説明

溶鋼の二次精錬装置

【課題】複数の真空槽を交互に切換えて使用する溶鋼の二次精錬装置において、装置全体の構成が従来に比べて簡単で、しかも、ダクトの連結部分に使用されるシール部材の交換等のメンテナンスが必要になった場合であっても、生産効率を大きく損なうことなく該メンテナンスを行うことができる二次精錬装置を得る。
【解決手段】上向きの開口が開設された真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各先端部8,9,12をいずれも同じ高さ且つ等間隔となるようにそれぞれ配設し、連結ダクト6を、下方向きの開口が形成された逆U字形のダクト本体部14と、該ダクト本体部14を連結位置に水平に移動させる水平移動手段15と、上記ダクト本体部を鉛直に昇降させる昇降手段17とで構成し、シール部材7Aを、真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの先端部に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の真空槽を順次切り替えながら溶鋼の二次精錬を連続的に実施する二次精錬装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転炉や電気炉等で精錬された溶鋼に対して、真空層で脱ガス処理等の二次精錬を行う二次精錬装置は従来から広く知られている。
このような二次精錬装置においては、特許文献1に記載されているように、生産性の向上と精錬効率の向上を図るため、複数の真空槽を交互に用いるものも既に公知となっており、1つの真空槽に対してメンテナンスを行う場合は他の真空槽を用いて精錬を行い、あるいは、1つの真空槽で精錬を行っている間は他の真空槽で次の精練の準備を行うなどして、連続的に精錬を行うことが可能であるため、生産性及び精錬の効率を高めることができるようになっている。
【0003】
具体的に、上記特許文献1の二次精錬装置は、図14に示すように、2つの真空槽50,50と、これらの真空槽のうちの1つと選択的に連結される真空排気装置(図示せず)と、各真空槽から延びる真空槽側ダクト51,51と、真空排気装置から延びる真空排気装置側ダクト52と、基端側が該真空排気装置側ダクト52に連結され、先端側が真空側ダクト51,51に接離される連結ダクト53とを有している。さらに、この連結ダクト53は、基端側に位置して選択された真空槽の位置に合わせて旋回する切換ダクト54と、該切換ダクト54の先端に連結されて、先端側が選択された真空槽の真空槽側ダクト51,51に接離される中間ダクト55とを有した構成となっている。そして、選択された真空槽の真空槽側ダクトの位置に応じて切換ダクト54を旋回させると共に、中間ダクト55を動かして先端側を真空槽側ダクトの先端部分に位置合わせをすることにより、真空槽側ダクトと真空排気装置側ダクトとを、連結ダクト53(切換ダクト54及び中間ダクト55)を通して相互に連通させる構成となっている。
【0004】
上記特許文献1の二次精錬装置の場合、連結ダクト53における、真空排気装置側ダクト52と切換ダクト54の基端側との連結部分、及び切換ダクト54の先端側と中間ダクト55の基端側との連結部分、該中間ダクト55の先端が側における真空槽側ダクト51と接離される部分、並びに中間ダクト55の中間部分に、スイベルジョイント56がそれぞれ介在され、あるいは取付けられていて、これにより各ダクトの位置や方向を変更し、あるいは各ダクト同士を連結することができるようになっている。
しかしながら、上記スイベルジョイントを用いた場合、該スイベルジョイントを回転駆動させて切換ダクトや中間ダクトの位置や方向を変更させる手段や位置制御手段、あるいは真空槽側ダクトの先端と中間ダクト先端のスイベルジョイントとを接離させる強力な駆動手段及びその制御手段等が必要であるため、装置全体が複雑になるという欠点があった。
【0005】
一方、二次精錬装置は、微細な金属粉等の粉塵が浮遊している環境に設置されるのが通常であり、また、真空槽からの排ガスは約1000℃程度の高温で、ガスクーラーを通しても200〜300℃の温度を有していることから、上記スイベルジョイントは、重要な構成部品であるOリング状のシール部材が伝導熱や粉塵で頻繁に損傷あるいは破損する可能性がある。上記シール部材が損傷・破損した場合には、そのシール部材を迅速に交換する必要があるが、上記スイベルジョイントは構成が複雑であるため、その場でのシール部材の交換は非常に困難である。
そのため、シール部材が損傷・破損したスイベルジョイントを取り外して別途用意した予備のスイベルジョイントに交換する必要があり、その交換のために操業を長時間中止しなければならないことから、メンテナンスに時間がかかって生産効率が大きく損なわれるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−105430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の技術的課題は、複数の真空槽を交互に切換えて使用する溶鋼の二次精錬装置において、装置全体の構成が従来に比べて簡単で、しかも、ダクトの連結部分に使用されるシール部材の交換等のメンテナンスが必要になった場合であっても、生産効率を大きく損なうことなく該メンテナンスを行うことができる二次精錬装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の溶鋼の二次精錬装置は、複数の真空槽と、各真空槽に配設され、基端側が該真空槽に連結された真空槽側ダクトと、上記真空槽内の溶鋼の脱ガス処理を行う真空排気装置と、各真空槽側ダクトの間の空間に配設され、基端側が該真空排気装置に取付けられた真空排気装置側ダクトと、選択された1つの真空排気装置側ダクト及び該真空排気装置側ダクトに隣接する1つの真空槽側ダクトを相互に連結させる連結ダクトと、上記真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトと連結ダクトとの間に介在させたシール部材とを有し、上記真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトは、各先端部に上方向きの開口が開設されていると共に、これらの各先端部はいずれも同じ高さ且つ等間隔となるようにそれぞれ配設され、上記連結ダクトは、一