説明

溶融加工可能なポリアミド組成物を調製する方法

本発明は、カプロラクタムモノマーを、マグネシウムラクタマート及びマグネシウムラクタマート形成性化合物からなる群から選択されるアニオン重合触媒及びアシルラクタムと接触させること、モノマーを重合すること、並びに得られるポリラクタムをプロトン性化合物と接触させることによる、溶融加工可能なポリラクタムを調製する方法に関する。得られるポリラクタムは良好な溶融安定性及び低い分岐度を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、カプロラクタムモノマーをアニオン重合触媒及び活性化剤と接触させること、前記モノマーを得られるポリラクタムの溶融温度よりも高い温度において無水条件下で重合すること、並びに得られるポリラクタムを溶融状態又は固体形態でプロトン性化合物と接触させることによる、溶融加工可能なポリラクタムを調製する方法に関する。
【0002】
そのような方法は、ドイツ国特許DE−10118453から知られている。この既知の方法では、乾燥されたラクタムモノマーを最初に融解し、次いでアニオン重合触媒と接触させ、続いて溶融状態で重合する。その実施例では、270℃の重合温度が適用されている。重合後、プロトン性化合物が触媒を不活性化するために溶融物に加えられる。その後、ポリアミドはさらなる目的のために顆粒化することもできるし、成形加工品の製造のためにそのまま使用することもできる。あるいは、重合から得られたポリアミドを最初に顆粒化し、次いでプロトン性化合物と接触させ、再び融解させて、押出し成形する。この既知の方法におけるラクタムモノマーとしては、ラクタム−6(すなわち、カプロラクタム)を含めて、すべての既知のラクタムモノマーを考慮することができる。しかしながら、すべての実施例はラクタム−12に関するものである。この既知の方法に好適な触媒は、文献に記載の触媒及び触媒系であると述べられており、これらには、ナトリウムラクタマート及びマグネシウムラクタマート等の金属ラクタマート、及びそれぞれのラクタマート形成性化合物が含まれる。触媒としては、主に、ラクタムに溶解した市販のナトリウムラクタマートを使用すると述べられている。このことはまた、記載された実施例における場合でも同様である。好適な活性化剤には、アシル化ラクタム、イソシアナート及びカルボジイミドが含まれると述べられている。実施例において実際に適用された系が独国特許公開DE−19715679−A1により示されているが、その特許出願には、カルボジイミド、イソシアナート及びジイソシアナートが活性化剤として記載され、また、触媒として主にナトリウムラクタマートが記載されているにすぎない。プロトン性化合物としては、酸性度定数pKaが約14未満である化合物が述べられている。この既知の方法によって調製されるポリアミドは、ポリアミドを再融解させたときの粘度低下が小さいことによって特徴づけられる、特に良好な溶融安定性を有すると報告されている。
【0003】
ナトリウムラクタマートと、イソシアナート活性化剤又はカルボジイミド活性化剤との組合せをカプロラクタムの重合に使用するこの既知の方法の欠点は、得られるポリカプロラクタムが大きい分岐度を有するということである。この分岐により、既知の方法を用いて得られるポリラクタムは、繊維の溶融紡糸及び薄いフィルムの押し出しなどの重要なプロセスにおいてゲル粒子及び不規則性の形成がもたらされる。このことが、既知のポリラクタムを繊維及びフィルム等の用途への使用に対して魅力的のないものにしている。
【0004】
本発明の目的は、既知の方法によって得られるポリラクタムよりもはるかに低い分岐度を有する溶融加工可能なポリカプロラクタムを調製するための方法を提供することである。
【0005】
この目的は、アニオン重合触媒が、マグネシウムラクタマート及びマグネシウムラクタマート形成性化合物からなる群から選択され、活性化剤がアシルアミドである方法を用いて達成される。
【0006】
驚くべきことに、触媒/活性化剤の組合せとしてマグネシウムラクタマート又はマグネシウムラクタマート形成性化合物/アシルアミドを適用する本発明の方法を用いて得られるポリカプロラクタムは、触媒/活性化剤の組合せとしてナトリウムラクタマート/イソシアナート又はカルボジイミドを適用する既知の方法を用いて得られるポリラクタムよりもはるかに低い分岐度を有する。そのうえ、本発明による触媒/活性化剤の組合せを用いる方法はまた、マグネシウムラクタマート又はマグネシウムラクタマート形成性化合物形成性化合物/イソシアナート又はカルボジイミド、あるいはナトリウムラクタマート/アシルアミドのいずれかの触媒/活性化剤の組合せを適用する方法よりも低い分岐度をもたらす。
【0007】
更に、得られるポリラクタムの分子量又は相対粘度が、アシルラクタムの量により、より良好に調整される。アシルラクタムの量が多くなると得られるポリラクタムの分子量がより低くなり、アシルラクタムの量が少なくなると得られるポリラクタムの分子量がより大きくなる。そのうえ、重合は、溶融重合として、すなわち、ポリラクタムの溶融温度よりも高い温度で行うが、最大転化度におけるポリラクタムの相対粘度は、ラクタムを重合する温度に対する依存性が低い。このことは、最大転化度におけるポリラクタムの相対粘度が、重合が行う温度に対してはるかに大きく依存する加水分解重合とは対照的である。
【0008】
本出願に関連して、溶融加工可能なポリラクタムは、調製後、揮発性成分を含まないか又は実質的に含まないものとすることができ、また、溶融加工によってポリアミドの配合物(コンパウンド)のような製品に加工することができ、及び/又は、繊維、フィルム及び成形品のような成形加工品に成形することができるポリラクタムであることが理解される。
【0009】
本出願に関連して、無水条件は、水分含有量が1000ppm未満であるラクタムモノマー、又は、場合により使用される、水分含有量が100ppm未満である周囲の気体雰囲気で表されることが理解される。これらの無水条件は、少量の触媒を使用する場合にはより重要である。無水条件でない場合には、何らかの重合が仮にも生じたとしても、触媒の速すぎる失活、及び非常に長い重合時間をもたらし得るからである。多量の触媒が用いられる場合、水分含有量はそれほど重要ではない。ラクタムモノマーは水分含有量が500ppm未満であることが好ましく、300ppm未満であることがより好ましく、150ppm未満であることが更に好ましい。場合により使用する周囲の気体雰囲気は20ppm未満の水分を含むことが好ましく、10ppm未満の水分を含むことが更に好ましい。水分含有量がより低いことの利点は、重合が、転化速度の点で、また、得られたポリアミドの相対的な粘度の点で、より大きな再現性を有するということである。
【0010】
マグネシウムラクタマート形成性化合物は、カプロラクタムモノマーと接触したときに反応して、マグネシウムラクタマートを形成する任意のマグネシウム化合物であり得る。形成されるマグネシウムラクタマートにおけるラクタムは、典型的にはカプロラクタムである。
【0011】
本発明の方法で使用することができる好適なマグネシウムラクタマート形成性化合物には、有機マグネシウムハライド、ジ有機マグネシウム化合物、アミドマグネシウムハライド及びマグネシウムビスアミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
有機マグネシウムハライドは、ハロゲン化マグネシウムに結合した炭化水素基を含むとされるハライド化合物であり、この場合、炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルカリール基であり得る。ハライドは、F、Cl、Br又はIであり得るが、好ましくは、Cl、Br又はIであり、より好ましくはBrである。ハライドは、F、Cl、Br又はIであり得る。
【0013】
