説明

溶融シリカを含有する口腔ケア組成物

溶融シリカ研磨剤及び経口的に許容できる担体を含む口腔ケア組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融シリカを含有する口腔ケア組成物、並びにこれらの溶融シリカ組成物を使用した歯の洗浄及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有効な口腔組成物は歯の汚れを除去し、歯を研磨することにより、歯の外観を維持及び保存することができる。有効な口腔組成物はまた、外部砕片を洗浄及び除去することができ、このことは虫歯の予防を助け、歯肉の健康を促進し得る。
【0003】
口腔組成物中の研磨剤は、歯の汚れが付着する堅く粘着した薄膜フィルムの除去を助ける。通常、薄膜フィルムは、歯の洗浄後に数分内でエナメル質に付着する薄い無細胞糖タンパク質−ムコタンパク質被膜を含む。フィルム中に残留する様々な食品顔料の存在は、歯の変色の主な原因である。研磨剤は、象牙質及びエナメル質等の口腔組織に対する最小限の研磨損傷により、薄膜フィルムを除去することができる。
【0004】
研磨された表面は、望ましくない構成成分の異所性沈着に対する耐性が高いため、研磨剤システムが、洗浄に加えて歯表面の研磨を提供することが望ましい場合がある。表面粗さ、即ち表面の研磨が歯の外観に完全に関連する光反射率及び光散乱に影響を与えるため、歯に研磨特性を付与することにより歯の外観が改善され得る。表面粗さは、歯の感触にも影響を与える。例えば、研磨された歯は、清潔な、滑らかでツルツルした感触を有する。
【0005】
多数の歯磨剤組成物が、研磨剤として沈降シリカを用いている。沈降シリカは、Wasonに付与された1982年7月20日の米国特許第4,340,583号、McKeownらに付与された1993年4月7日の欧州特許第535,943A1号、McKeownらに付与された1992年2月20日の国際特許出願公開第92/02454号、両方ともRiceに付与された1997年2月18日の米国特許第5,603,920号及び1998年2月10日の米国特許第5,716,601号、並びにWhiteらに付与された2004年5月25日の米国特許第6,740,311号に示されかつ記載されている。
【0006】
口腔組成物中の沈降シリカは、歯の有効な洗浄を提供する一方、フッ化物及びカチオン性抗菌剤等の、調合物の主な活性物質に対する融和性の問題を有し得る。これら融和性の問題は、表面積、ヒドロキシル基の数、及び多孔性等の沈降シリカの表面特性に直接関連することが示されている。口腔組成物中に使用される沈降シリカの表面特性に関連した他の潜在的問題は、調合物中の香味成分との相互作用である。この相互作用は、製品の寿命にわたる異臭につながり、製品を消費者にとって許容できないものとし得る。
【0007】
口腔ケア活性物質、及び主な歯磨剤構成成分と良好な融和性を有すると共に、歯の組織の有効かつ安全な洗浄及び研磨を提供する研磨剤システムが必要とされている。加えて、優れた洗浄及び研磨を低コストで生み出し得る研磨剤が継続して必要とされている。本発明の溶融シリカは、これら利点のうちの1つ以上を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,340,583号
【特許文献2】欧州特許第535,943A1号
【特許文献3】国際特許出願公開第92/02454号
【特許文献4】米国特許第5,603,920号
【特許文献5】米国特許第5,716,601号
【特許文献6】米国特許第6,740,311号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、口腔組成物と、活性物質のより良好な安定性を提供できる、それら口腔組成物の使用方法とに関する。本発明の組成物及び方法は、より強い香味提示(flavor display)を提供することができる。また本発明の組成物及び方法は、磨耗性を増大させることなく、改善された歯の洗浄を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、溶融シリカ研磨剤と、経口的に許容できる担体とを含む口腔ケア組成物に関する。本発明は更に、これらの溶融シリカ組成物を使用した、歯のエナメル質の洗浄及び研磨方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】様々な溶融シリカ及び沈降シリカの材料特性の表。
【図2】溶融シリカ及び沈降シリカに関する融和性データの表。
【図3a】口腔ケア組成物のフッ化ナトリウムベースの製剤の表。
【図3b】図3(a)の組成物に関するPCR及びRDA値の表。
【図4a】口腔ケア組成物のフッ化第1スズベースの調合物の表。
【図4b】図4(a)の組成物に関するPCR及びRDA値の表。
【図5】溶融シリカの洗浄及び研磨性の表。
【図6a】沈降シリカ及び溶融シリカ像のSEM顕微鏡写真。
【図6b】沈降シリカ及び溶融シリカ像のSEM顕微鏡写真。
【図6c】沈降シリカ及び溶融シリカ像のSEM顕微鏡写真。
【図6d】沈降シリカ及び溶融シリカ像のSEM顕微鏡写真。
【図6e】沈降シリカ及び溶融シリカ像のSEM顕微鏡写真。
【図6f】沈降シリカ及び溶融シリカ像のSEM顕微鏡写真。
【図6g】沈降シリカ及び溶融シリカ像のSEM顕微鏡写真。
【図6h】沈降シリカ及び溶融シリカ像のSEM顕微鏡写真。
【図6i】沈降シリカ及び溶融シリカ像のSEM顕微鏡写真。
【図7a】調合組成物の表。
【図7b】図7(a)の組成物に関するスズ、亜鉛及びフッ化物の融和性の表。
【図8】シリカ負荷の関数としてのスズ融和性の表。
【図9a】過酸化物と、溶融シリカ及び沈降シリカとを含有する調合組成物の表。
【図9b】図9(a)の組成物に関する過酸化物融和性の表。
【図10a】溶融シリカを含有する調合組成物の表。
【図10b】図10(a)の組成物に関する洗浄及びホワイトニング性能の表。
【図11a】溶融シリカ及び沈降シリカを含有する調合組成物の表。
【図11b】図11(a)の組成物に関する消費者知覚データの表。
【図12】追加の調合物の実施例の表。
【図13a】調合物の実施例の表。
【図13b】図13(a)のフッ化ナトリウムベースの組成物のPCR及びRDA値の表。
【図13c】調合物の実施例の表。
【図13d】図13(c)のフッ化第1スズベースの組成物に関するRDA値の表。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書は、本発明を具体的に指摘しかつ明確に主張する特許請求の範囲を結論とするが、以下の説明により、本発明がよりよく理解されるであろうと考えられる。
【0013】
定義
本明細書で使用されている用語「経口的に許容される担体」は、本組成物を口腔に安全で効果的に形成及び/又は適用するために使用できる好適な溶媒又は成分を意味する。このような溶媒には、フッ化物イオン源、抗菌剤、抗結石剤、緩衝材、その他の研磨材、ペルオキシド源、アルカリ金属重炭酸塩、増粘材、保湿剤、水、界面活性剤、二酸化チタン、香味系、甘味剤、冷却剤、キシリトール、着色剤、他の好適な材料、及びこれらの混合物等の材料を挙げることができる。
【0014】
本明細書で使用されている用語「〜を含む」は、特に言及したもの以外の工程及び成分を加え得ることを意味する。この用語は、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。本発明の組成物は、本明細書に記載の発明の必須要素及び制限、並びに本明細書に記載のいかなる追加若しくは任意の成分、構成成分、工程、又は制限を含む、からなる、及びから本質的になることができる。
【0015】
本明細書で使用されている用語「有効量」とは、当業者の適切な判断内で明白な利益、口腔の健康の利益を誘導するために十分な、及び/又は重篤な副作用を回避するために十分に低い、即ち合理的な利益対危険性比を提供する化合物又は組成物の量を意味する。
【0016】
本明細書で使用されている用語「口腔組成物」は、通常の使用過程では、口腔の活性を目的として一部の又は全ての歯の表面及び/又は口腔組織と接触させるのに十分な時間にわたり、口腔内に保持される製品を意味する。本発明の口腔組成物は、練り歯磨き、歯磨剤、歯磨きジェル、歯磨き粉、錠剤、洗口剤、歯肉下ジェル、泡状体、マウス(mouse)、チューインガム、リップスティック、スポンジ、デンタルフロス、歯科予防処置用ペースト、ペトロラタムゲル、又は入れ歯製品を含む様々な形態であってもよい。口腔組成物はまた、口腔表面へ直接適用する又は付着させるためのストリップ若しくはフィルム上に組み込まれても、又はデンタルフロス中に組み込まれてもよい。
【0017】
本明細書で使用されている用語「歯磨剤」は、特に指定しない限り、口腔の表面を洗浄するために使用するペースト、ゲル、粉末、錠剤、又は液体の製剤を意味する。
【0018】
本明細書で使用されている用語「歯」は、天然歯、並びに人工歯又は歯科補綴物を指す。
【0019】
本明細書で使用されている用語「ポリマー」は、1種類のモノマーの重合によって作られた材料又は2つ(すなわちコポリマー)以上の種類のモノマーによって作られた材料を、いずれかを問わずに含むものとする。
【0020】
本明細書で使用されている用語「水溶性」は、物質が本組成物中で水に可溶であることを意味する。一般に、物質は25℃にて、水溶媒に対して0.1重量%、好ましくは1重量%、より好ましくは5重量%、より好ましくは15重量%の濃度で可溶であるべきである。
【0021】
本明細書で使用されている用語「相」は、不均質な系の、機械的に分離した、均一な部分を意味する。
【0022】
本明細書で使用されている用語「実質的に非水和」は、材料が少数の表面ヒドロキシル基を有するか、又は表面ヒドロキシル基を実質的に有さないことを意味する。「実質的に非水和」は、材料が約5%未満の全体の水(遊離又は/及び結合)を含むことも意味し得る。
【0023】
本明細書で使用されている用語「大部分」は、より大きい数又は部分、全体の半分を超える数を意味する。
【0024】
本明細書で使用されている用語「中央」は、分布の中央値を意味し、中央の上方と下方とには、同数の値が存在する。
【0025】
百分率、部及び比は全て、特に記述しない限り、本発明の組成物の総重量に基づく。このようなすべての重量は、記載した成分に関する限り活性物質レベルに基づくものであり、そのため特に指定されない限り市販材料に包含される可能性のある溶媒もしくは副産物を包含しない。「重量百分率」という用語は、本明細書では「重量%」として表示されてもよい。
【0026】
特に指定されない限り、本明細書で使用される分子量は全て、グラム/モルで表される重量平均分子量である。
【0027】
溶融シリカ
溶融シリカは、高純度の非晶質二酸化ケイ素である。溶融シリカは、時には融解水晶、融解シリカ、シリカガラス、又は石英ガラスと称される。溶融シリカは、ガラスに典型的な、その原子構造に長距離秩序を有さない一種のガラスである。しかし、溶融シリカが一般に、より高い強度、熱安定性及び紫外線透明性を有するため、溶融シリカの光学的特性及び熱特性は、他のガラスの光学的特性及び熱特性と比較して独特である。これらの理由から、溶融シリカは、半導体製作及び実験装置等の状況にて使用されることが公知である。
【0028】
本発明は、口腔組成物、特に歯磨剤組成物中に溶融シリカを使用する。現在の多数の歯磨剤組成物が増粘剤及び研磨剤としてシリカを使用しているが、一般に使用されているシリカは沈降シリカである。沈降シリカは、水性沈降(aqueous precipitation)又は乾燥プロセスにより形成される。対照的に、溶融シリカは一般に、高純度ケイ砂を非常に高温、約2000℃で融解することにより製造される。
【0029】
図1は、様々な種類の溶融シリカの材料特性の表である。比較のために、いくつかの沈降シリカに関する同一の物理的特性も示す。溶融シリカを沈降シリカから区別する、BET表面積、乾燥減量、強熱減量、シラノール密度、嵩密度、タップ密度、吸油率及び粒径分布を含む主な材料特性のいくつかを示す。これらの材料特性のそれぞれは、以下により詳細に論じられる。
【0030】
シリカをこのような高温に加熱するプロセスは、シリカの多孔性及び表面官能基を破壊する。このプロセスにより極度に硬く、殆どの物質に対して不活性なシリカが生成される。融解プロセスは、沈降シリカのBET表面積よりも小さいBET表面積ももたらす。溶融シリカのBET表面積は、約1m/g〜約50m/g、約2m/g〜約20m/g、約2m/g〜約9m/g、及び約2m/g〜約5m/gの範囲である。比較のため、沈降シリカは一般に、30m/g〜80m/gの範囲のBET表面積を有する。BET表面積は、Brunaurら、J.Am.Chem.Soc.,60,309(1938)のBET窒素吸収法により測定される。Gallisに付与された2007年8月14日発行の米国特許第7,255,852号も参照されたい。
【0031】
溶融シリカは他の種類のシリカと比較して、一般に少量の遊離又は/及び結合水を有する。溶融シリカ中の結合及び遊離水の量は、一般に約10%未満である。溶融シリカ中の結合及び遊離水の量は、約5%未満、又は約3%未満であってもよい。約5%未満の結合及び遊離水を有するシリカは、実質的に非水和と考えることができる。結合及び遊離水の全体は、乾燥減量(LOD)と、強熱減量(LOI)との2つの測定値を合計することにより計算することができる。最初に実行される乾燥減量の場合、試料を105℃で2時間乾燥してもよく、重量損失は遊離水である。強熱減量の場合、乾燥された試料を次に1000℃で1時間加熱してもよく、重量損失は結合水である。LODとLOIとの合計が、元の試料中の結合及び遊離水の全体を表す。例えば、記載した試験方法にしたがって、溶融シリカ(Teco−Sil 44CSS)は、0.1%の乾燥減量及び2.2%の強熱減量、つまり2.3%の水全体の合計を有する。これと比較して、典型的な沈降シリカ、Z−119は、11.2%の水全体の合計において6.1%の乾燥減量と、5.1%の強熱減量とを有する。(他の試験方法に関しては、United States Pharmacopeia−National Formulary(USP−NF),General Chapter 731,Loss on Drying and USP−NF,General Chapter 733,Loss on Ignitionを参照されたい。)
溶融シリカは、沈降シリカと比較して少数の表面ヒドロキシル又はシラノール基を有する。表面ヒドロキシル基の計算は、核磁気共鳴分光法(nmr)を用いて特定のシリカのシラノール密度を測定することにより見出すことができる。シラノールは、ヒドロキシ置換基が直接結合するケイ素原子を含む化合物である。様々なシリカにて固相nmr解析を行なう際、ケイ素シグナルは、隣接するプロトンからのエネルギー移動により増強される。シグナル増強の量は、表面に位置する又は表面の近傍に位置するヒドロキシル基内に見出されるプロトンに対するケイ素原子の近接さに依存する。したがって、正規化シラノールシグナル強度(強度/g)として示されるシラノール密度は、表面ヒドロキシル濃度の尺度である。溶融シリカに関するシラノール密度は約3000強度/g未満であってもよく、いくつかの実施形態では約2000強度/g未満であり、通常は約900強度/g未満である。溶融シリカは、約10〜約800、一般に約300〜約700の強度/gを含んでもよい。例えば、溶融シリカの試料(Teco−Sil 44CSS)は、574強度/gのシラノール密度を有する。典型的な沈降シリカは、3000強度/gを超え、一般に3500強度/gを超える。例えば、Huber’s Z−119は、3716強度/gである。シラノール密度の試験方法は、磁気角度回転(5kHz)による交差分極と、高出力ゲーテッドプロトンデカップリング(high power gated proton decoupling)とを有する固相nmr、及び7mm超音速デュアルチャネルプローブを有するDoty Scientific.製のVarian Unity Plus−200分光計を使用した。緩和遅延(relaxation delay)は4秒(s)であり、接触時間は3msであった。走査数は8,000〜14,000であり、実験時間枠は、試料当たり10〜14時間であった。試料は正規化手順のために0.1mg迄秤量した。スペクトルを絶対強度モード(absolute intensity mode)でプロットし、絶対強度モードで積分を得た。シラノール密度は、スペクトルを絶対強度モードでプロット及び積分することにより測定される。
【0032】
シリカの表面反応性、即ち表面ヒドロキシルの相対的な数の反映は、溶液からメチルレッドを吸収するシリカの能力により測定することができる。これはシラノールの相対的な数である。この試験は、メチルレッドがシリカ表面の反応性シラノール部位に対して選択的に吸収される事実に基づいている。いくつかの実施形態では、メチルレッド溶液は、溶融シリカに対する暴露後、典型的な沈降シリカに暴露された溶液の吸収度よりも大きい吸収度を有し得る。これは、溶融シリカが沈降シリカほどメチルレッド溶液と反応しないためである。一般に、溶融シリカは、沈降シリカがより容易にメチルレッド溶液と反応するため、標準的な沈降シリカよりも10%大きいメチルレッド溶液吸収度を有するであろう。吸収度は、470nmで測定されてもよい。10グラムのベンゼン中0.001%メチルレッドを0.1グラムの2つのシリカ試料のそれぞれに加え、電磁撹拌機上で5分間混合する。得られたスラリーを12,000rpmsで5分間遠心分離した後、各試料に関して470nmにおけるパーセント透過率を測定し、平均する。Iler,Ralph K.,Colloid Chemistry of Silica and Silicates,Cornell University Press,Ithaca,N.Y.,1955のGary Kelmによる「Improving the Cationic Compatibility of Silica Abrasives Through the Use of Topochemical Reactions」,Nov.1,1974を参照されたい。
【0033】
理論に束縛されるものではないが、その小さいBET比表面積、低い多孔性、及び少数の表面ヒドロキシル基を有する溶融シリカは、沈降シリカよりも反応性が低いと思われる。その結果、溶融シリカは、より少量の香味剤、活性物質、又はカチオン等の他の構成成分を吸収し、これら他の構成成分の利用可能性の向上につながり得る。例えば、溶融シリカを組み込んだ歯磨剤は、卓越した安定性と、スズ、フッ化物、亜鉛、他のカチオン性抗菌剤及び過酸化水素に関するバイオアベイラビリティとを有する。歯磨剤組成物中に調合された溶融シリカは、カチオン又は他の構成成分との少なくとも約50%、60%、70%、80%又は90%の融和性を生じ得る。いくつかの実施形態では、カチオンはスズであってもよい。
【0034】
図2に、様々な種類の溶融シリカ及び沈降シリカのスズ及びフッ化物融和性を示す。スズ及びフッ化物融和性は、0.6%のグルコン酸ナトリウムと0.454%のフッ化第1スズとを含有するソルビトール/水混合物に15%のシリカを加えて、よく混合することにより測定した。次いで、各シリカスラリー試料を40℃で14日間安定的に配置し、その後、スズ及びフッ化物に関して分析した。通常の歯磨き条件下における可溶性スズ及び可溶性亜鉛の濃度の測定は、以下のようなものであり得る。3:1の水対歯磨剤(シリカ)スラリーを調製し、これを遠心分離して上清の透明層を単離する。上清を酸溶液(硝酸又は塩酸)中で希釈し、誘導結合プラズマ発光分析により分析する。分析値を初期値から差し引くことによりパーセント融和性を計算する。通常の歯磨き条件下での可溶性フッ化物の濃度の測定は、以下のようなものであり得る。3:1の水対歯磨剤(シリカ)スラリーを調製し、これを遠心分離して上清の透明層を単離する。フッ化物電極(TISAB緩衝液と1:1で混合した後)か、又は水酸化物溶液で希釈して、導電率検出を用いたイオンクロマトグラフィーにより分析するかのいずれかにより、上清をフッ化物に関して分析する。分析値を初期値から差し引くことによりパーセント融和性を計算する。一般に、カチオン融和性は、米国特許第7,255,852号に開示されている「% CPC融和性試験」により測定され得る。
【0035】
