説明

溶融温度判定装置

【課題】半田を供給する部位が半田の溶融温度に到達したか否かを確実に判定することができる溶融温度判定装置を提供する。
【解決手段】半田を供給する部位Yに予め形成された予備半田部Zの画像を得るカメラ2と、部位Yを加熱する半田鏝3と、カメラ2により逐次得られた画像から予備半田部Zが存在する領域Wを抽出する抽出手段11と、抽出された領域Wの各画素の輝度値を算出する輝度値算出手段12と、各画素の輝度値の変化に基づいて、半田鏝3で加熱された部位Yが半田の溶融温度に到達したか否かを判定する判定手段13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田を供給する部位が半田の溶融温度に到達したか否かを判定する溶融温度判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すように、半田鏝を用いた自動半田付け装置では、半田鏝を半田を供給する部位に所定時間接触させることにより、その部位の温度が半田の供給温度に到達したものとして半田を供給している。
【0003】
かかる自動半田付け装置では、半田鏝の鏝先が前記部位に接触した瞬間を接触検出器により検出し、その検出タイミングから予め設定した時間を予熱時間とし、この時間経過後、半田を供給して半田付けを終了するまでの時間を管理している。
【特許文献1】特開昭54−23056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の自動半田付け装置のように、半田供給のタイミングを時間により管理する場合には、以下の問題がある。
【0005】
第1に、予め設定した予熱時間の経過により、半田の供給部位の温度が半田の供給温度に達したものとしているが、加熱不足の場合には、供給温度に到達していないにも拘わらず、予熱を終了してしまう。
【0006】
半田鏝の鏝先には、半田屑の他、酸化物などによる煤状の汚れが付着し得る。かかる汚れは、次第に積層されて鏝先の劣化を来し、鏝先の温度上昇を妨げる要因となる。そのため、鏝先の状態によっては、鏝先と半田供給部位との間の熱伝達率が低下し、同じ予熱時間でも加熱不足が生じ得る。
【0007】
特に、近年主流となっている鉛フリー半田(鉛を含まない半田)では、溶融温度が約220℃で、従来の共晶半田(融点183℃)よりも高いため、加熱不足が生じ易い。
【0008】
第2に、かかる加熱不足を解消するために、鏝先の状態に応じて設定時間を変更することも考えられるが、鏝先の状態を評価することは困難である。また、仮に鏝先の状態を評価できたとしても、この状態に応じて設定時間をその都度変更することは煩雑であり、半田の作業効率を低下させることになり兼ねない。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑み、半田を供給する部位が半田の溶融温度に到達したか否かを確実に判定することができる溶融温度判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の溶融温度判定装置は、半田を供給する部位に予め形成された予備半田部の画像を得る撮像手段と、前記部位を加熱する加熱手段と、前記撮像手段により逐次得られた画像から前記予備半田部が存在する領域を抽出する抽出手段と、該抽出手段により抽出された領域の各画素の輝度値を算出する輝度値算出手段と、該輝度値算出手段により算出された各画素の輝度値の変化に基づいて、前記加熱手段で加熱された部位が半田の溶融温度に到達したか否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第1発明の溶融温度判定装置によれば、半田を供給する部位が加熱手段の加熱により、半田の溶融温度に到達したか否かを、その部位に予め形成された予備半田部の画像に基づいて判定する。ここで、半田は、加熱前の非溶融状態と加熱後の溶融状態とでは、その表面状態が異なるので、表面反射の態様が異なる。例えば、鉛フリー半田において、非溶融状態では表面が梨地となり光が乱反射されるのに対して、溶融状態では表面が鏡面となり光が全反射される。かかる表面反射の態様は、予備半田部の領域における輝度値において特徴的なものとなる。そのため、本発明の溶融温度判定装置では、予備半田部の領域における輝度値の変化に基づいて、予備半田部が溶融温度に到達したか否かを判定することができ、それによって半田を供給する部位が半田の溶融温度に到達したか否かを確実に判定することができる。