ジ有機マグネシウム化合物は、2つの炭化水素基がハロゲン化マグネシウムに結合している化合物であり、この場合、炭化水素基は両方又はどちらかが、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルカリール基であり得る。
【0014】
アミドマグネシウムハライドは、アミドイオン(すなわち、脱プロトン化したアミド)とハロゲン化マグネシウムとの間にイオン性の結合を有するとされるハロゲン化マグネシウム化合物である。マグネシウムハライドは、有機マグネシウムハライドとアミドとの反応生成物であり得る。アミドマグネシウムハライドを調製することができる好適なアミドとしては、非環状アミド及び環状アミドが挙げられる。好適な環状アミドには、例えば、環状ヘキサメチレンアジパミド及び様々なラクタムが含まれる。好適なラクタムには、例えば、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリロラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム及びドデカノラクタムがある。
【0015】
マグネシウムビスアミドは、マグネシウムと結合した2つのアミド基を有する化合物である。これらの化合物は、例えば、ジ有機マグネシウム化合物と、例えばラクタムとを反応させることによって調製することができる。マグネシウムビスアミドを調製することができる好適なアミドは、アミドマグネシウムハライドについて上記で言及されたのと同様である。
【0016】
マグネシウムラクタマートにおけるラクタムは、すべての既知のラクタムモノマーから選択することができる。好適なラクタマートは、例えば、5個〜12個のC原子を有するラクタムモノマーのマグネシウムラクタマートである。好ましくは、マグネシウムラクタマートはカプロラクタムのラクタマートである。カプロラクタムは、本発明の方法で重合するモノマーと一致するからである。
【0017】
マグネシウムラクタマート及びマグネシウムラクタマート形成性化合物からなる群から選択されるアニオン重合触媒は、有機マグネシウムハライド、ジ有機マグネシウム化合物、アミドマグネシウムハライド及びマグネシウムビスアミドからなる群から選択されることが好ましくい。
【0018】
マグネシウム化合物からなる前記群から選択される触媒を本発明による方法で使用することの利点は、それらはグルニャール化合物から簡便な方法で調製することができ、また、より短い時間でより大きい転化度を伴い、かつより低い環状ダイマー含有量をもたらす速い重合を確実にできるということである。好適な有機マグネシウムハライドとしては、例えば、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムヨージド、イソプロピルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムクロリド、n−プロピルマグネシウムヨージド、第三級ブチルマグネシウムブロミド、iso−ブチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムヨージド、シクロヘキシルマグネシウムブロミド、シクロヘキシルマグネシウムクロリド、シクロヘキシルマグネシウムヨージド、2−エチルヘキシルマグネシウムブロミド、2−エチルヘキシルマグネシウムクロリド、2−エチルヘキシルマグネシウムヨージド、n−オクタデシルマグネシウムブロミド、n−オクタデシルマグネシウムクロリド、n−オクタデシルマグネシウムヨージド、ベンジルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムヨージド、フェニルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムヨージド、メシチルマグネシウムブロミド、メシチルマグネシウムクロリド、メシチルマグネシウムヨージド、ナフチルマグネシウムブロミド、ナフチルマグネシウムクロリド、ナフチルマグネシウムヨージドがある。
【0019】
好適なジ有機マグネシウム化合物は、例えば、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジベンジルマグネシウムである。好適には、ジ有機マグネシウム化合物は、ラクタムマグネシウムハライドを形成させるために、適切なハロゲン化マグネシウムと、ラクタムの存在下でラクタムの融点よりも高い温度で接触させる。
【0020】
好適なアミドマグネシウムハライドは、例えば、環状ヘキサメチレンアジパミド、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリロラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム及びドデカノラクタムから調製されるアミドマグネシウムハライドである。アミドマグネシウムハライドは、有機マグネシウムハライドとアミドとの反応生成物であり得る。
【0021】
好ましくは、アミドマグネシウムハライドはラクタムマグネシウムハライドである。ラクタムマグネシウムハライドは、例えば、ラクタムマグネシウムヨージド、ラクタムマグネシウムブロミド、ラクタムマグネシウムクロリドである。
【0022】
ラクタムは、重合するラクタムと同じであることがより好ましい。その利点は、重合する組成物が付加的な成分を含有しないということである。
【0023】
ラクタムマグネシウムハライドは、有機マグネシウムハライドを、重合することになるラクタム又はラクタム混合物と、ラクタムの融点よりも高い温度で接触させることによってその場で調製することができる。このことは、ラクタムマグネシウムハライドを調製するための別個の調製ステップが必要とされないという利点を有する。
【0024】
使用することができる好適なマグネシウムビスアミドは、マグネシウムに結合した、上記の群からの2つのアミド及び/又はラクタムを有するマグネシウム化合物である。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、触媒は有機マグネシウムハライド又はアミドマグネシウムハライドである。このことは、より大きい重合速度が得られ、これにより使用する触媒をより低濃度とすることが可能であるという利点を有する。
【0026】
より好ましくは、有機マグネシウムハライド又はアミドマグネシウムハライドは有機マグネシウムブロミド又はアミドマグネシウムブロミドである。その利点は、アルキルマグネシウムブロミド化合物(グリニャール)が容易に入手できることである。
【0027】
また、より好ましくは、有機マグネシウムハライドは低級アルキル基(すなわち、メチル、エチル、プロピル及びブチル)を有する。その利点は、そのような有機マグネシウムハライドがラクタムと反応したときに揮発性アルカンが形成され、これは重合時又は重合後に溶融物からより容易に除去されるということである。
【0028】
触媒は、一般に、ラクタムモノマーの重量に対して0.001重量%〜5重量%の量で使用される。より大きい量とすることができるが、触媒量が大きくなるとともに、転化率の増大が一般には頭打ちになるので効果的ではない。
【0029】
好ましくは、触媒量はラクタムモノマーの重量に対して0.01重量%〜2重量%であり、より好ましくは0.025重量%〜1重量%である。触媒の最小量をより大きくすることの利点は、重合速度がより大きくなるということにある。使用する触媒の最大量をより少くすることの利点は、得られる組成物における残存触媒含有量がより少なくなり、これにより、触媒を不活性化するため及び溶融安定性が改善された溶融加工可能なポリラクタムを得るために添加するプロトン性化合物の量をより少なくすることが可能になるということである。改善された溶融安定性は、ポリラクタムが、長時間高温に保たれたときに、その固有粘度を、より長い時間維持すること、又は同じ時間において小さい変化だけを伴って保持することで特徴づけられる。