溶融シリカと沈降シリカとの間には、融和性及び表面ヒドロキシルの濃度以外にも、多数の他の特性差が存在する。例えば、溶融シリカは密度がより高く、多孔性がより低い。溶融シリカの嵩密度は、一般に0.45g/mLよりも高く、約0.45g/mL〜約0.80g/mLであってもよいが、沈降シリカの嵩密度は、高くて約0.40g/mLである。溶融シリカのタップ密度は、一般に0.6g/mLよりも高く、約0.8g/mL〜約1.30g/mLであってもよいが、沈降シリカのタップ密度は、高くて0.55g/mLである。嵩密度及びタップ密度は、USP−NF,General Chapter 616,Bulk Density and Tapped Density内の以下の方法により測定することができる。嵩密度に関しては、方法1、Measurement in a Graduated Cylinderを使用することができ、タップ密度に関しては、機械的タッパー(mechanical tapper)を使用する方法2に従うことができる。嵩密度及びタップ密度は、粒子の質量の容積に対する比を表し(所与の空間内に閉じ込められた多数の粒子空間)、捕捉空気、多孔性、及び所与の空間内に粒子がどのように組み合わされているかを反映する。溶融シリカに関する粒子の真の又は固有の密度(単一の粒子の質量の容積に対する比)は、約2.1g/cm〜2.2g/cmである一方、沈降シリカの真の又は固有の密度は、高くて約2.0g/cmである。同様に、溶融シリカの比重は、約2.1〜2.2であり得る一方、沈降シリカの比重は、高くて約2.0であり得る。密度の相違は、歯磨剤製品の製造に有意な効果を有する場合があり、例えば溶融シリカのより高い密度が、脱気のプロセス工程を減少させるか又は廃止し、このことはバッチサイクル時間の短縮につながり得る。
【0036】
溶融シリカは、比較的低い吸水率及び吸油率を有し、この測定値はBET比表面積とよく相関する。溶融シリカに関する、粉末のコンシステンシーを維持しながら吸収できる水の量を意味する吸水率は、約80g/100g未満であり、場合により約70g/100g未満であり、約60g/100g又は約50g/100gである。溶融シリカに関する吸水率は更に低くてもよく、約40g/100g未満、場合により約30g/100g未満の範囲内であり、また約2g/100g〜約30g/100gであってもよい。沈降シリカの場合、吸水率は一般に約90g/100gである。吸水率は、J.M Huber Corp.標準評価法、S.E.M No.5,140,August 10,2004)を用いて測定される。溶融シリカに関する吸油率は、約75mlフタル酸ジブチル/100g溶融シリカ未満であり、約60mLフタル酸ジブチル/100g溶融シリカ未満であってもよい。吸油率は、約10mLフタル酸ジブチル/100g溶融シリカ〜約50mLフタル酸ジブチル/100g溶融シリカの範囲であってもよく、約15mLフタル酸ジブチル/100g溶融シリカ〜約45mlフタル酸ジブチル/100g溶融シリカであることが望ましい場合がある。沈降シリカに関して、吸油率は、一般に約100mLフタル酸ジブチル/100g沈降シリカである。(吸油率は、2007年1月4日公開の米国特許出願第2007/0001037A1号に記載されている方法にしたがって測定される。
【0037】
溶融シリカはその比較的低い吸水率により、加工中にスラリーに形成されてもよく、最終的にはより急速な加工と、より速いバッチ時間とを可能にする。一般に、沈降シリカスラリーの形成には、典型的には少なくとも約50%の水を必要とするであろう。したがって、口腔組成物の製造に沈降シリカスラリーを使用することは実際的ではないであろう。しかし、溶融シリカの比較的低い吸水率に反映される溶融シリカの不活性又は多孔性の欠乏により、いくつかの実施形態では水が約30%未満含まれ、いくつかの実施形態では40%未満含まれる溶融シリカスラリーを形成することができる。いくつかの実施形態は、溶融シリカスラリーの添加を含む、口腔ケア組成物の製造方法であり得る。いくつかの実施形態では、溶融シリカスラリーはバインダーを含む。このことは、特に水の量が多い場合、溶融シリカがスラリー中に浮遊することを助け得る。このことはまた、バインダーが水和する時間を長引かせ得る。いくつかの実施形態では、バインダーは、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム等のセルロースエーテルの水溶性塩、架橋澱粉、カラヤゴム、キサンタンゴム、アラビアゴム及びトラガカントゴム等の天然ゴム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、並びにこれらの混合物からなる群より選択される。溶融シリカスラリーは、予め混合されてもよい。いくつかの実施形態では、溶融シリカスラリーは、流動性又は揚送可能(pumpable)であり得る。いくつかの実施形態では、溶融シリカスラリーは保存料を更に含有してもよく、例えば安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸又はパラベンを約1%未満にて使用してもよい。
【0038】
溶融シリカは、一般に、沈降シリカと比較して遙かに低い導電率を有する。導電率は溶解した電解質の間接的な尺度であり、沈降シリカは可溶性電解質を生成することなく形成され得ない。したがって、沈降シリカが約900〜1600マイクロジーメンス/cm(脱イオン水中5%分散物に基づき)の範囲である一方、溶融シリカは約10マイクロジーメンス/cm未満である(測定値は、Thermo Electron Corporationから入手可能なOrion 3 Star Benchtop Conductivity Meterを使用して得た)。
【0039】
溶融シリカのpHは約5〜約8の範囲であってもよい一方、沈降シリカのpHは一般に、約7〜約8である。pHは、2007年1月4日公開の米国特許出願第2007/0001037A1号にしたがって測定される。
【0040】
光透過率の尺度である屈折率は、一般に、沈降シリカよりも溶融シリカでより高い。ソルビトール/水混合物中に入れた際、溶融シリカは少なくとも約1.45の屈折率を有する一方、沈降シリカは1.44〜1.448の屈折率を有する。より高い屈折率は、透明ゲルの形成をより容易にし得る。屈折率は、2006年5月25日公開の米国特許出願第2006/0110307A1号に開示されている方法を用いて測定される。
【0041】
溶融シリカは、一般に、約6を超える、約6.5を超える、また約7を超えるMohs硬度を有する。沈降シリカはそれほど硬くなく、一般に5.5〜6のMohs硬度を有する。
【0042】
溶融シリカと沈降シリカとの間のその他の差異は純度であり、溶融シリカは沈降シリカよりも高い純度を有する。溶融シリカ中のシリカの重量パーセントは、約97%、約97.5%、約98%、約98.5%よりも高くてもよく、いくつかの実施形態では約99%よりも高く、いくつかの実施形態では約99.5%よりも高くてもよい。沈降シリカに関しては、シリカの重量パーセントは一般に約90%のみである。これらの純度測定値は不純物として水を含み、前述したLOD及びLOI方法を用いて計算されてもよい。
【0043】
供給者に応じて、水以外の不純物は、他の物質の中でも金属イオン及び塩を含み得る。一般に、沈降シリカに関しては、水以外の不純物は殆ど硫酸ナトリウムである。沈降シリカは、一般に、約0.5%〜2.0%の硫酸ナトリウムを有するであろう。溶融シリカは、一般に、硫酸ナトリウムを全く含まないか、又は0.4%未満含む。水を含まない純度レベルは、USP−NF Dental Silica Silicon Monographを参照して、以下のように測定することができる。純度は、アッセイ(二酸化ケイ素)と硫酸ナトリウム試験との結果を組み合わせたものである。アッセイのために、約1gのシリカゲルを、風袋を量った白金皿に移し、1000℃で1時間燃やし、デシケーター内で冷却し、秤量する。注意深く水で濡らし、約10mLのフッ化水素酸を少しずつ増加させながら加える。水蒸気浴上で乾燥する迄蒸発させ、冷却する。約10mLのフッ化水素酸と約0.5mLの硫酸とを加え、蒸発乾固させる。全部の酸が揮発する迄、温度をゆっくりと上昇させ、1000℃で燃やす。デシケーター内で冷却し、秤量する。最終的な重量と、当初燃やされた部分の重量との差異が、SiO2の重量を表す。硫酸ナトリウム−正確に秤量した約1gのデンタルタイプシリカ(Dental-Type Silica)を白金皿に移し、数滴の水で濡らし、15mLの過塩素酸を加え、皿をホットプレート上に配置する。10mLのフッ化水素酸を加える。大量の煙が発生する迄加熱する。5mLのフッ化水素酸を加え、再度、大量の煙が発生する迄加熱する。約5mLのホウ酸溶液(25中、1)を加え、煙が発生する迄加熱する。冷却し、残留物を10mLの塩酸の補助により、400mLビーカーに移す。水を用いて容積を約300mLに調整し、ホットプレート上で沸騰させる。20mLの熱塩化バリウムTSを加える。ビーカーをホットプレート上で2時間保持し、容積を200mL超にて維持する。冷却後、沈殿物と溶液を、乾燥した風袋を量った0.8μm多孔性フィルターるつぼに移す。フィルター及び沈殿物を熱水で8回洗浄し、るつぼを105℃で1時間乾燥し、秤量する。0.6085をかけた重量が、採取した標本の量の硫酸ナトリウム含有量である。4.0%以下が見出される。純度はまた、原子吸光分光法、又は元素分析等の標準的な分析技術の使用により測定することができる。
【0044】
溶融シリカの独特な表面形態は、より好ましいPCR/RDA比をもたらし得る。本発明の溶融シリカの、歯磨剤の洗浄特性の尺度である被膜清掃比(Pellicle Cleaning Ratio)(PCR)は、約70〜約200、好ましくは約80〜約200の範囲である。本発明のシリカの、歯磨剤に組み込まれた場合の溶融シリカの摩耗性の尺度である放射性象牙質摩耗(Radioactive Dentine Abrasion)(RDA)は約250未満であり、約100〜約230の範囲であってもよい。
【0045】
図3(a)は、様々な溶融シリカ及び沈降シリカを含有する、フッ化ナトリウムベースの調合組成物を示す。図3(b)は、対応するPCR及びRDA値を示す。図4(a)は、様々な溶融シリカ及び沈降シリカを含有する、フッ化第1スズベースの調合組成物を示す。図4(b)は、対応するPCR及びRDA値を示す。PCR値は、「In Vitro Removal of Stain with Dentifrice」G.K.Stookeyら、J.Dental Res.,61,1236〜9,1982に論じられている方法で決定される。RDA値は、Hefferren,Journal of Dental Research,July−August 1976,pp.563〜573により示され、Wasonの米国特許第4,340,583号、同第4,420,312号及び同第4,421,527号に記載されている方法にしたがって決定される。RDA値はまた、歯磨剤の研磨性を測定するための、ADA推奨による手順により決定されてもよい。歯磨剤に組み込まれた際の溶融シリカのPCR/RDA比は1よりも大きく、歯磨剤が過剰な研磨性を有することなく、有効な薄膜洗浄を提供することを示している。PCR/RDA比はまた、少なくとも約0.5であり得る。PCR/RDA比は、粒径、形状、材質、硬度及び濃度の関数である。
【0046】
図5は、様々な量の溶融シリカと沈降シリカの両方に関するPCR及びRDAデータの表である。この表は、溶融シリカ(TS10及びTS44CSS)が、沈降シリカ(Z119及びZ109)と比較して卓越した洗浄能力を有し得る(PCR)ことを示す。データは5%の溶融シリカを含有する口腔組成物が、10%の沈降シリカを含有する口腔組成物と比較してより良好に洗浄し得ることを示す。加えて、データは溶融シリカが許容できる研磨性レベル(RDA)をなお有すると共に、この洗浄を提供し得ることを示す。
【0047】
溶融シリカの粒子の形状は、製造プロセスの種類に応じて、角のある形状若しくは球状、又は形状の組み合わせのいずれかに分類することができる。加えて、溶融シリカは粒径を縮小するために粉砕機にかけられてもよい。球状の粒子は、粒子全体の形状が殆ど丸形又は楕円形である任意の粒子を含む。角のある粒子は、多面体形を含む、球状ではない任意の粒子を含む。角のある粒子は、いくつかの丸い縁、いくつかの又は全部の鋭利な縁、いくつかの又は全部のぎざぎざの縁、又は組み合わせを有してもよい。溶融シリカの粒子形状は、その研磨性に影響し得る。例えば、同一の粒径では、球状の溶融シリカは角のある溶融シリカの放射性象牙質磨耗(RDA)よりも低い放射性象牙質磨耗(RDA)を有し得る。その結果として、研磨性を増大させずに洗浄能力を最適化することが可能となり得る。あるいは、他の例として、歯科予防処置用ペースト又は週毎に使用されるペーストは、大きい粒径を有する角のある溶融シリカを含有し得る。
【0048】
球状の溶融シリカを含有する、即ち少なくとも25%の溶融シリカ粒子が球状である組成物は、所定の利点を有する。球状の溶融シリカは、丸い縁に起因して比較的低い研磨性を有し得る。このことは、PCRとRDAとの比が向上する一方、良好な洗浄をなお提供することを意味する。また、球状の溶融シリカは、研磨性が高過ぎることなく、より高い濃度で使用されることができる。球状の溶融シリカは、角のある溶融シリカ、又は粒子の少なくとも約25%が角のある粒子である溶融シリカと組み合わせて使用することもできる。このことは、許容できる研磨性を有する良好な洗浄をなお提供する一方で、コストを低下させることを助け得る。角のある溶融シリカと球状の溶融シリカとの両方を有する実施形態では、角のある溶融シリカの量は、組成物の約1重量%〜約10重量%であってもよい。少なくとも25%の溶融シリカ粒子が球状であるいくつかの実施形態では、RDAは150未満であり、別の実施形態では120未満であってもよい。少なくとも25%の溶融シリカ粒子が球状であるいくつかの実施形態では、PCR対RDAの比は、少なくとも約0.7、少なくとも約0.8、少なくとも約0.9、又は少なくとも約1.0であってもよい。それらの実施形態のいくつかにおいて、溶融シリカの中央粒径は、約3.0ミクロン〜約15.0ミクロンである。
【0049】
球状の溶融シリカの例としては、Japanese Glass Company製のSpheron P1500及びSpheron N−2000R、並びにSun−Sil 130NPが挙げられる。
【0050】
重要なことに、溶融シリカ粒子は一般に沈降シリカほど多数の凝集クラスターを形成せず、典型的には、沈降シリカほど容易に凝集クラスターを形成しない。いくつかの実施形態では、溶融シリカ粒子の大部分は凝集クラスターを形成しない。対照的に、沈降シリカは一般に、不規則な形状のサブミクロン一次粒子の凝集クラスターを形成する。沈降シリカは処理又はコーティングされてもよく、このことは凝集の量を増大又は低下させ得る。溶融シリカ及び沈降シリカの両方の粒子形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して測定することができる。
【0051】
図6(a)〜(i)は、倍率3000xでの沈降シリカ及び溶融シリカのSEM顕微鏡写真である。試料はEMS575X Peltier冷却Sputter coaterを使用して金でスパッター被覆された。試料表面のSEM像は、JEOL JSM−6100を使用して得た。SEMは20kV、14mm WD、1500X及び3000X倍率にて操作された。
【0052】
沈降シリカZ−109及びZ−119の顕微鏡写真(a)及び(b)は、不規則な形状の集塊粒子を示す。粒子は、一緒に緩く詰められた、集塊した、より小さい粒子から形成されているように見える。溶融シリカSpheron P1500及びSpheron N−2000Rである顕微鏡写真(c)及び(d)は、規則的な形状の回転楕円体粒子を示している。即ち、各粒子は、その殆どの部分が球状の形状を有する。また溶融シリカ325F、RG5、RST 2500 DSO、Teco−Sil 44C及びTeco−Sil 44CSSである顕微鏡写真(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)は、不規則な形状の密な粒子を示している。いくつかの粒子は集塊し、堅く詰まり得る一方、その他は単一の塊から構成されているように見える。一般に、この最後の溶融シリカの組は、明確な及び/又は鋭利な縁を有する不規則な形状の粒子を有し、角のある粒子と見なすことができる。
【0053】
一般に、溶融シリカを含有する口腔組成物、例えば歯磨剤は、両方の組成物を約500℃で灰に迄加熱し、試料を比較することにより、沈降シリカのみを含有する口腔組成物から区別することができる。約500℃迄加熱することにより研磨剤のみが残留するが、ヒドロキシル基を取り去るほどには十分熱くない。溶融シリカと沈降シリカとは、上述したようなBET表面積若しくはSEM分析、又はXRD(X線散乱法)分析により区別することができる。
【0054】
本発明の溶融シリカの中央粒径は、Malvern Laser Light Scattering Particle Sizingにより測定して、約1ミクロン〜約20ミクロン、約1ミクロン〜約15ミクロン、約2ミクロン〜約12ミクロン、約3ミクロン〜約10ミクロンの範囲であってもよい。角のある形状の粒子は、約5〜約10ミクロンの粒径(中央D50)を有してもよい。D90(粒子90%の平均粒径)は、約50ミクロン未満、約40ミクロン未満、約30ミクロン、又は約25ミクロン未満であることが好ましい。粒子は細管開口部を遮断し得るため、溶融シリカの小さい粒径は過敏症の利益を与え得る。粒径は2007年1月4日公開の米国特許出願第2007/0001037A1号に開示されている方法により測定される。
【0055】
溶融シリカ粒子の粒径は、材料の加工により制御することができる。沈降シリカは沈降方法に基づいた粒径を有するであろう。いくつかの沈降シリカの粒径は、溶融シリカの粒径と重なる一方、典型的に、沈降シリカはより大きい粒径を有するであろう。例えば、沈降シリカZ−109及びZ−119は、それぞれ約6ミクロン〜約12ミクロン及び約6ミクロン〜約14ミクロンの範囲である。しかし、例えば溶融シリカと沈降シリカとが同一の粒径を有する場合、溶融シリカのBET表面積は、溶融シリカ粒子の多孔性の欠如により、一般に沈降シリカのBET表面積よりもなお遙かに小さいことに留意することが重要である。したがって、沈降シリカと同様の粒径を有する溶融シリカは沈降シリカから区別されることができ、沈降シリカと比較して向上した洗浄及び/又は融和性を提供するであろう。
【0056】
いくつかの実施形態では、溶融シリカの粒径は洗浄用に最適化されてもよい。いくつかの実施形態では、溶融シリカの中央粒径は約3ミクロン〜約15ミクロンであってもよく、ここで90%の粒子は約50ミクロン以下の粒径を有する。別の実施形態では、中央粒径は約5ミクロン〜約10ミクロンであってもよく、ここで90%の粒子は約30ミクロン以下の粒径を有する。別の実施形態では、中央粒径は約5ミクロン〜10ミクロンであってもよく、ここで90%の粒子は約15ミクロン以下の粒径を有する。
【0057】
溶融シリカが沈降シリカよりも硬いという事実は、より良好に洗浄できるという溶融シリカの能力に寄与する。これは同一の粒径を有し、沈降シリカと同一の量を有する溶融シリカが、比較的より良好に洗浄するであろうことを意味する。例えば、中央粒径及びシリカ濃度が同一の場合、溶融シリカ組成物に関するPCRは、沈降シリカ組成物に関するPCRの少なくとも10%高い場合がある。
【0058】
溶融シリカのより良好な洗浄能力は、異なる製剤の可能性、即ち洗浄を最大にする若しくは洗浄を向上させる一方で研磨性は増大させない、又は洗浄を向上させる一方で研磨性を低下させる、又は許容できる洗浄の提供に必要な研磨性がより低いために単により費用効率が高い製剤をもたらす。いくつかの実施形態では、溶融シリカ研磨剤を含有する口腔ケア組成物は、少なくとも約80、少なくとも約100、又は少なくとも約120のPCRを有してもよい。いくつかの実施形態では、PCRのRDAに対する比は、少なくとも約0.6、少なくとも約0.7、少なくとも約0.8又は少なくとも約0.9であってもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の約20重量%未満の溶融シリカを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の約15重量%未満の溶融シリカを含有し、かつ少なくとも約100のPCRを有してもよく、又は組成物の約10重量%未満の溶融シリカを含有し、かつ少なくとも約100のPCRを有してもよい。
【0059】
洗浄の向上のために最適化されたいくつかの実施形態では、少なくとも約80%の溶融シリカ粒子が角のある粒子であり得る。別の実施形態では、組成物は、沈降シリカを更に含有してもよい。なお別の実施形態では、組成物は、ゲル網状組織を含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、以下の1つ以上を含んでもよい。抗う食剤、抗侵食剤、抗菌剤、抗結石剤、抗過敏剤、抗炎症剤、抗歯垢剤、抗歯肉炎剤、抗悪臭剤、及び/又は抗着色剤。いくつかの実施形態では、組成物は、沈降シリカ、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸カルシウム、真珠岩、軽石、ピロリン酸カルシウム、ナノダイヤモンド、表面処理及び脱水沈降シリカ、並びにそれらの混合物を含むが、これらに限定されない追加の研磨材料を含有してもよい。いくつかの実施形態は、経口的に許容される担体中に溶融シリカ研磨剤を含む口腔ケア組成物を使用することによる、対象の歯及び口腔の洗浄方法であってもよく、ここで溶融シリカ研磨剤は約3ミクロン〜約15ミクロンの中央粒径を有し、90%の粒子が約50ミクロン以下の粒径を有する。