端部が真空排気装置側ダクトの先端部に、他端部が該真空排気装置側ダクトに隣接する真空槽側ダクトの先端部にそれぞれ気密に連結される、下方向きの開口が形成された逆U字形のダクト本体部と、該ダクト本体部を、選択された真空排気装置側ダクト及び真空槽側ダクトとの連結位置に水平に移動させる水平移動手段と、上記ダクト本体部を鉛直に昇降させて、該ダクト本体部の両端部と上記真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各先端部とを離接させる昇降手段とを備え、上記シール部材は、上記ダクト本体部の端部と、上記真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの先端部とのうち、少なくとも一方に開口を取り囲むように取付けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、上記真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各先端部は直列に配設されていて、上記連結ダクトの水平移動手段は、ダクト本体部をこれら真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各先端部の配設方向に沿って直線的に移動させるものとすることができる。
【0010】
このとき、上記連結ダクトの水平移動手段は、真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各先端部の配設方向に延びるレールと、該レール上を移動する台車とを備え、該台車上に上記ダクト本体部及び昇降手段が配設されているものとすることが好ましい。
また、この場合、上記連結ダクトの昇降手段は、上記台車上に設けられた架台と、一端側がダクト本体部に取付けられて、該ダクト本体部を架台に吊り下げるワイヤーと、該ワイヤーを長さ方向に移動させるアクチュエータとを備え、該アクチュエータの駆動によってワイヤーを長さ方向に移動させることによりダクト本体部が昇降される構成であるものとすることができる。
あるいは、上記連結ダクトの昇降手段は、上記ダクト本体部から外方に張り出した梁部材と、上記台車上に配設されて、ピストンロッドの上下動により該梁部材を昇降させるアクチュエータとを有しているものとしてもよい。
【0011】
さらに、本発明においては、上記連結ダクトは、連結対象となる真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクト以外の真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各先端部の開口を閉塞する蓋部材を有しているものとすることができる。
また、本発明においては、上記シール部材は、内部に圧縮流体を供給することにより上方に膨出自在である環形のチューブ状に形成されているものとすることができる。
【0012】
さらに、本発明においては、上記真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各先端部、並びに連結ダクトのダクト本体部の両端部には、外方に張り出したフランジ部がそれぞれ形成されていて、上記シール部材は、該フランジ部における開口周縁に配設されているものとすることが好ましい。
この場合において、上記フランジ部は、該フランジ部を冷却する冷却手段が設けられているものとすることができる。
また、上記連結ダクトのフランジ部は、真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各フランジ部の上面に異物除去用の圧縮流体を吹き付ける流体噴射手段を備えているものとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上向きの開口が開設された真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各先端部をいずれも同じ高さ且つ等間隔となるように配設させる一方、連結ダクトのダクト本体部を、下方向きの開口が形成された逆U字形とし、真空槽の切り換え時には、該ダクト本体部を水平移動手段による水平移動させ、昇降手段によって真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの先端部上に載置あるいは離脱させる構成であるため、従来のようなスイベルジョイントを使用するもののように複雑な駆動手段や制御手段が必要なく、比較的単純な構成であることから、装置全体としての構成を容易なものとすることができる。
また、上記シール部材は、上記ダクト本体部の下方向きの端部と、真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの上方向きの先端部とのうち、少なくとも一方の開口周縁に取付けられているため、スイベルジョイントに比べてシール部材の交換を容易且つ短時間で行うことができ、これにより、そのメンテナンスのために長時間操業を停止する必要がなく、生産効率を大きく損なうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る溶鋼の二次精錬装置を概略的に示す図である。
【図2】図1のI−I線での拡大断面図である。
【図3】本発明に係る連結ダクト、並びに第1及び第2真空槽側ダクトの先端側、真空排気装置側ダクトの先端側を示す斜視図である。
【図4】連結ダクトにより第1真空槽側ダクトと真空排気装置側ダクトと連結した状態を示す一部破断正面図である。
【図5】連結ダクトにより第2真空槽側ダクトと真空排気装置側ダクトと連結した状態を示す一部破断正面図である。
【図6】ダクトの連結面の状態を示す要部拡大断面である。ただし、右半は左半と対象であるため省略している。
【図7】連結ダクトの昇降手段の異なる実施の形態を示す側面図である。
【図8】同正面図である。
【図9】本発明に係る溶鋼の二次精錬装置の異なる実施の形態を概略的に示す図である。
【図10】図6とは異なるダクトの連結面の状態を示す要部拡大断面である。ただし、右半は左半と対象であるため省略している。
【図11】図6とはさらに異なるダクトの連結面の状態を示す要部拡大断面である。ただし、右半は左半と対象であるため省略している。
【図12】図6とはさらに異なるダクトの連結面の状態を示す要部拡大断面である。ただし、右半は左半と対象であるため省略している。
