説明

溶融システム

【課題】簡単な構成で、出滓口付近のスラグの付着を安定して抑制できる溶融システムを提供する。
【解決手段】溶融部12とシュート20と二次燃焼部14と、シュート20と溶融部12または二次燃焼部14とを連通する還流部60と、シュート20内のガスを還流部60内に吸引する吸引手段70と、還流部60に流入した高温ガスから酸性ガスおよび灰分を除去可能な浄化器80とを設け、浄化器80に水が貯留された上流室86および下流室88と隔離部材84を設け、隔離部材84により、下流室88内の圧力が上流室86内の圧力よりも所定圧力低い場合には、この隔壁84と上流室86の液面との間から上流室内の高温ガスが下流室88内の水に混入するのが許容される一方、下流室88の内圧と上流室86の内圧との差圧が所定圧力以下の場合には、上流室86と下流室88との間のガスの流通が規制されるように、上流室86と下流室88とを隔離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の廃棄物を処理するための溶融部を備えた溶融システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物を処理するものとして、廃棄物が熱分解されることにより発生する熱分解ガス中の灰分を溶融する溶融部を備えたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、廃棄物やこの廃棄物の焼却灰を溶融させてスラグを生成する溶融部と、この溶融部の下端に設けられた出滓口から下方に延びるシュートとを備えた溶融炉が開示されている。前記溶融部で生成されたスラグは、前記出滓口からシュート内に流入して、このシュートを流下し、このシュートの下方に設けられた水砕装置で水砕スラグとなる。この溶融炉では、前記シュートの前記出滓口よりも下方の部分に、前記溶融部内の高温のガスを引き抜くための引き抜き部が設けられており、前記溶融部から排出された高温のガスをこの引き抜き部に向かわせることで、前記出滓口付近において前記スラグに前記高温ガスを接触させてスラグの温度を高く維持し、この出滓口付近におけるスラグの固着を抑制するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3076010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記溶融部から排出される高温ガスには、溶融部でスラグ化されなかった灰や廃棄物の燃焼時に生成された酸性ガス等が含まれており、前記引き抜き部には、この灰および酸性ガスが流入する。この灰あるいは酸性ガスは、前記引き抜き部を腐食させる等して引き抜き部の引き抜き効果を悪化させるおそれがあり、これにより、前記出滓口付近のスラグの固着が安定して抑制されないおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、出滓口付近のスラグの付着をより確実に抑制することのできる溶融システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、廃棄物が熱分解されることで発生する熱分解ガス中の灰分を溶融する溶融システムであって、前記廃棄物の熱分解ガス中の灰分を燃焼溶融させてスラグを生成するとともに下流端に形成された出滓口から前記スラグを排出する溶融部と、前記出滓口から下方に延びてこの出滓口から流下するスラグを囲む形状を有するシュートと、前記シュートの下流に設けられて前記溶融部から排出される排ガスが導入されて当該排ガスが内側で燃焼する二次燃焼部と、前記シュート内のガスが前記溶融部または前記二次燃焼部に戻るように前記シュートと前記溶融部または前記二次燃焼部とを連通する還流部と、前記還流部に設けられて、前記溶融部から排出される高温ガスの一部が前記出滓口から前記シュート内に導入されるように前記シュート内の高温ガスを前記還流部内に吸引可能な吸引手段と、前記還流部のうち前記シュートと前記吸引手段との間に介在する位置に設けられて、内側を前記シュートから前記還流部内に吸引された前記高温ガスが通過可能な形状を有するとともに、前記高温ガスの通過途中に当該高温ガス中の酸性ガスの少なくとも一部および灰分を除去可能な浄化器とを備え、前記浄化器は、上流室と、下流室と、当該上流室と下流室との間に介在する隔離部材とを備え、前記上流室は、前記還流部の前記シュート側の部分に接続されて、当該上流室内に前記シュートから前記還流部内に吸引された前記高温ガスを導入可能な導入口を有するとともに、その内側に、前記高温ガスに含まれる灰分および酸性ガスの少なくとも一部を溶解可能な浄化用液体を、その液面が前記導入口の下方となる状態で貯留しており、前記下流室は、前記還流部の前記吸引手段側の部分に接続されて、当該下流室内のガスを前記吸引手段側に導出可能な導出口を有するとともに、その内側に、前記浄化用液体を、その液面が前記導出口の下方となる状態で貯留しており、前記隔離部材は、前記上流室の内圧と前記下流室の内圧の差圧が所定圧力以下の場合は、前記導入口および前記導出口からこれら上流室と下流室の各液面の下方の特定位置に至るまでこれら上流室と下流室とを隔離することで、前記特定位置よりも下方の領域において前記上流室と前記下流室との間の前記浄化用液体の流通を許容しながらこれら上流室と下流室との間のガスの流通を規制する一方、前記吸引手段が前記下流室内のガスを吸引することで前記上流室の内圧が前記下流室の内圧よりも所定圧力高くなる場合は、前記上流室の液面よりも上方かつ前記下流室の液面よりも下方に位置することで前記上流室の液面と当該隔離部材の下端部との間を通じて前記上流室から前記下流室内の前記浄化用液体中へのガスの流入を許容する形状を有することを特徴とする溶融システムを提供する。
【0008】
この溶融システムによれば、前記吸引手段の腐食等が抑えられて前記溶融部から排出される高温のガスが安定して前記還流部に吸引されるため、前記出滓口付近におけるスラグの固着がより確実に抑制される。
【0009】
すなわち、この溶融システムでは、前記吸引手段が、前記溶融部から排出される高温ガスの一部が前記出滓口から前記シュート内に導入されるように、前記シュート内の高温ガスを前記還流部内に吸引しており、前記溶融部から排出された高温ガスが溶融部内のスラグとともに前記出滓口からシュート内に流入して、前記出滓口付近において前記スラグが高温ガスにより高温に維持されるため、このスラグの出滓口付近における固着が抑制される。
【0010】
そして、前記還流部の吸引手段よりも上流の部分に設けられた浄化器が前記高温ガス中の酸性ガスおよび灰分を除去するため、吸引手段および還流部のうちのこの浄化器よりも下流側の部分が灰あるいは酸性ガスにより腐食する、あるいは、この灰が蓄積すること等で吸引手段の吸引力が低下するのが抑えられて、前記高温ガスが安定して前記還流部内に吸引される。
【0011】
しかも、前記浄化器は、その内側に貯留している前記浄化用液体中に前記高温ガスを通過させるという簡単な構成で前記高温ガスからの酸性ガスおよび灰の除去を実現しており、溶融システム全体として簡単な構成で安定したスラグの固着抑制効果が得られる。
【0012】
さらに、前記吸引手段が前記下流室内のガスを吸引することで前記上流室の内圧が前記下流室の内圧よりも所定圧力高くなった場合は、前記隔離部材が前記上流室の液面よりも上方に位置することで上流室から下流室へのガスの流入を許容する一方、前記上流室の内圧と前記下流室の内圧の差圧が所定圧力以下の場合は、隔離部材がこれら上流室と前記下流室との間でのガスの流通を規制するように、上流室と下流室とを隔離しており、前記吸引手段が故障等により前記下流室内のガスを吸引できない場合に、還流部内の低温のガスが吸引手段側からシュート内に逆流するのが抑えられるため、この低温のガスによってシュート内ひいては前記出滓口付近が低温化してこれらの部分にスラグが固着するのが抑制される。このことは、出滓口付近におけるスラグの固着をより確実に抑制する。
【0013】
本発明において、前記浄化器の下流室内の前記浄化用液体の液面よりも上方の部分に存在するガスに熱エネルギーを供給して、当該下流室内のガスを当該ガスに含まれる前記浄化用液体が蒸発する温度にまで加熱可能な加熱手段を備えるのが好ましい(請求項2)。
【0014】
このようにすれば、前記浄化器に貯留されている前記浄化用液体が液体の状態で吸引手段に流入して吸引手段の吸引性能が悪化するのが抑制されて、前記スラグの固着がより安定して抑制される。すなわち、吸引手段に前記浄化用液体の液滴が混入することでこの浄化用液体自身により吸引手段が腐食される場合や、付着した液滴を介して灰等が付着することで吸引手段の吸引性能が悪化するのが抑制される。
【0015】
また、還流部のうち浄化器よりも下流の部分が、浄化用液体の液滴の流入に伴って腐食するという事態や、この下流の部分に灰等が付着してガスの流量が減少するという事態がより確実に回避される。
【0016】
前記加熱手段は、前記下流室内の前記浄化用液体の液面よりも上方の部分に高温の空気を供給するものが挙げられる(請求項3)。
【0017】
この加熱手段によれば、簡単な構成で前記高温ガスを加熱することができる。
【0018】