【0060】
いくつかの実施形態では、溶融シリカの粒径は、研磨及び抗過敏症の利益に焦点を当てて、低下されてもよい。いくつかの実施形態では、溶融シリカは、約0.25ミクロン〜約5.0ミクロン、約2.0ミクロン〜約4.0ミクロン、又は約1.0ミクロン〜約2.5ミクロンの中央粒径を有してもよい。いくつかの実施形態では、10%の溶融シリカ粒子は約2.0ミクロン以下の粒径を有してもよい。いくつかの実施形態では、90%の溶融シリカ粒子は約4.0ミクロン以下の粒径を有してもよい。いくつかの実施形態では、粒子は哺乳動物の象牙質細管の平均直径を超えない中央粒径を有してもよく、それにより1つ以上の粒子が細管内に埋め込まれて、知覚される歯過敏症を低減又は排除する効果がある。象牙質細管は、象牙質の厚さ全体に拡がり、象牙質形成機構の結果として形成される構造である。これらの細管は、象牙質の外面から歯髄に最も近い領域迄、S形の経路に従う。細管の直径及び密度は、歯髄の近傍にて最大である。これらの構造は、内面から最外面迄テーパし、歯髄の近傍で2.5ミクロン、象牙質の中央で1.2ミクロン、エナメル質象牙質境界で0.9ミクロンの直径を有する。それらの密度は、歯髄近傍で59,000〜76,000/平方ミリメートルであるが、この密度はエナメル質の近傍の半分に過ぎない。
【0061】
小さい粒径による抗過敏症の利益を高めるために、組成物は例えば細管遮断剤及び/又は脱感作剤(desensitivity agent)等の追加の抗過敏症剤を更に含んでもよい。細管遮断剤は、スズイオン源、ストロンチウムイオン源、カルシウムイオン源、リンイオン源、アルミニウムイオン源、マグネシウムイオン源、アミノ酸、バイオガラス、ナノ粒子、ポリカルボキシレート、Gantrez、及びそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。アミノ酸は塩基性アミノ酸であってもよく、塩基性アミノ酸はアルギニンであってもよい。ナノ粒子は、ナノハイドロキシアパタイト、ナノ二酸化チタン、ナノ金属酸化物、及びそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。脱感作剤は、フッ化カリウム、クエン酸カリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、及びそれらの混合物からなる群より選択されるカリウム塩であってもよい。いくつかの実施形態は、必要とする対象に、溶融シリカを含有する口腔ケア組成物を投与することによる、歯の過敏症を低減する方法であってもよく、溶融シリカは0.25ミクロン〜約5.0ミクロンの中央粒径を有する。いくつかの実施形態は、対象に溶融シリカを含有する口腔ケア組成物を投与することによる、歯を研磨する方法であってもよく、溶融シリカは0.25ミクロン〜約5.0ミクロンの中央粒径を有する。
【0062】
別の実施形態では、粒径は、歯科予防処置用ペーストの一部となるため、又はペーストのいくつかの他の非日常的使用のため比較的大きくてもよい。いくつかの実施形態では、溶融シリカは少なくとも約7ミクロンの中央粒径を有してもよく、組成物は少なくとも約100のPCRを有する。別の実施形態では、中央粒径は、約7ミクロン〜約20ミクロンであってもよい。少なくとも約7ミクロンの中央粒径を有するいくつかの実施形態では、軽石、真珠岩、沈降シリカ、炭酸カルシウム、籾殻シリカ、シリカゲル、アルミナ、オルトリン酸塩、ポリメタリン酸塩、ピロリン酸塩を含むリン酸塩、他の無機微粒子、及びそれらの混合物からなる群より選択される追加の研磨剤が使用されてもよい。より大きい粒径を有する実施形態では、溶融シリカは組成物の約1重量%〜約10重量%であってもよい。いくつかの実施形態は、界面活性剤、フッ化物、又は任意の口腔ケア活性物質を本質的に含まなくてもよい。いくつかの実施形態は、着香剤を有してもよい。いくつかの実施形態は、口腔ケア組成物を含むことによる歯のエナメル質の洗浄及び研磨方法であり、ここで中央粒径は少なくとも約7ミクロンであり、組成物は少なくとも約100のPCRを有する。
【0063】
溶融シリカは、シリカ(石英又は砂)を2000℃で融解することにより形成されてもよい。インゴット又はペレットに冷却した後、材料を粉砕機にかける。粉砕技術は様々であるが、いくつかの例はジェット粉砕、ハンマー粉砕、又はボールミル粉砕を含む。ボールミル粉砕は粒子により丸い縁をもたらし得る一方、ジェット粉砕はより鋭利な又は角のある縁をもたらし得る。溶融シリカは、米国特許第5,004,488号、Mehrotra and Barker、1991に開示されているプロセスにより形成することができる。溶融シリカはまた、通常、連続的な火炎加水分解プロセスを用いて、ケイ素に富んだ化学的前駆体から形成することもでき、このプロセスは、ケイ素の化学的ガス化、このガスの二酸化ケイ素への酸化、及び得られたダストの熱融合を含む。このプロセスは球状の溶融シリカを生成し得るが、より高価であり得る。沈降シリカの形成が化学的プロセスである一方、溶融シリカの形成は天然のプロセスである。溶融シリカの生成はより少量の廃棄物を生成し、持続可能性がより高いという利益を提供する。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態では、複数種の溶融シリカが存在し得る。例えば、溶融シリカは、シリカを4000℃のようなより高い温度で融解することにより形成されてもよい。そのような溶融シリカは、異なる粒径又は表面形態を有し得るが、比較的低い表面ヒドロキシル濃度及び/又は低いBET比表面積に起因して、低い反応性を含む上述した利益をなお維持する。
【0065】
沈降シリカ、即ち含水シリカは、水酸化ナトリウムを使用してシリカ(砂)を溶解し、硫酸を加えることにより沈降させて形成され得る。洗浄及び乾燥後、材料を粉砕機にかける。そのような沈降シリカは、米国特許第6,740,311号、White、2004に開示されているプロセスにより形成されてもよい。沈降シリカ及び他のシリカは、Ferdi Schuth,Kenneth S.W.Sing and Jens Weitkampにより編集された、Formation of Silica Sols,Gels,and Powdersと称されるHandbook of Porous Solids,chapter 4.7.1.1.1、及びCosmetic Properties and Structure of Fine−Particle Synthetic Precipitated Silicas,S.K.Wason,Journal of Soc.Cosmetic Chem.,vol.29,(1978),pp 497〜521に詳述されている。
【0066】
本発明で使用される溶融シリカの量は、約1%、2%、5%、7%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%〜約5%、7%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%若しくは70%、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。本発明の溶融シリカは、単独で又は他の研磨剤と共に使用されてもよい。組成物は2種以上の溶融シリカを含有してもよい。溶融シリカと共に使用し得る研磨剤の1種は、沈降シリカである。本明細書に説明されている組成物の全研磨剤は、通常、組成物の約5重量%〜約重量70%の濃度で存在する。好ましくは、歯磨剤組成物は組成物の約5重量%〜約50重量%の全研磨剤を含む。溶融シリカと沈降シリカとの組み合わせにて、溶融シリカは、全研磨剤の約1重量%〜約99重量%であってもよい。沈降シリカ又はシリカ類は、全研磨剤の約1重量%〜約99重量%であってもよい。いくつかの実施形態では、約1%〜約10%、又は約2%〜約5%の少量の溶融シリカを使用してもよい。
【0067】
溶融シリカは、エトキシル化及び非エトキシル化脂肪アルコール、酸、及びエステル等の非イオン性界面活性剤で処理された無機微粒子と組み合わせて使用されてもよい。そのような非イオン性界面活性剤の1つの例は、PEG 40水素添加ヒマシ油である。一般に、本発明の口腔ケア組成物は、沈降シリカ、炭酸カルシウム、籾殻シリカ、シリカゲル、アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、オルトリン酸塩、ポリメタリン酸塩、ピロリン酸塩を含むリン酸塩、他の無機微粒子、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸カルシウム、真珠岩、軽石、ピロリン酸カルシウム、ナノダイヤモンド、表面処理及び脱水沈降シリカ、及びそれらの混合物からなる群より選択される1つ以上のもの等の追加の研磨材材料と共に使用されてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、他の研磨剤の溶融シリカに対する比は、約2対1を超え、いくつかの実施形態では、約10対1を超える。いくつかの実施形態では、比は約1対1である。いくつかの実施形態では、溶融シリカの量は、組成物の約1重量%〜約10重量%である。いくつかの実施形態では、溶融シリカの量は、研磨剤の組み合わせの約2重量%〜約25重量%である。一実施形態において、他の研磨剤は炭酸カルシウムである。いくつかの実施形態では、炭酸カルシウムの量は、組成物の約20重量%〜約60重量%である。いくつかの実施形態では、炭酸カルシウムの量は、組成物の約20重量%〜約60重量%である。別の実施形態において、追加の研磨剤は、少なくとも1つの沈降シリカを含有してもよい。沈降シリカ研磨剤は、組み合わせの約5重量%〜約40重量%含まれてもよい。研磨剤の組み合わせ中の溶融シリカの量は、組成物の約1重量%〜約10重量%であってもよい。いくつかの実施形態では、研磨剤の組み合わせを含有する組成物は、少なくとも約80、約100若しくは約120のPCR、又は約150未満若しくは約200未満のRDAを有してもよい。
【0069】
本発明の溶融シリカは、組成物中のカチオン利用可能性を更に増大させるために、処理された沈降シリカと組み合わせて使用されてもよく、その処理沈降シリカは、例えば表面修飾沈降シリカ、脱水沈降シリカ、又は、低下された多孔性、低下された表面ヒドロキシル基、若しくは通常の沈降シリカと比較して良好なカチオン融和性を有する小さい表面積を有する沈降シリカ等である。しかし、これらの特定の沈降シリカは、表面ヒドロキシルを低下させ、また低い多孔性又はカチオン融和性等の特性を改善する試みで表面処理されるが、それらはなお沈降シリカと見なされることが強調される。(例えば、米国特許第7,255,852号、同第7,438,895号、国際公開第9323007号、及び同第9406868号参照)即ち、それらは湿式プロセスにより生成されたシリカである。水は、製造プロセス中に添加された後、除去される。そのことは、ヒドロキシル基を除去する試みにおいて非常に高温に加熱され得る沈降シリカにもなお当て嵌まる。対照的に、溶融シリカは、可能性はあるが、表面処理を必要としないか、又は全く処理されない。溶融シリカは、水を全く使用せずに、加熱のみで製造される。この加熱プロセスは、殆どの沈降プロセスと比較して、表面ヒドロキシルをより効果的に低下させることができる。
【0070】
他の摩耗性研磨材料には、シリカゲル、籾殻シリカ、アルミナ、オルトリン酸塩、ポリメタリン酸塩及びピロリン酸塩を含むリン酸塩、並びにそれらの混合物が挙げられる。具体的な例には、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、不溶性ポリメタリン酸ナトリウム、水和アルミナ、βピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、及び尿素とホルムアルデヒドとの粒子状縮合製品等の樹脂性研磨材、及びCooleyらによる1962年12月25日発行の米国特許第3,070,510号に開示されているその他の材料が挙げられる。
【0071】
研磨剤は、沈殿シリカ、又は、1970年3月2日発行のPaderらの米国特許3,538,230号、及び1975年1月21日発行のDiGiulioの米国特許第3,862,307号に記載されているシリカゼロゲル等のシリカゲルであり得る。例は、W.R.Grace & Company,Davison Chemical Divisionから「Syloid」の商品名で販売されているシリカゼロゲルである。また、J.M.Huber Corporationから「Zeodent」の商品名で販売されているもののような沈降シリカ材料、特に「Zeodent 109」(Z−109)及び「Zeodent 119」(Z−119)の表記を持つ沈降シリカ材料が存在する。市販され、かつZ−109及びZ−119と類似した他の沈降シリカには、例えば、全てRhodia製のTixosil 63、Tixosil 73及びTixosil 103、HuberシリカZ−103、Z−113及びZ−124、TaiwanのOSC製のOSC DA、並びにMadhu Silica製のABSIL−200及びABSIL−HCが挙げられる。これら市販の沈降シリカのうち、Tixosil 73が最もZ−119に類似する。本沈降シリカ研磨剤は、溶融シリカ及び他の研磨剤と組み合わせ使用されてもよい。
【0072】
本発明の溶融シリカと混合し得る沈降シリカ歯科研磨剤の種類は、1982年7月29日発行のWasonの米国特許第4,340,583号に詳述されている。沈降シリカ研磨剤は、Riceの米国特許第5,589,160号、同第5,603,920号、同第5,651,958号、同第5,658,553号及び同第5,716,601号にも記載されている。
【0073】
溶融シリカの1つの好適な種類は、C−E Minerals Productsから入手可能なTeco−Sil 44CSSである。C−E Minerals Productsからは、Teco−Sil 44C、Teco−Sil T10、及びTecoSpere Aと称される溶融シリカも入手可能である。他の好適な溶融シリカには、Jiangsu Kaida Silicaから入手可能なR61000と、JGC,Japanese Glass Companyから入手可能なSpheron N−2000R及びSpheron P1500が挙げられる。他には、Lianyungang Ristar Electronic Materialsから入手可能なRST 2500、RG 1500及びRG 5、Adamatechから入手可能なSO−C5及びSO−C4、Tatsumoriから入手可能なFuserex AS−1、Denki Kagaku Kogyouから入手可能なFS 30及びFS−2DC、Mincoから入手可能なMin−Sil 325F、並びにSunjinから入手可能なSunsil−130NP、並びにShin−Etsuから入手可能な溶融シリカが挙げられる。
【0074】
いくつかの種類の溶融シリカのCAS#は、60676−86−0である。含水シリカのCAS#は、7631−86−9である。溶融シリカのINCI名は「溶融シリカ(fused silica)」であり、一方、沈降シリカのINCI名は「含水シリカ(hydrated silica)」である。本発明のシリカはケイ酸塩を含まず、本発明の溶融シリカは溶融ケイ酸塩を含まない。
【0075】
経口的に許容できる担体
本組成物の構成成分のための担体は、口腔内での使用に好適な、経口的に許容できる任意のビヒクルであってもよい。担体は、好適な美容用及び/又は治療用活性物質を含み得る。こうした活性物質としては、口腔に使用するのに一般に安全であるとみなされ、口腔の全体的な外観及び/又は健康に変化を与える任意の物質が含まれ、それらとしては、抗結石剤、フッ化物イオン源、スズイオン源、ホワイトニング剤、抗微生物剤、抗悪臭剤、抗過敏症剤、抗侵食剤、抗う食剤、抗歯垢剤、抗炎症剤、栄養素、酸化防止剤、抗ウイルス薬、鎮痛剤及び麻酔剤、H−2拮抗物質、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、口腔ケア組成物における美容用及び/又は治療用活性物質の濃度は、1つの実施形態では口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約90重量%、別の実施形態では約0.01重量%〜約50重量%、及び別の実施形態では約0.1重量%〜約30重量%である。
【0076】
活性物質
溶融シリカの利点の1つは、他の材料、特に反応性で、活性物質等の効力を損ない得る材料とのその融和性である。溶融シリカは、沈降シリカ及び他の従来の研磨剤ほど活性物質と反応しないため、同一の効力でより少量の活性物質を使用することができる。活性物質が不快な若しくは強力な味、渋み、着色、又は他の負の感覚(aesthetic)等のいずれかの可能な感覚の否定的側面を有する場合、より少量の活性物質が好ましい場合がある。加えて、同一又は同様の効力のためにより少量の活性物質を使用することは、コスト削減となる。代替的に、従来使用されている量と同一の量の活性物質が使用される場合、より多量の活性物質が利用可能であり利益を提供するため、活性物質はより高い効力を有するであろう。また溶融シリカは沈降シリカ等の従来の研磨剤よりも僅かに硬いため、より多量の汚れを除去し、及び/又はより良好に洗浄し得る。
【0077】
活性物質としては、抗菌活性物質、抗歯垢剤、抗う食剤、抗過敏症剤、抗侵食剤、酸化剤、抗炎症剤、抗結石剤、栄養素、酸化防止剤、鎮痛剤、麻酔剤、H−1及びH−2拮抗物質、抗ウイルス活性物質、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。材料又は成分は、2種以上の材料として分類されてもよい。酸化防止剤等は、抗歯垢形成及び抗菌活性物質でもあり得る。好適な活性物質の例としては、フッ化第1スズ、フッ化ナトリウム、精油、モノアルキルホスフェート、過酸化水素、CPC、クロルヘキシジン、トリクロサン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。以下は、本発明で使用されてもよい活性物質の非限定的な列挙である。
【0078】
フッ化物イオン
本発明は、安全かつ有効な量のフッ化物化合物を含み得る。フッ化物イオンは、25℃で組成物内にフッ化物イオン濃度を付与するのに十分な量で存在してもよく、及び/又は、抗う食効果を提供するために、1つの実施形態においては約0.0025重量%〜約5.0重量%の濃度で使用され得、別の実施形態においては、約0.005重量%〜約2.0重量%の濃度で使用され得る。多種多様なフッ化物イオン生成材料が、本発明の組成物中の可溶性フッ化物源として使用され得る。好適なフッ化物イオン生成材料の例は、米国特許第3,535,421号、及び同第3,678,154号に開示されている。代表的なフッ化物イオン源としては、フッ化第1スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化亜鉛、及び多くの他のものが挙げられる。1つの実施形態において、歯磨剤組成物は、フッ化第1スズ又はフッ化ナトリウム、並びにこれらの混合物を含む。
【0079】
口腔組成物のpHは、約3〜約10であってもよい。pHは一般に、工業界にて公知の方法によりスラリーpHとして測定される。口腔組成物中に使用される活性物質に応じて、異なるpHが所望され得る。フッ化物を含有する製剤の場合、典型的な歯磨剤よりも僅かに低いpHを有することが所望され得る。沈降シリカ及びフッ化物を有する典型的な口腔組成物は、調合物中のフッ化物がフッ化ケイ酸塩を形成した後、沈降シリカ上のヒドロキシル基と反応しないように十分高いpHを有する。溶融シリカ上のヒドロキシル基の数は沈降シリカ上のヒドロキシル基の数よりも少ないため、このことは問題ではなく、溶融シリカを有する口腔組成物のpHはより低くてもよい。
【0080】
溶融シリカ及びフッ化物を含有する組成物は、約6.0未満、又は約5.5未満のpHを有してもよい。pHは、約5.2又は約5.0未満であってもよい。約3.5〜約5又は約2.4〜約4.8のpHを有することが所望され得る。より多量のフッ化物が利用可能となるため、pHを5.5よりも低くして、フッ化物の吸収を高めてもよい。低いpHは、歯表面を整える(condition)ことを助け、より多量のフッ化物の受容を補助し得る。過酸化物及び溶融シリカを含有する製剤の場合、pHは5.5未満又は4.5未満であってもよい。過酸化物及び溶融シリカを有する製剤は、約3.5〜約4.0であってもよい。溶融シリカ、スズ及びフッ化物を含有する製剤では、5.0未満のpHを有することが所望され得る。5.0未満のpHは、より多数のSnF3スズ種の形成を可能にし得る。
【0081】
抗結石剤