【図13】図6とはさらに異なるダクトの連結面の状態を示す要部拡大断面である。ただし、右半は左半と対象であるため省略している。
【図14】従来の二次精錬装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図6は、本発明の溶鋼の二次精錬装置の一実施の形態を示すもので、この実施の形態の二次精錬装置は、第1真空槽1及び第2真空槽2と、これらの第1及び第2真空槽1,2にそれぞれ配設され、基端側が各真空槽1,2に連結された第1真空槽側ダクト3及び第2真空槽側ダクト4と、上記第1及び第2真空槽内1,2の溶鋼の脱ガス処理を行う1つの真空排気装置(図示せず)と、第1及び第2真空槽側ダクト3,4の間の空間に配設され、基端側が該真空排気装置に取付けられた真空排気装置側ダクト5とを有している。
さらに、上記真空排気装置側ダクト5と第1真空槽側ダクト3又は第2真空槽側ダクト4とを相互に連結させる連結ダクト6と、上記各真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5と連結ダクト6との間に介在させたシール部材7Aとを有している。
【0016】
上記第1及び第2真空槽1,2は、いわゆるRH法と呼ばれる二次精錬方法に供されるもので、内部が耐火物によってライニングされ、下端側には、取鍋中の溶鋼を内部に吸い上げる吸上管1a,2a、及び脱ガス処理を行った溶鋼を取鍋に排出する排出管1b,2bがとそれぞれ設けられている。そして、上記第1真空槽1の上段部分には上記第1真空槽側ダクト3の基端部が、第2真空槽2の上段部分には第2真空槽側ダクト4の基端部がそれぞれ連結されていて、槽内の空間とダクト内とが連通された状態となっている。
【0017】
上記第1及び第2真空槽側ダクト3,4は、各先端部に上方向きの開口が開設されたもので、これら第1及び第2真空槽側ダクト3,4の各先端部8,9(より具体的には後述するフランジ部10,11における連結ダクト6と連結面側)は相互に同じ高さに保持された構成となっている。
また、第1及び第2真空槽側ダクト3,4の各先端部8,9における開口の周縁には、外方に直角に張り出したフランジ部10,11がそれぞれ設けられていて、上記連結ダクト6と連結される上向きの連結面が形成された態様となっている。
なお、第1及び第2真空槽側ダクト3,4は、いずれも、途中にガスクーラー等の各種設備が介在されていると共に、その設備設置部分から先端側の部分が上方向きに延設されたものとなっており、その上方向きに延設された部分の上端部分が上記先端部8,9を構成している。
【0018】
上記真空排気装置は、上記第1真空槽1内又は第2真空槽2内の雰囲気を減圧し、溶鋼から排出されたガスを真空槽1,2から強制的に排気させるものである。
一方、上記真空排気装置側ダクト5は、基端部が上記真空排気装置に連結され、先端部12に上方向きの開口が開設されたもので、該開口の周縁には、外方に直角に張り出したフランジ部13が設けられ、上記連結ダクト6と連結される上向きの連結面が形成された構成となっている。
なお、この実施の形態の真空排気装置側ダクト5は、図1及び図2に示すように、途中で上方に折れ曲がり、そこから先端部12までが上方向きに延設された態様となっている。さらに、先端部12の開口は、上記第1真空槽側ダクト3及び第2真空槽側ダクト4の各開口の内径とほぼ同じ大きさに形成され、フランジ部13の形状及び大きさもほぼ同じとなっている。
【0019】
また、上記真空排気装置側ダクト5の先端部12(具体的にはフランジ部13の連結ダクト6との連結面側)は、第1及び第2真空槽側ダクト3,4の各先端部8,9(具体的には各フランジ部10,11の連結ダクト6との連結面側)と同じ高さであって、且つ第1及び第2真空槽側ダクト3,4の各先端部8,9が結ぶ直線上に位置するように保持されている。したがって、これらの真空排気装置側ダクト5、第1及び第2真空槽側ダクト3,4のすべての先端部8,9,12が水平な一直線上に直列に並んだ状態となる。
さらに、この真空排気装置側ダクト5の先端部12は、第1及び第2真空槽側ダクト3,4の各先端部8,9の間の空間の中央に配置されていて、第1真空槽側ダクト3との間の間隔と第2真空槽側ダクト4との間の間隔が等間隔となるように配設されている。
【0020】
上記連結ダクト6は、図3〜図5に示すように、下方向きの開口が形成された逆U字形のダクト本体部14と、該ダクト本体部14を、上記真空排気装置側ダクト5と、選択された第1又は第2真空槽側ダクト3,4のいずれかとの連結位置に水平に移動させる水平移動手段15と、上記ダクト本体部14を鉛直に昇降させて、該ダクト本体部14の両端部16,16を、上記真空排気装置側ダクト5の先端部12及びいずれかの真空槽側ダクト3,4の各先端部8,9に離接させる昇降手段17とを備えている。
【0021】
上記ダクト本体部14は、下方向きの両端部16,16に上記開口が開設された筒状のもので、上記真空排気装置側ダクト5と第1又は第2真空槽側ダクト3,4とを連結する際、いずれかの一端部が真空排気装置側ダクト5の先端部12に、他端部が第1又は第2真空槽側ダクト3,4の先端部8,9に、上記シール部材7Aを介してそれぞれ気密に連結する構成となっている。そして、上向きに開設された上記真空排気装置側ダクト5の開口、第1又は第2真空槽側ダクト3,4の各開口を通じて、真空排気装置側ダクト5及びいずれか一方の真空槽ダクト2,4の内部空間と連通するようになっている。
【0022】
上記ダクト本体部14の両端部16,16における各開口の周縁には、外方に直角に張り出したフランジ部18,18がそれぞれ設けられ、上記真空排気装置側ダクト5と第1又は第2真空槽側ダクト3,4の各先端部8,9との連結面が形成された構成となっている。
なお、この実施の形態においては、両端部16,16の各開口は、上記真空排気装置側ダクト5、第1及び第2真空槽側ダクト3,4の各開口の内径とほぼ同じ大きさに形成されていて、フランジ部18,18も、これらの真空排気装置側ダクト5、第1及び第2真空槽側ダクト3,4のフランジ部10,11,13とほぼ同じ形状となっている。
【0023】
上記水平移動手段15は、第1及び第2真空槽側ダクト3,4、並びに真空排気装置側ダクト5の各先端部8,9,12の配設方向に沿って平行に延びる一対のレール19,19と、これらの一対のレール19,19上を移動する台車20とを備えている。
