説明

溶鋼容器の内部に施工される耐火物を解体する際に発生する粉塵の飛散を防止する粉塵飛散防止方法

【課題】広範囲に霧を噴霧することにより、耐火物を解体する際に発生する粉塵の飛散を防止し、作業環境における所定の環境基準を満たす方法を提供する。
【解決手段】溶鋼を運搬する溶鋼容器10の内部に施工される耐火物13を解体する際に発生する粉塵の飛散防止方法であって、水と空気とを混合する噴霧ノズル20を用いて、粒子径が60μm以上150μm以下の霧を噴霧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火物の解体によって飛散した空気中の粉塵に対して、霧を噴霧することで、空気中に浮遊する当該粉塵の飛散を防止する粉塵飛散防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶鋼容器の内部に施工される耐火物を解体する際に発生する粉塵等の影響を抑制する手法として、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1には、溶鋼容器の内部に施工される耐火物を解体する解体設備において、当該溶鋼容器を解体する建屋の壁を防音壁にすると共に、当該建屋内部全体の空気を吸引する集塵装置を設けた技術が開示されている。また、特許文献2には、溶鋼容器の内部において昇降可能な足場を設け、当該足場の下方から解体された耐火物をダクトを介して吸引する技術が開示されている。
【0004】
また、建築・土木工事や解体工事等の作業場において、空気中に浮遊する粉塵等の飛散を防止する技術も種々提案されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
【0005】
特許文献3には、作業場を走行する車体に人工霧を噴霧するノズルを搭載し、当該作業場において大きさが50μm以下の水粒子を噴霧することで作業空間中に浮遊する粉塵等を抑制した技術が開示されている。また、特許文献4には、対象物を破砕するアームの中央部に霧を噴霧する機構を設けて、破砕箇所において破砕直後に霧を噴霧することで破砕作業で生じた粉塵が飛散するのを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−227281号公報
【特許文献2】特開昭53−127306号公報
【特許文献3】特開平11−343746号公報
【特許文献4】特開平11−036614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2では、集塵装置などの大型な設備が必要になる。また、上記特許文献3及び4では、水のみの散水であり、霧の噴射可能な範囲が狭く、建屋全体など広範囲の範囲で粉塵の飛散を防止することができない。そのため、作業環境における所定の環境基準を満たすことが難しかった。
【0008】
そこで、この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、広範囲に霧を噴霧することにより、耐火物を解体する際に発生する粉塵の飛散を防止し、作業環境における所定の環境基準を満たすことを可能にする粉塵飛散防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の粉塵飛散防止方法は、溶鋼を運搬する溶鋼容器の内部に施工される耐火物を解体する際に発生する粉塵の飛散防止方法であって、水と空気とを混合する噴霧ノズルを用いて、粒子径が60μm以上150μm以下の霧を噴霧する。
【0010】
この方法では、水のみの散水とは異なり、水と空気とを混合して霧を噴霧しているので、耐火物の解体に係る粉塵の飛散範囲が広い場合でも、所望の範囲まで霧を噴霧することができる。
また、この方法では、粒子径が150μm以下の霧を噴霧することにより、耐火物の解体に係る粉塵の飛散範囲を広範囲にカバーすることができると共に、粒子径が60μm以上の霧を噴霧することにより、飛散する粉塵の大部分を当該粒子径の霧で捕捉することができる。その結果、耐火物を解体する際に発生する粉塵の飛散を防止することができ、作業環境における所定の環境基準を満たすことが可能となる。即ち、作業環境の環境改善の対策として一般的な集塵機を設置することなく、所定の環境基準を満たすことが可能となる。