ここで、上流室内のガス中の灰および酸性ガスは、上流室に存在する液体の状態の浄化用液体との接触により除去される。そのため、上流室内の温度がより低く液体の状態の浄化用液体の割合が多い方が、灰等の除去が促進される。
【0019】
従って、前記加熱手段により高温の空気が供給される箇所としては、上流室からの距離が比較的遠い前記導出口付近が好ましい(請求項4)。
【0020】
このようにすれば、高温の空気の供給による上流室内の温度の上昇が抑制される。そのため、下流室から吸引手段側に浄化用液体が液体の状態で排出されるのを抑制しつつ、上流室内においてガス中の灰および酸性ガスをより確実に除去することができる。
【0021】
なお、前記加熱手段により高温の空気が供給される箇所は、前記に限らず、例えば、前記下流室内の前記浄化用液体の液面近傍であってもよい。このようにすれば、下流室内のガスが高温の空気が供給される部分から導出口に到達するまでの時間が長くなり、下流室内のガス中の水がより確実に気化される。ただし、この場合には、高温の空気の上流室側への流入をより小さく抑えるために、前記加熱手段は、下流室内の浄化用液体の液面近傍に当該液面と平行あるいは当該液面よりも上方に向かって高温の空気を供給するのが好ましい(請求項5)。
【0022】
前記浄化器の具体的構造としては、内側に前記浄化用液体を貯留可能な貯留室が形成された本体容器を備え、前記隔離部材が、前記貯留室を前記上流室と前記下流室とに区画する隔壁を含み、前記隔壁が、前記導入口および前記導出口から前記特定位置に至るまで前記上流室と前記下流室とを隔離するように前記貯留室内に設けられるものが挙げられる(請求項6)。
【0023】
また、本発明において、前記還流部は、前記シュートと前記導入口とを連結する連結部を有し、前記連結部は、前記シュートから前記導入口に向かうに従って下方に傾斜する形状を有するのが好ましい(請求項7)。
【0024】
このようにすれば、前記連結部内に流入した灰が前記導入口に向かって流下することで前記連結部内に灰が蓄積するのが抑制されて、この灰の蓄積に伴い前記高温ガスの吸引が阻害されるのが抑制される。
【0025】
さらに、前記還流部は、前記連結部の内側面に付着した灰を当該連結部内側面から剥離させるとともにこの剥離した灰とともに前記導入口へ流下する剥離用液体を、この連結部の内側面に向かって噴射する連結部用流体噴射装置を有するのが好ましい(請求項8)。
【0026】
この構成によれば、前記連結部用流体噴射装置により噴射された剥離用液体が、前記連結部の内側面に付着した灰をこの内側面から剥離させるとともにこの灰を前記上流室に設けられた導入口に流下させているので、前記連結部内に灰が蓄積するのが抑制されて、この灰の蓄積に伴い前記高温ガスの吸引が阻害されるのが抑制される。また、噴射された剥離用流体と高温ガスとの接触によりこの高温ガスの温度ひいては浄化器内の温度が低下する結果、浄化器内のガス中における浄化用液体の液滴の割合が増加して、この液滴と高温ガスの接触により高温ガス中の酸性ガスおよび灰がより多く除去される。
【0027】
ここで、前記連結部用流体噴射装置は、前記剥離用液体として前記浄化用液体を噴射するのが好ましい(請求項9)。
【0028】
この構成では、浄化用液体が連結部に噴射されているので、この噴射された液体を浄化器内に流入させて浄化器内の浄化用液体と混合させることができ、管理が容易となる。
【0029】
また、前記浄化器と前記連結部用流体噴射装置とを連結して、当該浄化器に貯留されている前記浄化用液体を前記連結部用流体噴射装置に供給して、当該浄化用液体を前記浄化器と前記連結部用流体噴射装置との間で循環させる連結部用液体循環手段を有するのが好ましい(請求項10)。
【0030】
このようにすれば、連結部用流体噴射装置に、別途浄化用液体を供給する必要がない。そのため、システムの構造が簡素化されるとともに、システム全体で利用される浄化用液体の量が少なく抑えられてコスト面で有利となる。
【0031】
また、前記連結部用液体循環手段は、前記浄化器から流入した灰を含む浄化用液体を灰と浄化用液体とに分離可能な分離部を有し、当該分離部で灰と分離された浄化用液体を前記連結部用流体噴射装置に供給するのが好ましい(請求項11)。
【0032】
このようにすれば、前記分離部で灰が除去された浄化用液体が前記連結部に供給されるため、前記連結部内に灰が蓄積するのがより確実に抑制される。
【0033】
また、本発明において、前記浄化器は、前記上流室内のうち前記特定位置よりも上方に設けられて、当該上流室の内側面に付着した灰を当該上流室の内側面から剥離させるとともにこの剥離した灰とともに当該上流室の下方へ流下する剥離用液体を、この上流室の内側面に噴射する上流室用流体噴射装置を有するのが好ましい(請求項12)。
【0034】
この構成によれば、前記上流室用流体噴射装置により噴射された剥離用液体が、前記上流室の内側面に付着した灰をこの内側面から剥離させるとともにこの灰を下方に流下させているため、前記上流室の内側面に灰が蓄積するのが抑制され、この灰の蓄積に伴い前記高温ガスの吸引が阻害されるのが抑制される。また、噴射された剥離用流体と高温ガスとの接触によりこの高温ガスの温度ひいては上流室内の温度が低下する結果、上流室内のガス中における浄化用液体の割合が増加して、この液滴と高温ガスの接触により高温ガス中の酸性ガスおよび灰がより多く除去される。
【0035】
ここで、前記上流室用流体噴射装置は、前記剥離用液体として前記浄化用液体を噴射するのが好ましい(請求項13)。
【0036】
この構成では、上流室用流体噴射装置から上流室内に浄化用液体が噴射されるので、この噴射された液体を上流室に貯留されている浄化用液体と混合させることができ、管理が容易となる。
【0037】
また、前記浄化器と前記上流室用流体噴射装置とを連結して、当該浄化器に貯留されている前記浄化用液体を前記上流室用流体噴射装置に供給して、当該浄化用液体を前記浄化器と前記上流室用流体噴射装置との間で循環させる上流室用液体循環手段を有するのが好ましい(請求項14)。
【0038】
このようにすれば、上流室用流体噴射装置に、別途浄化用液体を供給する必要がない。そのため、システムの構造が簡素化されるとともに、システム全体で利用される浄化用液体の量が少なく抑えられてコスト面で有利となる。
【0039】
また、前記上流室用液体循環手段は、前記浄化器から流入した灰を含む浄化用液体を灰と浄化用液体とに分離可能な分離部を有し、当該分離部で灰と分離された浄化用液体を前記上流室用流体噴射装置に供給するのが好ましい(請求項15)。
【0040】
このようにすれば、前記分離部で灰が除去された浄化用液体が前記上流室内に供給されるため、前記上流室内に灰が蓄積するのがより確実に抑制される。
【0041】
また、本発明において、前記浄化器に貯留されている前記浄化用液体の貯留量を検出する貯留量検出手段と、前記貯留量検出手段により検出された浄化用液体の貯留量が予め設定された基準量以下の場合に、前記浄化器内に浄化用液体を供給する液体追加供給手段とを有するのが好ましい(請求項16)。
【0042】
このようにすれば、浄化器内の浄化用液体の貯留量が基準量以上に維持されるので、この貯留量の減少に伴って浄化器での酸性ガスおよび灰の除去性能が低下するのがより確実に抑制される。
【0043】
また、本発明において、前記浄化器に連通されて、当該浄化器内の前記浄化用液体をこの浄化器の外部に排出可能な排出手段を備えるのが好ましい(請求項17)。
【0044】
このようにすれば、浄化用液体に溶解した酸性ガスおよび灰分を適宜、浄化器外に排出して、浄化器の浄化性能を高く維持することができる。
【0045】
前記浄化用液体の具体的成分としては、例えば、水が挙げられる(請求項18)。
【発明の効果】
【0046】
以上説明したように、本発明によれば、溶融炉内でのスラグの固着をより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る溶融システムを備える廃棄物処理設備の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す溶融システムの一部を拡大して示す概略断面図である。
【図3】(a)図1に示す溶融システムの一部を拡大して示す概略断面図である。(b)図3(a)の断面と直交する方向の概略断面図である。
【図4】図1に示す溶融システムの一部を拡大して示す概略断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る溶融システムを示す概略図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る水循環装置を示す概略図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る水循環装置を示す概略図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る溶融システムを備える廃棄物処理設備の全体構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0049】
図1は、本発明の実施形態に係る溶融システム50を含む廃棄物処理設備1の全体構成を示した概略図である。まず、この廃棄物処理設備1における廃棄物の処理要領について説明する。