上記一対のレール19,19は、上記真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクトの5先端部8,9,12の高さとほぼ同じ高さにこれらの先端部8,9,12を挟むように設けられた水平且つ相互に平行な一対の架構梁21,21上に固定されている。
一方、上記台車20は、上記ダクト本体部14及び昇降手段17を一体的且つ水平に移動させる略矩形状の台車本体20aと、該台車本体20aに取付けられて上記一対のレール上19,19を転がる複数の車輪20bとを有している。なお、上記台車本体20aは、上記ダクト本体部14の両端部16,16が位置する部分が中空となっており、該ダクト本体部14の真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5との連結を阻害しないように構成されている。
【0024】
上記昇降手段17は、上記台車20上に設けられた架台22と、一端側がダクト本体部14に取付けられ、該ダクト本体部14を架台22に吊り下げる2本のワイヤー23,23と、これらの各ワイヤー23,23を長さ方向に移動させてダクト本体部14を昇降させる、アクチュエータとしての2つの流体圧シリンダ24,24とを備えていて、2本のワイヤー23、23をそれぞれ同じ長さ方向に移動させることにより、ダクト本体部14を昇降させるように構成されている。
【0025】
具体的に、上記架台22は、上記台車20の台車本体20a上面から上方に延びる同じ高さの4本の柱22aと、これらの柱22a上に固定された枠体22bとで形成されていて、該枠体22b上面には後述する4つのワイヤーシーブが取付けられている。
また、上記各流体圧シリンダ24,24は、上記台車本体20a上におけるレール19,19に沿う側端部にそれぞれ配設されたもので、シリンダチューブ内のピストンの駆動により上下方向に移動するピストンロッド24aを備えている。そして、各流体圧シリンダ24,24のピストンロッド24a,24aの先端部には、上記ワイヤー23,23におけるダクト本体部14との取付側とは反対の端側がそれぞれ固定されていて、ピストンロッド24a,24aが上下方向に移動することによりワイヤー23,23を長さ方向に移動させるようになっている。
【0026】
上記2本のワイヤー23,23は、相互に平行になるように張られたもので、図3に示すように、各ワイヤー23,23は、上記ピストンロッド24a,24aの先端部から上方に延びて、上記架台22の枠体22b上面に配設された第1のワイヤーシーブ25,25により、枠体22bの中央方向に向けて略水平に転向されて、該枠体22bの中央近傍に配設された第2のワイヤーシーブ26,26により鉛直下方向にさらに転向され、端部が上記ダクト本体部14の軸線上(レールと平行な中心線上)の上面にそれぞれ固定されている。これにより、上記ダクト本体部14は、台車20のほぼ中央に上方から吊り下げられることになる。
そして、上記2つの流体圧シリンダ24,24の両ピストンロッド24a,24aを同時に下降させることにより、これらのワイヤー23,23がダクト本体部14を引っ張り上げ、水平状態を保ったまま上昇させる。逆に、両ピストンロッド24a,24aを同時に上昇させることにより、これらのワイヤー23,23が逆方向に移動し、ダクト本体部14を水平状態を維持させながら下降させる。
【0027】
なお、この実施の形態においては、ワイヤー24を長さ方向に移動させる上記アクチュエータとして流体圧シリンダを使用しているが、このアクチュエータとしては、例えばワイヤーの巻取りあるいは送出しを行う電動モータを使用するなど、任意のものを用いることができる。
【0028】
また、上記連結ダクト6には、連結対象となる第1真空槽側ダクト3と第2真空槽側ダクト4のうち、連結対象ではない真空槽側ダクトの先端部の開口を閉塞する2つの蓋部材27,27が取付けられている。
具体的に、これらの蓋部材27,27は、上記第1真空槽側ダクト3と第2真空槽側ダクト4の先端部8,9の開口を覆うことができる大きさに形成された円板状のもので、上記ダクト本体部14から該ダクト本体部14の軸線方向(レール19,19と平行な方向)に突出する一対の梁部材28,28からワイヤー等の線材29によってそれぞれ吊り下げられている。
なお、上記蓋部材27は、下面が上記ダクト本体部14の両端部16,16の連結面と同じ高さとなるように設定されていて、上記昇降部材17によるダクト本体部14の昇降に伴って、閉塞対象となる第1真空槽側ダクト3又は第2真空槽側ダクト4の先端部8,9の各連結面に離接するようになっている。
【0029】
上記シール部材7Aは、図6に示すように、各ダクトの開口を取り囲む大きさを有するOリング状のもので、この実施の形態においては、真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各先端部8,9,12、具体的にはフランジ部10,11,13の連結面上にそれぞれ配設しており、連結ダクト6との連結時に、ダクト本体部14の両端部16,16の連結面との間に挟まれるようにしている。そして、このシール部材7Aは、ダクト本体部14の自重と、真空排気装置による負圧とにより、ダクト本体部14の連結面に押圧され、該ダクト本体部14の連結面と真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の連結面との間を気密にシールする構造となっている。
上述のように真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の側にシール部材7Aを取付けたのは、これらの真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各先端部8,9,12の連結面がすべて上方向きであるためで、これにより、シール部材7Aの状況を目視で簡単に確認することが可能となるだけでなく、交換作業も非常に容易となる。
【0030】
上記構成を有する二次精錬装置は、例えば第1真空槽1によって二次精錬を行う場合には、図4に示すように、上記連結ダクト6を、ダクト本体部14の一端側(図4の場合、左側の端部)が第1真空槽側ダクト3に、他端側(図4の場合、右側の端部)が真空排気装置側ダクト5に連結される位置に、水平移動手段15によって水平移動させる。そして、昇降手段17によってダクト本体部14を降下させて、該ダクト本体部14の両端部16,16を第1真空槽側ダクト3及び真空排気装置側ダクト5の各先端部8,12上に載置させることにより連結させ、これら第1真空槽側ダクト3と真空排気装置側ダクト5とを連結ダクト6を介して連通させた後、操業を開始する。なお、その際、第2真空槽側ダクト4の先端部8の開口は蓋部材27によって閉塞される。