また、本発明の歯磨剤組成物は、抗結石剤を含むことができ、1つの実施形態では口腔ケア組成物の約0.05重量%〜約50重量%、別の実施形態では約0.05重量%〜約25重量%、さらに別の実施形態では約0.1重量%〜約15重量%存在してもよい。抗結石剤は、ポリリン酸エステル(ピロリン酸を含む)及びその塩;ポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)及びその塩;ポリオレフィンスルホネート及びその塩;ポリビニルホスフェート及びその塩;ポリオレフィンホスフェート及びその塩;ジホスホネート及びその塩;ホスホノアルカンカルボン酸及びその塩;ポリホスホネート及びその塩;ポリビニルホスホネート及びその塩;ポリオレフィンホスホネート及びその塩;ポリペプチド;並びにそれらの混合物;ポリカルボン酸塩及びその塩;カルボキシ置換ポリマー;並びにそれらの混合物からなる群より選択されることができる。一実施形態において、本明細書で使用する高分子ポリカルボン酸塩は、米国特許第5032386号に記載されているものを含む。市販されているこれらのポリマーの例は、International Speciality Products(ISP)製のGantrezである。一実施形態において、塩は、アルカリ金属又はアンモニウム塩である。ポリホスフェートは、一般に、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩及びこれらの混合物のような、全体的に又は部分的に中和された水溶性アルカリ金属塩として使用される。無機ポリリン酸塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)トリポリホスフェート、テトラポリホスフェート、二酸ジアルキル金属(例えば、ジナトリウム)、一酸トリアルキル金属(例えば、トリナトリウム)、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、及びアルカリ金属(例えば、ナトリウム)ヘキサメタホスフェート、並びにそれらの混合物が挙げられる。テトラポリホスフェートよりも大きいポリホスフェート類は、通常は無定形のガラス状物質として生じる。一実施形態において、ポリホスフェート類は、FMC Corporationで製造され、Sodaphos(n≒6)、Hexaphos(n≒13)及びGlass H(n≒21、ヘキサメタリン酸ナトリウム)として商業的に既知であるもの、並びにこれらの混合物である。本発明に有用なピロリン酸塩には、アルカリ金属ピロリン酸塩、ピロリン酸二−、三−及び一カリウム又はナトリウム、二アルカリ金属ピロリン酸塩、四アルカリ金属ピロリン酸塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ピロリン酸塩は、ピロリン酸三ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム(Na)、ピロリン酸二カリウム、ピロリン酸四ナトリウム(Na)、ピロリン酸四カリウム(K)、及びこれらの混合物からなる群より選択される。ポリオレフィンスルホネートには、オレフィン基が2個以上の炭素原子を含むもの及びそれらの塩が挙げられる。ポリオレフィンホスホネートには、オレフィン基が2個以上の炭素原子を含むものが挙げられる。ポリビニルホスホネートには、ポリビニルホスホン酸が挙げられる。ジホスホネート及びそれらの塩には、アゾシクロアルカン−2、2−ジホスホン酸及びそれらの塩、アゾシクロアルカン−2、2−ジホスホン酸及びそれらの塩のイオン、アザシクロヘキサン−2、2−ジホスホン酸、アザシクロヘキサン−2、2−ジホスホン酸、N−メチル−アザシクロペンタン−2、3−ジホスホン酸、EHDP(エチル−1−ヒドロキシ−1、1、−ジホスホン酸)、AHP(アザシクロヘプタン−2、2−ジホスホン酸)、エタン−1−アミノ−1、1−ジホスホネート、ジクロロメタンジホスホネート等が挙げられる。ホスホノアルカンカルボン酸、又はそれらのアルカリ金属塩には、それぞれが酸、又はアルカリ金属塩であるPPTA(ホスホノプロパントリカルボン酸)、PBTA(ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸)が挙げられる。ポリオレフィンホスフェートには、オレフィン基が2個以上の炭素原子を含むものが挙げられる。ポリペプチドには、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸が挙げられる。
【0082】
スズイオン
本発明の口腔組成物は、スズイオン源を含むことができる。前述したように、溶融シリカの利点の1つは、他の材料、特に反応性で、効力を損ない得る材料とのその融和性である。スズイオンは反応性であると考えられており、したがってスズイオンを溶融シリカと共に使用することはいくつかの重要な利益を有する可能性がある。溶融シリカは沈降シリカ及び他の従来の研磨剤ほどスズと反応しないため、同一の効力でより少量のスズを使用することができる。スズはスズ含有口腔組成物を消費者にとって比較的望ましくないものとする不快な若しくは強力な味、渋み、着色又は他の負の感覚等の可能な感覚の否定的側面を有し得ることが報告されている。したがって、より少量のスズの使用が好ましい可能性がある。加えて、同一又は同様の効力のためにより少量のスズを使用することは、コスト削減となる。代替的に、従来使用されている量と同一の量のスズが使用される場合、より多量のスズが利用可能であり利益を提供するため、より高い効力を有するであろう。また溶融シリカは沈降シリカ等の従来の研磨剤よりも僅かに硬いため、より多量の汚れを除去し、及び/又はより良好に洗浄し得る。スズ含有製剤は、歯の強度を高め得ることも発見されている。したがって、スズ含有製剤は、スズを含有しない類似の製剤よりも低いRDAスコアを有し得る。より低いRDAスコアは、溶融シリカが良好な洗浄研磨剤であり、スズがより強力な歯を提供するため、より良好なPCR対RDA比を提供することができる。溶融シリカとスズとの組み合わせにより提供される相乗効果は、消費者に非常に効果的で高い洗浄力を有する調合物を提供する。
【0083】
スズイオンは、フッ化第1スズ及び/又は他のスズ塩から提供されてもよい。フッ化第1スズは、歯肉炎、歯垢、過敏症、侵食の低減、及び改善された息の利益に役立つことが見出されている。歯磨剤組成物において提供されるスズイオンは、歯磨剤組成物を使用している対象に効力を提供する。効力は、歯肉炎の低減以外の利益を含むことができるが、効力は、その場の歯垢代謝における顕著な低減量として定義される。そのような効力をもたらす製剤は、典型的には、フッ化第1スズ及び/又は他のスズ塩類により提供され、組成物全体で約50ppm〜約15,000ppmのスズイオンの範囲である、スズ濃度を含む。スズイオンは、約1,000ppm〜約10,000ppm、1つの実施形態では、約3,000ppm〜約7,500ppmの量で存在する。別のスズ塩には、酢酸第1スズ、グルコン酸第1スズ、シュウ酸第1スズ、マロン酸第1スズ、クエン酸第1スズ、第1スズエチレングリコシド、ギ酸第1スズ、硫酸第1スズ、乳酸第1スズ、酒石酸第1スズ等の有機スズカルボキシレートが挙げられる。他のスズイオン源には、塩化第1スズ、臭化第1スズ、ヨウ化第1スズ及び塩化第1スズ二水化物(dihydride)等のハロゲン化第1スズが挙げられる。一実施形態において、スズイオン源はフッ化第1スズであり、別の実施形態では、塩化第1スズ二水和物(dehydrate)若しくは三水和物、又はグルコン酸第1スズである。組み合わせたスズ塩は、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約11重量%の量で存在してよい。スズ塩は、1つの実施形態では、口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約7重量%の量、別の実施形態では、約0.1重量%〜約5重量%、別の実施形態では、約1.5重量%〜約3重量%で存在してよい。
【0084】
ホワイトニング剤
ホワイトニング剤は、本歯磨剤組成物の活性物質として含まれてもよい。ホワイトニングに適した活性物質は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属過酸化物、亜塩素酸金属、単水和物及び四水和物を含む過ホウ酸塩、過リン酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸及び過硫酸塩、例えばアンモニウム、カリウム、ナトリウム及びリチウム過硫酸塩、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される。好適な過酸化物化合物には、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過酸化カルバミド、過酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、過酸化ストロンチウム、及びこれらの混合物が挙げられる。1つの実施形態において、過酸化物化合物は過酸化カルバミドである。好適な亜塩素酸金属塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、及び亜塩素酸カリウムが挙げられる。追加的なホワイトニング活性物質は、次亜塩素酸塩及び二酸化塩素であってもよい。1つの実施形態において、亜塩素酸塩は亜塩素酸ナトリウムである。別の実施形態において、過炭酸塩は過炭酸ナトリウムである。1つの実施形態では、過硫酸塩はオキソンである。これらの物質の濃度は、分子が、染みを漂白するために提供できる、利用可能な酸素又は塩素それぞれによって左右される。1つの実施形態において、ホワイトニング剤は、口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約40重量%の濃度で、別の実施形態では約0.1重量%〜約20重量%、別の実施形態では約0.5重量%〜約10重量%、更に別の実施形態では約4重量%〜約7重量%で存在してもよい。
【0085】
酸化剤
本発明の組成物は、過酸化物源のような酸化剤を含有してもよい。過酸化物源には、過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化カルバミド、又はそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、過酸化物源は過酸化水素である。他の過酸化活性物質には、過炭酸塩、例えば過炭酸ナトリウムのような、水と混合された際に過酸化水素を生成するものが挙げられる。所定の実施形態において、過酸化源はスズイオン源と同一の相中に存在し得る。いくつかの実施形態において、組成物は、口腔組成物の約0.01重量%〜約20重量%、別の実施形態では約0.1重量%〜約5重量%の過酸化源を含有し、所定の実施形態では約0.2重量%〜約3重量%、別の実施形態では約0.3重量%〜約2.0重量%の過酸化物源を含有する。過酸化物源は、遊離イオンとして、塩として、錯体化されて、又は封入されて提供され得る。組成物中の過酸化物は、安定であることが所望される。過酸化物は、循環着色試験(Cycling Stain Test)又は他の関連した方法で測定された際に、汚れを還元し得る。
【0086】
以下に詳述する任意成分に加えて、所定の増粘剤及び香味剤は、過酸化物等の酸化剤により良好な融和性を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、好ましい増粘剤は、架橋ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、高分子アルキル化ポリエーテル、カルボマー、アルキル化カルボマー、ゲル網状組織、非イオン性高分子増粘剤、Sepinov EMT 10(Seppic−ヒドロキシエチルアクリレート/ナトリウムアクリロイルジメチルタウレートコポリマー)、Pure Thix 1450、1442、HH(PEG 180ラウレス−50/TMMP又はポリエーテル1−Rockwood Specialties)、構造体2001(Akzo−アクリレート/ステアレス−20イタコネートコポリマー)、構造体3001(Akzo−アクリレート/セテス−20イタコネートコポリマー)、Aculyn 28(Dow Chemical/Rohm and Haas−Acrylates/ベヘネス−25メタクリレートコポリマー)、Genopur 3500D(Clariant)、Aculyn 33(Dow Chemical/Rohm and Haas−Acrylates Copolymer)、Aculyn 22(Dow Chemical/Rohm and Haas−アクリレート/ステアレス−20メタクリレートコポリマー)、Aculyn 46(Dow Chemical/Rohm and Haas−PEG−150/ステアリルアルコール/SMDIコポリマー)、A500(架橋カルボキシメチルセルロース−Hercules)、構造体XL(ヒドロキシプロピルスターチホスフェート−National Starch)、並びにそれらの混合物であってもよい。
【0087】
他の好適な増粘剤には、Aristoflex AVC、AVS、BLV及びHMB等の高分子スルホン酸(Clariant、アクリロイルジメチルタウレートポリマー、コポリマー及びクロスポリマー)、Diaformer(Clariant、アミンオキシドメタクリレートコポリマー)、Genapol(Clariant、脂肪アルコールポリグリコールエーテル及びアルキル化ポリグリコールエトキシル化脂肪アルコール)、脂肪アルコール、エトキシル化脂肪アルコール、BRIJ 721(Croda)等の高分子量非イオン性界面活性剤、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0088】
特に過酸化物と融合性を有する好適な香味系には、米国特許出願第2007/0231278号に論じられているものが挙げられる。一実施形態において、香味系は、過酸化物の存在下で比較的安定であることが見出されている選択された従来の香味成分とともに、少なくとも1種の第2の冷却剤と併用するメントールを含む。本明細書で「安定」とは、香味の特徴又はプロフィールが著しく変化しない、又は製品の耐用期間中不変であることを意味する。
【0089】
本組成物は、少なくとも約0.015重量%のメントールを有する0.04重量%〜1.5重量%の全冷却剤(メントール+第2の冷却剤)を含有してもよい。一般に、最終組成物のメントールの濃度は約0.015%〜約1.0%の範囲であり、第2の冷却剤(1つ又は複数)の濃度は約0.01%〜約0.5%の範囲である。全冷却剤の濃度は、約0.03%〜約0.6%の範囲であることが好ましい。
【0090】
メントールとともに使用するのに好適な第2の冷却剤は、カルボキサミド類、ケタール類、ジオール類、メンチルエステル類及びこれらの混合物等の広範な物質を含む。本組成物中の第2の冷却剤の例は、「WS−3」として商業的に既知である、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、「WS−23」として既知であるN,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタンアミド、並びにWS−3、WS−31、WS−14及びWS−30のような、このシリーズの他のもののようなパラメンタンカルボキサミド剤である。更なる好適な冷却剤としては、Takasagoにより製造されているTK−10として既知の3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール;MGAとして既知であるメントングリセロールアセタール;酢酸メンチル、アセト酢酸メンチル、Haarmann and Reimerにより供給されるFrescolat(登録商標)として既知である乳酸メンチル、及びコハク酸モノメンチル(V.Mane製の商標Physcool)のようなメンチルエステルが挙げられる。本明細書で使用するとき、メントール及びメンチルという用語は、これらの化合物の右旋性及び左旋性の異性体、並びにこれらのラセミ混合物を包含する。TK−10は、米国特許第4,459,425号(Amanoら、1984年7月10日発行)に記載されている。WS−3及び他の剤は、米国特許第4,136,163号(Watsonら、1979年1月23日発行)に記載されている。
【0091】
過酸化物の存在下で比較的安定であることが見出されている従来の香味成分としては、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸ブチル、酪酸エチル、酢酸エチル、アントラニル酸メチル、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、カプロン酸アリル、オイゲノール、オイカリプトール、チモール、ケイ皮アルコール、ケイ皮アルデヒド、オクタノール、オクタナール、デカノール、デカナール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、α−テルピネオール、リナロール、リモネン、シトラール、バニリン、エチルバニリン、プロペニルグアエトール、マルトール、エチルマルトール、ヘリオトロピン、アネトール、ジヒドロアネトール、カルボン、オキサノン(oxanone)、メントン、β−ダマセノン、イオノン、γデカラクトン、γノナラクトン、γウンデカラクトン、及び4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン及びこれらの混合物が挙げられる。一般に好適な着香剤は、過酸化物により酸化される傾向が少ない構造的特徴及び官能基を含有するものである。これらとしては、飽和した香味化学物質の誘導体、又は安定な芳香環若しくはエステル基を含有する香味化学物質の誘導体が挙げられる。多少の酸化又は分解を受ける場合があっても香味の特徴又はプロフィールに著しい変化を生じない香味化学物質もまた好適である。着香剤は、一般に組成物中で、組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で用いられる。
【0092】
いくつかの実施形態において、組成物のpHは約3.5〜約5.5であってもよく、このpHは酸化剤に更なる安定性を提供し得る。いくつかの実施形態では、組成物はスズイオン源を更に含有してもよい。いくつかの実施形態では、本発明は歯垢、歯肉炎、過敏症、口腔悪臭、侵食、窩洞、結石を低減する方法と、溶融シリカ及び過酸化物を含有する組成物を対象の口腔に投与することにより着色する方法とを提供し得る。いくつかの実施形態では、本発明は、歯垢、歯肉炎、過敏症、口腔悪臭、侵食、窩洞、結石を低減する方法と、最初に過酸化物を含有しない組成物、次に溶融シリカ及び過酸化物を含有する組成物を対象の口腔に投与することにより着色する方法とを提供する。いくつかの実施形態では、組成物は単相で存在してもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、酸化剤と、フッ化物イオン源、亜鉛イオン源、カルシウムイオン源、ホスフェートイオン源、カリウムイオン源、ストロンチウムイオン源、アルミニウムイオン源、マグネシウムイオン源、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上とを含有してもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、酸化剤と、ポリホスフェート、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、高分子ポリエーテル、高分子アルキルホスフェート、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸のコポリマー、ポリホスホネート、及びそれらの混合物からなる群より選択されるキレート剤とを含有してもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、酸化剤と、抗菌剤、抗歯垢剤、抗炎症剤、抗う食剤、抗結石剤、抗侵食剤、抗悪臭剤、抗過敏症剤、栄養素、鎮痛剤、麻酔剤、H−1及びH−2拮抗物質、抗ウイルス活性物質、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される口腔ケア活性物質とを含有してもよい。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン(chlorhexiding)、ヘキシジン(hexitidine)、トリクロサン、金属イオン、精油、及びそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。
【0093】
抗菌剤