【0050】
この廃棄物処理設備1は、溶融システム50に加えて、主に、上流側から、ごみピット2と、給塵機4と、流動床式ガス化炉6と、ボイラー30と、ガス冷却器42と、バグフィルタ44と、脱硝装置46と、煙突48とを有している。
【0051】
この廃棄物処理設備1では、まず、ごみピット2に貯留された廃棄物が、給塵機4に投入される。前記給塵機4に投入された前記廃棄物は、この給塵機4から定量的に前記流動床式ガス化炉6に供給されて、この流動床式ガス化炉6にて熱分解される。この流動床式ガス化炉6では、前記廃棄物の部分燃焼が行われ、砂層等からなる流動層の温度を所定の温度に維持した熱分解すなわちガス化が行われる。この流動床式ガス化炉6で発生した熱分解ガスは、前記溶融システム50に導かれる。一方、前記廃棄物のうち不燃物は炉床下部より抜き出され、非鉄金属、鉄分等にそれぞれ分離されて、再利用されるべくこの廃棄物処理設備1外等に搬送される。
【0052】
前記溶融システム50では前記熱分解ガスがさらに燃焼される。この溶融システム50のうち後述する溶融部12内では、旋回流が形成されており、約1300℃の高温燃焼が行われる。このとき、前記熱分解ガス中の灰分が溶融されてスラグが生成する。生成した前記スラグは、この溶融システム50の後述するシュート20を流下し、このシュート20の下方に設けられたスラグ冷却装置28に排出される。そして、このスラグは、前記スラグ冷却装置28にて急冷却され、再利用されるべく外部に搬送される。
【0053】
また、前記溶融部12からは高温ガスが排出される。この高温ガスは、溶融システム50の後述する二次燃焼部14に導入される。この二次燃焼部14では前記溶融部12から排出された高温ガス中の未燃物の完全燃焼が行われる。燃焼後の高温ガスは、二次燃焼部14から前記ボイラー30に導入される。このボイラー30は、前記高温ガスを熱交換器等に接触させることでその廃熱を回収する。このボイラー30でその廃熱が回収されたガスは、前記ガス冷却器42にて冷却された後、バグフィルタ44で除塵され、脱硝装置46を経て煙突48から排出される。
【0054】
次に、前記溶融システム50の詳細について説明する。
【0055】
図2および図4は、前記溶融システム50の一部を拡大して示す概略断面図である。この溶融システム50は、前記溶融部12と、この溶融部12の下流に設けられるシュート20と、このシュート20のさらに下流に設けられる二次燃焼部14と、還流部60と、ファン(吸引手段)70と、スクラバー(浄化器)80と、高温空気噴射装置(加熱手段)92と、水循環装置(連結部用液体循環手段、上流室用液体循環手段)100と、水位計(貯留量検出手段)110と、水追加供給手段(液体追加供給手段)112と、を有している。なお、この図2および図4は溶融システム50の一部を模式的に示したものであり、水循環装置100の具体的構成や、スクラバー80と水循環装置100に含まれる後述する水抜き装置95との位置関係は、この図2および図4に示すものに限られない。
【0056】
前記溶融部12は、前記流動床式ガス化炉6に連通している。この溶融部12は、前記流動床式ガス化炉6から導入された熱分解ガスを空気吹き込み口(図示せず)から空気を導入することで燃焼させ、前記熱分解ガスの灰分を溶融してスラグを生成する。この溶融部12は、上下方向に延びる略筒状を有しており、熱分解ガスを補助的に燃焼させるためのバーナーが、この溶融部12の頂部11に取り付けられている。この溶融部12の上端には、前記流動床式ガス化炉6に連通する連通口12c(図1参照)が設けられており、この連通口12cを介して前記流動床式ガス化炉6から前記熱分解ガスが導入される。
【0057】
前記溶融部12の下流端すなわち下端には、前記シュート20に連通される出滓口12aが設けられている。この溶融部12で生成されたスラグは前記出滓口12aを介して前記シュート20に排出される。
【0058】
前記シュート20は、前記溶融部12から前記出滓口12aを介して排出されたスラグを下方に流下させるためのものである。このシュート20は、前記出滓口12aから流下するスラグを囲むような形状を有している。具体的には、このシュート20は、筒状を有しており、前記出滓口12aから下方に延びる中空の周壁22を有している。このシュート20の上端は、前記出滓口12aを介して前記溶融部12と連通している。図1に示すように、このシュート20の下端には、前記スラグ冷却装置28が連設されている。前記出滓口12aからこのシュート20に排出されたスラグは、このシュート20の周壁22の内側を流下することで前記スラグ冷却装置28に案内される。
【0059】
前記シュート20の周壁22には、前記出滓口12aと連通するその上端よりも下方の位置に、還流部入口24が設けられている。この還流部入口24は、前記還流部60に連通しており、シュート20内のガスはこの還流部入口24から前記還流部60内に流入可能となっている。本実施形態では、前記還流部入口24は、前記シュート20の周壁22のうち下流側であって前記二次燃焼部14の下方に設けられている。
【0060】
なお、前記溶融部12の底面12bは、前記出滓口12aに向かって下方に傾斜している。そして、この底面12bの下端すなわち前記出滓口12aを囲む部分には、シュート20の内側に向かって張り出す張り出し部15が設けられている。従って、前記スラグは、この張り出し部15に沿って流下することでシュート20の内側面よりも内側に案内され、シュート20の側面への付着が抑制された状態でシュート20内を流下していく。
【0061】
前記二次燃焼部14は、前記溶融部12から排出された高温ガス中の未燃成分を燃焼処理するためのものである。この二次燃焼部14は、前記出滓口12aが形成された前記溶融部12の下流端に連設されており、この二次燃焼部14と前記溶融部12とは、前記出滓口12aの上方において互いに連通している。この二次燃焼部14は、前記溶融部12の下流端から下流に向かうに従って上方に傾斜する、すなわち、前記出滓口12aに向かって下方に傾斜する連通路14aと、この連通路14aの下流端から上方に延びる本体部14cとを有している。
【0062】
前記溶融部12から排出された高温ガスの少なくとも一部は、前記出滓口12aの上方および前記連通路14aを通って前記二次燃焼部14の本体部14cに流入する。この二次燃焼部14の本体部14c内には二次空気が供給されている。この二次燃焼部14の本体部14c内では前記二次空気との接触により前記溶融部12からの排ガス中の未燃物の完全燃焼が行われる。前述のように、この二次燃焼部14の本体部14cの下流には、前記ボイラー30が連設されており、二次燃焼部14で処理された高温ガスはこのボイラー30に流入する。
【0063】
前記二次燃焼部14には、前記溶融部12から前記高温ガスとともにスラグ化しなかった灰の一部が流入し、溶融してスラグとなる。この二次燃焼部14で生成したスラグは、前記連通路14aの底面14bを前記出滓口12aに向かって流下して、この出滓口12aを介して前記シュート20内に流入する。
【0064】
前記二次燃焼部14の連通路14aの底面14bの下端であって前記出滓口12aに臨む部分にも、シュート20の内側に向かって張り出す前記張り出し部15が設けられている。従って、溶融部12から前記二次燃焼部14側に流入した灰はスラグ化し、当該スラグは、前記二次燃焼部14の連通路14aの底面14bを流下した後、この張り出し部15に沿って流下することでシュート20の内側面よりも内側に案内され、前記還流部入口24が形成されたシュート20の側面への付着が抑制された状態でシュート20内を流下していく。
【0065】
前記二次燃焼部14には、前記還流部60に連通する還流部出口14dが設けられている。前記二次燃焼部14には、この還流部出口14dを介して還流部60内のガスが導入される。この還流部出口14dは、前記連通路14aと前記二次燃焼部14の本体部14cとの境界付近に接続されており、還流部60内のガスは、前記二次燃焼部14の本体部14cに導入されて、この本体部14c内で燃焼処理される。
【0066】
前記還流部60は、前記シュート20内のガスを前記二次燃焼部14に戻すための通路である。この還流部60の一端は、前記シュート20の前記還流部入口24に接続されており、他端は、前記還流部出口14dに接続されている。この還流部60は、前記還流部入口24および還流部出口14dを介して前記シュート20と前記二次燃焼部14とを連通している。
【0067】
前記ファン70は、前記溶融部12から排出された前記高温ガスを、前記シュート20を介して前記還流部60内に吸引するための装置である。このファン70は、前記還流部60の途中に設けられている。このファン70は、前記還流部60内のガスのうちこのファン70よりも上流側すなわち前記シュート20側のガスを吸引する。このファン70により還流部60内のガスに吸引力が作用すると、前記シュート20内の高温ガスは前記還流部入口24を介して還流部60内に吸引される。このファン70により還流部60内に吸引された前記高温ガスは、還流部60を通って前記還流部出口14dから前記二次燃焼部14内に流入する。
【0068】