【0030】
最適な触媒量は、原理的には、ポリラクタムを調製する当業者によって、体系的な研究を通して実験的に決定することができる。
【0031】
本発明による方法において使用することができる好適なアシルラクタム活性化剤は、例えば、N−アセチルカプロラクタム、アジポイルビスカプロラクタム、イソフタロイルビスカプロラクタム、テレフタロイルビスカプロラクタム、n−プロピオニルカプロラクタム及びn−ブチルカプロラクタムである。アシルラクタムは、ラクタムとカルボン酸塩化物又はカルボン酸無水物との反応の反応生成物として得ることができる。前記調製において形成される塩酸又はカルボン酸は好ましくは前記反応から除去される。
【0032】
より好ましくは、活性化剤はN−アセチルカプロラクタムである。
【0033】
活性化剤は、一般には重合するラクタムの重量に対して0.05重量%〜5重量%、好ましくは0.1重量%〜3重量%の量で使用される。活性化剤は、より好ましくは、重合するラクタムの重量に対して0.2重量%〜2重量%の量で使用される。最少量が大きくなると、より速い重合がもたらされ、一方、最大量が少なくなると、より大きい分子量を有するポリラクタムが得られる。
【0034】
活性化剤の最適な量は、原理的に、ポリラクタムを調製する当業者によって、体系的な研究を通して実験的に決定することができる。
【0035】
本発明による方法において使用することができるプロトン性化合物は、原理的には、触媒を不活性化することができる任意のプロトン性化合物であり得る。好適なプロトン性化合物は、酸性度定数pKaが約14未満である化合物である。そのようなプロトン性化合物の例として、カルボン酸、並びにリン及びホウ素の酸がある。
【0036】
本発明による方法においては、例えば、脂肪族アルコール(pKaが約15.5であるメチルアルコール、pKaが約15.9であるエチルアルコール、及びpKaが18であるtert−ブタノール等)及び水(15.7のpKa)のような、pKaが14よりも大きいプロトン性化合物も使用することができる。好適なプロトン性化合物にはまた、結晶水を含有する化合物、及び水形成性の金属水酸化物が含まれる。本明細書では、水形成金属水酸化物は、金属水酸化物がポリラクタムと接触する温度において水を放出する金属水酸化物として定義される。放出される水は、触媒を不活性化する化学種であると推定される。したがって、金属水酸化物は、この適用の目的においては、水と同じpKa(すなわち15.7)を有するとみなされる。水の放出を通して、金属水酸化物は、典型的には金属酸化物に転化される。この金属酸化物は、一般に、ポリラクタムに対して無害である。好適な金属水酸化物は、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムである。
【0037】
好ましくは、プロトン性化合物は水又は水形成性金属水酸化物である。水又は水形成性金属水酸化物を本発明による方法におけるプロトン性化合物として使用することの利点は、高温でのポリラクタムの酸化安定性に対して大きな影響を与えることなく、触媒に対してより大過剰でプロトン性化合物を使用することができるということである。さらなる利点は、ポリアミドが、例えば、コンパウンディングステップ又は成形ステップにおいてポリアミドが加工される前に乾燥ステップに供されたときに、乾燥ステップにおいてポリアミドから除去される水が、揮発性有機化合物によって汚染されないということである。そのような汚染は、低分子量の有機化合物、例えば低分子量のアルコール又はカルボン酸を不活性化剤として使用した場合に考えられる。
【0038】
最も好ましくは、プロトン性化合物は水である。水は、ポリアミドと相溶し得る化合物であり、従来の塊状溶融重合プロセスによって得られるナイロンにおいて構成成分として一般に存在する。水を不活性化剤として使用することの利点は、それにより、さらなる外部物質の持ち込みが回避されるということである。さらなる利点は、水は、非常に効果的な、ほとんど即時的な不活性化をもたらす非常に短い反応時間を有するということである。また、水は、例えば、その後の抽出ステップの間に固化ポリラクタムを顆粒の形態で水に浸漬することによって固化ポリラクタムに加えることができ、そのようなステップにより、高温での別個の添加ステップが排除される。更に、本発明による方法であって触媒が水で不活性化される方法によって得られるポリラクタムは、非常に良好な溶融安定性を有しており、そのようなポリラクタムは、カプロラクタムの抽出及びポリラクタムの乾燥の間、より長い期間、高い温度で、カプロラクタムモノマーの再生を伴うことなく維持することができる。
【0039】
本発明による方法におけるカプロラクタムモノマーの重合は、カプロラクタムとの共重合が可能な成分の存在下で行うことができる。これにより、カプロラクタム及び共重合可能な成分を含むポリラクタムが形成される。ここで、カプロラクタム及び共重合が可能な成分は、共に、重合可能な成分として定義される。
【0040】
カプロラクタムとの共重合が可能である好適な成分には、例えば、他のラクタムモノマー、及びアシルラクタム基で変性されたヒドロキシド基を有するポリオールが含まれる。
【0041】
カプロラクタムと共重合することができる好適なラクタムモノマーには、C5−ラクタム、及びラクタム環中に少なくとも7個の炭素原子を有するラクタムモノマー、例えばエナントラクタム、カプリロラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカノラクタム、並びにそれらの混合物が含まれる。
【0042】
好ましくは、カプロラクタムと共重合させるラクタムモノマーはドデカノラクタムである。本発明による、カプロラクタムをドデカノラクタムと共重合させる方法は、非晶質ポリラクタムを調製するために好適に適用され、非晶質ポリラクタムを漁業用糸及びフィルムにおいて用いたときに、透明性が改善され、及び/又は、その表面の斑点形成がより少なくなる。
【0043】
カプロラクタムモノマーと、アシルラクタム基で変性されたヒドロキシド基を有するポリオールとの共重合は、ナイロンブロック共重合体を調製するために好適に適用される。本発明の方法で使用する、アシルラクタム基で変性することができるヒドロキシド基を有する好適なポリオールには、ポリエステルポリオール(ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート及びそれらの混合物等)、ポリグリコールエーテル(ポリエチレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル及びポリブチレングリコールエーテル、並びに、ポリプロピレンエチレンエーテル等のポリエーテルの共重合体等)等のポリエーテルポリオール、が含まれる。
【0044】
ポリオールのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは−20℃以下であり、更により好ましくは−40℃以下である。より低いTgを有するアシルラクタム変性ポリオールをカプロラクタムと共重合させる本発明による方法の利点は、得られるポリラクタムが、改善された低温柔軟性及び靭性を有するということである。共重合体化合物の機械的特性は、組成物におけるポリアミド及びポリオール骨格の比率に依存する。ポリアミドの量が大きくなると、より剛直な共重合体が得られ、一方、例えばポリエーテルの量が大きくなると、より強靱な共重合体が得られる。
【0045】
本発明による方法で使用することができる共重合可能な成分は、アニオン重合に適した性質を与える。そのような共重合可能な成分は、一般に、少ない量の水、共重合可能な成分の重量に対して典型的には0.1重量%未満の水を含む。より多い量を使用することができるが、これには、一般に、より多い触媒量が必要とされる。
【0046】