本発明の歯磨剤組成物は、抗微生物剤を含んでもよい。それらの抗菌剤としては、クロルヘキシジン、アレキシジン、ヘキセチジン、塩化ベンザルコニウム、臭化ドミフェン、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化テトラデシルピリジニウム(TPC)、N−テトラデシル−4−エチルピリジニウムクロリド(TDEPC)、オクタニジン、ビスビグアニド、亜鉛又はスズイオン剤、グレープフルーツ抽出物、及びそれらの混合物等のカチオン性抗菌剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の抗菌剤及び抗微生物剤には、慣用的にトリクロサンと呼ばれる、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)−フェノール;8−ヒドロキシキノリン及びその塩;塩化銅(II)、硫酸銅(II)、酢酸銅(II)、フッ化銅(II)及び水酸化銅(II)が挙げられるが、これらに限定されない銅II化合物;フタル酸一カリウムマグネシウムを含む米国特許第4,994,262号で開示されているものが挙げられるが、これらに限定されないフタル酸及びその塩;サンギナリン;サリチルアニリド;ヨウ素;スルホンアミド;フェノール;デルモピノール、オクタピノール、及びその他のピペリジノ誘導体;ナイアシン調剤;ナイスタチン;リンゴ抽出物;タイム油;チモール;オーグメンチン、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、メトロニダゾール、ネオマイシン、カナマイシン、塩化セチルピリジニウム、及びクリンダマイシン等の抗生物質;上記の類似体及び塩;サリチル酸メチル;過酸化水素;亜塩素酸塩の金属塩;ピロリドンエチルココイルアルギネート;ラウロイルエチルアルギネートモノクロロハイドレート;並びに上記の全ての混合物が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、組成物はフェノール抗微生物化合物及びその混合物を含有する。抗微生物化合物は、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約20重量%存在してよい。別の実施形態では、本発明の口腔ケア組成物は一般に約0.1重量%〜約5重量%の抗微生物剤を含む。
【0094】
他の抗微生物剤は精油であってもよいが、これに限定されない。精油は揮発性芳香族油であり、合成又は蒸留、圧搾若しくは抽出により植物から誘導されたものであってもよく、通常、それらが得られた植物の匂い又は香味を保有する。有用な精油は、殺菌活性を提供することができる。これらの精油のいくつかは着香剤としても機能する。有用な精油には、シトラ(citra)、チモール、メントール、サリチル酸メチル(冬緑油)、オイカリプトール、カルバクロール、樟脳、アネトール、カルボン、オイゲノール、イソオイゲノール、リモネン、オシメン(osimen)、n−デシルアルコール、シトロネラ、a−サルピネオール(salpineol)、酢酸メチル、酢酸シトロネリル、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、サフロラバニリン(safrola vanillin)、スペアミント油、ハッカ油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、経皮油、ピメント油、ローレル油、ニオイヒバ油、ゲリアノール(gerianol)、ベルベノン、アニス油、月桂樹油、ベンズアルデヒド、ベルガモット油、苦扁桃、クロロチモール(chiorothymol)、ケイ皮アルデヒド、シトロネラ油、クローブ油、コールタール、ユーカリ油、グアイアコール、ヒノキチオール等のトロポロン誘導体、アベンダー油(avender oil)、からし油、フェノール、サリチル酸フェニル、松油、松葉油、サッサフラス油、スパイクラベンダー油、蘇合香、タイム油、トルーバルサム、テレビン油、クローブ油、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、精油は、チモール、サリチル酸メチル、オイカリプトール、メントール、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0095】
本発明の一実施形態において、天然に存在する香味成分又はそのような香味成分を含有する精油(EO)のブレンドであって、当該ブレンドが卓越した抗微生物活性を示し、第1の構成成分がシトラール、ネラール、ゲラニアール、ゲラニオール及びネロール等の非環式又は非環構造から選択され、第2の構成成分がオイカリプトール、オイゲノール及びカルバクロール等の環含有又は環式構造から選択される少なくとも2つの構成成分を含有する、ブレンドを含む口腔ケア組成物を提供する。精油は、レモングラス、柑橘類(オレンジ、レモン、ライム)、シトロネラ、ゼラニウム、バラ、ユーカリノキ、オレガノ、月桂樹及びクローブの油を含む上記の香味成分を提供するのに使用されてもよい。しかしながら、香味成分は天然オイル又は抽出物を添加することにより組成物中に供給されるのではなく、個別に又は精製された化学物質として提供されることが好ましい可能性があり、それは、これらの供給源が、組成物中の他の構成成分によって不安定となり、又は所望の香味プロファイルと不適合な香味特徴(note)を導入して、感覚刺激的観点から比較的許容できない製品を生じ得る他の構成成分を含有する可能性があるためである。本発明での使用には、主として所望の構成成分(1つ又は複数)を含有するように精製又は濃縮された、天然の油又は抽出物が非常に好ましい。
【0096】
好ましくは、ブレンドは3、4、5又はそれ以上の上記の構成成分を含有する。ブレンドが少なくとも1つの非環構造と1つの環構造とを含む限りにおいて、より多数の異なる構成成分が一緒にブレンドされるにつれて、抗微生物効果の観点からより大きい相乗効果を得る可能性がある。好ましいブレンドは、少なくとも2つの環構造、又は少なくとも2つの非環構造を含む。例えば、2つの非環構造(シトラールからのネラール及びゲラニアール)と、環構造としてオイゲノールとを含むブレンドは、その口腔細菌に対する効力により非常に好ましい。別の好ましいブレンドは、3つの非環構造(ゲラニオール、ネラール及びゲラニアール)と、2つの環構造(オイゲノール及びオイカリプトール)とを含む。そのようなブレンドの例は、米国特許出願公開第2008/0253976A1号に更に詳細に論じされている。
【0097】
他の抗菌剤は、塩基性アミノ酸及び塩であり得る。別の実施形態は、アルギニンを含有し得る。
【0098】
抗歯垢剤
本発明の歯磨剤組成物は、スズ塩、銅塩、ストロンチウム塩、マグネシウム塩、Gantrez又はジメチコンコポリオール等のカルボキシル化ポリマーのコポリマー等の抗歯垢剤を含有してもよい。ジメチコンコポリオールは、C12〜C20アルキルジメチコンコポリオール及びこれらの混合物から選択される。1つの実施形態において、ジメチコンコポリオールは、商標名Abil EM90で市販されているセチルジメチコンコポリオールである。ジメチコンコポリオールは、1つの実施形態において、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約25重量%、別の実施形態では、約0.01重量%〜約5重量%、別の実施形態では約0.1重量%〜約1.5重量%の濃度で存在することができる。
【0099】
抗炎症剤
抗炎症剤が本発明の歯磨剤組成物に存在してもよい。このような試薬は、非限定的に非ステロイド性抗炎症(NSAID)剤、オキシカム、サリチラート、プロピオン酸、酢酸及びフェナム酸を含んでもよい。このようなNSAIDには、ケトロラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、ピロキシカム、ナブメトン、アスピリン、ジフルニサル、メクロフェナム酸、メフェナム酸、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、及びアセトアミノフェンが挙げられるが、これらに限定されない。ケトロラクのようなNSAIDの使用は、米国特許第5,626,838号で特許請求されている。そこで開示されているものは、NSAIDの有効量の口腔又は中咽頭への局所投与によって、口腔又は中咽頭の原発性及び再発性の扁平上皮細胞癌を予防及び/又は治療する方法である。好適なステロイド性抗炎症剤には、フルオシノロン(fluccinolone)及びヒドロコルチゾンのような副腎皮質ホルモンが挙げられる。
【0100】
栄養素
栄養素は、口腔の状態を改善することができ、本発明の歯磨剤組成物に含まれることができる。栄養素としては、ミネラル、ビタミン、経口栄養補給剤、経腸栄養補給剤、及びこれらの混合物が挙げられる。有用なミネラルには、カルシウム、リン、亜鉛、マンガン、カリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。ビタミンは、ミネラルと共に含まれることができるか、又は別個に使用されることもできる。好適なビタミンには、ビタミンC及びD、チアミン、リボフラビン、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、ニコチンアミド、ピリドキシン、シアノコバラミン、パラ−アミノ安息香酸、バイオフラボノイド、並びにこれらの混合物が挙げられる。経口栄養補給剤には、アミノ酸、脂肪親和物質、魚油、及びこれらの混合物が挙げられる。アミノ酸には、L−トリプトファン、L−リジン、メチオニン、スレオニン、レボカルニチン又はL−カルニチン及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。脂肪親和物質には、コリン、イノシトール、ベタイン、リノール酸、リノレン酸、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。魚油は、大量のオメガ3(N−3)多不飽和脂肪酸、エイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸を含む。経腸栄養補給剤には、タンパク質製品、グルコースポリマー、コーン油、ベニバナ油、中鎖トリグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。ミネラル類、ビタミン類、経口栄養補給剤及び経腸栄養補給剤が、Drug Facts and Comparisons(ルーズリーフ式薬剤インフォメーションサービス(loose leaf drug information service))Wolters Kluer Company,St.Louis,Mo.,(著作権)1997,pps 3〜17及び54〜57に詳述されている。
【0101】
酸化防止剤
酸化防止剤は一般に歯磨剤組成物において有用と認識されている。酸化防止剤は、Marcel Dekker,Inc.によるCadenas及びPacker,The Handbook of Antioxidants,(著作権)1996等の教科書に開示されている。本発明に有用な酸化防止剤には、ビタミンE、アスコルビン酸、尿酸、カロチノイド、ビタミンA、フラボノイド及びポリフェノール、薬草酸化防止剤、メラトニン、アミノインドール、リポ酸、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
鎮痛剤及び麻酔剤
耐痛み剤又は減感剤も本発明の歯磨剤組成物に存在し得る。鎮痛剤は、意識を撹乱させることなく、又はその他の感覚様相を変えることなく、痛みの閾値を上げるように中枢的に作用することによって痛みを緩和する試薬である。そのような試薬には、塩化ストロンチウム;硝酸カリウム;フッ化ナトリウム;硝酸ナトリウム;アセトアニリド;フェナセチン;アセルトファン(acertophan);チオルファン;スピラドリン(spiradoline);アスピリン;コデイン;テバイン;レボルフェノール(levorphenol);ヒドロモルフォン;オキシモルフォン;フェナゾシン;フェンタニール;ブプレノルフィン;ブタファノール(butaphanol);ナルブフィン;ペンタゾシン;没食子のような自然の薬草;アサルム;クベビン;ガランガ;スクテラリア;両面針;及び白止を挙げることができるが、これらに限定されない。アセトアミノフェン、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸トロラミン、リドカイン及びベンゾカインのような麻酔剤又は局所鎮痛剤もまた存在してもよい。これらの鎮痛活性物質は、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Volume 2,Wiley−Interscience Publishers(1992),pp.729〜737.に詳述されている。
【0103】
H−1及びH−2拮抗物質並びに抗ウイルス活性物質
本発明はまた、米国特許第5,294,433号に開示されている化合物を含む、選択的なH−1及びH−2拮抗物質を任意に含んでもよい。本組成物において有用な抗ウイルス活性物質は、ウイルス感染を治療するために通常使用される任意の既知の活性物質を含む。このような抗ウイルス活性物質は、Drug Facts and Comparisons,Wolters Kluer Company,(著作権)1997,pp.402(a)〜407(z)に開示される。具体的な例としては、米国特許第5,747,070号(1998年5月5日発行)に開示された抗ウイルス活性物質が含まれる。この特許はウイルスをコントロールするためのスズ塩の使用を開示している。スズ塩及び他の抗ウイルス活性物質は、Kirk & Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Third Edition,Volume 23,Wiley−lnterscience Publishers(1982),pp.42〜71に詳述されている。本発明に使用し得るスズ塩には、有機スズカルボキシレート、及び無機スズハロゲン化物が含まれる。フッ化第1スズが使用され得るが、それは典型的に、別のスズハライド、又は1つ以上のスズカルボン酸塩、あるいは他の治療薬との組み合わせでのみ使用される。
【0104】
キレート化剤
本組成物は、その多数が抗結石活性又は歯直接(substantive)活性も有する、キレート剤又は金属イオン封鎖剤とも称されるキレート化剤を場合により含有してもよい。口腔ケア組成物中でのキレート化剤の使用は、細菌の細胞壁に見出されるもの等のカルシウムを錯体化するそれらの能力により有利である。キレート化剤はまた、このバイオマスが損なわれないように保持するのを助けるカルシウムの架橋からカルシウムを取り除くことにより歯垢を崩壊させることができる。キレート化剤はまた、金属イオンと錯体を形成することができ、それにより、安定性又は製品の外観に対する弊害を予防するのに役立つ。鉄又は銅等のイオンのキレート化により、最終製品の酸化による変質抑制に役立つ。
【0105】
更に、キレート剤は、歯の表面に結合し、それにより色素体(color bodies)又は色素原(chromagen)を置換することによって、原理上は汚れを除去することができる。これらのキレート剤の定着はまた、歯の表面上の色素体の結合部位を破壊するため、汚れが生じるのを防止することもできる。
【0106】
したがって、キレート剤は汚れの軽減と、洗浄の改善とを助ける補助物であり得る。溶融シリカ及び研磨剤が機械的な機構にて洗浄する一方で、キレート剤は化学的洗浄を提供するのを助け得るため、キレート剤は洗浄の改善を助け得る。溶融シリカが良好な機械的洗浄剤であるため、より多量の汚れが除去され、したがってキレート剤は、汚れが歯の表面を再度汚すことができないように汚れを保持し、浮遊させ又は錯体化することが所望され得る。加えて、キレート剤は歯の表面を被覆して、新たな汚れを防止するのを助け得る。
【0107】
キレート剤はカチオン性抗菌剤を含有する製剤に添加されることが所望され得る。スズ含有製剤にキレート剤を添加することが所望され得る。キレート剤は、スズを安定化し、より大量のスズを生物学的に利用可能にて維持するのを助けることができる。キレート剤は約4.0を超えるpHを有するスズ製剤中に使用されてもよい。いくつかの製剤において、スズは、沈降シリカよりも溶融シリカを伴う場合により安定となるため、キレート剤を必要とすることなく安定であり得る。
【0108】
好適なキレート化剤には、中でも、フィテート、並びにトリポリホスフェート、テトラポリホスフェート及びヘキサメタホスフェートを含む2つ以上のホスフェート基を有する直鎖状ポリホスフェート等の可溶性リン酸化合物が挙げられる。好ましいポリホスフェートは、Sodaphos(n≒6)、Hexaphos(n≒13)、及びGlass H(n≒21)として商業的に既知であるもの等、平均して約6〜約21のホスフェート基の数nを有するものである。他のポリリン酸化化合物を、ポリホスフェート、具体的には、フィチン酸、ミオ−イノシトールペンタキス(二水素リン酸);ミオ−イノシトールテトラキス(二水素リン酸)、ミオ−イノシトールトリキス(二水素リン酸)、及びこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム塩のような、ポリリン酸化イノシトール化合物に加えて又はその代わりに用いてよい。本明細書では、ミオ−イノシトール1,2,3,4,5,6−ヘキサキス(二水素リン酸)としても既知であるフィチン酸又はイノシトール六リン酸及びそのアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム塩が好ましい。本明細書では、用語「フィテート」は、フィチン酸及びその塩、並びにその他ポリリン酸化イノシトール化合物を包含する。組成物中のキレート化剤の量は、使用されるキレート化剤に依存し、一般に少なくとも約0.1%〜約20%、好ましくは約0.5%〜約10%、より好ましくは約1.0%〜約7%であろう。
【0109】
カルシウムを結合、可溶化、及び輸送するそれらの能力により本発明に有用な更なる別のホスフェート化合物は、歯直接剤(Tooth Substantive Agent)として有用な上述された、有機リン酸モノ−、ジ−又はトリエステルを含む界面活性有機リン酸化合物である。
【0110】
歯垢、結石及び汚れの制御に使用される洗浄特性を有する他の好適な薬剤には、Widderらに付与された米国特許第3,678,154号、White,Jr.に付与された米国特許第5,338,537号及びZerbyらに付与された米国特許第5,451,号に記載されているポリホスホネート類;Francisに付与された米国特許第3,737,533号に記載されているカルボニルジホスホネート類;Pyrzらに付与された1989年7月11日の米国特許第4,847,070号、及びBenedictらに付与された1987年4月28日の米国特許第4,661,341号に記載されているアクリル酸ポリマー又はコポリマー;Peraに付与された1988年10月4日発行の米国特許第4,775,525号に記載されているアルギン酸ナトリウム;英国特許第741,315号、国際公開第99/12517号及びPinkらに付与された米国特許第5,538,714号に記載されているポリビニルピロリドン;並びにVenemaらに付与された米国特許第5,670,138号、及びLion Corporationに付与された公開特許公報第2000−0633250号に記載されているビニルピロリドンとカルボキシレートとのコポリマーが挙げられる。
【0111】
本発明で使用するのに好適な更に別のキレート化剤は、アニオン性高分子ポリカルボキシレートである。こうした物質は当該技術分野において周知であり、その遊離酸又は部分的に若しくは好ましくは完全に中和された水溶性アルカリ金属塩(例えばカリウム、好ましくはナトリウム)若しくはアンモニウム塩の形態で使用される。例としては、無水マレイン酸又はマレイン酸と、別の重合可能なエチレン性不飽和モノマー、好ましくは約30,000〜約1,000,000の分子量(M.W.)を有するメチルビニルエーテル(メトキシエチレン)との1:4〜4:1のコポリマーである。これらのコポリマーは、例えばGAF Chemicals CorporationのGantrez(登録商標)AN 139(M.W.500,000)、AN 119(M.W.250,000)及びS−97 Pharmaceutical Grade(M.W.70,000)として入手可能である。
【0112】
他の有効な高分子ポリカルボキシレートには、無水マレイン酸と酢酸エチル、ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、又はエチレンとの1:1コポリマー(後者は、例えばMonsanto EMA No.1103、M.W.10,000及びEMA Grade 61として入手可能)、及びアクリル酸とメチル又はヒドロキシエチルメタクリレート、メチル又はエチルアクリレート、イソブチルビニルエーテル又はN−ビニル−2−ピロリドンとの1:1コポリマーが挙げられる。
【0113】