前記溶融部12から排出された高温ガスには、スラグ化されずに残った灰分および溶融部12での燃焼時等に生成された酸性ガスが含まれている。前記スクラバー80は、前記溶融部12から排出されて前記還流部60に流入したこの高温ガスから、前記灰分および酸性ガスを除去するためのものである。このスクラバー80は、前記還流部60のうち前記ファン70よりも上流側の部分、すなわち、前記還流部入口24とファン70の間に設けられている。
【0069】
前記スクラバー80は、内側に水を貯留可能な貯留室82aが形成された外壁(本体容器)82と、隔壁(隔離部材)84とを有している。また、前記外壁82の下端(スクラバー80の底部)には、水抜き部82cが設けられている。
【0070】
前記隔壁84は、前記外壁82の上壁からこの外壁82の底壁よりも上方の位置まで延びており、前記貯留室82aの上部を、上流側に位置する上流室86と、下流側に位置する下流室88とに区画している。この隔壁84は前記外壁82の側壁に沿って延びており、前記上流室86と下流室88とはこの隔壁84が設けられている部分すなわちこの隔壁84の下端部よりも上方では、互いに連通しない状態で区画されている。
【0071】
前記上流室86の上部には、導入口86aが形成されている。この導入口86aは、前記還流部60の上流側部分すなわち前記シュート20側の部分と連通している。具体的には、前記還流部60は、その上流側部分に、前記還流部入口24からスクラバー80側に延びて、内側をガスが通過可能な連結部62を有しており、前記導入口86aは、この連結部62に接続されている。前記上流室86には、この導入口86aを介して前記シュート20から前記高温ガスが流入する。前記上流室86内には、前記導入口86aよりも下方において、浄化用液体としての水が貯留されている。
【0072】
前記下流室88の上部には、導出口88bが形成されている。この導出口88bは、前記還流部60の下流側部分すなわち前記ファン70側の部分と連通している。前記下流室88内のガスには、前記導出口88bを介して前記ファン70の吸引力が作用する。
【0073】
前記下流室88内には、前記導出口88bよりも下方において、浄化用液体としての水が貯留されている。前述のように、上流室86と下流室88とは前記隔壁84の下方において互いに連通しており、この隔壁84の下方には連通部84bが形成されている。前記水はこの連通部84bを通って上流室86と下流室88とを移動できるようになっている。従って、前記上流室86の内力と下流室88の内圧とが等しい条件下では、上流室86内の水面と下流室88内の水面とは同じ高さとなる。
【0074】
前記上流室86内および下流室88内に貯留されている水の量は、これら上流室86および下流室88内の圧力が等しい条件下で、その水面が前記隔壁84の下端よりも上方に位置するように設定されている。すなわち、前記隔壁84は、これら上流室86および下流室88内の圧力が等しい条件下で、その下端が、これら上流室86および下流室88内の水面よりも下方に位置するように、前記外壁82の上壁から延びている。
【0075】
従って、前記ファン70が稼動しておらず前記上流室86および下流室88内の圧力が等しい条件下では、前記隔壁84の下方に形成された連通部84bは水封される。これにより、下流室88から上流室86へのガスの移動、ひいては、前記ファン70側から前記シュート20側へのガスの移動は規制される。
【0076】
さらに、前記上流室86内および下流室88内に貯留されている水の量は、図4に示すように、前記ファン70によって前記下流室88内のガスが吸引されることで下流室88内の圧力が上流室86内の圧力よりも所定圧力低くなり(上流室86内の圧力が下流室88内の圧力がよりも所定圧力高くなり)、上流室86の水面が下流室88の水面よりも所定高さ低くなると、上流室86の水面が前記隔壁84の下端部分よりも下方に位置するように設定されている。このように、前記隔壁84は、前記下流室88内の圧力が上流室86内の圧力よりも所定圧力低い、すなわち、上流室86内の圧力が前記下流室88内の圧力よりも所定圧力高い条件下で、その下端部分が、上流室86の水面よりも上方に位置するように、前記外壁82の上壁から延びている。
【0077】
従って、前記ファン70が稼動して前記下流室88内のガスが吸引されて下流室88内の圧力が上流室86内の圧力よりも所定圧力低くなると、前記上流室86内のガスは、前記連通部84bのうち前記隔壁84の下端部と水面との間を通って下流室88側に流入する。すなわち、上流室86内のガスは下流室88内へ吸引される。この条件下では、前記下流室88の水面は、前記隔壁84の下端部よりも上方に位置している。そのため、上流室86内のガスは下流室88内の水中に混入し、この水を潜って下流室88の上方に移動する。このとき、前記高温ガス中の水溶性の酸性ガス、具体的には、塩素系ガスおよび硫酸系ガス、および灰分は、水中に溶解し、下流室88の上方には、前記酸性ガスおよび灰分が除去されたガスが導出されて、この浄化されたガスが前記導出口88bを介してファン70側へ流出する。
【0078】
なお、本実施形態では、前記下流室88内に、第1水切り板89bと第2水切り板89cとが設けられている。前記第1水切り板89bは、水面よりも上方の位置において前記隔壁84から下流室88の中央付近まで略水平に延びており、第2水切り板89cは、この第1水切り板89bの上方において、前記導出口88bの下部から下流室88の中央付近まで略水平に延びている。従って、前記下流室88の水を潜ってこの下流室88の上方に移動した前記高温ガスと同伴して上方に移動した水は、この第1水切り板89bおよび第2水切り板89cとに衝突してこれらに補足されて、前記導出口88bからファン70側への排出が抑えられる。
【0079】
ここで、前述のように、シュート20から上流室86に流入した高温ガス中の灰は前記下流室88内の水中に混入することで除去されるが、この灰は、シュート20から前記下流室88に到達するまでの間に前記還流部60および上流室86の内側面等に付着するおそれがある。そして、この灰がこれら内側面等に蓄積すると、上流室86内のガスが十分に下流室88内へ吸引されなくなるおそれがある。
【0080】
これに対して、本溶融システム50では、前記還流部60のうち前記上流室86の導入口86aと前記還流部入口24の間に設けられた連結部62に、この連結部62内に水を噴射可能な第1噴射装置(連結部用流体噴射装置)64が設けられている。また、前記上流室86に、この上流室86内に水を噴射可能な第2噴射装置(上流室用流体噴射装置)65が設けられている。
【0081】
本実施形態では、前記連結部62は、前記シュート20から前記スクラバー80の導入口86aに向かうに従って下方に傾斜している。
【0082】
前記第1噴射装置64は、図3(a)に示すように、前記連結部62にその噴射口64aが上流側を向く状態で取り付けられている。この第1噴射装置64は、噴射口64aから連結部62の内側面に向かって水を噴射する。具体的には、図3(b)に示すように、第1噴射装置64の噴射口64aは連結部62の軸心付近に位置しており、この噴射口64aから連結部62の内側面に向かって放射状に水が噴射される。前述のように、本実施形態では、前記連結部62は前記シュート20から前記スクラバー80の導入口86aに向かうに従って下方に傾斜している。そのため、この第1噴射装置64から噴射された水は、前記連結部62の内側面に到達してこの内側面をつたって下流側すなわち前記上流室86の導入口86aへ流下する。この水とともに連結部62の内側面に付着していた灰はこの内側面をつたって前記導入口86aへ流下する。これにより、連結部62の内側面に付着していた灰は除去される。この灰は水とともに前記導入口86aから前記スクラバー80内に流入する。
【0083】
前記第2噴射装置65は、前記上流室86の上部にその噴射口が下方を向く状態で取付けられている。この第2噴射装置65は、上流室86の内側面に向かって水を噴射する。この第2噴射装置65から噴射された水は、前記上流室86の上部の内側面に到達してこの上部から上流室86の内側面をつたって下方に流下する。この水とともに上流室86の内側面に付着していた灰はこの内側面をつたって下方に流下する。これにより、上流室86の内側面に付着していた灰は除去される。この灰は水とともに上流室86の下方に貯留されている水に混入する。
【0084】
このようにして、各噴射装置64,65から噴射された水が連結部62の内側面および上流室86の内側面に付着している灰を除去することで、この灰の連結部62および上流室86内での蓄積は抑制され、安定して高温ガスが下流側に吸引される。また、この噴射された水は、連結部62および上流室86を通過する高温ガスの温度を低下させ、前記上流室86内の温度を低下させる。上流室86内の温度が低下すると、スクラバー80内のガスに含まれる液状の水分量は増加し、スクラバー80内において、この水分と高温ガスとの接触により高温ガスの灰および酸性ガスはより多く除去される。
【0085】
前記水循環装置100は、前記スクラバー80内に貯留されている水の一部を前記第1噴射装置64および第2噴射装置65に供給してこれら噴射装置64,65とスクラバー80との間で水を循環させる。この水循環装置100は、水抜き装置95と、貯留タンク102とを有している。
【0086】