【0012】
第2発明の溶融温度判定装置は、第1発明の溶融温度判定装置において、前記判定手段は、前記領域における前記輝度値が第1所定範囲の値となる第1輝度部分の面積の大きさの変化により、前記部位が半田の溶融温度に到達したか否かを判定することを特徴とする。
【0013】
第2発明の溶融温度判定装置によれば、予備半田部の領域における輝度値のうちで、該輝度値が第1所定範囲となる第1輝度部分の面積の大きさの変化を基に、半田が溶融温度に到達したか否かが判定される。ここで、第1輝度部分を規定する第1所定範囲は、予備半田部の非溶融状態と溶融状態とで輝度値の変化が顕著に現れる範囲とすることができる。これにより、第1輝度部分の面積の大きさの変化により、予備半田部が溶融状態となっていることを判定することができるため、前記部位が半田の溶融温度に到達していることを容易かつ一定の確実性をもって判定することができる。
【0014】
第3発明の溶融温度判定装置は、第1または第2発明の溶融温度判定装置において、前記判定手段は、前記輝度値算出手段により算出される前記輝度値の前回値と今回値との差分を差分輝度値として逐次算出し、該差分輝度値の変化に基づいて、前記部位が半田の溶融温度に到達したか否かを判定することを特徴とする。
【0015】
第3発明の溶融温度判定装置によれば、予備半田部の領域における輝度値の前回値と今回値との差分輝度値の変化に基づいて、半田が溶融温度に到達したか否かが判定される。ここで、予備半田部が非溶融状態から溶融状態へ変化に対応する輝度値は、その前後する輝度値の時間変化において特徴的なものとなる。そのため、予備半田部の領域における差分輝度値の変化に基づいて、該予備半田部が溶融温度に到達したか否かを判定することで、半田を供給する部位が半田の溶融温度に到達したか否かを確実に判定することができる。
【0016】
第4発明の溶融温度判定装置は、第3発明の溶融温度判定装置において、前記判定手段は、前記領域における前記差分輝度値が第2所定範囲の値となる第2高輝度部分の面積の大きさの変化により、前記部位が半田の溶融温度に到達したか否かを判定することを特徴とする。
【0017】
第4発明の溶融温度判定装置によれば、予備半田部の領域における差分輝度値のうちで、該差分輝度値が第2所定範囲となる第2輝度部分の面積の大きさの変化を基に、半田が溶融温度に到達したか否かが判定される。ここで、第2輝度部分を規定する第2所定範囲は、予備半田部の非溶融状態と溶融状態とで差分輝度値の変化が顕著に現れる範囲とすることができる。これにより、第2輝度部分の面積の大きさの変化により、予備半田部が溶融状態となっていることを判定することができるため、前記部位が半田の溶融温度に到達していることを容易かつ一定の確実性をもって判定することができる。
【0018】
第5発明の自動半田付け装置は、第1〜第4のうちいずれか記載の溶融温度判定装置を備えることを特徴とする。かかる第5発明の自動半田付け装置によれば、溶融温度判定装置の判定結果に基づいて自動で半田を供給することができるため、溶融温度判定装置を適用する対象として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態としての溶融温度判定装置について、図1〜図5を参照して説明する。
【0020】
図1に示す溶融温度判定装置1は、例えば、自動半田付け装置に搭載されて、半田を供給する部位が予備加熱により半田を供給する温度に到達したか否かを判定するものである。
【0021】
溶融温度判定装置1は、基板X上の半田を供給する部位Yに予め形成された鉛フリー半田からなる予備半田部Zの画像を得る撮像手段としてのカメラ2と、予備半田部Zを加熱する加熱手段としての半田鏝3と、予備半田部Zを照らし出す照明手段としてのリング照明4と、カメラ2によって得られた画像の画像処理や画像処理された画像から部位Yが半田の溶融温度に到達したか否かを判定する判定処理を実行するコントローラ10とを備える。この溶融温度判定装置1は、コントローラ10での判定処理の結果に基づいて半田を供給する半田供給装置5に接続されている。