更なる有効な高分子ポリカルボキシレートは、Gaffarに付与された1979年2月6日の米国特許第4,138,477号及びGaffarらに付与された1980年1月15日の同第4,183,914号に開示されており、無水マレイン酸とスチレン、イソブチレン又はエチルビニルエーテルとのコポリマー;ポリアクリル酸、ポリイタコン酸及びポリマレイン酸;並びにUniroyal ND−2として入手可能な、分子量が1,000程度しかないスルホアクリルオリゴマー(sulfoacrylic oligomer)が挙げられる。
【0114】
他の好適なキレート剤には、Smithermanに付与された米国特許第5,015,467号、両方がLukacovicに付与された同第5,849,271号及び同第5,622,689号に記載されているポリカルボン酸及びその塩;例えば酒石酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸等;グルコン酸ナトリウム又はグルコン酸カリウム及びクエン酸ナトリウム又はクエン酸カリウム等のコハク酸、二コハク酸及びそれらの塩;クエン酸/クエン酸アルカリ金属塩の組み合わせ;酒石酸二ナトリウム;酒石酸二カリウム;酒石酸ナトリウムカリウム;酒石酸水素ナトリウム;酒石酸水素カリウム;ナトリウムタータレートモノスクシネート、カリウムタータレートジスクシネートの酸又は塩、並びにそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、キレート化剤の混合物又は組み合わせが存在してもよい。
【0115】
歯直接剤
本発明は、歯直接剤を含有してもよい。本願の目的のために、歯直接剤はキレート剤としても含まれる。好適な薬剤は、高分子電解質、より詳細にはアニオン性ポリマーを含む高分子界面活性剤(PMSA)であり得る。PMSAは、アニオン基、例えば、リン酸、ホスホン酸、カルボキシ、又はこれらの混合物を含有し、したがって、カチオン性又は正に荷電した実体と相互作用する能力を有する。「無機質」記述子は、ポリマーの界面活性又は直接性が歯のリン酸カルシウム無機質のような無機質表面に向かうと伝えることを意図する。
【0116】
PMSAは、汚れ防止等のそれらの多数の利益により本組成物に有用である。PMSAは、その反応性又は直接性により、無機質又は歯表面に着色汚れ予防効果を提供し、望ましくない吸着外被タンパク質、具体的には、歯を着色する色素体の結合、結石の発達、及び望ましくない微生物種の誘引と関連するものの一部を脱離させると考えられる。これらのPMSAの歯上への定着はまた、歯の表面上の色素体の結合部位を壊すため、着色汚れの発生を防止することもできる。
【0117】
PMSAの、スズイオン及びカチオン性抗微生物剤のような口腔ケア製品の着色汚れ促進成分に結合する能力もまた、有用であると考えられる。PMSAはまた、表面熱力学特性及び表面フィルム特性に望ましい影響を与える歯表面調節効果を提供し、これは洗浄又はブラッシング中、及び最も重要なことに洗浄又はブラッシング後の両方に、改善された清浄な感触美的特徴を付与する。これらの薬剤の多くはまた、口腔組成物に含まれた際、歯石制御効果を提供する、したがって消費者に歯の外観及びそれらの触感の改善を提供することが期待されている。
【0118】
PMSAとしては、歯表面に強い親和性を有し、ポリマー層又はコーティングを歯表面に沈着させ、所望の表面改質効果を生み出すいずれかの剤が挙げられる。かかるポリマーの好適な例は、縮合リン酸化ポリマーのような高分子電解質;ポリホスホネート類;ホスフェート若しくはホスホネート含有モノマー若しくはポリマーと、エチレン性不飽和モノマー及びアミノ酸のような他のモノマーとのコポリマー、又はタンパク質、ポリペプチド、多糖類、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(エタクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(マレエート)、ポリ(アミド)、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアセテート)、及びポリ(ビニルベンジルクロライド)のような他のポリマーとのコポリマー;ポリカルボキシレート及びカルボキシ置換ポリマー;並びにこれらの混合物である。好適な高分子無機質界面活性剤としては、米国特許第5,292,501号、同第5,213,789号、同第5,093,170号、同第5,009,882号、及び同第4,939,284号(全てDegenhardtら)に記載されているカルボキシ置換アルコールポリマー、米国特許第5,011,913号(Benedictら)のジホスホネート誘導体化されたポリマー;例えば、米国特許第4,627,977号(Gaffarら)に記載されているようなポリアクリレートを含む合成アニオン性ポリマー、及び無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(例えば、Gantrez(登録商標))が挙げられる。好ましいポリマーは、ジホスホネート修飾ポリアクリル酸である。活性を有するポリマーは、薄膜タンパク質を脱着しかつエナメル質表面に結合したままにするのに十分な表面結合性を有しなければならない。歯の表面では、末端又は側鎖にホスフェート又はホスホネート官能基を有するポリマーが好ましいが、無機質結合活性を有する他のポリマーも吸着親和性に依存して有効であることを示す場合がある。
【0119】
高分子無機質界面活性剤を含む好適なホスホネートの更なる例としては、Degenhardtらに付与された米国特許第4,877,603号に抗結石剤として開示されているジェミナルジホスホネートポリマー;洗剤及び洗浄組成物中での使用に好適な、Durschらに付与された米国特許第4,749,758号及び英国特許第1,290,724号(両方ともHoechstに譲渡)に開示されているホスホネート基含有コポリマー;並びにZakikhaniらに付与された米国特許第5,980,776号及びDavisらに付与された米国特許第6,071,434号に歯石及び腐食阻害、コーティング、セメント及びイオン交換樹脂を含む用途に有用なものとして開示されているコポリマー及びコテロマーが挙げられる。追加のポリマー類としては、英国特許第1,290,724号に開示されているビニルホスホン酸及びアクリル酸とそれらの塩の水溶性コポリマーが挙げられ、ここでコポリマーは約10重量%〜約重量90%のビニルホスホン酸と、約90重量%〜10重量%のアクリル酸とを含み、より詳細には、コポリマーはビニルホスホン酸とアクリル酸の重量比が70%ビニルホスホン酸対30%アクリル酸、50%ビニルホスホン酸対50%アクリル酸、又は30%ビニルホスホン酸対70%アクリル酸である。他の好適なポリマーとしては、1個以上の不飽和C=C結合を有するジホスホネート又はポリホスホネートモノマー(例えば、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸及び2−(ヒドロキシホスフィノ)エチリデン−1,1−ジホスホン酸)と、不飽和C=C結合を有する少なくとも1種の更なる化合物(例えば、アクリレート及びメタクリレートモノマー)と、を共重合することにより調製される、Zakikhani及びDavisにより開示された水溶性ポリマーが挙げられる。好適なポリマー類としては、Rhodiaから表記ITC 1087(平均分子量3000〜60,000)及びポリマー1154(平均分子量6000〜55,000)として供給されているジホスホネート/アクリレートポリマー類が挙げられる。
【0120】
好ましいPMSAは、イオン性フッ化物及び金属イオンのような口腔ケア組成物の他の成分に対して安定である。高含水製剤において加水分解が制限され、したがって単純な単一相歯磨剤又はマウスリンス製剤を可能にするポリマーもまた好ましい。PMSAがこれらの安定特性を有していない場合、1つの選択肢は、フッ化物又は他の不混和性成分から分離された高分子ミネラル界面活性剤を含む二相製剤である。別の選択肢は、非水性、実質的に非水性又は限定的な水分の組成物を調合し、PMSAと他の成分との間の反応を最低限に抑えることである。
【0121】
好ましいPMSAの1つは、ポリホスフェートである。ポリホスフェートは一般に、主に直鎖構造に配置された2つ以上のホスフェート分子からなると理解されているが、いくつかの環状誘導体が存在する場合もある。ピロホスフェート(n=2)は理論的にはポリホスフェートであるが、所望のポリホスフェートは、有効濃度での表面吸着により十分な非結合のホスフェート官能基を生成し、これがアニオン性表面電荷並びに表面の親水性特徴を強化するように、およそ3以上のホスフェート基を有するものである。所望の無機ポリホスフェート塩類としては、特に、トリポリホスフェート、テトラポリホスフェート、及びヘキサメタホスフェートが挙げられる。テトラポリホスフェートよりも大きいポリホスフェート類は、通常は無定形のガラス状物質として生じる。本組成物には、以下の式を有する直鎖状ポリホスフェートが好ましい。
【0122】
XO(XPO
式中、Xはナトリウム、カリウム、又はアンモニウムであり、nの平均は約3〜約125である。好ましいポリホスフェートは、Sodaphos(n≒6)、Hexaphos(n≒13)、及びGlass H(n≒21)として商業的に既知であるもの、並びにFMC Corporation及びAstarisにより製造されているような平均して約6〜約21のnを有するものである。これらのポリホスフェート類は単独で又は組み合わせて用いることができる。ポリホスフェート類は、酸性pH、具体的にはpH 5未満で、高含水製剤中の加水分解の影響を受けやすい。したがって、長鎖ポリホスフェート類、具体的には、平均鎖長約21のGlass Hを使用することが好ましい。かかる長鎖ポリホスフェート類は、加水分解を受けている際、依然として歯上に沈着し、着色汚れ予防効果を提供するのに有効な短鎖ポリホスフェート類を生成すると考えられている。
【0123】
非ポリマー性ホスフェート化合物、具体的には、フィチン酸、ミオ−イノシトールペンタキス(リン酸二水素);ミオ−イノシトールテトラキス(リン酸二水素)、ミオ−イノシトールトリキス(リン酸二水素)、及びそのアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム塩のような、ポリリン酸化イノシトール化合物も、歯直接剤として有用である。本明細書では、ミオ−イノシトール1,2,3,4,5,6−ヘキサキス(二水素リン酸)としても既知であるフィチン酸又はイノシトール六リン酸及びそのアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム塩が好ましい。本明細書では、用語「フィチン酸塩」は、フィチン酸及びその塩、並びにその他ポリリン酸化イノシトール化合物を包含する。
【0124】
歯直接剤として有用な他の界面活性ホスフェート化合物には、米国特許出願第20080247973A1号として公開された、同一出願人による出願に記載されているもの等のホスフェートモノ−、ジ−又はトリエステルのような有機ホスフェートが挙げられる。例としては、ドデシルホスフェート、ラウリルホスフェート;ラウレス−1ホスフェート;ラウレス−3ホスフェート;ラウレス−9ホスフェート;ジラウレス−10ホスフェート;トリラウレス−4ホスフェート;C12〜18 PEG−9ホスフェート等のモノ−、ジ−及びトリ−アルキル及びアルキル(ポリ)アルコキシホスフェート、並びにそれらの塩が挙げられる。多くはCroda;Rhodia;Nikkol Chemical;Sunjin;Alzo;Huntsman Chemical;Clariant及びCognisを含む供給者から市販されている。いくつかの好ましい剤は、例えば、高分子部分としての反復アルコキシ基、特に3つ以上のエトキシ、プロポキシイソプロポキシ、又はブトキシ基を含有する高分子のものである。
【0125】
更なる好適な高分子有機リン酸薬剤としては、リン酸デキストラン、リン酸ポリグルコシド、リン酸アルキルポリグルコシド、リン酸ポリグリセリル、リン酸アルキルポリグリセリル、リン酸ポリエーテル、及びリン酸アルコキシル化ポリオールが挙げられる。いくつかの特定の例は、PEGリン酸、PPGリン酸、アルキルPPGリン酸、PEG/PPGリン酸、アルキルPEG/PPGリン酸、PEG/PPG/PEGリン酸、リン酸ジプロピレングリコール、PEGリン酸グリセリル、PBGリン酸(ポリブチレングリコール)、PEGリン酸シクロデキストリン、PEGリン酸ソルビタン、PEGリン酸アルキルソルビタン、及びPEGリン酸メチルグルコシドである。
【0126】
更なる好適な非高分子リン酸としては、リン酸アルキルモノグリセリド、リン酸アルキルソルビタン、リン酸アルキルメチルグルコシド、リン酸アルキルスクロースが挙げられる。
【0127】
他の有用な歯直接剤には、両方ともThe Procter & Gamble Co.に譲渡された米国特許第7,025,950号及び同第7,166,235号に開示されているもの等の、カルボン酸基で官能基化されたシロキサンポリマーが挙げられる。これらのポリマーは、疎水性シロキサン骨格と、カルボキシ基を含むペンダントアニオン性部分とを有し、水性ベースの製剤又は本質的に非水性ベースの製剤から表面上に沈着して、処理表面上に実質的に疎水性のコーティングを形成する能力を有する。カルボキシ官能基含有シロキサンポリマーは、静電相互作用、即ち、ペンダントカルボキシ基と、歯内に存在するカルシウムイオンとの間で複合体を形成することによって、それらを極性表面に結合させ、その表面にコーティングを形成すると思われる。かくしてカルボキシ基はシロキサンポリマー骨格を表面上に定着させる役割を果たし、それにより表面を疎水性に変更し、このことは次に、洗浄の容易さ、汚れの除去及び予防、ホワイトニング等の、その表面に対する様々な最終用途の利益を付与する。カルボキシ官能基含有シロキサンポリマーは更に、表面上への活性剤の沈着を高め、これらの活性物質の処理表面上での維持及び効果を向上させるよう機能する。
【0128】
歯直接剤として、同一出願人による米国特許第6,682,722号に記載されている、ビニルピロリドン(VP)モノマーのうちの1つ又は混合物と、アルケニルカルボキシレート(AC)モノマー、詳細には、飽和直鎖又は分岐鎖C1〜C19アルキルカルボン酸のC2〜C12アルケニルエステルのうちの1つ又は混合物とを共重合化して調製された水溶性又は水分散性高分子剤も有用である。例としては、ビニルピロリドンと、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル又は酪酸ビニルのうちの1つ又は混合物とのコポリマーが挙げられる。好ましいポリマーは、約1,000〜約1,000,000、好ましくは10,000〜200,000、更により好ましくは30,000〜100,000の範囲の平均分子量を有する。
【0129】
歯直接剤の量は、典型的には、口腔組成物全体の約0.1重量%〜約35重量%である。歯磨剤製剤中では、量は、好ましくは約2%〜約30%、より好ましくは約5%〜約25%、最も好ましくは約6%〜約20%である。マウスリンス組成物中では、歯直接剤の量は、好ましくは約0.1%〜5%、より好ましくは約0.5%〜約3%である。
【0130】
追加的な活性物質
本発明における使用に適した追加的な活性物質は、非限定的にインスリン、ステロイド、ハーブ及び他の植物由来の治療薬を含む。加えて、当該技術分野において既知の抗歯肉炎剤又は歯肉ケア剤も含まれてよい。歯に清涼感を付与する構成成分が任意に含まれていてもよい。これらの構成成分には、例えば、重曹又はGlass−Hを挙げることができる。また、治療の特定の形態において、これら上記名称の試剤の組み合わせが、最適の効果を得るために有用である可能性があることが認められる。したがって、例えば、抗微生物剤及び抗炎症剤は、組み合わされた有効性を提供するために単一の歯磨剤組成物に組み合わせてもよい。
【0131】
使用される任意の試剤には、例えば米国特許第4,627,977号に記載されているような、ポリアクリレート及び無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(例えば、Gantrez)を含む合成アニオン性ポリマーとして既知の物質等が挙げられ、並びに、例えばポリアミノプロパンスルホン酸(polyamino propoane sulfonic acid)(AMPS)、クエン酸亜鉛三水和物、ポリホスフェート(例えば、トリポリホスフェート、ヘキサメタホスフェート)、ジホスホネート(例えば、EHDP、AHP)、ポリペプチド(例えば、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸)、並びにこれらの混合物が挙げられる。更に、歯磨剤組成物は、例えば米国特許第6,682,722号及び同第6,589,512号及び米国特許出願第10/424,640号及び同第10/430,617号に記載のポリマーキャリアを含むことができる。
【0132】
他の任意成分
緩衝剤
歯磨剤は、緩衝剤を含んでもよい。ここで使用される緩衝剤は、歯磨剤組成物のpHを約pH 3.0〜約pH 10に調整するために使用できる化学物質を指す。緩衝剤には、水酸化アルカリ金属、水酸化アンモニウム、有機アンモニウム化合物、炭素塩、セスキ炭酸ソーダ、ボレート、シリケート、ホスフェート、イミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。具体的な緩衝剤には、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロリン酸塩、グルコン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。緩衝剤は、歯磨剤組成物の約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、及びより好ましくは約0.3重量%〜約3重量%の濃度で用いられる。
【0133】
着色剤
着色剤もまた本組成物に添加されてもよい。着色剤は水溶液、好ましくは1%の着色剤水溶液の形態であってよい。顔料、パール剤(pealing agent)、充填剤粉末、タルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛、及び歯磨剤組成物に視覚的変化を生みだすことができるその他の物質も使用できる。着色溶液及びその他の試薬は、一般に組成物の約0.01重量%〜約5重量%を構成する。また二酸化チタンを本組成物に添加してもよい。二酸化チタンは、組成物に不透明感を加える白色粉末である。二酸化チタンは一般に、組成物の約0.25重量%〜約5重量%を構成する。
【0134】
着香剤
好適な風味付け成分としては、冬緑油、クローブバッドオイル、メントール、アネトール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、カッシア、1−メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、パセリオイル、オキサノン、α−イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、ケイ皮、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、4−シス−ヘプテナール、ジアセチル、メチル−パラ−tert−ブチルフェニルアセテート、クランベリー、チョコレート、緑茶、及びこれらの混合物が挙げられる。着香剤として精油を含有してもよく、これは抗菌剤の考察にて上述されている。冷却剤も香味組成物の一部であってよい。本組成物に好適な冷却剤には、パラメンタンカルボキシアミド剤、例えばN−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド(WS−3、WS−23、WS−5として商業的に既知である)、MGA、TK−10、フィスクール(physcool)、及びこれらの混合物が挙げられる。唾液分泌促進剤、加温剤、局部麻酔剤、及びその他の任意物質は、口腔組成物が使用されている間に信号を伝達するために使用できる。沈降シリカの相互作用により、香味成分は捕捉され又は乳化され得て事実上消失するため、使用者に知覚されない。対照的に、溶融シリカの相互作用の欠如は、顕著な効果を達成するために添加される必要がある香味成分の量に影響を与え得る。いくつかの実施形態では、存在する着香剤の量は、同一の香味効果を達成する一方、類似の沈降シリカ製剤と比較して組成物の約10重量%、約20重量%又は約50重量%だけ少ない。
【0135】
香味組成物は、口腔ケア組成物にて、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で通常使用される。香味組成物は、好ましくは約0.01重量%〜約4重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約3重量%、及びより好ましくは約0.5重量%〜約2重量%の量で存在する。
【0136】