前記水抜き装置95は、前記スクラバー80の前記水抜き部82cを介してスクラバー80の貯留室82と連通している。この水抜き部82cを介して、水抜き装置95内には、前記スクラバー80の貯留室82内の水すなわち前記上流室86および下流室88内の灰分および酸性ガスが溶解している水が流入する。この水抜き装置95内において、前記灰分はその自重で沈殿して泥状となる。この水抜き装置95の下方には、ベルトコンベア95aが設けられており、前記灰分および酸性ガスが溶解した水はこのベルトコンベア95aにより、適宜、外部へ排出される。このように、水循環装置100の水抜き装置95は、スクラバー80内の水をスクラバー80の外部に排出可能な排出手段としても機能する。
【0087】
前記貯留タンク102は、前記水抜き装置95と連通している。この貯留タンク102には、水抜き装置95から灰分が除去された水が流入する。本実施形態では、水抜き装置95の上端に配管104が取り付けられており、水抜き装置95内からオーバーフローした水、すなわち、上澄み水であって灰分が除去された水が貯留タンク102内に流入する。このように、本実施形態では、水抜き装置95と配管104とが、スクラバー80から流入した灰を含む水を、灰と水とに分離する分離部として機能する。
【0088】
前記貯留タンク102と前記第1噴射装置64および第2噴射装置65とは、水配管106により互いに連結されている。貯留タンク102内の灰分が除去された水は、前記水配管106を通じて前記第1噴射装置64および第2噴射装置65に供給される。この水は、これら噴射装置64,65によって前記連結部62および上流室86内に噴射され、再びスクラバー80内に流入する。なお、前記水配管106に、貯留タンク102から噴射装置64,65に水を供給するためのポンプを設けてもよい。
【0089】
このように、本実施形態では、各噴射装置64,65とスクラバー80との間で水が循環しており、各噴射装置64,65に別途水を供給する必要がないため、装置が簡素化されるとともに水にかかる費用が少なく抑えられる。特に、前記連結部62および上流室86の内側面から灰分を適切に除去するためには、各噴射装置64,65から多量の水を噴射するのが好ましいことが分かっている。そのため、このように水を循環させることで、灰分を除去しつつ水にかかるコストを効果的に小さくすることができる。
【0090】
前記水追加供給手段112は、前記スクラバー80内に水を追加供給するためのものである。前述のように、スクラバー80内の水はベルトコンベア95aにより適宜外部へ排出され、スクラバー80内には、適宜、水を追加供給する必要がある。そこで、前記水追加供給手段112により、スクラバー80内に水を追加供給する。本実施形態では、この水追加供給手段112は、前記貯留タンク102に接続されており、貯留タンク102に水道水等を供給する。前述のように、貯留タンク102内の水は前記第1噴射装置64および第2噴射装置65に供給され、これら噴射装置64,65を介して前記スクラバー80内に流入する。従って、貯留タンク102に水道水等を供給することで、スクラバー80内に水が追加供給される。
【0091】
前記スクラバー80の下部(図2に示す例では、上流室86の下部)にスクラバー80内の貯留水(図2に示す例では、上流室86内の貯留水)の貯留量を検出するための水位計(検出手段)110が設けられている。前記水追加手段112は、この水位計110で検出された貯留水の貯留量が予め設定された基準量以下となると、前記貯留タンク102内に水を追加供給する。前記基準量は、前記ファン70が稼動しておらず前記上流室86および下流室88内の圧力が等しい条件下において水面が前記隔壁84の上方に位置して前記連通部84bが水封される量に設定されている。従って、前記連通部84bは確実に水封される。
【0092】
前記高温空気噴射装置92は、前記スクラバー80の下流室88から前記ファン70に向かうガスに熱エネルギーを供給してこのガス中の水分を蒸発させるためのものである。本実施形態では、この高温空気噴射装置92は、前記下流室88の内部に高温の空気を供給することで、前記ガスに熱エネルギーを付与する。この高温空気噴射装置92は、前記下流室88の導出口88b付近に高温の空気を供給する。より詳細には、高温空気噴射装置92は、前記下流室88内の前記第2水切り板89cよりも上方の部分に高温の空気を供給して、第2水切り板89cで水が補足された後のガスから水分を蒸発させる。この空気は、例えば前記導出口88bから前記還流部60に流入するガスの温度が100℃以上となる温度、量に設定されている。
【0093】
具体的には、前記導出口88bあるいはこの導出口88bよりも下流側に還流部60内のガスの温度を検出可能な温度センサ(不図示)が設けられており、この温度センサの検出値が100℃以上となるように、前記高温空気噴射装置92により供給される高温の空気の温度あるいは量が調整される。なお、前記還流部60の低温腐食を防ぐためには、供給される前記空気の温度および量は前記還流部60を流れるガスの温度が120〜140℃以上となる温度とされるのが好ましい。また、前記高温空気噴射装置92の過剰な稼動等を抑制するべく、前記空気の温度および量は前記還流部60を流れるガスの温度が280℃以下、より好ましくは250℃以下となる温度とされるのが好ましい。なお、前記温度センサの位置は特に限定されないが、例えば、還流部60のうちファン70よりも下流の部分で、かつ、還流部出口14dを介して二次燃焼部14や溶融部12側の温度の影響を受けない部分、すなわち、還流部60のうち導出口88bと還流部出口14dとの間で最も温度が低くなる部分に設置されるのが好ましい。このようにすれば、還流部60のほぼ全体に渡って低温腐食を防止することができる。
【0094】
以上のように構成された溶融システム50の作用を次に説明する。
【0095】
まず、前記溶融部12にて前記熱分解ガスが燃焼してスラグが生成する。この溶融部12で生成した前記スラグは、前記溶融部12の底面12bを前記出滓口12aへと流下し、前記張り出し部15によってシュート20の内側面への付着が抑制されつつシュート20の内側に導出される。
【0096】
このとき、前記ファン70が稼動していれば、前述のように、前記スクラバー80の下流室88内のガスが吸引されて、前記連通部84bのうち前記隔壁84と水面との間の部分を介してスクラバー80の上流室86内のガスが下流に吸引される。これに伴い、この上流室86と前記導入口86aとを介して連通している還流部60のシュート20側部分に吸引力が作用して、前記溶融部12内の高温ガスの一部は、前記出滓口12aを通ってシュート20内を流下した後、前記還流部入口24を介して還流部60の連結部62内に流入する。前述のように、前記還流部入口24は前記シュート20の周壁22のうち下流側に設けられており、前記高温ガスは比較的円滑に還流部60内に流入する。
【0097】
このようにして、前記溶融部12から排出された高温ガスの一部は前記スラグとともに前記出滓口12aを介してシュート20内に流入する。この出滓口12a付近において、スラグはこの高温ガスと接触していることで、高温に維持される。従って、スラグは、この出滓口12a近傍の壁面で冷却されて固着することなくシュート20に流入する。
【0098】
前記還流部60の連結部62内に流入した高温ガスは、前記第1噴射装置64から噴射された水との接触により冷却されて、比較的低い温度で前記スクラバー80の上流室86に流入する。また、この高温ガスに含まれる灰は、前記第1噴射装置64が噴射した水により還流部60の連結部62の内側面に付着蓄積するのが抑制されつつ、ガスおよび水とともにスクラバー80の上流室86に流入し、連結部62の内側面に付着蓄積した灰は前記第1噴射装置64が噴射した水によりこの内側面から剥離してガスおよび水とともにスクラバー80の上流室86に流入する。特に、前記連結部62が前記シュート20、より詳細には、前記還流部入口24から、前記スクラバー80の導入口86aに向けて傾斜している。そのため、前記高温ガスに含まれる灰、また、前記第1噴射装置64が噴射した水により連結部62の内側面から剥離した灰は、スラグ冷却装置28側に流入することなくスクラバー80の上流室86に流入し、スラグ冷却装置28に灰が混入するのが抑制される。
【0099】
前記上流室86に流入したガスは、前記第2噴射装置65が噴射した水との接触によりさらに冷却されて、より低温とされた状態で、前記連通部84bを通じて前記スクラバー80の下流室88内に流入する。このとき、前記上流室86に流入したガスに含まれる灰の一部は、前記第2噴射装置65が噴射した水により上流室86の内側面への付着蓄積が抑制されつつ下方へ流下する。前記下流室88内に流入したガスは、前記下流室88内の水との接触により、その灰分および酸性ガスが除去される。この灰分および酸性ガスが除去されたガスは、下流室88の上方へ移動する。このガスに含まれる水は、前記各水切り板89b,89cで補足された後、さらに、前記高温空気噴射装置92により供給された高温の空気により温められることで気化する。このように下流室88内のガスに含まれる水は除去、気化され、気化した水を含むガスが前記導出口88から還流部60に排出される。
【0100】