【0031】
その後、第2真空槽2によって二次精錬を行う場合には、一旦操業を停止した上で、上記ダクト本体部14を昇降手段17によって上昇させることにより、両端部16,16を第1真空槽側ダクト3及び真空排気装置側ダクト5から離脱させて連結を解除させる。
そして、図5に示すように、連結ダクト6を、水平移動手段15により、ダクト本体部14が第2真空槽側ダクト4及び真空排気装置側ダクト5と連結される位置(図5の場合、ダクト本体部14の左側の端部16が真空排気装置側ダクト5に、右側の端部16が第2真空槽側ダクト4にそれぞれ連結される位置)に水平移動させる。その後、昇降手段17によってダクト本体部14を降下させて、該ダクト本体部14の両端部16,16と第2真空槽側ダクト4及び真空排気装置側ダクト5の先端部9,12とを連結させることにより、これら第2真空槽側ダクト4と真空排気装置側ダクト5とを連結ダクト6を介して連通させ、再び操業を開始する。なお、その際、第1真空槽側ダクト3の先端部8の開口は蓋部材27によって閉塞される。
【0032】
このとき、上向きの開口が開設された上記第1及び第2真空槽側ダクト3,4の各先端部8,9並びに真空排気装置側ダクト5の先端部12を、いずれも同じ高さ且つ等間隔となるように保持させる一方、連結ダクト6のダクト本体部14を、下方向きの開口が形成された逆U字形とし、真空槽の切り換え時には、該ダクト本体部14を、水平移動手段15により水平移動させると共に昇降手段17によって第1又は第2真空槽側ダクト3,4、及び真空排気装置側ダクト5の各先端部8,9,12上に載置あるいは離脱させる構成であるため、構造が複雑なスイベルジョイントを使用する必要がなく、装置全体としての構成を容易なものとすることができる。また、上記連結ダクト6は、ダクト本体部14の両端部16,16を上記第1及び第2真空槽側ダクト3,4と真空排気装置側ダクト5上に載置するだけで、該ダクト本体部の14自重と真空排気装置による負圧によって各ダクト3,4,5に連結することが可能となるため、従来のようなスイベルジョイントを使用したもののように、ダクト連結のために複雑な駆動手段や制御手段が必要なく、これにより、装置全体の構成をより簡単にすることができる。
【0033】
さらに、上記シール部材7Aを、第1及び第2真空槽側ダクト3,4、真空排気装置側ダクト5の上方向きの先端部8,9,12にそれぞれ取付けたことにより、スイベルジョイントに比べてシール部材の交換を容易且つ短時間で行うことができ、これにより、そのメンテナンスのために長時間操業を停止する必要がなく、生産効率を大きく損なうことが防止される。
【0034】
上記実施の形態においては、上記連結ダクト6の昇降手段17を、上記台車20上に設けられた架台22と、ダクト本体部14を該架台22から吊り下げるワイヤー23,23と、これらのワイヤー23,23を長さ方向に移動させるアクチュエータ(流体圧シリンダ24,24)とを備え、該アクチュエータの駆動によってワイヤー23,23を長さ方向に移動されることによりダクト本体部が昇降される構成としていたが、連結ダクトの昇降手段としては、このような構成に限らず、例えば図7及び図8に示すようにワイヤーを使用しない構成とすることができる。
なお、図7及び図8においては、上記昇降手段以外の部分は、基本的に上述の実施の形態と同じ構成、同じ作用効果であるため、同様の符号を付して説明は省略する。
【0035】
具体的に、この図7及び図8に示す昇降手段30は、上記ダクト本体部14からその軸線方向と直交する外方に張り出した複数の梁部材31と、上記台車20の台車本体20a上に配設されて、ピストンロッド32aの上下動によりそれらの梁部材31を昇降させる複数の流体圧シリンダ32とを有している。
上記複数の梁部材31は、いずれも基端側がダクト本体部14に取付けられて、すべて同じ高さで且つ水平に延設されている。図7及び図8に示すものの場合、4本の梁部材31を用いており、ダクト本体部14の軸線を中心として、両面側(図7の場合の左右両側、図8の場合の正面側および背面側)に2本ずつ、相互に対称となる位置に配置している。また、上記各梁部材31は、ダクト本体部14の軸線に沿う方向に延びる一対のフレームを備えた支持台33上に取付けられており、各梁部材30はこの支持台33を介して流体圧シリンダ32の鉛直方向の駆動力が伝達されるようになっている。
【0036】
上記各流体圧シリンダ32は、シリンダチューブが上記台車本体上に取付けられて、ピストンロッドが鉛直方向に上下動する構成のもので、図7及び図8に示すものの場合、4つの流体圧シリンダを配設している。各流体圧シリンダは、ピストンロッド32aの先端が上記支持台33の底面側に取付けられていて、該ピストンロッド32aを上方に移動させることにより支持台33を持ち上げて、全部の支持梁30を上昇させ、ダクト本体部14を上昇させる。逆に、ピストンロッド32aを下方に移動させることにより支持台33を降ろし、これにより全部の支持梁30を降ろしてダクト本体部14を降下させ、ダクト本体部14を第1又は第2真空槽側ダクト3,4の先端部8,9、及び真空排気装置側ダクト5の先端部12上に載置させる。
【0037】
上記構成の昇降手段30を有する連結ダクト6を備えた二次精錬装置であっても、基本的には上記実施の形態と同じ作用及び効果を得られるが、架台が不必要であるため、上記実施の形態の場合に比べて連結ダクト全体をコンパクト化することが可能となる。
【0038】
なお、この昇降手段においては、梁部材を昇降させるアクチュエータとして複数の流体圧シリンダを使用しているが、電動シリンダなど、任意のものを用いることができる。
【0039】
ところで、上記実施の形態においては、1つの真空排気装置側ダクト5と、2つの真空槽側ダクト3,4を備えた二次精錬装置について説明したが、二次精錬装置は、図9に概略的に示すような、複数の真空排気装置側ダクトと、3つ以上の真空槽側ダクトとを備えたものであってもよい。
【0040】