同様に、冷却剤は本組成物中では同等に吸収されない可能性があり、これは冷却剤がより長時間残留できるか、又はより少量で使用できることを意味する。精油もより少量が吸収され得るため、同一の効果を達成するためにより少量を使用することができる。溶融シリカは、沈降シリカのように味覚受容体に結合しない可能性があり、これは味覚受容体が着香剤に対してより接近しやすい可能性があることを意味する。
【0137】
例えば清潔な口の体験、及び甘味又は涼味の知覚の増大のような他の感覚的利益も、使用者に明らかとなり得る。改善されたツルツルした清潔な口の感触は、乾燥した口の知覚を低下させることに寄与する可能性があり、また溶融シリカによる洗浄の向上によりムチン(muscin)層の除去が助けられ、湿潤の知覚が増大し得る。他の消費者の感覚的利益は、使用者が歯を磨いている間、不活性溶融シリカ粒子が塊にならずに分散状態を維持することによる、口からの口腔組成物のすすぎ出しの改善であり得る。また他の可能な利益としては、向上された泡立ちがある。再度、溶融シリカは沈降シリカよりも不活性なため、界面活性剤の利用可能性が高まり、泡立ちが向上され得る。
【0138】
いくつかの実施形態は、一過性受容体電位バニロイド受容体1活性化因子であるTRPV1活性化因子を含んでもよく、この活性化因子は、小径感覚ニューロン上に優位に発現され、有害な物質及び他の物質を検出するリガンドゲート化非選択性カチオンチャネルである。味を落とす構成成分と共にTRPV1活性化因子を口腔ケア組成物に添加することによって、組成物の使用者はTRPV1活性化因子を含まない口腔ケア組成物と比較して改善された味を経験し得る。このように、TRPV1活性化因子は口腔ケア組成物中に使用される多数の構成成分に関連した悪い味を相殺するよう働く。これらの活性化因子は悪い味を相殺するのみでなく、乾燥を知覚する口の能力を制限することにより、乾燥知覚を低減し得る。一実施形態において、TRPV1活性化因子には、バニリルブチルエーテル、ジンゲロン、カプサイシン、カプシエイト、ショアゴール(shoagol)、ジンゲロール、ピペリン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態において、TRPV1活性化因子は、口腔ケア組成物の約0.0001重量%〜約0.25重量%の量で添加されるであろう。
【0139】
甘味剤
甘味剤を組成物に添加することができる。これらには、サッカリン、ブドウ糖、スクロース、ラクトース、キシリトール、マルトース、果糖、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、スクラロース、ネオテーム、及びこれらの混合物等の甘味剤が挙げられる。種々の着色剤も本発明に組み込まれてよい。甘味剤は、一般に口腔組成物中で、組成物の約0.005重量%〜約5重量%の濃度で用いられる。
【0140】
増粘剤
高分子増粘剤等の、追加の増粘剤が利用されてもよい。適切な増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、ラポナイト、並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム及びカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムのようなセルロースエーテルの水溶性塩である。カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム及びトラガカントゴムのような天然ゴム類も使用することができる。更に質感を改善するために、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム又は超微粒子状シリカが、増粘剤の一部として使用できる。他の増粘剤には、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、又はゲル網状組織を挙げることができる。増粘剤は、1〜約18個の炭素原子を含むアルキル又はアシル基でキャップされた高分子ポリエーテル化合物、例えばポリエチレン又はポリプロピレンオキシド(M.W.300〜1,000,000)を含んでもよい。
【0141】
好適な部類の増粘剤又はゲル化剤には、ペンタエリスリトールのアルキルエーテル若しくはスクロースのアルキルエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマー、又はカルボマーの部類が挙げられる。カルボマーはB.F.GoodrichからCarbopol(登録商標)シリーズとして市販されている。特に、カーボポールとして、Carbopol 934、940、941、956、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0142】
ラクチド及びグリコリドモノマーのコポリマーである、約1,000〜約120,000(数平均)の範囲の分子量を有するコポリマーは、「歯肉下ゲルキャリア」として歯周ポケットの中又は歯周ポケットの周りに活性物質を送達するのに有用である。これらのポリマーは、米国特許第5,198,220号、同第5,242,910号及び同第4,443,430号に記載されている。
【0143】
沈降シリカの他の製剤構成成分との相互作用に起因して、沈降シリカはある時間にわたり組成物のレオロジーに影響し得る。しかしながら、溶融シリカは他の製剤構成成分との相互作用の欠如に起因して、レオロジーに殆ど影響を与えない。このことは、溶融シリカを用いて調合された口腔ケア組成物が、ある時間にわたりより安定であり、これはとりわけ、より良好な洗浄及びより良好な予測可能性を可能にし得ることを意味する。したがって、いくつかの実施形態では、増粘剤、組み合わせ、及び量は従来の歯磨剤のそれらとは非常に異なる可能性がある。本発明では、増粘剤は、口腔組成物全体の約0重量%〜約15重量%又は約0.01重量%〜約10重量%の量、別の実施形態では、約0.1重量%〜約5重量%で使用され得る。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物は天然及び合成の供給源から選択される増粘剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、増粘剤は、粘土、ラポナイト、及びそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は更に、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム等のセルロースエーテルの水溶性塩、架橋澱粉、カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム及びトラガカントゴム等の天然ゴム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、並びにそれらの混合物からなる群より選択される増粘剤を含有してもよい。
【0145】
他の可能な増粘剤には、カルボマー、疎水変性カルボマー、カルボキシメチルセルロース、セチル/ステアリルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、アシル化ジェランガム、ヒドロキシプロピルスターチリン酸ナトリウム、微結晶セルロース、ミクロ繊維状セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、セチルヒドロキシエチルセルロース、架橋アクリロイルメチルプロパンスルホン酸ナトリウム及びコポリマー、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0146】
組成物の製造時の粘度がそのまま組成物の粘度であることができ、又は換言すれば、組成物は安定な粘度を有することができる。安定と考慮される粘度において、一般に粘度は、30日後に約5%以下変化する。いくつかの実施形態では、組成物の粘度は、約30日後に約5%、約30日後に約10%、約30日後に約20%、又は約90日後に約50%を超えて変化しない。ある時間にわたり不安定な粘度の問題は、少量の水を含有する製剤でより顕著であるため、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は約20%未満の水全体、又は約10%未満の水全体を含有し得る。
【0147】
ゲル網状組織
口腔組成物中にゲル網状組織を使用してもよい。ゲル網状組織は、口腔組成物を構成し、又は活性物質、香味剤、若しくは他の反応性材料の送達を補助するために使用され得る。ゲル網状組織は、構造体に使用され、即ち、それ自体で、又は他の増粘剤若しくは構造化剤と組み合わせて、溶融シリカ口腔ケア組成物を増粘化するか又は組成物に関する所望のレオロジーを提供するよう使用され得る。溶融シリカは、口腔組成物中の他の研磨剤又は材料よりも密であるため、ゲル網状組織組成物は溶融シリカに有利であり得るレオロジーを有する。溶融シリカはより重く又はより密であるため、他のより密でない材料と比較して、組成物又は溶液からより容易に落下又は脱落し得る。このことは、組成物が水で希釈された際に発生し得る。例えば、歯磨きのために歯磨剤が使用される際、歯磨剤は口の中に入ると水で希釈される。歯磨剤の構成を補助するゲル網状組織を含有する歯磨剤に関する希釈レオロジー(dilution rheology)は、高分子又はより一般的な増粘材料で構成される歯磨剤よりも高い場合がある。より高い希釈レオロジーは、溶融シリカの浮遊を保つのに有益であり、溶融シリカがより完全に洗浄プロセスに参加することを可能にする。研磨剤等の材料が、希釈後、組成物中に浮遊又は維持されない場合、被膜清掃比等の洗浄効果が低下し得る。加えて、研磨剤又は溶融シリカがより多く浮遊されると、より多量の研磨剤が洗浄に参加できるため、口腔組成物は全体としてより少量の研磨剤を含有することができる。図13は、ゲル網状組織により構成されていないが、典型的な高分子結合剤で増粘化された組成物と比較した、ゲル網状組織により構成された組成物に関するPCR及びRDAデータを示す。図示するように、ゲル網状組織が15%の溶融シリカを含有する調合物中で使用された際、PCRスコアは92.5から127.56へ、及び95.44から121.04へ増大する。この約10%、約15%、約20%、又は約25%を超えるPCRの増大は、洗浄中により多量の溶融シリカを浮遊させるゲル網状組織の能力によるものであり得る。洗浄スコアが増大する一方、摩耗は許容可能な範囲内に留まる。
【0148】
本発明の口腔組成物は、分散ゲル網状組織を含むことができる。本明細書で使用するとき、用語「ゲル網状組織」とは、少なくとも1つの脂肪族両親媒性物質、少なくとも1つの界面活性剤、及び溶媒を含む層状の又は小胞性の固体結晶性相を指す。層状相又は小胞性相は、脂肪族両親媒性物質及び二次界面活性剤を含む第1層と、交互の、溶媒を含む第2層とから構成される2層を含む。層状結晶相を形成するためには、脂肪族両親媒性物質及び二次界面活性剤は溶媒内で分散しなければならない。本明細書で使用するとき、用語「固体結晶性」とは、1以上の脂肪族両親媒性物質を含むゲル網状組織の層の鎖融解温度未満の温度において形成される層状相又は小胞性相の構造を指す。本発明での使用に好適なゲル網状組織は、ゲル網状組織の材料、製造方法、及び使用について記載している米国特許出願第2008/0081023A1号に詳述されている。加えて、米国特許出願第2009/0246151A1号にも、ゲル網状組織及びゲル網状組織を含有する組成物の製造方法が記載されている。
【0149】
口腔組成物中のゲル網状組織は、口腔組成物の構造化のために使用することができる。ゲル網状組織によってもたらされる構造化は、口腔組成物を増粘化させることによって所望のレオロジー又は粘度を提供する。構造化は、高分子増粘剤を必要とすることなく行うことができるが、高分子増粘剤又はその他の試薬を口腔組成物の構造化のためにゲル網状組織に加えて使用できる。溶融シリカは全く増粘化をもたらさず、又は典型的な沈降シリカほど増粘化をもたらさないため、口腔組成物の増粘化は口腔組成物を構成するために使用されるゲル網状組織から、より利益を得ることができる。口腔組成物の粘度又は増粘化に対する溶融シリカの影響が小さく、又は溶融シリカが全く影響しないことは、沈降シリカの量が調整される場合に必要であるように、ゲル網状組織又は他の増粘化系と共に口腔組成物を調合した後に増粘化のレベルを再調整する必要なく、所望量の溶融シリカを添加できる利益も提供し得る。
【0150】
本発明のゲル網状組織構成要素は、少なくとも1つの脂肪族両親媒性物質を含む。本明細書にて使用するとき、「脂肪族両親媒性物質」とは、疎水性末端基及び化合物を水溶性にしない(不混和性)親水性先端基を有する化合物を指し、化合物はまた、口腔組成物のpHにおいて、正味の中性電荷を有する。脂肪族両親媒性物質は、脂肪族アルコール、アルコキシル化脂肪族アルコール、脂肪族フェノール、アルコキシル化脂肪族フェノール、脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸アミド、脂肪族アミン、脂肪族アルキルアミドアルキルアミン、脂肪族アルコキシル化アミン、脂肪族カルバメート、脂肪族アミンオキシド、脂肪酸、アルコキシル化脂肪酸、脂肪族ジエステル、脂肪族ソルビタンエステル、脂肪族糖エステル、メチルグルコシドエステル、脂肪族グリコールエステル、モノ、ジ−、及びトリ−グリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、コレステロール、セラミド、脂肪族シリコーンワックス、脂肪族グルコースアミド、リン脂質、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。好適な脂肪族両親媒性物質には、セチルアルコールとステアリルアルコールとの組み合わせが挙げられる。
【0151】
ゲル網状組織は界面活性剤も含む。1つ以上の界面活性剤は、脂肪族両親媒性物質及び口腔担体と組み合わせて本発明のゲル網状組織を形成する。界面活性剤は一般に水溶性であり、又は溶媒若しくは口腔担体中に混和可能である。好適な界面活性剤としては、アニオン性、双極性、両性、カチオン性及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。一実施形態において、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、2つ以上の種類の界面活性剤、例えばアニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の組み合わせであってもよい。 ゲル網状組織はまた、水又は他の好適な溶媒を含む可能性がある。溶媒及び界面活性剤は、共に脂肪族両親媒性物質の膨潤に寄与する。言い換えると、これは、ゲル網状組織の形成及び安定性を導く。ゲル網状組織の形成に加えて、溶媒は、空気に曝される際に歯磨剤組成物が硬化するのを防ぎ、口内に湿った感触を与える。本明細書にて使用するとき、溶媒とは、本発明のゲル網状組織の形成において、水の代わりに又は水と組み合わせて使用することができる好適な溶媒を指す。本発明に好適な溶媒としては、水、食用多価アルコール、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、エリスリトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、それらの組み合わせが挙げられる。ソルビトール、グリセリン、水、及びそれらの組み合わせが好ましい溶媒である。
【0152】
ゲル網状組織を形成するためには、口腔組成物は、口腔組成物の0.05重量%〜約30重量%、好ましくは約0.1重量%〜約20重量%、及びより好ましくは約0.5重量%〜約10重量%の量で脂肪族両親媒性物質を含んでもよい。脂肪族両親媒性物質の量は、ゲル網状組織の形成及び口腔用処方の組成に基づいて選択される。例えば、少量の水を含有する口腔組成物は、約1%の脂肪族両親媒性物質を必要とし得るが、多量の水を含む口腔組成物は、6%以上の脂肪族両親媒性物質を必要とし得る。ゲル網状組織の形成に必要な界面活性剤及び溶媒の量は、選択された材料、ゲル網状組織の機能、及び脂肪族両親媒性物質の量に基づいて変動するであろう。ゲル網状組織相の一部としての界面活性剤は、一般に、口腔組成物の約0.01重量%〜約15重量%、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.3重量%〜約5重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、界面活性剤の希釈水溶液を利用する。一実施形態において、界面活性剤の量は、口腔組成物中に所望される発泡のレベルと、界面活性剤により生じる刺激とに基づき選択される。 溶媒は、本発明にしたがって脂肪族両親媒性物質及び界面活性剤と組み合わされた際に、ゲル網状組織を達成するのに好適な量で存在し得る。口腔組成物は、口腔組成物の少なくとも約0.05重量%の溶媒を含有し得る。溶媒は、口腔組成物中に、約0.1%〜約99%、約0.5%〜約95%、及び約1%〜約90%の量で存在してよい。
【0153】
保湿剤
保湿剤は、空気に曝される際に歯磨剤組成物が硬化するのを防ぎ、口に湿った感触を与えるのを補助することができる。保湿剤又は追加の溶媒が、口腔担体相に添加されてよい。本発明に好適な保湿剤としては、水、食用多価アルコール、例えば、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ソルビトール、グリセリン、水、及びそれらの組み合わせが、好ましい保湿剤である。保湿剤は、約0.1%〜約99%、約0.5%〜約95%、及び約1%〜約90%の量で存在してよい。
【0154】
界面活性剤
界面活性剤が、歯磨剤組成物に加えられてもよい。界面活性剤はまた、一般的に起泡剤とも称され、歯磨剤組成物の洗浄及び泡立ちを補助する。好適な界面活性剤は、広いpH範囲にわたって適度に安定で泡立つものである。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双性イオン性、カチオン性、又はこれらの混合物であってもよい。
【0155】
本明細書で有用なアニオン性界面活性剤の例としては、アルキルラジカルに8個〜20個の炭素原子を有するアルキルサルフェートの水溶性塩類(例えば、アルキル硫酸ナトリウム)並びに8個〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩類が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)及びココナツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムは、この種類のアニオン性界面活性剤の例である。他の好適なアニオン性界面活性剤の例は、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、タウレート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなサルコシネートである。アニオン性界面活性剤の混合物も使用できる。多数の好適なアニオン性界面活性剤が、Agricolaらの米国特許第3,959,458号(1976年5月25日発行)に開示されている。いくつかの実施形態では、口腔ケア組成物は、約0.025%〜約9%、いくつかの実施形態では約0.05%〜約5%、別の実施形態では約0.1%〜約1%の濃度でアニオン性界面活性剤を含む。
【0156】
別の好適な界面活性剤は、サルコシネート界面活性剤、イセチオネート界面活性剤及びタウレート界面活性剤からなる群より選択されるものである。本明細書で用いるのに好ましいのは、サルコシン酸ラウロイル、サルコシン酸ミリストイル、サルコシン酸パルミトイル、サルコシン酸ステアロイル、及びサルコシン酸オレオイルの、ナトリウム塩及びカリウム塩のような、これらの界面活性剤のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩である。サルコシン酸界面活性剤は、本発明の組成物中に、総組成物の約0.1重量%〜約2.5重量%、又は約0.5重量%〜約2重量%で存在してよい。
【0157】
本発明に有用なカチオン性界面活性剤には、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド;セチルピリジニウムクロリド;セチルトリメチルアンモニウムブロミド;ジ−イソブチルフェノキシエチル−ジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヤシアルキルトリメチルアンモニウムナイトライト;セチルピリジニウムフロリド等の、約8〜18個の炭素原子を含む1つの長アルキル鎖を有する脂肪族第4級アンモニウム化合物の誘導体が挙げられる。好ましい化合物は、Brinerらに付与された1970年10月20日の米国特許第3,535,421号に記載されているフッ化第4級アンモニウムであり、このフッ化第4級アンモニウムは洗剤特性を有する。特定のカチオン性界面活性剤はまた、本明細書に開示された組成物中で殺菌剤としても作用することができる。