【0022】
カメラ2は、モノクロカメラであって、予備半田部Zをその撮像範囲含むように設置されており、コントローラ10からの制御信号により撮像を開始し、撮像した画像データをコントローラ10に出力する。尚、カメラ2は、撮像した画像からグレースケール画像が得られればよいため、CCDカメラ等のカラーカメラを用いることもできる。
【0023】
半田鏝3は、図示しない自動半田付け装置の作業アーム等に取り付けられた円筒形状の外套31の先端部に鏝先32を有する。また、外套31の内部には、コントローラ10に接続された電気ヒータが内蔵されている。電気ヒータは、コントローラ10からの制御信号により動作し、鏝先32を加熱する。
【0024】
リング照明4は、その中央開口部41がカメラ2の撮像軸と同軸、かつ基板Xと平行に固定具により固定されている。また、リング照明4は、コントローラ10に接続されており、コントローラ10からの制御信号に基づいて動作し、適当な照度で予備半田部Zを照らし出す。
【0025】
半田供給装置5は、リールに巻いた糸状の鉛フリー半田を必要量ずつ繰り出す半田供給部51と、半田供給部51から供給された半田を部位Yに向けて送り出すためのガイド部52とを備える。半田供給部51は、コントローラ10からの制御信号に基づいて、適当なタイミングおよび速度で半田をガイド部52に供給する。
【0026】
コントローラ10は、マイクロコンピュータ等により構成され、抽出手段11と、輝度値算出手段12と、判定手段13と、照明制御手段14と、加熱制御手段15とを備える。
【0027】
抽出手段11は、カメラ2により逐次得られた画像から予備半田部Zが存在する領域を抽出する処理を実行する。輝度値算出手段12は、抽出手段11により抽出された領域の各画素の輝度値を算出する処理を実行する。判定手段13は、主に、輝度値算出手段12により算出された各画素の輝度値の変化に基づいて、半田鏝3により部位Yが加熱されて半田の溶融温度に到達したか否かを判定する処理を実行する。
【0028】
照明制御手段14は、リング照明4のON/OFFおよびその照度を指定する制御信号を生成して出力する処理を実行する。加熱制御手段15は、半田鏝3の電気ヒータの加熱量または温度を指定する制御信号を生成して出力する。
【0029】
なお、コントローラ10を構成する各手段11〜15は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアにより構成され、これらの各手段が共通のハードウェアによって構成されていてもよく、これらの各手段の一部又は全部が異なるハードウェアによって構成されていてもよい。
【0030】
次に、図2に示すフローチャートを参照して、本実施形態の溶融温度判定装置1におけるコントローラ10の処理を説明する。
【0031】
まず、コントローラ10は、半田付けの対象となる基板Xが所定位置にセットされているか否かを判定する(STEP1)。そのために、図示しない検出器により基板Xの位置を検出し、その検出結果に基づいて判定する。
【0032】
そして、コントローラ10は、基板Xがセットされている場合には(STEP1でYES)、照明制御手段14を介してリング照明4を点灯させる(STEP2)。一方、基板Xがセットされていない場合には(STEP1でNO)、前記検出器を介して基板Xがセットされるまで待機する。
【0033】
基板Xがセットされてリング照明4が点灯すると(STEP2)、コントローラ10は、カメラ2から出力される画像を基準画像として取得する(STEP3)。
【0034】
このとき、加熱制御手段15を介して加熱されている半田鏝3が、予備半田部Zに接触しない直上で待機しており、具体的には、図3(a)で示すような基準画像が取得される。図3(a)の基準画像では、基板Xとその中に予め半田が塗布された予備半田部Zが撮像されている。
【0035】
なお、基準画像は、半田鏝3による加熱前の状態を示す画像であって、その後の画像の変化を観察する上で基準となる画像である。
【0036】