具体的に説明すると、図9の二次精錬装置は、第1〜第3の3つの真空槽34,35,36と、1つの真空排気装置37とを備えたもので、各真空槽に連結された第1〜第3の3つ真空槽側ダクト38,39,40と、第1及び第2真空槽側ダクト38,39の間の空間に配設された第1真空排気装置側ダクト41と、第2及び第3真空槽側ダクト39,40の間の空間に配設された第2真空排気装置側ダクト42とを有しており、各ダクト38〜42の先端部は、いずれも同じ高さ且つ相互に同じ間隔であって、しかも水平な一直線上に直列に並んだ状態で保持されている。
また、上記2本の真空排気装置側ダクト41,42は、真空排気装置37に連結された単一のダクト43を2本に分岐させることにより形成されていて、各真空排気装置側ダクト41,42の基端側には、各真空排気装置側ダクト41,42内における真空排気装置37側の空間と外気とを遮断する第1及び第2遮断弁44,45がそれぞれ設けられている。
なお、これ以外の各真空排気装置側ダクトの構成、及び真空槽側ダクトの構成は、基本的に上記実施の形態とほぼ同じ構成であり、同様の作用効果を有していることから、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0041】
上記構成を有する二次精錬装置は、例えば第1真空槽34によって二次精錬を行う場合には、上記連結ダクト6を、ダクト本体部の一端側が第1真空槽側ダクト38に、他端側が第1真空排気装置側ダクト41に連結される位置(図9中のAの位置。即ち、ダクト本体部の右側の端部が第1真空排気装置側ダクト41に、左側の端部が第1真空槽側ダクト38にそれぞれ連結される位置)に、水平移動手段によって水平移動させ、昇降手段によってダクト本体部を降下、連結させる。このとき、第1遮断弁44は開放される一方、第2遮断弁45は閉鎖される。
【0042】
また、第2真空槽35によって二次精錬を行う場合には、一旦操業を停止した上で、連結ダクト6のダクト本体部を昇降手段によって上昇させる。そして、連結ダクト6を、ダクト本体部の両端部が第2真空槽側ダクト39及び第1真空排気装置側ダクト41の各先端部に連結される位置(図9中のBの位置。即ち、ダクト本体部の右側の端部が第2真空槽側ダクト39に、左側の端部が第1真空排気装置側ダクト41にそれぞれ連結される位置)、あるいは第2真空槽側ダクト39及び第2真空排気装置側ダクト42に連結される位置(図9中のCの位置。即ち、ダクト本体部の右側の端部が第2真空排気装置側ダクト42に、左側の端部が第2真空槽側ダクト39にそれぞれ連結される位置)のいずれか一方の位置に水平移動手段によって移動させ、その後、昇降手段によってダクト本体部を降下、連結させる。ここで、第2真空槽側ダクト39及び第1真空排気装置側ダクト41が連結される場合には、第1遮断弁44は開放され、第2遮断弁45は閉鎖される。一方、第2真空槽側ダクト39及び第2真空排気装置側ダクト42が連結される場合には、第1遮断弁44は閉鎖され、第2遮断弁45は開放される。
【0043】
さらに、第3真空槽36によって二次精錬を行う場合には、一旦操業を停止してダクト本体部を昇降手段によって上昇させた後、連結ダクト6を、ダクト本体部の両端部が第3真空槽側ダクト40及び第2真空排気装置側ダクト42の各先端部と連結される位置(図9中のDの位置。即ち、ダクト本体部の右側の端部が第3真空槽側ダクト40に、左側の端部が第2真空排気装置側ダクト42にそれぞれ連結される位置)に、水平移動手段によって移動させ、昇降手段によってダクト本体部を降下、連結させる。このとき、第1遮断弁44は閉鎖される一方、第2遮断弁45は開放される。
【0044】
このように、二次精錬装置が複数の真空排気装置側ダクトと、3つ以上の真空槽側ダクトとを備えていた場合であっても、基本的には上記実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、複数の真空排気装置側ダクトと、3つ以上の真空槽側ダクトとを備えている場合、従来のようなスイベルジョイントを使用するタイプのものは、真空排気装置側ダクトや真空槽側ダクトが増えるに伴ってダクト連結のための複雑な駆動手段や制御手段を増設する必要があるため、装置全体がより複雑化する上、シール部材の交換等のメンテナンスが非常に面倒で長い時間を要し、生産効率がより一層低下する可能性があるが、図9に係るものの場合にはこのような欠点がなく、装置全体の構成が規模の割に簡易であり、しかもメンテナンスも容易である。
【0045】
また、上記実施の形態においては、上記シール部材7Aを、真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各フランジ部10,11,13のそれぞれに設けたものしているが、連結ダクト6のダクト本体部14の連結面にのみ配設してもよく、あるいはダクト本体部14の連結面と真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各連結面とにそれぞれ設けてもよい。
さらに、上記実施の形態では、真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各フランジ部10,11,13の連結面上に、Oリング状のシール部材7Aを1つ取付けたものとしているが、図10に示すよう、大小異なる径のOリング状のシール部材7B,7Cを用い、小径のシール部材7Cをダクトの開口周縁を取囲む位置に、大径のシール部材7Bを小径のシール部材7Cの外側の位置にそれぞれ配置するようにしてもよい。これにより、開口周縁の小径のシール部材7Cが損傷したとしても大径のシール部材7Bが機能するため、より確実に気密性が確保される。
【0046】
また、上記シール部材は、図11に示すように、内部に圧縮流体を供給することにより上下方向に拡縮自在である、ダクトの開口を囲むように形成された平面視環形のチューブ状に形成されたものとしてもよい。
具体的に、図11のシール部材7Dは、耐熱性に優れたゴムで形成されたもので、真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各フランジ部10,11,13の連結面上に各ダクトの開口を囲むように設けられた凹状の設置溝46内に収容されている。そして、その設置溝46の溝底側に設けられた供給管47を通じて内部に圧縮流体(例えば圧縮エア)が供給されることにより上方(高さ方向)に膨張して断面略矩形枠状となり、上部側が設置溝46の上面開口から膨出する。これにより、このシール部材7Dが、真空槽側ダクト3,4又は真空排気装置側ダクト5の各フランジ部10,11,13上に載置されたダクト本体部14のフランジ部18の連結面に対して、弾性的に圧接して密着する構成となっている。