このようにして、前記ファン70およびファン70よりも下流の還流部60には、灰分、水溶性の酸性ガスおよび液体の水を含有しないガスが通過する。従って、ファン70およびファン70よりも下流の還流部60に灰分が付着する、あるいは、前記酸性ガスおよび液体の水によりファン70およびファン70の下流側の還流部60が腐食されるのが抑制され、ファン70の吸引性能は高く維持される。前記ファン70を通過したガスは、前記還流部出口14dを介して前記二次燃焼部14内に流入する。
【0101】
ここで、前記各噴射装置64,65から噴射された水はスクラバー80の下端に流下してこの下端に貯留されていた水と合流する。スクラバー80に貯留されている水は、前記水抜き装置95内に流入する。そして、この水抜き装置95からオーバーフローした水は、前記貯留タンク102内に流入して、再び各噴射装置64,65からスクラバー80側に噴射される。
【0102】
なお、前記溶融部12から排出された高温ガスのうち前記シュート20内に流入したガス以外のガスは、二次燃焼部14の本体部14cにおいて、前記環流部出口14dを介して還流部60から流入したガスと混合され二次燃焼される。この二次燃焼後の排ガスは前記ボイラー30に導入される。
【0103】
一方、前記ファン70が故障等により停止している場合は、前述のように、スクラバー80の下流室88内の圧力と上流室86内の圧力とが等しくなることで、前記連通部84bは水封される。これにより、前記還流部60の下流側の比較的低温のガスが、前記シュート20内へ逆流するのが規制される。従って、この逆流により、前記シュート20内さらには前記出滓口12a付近の温度が低下して前記スラグがシュート20の側面あるいは出滓口12a付近において固着するのが回避される。
【0104】
特に、前記水追加手段112が、前記水位計110で検出された貯留水の貯留量に基づいて、スクラバー80内の水の貯留量を、前記上流室86および下流室88内の圧力が等しい条件下において前記連通部84bが水封される量に維持している。従って、前記還流部60の下流側の比較的低温のガスの前記シュート20内への逆流は、確実に回避される。
【0105】
以上のようにして、本溶融システム50では、前記出滓口12a付近においてスラグが高温に維持されており、この出滓口12a付近におけるスラグの固着が抑制されて固着したスラグの除去作業の頻度が抑えられる。しかも、前記スクラバー80が前記ファン70内への灰分および酸性ガスの流入を抑制しており、この灰分等によるファン70の故障頻度が抑えられるため、安定して前記スラグの固着が抑制される。
【0106】
また、前記ファン70が故障した場合であっても、前記スクラバー80が前記還流部60側から低温のガスがシュート20内に逆流するのを規制しており、この逆流に伴いシュート20内および出滓口12a付近の温度が低下するのが回避されて、シュート20および出滓口12aにおけるスラグの固着が抑制される。
【0107】
ここで、各噴射装置64,65に灰を含まない水を供給するべくスクラバー80の貯留水から灰を除去するための具体的構成は、前記のような水抜き装置95内の水の上澄み水を用いるという構成に限らない。例えば、灰を除去可能なフィルタを用い、スクラバー80と各噴射装置64,65との間にこのフィルタを設けるようにしてもよい。
【0108】
また、水抜き装置95の具体的構成は、前記に限らない。例えば、ベルトコンベア95aに代えて掻き寄せ器を利用してもよい。また、スクラバー80の下部を灰が下方に蓄積されるように傾斜した構造として、スクラバー80の下部から直接灰を外部へ引き抜く構造としても良い。
【0109】
また、前記水追加供給手段112の位置は前記に限らない。例えば、水追加供給手段112は、スクラバー80に直接接続されて、水道水等の水を直接スクラバー80内に追加供給してもよい。
【0110】
さらに、前記水追加供給手段112は省略可能である。ただし、この水追加供給手段112により、新たな水がスクラバー80内に供給されれば、スクラバー80内の水が不足する結果前記連通部84bが水封されないという事態、ひいては、還流部60の下流側の比較的低温のガスがシュート20内へ逆流することでスラグがシュート20の側面あるいは出滓口12a付近に固着するという事態がより確実に回避される。
【0111】
また、前記水位計110の位置は前記に限らない。図5に示すように、水位計110は、スクラバー80の下流室88に設けられて、下流室88内の貯留水の貯留量を検出してもよい。
【0112】
さらに、前記水位計110は省略可能である。ただし、水位計110によりスクラバー80内の貯留水量が検出されて、この量に基づいて水追加供給手段112がスクラバー80内に水を供給すれば、スクラバー80内の水不足がより確実に回避される。
【0113】
また、前記スクラバー80と第1噴射装置64および第2噴射装置65とで水を循環させるための水循環装置100の具体的構成は、前記に限らない。例えば、図5に示すように、前記ベルトコンベア95aを有する水抜き装置95を省略して、スクラバー80に直接、貯留タンク102を接続し、この貯留タンク102の上澄み水を各噴射装置64,65に供給してもよい。また、図6および図7に示すように、水抜き装置95と貯留タンク102とを個別に設けて、スクラバー80内の水を水抜き装置95を介さずに直接貯留タンク102にオーバーフローさせることでスクラバー80の上澄み水を貯留タンク102に流入させる一方、水抜き装置95によりスクラバー80内の水を適宜外部に排出させてもよい。この場合は、水抜き装置95は、スクラバー80内の水を外部に排出するための排出手段として機能する一方、スクラバー80と各噴射装置64,65との間で水を循環させるための水循環装置としては機能しない。
【0114】
前記水抜き装置95は、例えば、スクラバー80の底部に形成されてスクラバー80の貯留室82と連通する水抜き部82cを開閉可能なバルブ95aであって、水抜き部82cを開放することでスクラバー80内の水を外部に排出させるものであってもよい。このバルブ95aの開動作は、例えば、スクラバー80の底部に所定量の灰が蓄積したと想定される所定時間毎に行われる。
【0115】
図6に示す水循環装置200では、スクラバー80の下流室88の側部に、この下流室88と連通して下流室88内の水が流入する水流入室202が設けられており、この水流入室202よりも下方にこの水流入室202と連通した状態で貯留タンク102が設けられている。
【0116】
前記水流入室202と、スクラバー80の下流室88との間には、これら各室88,202を区画する水封壁204が設けられている。この水封壁204は、水流入室202の上壁から水流入室202の底壁よりも上方の位置まで延びており、水流入室202とスクラバー80の下流室88とは、水封壁204の下方において互いに水の移動が可能なように連通している一方、この水封壁204の下端よりも上方において水およびガスの移動が不能なように互いに連通しない状態となっている。この水封壁204の下端の位置は、前記隔壁84の下端よりも下方であって、ファン70の停止時および稼動時において、下流室88と水流入室202との間が水封されるように設定されている。図6の実線に示すように、ファン70の稼動に伴い下流室88内の圧力が減少した場合、水流入室202内の水面高さは低下するが、水封壁204の下端の位置はこの低下した水流入室202内の水面よりも下方に設定されている。そのため、ファン70の稼動時に水流入室202から下流室88側にガスが流入して下流室88内のガスの吸引効率が低下するのが抑制される。
【0117】
前記水流入室202には、前記貯留タンク102に水をオーバーフローさせるための開口部206が形成されている。この開口部206の下端の位置は、図6の破線に示すように、ファン70の稼動に伴い下流室88内の圧力が減少して水流入室202内の水面高さが低下した状態で前記各噴射装置64,65から前記連結部62を介してスクラバー80内に水が流入し、これにより、スクラバー80ひいては水流入室202内の水面が上昇した際に、この水流入室202内の水が開口部206から貯留タンク102側へオーバーフローする位置に設定されている。そのため、この水循環装置200では、前記各噴射装置64,65から噴射された水量に応じて、水流入室202から貯留タンク102へ水がオーバーフローして、貯留タンク102とスクラバー80とを循環する水の量が適正量に維持される。
【0118】
このように、この水循環装置200では、下流室88内の水を水流入室202を介して貯留タンク102側へオーバーフローさせることでスクラバー80と貯留タンク102との間で循環する水を適正に維持することができる。そのため、この水循環装置200では、スクラバー80と貯留タンク102との間で循環する水量を循環する水の量ひいてはスクラバー80内の水量を適正に維持するためにこの水量を測定する水位計は省略可能である。
【0119】
なお、この開口部206の下端の位置は、隔壁84の下端よりも上方に設定されている。そのため、ファン70の停止に伴って下流室88、上流室86および水流入室202内の圧力が同一となりこれら各室88,86,202内の水面高さが同一となった場合において、この水面高さは前記隔壁84よりも上方に維持され、上流室86と下流室88との間は水封される。
【0120】