次いで、コントローラ10は、抽出手段11により、取得した基準画像から予備半田部Zを含む領域Wを抽出する(STEP4)。具体的には、予めユーザによって指定された、基準画像の中の指定領域(位置及び広がりが指定された領域)を予備半田部Zを含む領域Wとして抽出する。例えば、図3(a)に示す基準画像に対して、図3(b)に示すように、予備半田部Zを含む領域Wを抽出する。ここで、領域Wは、半田を供給する部位Yとほぼ同形または若干幅広の領域がユーザによって指定されている。
【0037】
次に、コントローラ10は、輝度値算出手段12により基準画像の領域Wに対して各画素の輝度値を算出した上で(STEP5)、各画素の輝度値が第1所定範囲の値となる第1輝度部分Pを抽出する(STEP6)。ここで、第1輝度部分は、領域Wの中の超高輝度部分(例えば、輝度値階調の95%以上部分)を除いた上でPタイル法によって輝度値が高輝度値から30%となる領域として抽出される。例えば、図3(b)に示す領域Wに対しては、図3(c)に斜線で示すように、予備半田部Zの中で輝度値が第1所定範囲となる第1輝度部分Pが抽出される。そして、コントローラ10は、このときPタイル法によって求めた輝度値Tを算出して、図示しない内部メモリ等に保持する(STEP7)。
【0038】
なお、本実施形態では、第1輝度部分Pを抽出するに際して、画像のノイズを除去するために超高輝度を除く前処理を施した上で、所定の輝度値の領域を第1輝度部分Pとして抽出しているが、前処理を施すことなく、初めから輝度値の階調が例えば30〜35%となる領域として抽出してもよい。
【0039】
次に、コントローラ10は、予備半田部Zの直上で待機させていた半田鏝3を図示しない作業アームを用いて予備半田部Zに接触させ、予備半田部Zの加熱を開始する(STEP8)。同時に、コントローラ10は、カメラ2から出力される画像を逐次取得する(STEP9)。ここで取得する画像は、一定の周期で撮像された連続画像である。
【0040】
そして、コントローラ10は、輝度値算出手段12により、STEP9で取得した各画像において、基準画像の第1輝度部分の領域Pに対応する部分の各画素の輝度値を算出する(STEP10)。
【0041】
次いで、コントローラ10は、判定手段13により、STEP10で算出した各画素の輝度値に対し、前記輝度値T(STEP7参照)を用いて、各画素の輝度値が第1所定範囲となる第1輝度部分Pを抽出する(STEP11)。
【0042】
続いて、コントローラ10の判定手段13は、STEP9で逐次取得した画像における第1輝度部分Pの面積の大きさを基準画像の第1輝度部分Pを用いて正規化し、正規化した第1輝度部分Pの面積の割合(面積率)が閾値以上となっているか否かを判定する(STEP12)。
【0043】
ここで、第1輝度値Pの面積の大きさは、半田鏝3により部位Yが加熱されてそこに形成された予備半田部Zの温度が上昇すると、予備半田部Zはその撮像画像において輝度値が低下する。すなわち、鉛フリー半田からなる予備半田部Zは、加熱前は表面が梨地であり、リング照明4からこれに照射された光が乱反射し、全体として高輝度部分として検出される。一方、加熱により溶融が始まると表面が鏡面状に変化し、全体として輝度値が低下する。その結果、第1輝度値Pの面積の大きさは、加熱時間の経過と共に低下することになるが、この面積の大きさを基準画像の第1輝度部分Pで正規化する(マイナスの変化をプラスに転換し、基準画像に対する面積の変化の割合とする)ことで、第1輝度値Pの面積率は、加熱時間の経過と共に上昇する。
【0044】
そして、正規化した第1輝度部分Pの面積率が溶融状態に対応した閾値以上となっているか否かを判定することで、一次的に半田を供給する部位Yが半田の溶融に温度に到達しているか否かを判定することができる。
【0045】
具体的には、図4(a)に模式的に示すように、正規化された第1輝度部分Pの面積率は、時刻t0で半田鏝3により加熱されて上昇し、時刻t1で溶融状態となり、時刻t2以降では加熱時間に関わらずほとんど変化がなくなっている。時刻t1に対応する第1輝度部分Pの面積率を前記閾値としておくことで、一次的に部位Yが半田の溶融温度に到達したことを検出することができる。
【0046】
実際に、図3(c)に示した第1輝度部分Pの正規化された面積率の様子を図5(a)に示す。正規化された第1輝度部分Pの面積率は、加熱が開始された時刻t0以降上昇して時刻t1で溶融状態となっている。図5(a)では、時刻t1に対応する第1輝度部分Pの面積率を閾値P1として、一次的に部位Yが半田の溶融温度に到達したことを検出している。