このような構成とすることにより、連結ダクト6のダクト本体部14や、真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各据付精度、あるいは熱の影響によって各フランジ部10,11,13,18が変形した場合等、各フランジ部の連結面の高さに誤差が生じた場合であっても、シール部材7Dを膨張させることによって連結面の高さの誤差が解消されるため、ダクト本体部14の連結面と真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の連結面との間を安定的且つ確実にシールすることができる。
【0047】
さらに、この場合においては、図12に示すように、図11で示した構成に係る上述のチューブ状のシール部材7D(なお、設置溝46、供給管47も同じ構成としている。)に加えて、図10で示した構成に係る上述の大小異なる径のOリング状のシール部材7B,7Cを用い、フランジ部10,11,13上において、小径のシール部材7Cをチューブ状のシール部材7Dよりも開口縁側に、大径のシール部材7Bをチューブ状のシール部材7Dよりも外方側に配置して、該チューブ状のシール部材7Dが大小Oリング状のシール部材7B,7Cの中間に配設された構成としてもよい。
これにより、各フランジ部10,11,13,18の連結面の高さの誤差を柔軟且つ適切に解消することができる上、シール性の一層の向上を図ることができ、しかも、いずれかのシール部材7B〜7Cが損傷したとしても、他のシール部材が確実に機能するため、より安定的に且つ確実に気密性を確保することができる。さらには、仮にチューブ状のシール部材7Dが損傷して膨張用の圧縮流体が漏れたとしても、ダクト本体部14の連結面と真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各連結面とが連結している際には、その膨張用の圧縮流体が大小のOリング状のシール部材7B,7Cによってダクト内外に漏出することが防がれる。
【0048】
また、連結ダクト6のダクト本体部14のフランジ部18には、図13に示すように真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各フランジ部10,11,13の上面(即ち、連結面)に異物除去用の圧縮流体を吹き付ける流体噴射手段48を配設してもよい。
具体的に、図13に示す流体噴射手段48は、ダクト本体部14のフランジ部18の上面側に圧縮流体を流通させる圧縮流体用流路48aに設けると共に、フランジ部18に該フランジ部18の下面から下方に向けて圧縮流体を噴射する噴射ノズル48bを設けたものとなっている。なお、図13においては、図12に示すものと同じ構成のチューブ状のシール部材7D(設置溝46、供給管47も同じ構成)、及び大小径のO状のシール部材7B,7Cを採用している。
上記流体噴射手段48を設けたことにより、溶鋼の二次精錬操業中に真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各フランジ部10,11,13の連結面、特にシール部材7B〜7Dに付着、堆積した粉塵を圧縮エア等の圧縮流体によって吹き飛ばすことができるため、ダクト本体部14のフランジ部18の連結面と真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各フランジ部10,11,13の連結面の安定的な連結、及びシール部材による確実な気密性を維持することができる。
【0049】
なお、図13に係る流体噴射手段は、シール部材を真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各フランジ部のそれぞれの連結面に設けた場合を示しているが、この流体噴射手段は、シール部材を上記連結ダクトのダクト本体部のフランジ部のみ、あるいはダクト本体部と真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトとの各フランジ部に配置されている場合であっても設けることが可能である。また、シール部材の形状、構成に関わらず設けることができる。しかしながら、この流体噴出手段は、上記実施の形態のように、必ずしも設けなくてもよく、溶鋼の二次精錬を操業する環境の状況に応じて設置の有無を任意に選択することができる。
【0050】
さらに、上記連結ダクト6のダクト本体部14や、真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各フランジ部10,11,13,18には、図13に示すように、これらの各フランジ10,11,13,18を冷却して熱による変形を防止する冷却手段49を設けてもよい。これにより、ダクト本体部14のフランジ部18の連結面と真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5の各フランジ部10,11,13の連結面との熱による互いの歪みを抑えて、安定的な相互連結を維持することができる。
上記冷却手段49としては、冷却水を通水した水冷パイプや容器等を用いることができ、図13に示すものの場合、この冷却手段49は、ダクト本体部14は、フランジ部18の上面のダクト側に、真空槽側ダクト3,4及び真空排気装置側ダクト5は、各フランジ部10,11,13,18の下面のダクト側に設けられて、ダクトからの熱が各フランジ部の外方側に伝熱されるのを抑えられるような配置としている。
【0051】
なお、この冷却手段は、シール部材が、上記連結ダクトのダクト本体部のフランジ部のみ、真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各フランジ部のみ、あるいはダクト本体部と真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトとの各フランジ部に配置されている場合でも設けることが望ましい。しかしながら、この冷却手段は、上記実施の形態のように、必ずしも設けなくてもよく、溶鋼の二次精錬を操業する環境の状況に応じて設置の有無を任意に選択することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 :第1真空槽