【0158】
本発明の組成物に用いることができる非イオン性界面活性剤には、アルキレンオキシド基(本質的には親水性)と、本質的には脂肪族又はアルキル芳香族であってもよい有機疎水性化合物との縮合によって生成される化合物が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤の例としては、プルロニック(Pluronic)、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドとプロピレンオキシド及びエチレンジアミンの反応生成物との縮合から得られる生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、酸、及びエステル、長鎖第三級アミンオキシド、長鎖第三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシド、及びかかる物質の混合物が挙げられる。
【0159】
本発明で有用な双性イオン性合成界面活性剤としては、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウム化合物の誘導体が挙げられ、その脂肪族ラジカルは直鎖又は分枝鎖であることができ、その際脂肪族置換基の1つは約8〜約18個の炭素原子を含有し、1つは例えばカルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート又はホスホネートのようなアニオン性水溶性基を含有する。
【0160】
好適なベタイン界面活性剤はPolefkaらの米国特許第5,180,577号(1993年1月19日発行)に開示されている。典型的なアルキルジメチルベタインには、デシルベタイン又は2−(N−デシル−N,N−ジメチルアンモニオ)アセテート、ココベタイン又は2−(N−coc−N,N−ジメチルアンモニオ)アセテート、ミリスチルベタイン、パルミチルベタイン、ラウリルベタイン、セチルベタイン、セチルベタイン、ステアリルベタイン等が挙げられる。アミドベタインは、ココアミドエチルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン等により例示される。選択されるベタインは、好ましくはココアミドプロピルベタイン、より好ましくはラウラミドプロピルベタインである。
【0161】
沈降シリカは口腔組成物の泡立ちを低下させる傾向がある。対照的に、低い反応性を有する溶融シリカは泡立ちを阻害せず、又は沈降シリカほどには泡立ちを阻害しない。界面活性剤構成成分との相互作用の欠如は使用する界面活性剤の量に影響を与える場合があり、このことは次に他の変数に影響し得る。例えば、消費者の許容できる泡立ちを達成するのに必要な界面活性剤がより少量の場合、刺激性(SLSの公知の消費者の否定的側面)が低下する可能性があり、又は組成物のpHが低下し得、フッ化物吸収が向上し得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、高分子無機質表面活性剤(polymeric mineral surface active agent)が添加されて、これらの化合物の負の感覚を軽減する。高分子無機質表面活性剤は有機リン酸ポリマーであってもよく、これはいくつかの実施形態では、リン酸アルキルエステル若しくはその塩、エトキシル化リン酸アルキルエステル及びその塩、又はリン酸アルキルエステル若しくはその塩の混合物である。いくつかの実施形態では、高分子無機質表面活性剤は、ポリカルボキシレート若しくはポリホスフェート、又はGantrez等の高分子カルボキシレートのコポリマーであってもよい。
【0163】
いくつかの実施形態では、組成物は、溶融シリカを含有し、SLSを本質的に含有しなくてもよい。本質的に含有しない、とは、組成物の約.01重量%未満存在することを意味する。いくつかの実施形態では、組成物は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双極性界面活性剤、及びそれらの混合物からなる群より選択される、SLS以外の界面活性剤を更に含有してもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、キレート剤を更に含有してもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、例えばベタイン等の両性界面活性剤であってもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約80のPCRを有してもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、少なくとも約50%利用可能であってもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の3重量%未満の界面活性剤を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、過酸化物源及び/又は酵素を更に含有してもよい。いくつかの実施形態は、溶融シリカを含有する口腔組成物を対象の口腔に投与することによる、乾燥した口状態を処置する方法であってもよく、ここで組成物はラウリル硫酸ナトリウムを本質的に含有しない。
【0164】
使用方法
本発明は、歯を洗浄及び研磨するための方法にも関する。本明細書の使用方法は、対象の歯のエナメル質表面及び口腔粘膜に、本発明による口腔組成物を接触させることを含む。治療方法は、歯磨剤を用いたブラッシング、又は歯磨剤スラリー若しくは口内洗浄剤を用いるすすぎによる場合がある。他の方法には、局所口腔ジェル、マウススプレー、練り歯磨き、歯磨剤、歯磨きジェル、歯磨き粉、錠剤、歯肉下ジェル、泡状体、マウス、チューインガム、リップスティック、スポンジ、デンタルフロス、ペトロラタムゲル、若しくは入れ歯製品、又は他の形態を、対象の歯及び口腔粘膜と接触させることが挙げられる。実施形態に応じて、口腔組成物は練り歯磨きとしてほど頻繁に使用されてもよく、又はより少ない頻度で、例えば週に1回使用されてもよく、又は専門家により歯科予防処置用ペーストの形態で若しくは他の集中的な処置のために使用されてもよい。
【0165】
追加のデータ
図7〜13は、溶融シリカの材料特性、及び口腔ケア組成物の他の構成成分との融和性、及びその洗浄能力のより詳細なデータを提供する。
【0166】
図7(a)及び7(b)は、調合組成物と、スズ、亜鉛及びフッ化物の対応する融和性データである。図7(a)は、口腔ケア組成物、沈降シリカを含有する調合物A、及び溶融シリカを含有する調合物Bである。図7(b)は、調合物A及びBの両方の25℃及び40℃での2週間後、1ヶ月後及び2ヶ月後の%融和性として示される融和性データを示す。図7のデータは、溶融シリカ組成物がスズ、亜鉛、及びフッ化物と共に優れた安定性及び融和性を提供することを示す。
【0167】
組成物が25℃で2週間保管された後に約82%、85%、87又は90%を超える亜鉛利用可能性を有する、亜鉛塩を含有する口腔組成物を有することが所望され得る。消費者による使用に先だって82%、85%、87%又は90%の利用可能性が残留することが所望され得る。したがって、利用可能性は、使用に先だって測定され得る。使用に先だって、とは、製品が製造、包装、及び商店又は消費者に分配されているが、消費者が製品を使用する前のことを意味し得る。この期間中の保管状態及び温度は様々であろう。
【0168】
組成物が25℃で2週間保管された後に約88%、90%、91%、92%、93%又は94%を超えるフッ化物利用可能性を有する、フッ化物イオンを含有する口腔組成物を有することが所望され得る。使用に先だってフッ化物利用可能性が約88%、90%、91%、92%、93%、又は94%を超えて残留することも所望され得る。いくつかの製剤において、フッ化物利用可能性は、使用に先だって95%を超えて残留し得る。
【0169】
組成物が25℃で2週間保管された後に約55%、60%、65%、70%、75%、80%又は90%を超えるスズ融和性又は利用可能性を有する、スズ塩を含有する口腔組成物を有することが所望され得る。また、使用に先だってスズ融和性又は利用可能性が約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%又は90%を超えて残留することが所望され得る。いくつか組成物中のスズ利用可能性又は融和性は、少なくとも約92%であり得る。スズを含有する溶融シリカ製剤において、スズ融和性は一般に、類似の量の沈降シリカ及びスズを有する製剤よりも約20%〜約50%、約25%〜約45%、又は約30%〜約40%高いであろう。
【0170】
図8は、負荷の関数としてのスズ融和性を示す。沈降シリカの量が増大するほど、遊離又は生物学的に利用可能なスズの量が低下する。表は、沈降シリカ(Z−119)に対するスズ損失が、0.0081g/g Z−119(又は80ppm/1% Z−119負荷)であることを示す。対照的に、溶融シリカに対するスズ損失は、0.001g/g Tecosil 44CSS(又は10ppm/1% Tecosil 44CSS負荷)である。いくつかの実施形態では、溶融シリカに対するスズ損失は、表面積に応じて約5〜約50ppm/1%溶融シリカ負荷、約7〜約30ppm/1%溶融シリカ負荷、約8〜約20ppm/1%溶融シリカ負荷、又は約10〜約15ppm/1%溶融シリカ負荷である。
【0171】
図9(a)及び9(b)は、過酸化物含有組成物と融和性データである。図9(a)は、様々な沈降シリカ及び溶融シリカを含有する過酸化物含有組成物を示す。図9(b)は、組成物の40℃での初期、6日後、及び13日後の過酸化物融和性を示す。データは、過酸化物の沈降シリカと比較して優れた溶融シリカに対する融和性を示す。いくつかの実施形態では、過酸化物融和性は、40℃で約13日後、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約85%である。換言すれば、いくつかの実施形態では、40℃で約13日後、少なくとも約50%、60%、70%、又は85%の過酸化物又は酸化剤が残留し得る。
【0172】
試料の調製方法は、以下の通りである。18gの過酸化物ゲルベースをプラスチック容器内に移し、2gのシリカをスパチュラで徹底的に混合し、混合物のpHを測定し、混合物を等しい2つの部分に分割し、一方の部分を25℃、他方を40℃で配置し、試料を25℃及び40℃で安定チャンバ内に配置する。試料分析は、以下の通りである。過酸化物分析のために初期試料を採取する;5日目及び12日目に試料を安定チャンバから取り出し、1日間平衡化させる;0.2gの試料を各混合物から除去し、残りの試料を安定チャンバ内に戻す;過酸化物分析を以下のように行う。0.2000g(+/−0.0200g)の過酸化物ゲルを250mLのプラスチックビーカー内に秤量する;撹拌棒、100mLの0.04N H2SO4を加え、パラフィンで覆い、少なくとも10分間撹拌し;25mLの10% KI溶液と3滴のNH4−モリブデン酸塩を加え、更に3〜20分撹拌し;0.1N Na−チオ硫酸塩を用いて自動滴定により分析する。融和性は、40℃での13日後の過酸化物パーセントを初期過酸化物パーセントで割った後、100をかけたものとして定義される。当業者には40℃で配置された製品が長い寿命を示すことが公知である。即ち、例えば40℃での1ヶ月は、おおよそ室温での8ヶ月に近似する。
【0173】
図10(a)は、溶融シリカ及び過酸化物を含有する口腔ケア組成物である調合物A〜Eを示す。図10(b)は、溶融シリカを含有するが過酸化物を含有しない調合物(調合物F)、及び溶融シリカも過酸化物も含有しない調合物(Crest Cavity Protection Toothpaste)と比較した、溶融シリカ及び過酸化物を含有する図10(a)の2つの組成物に関する所定の数のブラシストローク後のウシエナメル質標本の白色度(ΔL)における変化を示す。データは、溶融シリカと過酸化物との組み合わせが優れた洗浄及びホワイトニングを提供することを示す。いくつかの実施形態において、ΔLは、50ストロークで約4.5超、100ストロークで約6.0超、200ストロークで約9.0超、又は400ストロークで約15.0超であり得る。いくつかの実施形態では、ΔLは、Crest Cavity Protection Toothpasteよりも約50%〜約100%大きい場合がある。方法は、以下の通りである。G.K.Stookeyら、J.Dental Res、61,1236〜9,1982に記載されている従来のPCRプロトコル毎にウシエナメル質の基質を装着及び着色する。6チップのグループを各処置脚に関して分割し、各グループは、ほぼ同一のベースラインL値を有する。処置ペーストの1:3スラリーを作製し、着色したウシエナメル質基質を50、100、200、及び400ストロークブラッシングし、ブラッシング中150グラムの較正した力を付与する。各ストローク数でブラッシングした後、基質を画像化し、L値に関して分析する。L値の変化を以下のように計算し、LSDを用いて統計的に比較する。ΔL=Lブラッシング後−Lブラッシング前
図11(a)は、沈降シリカ又は溶融シリカを含有する歯磨剤組成物の調合物を示し、図11(b)は、対応する消費者知覚データを示す。9人の対象の間で消費者知覚試験を行い、対象らは、各製品で2回ブラッシングし、香味提示及び口感触に関する質問に対するフィードバックを記述式質問票により提供した。対象は、製品の使用中、使用直後、及び使用の15分後における対象の体験に関するフィードバックを提供するよう要求された。図11(b)に示すように、一般に、溶融シリカを含有する組成物は、調合物A中に使用されている沈降シリカと比較した際、優れた香味強度、気分そう快、ツルツルした歯の感触、及び清潔な口を提供する。
【0174】
図12は、溶融シリカを含有する口腔ケア組成物の更なる実施例調合物を示す。調合物は、ゲル網状組織を含有する組成物、溶融シリカと沈降シリカ及び炭酸カルシウムとの組み合わせを含有する組成物、SLSを含有しない組成物、並びに歯科予防処置用ペーストとして使用され得る組成物、又は非日常的に使用される組成物を含む。
【0175】
図13(a)は、フッ化ナトリウムベースの組成物を示し、ここで調合物A及びBは、沈降シリカを従来の増粘剤と共に含み、調合物C及びDは、溶融シリカを従来の増粘剤と共に含み、調合物E及びFは、溶融シリカをゲル網状組織と共に含む。図13(b)は、図13(a)のフッ化ナトリウムベースの組成物に関するRDA及びPCR値の表であり、溶融シリカの使用が組成物の洗浄能力を向上させ、ゲル網状組織の使用が組成物の洗浄能力を更により向上させ、また同時に全部がなお許容できる研磨性を有することを示す。図13(c)は、図13(a)と同様の実施形態におけるフッ化第1スズベースの組成物を示す。図13(d)は、図13(c)の組成物に関する対応するRDA値を示し、スズの使用が磨耗を低下させる場合があることを示し、スズ調合物による歯の強化の可能性を示す。
【0176】
非限定的実施例
次の実施例に示される歯磨剤組成物は、本発明の歯磨剤組成物の具体的な実施形態を説明するものであるが、これらに限定することを意図するものではない。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者は、他の修正を実行することができる。
【実施例】
【0177】
実施例I.A〜Dは、溶融シリカを含有する典型的な口腔組成物である。調合物Bは、溶融シリカと沈降シリカとの組み合わせ、調合物Dは、溶融シリカと炭酸カルシウムとの組み合わせを示す。
【表1】

【0178】
実施例II.A〜Fは、溶融シリカとカチオン性抗微生物剤とを含有する典型的な口腔組成物である。
【表2】

【0179】
本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく制限されるものとして理解すべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図している。
【0180】
「発明を実施するための形態」で引用した全ての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に関して先行技術であることを容認するものとして解釈すべきではない。この文書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれる文献における用語のいずれかの意味又は定義と対立する範囲については、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義を適用するものとする。
【0181】
本発明の特定の実施形態が説明及び記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を行い得ることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範疇にあるそのようなすべての変更及び修正は、添付の「特許請求の範囲」で網羅することとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融シリカ研磨剤及び経口的に許容できる担体を含む口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記溶融シリカ研磨剤のシリカの割合が97重量%を超える、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記溶融シリカ研磨剤が3000強度/g未満のシラノール密度を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記溶融シリカ研磨剤が9m/g未満のBET表面積を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記溶融シリカ研磨剤が少なくとも0.45g/mLの嵩密度を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶融シリカ研磨剤が6を超えるMohs硬度を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記溶融シリカ研磨剤が70g/100g未満の吸水率を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記溶融シリカ研磨剤が70mL/100g未満の吸油率を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
抗結石剤、抗う食剤、抗菌剤、抗歯垢剤、抗歯肉炎剤、抗侵食剤、抗悪臭剤、抗炎症剤、抗過敏症剤、又はそれらの混合物からなる群より選択される1つ以上の活性物質を更に含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
スズ源、キレート剤、酸化剤、香味剤、フッ化物イオン源、ゲル網状組織、又は材料の組み合わせを更に含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記溶融シリカ研磨剤が3〜15ミクロンの中央粒径を有し、90%の前記溶融シリカ研磨剤が30ミクロン以下の粒径を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも25%の前記溶融シリカ研磨剤粒子が球状である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記溶融シリカが0.9ミクロン〜5.0ミクロンの中央粒径を有する、請求項1〜10及び12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記溶融シリカが少なくとも10ミクロンの中央粒径を有し、前記組成物が少なくとも100のPCRを有する、請求項1〜10及び12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物を使用者の歯に適用することを含む、歯のエナメル質の洗浄及び研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図6I】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図13d】
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【公表番号】特表2012−509353(P2012−509353A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537730(P2011−537730)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/065836
【国際公開番号】WO2010/068474
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】