【0011】
上記した粉塵飛散防止方法において、好ましくは、噴霧ノズルは、溶鋼容器の外側に設けられ、溶鋼容器の開口部の外側に霧を噴霧する。
【0012】
この方法を用いることにより、耐火物に直接霧を吹き付けることなく、粉塵の飛散を防止することができる。従って、溶鋼容器の耐火物が、永久張りの耐火物と張替えが必要な耐火物との2層張りの場合など、永久張りの耐火物を濡らすことなく、粉塵の飛散を防止することができる。
【0013】
上記した粉塵飛散防止方法において、好ましくは、噴霧ノズルは、溶鋼容器の開口部の開口面から所定の距離だけ離間した位置に配置されており、且つ、当該噴霧ノズルの噴霧方向は、開口面に平行である。
【0014】
この方法を用いることにより、耐火物に直接霧を吹き付けることなく、粉塵の飛散を防止することができる。
【0015】
上記した粉塵飛散防止方法において、好ましくは、溶鋼容器は、傾倒した状態で解体され、当該傾倒した溶鋼容器の開口部の高さ方向の中心より上側及び下側のそれぞれに噴霧ノズルが配置されている。
【0016】
この方法を用いることにより、溶鋼容器の内部から飛散する粉塵に対して、開口部の上側及び下側の両方から霧を吹き付けることが可能となる。これにより、効果的に粉塵が飛散するのを防止することができる。
【0017】
上記した粉塵飛散防止方法において、好ましくは、傾倒した溶鋼容器の開口部の高さ方向の中心より上側に設けられる噴霧ノズルは、複数である。
【0018】
この方法を用いることにより、溶鋼容器の開口部から上方に向かって飛散する粉塵を、複数の噴霧ノズルから噴霧される霧によって確実に捕捉することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明による粉塵飛散防止方法では、上記のように、広範囲に霧を噴霧することが可能となり、耐火物を解体する際に発生する粉塵の飛散を防止することができ、作業環境における所定の環境基準を満たすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】取鍋の内部構造を示した断面図。
【図2】取鍋とノズルとの位置関係を示した正面模式図。
【図3】取鍋とノズルとの位置関係を示した平面模式図。
【図4】ノズルの噴霧角度を示した正面模式図。
【図5】A測定及びB測定の測定ポイントを示した図。
【図6】耐火物解体時に発生する粉塵の粒度分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態に係る粉塵飛散防止方法は、溶鋼を運搬する取鍋の内部に施工される耐火物を解体する際に使用され、水と空気とを混合する噴霧ノズルを用いて、粒子径が60μm以上150μm以下の霧を噴霧するものである。この粉塵飛散防止方法は、耐火物を解体する際に発生する多量の粉塵が空気中を浮遊する解体作業場において、当該浮遊粉塵を減少させる技術である。具体的には、耐火物の解体作業場の作業環境が、労働安全衛生法に規定される作業環境評価基準(第一管理区分又は第二管理区分)を満たすことを目的とする。
【0022】
<取鍋>
取鍋10は、鉄製の容器であって、図1に示すように、その内部には永久張りの煉瓦11及び下記の表1の組成比率を有する耐火物12が施工されている。この取鍋10の内部に施工される耐火物12は、使用する度に損傷していくため所定の回数の溶鋼を運搬をした後に、新しい耐火物12と交換する必要がある。そのため、当該耐火物12は、永久張りの煉瓦11を残して、重機などにより解体される。ここでは、重機に取り付けたブレーカ(図示せず)を用いて耐火物12に衝撃を与えて破壊する。本実施形態では、耐火物12を解体するブレーカを側方から取鍋10の内部に進入させるために、当該取鍋10は傾倒した状態で解体される。なお、ブレーカが進入する取鍋10の開口部13の直径は、4500mmである(図2参照)。
【0023】
【表1】