【0047】
次いで、コントローラ10の判定手段13は、正規化した第1輝度部分Pの面積率が溶融状態に対応した閾値以上となっている場合には(STEP12でYES)、STEP9で一定の周期で逐次取得した画像において、相前後する画像間の前記領域Wの輝度値の差分を差分輝度値として算出する(STEP13)。
【0048】
次いで、コントローラ10は、判定手段13により、STEP13で算出した差分輝度値が第2所定範囲となる第2輝度部分Qを抽出する(STEP14)。ここで、第2輝度部分Qを規定する第2所定範囲は、予備半田部Zの非溶融状態と溶融状態とで差分輝度値の変化が顕著に現れる差分輝度値の大きさとされる。なお、簡易的に、相前後する画像間の第1輝度部分Pの差分を第2輝度部分Qとして抽出してもよい。
【0049】
続いて、コントローラ10の判定手段13は、STEP14で逐次取得した画像における第2輝度部分Qの面積の大きさを、基準画像の第1輝度部分Pで正規化し、正規化した第2輝度部分Qの面積の割合(面積率)が閾値以下となっているか否かを判定する(STEP15)。
【0050】
ここで、第2輝度部分Qは、第1輝度部分Pの前後する画像間の差分に相当するためマイナスの値であり、その面積の大きさは前後する画像間における第1輝度部分Pの面積の差に比例する。この面積の変化の大きさを基準画像の第1輝度部分Pで正規化する(マイナスの変化をプラスに転換し基準画像に対する面積の変化の割合とする)ことで、第2輝度部分Qの面積の大きさは、加熱時間の経過と共に上昇し、その後下降する。
【0051】
そして、正規化した第2輝度部分Qの面積率が溶融状態に対応した閾値以下となっているか否かを判定することで、二次的に半田を供給する部位Yが半田の溶融に温度に到達しているか否かを判定することができる。
【0052】
具体的には、図4(b)に模式的に示すように、正規化された第2輝度部分Qの面積率は、時刻t0で半田鏝3により加熱されて上昇し、時刻t1の溶融状態でピーク値となり、時刻t2以降で下降する。したがって、時刻t1以降で、第2輝度部分Qの面積率が0またはそれに等しい値になった(輝度値の変化がなくなった)ことを検出することで、二次的に部位Yが半田の溶融温度に到達したことを検出することができる。
【0053】
実際に、図3(c)に示した第1輝度部分Pの画像間における差分を第2輝度部分Qとして、この第2輝度部分Qを正規化して図5(b)に示す。正規化された第2輝度部分Qの面積率は、加熱が開始された時刻t0以降上昇して、時刻t1でピーク値となっている。図5(b)では、閾値を0として、時刻t1以降で第2輝度部分Qの面積率が0となっている時刻t2で部位Yが半田の溶融温度に到達したことを二次的に検出している。
【0054】
次いで、コントローラ10の判定手段13は、正規化した第2輝度部分Qの面積率が溶融状態に対応した閾値以下となっている場合には(STEP15でYES)、半田を供給する部位Yが溶融温度に到達したと判定し(STEP16)、半田供給装置5により部位Yに半田を供給する(STEP17)。
【0055】
一方、コントローラ10の判定手段13は、正規化した第1輝度部分Pの面積率が溶融状態に対応した閾値以上となっていない場合(STEP12でNO)、或いは正規化した第2輝度部分Qの面積率が溶融状態に対応した閾値以下となっていない場合には(STEP15でNO)、STEP9に戻り、新たに取得した画像に基づいて、STEP9以下の判定処理を繰り返し行う。
【0056】
以上がコントローラ10において実行される部位Yが半田の溶融温度に到達したか否を判定する処理である。かかる処理では、予備半田部Zの非溶融状態と溶融状態とで輝度値の変化が顕著に現れる第1輝度部分Pおよび第2輝度部分Qの変化に基づいて、部位Yが半田の溶融温度に到達しているか否かを確実に判定することができる。
【0057】
尚、本実施形態では、第1輝度部分Pと第2輝度部分Qのいずれもが、予備半田部Zが溶融状態となる特徴を示す場合に部位Yが半田の溶融温度に到達していると判定したが、これに限らず、第1輝度部分Pと第2輝度部分Qのいずれか一方が、予備半田部Zが溶融状態となる特徴を示す場合に部位Yが半田の溶融温度に到達していると判定してもよい。
