場をスイッチオンした時の底部からの距離よりも大きな、あらかじめ定められた底部からの距離において磁場をスイッチオフする工程;
−混合物(30)中に存在する磁気牽引性粒子を、それぞれ、縣濁または再縣濁するために、混合バー(1)の前端(3)にスイッチオンされる磁場を存在させることなく、混合バー(1)の反復混合運動を実施する工程。
【請求項2】
反復混合運動後、磁気牽引性粒子(40)を再浮揚するために混合バー(1)の前端(3)において磁場を再発生させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合バー(1)を、その前後面に沿って往復運動させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも、混合バー(1)が、その前端(3)が混合容器(10)の底部(11)に対して所定の最小距離にある位置に配置されているときに、混合バー(1)の前端(3)における磁場をスイッチオフする、請求項1〜3のうちの1項に記載の方法。
【請求項5】
混合バー(1)が、混合バー(1)の長手方向に移動可能である永久磁石(4)を少なくとも1つ有する、請求項1〜4のうちの1項に記載の方法。
【請求項6】
永久磁石(4)を、混合バー(1)の前端(3)において磁場をスイッチオンするために混合バー(1)の前端(3)に向かって動かし、かつ磁場をスイッチオフするために前端(3)から遠ざける、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
永久磁石(4)を、磁場がスイッチオフされたときに混合バー(1)の前端(3)から急に遠ざける、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
混合バー(100)は、その前端区域(103)に少なくとも1つの永久磁石(106)を有し、かつ永久磁石(106)を取り囲み混合バー(100)の長手方向に移動可能である少なくとも1つの保護カバー(107)を有する、請求項1〜4のうちの1項に記載の方法。
【請求項9】
混合バー(100)は、磁場を発生させるためにソレノイド(120)を含む、請求項1〜4のうちの1項に記載の方法。
【請求項10】
磁気牽引性粒子(40)は、強磁性、フェリ磁性、常磁性、および/または超常磁性粒子である、請求項1〜9のうちの1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−535625(P2010−535625A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520590(P2010−520590)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060720
【国際公開番号】WO2009/021998
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(599072611)キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (83)
【Fターム(参考)】