共重合可能な成分における水分量は、共重合可能な成分の重量に対して、好ましくは0.05重量%未満であり、より好ましくは0.03重量%未満であり、最も好ましくは0.015重量%未満である。重合反応の転化速度の点で、また、最大転化率で得られるポリラクタムの分子量又は相対粘度の点で、より再現性のある結果が得られることから、水分量はより低いことが好ましい。
【0047】
本発明による方法の好ましい実施形態において、カプロラクタムは、重合可能な成分の総重量に対して好ましくは50重量%、より好ましくは75重量%以上、更により好ましくは90重量%以上を構成する。最も好ましくは、重合可能な成分はラクタムのみからなるである。重合可能な成分の総重量に対するカプロラクタムの重量%が大きいほど、最大転化度でのカプロラクタムの転化率が大きくなる。
【0048】
本発明による方法のさらなる変形態様において、重合ステップ又は触媒不活性化ステップは、少なくとも1つの添加剤の存在下で行われる。この変形態様においては、カプロラクタムの重合の前に、カプロラクタムの重合中に若しくはカプロラクタムの重合の直後に、又は触媒不活性化ステップの間に、少なくとも1つの添加剤が添加され、これによりポリラクタム及び少なくとも1つの添加剤を含むポリラクタム配合物が形成される。本発明に関連して、「カプロラクタムの重合の直後」については、添加剤が触媒不活性化ステップの前のポリラクタム溶融物に添加されることであることが理解される。この変形態様の利点は、配合物を調製するための別個のコンパウンディングステップを省略することができるということである。本発明の方法のさらなる利点は、大規模な製造においても、重合を比較的小型の反応装置で重合を行うことができ、これにより、異なる添加剤を含む種々のポリラクタム配合物の少量のバッチ反応物の調製、及び異なる配合物の間での迅速な移行が可能になるということである。このことは、いわゆるVKカラムでの加水分解重合を伴う従来の塊状溶融重合プロセスとは対照的である。また、異なる配合物の間での移行に起因する中間品質の物質の喪失を減少させることができる。
【0049】
カプロラクタムの実質的な重合を行う前にカプロラクタムの溶融物に対して添加剤を添加することは、触媒又は重合プロセスを妨害しないか、又はほとんど妨害しない添加剤であって、高粘度のポリマー溶融物に添加されて高剪断力のもとで混合したときに機械的分解を受けやすい添加剤については、特に好都合である。別の利点は、添加剤を完全にぬらすことができるということである。更に、そのような方法によれば、高分子量ポリラクタムにおける添加剤の大きい充填度を、従来のコンパウンディングプロセスにおけるポリアミドへの添加剤の添加の場合よりも容易に達成することができる。また、繊維の破壊を制限しながら、ガラス繊維含有量をより大きくすることができ、これは従来のコンパウンディングプロセスでは達成することができない。
【0050】
添加剤が触媒又は重合プロセスと相互作用するか否か、又は、限定された許容し得る程度で相互作用するか否かは、例えば、添加剤の存在下又は非存在下での方法についての重合速度、最大転化度及び溶融粘度の比較により、当業者によって実験的に簡便に決定することができる。
【0051】
添加剤はカプロラクタムのフレーク中に既に存在させてもよいし、溶融ラクタムと混合するか、重合装置に一緒に加えてもよい。
【0052】
添加剤は、ポリマー溶融物において良好に分散されることを必要とするため、ポリマー溶融物に添加されるのが好ましい。
【0053】
触媒と相互反応し得る添加剤は、好ましくは重合が終了したとき、例えば、プロトン性化合物の添加の直前又は添加と同時に添加される。
【0054】
本発明による方法のこの変形態様において使用することができる好適な添加剤には、例えば、分散された補強材[ガラス繊維のチョップドファイバー又はミルドファイバー、炭素繊維のチョップドファイバー又はミルドファイバー、ナノフィラー、粘土、ケイ灰石及びマイカ等]、難燃剤、フィラー[炭酸カルシウム等]、顔料、加工助剤[離型剤等]、安定化剤[酸化防止剤及びUV安定化剤等]、可塑剤、耐衝撃性改良剤、キャリアポリマー等が含まれる。分散された補強材とは対照的に、連続した補強材(continuous reinforcing materials)は、組成物のさらなる溶融加工を妨げるので、明らかに除かれる。
【0055】
添加剤の量は、形成された配合物の体積に対して、1体積%又は2体積%又は更に少ない量などの非常に少ない量から、70体積%又は80体積%又はそれ以上まで変化させることができる。
【0056】
補強剤、難燃剤及びフィラーからなる群から選択される添加剤の量は、本発明の方法で形成されるポリラクタムの重量に対して0.5重量%〜150重量%が好適である。その量は、本発明の方法で形成されるポリラクタムの重量に対して好ましくは5重量%〜100重量%であり、より好ましくは20重量%〜50重量%である。
【0057】
顔料、加工助剤、安定化剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤及びキャリアポリマーからなる群から選択される添加剤の量は、本発明の方法で形成されるポリラクタムの重量に対して0.1重量%〜25重量%が好適である。その量は、本発明の方法で形成されるポリラクタムの重量に対して好ましくは0.2重量%〜10重量%であり、より好ましくは0.5重量%〜5重量%である。
【0058】
本発明による方法における重合ステップは、得られるポリラクタムの溶融温度よりも高い温度で行う。このような重合は、塊状溶融重合とも呼ばれる。
【0059】
本発明による方法における塊状溶融重合を行う温度は、ポリラクタムの溶融温度よりも高い。典型的には、この温度は前記溶融温度よりも5℃〜80℃高い。この温度は、ポリラクタムの溶融温度よりも好ましくは5℃〜50℃高く、より好ましくは5℃〜30℃高い。アニオン重合を行う温度とポリラクタムの溶融温度との差がより小さいことの利点は、重合の最大転化度において、形成されるポリラクタム中の未反応カプロラクタム含有量がより低いということである。
【0060】
そのようなプロセスにおいて、カプロラクタム、触媒、活性化剤、並びに適用可能な場合には、共重合可能な成分及び添加剤は、まとめて、これらの構成要素を混合する反応装置に、それぞれ別個の流れとして計量しながら供給し、これらの構成要素をまとめて計量して混合装置から反応装置に供給することができる。好ましくは、カプロラクタム、触媒、活性化剤及び共重合可能な成分は液体形態で計量する。この目的のために、カプロラクタムは、溶融された形態でなければならず、すなわち、カプロラクタムの溶融温度(melting point)よりも高い温度でなければならない。触媒及び/又は活性化剤もまた、溶融物として、あるいは、ラクタムにおける触媒及び/又は活性化剤のぞれぞれの別個の溶液として加えることができる。添加剤は、この構成要素の性質に応じて、固体形態で、又は液体形態で、又は気体として計量して反応装置に供給することができる。計量して混合装置に供給する場合、添加剤は、好ましくは、固体形態又は液体形態で加える。添加剤が、高温すなわち重合温度において固体である場合、例えば、カプロラクタムにおける分散物として加えることができる。
【0061】
計量して反応装置に供給する前に、構成要素を最初に混合装置に加える場合、構成要素を前記混合装置で混合する温度は、好ましくは、ラクタムの溶融温度とポリラクタムの溶融温度との間である。このことは、重合の転化速度が、混合装置において重合が既に起こっている場合でも、比較的低く保持されるという利点を有する。
【0062】
混合装置において構成要素を混合する温度は、ラクタムの溶融温度よりも5℃〜50℃高いことが好ましく、5℃〜25℃高いことがより好ましい。混合温度がより低いことの利点は、転化速度が更により低くなるということである。
【0063】