【0058】
また、本実施形態では、第1輝度部分Pおよび第2輝度部分Qをそれぞれ所定の輝度範囲として抽出したが、これに限らず、単に取得した画像を2値化処理するようにしてもよい。この場合、それぞれ2値化処理画像を基準画像の領域Wや基準画像の第1輝度部分Pで正規化することにより、図4(a)および(b)と同等のグラフを得ることができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、溶融温度判定装置1が自動半田付け装置に搭載される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、半田付け作業を行うユーザを補助する独立の装置として構成してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、予備半田部Zに鉛フリー半田を塗布した場合について説明したが、半田および予備半田部Zは鉛フリー半田以外の共晶半田等と用いてもよい。この場合、半田の非溶融状態および溶融状態を判定するために、カメラ2の解像度を好適に設定する必要がある。
【0061】
さらに、本実施形態では、リング照明4を設けて、予備半田部Zの非溶融状態および溶融状態における表面状態の変化を顕著なものとしたが、カメラ2の解像度を好適に設定することにより、リング照明4を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態の溶融温度判定装置の全体構成を示す図。
【図2】本実施形態のコントローラにおける処理を示すフローチャート。
【図3】図2の処理を実際の画像に施した場合の例を示す説明図。
【図4】図2の処理内容を示す説明図。
【図5】図3の画像における図2の処理内容を示す説明図。
【符号の説明】
【0063】
1…溶融温度判定装置、2…カメラ、3…半田鏝、4…リング照明、5…半田供給装置、10…コントローラ、11…抽出手段、12…輝度値算出手段、13…判定手段、14…照明制御手段、15…加熱制御手段、X…基板、Y…半田を供給する部位、Z…予備半田部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田を供給する部位に予め形成された予備半田部の画像を得る撮像手段と、
前記部位を加熱する加熱手段と、
前記撮像手段により逐次得られた画像から前記予備半田部が存在する領域を抽出する抽出手段と、
該抽出手段により抽出された領域の各画素の輝度値を算出する輝度値算出手段と、
該輝度値算出手段により算出された各画素の輝度値の変化に基づいて、前記加熱手段で加熱された部位が半田の溶融温度に到達したか否かを判定する判定手段と
を備えることを特徴とする溶融温度判定装置。
【請求項2】
請求項1記載の溶融温度判定装置において、
前記判定手段は、前記領域における前記輝度値が第1所定範囲の値となる第1輝度部分の面積の大きさの変化により、前記部位が半田の溶融温度に到達したか否かを判定することを特徴とする溶融温度判定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の溶融温度判定装置において、
前記判定手段は、前記輝度値算出手段により算出される前記輝度値の前回値と今回値との差分を差分輝度値として逐次算出し、該差分輝度値の変化に基づいて、前記部位が半田の溶融温度に到達したか否かを判定することを特徴とする溶融温度判定装置。
【請求項4】
請求項3記載の溶融温度判定装置において、
前記判定手段は、前記領域における前記差分輝度値が第2所定範囲の値となる第2輝度部分の面積の大きさの変化により、前記部位が半田の溶融温度に到達したか否かを判定することを特徴とする溶融温度判定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1項記載の溶融温度判定装置を備えたことを特徴とする自動半田付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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