図7に示す水循環装置300では、スクラバー80の下流室88の側壁に開口部302が形成されているとともに、この開口部302に連結されて下流室88内の水が流入する配管304と、この配管304を通過した水が貯留される水流入室306とが設けられており、この水流入室306に貯留タンク102が連通している。
【0121】
前記配管304は、前記開口部302から下方に延びており、その下側開口部304aは、前記水流入室306に貯留されている水中に挿入されている。この配管304の下側開口部304aは、水流入室306のうちこの水流入室306と貯留タンク102との連通部分308の下端よりも下方に位置している。そのため、前記連通部分308の上端よりも水面が下方となりこの連通部分308を介してこれら水流入室306と貯留タンク102との間でガスの移動が可能になった場合であっても、配管304の下側開口部304aは水封される。従って、ファン70の稼動時および停止時に貯留タンク102から下流室88内にガスが流入するのが抑制される。そして下流室88内のガスの吸引効率が低下するのが抑制される。
【0122】
前記下流室88の側壁に形成された開口部302の下端は、ファン70の停止時における上流室86および下流室88の水面よりも上方であって、図7の実線で示すようにファン70が駆動されて下流室88内の水面が所定高さまで上昇した状態で、前記各噴射装置64,65から前記連結部62を介してスクラバー80内に水が流入し、これにより、図7の破線に示すように、スクラバー80ひいては下流室88内の水面が上昇した際に、この水面上昇分すなわち噴射装置64,65から噴射された量分の水が開口部302から貯留タンク102側へオーバーフローする位置に設定されている。そのため、この水循環装置300においても、貯留タンク102とスクラバー80とを循環する水の量が適正量に維持される。また、この水循環装置300においても、噴射装置64,65から噴射された量分の水が開口部302から貯留タンク102側へオーバーフローすることで循環する水の量が適正量に維持されるため、水位計は省略可能である。
【0123】
また、図8に示すように、前記還流部出口14dが前記溶融部12に設けられており、前記還流部60が前記シュート20と前記溶融部12とを連通していてもよい。この場合には、還流部60を通過したガスは前記還流部出口14dから溶融部12内に流入し、このガス中の未燃物が溶融部12内で燃焼される。ただし、この還流部60を通過するガスすなわち溶融部12から排出されたガスが空気を含んでいない場合は、ガス中の未燃物が溶融部12内で十分に燃焼せず、溶融部12内の温度を低下させるおそれがある。そのため、このような場合には、前記実施形態のように還流部出口14dを前記二次燃焼部14に設けて、還流部60を通過したガスが二次燃焼部14に流入するのが好ましい。
【0124】
また、前記スクラバー80において、上流室86内の高温ガスが下流室88内に高速で流入してこの高温ガスと下流室88内との水の混合が促進されるように、前記隔壁84の下端部に、上流室から下流室に向かってその流路面積が縮小する絞り部を設け、前記上流室86内の高温ガスをこの絞り部を通して下流室88へ流入させるようにしてもよい。具体的には、前記隔壁84の下端部が外壁82の底壁付近まで延びて、この隔壁84の下端部付近に前記上流室86と下流室88とを連通して水およびガスが通過可能な流路を形成する開通口を囲む絞り部が設けられており、この絞り部が、前記開通口の開口面積すなわち流路面積が下流室88側に向かうほど絞られるように上流室86側から下流室88側に向けて漏斗のような形状を有するものが挙げられる。すなわち、前記隔壁の下端部付近が上流室86側から下流室88側に向かって凸状を有しており、この凸状部分の先端に前記開通口が設けられたものが挙げられる。なお、前記開通口は、上流室86と下流室88とをつなぐ方向と垂直な方向に溝状に延びていてもよい。このように、前記隔壁84の下端部に開通口が形成されて前記絞り部が設けられる場合には、スクラバー80内に貯留される水の量は、上流室86と下流室88の圧力差が等しい場合において水面がこの開通口よりも上方に位置してこの開通口が水封される一方、前記圧力差が所定値以上の場合において上流室86の水面が前記開通口の上端よりも下方に位置して上流室86から下流室88へガスが流入可能となるように調整される。
【0125】
また、前記高温空気供給手段92が高温の空気を供給する場所は、前記のような導出口88b近傍に限らない。例えば、図5に示すように、前記高温空気供給手段92は、下流室88のうち水面近傍、すなわち、水面よりもわずかに上方の位置に高温の空気を供給してもよい。この場合には、高温空気供給手段92は、下流室88の水面と平行あるいは水面から上方に向けて高温の空気を供給するのが好ましい。すなわち、高温の空気が上流室86側に流入して上流室86内の水の気化が促進されると、上流室86内のガス中の液滴の割合が減少する結果、この液滴によるガス中の灰および酸性ガスの除去量が低減するおそれがある。これに対して、前記のように高温の空気が下流室88の水面と平行あるいは水面から上方に向けて供給されれば、高温の空気の上流室86側への流入が抑制されるので、下流室88内のガス中の水分の気化を促進させつつ、上流室86内におけるガス中の灰および酸性ガスの除去量が多く確保される。また、このように、高温の空気が下流室88の水面近傍に供給された場合には、高温の空気の供給部分と導出口88bまでの距離が長くなり、下流室88内のガス中の水がより確実に気化できる。
【0126】
また、前記スクラバー80と前記ファン70との間を通過するガスを加熱するための手段は、前記のような高温の空気を供給する高温空気噴射装置92に限らない。例えば、高温空気噴射装置として、ヒーター等が用いられてもよい。
【0127】
また、前記高温空気噴射装置92は省略可能である。ただし、この高温空気噴射装置9
2を設けて、ガスを加熱すれば、スクラバー80から排出されるガス中に含まれる水分を蒸発させて、この水分がファン70およびスクラバー80の下流側の還流部60を腐食するのが抑制される。また、この水分を介してファン70および還流部60に灰が付着するのが抑制される。これにより、ファン70および還流部60の耐水性を高めることなく、ファン70の吸引性能を高く維持することができるとともに還流部60の耐久性を高く維持することができる。
【0128】
また、前記第1噴射装置64および第2噴射装置65は省略可能である。ただし、これら噴射装置を設けて、水を前記連結部62と上流室86に噴射すれば、この水により連結部62および上流室86の内側面に付着した灰を除去することができ、連結部62および上流室86内の灰の蓄積を抑制して、高温ガスを安定して還流部60内に吸引することができる。
【0129】
また、前記第1噴射装置64および第2噴射装置65により噴射される液体であって、連結部62の内側面に付着した灰を剥離させるとともにこの灰とともに前記導入口86aに流下する剥離用液体、および、上流室86の内側面に付着した灰を剥離させるとともにこの灰とともに上流室86の下方に流下する剥離用液体の成分は、前記水に限らず、他の液体であってもよい。ただし、スクラバー80内に貯留されている液体と同じ成分(本実施形態では水)にすれば、噴射した液体をスクラバー80内に貯留されている液体に混入させるだけでよく、管理が容易である。
【0130】
また、前記水は、例えば、霧状のように微粒化されて各噴射装置64,65から、連結部62および上流室86内に噴射されてもよい。このようにすれば、水の表面積が大きくなり、水と高温ガスとの接触面積が増加するため、高温ガスの温度がより低下する。一方、このように水が微粒化された場合には、噴射される水の量が比較的少なくなる。そのため、還流部60内に流入する灰の量が多い場合には、水を微粒化せずに噴射するのが好ましい。
【0131】
また、前記第1噴射装置64および第2噴射装置65により気体例えば空気が噴射されてもよい。ただし、水を用いれば、空気を用いる場合に比べて、高温ガスの温度をより低下させて、このガス温度の低下に伴って上流室86内のガス中の水分量を増加させることができ、ガス中の灰および酸性ガスをより多く除去することができる。
【0132】
また、前記実施形態のように水循環装置を用いて水(浄化用液体)をスクラバー80と各噴射装置64,65との間で循環して使用する場合において、循環経路の途中に中和設備を設けて酸性ガスを含む水を中和させても良い。このように、スクラバー80と各噴射装置64,65との間で循水を中和すれば、この酸性ガスを含む水によって噴射装置64,65等の各種機器への悪影響を抑制することができるとともに、この水中に酸性ガスをより多く吸収させることができる。
【0133】
また、前記スクラバー80内に貯留されて、前記高温ガスから前記灰および酸性ガスを除去するための浄化用液体は水に限らない。ただし、水を用いれば、管理が容易であるとともにコストが低減する。
【0134】
また、前記実施形態では、第1噴射装置64が噴射した水により連結部62の内側面から剥離した灰がスラグ冷却装置28側に流入するのが抑制されるように、前記連結部62が前記還流部入口24から前記スクラバー80の導入口86aに向けて傾斜しているが、スラグ中に灰が混入しても良い場合は、前記連結部62は、逆の傾斜、即ち前記導入口86aから前記還流部入口24に向かうに従って下方に傾斜する構造とされてもよい。