塊状溶融重合が完了した後、ポリマー中の触媒は、例えば、プロトン性化合物をポリラクタム溶融物に加えることによって、又は、ポリラクタム溶融物を冷却してポリラクタムを固化させ、固化したポリラクタムを顆粒化し、顆粒化したポリラクタムを、水に浸漬すること又は顆粒化したポリラクタムを水で抽出すること等により水と接触させることによって、不活性化することができる。
【0064】
本発明の塊状溶融重合プロセスは、ラクタムの溶融塊状重合に適している任意のタイプの重合装置で行うことができる。好適な重合装置の例としては、例えば、撹拌型タンク反応装置(連続撹拌型タンク反応装置を含む)、フロースルー式反応装置[例えば、管状反応装置等]、垂直カラム反応装置、押し出し機等がある。
【0065】
好ましくは、反応装置は連続撹拌型タンク反応装置又は管状反応装置である。その利点は、比較的小さい反応装置体積を有する反応装置を用いた連続プロセスとして行われ得るということ、及び/又は、より良好な温度制御を可能にするということである。
【0066】
本発明による方法は種々の方式、例えば、バッチプロセス、カスケードプロセス又は連続プロセスとして行うことができる。
【0067】
好ましくは、本発明による方法は連続プロセスとして行われる。このことは、大規模な製造であっても、重合を比較的小さい反応装置で行うことができるという利点を有する。さらなる利点は、ポリラクタムの工程間での冷却及び再融解を必要とすることなしに、さらなる加工ステップとより容易に組み合わせられ得るということである。
【0068】
本発明のこの好ましい実施形態による方法は、例えば、ラクタム、触媒、活性化剤及び場合により他の成分(これらはまとめて、以降、構成要素として示される)を重合装置に連続的に供給し、カプロラクタムの溶融温度よりも高い温度に構成要素を加熱しながら連続的に混合及び搬送し、そして、重合装置において少なくとも部分的にカプロラクタムを重合させ、それにより、ポリラクタム溶融物を連続的に形成させることによって行うことができる。重合後、ポリマー溶融物は、必要に応じて、触媒不活性化ステップ、脱気ステップ、コンパウンディングステップ及び/又はポリマー成形加工ステップ(溶融押し出しステップ又は射出成形ステップ等)において処理することができる。
【0069】
好ましくは、本発明による方法は、ポリラクタム溶融物を形成する重合ステップ、及び前記ポリラクタム溶融物を成形加工品に成形するための溶融成形ステップを含む。
【0070】
より好ましい実施形態において、この方法は、脱気ステップ及び溶融成形ステップを含む連続プロセスである。一般に、脱気ステップでは、ポリマー溶融物と周囲の気体雰囲気との間での気/液界面を、気/液界面と溶融物体積との間の比率が大きくなるように形成することが求められる。更により好ましい実施形態において、脱気ステップ及び溶融成形ステップは併合される。このことは、溶融物を成形加工品に溶融成形する前に、脱気されたポリラクタム溶融物を別個の装置に集める必要がないという利点を有する。そのような併合は、例えば、溶融成形ステップとしての繊維紡糸を含む方法において、好適に適用される。
【0071】
別のより好ましい方法において、脱気ステップは、溶融成形ステップで使用する装置内で行われる。このことは、これら2つのステップを1つの装置で行うことができ、特別な装置が必要とされないという利点を有する。この方法は、例えば溶融成形ステップとして射出成形を含み、押し出し機を脱気及び溶融成形の両方に使用する方法において好適に適用される。
【0072】
本発明の上記の好ましい実施形態のいずれかによる連続プロセスに連結することができる好適な加工ステップは、例えば、脱気、コンパウンディング及び/又はポリマー成形加工である。
【0073】
本発明による方法は、脱気ステップを好適に含むことができ、脱気ステップにおいては、ポリラクタムを含む溶融物を形成するためにカプロラクタムを重合させ、溶融物中の触媒がプロトン性化合物で不活性化された後に、ポリラクタム溶融物中に保持される未反応カプロラクタムモノマーを少なくとも部分的に除くために脱気される。前記脱気ステップを含む本発明の方法の利点は、ポリラクタムと未反応ラクタムとの間での熱力学的平衡によって引き起こされるポリラクタムの解重合に起因するカプロラクタムの再生が完全には排除されないとしても非常に制限され、また、未反応カプロラクタムモノマーの含有量がより低いポリラクタム溶融物を別個の抽出ステップを必要とすることなく得ることができ、その一方で、更により低い残存カプロラクタム含有量に到達するために別個の抽出ステップを適用したときには、抽出されるカプロラクタムがより少なくなり、必要とされる抽出媒体がより少なくなるということである。
【0074】
未反応カプロラクタムは、残留カプロラクタム含有量が、(ポリラクタムの重量に対して)好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、更により好ましくは0.3重量%未満、最も好ましくは0.2重量%未満となるまで除かれる。残留ラクタム含有量がより低いことの利点は、より厳しい用途においても、中間での冷却ステップ及び抽出ステップがそれほど必要でないか又は全く必要でないということ、及び、ポリマーをそのまま低い残留ラクタム含有量を有しながら溶融物から最終製品に成形することができるということである。
【0075】
脱気は、プロトン性薬剤として水を触媒の過剰量で使用する本発明による連続プロセスと組合せて特に好適に使用される。このことは、脱気ステップにおいて過剰な水がカプロラクタムモノマーと同時にエバポレーションによって除去され、それにより、水が捕捉剤として機能し、水の蒸発がラクタムのより迅速な蒸発に寄与するという利点を有する。
【0076】
ポリラクタムは、ポリラクタムの重量に対して好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の水分含有量まで脱気される。水分含有量がより低いことは、別個の乾燥ステップを製造時に必要とすることなしに、ポリアミドの射出成形又は繊維形成のための仕様を満たすという利点を有する。
【0077】
本発明による方法における脱気ステップに使用することができる好適な脱気装置には、例えば、流下薄膜エバポレーター[例えば、独国特許出願公開DE−A−10016894に記載のような流下薄膜エバポレーター]、回転ディスク薄膜エバポレーター、フラッシュ装置、フィルム押し出し機、繊維押し出し機及びフィルムスクレーパーがある。脱気ステップはまた、真空を適用する脱気装置において、又は、液体捕捉剤(例えば、国際公開WO−A−0174925に記載のような液体捕捉剤)を使用する脱気装置で行うことができる。
【0078】
本発明はまた、本明細書中上記に記載のような脱気ステップによって得られ、ラクタム及び場合により少量の他の揮発性成分を含む脱気された材料を、同じ重合プロセス、又は加水分解重合プロセス等の別の重合プロセスに再利用する方法に関する。このプロセスの利点は、脱気された物質が水をほとんど含まず、含んでいたとしても、繊維規格のポリアミド−6を製造するための従来の加水分解プロセスにおけるラクタム抽出プロセスのために多くの場合適用されるような、別個の乾燥ステップの必要性がなくなるということである。
【0079】
本発明の方法の別の変形態様において、重合後に得られるポリラクタムは、固化させるために冷却した後、水で抽出される。そのような方法の利点は、残留する未反応カプロラクタムの除去と、触媒の不活性化とが同時に行われるということである。これにより、非常に良好な溶融安定性を有するポリラクタムが得られる。
【0080】