2 :第2真空槽
3 :第1真空槽側ダクト
4 :第2真空槽側ダクト
5 :真空排気装置側ダクト
6 :連結ダクト
7A〜7D :シール部材
8 :第1真空槽側ダクトの先端部
9 :第2真空槽側ダクトの先端部
10:第1真空槽側ダクトのフランジ部
11:第2真空槽側ダクトのフランジ部
12:真空排気装置側ダクトの先端部
13:真空排気装置側ダクトのフランジ部
14:ダクト本体部
15:水平移動手段
16:ダクト本体部の端部
17:昇降手段
18:ダクト本体部のフランジ部
20:台車
27:蓋部材
48:流体噴射手段
49:冷却手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の真空槽と、各真空槽に配設され、基端側が該真空槽に連結された真空槽側ダクトと、上記真空槽内の溶鋼の脱ガス処理を行う真空排気装置と、各真空槽側ダクトの間の空間に配設され、基端側が該真空排気装置に取付けられた真空排気装置側ダクトと、選択された1つの真空排気装置側ダクト及び該真空排気装置側ダクトに隣接する1つの真空槽側ダクトを相互に連結させる連結ダクトと、上記真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトと連結ダクトとの間に介在させたシール部材とを有し、
上記真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトは、各先端部に上方向きの開口が開設されていると共に、これらの各先端部はいずれも同じ高さ且つ等間隔となるようにそれぞれ配設され、
上記連結ダクトは、一端部が真空排気装置側ダクトの先端部に、他端部が該真空排気装置側ダクトに隣接する真空槽側ダクトの先端部にそれぞれ気密に連結される、下方向きの開口が形成された逆U字形のダクト本体部と、該ダクト本体部を、選択された真空排気装置側ダクト及び真空槽側ダクトとの連結位置に水平に移動させる水平移動手段と、上記ダクト本体部を鉛直に昇降させて、該ダクト本体部の両端部と上記真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各先端部とを離接させる昇降手段とを備え、
上記シール部材は、上記ダクト本体部の端部と、上記真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの先端部とのうち、少なくとも一方に開口を取り囲むように取付けられていることを特徴とする溶鋼の二次精錬装置。
【請求項2】
上記真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各先端部は直列に配設されていて、上記連結ダクトの水平移動手段は、ダクト本体部をこれら真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各先端部の配設方向に沿って直線的に移動させることを特徴とする請求項1の溶鋼の二次精錬装置。
【請求項3】
上記連結ダクトの水平移動手段は、真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各先端部の配設方向に延びるレールと、該レール上を移動する台車とを備え、該台車上に上記ダクト本体部及び昇降手段が配設されていることを特徴とする請求項2の溶鋼の二次精錬装置。
【請求項4】
上記連結ダクトの昇降手段は、上記台車上に設けられた架台と、一端側がダクト本体部に取付けられて、該ダクト本体部を架台に吊り下げるワイヤーと、該ワイヤーを長さ方向に移動させるアクチュエータとを備え、該アクチュエータの駆動によってワイヤーを長さ方向に移動させることによりダクト本体部が昇降される構成であることを特徴とする請求項3に記載の溶鋼の二次精錬装置。
【請求項5】
上記連結ダクトの昇降手段は、上記ダクト本体部から外方に張り出した梁部材と、上記台車上に配設されて、ピストンロッドの上下動により該梁部材を昇降させるアクチュエータとを有していることを特徴とする請求項3に記載の溶鋼の二次精錬装置。
【請求項6】
上記連結ダクトは、連結対象となる真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクト以外の真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各先端部の開口を閉塞する蓋部材を有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の溶鋼の二次精錬装置。
【請求項7】
上記シール部材は、内部に圧縮流体を供給することにより上方に膨出自在である環形のチューブ状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の溶鋼の二次精錬装置。
【請求項8】
上記真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各先端部、並びに連結ダクトのダクト本体部の両端部には、外方に張り出したフランジ部がそれぞれ形成されていて、上記シール部材は、該フランジ部における開口周縁に配設されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の溶鋼の二次精錬装置。
【請求項9】
上記フランジ部は、該フランジ部を冷却する冷却手段が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の溶鋼の二次精錬装置。
【請求項10】
上記連結ダクトのフランジ部は、真空槽側ダクト及び真空排気装置側ダクトの各フランジ部の上面に異物除去用の圧縮流体を吹き付ける流体噴射手段を備えていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の溶鋼の二次精錬装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−285685(P2010−285685A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270957(P2009−270957)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】