【0135】
また、前記溶融部12内の高温ガスを前記還流部60内に吸引するための吸引手段は、前記ファン70に限らない。
【0136】
また、本溶融システム50の適用については、前記廃棄物処理設備1に限らない。
【符号の説明】
【0137】
1 廃棄物処理設備
10 溶融炉
12 溶融部
12a 出滓口
14 排出部
20 シュート
50 溶融システム
60 還流部
62 連結部
64 第1噴射装置(連結部用流体噴射装置)
65 第2噴射装置(上流室用流体噴射装置)
70 ファン(吸引手段)
80 スクラバー(浄化器)
82 貯留室
84 隔壁(隔離部材)
86 上流室
86a 導入口
88 下流室
88b 導出口
92 高温空気噴射装置(加熱手段)
95 水抜き装置(排出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物が熱分解されることで発生する熱分解ガス中の灰分を溶融する溶融システムであって、
前記廃棄物の熱分解ガス中の灰分を燃焼溶融させてスラグを生成するとともに下流端に形成された出滓口から前記スラグを排出する溶融部と、
前記出滓口から下方に延びてこの出滓口から流下するスラグを囲む形状を有するシュートと、
前記シュートの下流に設けられて前記溶融部から排出される排ガスが導入されて当該排ガスが内側で燃焼する二次燃焼部と、
前記シュート内のガスが前記溶融部または前記二次燃焼部に戻るように前記シュートと前記溶融部または前記二次燃焼部とを連通する還流部と、
前記還流部に設けられて、前記溶融部から排出される高温ガスの一部が前記出滓口から前記シュート内に導入されるように前記シュート内の高温ガスを前記還流部内に吸引可能な吸引手段と、
前記還流部のうち前記シュートと前記吸引手段との間に介在する位置に設けられて、内側を前記シュートから前記還流部内に吸引された前記高温ガスが通過可能な形状を有するとともに、前記高温ガスの通過途中に当該高温ガス中の酸性ガスの少なくとも一部および灰分を除去可能な浄化器とを備え、
前記浄化器は、上流室と、下流室と、当該上流室と下流室との間に介在する隔離部材とを備え、
前記上流室は、前記還流部の前記シュート側の部分に接続されて、当該上流室内に前記シュートから前記還流部内に吸引された前記高温ガスを導入可能な導入口を有するとともに、その内側に、前記高温ガスに含まれる灰分および酸性ガスの少なくとも一部を溶解可能な浄化用液体を、その液面が前記導入口の下方となる状態で貯留しており、
前記下流室は、前記還流部の前記吸引手段側の部分に接続されて、当該下流室内のガスを前記吸引手段側に導出可能な導出口を有するとともに、その内側に、前記浄化用液体を、その液面が前記導出口の下方となる状態で貯留しており、
前記隔離部材は、前記上流室の内圧と前記下流室の内圧の差圧が所定圧力以下の場合は、前記導入口および前記導出口からこれら上流室と下流室の各液面の下方の特定位置に至るまでこれら上流室と下流室とを隔離することで、前記特定位置よりも下方の領域において前記上流室と前記下流室との間の前記浄化用液体の流通を許容しながらこれら上流室と下流室との間のガスの流通を規制する一方、前記吸引手段が前記下流室内のガスを吸引することで前記上流室の内圧が前記下流室の内圧よりも所定圧力高くなる場合は、前記上流室の液面よりも上方かつ前記下流室の液面よりも下方に位置することで前記上流室の液面と当該隔離部材の下端部との間を通じて前記上流室から前記下流室内の前記浄化用液体中へのガスの流入を許容する形状を有することを特徴とする溶融システム。
【請求項2】
請求項1に記載の溶融システムにおいて、
前記浄化器の下流室内の前記浄化用液体の液面よりも上方の部分に存在するガスに熱エネルギーを供給して、当該下流室内のガスを当該ガスに含まれる前記浄化用液体が蒸発する温度にまで加熱可能な加熱手段を備えることを特徴とする溶融システム。
【請求項3】
請求項2に記載の溶融システムにおいて、
前記加熱手段は、前記下流室内の前記浄化用液体の液面よりも上方の部分に高温の空気を供給することを特徴とする溶融システム。
【請求項4】
請求項3に記載の溶融システムにおいて、
前記加熱手段は、前記導出口付近に高温の空気を供給することを特徴とする溶融システム。
【請求項5】
請求項3に記載の溶融システムにおいて、
前記加熱手段は、前記下流室内の前記浄化用液体の液面近傍に当該液面と平行あるいは当該液面よりも上方に向かって高温の空気を供給することを特徴とする溶融システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の溶融システムにおいて、
前記浄化器は、内側に前記浄化用液体を貯留可能な貯留室が形成された本体容器を備え、
前記隔離部材は、前記貯留室を前記上流室と前記下流室とに区画する隔壁を含み、
前記隔壁は、前記導入口および前記導出口から前記特定位置に至るまで前記上流室と前記下流室とを隔離するように前記貯留室内に設けられることを特徴とする溶融システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の溶融システムにおいて、
前記還流部は、前記シュートと前記導入口とを連結する連結部を有し、
前記連結部は、前記シュートから前記導入口に向かうに従って下方に傾斜する形状を有することを特徴とする溶融システム。
【請求項8】
請求項7に記載の溶融システムにおいて、
前記還流部は、前記連結部の内側面に付着した灰を当該連結部内側面から剥離させるとともにこの剥離した灰とともに前記導入口へ流下する剥離用液体を、この連結部の内側面に向かって噴射する連結部用流体噴射装置を有することを特徴とする溶融システム。
【請求項9】
請求項8に記載の溶融システムにおいて、
前記連結部用流体噴射装置は、前記剥離用液体として前記浄化用液体を噴射することを特徴とする溶融システム。
【請求項10】
請求項9に記載の溶融システムにおいて、
前記浄化器と前記連結部用流体噴射装置とを連結して、前記浄化器に貯留されている前記浄化用液体を前記連結部用流体噴射装置に供給して、当該浄化用液体を前記浄化器と前記連結部用流体噴射装置との間で循環させる連結部用液体循環手段を有することを特徴とする溶融システム。
【請求項11】
請求項10に記載の溶融システムにおいて、
前記連結部用液体循環手段は、前記浄化器から流入した灰を含む浄化用液体を灰と浄化用液体とに分離可能な分離部を有し、当該分離部で灰と分離された浄化用液体を前記連結部用流体噴射装置に供給することを特徴とする溶融システム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の溶融システムにおいて、
前記浄化器は、前記上流室内のうち前記特定位置よりも上方に設けられて、当該上流室の内側面に付着した灰を当該上流室の内側面から剥離させるとともにこの剥離した灰とともに当該上流室の下方へ流下する剥離用液体を、この上流室の内側面に噴射する上流室用流体噴射装置を有することを特徴とする溶融システム。
【請求項13】
請求項12に記載の溶融システムにおいて、
前記上流室用流体噴射装置は、前記剥離用液体として前記浄化用液体を噴射することを特徴とする溶融システム。
【請求項14】
請求項13に記載の溶融システムにおいて、
前記浄化器と前記上流室用流体噴射装置とを連結して、前記浄化器に貯留されている前記浄化用液体を前記上流室用流体噴射装置に供給して、当該浄化用液体を前記浄化器と前記上流室用流体噴射装置との間で循環させる上流室用液体循環手段を有することを特徴とする溶融システム。
【請求項15】
請求項14に記載の溶融システムにおいて、
前記上流室用液体循環手段は、前記浄化器から流入した灰を含む浄化用液体を灰と浄化用液体とに分離可能な分離部を有し、当該分離部で灰と分離された浄化用液体を前記上流室用流体噴射装置に供給することを特徴とする溶融システム。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の溶融システムにおいて、
前記浄化器に貯留されている前記浄化用液体の貯留量を検出する貯留量検出手段と、
前記貯留量検出手段により検出された浄化用液体の貯留量が予め設定された基準量以下の場合に、前記浄化器内に浄化用液体を供給する液体追加供給手段とを有することを特徴とする溶融システム。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の溶融システムにおいて、
前記浄化器に連通されて、当該浄化器内の前記浄化用液体をこの浄化器の外部に排出可能な排出手段を備えることを特徴とする溶融システム。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の溶融システムにおいて、
前記浄化用液体が水であることを特徴とする溶融システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−247572(P2011−247572A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60748(P2011−60748)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】