さらなる実施形態において、本発明による方法は、プロトン性薬剤を用いて触媒を不活性化した後、少なくとも1つの添加剤がポリラクタムに添加されて、ポリラクタム及び少なくとも1つの添加剤を含むポリラクタム配合物を形成するコンパウンディングステップを含む。この変形態様による方法の利点は、ポリラクタムの中間での冷却ステップ及び再融解ステップを省略することができ、それにより、コンパウンディングプロセスを経済的により有利にすることができるということである。さらなる利点は、大規模な製造であっても、重合を比較的小さい反応装置で行うことができ、これにより、異なる添加剤を含む種々のポリラクタム配合物の少量バッチ反応物の調製、及び異なる配合物の間での迅速な移行が可能になるということである。このことは、いわゆるVKカラムでの加水分解重合を伴う従来の塊状溶融重合プロセスとは対照的である。また、異なる配合物の間での移行に起因する中間品質の物質の喪失を減少させることができる。
【0081】
本発明による方法のこの変形態様において使用することができる好適な添加剤は、例えば、補強材[ガラス繊維及び炭素繊維、粘土等のナノフィラー(ケイ灰石を含む)、マイカ等]、顔料、フィラー[炭酸カルシウム等]、加工助剤、安定化剤、酸化防止剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、難燃剤、離型剤などである。
【0082】
添加剤の量は、形成された配合物の体積に対して、1体積%又は2体積%などの非常に少ない量から、70体積%又は80体積%又はそれ以上まで変化させることができる。
【0083】
上記変形態様による方法で形成された配合物は、例えば、冷却及び顆粒化によって更に加工することができる。
【0084】
ポリマー配合の目的のために、重合装置はポリマーコンパウンディング装置と組み合わせることができる。ポリマーコンパウンディング装置として使用することができる好適な装置は、例えば、単軸スクリュー押し出し機及び二軸スクリュー押し出し機である。
【0085】
本発明による方法のさらなる実施形態において、この方法はポリマー成形加工ステップを含む。この変形態様において、ラクタムの重合、及びプロトン性薬剤を用いた触媒の不活性化によって得られるポリラクタムの溶融物は、ポリマー成形加工ステップに供される。ポリマー加工産業は、繊維及びフィルムなどの最終製品を調製することだけでなく、ポリマーを調製すること、及び、成形品のような最終的な製品を製造するために使用するポリマー系配合物などの中間のポリマー製品を調製することに広く関与している。最初にポリマーを調製し、別個のプロセスステップにおいて、コンパウンド、フィルム及び繊維を調製するのが最新の技術である。この産業の実質的な部分が、熱可塑性ポリアミドからなる群のポリマーをそれぞれ調製及び加工することに関与している。熱可塑性ポリアミドの調製及び加工はともに、一般に高い温度で行われる。
【0086】
ポリマー成形加工ステップの前には、例えば、本明細書中上記に記載のような脱気ステップ及び/又はコンパウンディングステップを行うことができる。
【0087】
ポリマー成形加工の目的のために、重合装置はポリマー成形加工装置と組み合わせることができる。これらの装置は、必要に応じて、脱気装置及び/又はコンパウンディング装置と組み合わせることができる。
【0088】
ポリマー成形加工装置として使用することができる好適な装置には、例えば、射出成形、フィルム押し出し、形状押し出し、フィルムブローイング及び繊維紡糸のための設備が含まれる。
【0089】
本発明はまた、本発明による方法によって得ることができるポリラクタムと、アシルラクタムの残留物と、プロトン性化合物とマグネシウムラクタマート及びマグネシウムラクタマート形成性化合物からなる群から選択されるアニオン重合触媒との反応生成物又はその残留物と、を含むポリラクタム組成物に関する。本発明によるポリラクタム組成物は、ポリアミド組成物が高い温度で長時間保持されたときの、相対粘度及び/又は末端基などの分子的特徴における限定された変化によって特徴づけられる、良好な溶融安定性を有する。さらなる利点は、本発明のポリラクタム組成物は、非常に良好な汚れ防止特性、加水分解安定性及び熱安定性を有するということである。
【0090】
ベンジルアルコールとエチルマグネシウムブロミドとの反応生成物又はその残留物をポリラクタム中のカプロラクタムモノマー単位に対して0.4モル%〜0.5モル%の量で含む組成物、及びジメチルスルホキシド(DMSO)を含む組成物は、本発明から除外されている。除外される組成物は、K.Ueda、M.Nakai、M.Hosoda及びK.Taiの、Polymer Journal、第28巻第12号、1084頁〜1089頁(1999)における発表から知られるが、本発明によるその好都合な性質は、この刊行物には記載されてない。Uedaらは、良好な溶融安定性を有するポリラクタムを調製するための方法を記載している。この方法は、カプロラクタムモノマーを、連鎖開始剤としてのN−アセチル−ε−カプロラクタム、及びアニオン重合触媒としてのエチルマグネシウムブロミドと接触させ、前記モノマーを150℃での無水条件下で重合させ、ポリマーをDMSOに溶解し、プロトン性化合物を溶液に加え、その後、触媒が除去されたポリマーを単離するための再沈殿ステップを行うことを含む。前記刊行物において、Uedaらは、良好な溶融安定性を有するポリラクタムを得るためには触媒が除去されなければならないことを示している。ポリマー分解が、pKaが3〜7の酸を用いた触媒除去処理によって阻害されると言及されている。前記刊行物における実験の1つにおいては、ベンジルアルコールが、0.5モル%の触媒濃度から出発して、触媒を除去するためのプロトン性成分として使用されている。しかしながら、これは約0.44重量%の残留触媒濃度をもたらした。このことは触れられていないが、その量は、カプロラクタムの量に対するものである。上記刊行物では、重合が得られるポリラクタムの溶融温度よりも高い温度で実行されるときの分岐度に対する影響については言うまでもなく、ポリマーの分岐度については何ら述べられていない。プロトン性薬剤で処理された触媒がポリラクタム中に保持されたときのポリラクタムの安定性についても、また、本発明によるようなその有利なな性質についても、何ら言及されてない。
【0091】
好ましくは、ポリラクタム組成物は、本発明による方法の好ましい実施形態のいずれかによって得ることができるポリラクタム組成物である。
【0092】
本発明によるポリラクタム組成物におけるポリラクタムは、アミン末端基の含有量が低いことによって特徴づけられる。典型的には、アミン末端基の含有量は、ポリラクタム1gに対して0.0015meq未満(1meq/gポリラクタム)である。好ましくは、この含有量は0.010meq未満であり、より好ましくは0.007meq未満であり、最も好ましくは0.005meq未満である。アミン末端基の含有量がより低いポリラクタムの利点には、改善された固有の汚れ防止特性、より良好な加水分解安定性、及び改善された熱安定性が含まれる。
【0093】
また、より好ましくは、ポリラクタム組成物は、プロトン性薬剤として水を使用した方法によって得ることができるポリラクタム組成物である。その利点は、ポリラクタムがポリアミド以外の付加的な物質を含有しないこと、及びポリアミドは乾燥によって過剰な水を容易に取り除くことができるということである。
【0094】
活性化剤としてアシルラクタムを使用した本発明による方法によって得ることができるポリラクタム組成物も、より好ましい。その利点は、ポリラクタムがより低い分岐度を有するということである。
【0095】
別の好ましい実施形態において、ポリラクタム組成物は、脱気ステップを含む本発明の方法によって得ることができるポリラクタム組成物である。脱気ステップを含む本発明の方法によって得ることができるポリラクタム組成物の利点は、ポリマーをそのまま、低いラクタム含有量が要求されるプロセスにおいて用いるのに適しているということである。
【0096】
より好ましくは、脱気ステップを含む本発明の方法によって得ることができるポリラクタム組成物は、ラクタム含有量が0.3重量%未満であり、環状ダイマー含有量が0.1重量%未満である。この実施形態によるポリラクタムの利点は、ポリラクタム組成物が良好な溶融安定性を有しており、また、揮発性物質の堆積に関してより厳しい、繊維紡糸及びフィルム押し出しなどの用途に対してより好適であるということである。
【0097】
さらなる好ましい実施形態において、本発明によるポリラクタム組成物におけるポリラクタムは、ポリラクタムの総重量に対して、ラクタムモノマーが50重量%以上であり、より好ましくは75重量%以上であり、90重量%以上である。最も好ましくは、ポリラクタムはラクタムのみをモノマーとして含む。一般に、ポリラクタムにおけるラクタムの含有量が大きいほど、ポリラクタムは、高温において分解を受けやすくなり、また、解重合したラクタムモノマーの喪失に起因する重量減少を受けやすくなる。本発明によるポリラクタムにおけるラクタムの含有量が大きいほど、溶融時のポリラクタムの重量減少が低下することによる、溶融安定性改善の効果が大きくなる。
【0098】
本発明によるポリラクタム組成物は、好ましくは、
a)50重量%以上がカプロラクタムからなり、任意に、連鎖開始剤分子の残基を含むポリラクタムと、
b)プロトン性化合物とマグネシウムラクタマート及びマグネシウムラクタマート形成性化合物からなる群から選択されるアニオン重合触媒との反応生成物又はその残留物(residues)を0.01重量%〜2重量%と、
c)0〜10重量%のカプロラクタムモノマーと、
d)0〜0.3重量%の環状ダイマーを含むカプロラクタムオリゴマーを0〜2重量%と、
e)補強剤、難燃剤及びフィラーからなる群から選択される添加剤を0〜150重量%と、
f)顔料、加工助剤、安定化剤、耐衝撃性改善剤、可塑剤及びキャリアポリマーからなる群から選択される添加剤を0〜25重量%と、
からなり、このときすべての重量%はポリラクタムの重量に対するものである。
【0099】
より好ましくは、本発明によるポリラクタム組成物は、
g)75重量%以上がカプロラクタムからなり、任意に、連鎖開始剤分子の残基を含むポリラクタムと、
h)プロトン性化合物とマグネシウムラクタマート及びマグネシウムラクタマート形成性化合物からなる群から選択されるアニオン重合触媒との反応生成物又はその残留物を0.01重量%〜1重量%と、
i)0〜1重量%のカプロラクタムモノマーと、
j)0〜0.2重量%の環状ダイマーを含むカプロラクタムオリゴマーを0〜1重量%と、
k)補強剤、難燃剤及びフィラーからなる群から選択される添加剤を0〜100重量%と、
l)顔料、加工助剤、安定化剤、耐衝撃性改善剤、可塑剤及びキャリアポリマーからなる群から選択される添加剤を0〜10重量%と、
からなり、このときすべての重量%はポリラクタムの重量に対するものである。
【0100】
ラクタム含有量(CPL)及び環状ダイマー含有量(CD)及びオリゴマー含有量は、LC(ISO15300−2000)によって測定したときの含有量である。それ以外の構成要素の含有量は標準的な方法によって測定することができる。
【0101】
ポリカプロラクタムは吸湿性であり、貯蔵時に湿った空気にさらされたときに水を吸収し得るため、本発明はまた、水をさらなる成分として含む上記の対応する組成物を包含する。水分含有量は、ポリラクタムの重量に対して好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下である。
【0102】
本発明はまた、本発明による方法によって得ることができるポリラクタムと、アシルラクタムの残留物と、プロトン性化合物とマグネシウムラクタマート及びマグネシウムラクタマート形成性化合物からなる群から選択されるアニオン重合触媒との反応生成物又はその残留物と、を含むポリラクタム組成物の、成形加工品を製造するための使用に関する。
【0103】
本発明は特に、本明細書中上記で述べられた本発明のポリラクタム組成物の好ましい実施形態のいずれかの使用に関する。
【0104】
使用に先立って、本発明の組成物は乾燥させることができる。これは、特に、水をさらなる成分として含む上記の組成物については当てはまる。組成物は、組成物中のポリラクタムの重量に対して好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.01重量%未満の水分含有量となるまで、その使用に先だって乾燥される。
【0105】
本発明は更に、本発明の方法及びその好ましい実施形態を用いて得ることができるポリラクタムから成形加工される成形加工品に関し、また、本発明による成形加工品を含む物品に関する。これらの製品は、固有の汚れ防止特性、良好な熱安定性及び良好な加水分解安定性を含む、ポリラクタム合の好適な特性を有する。これらの製品には、押し出し成形されたポリマーストランド、繊維及びフィルム、ポリマー配合物、並びに成形品が含まれる。特に、固有の汚れ防止特性により、繊維、並びにそれから作製される織物製品及びカーペットにおいて好適に用いられる。
【実施例】
【0106】
本発明は、下記の実施例に限定されることなく、下記の実施例によって更に説明される。
【0107】
手順
残留ラクタム含有量(CPL)及び環状ダイマー含有量(CD)はLC(ISO15300−2000)によって測定した。
末端基分析は非水性媒体中での電位差滴定によって行った。
相対粘度(RV)は1質量%ギ酸溶液中で測定した。
重量比によるカプロラクタム転化度は、ポリラクタムポリマーの抽出後に測定した、生成物による重量減少量から得た。
分子特性はSEC(ISO16014)によって測定した。
レオロジー特性は、Rheometrics ARES−LSディスクレオメーターを使用して測定した。
【0108】
材料
CPL: ε−カプロラクタム:AP−カプロラクタム、フレーク(例えば、DSM、オランダ)
LMB: 触媒C−1:カプロラクタムにおけるカプロラクタムマグネシウムブロミドが21重量%;フレーク(例えば、DSM、オランダ)
IPBC: イソフタロイルビスカプロラクタム、粉末(米国特許第4031164号の実施例1による合成経路)
NaL: 触媒C−10:カプロラクタムにおけるナトリウムカプロラクタマートが19重量%(例えば、DSM、オランダ)
HMDCC:活性化剤C−20:ヘキサメチレン−1,6−ジカルバモイルカプロラクタム(1,6−ヘキサンジイソシアナナートのカプロラクタム付加物;カプロラクタムにおいて80重量%)(例えば、DSM、オランダ)
AcL: N−アセチルカプロラクタム
【0109】
実施例I〜X
100グラムスケールの重合実験を、異なるレベルの触媒(CPLに対して0.7〜1.5%)及びN−アセチルカプロラクタム(CPLに対して0.65〜1.4wt%)、並びにプロトン性薬剤としての水について、230℃〜270℃において行った。すべての生成物について、RV及びカプロラクタム転化度を分析した。また、いくつかの生成物については、分子特性及びレオロジー特性を分析した。結果を表1にまとめる。
【0110】
【表1】

【0111】
表1における結果は、温度変化によって転化度の変化がもたらされることを示している。結果として、重合温度が高くなると、粘度が幾分か低くなる。アシルラクタム含有量の変化によってRVの規則的な変化がもたらされる。すなわち、その量が低い場合、大きいRVが得られ、一方、量が大きい場合、低いRVが得られる。重合時間の変化は、ある時間までは相対粘度に対する影響を有しており、その時間を越えると、粘度はさらには増大していない。相対粘度値は、活性化剤の量の変化とともに、より規則的に(すなわち、ほぼ直線的に)変化している。触媒量が低すぎる場合、相対粘度が、不完全な転化のために低下している。より多くの触媒量が所定の反応時間における完全な転化に必要とされる場合、触媒量と粘度との間には有意な関係が存在しない。
【0112】
得られた組成物におけるポリアミド鎖の直鎖性は、SEC分析から得られるlog(分子量)に対するMark−Houwink関係の直線関係によって明らかにされた。
【0113】
比較実験A〜E
LMB/カルバモイルラクタム、ナトリウムカプロラクタマート(C10)/カルバモイルラクタム、及びナトリウムカプロラクタマート(C10)/アシルラクタムの組合せについて、アニオン重合を実施例1の記載と同様の方法で行った。使用した触媒及び活性化剤の量と、結果を表2にまとめる。
【0114】
【表2】

【0115】
実施例I〜X及び比較実験A〜Eの結果の比較から、下記のことが明らかである。カプロラクタムマグネシウムブロミド触媒及びN−アセチルカプロラクタム活性化剤の組合せを使用する実施例I〜Xでは、高温で保たれたときであっても経時的にかなり安定したRVを有する生成物が得られた。そのうえ、その後も、生成物は依然としてギ酸に可溶であった。
【0116】
これに対して、ナトリウムカプロラクタマートを使用して得られた生成物(比較実験D及びE)は、多くの枝分のために、ゲル化し、ギ酸に(一部が)不溶性であった。
【0117】
カプロラクタムマグネシウムブロミド触媒及びカルバモイル活性化剤の組合せを用いた比較実験では、カルバモイル活性化剤の量に基づいて予想されるよりもはるかに大きいRVがもたらされた。例えば、4重量%のカルバモイル活性化剤を使用したとき、これは1.24重量%のN−アセチルカプロラクタム活性化剤の等モル量と一致するが、RV粘度が、N−アセチルカプロラクタムについて予想される約2.2ではなく、10.44であった。比較実験A及び比較実験Cはまた、RVが、N−アセチルカプロラクタムを用いた場合のように低下するのでなく、カルバモイル活性化剤の量とともに増大することを示している。更に、比較実験の生成物は、SEC分析から得られるlog(分子量)に対するMark−Houwink関係が直線性からずれていた。これらの事実はすべてが、比較実験で得られた組成物におけるポリアミド鎖の枝分かれを示している。
【0118】
実施例XI〜XIII:熱安定性
実施例XI
カプロラクタム、N−アセチルカプロラクタム及びLMBのアニオン重合によって得られたポリカプロラクタムの溶融物(RV硫酸 2.57;COOH及びアミン <1mmol/kg未満)を、冷却後、プロトン性薬剤としての水(pKa、15.7)に浸漬した。乾燥後、サンプルを乾燥窒素中で230℃で加熱した。5分、10分及び15分の加熱の後、ポリカプロラクタムの溶融粘度を、レオロジー分析を行うことによって検出した。結果を表3に示す。
【0119】
実施例XII
カプロラクタム、N−アセチルカプロラクタム及びLMBのアニオン溶融重合によって得られたポリカプロラクタム(RV硫酸 2.57;COOH及びアミン 1mmol/kg未満)を溶融状態で、プロトン性薬剤としてのtert−ブチルアルコール(pKa 18)と接触させた。乾燥後、サンプルを乾燥窒素中で230℃で加熱した。5分、10分及び15分の加熱の後、ポリカプロラクタムの溶融粘度を、レオロジー分析を行うことによって検出した。結果を表3に示す。
【0120】
実施例XIII
カプロラクタム、N−アセチルカプロラクタム及びLMBのアニオン溶融重合によって得られたポリカプロラクタム(RV硫酸 2.46;COOH及びアミン 1mmol/kg未満)を溶融状態で、プロトン性薬剤としての安息香酸(pKa 3.2)と接触させた。乾燥後、サンプルを乾燥窒素中で230℃で加熱した。5分、10分及び15分の加熱の後、ポリカプロラクタムの溶融粘度を、レオロジー分析を行うことによって検出した。結果を表4に示す。
【0121】
比較実験F
比較のために、加水分解重合によって得られたポリカプロラクタム(RV、2.45;COOH 60mmol/kg、アミン 35mmol/kg)を乾燥し、乾燥窒素中230℃で加熱した。5分、10分及び15分の加熱の後、ポリカプロラクタムの溶融粘度を、レオロジー分析を行うことによって検出した、結果を表3に示す。
【0122】
【表3】

【0123】
表3における結果は、従来の加水分解重合によって得られたポリカプロラクタムと比較した場合であっても、本発明によるポリカプロラクタムの熱安定性が改善されていることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプロラクタムモノマーをアニオン重合触媒及び活性化剤と接触させること、前記モノマーを得られるポリラクタムの溶融温度よりも高い温度において無水条件下で重合すること、並びに得られるポリラクタムを溶融状態又は固体形態でプロトン性化合物と接触させることによる、溶融加工可能なポリラクタムを調製する方法であって、
前記アニオン重合触媒が、マグネシウムラクタマート及びマグネシウムラクタマート形成性化合物からなる群から選択され、
前記活性化剤がアシルアミドであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記プロトン性化合物が、14未満のpKaを有するプロトン性化合物、水又は水形成性金属水酸化物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記触媒がマグネシウムラクタマート又はマグネシウムラクタマート形成性化合物である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記アシルアミドがアシルラクタムである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記重合を前記ポリラクタムの溶融温度より5℃〜80℃高い温度で行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記重合を連続プロセスとして行う、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
抽出ステップ、脱気ステップ、コンパウンディングステップ、ポリマー成形加工ステップ及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのステップを更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって得られるポリラクタムと、
プロトン性化合物とマグネシウムラクタマート及びマグネシウムラクタマート形成性化合物からなる群から選択されるアニオン重合触媒との反応生成物又はその残留物と、
を含み、
ベンジルアルコールとエチルマグネシウムブロミドとの反応生成物又はその残留物をポリラクタムにおけるカプロラクタムモノマー単位に対して0.4〜0.5モル%の量で含む組成物、及びジメチルスルホキシドを含む組成物を除く、組成物。
【請求項9】
前記ポリラクタムのカプロラクタム含有量が0.3%以下であることを特徴とする、請求項8記載のポリラクタム組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法によって得られるポリラクタムと、
アシルラクタムの残留物と、
プロトン性化合物とマグネシウムラクタマート及びマグネシウムラクタマート形成性化合物からなる群から選択されるアニオン重合触媒との反応生成物又はその残留物と、
を含むポリラクタム組成物の、成形加工品を製造するための使用。
【請求項11】
請求項11〜13のいずれか一項に記載のポリラクタムを含む成形加工品。
【請求項12】
請求項14記載の成形加工品を含む物品。

【公表番号】特表2006−518410(P2006−518410A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502744(P2006−502744)
【出願日】平成16年2月11日(2004.2.11)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000098
【国際公開番号】WO2004/074348
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(505220217)デーエスエム アイピー アセッツ ベー. ヴェー. (29)
【Fターム(参考)】