【0024】
<噴霧ノズル>
噴霧ノズル20a〜20dは、耐火物12の解体時に発生する粉塵が飛散しないように、空気中に浮遊する粉塵に対して粒子径が60μm以上150μm以下の霧を噴霧する。この噴霧ノズル20a〜20dは、いずれも水と空気とを混合して霧を噴霧する当業者常用の噴霧ノズルであって、鋳片の冷却用に使用される噴霧ノズルと同様のものを利用可能である。このようなノズルの具体例として、例えば、「株式会社 いけうち」の「微霧発生ノズルGSIM_sシリーズ」を採用することができる。この噴霧ノズル20a〜20dは、水量及びその水圧を調整することが可能な水経路と、空気量を調整することが可能な空気経路とを有し、当該経路から供給される水と空気とを混合することによって、霧を噴霧する。このノズル20a〜20dでは、水の粒子径の大きさを制御することが可能である。本実施形態では、水の粒子が耐火物12の粉塵(粉末粒子)に対して小さいと、耐火物12の粉塵を捕捉することができないので、霧の粒子径を60μm以上とする。また、水の粒子が耐火物12の粉塵が浮遊する領域であって、作業者の作業行動範囲まで十分に拡散するように、霧の粒子径を150μm以下とする。なお、霧の粒子径は、位相ドップラー式レーザー粒子分析器にて測定される。
【0025】
<噴霧ノズルの配置位置>
この噴霧ノズル20a〜20dは、いずれも取鍋10の外側に設けられており、取鍋10の開口部13の外側に霧を噴霧するようにし、取鍋10の内部に施工される煉瓦11や耐火物12に直接霧が噴霧されないようにしている。本実施形態では、傾倒した取鍋10の開口部13の開口面Sに直交する方向(Y方向)に関して、噴霧ノズル20a〜20dは、いずれも当該開口面Sから600mmだけ離間した位置に配置されている(図3参照)。また、傾倒した取鍋10の開口部13の幅方向(X方向)に関して、噴霧ノズル20a〜20dは、いずれも当該開口部13の幅方向の中心線C1から3650mmだけ離間した位置に配置されている(図2参照)。
【0026】
本実施形態では、図2に示すように、傾倒した取鍋10の開口部13の高さ方向(Z方向)の中心線C2より下側に1つの噴霧ノズル20aが配置されると共に、当該中心線C2より上側に3つの噴霧ノズル20d〜20bが配置されている。これらの噴霧ノズル20a〜20dは、下側から順に噴霧ノズル20a(以下、1段目噴霧ノズルとする)、噴霧ノズル20b(以下、2段目噴霧ノズルとする)、噴霧ノズル20c(以下、3段目噴霧ノズルとする)、噴霧ノズル20d(以下、4段目噴霧ノズルとする)の順に配置されており、1段目噴霧ノズル20aと2段目噴霧ノズル20bとは2400mmだけ離間し、2段目噴霧ノズル20bと3段目噴霧ノズル20cとは1100mmだけ離間し、3段目噴霧ノズル20cと4段目噴霧ノズル20dとは1000mmだけ離間している。
【0027】
<噴霧ノズルの噴霧角度>
図4に示すように、水平方向に関して、噴霧ノズル20a〜20dの噴霧角度は、いずれも取鍋10の開口部13の開口面Sに平行(X方向)である。また、垂直方向に関して、1段目噴霧ノズル20aの噴霧角度は、0°(水平方向)であって、2段目噴霧ノズル20bの噴霧角度は、水平方向から下方に15°であって、3段目噴霧ノズル20cの噴霧角度は、水平方向から下方に10°であって、4段目噴霧ノズル20dの噴霧角度は、水平方向から下方に5°である。
【0028】
<噴霧タイミング>
本実施形態では、取鍋10の解体の開始と同時に噴霧を開始し、且つ、取鍋10の解体の終了と同時に噴霧を終了する。
【実施例】
【0029】
以下、上記した一実施形態に係る粉塵飛散防止方法の技術的効果を確認するために行った実施例について説明する。この実施例では、取鍋の内部に施工される耐火物の解体作業場Gの周囲の作業者の作業場所F(図5参照)において、本発明に係る粉塵飛散防止方法を用いたときの環境測定を行った。この環境測定は、労働安全衛生法第65条に基づいて実施され、その環境測定の結果の評価は、下記の表2に示される第一管理区分〜第三管理区分に区分することにより行う。当該評価が第一管理区分の場合、作業環境が適切であるとし、第二管理区分の場合、作業環境の管理に改善の余地があり、適切な対策を行い第一管理区分に該当するように努める必要があるとし、第三管理区分の場合、作業管理が適切でなく、直ちに必要な対策を行い、良好な作業環境とする必要があるとした。
【0030】
【表2】

【0031】
上記した表2に記載される「測定対象物に係る別表に掲げる管理濃度」は、次のように求められる。即ち、本実施形態では、取鍋の内部に施工される耐火物を測定対象物としているので、測定対象物は、「土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉塵」であって、その管理濃度は、次式(1)により求められる。
E=3.0/(0.59Q+1)・・・(1)
ただし、
E:管理濃度(mg/m
Q:当該粉塵の遊離珪酸含有率(%)
とする。
【0032】
また、上記した表2に記載される「第一評価値」及び「第二評価値」は、それぞれ以下の式(2)及び式(3)により求められる。
【0033】
【数1】

【0034】
【数2】

【0035】
ただし、
EA:第一評価値
EA:第二評価値
:A測定の測定値の幾何平均値
σ:A測定の測定値の幾何標準偏差
なお、上記した「A測定」は、作業環境測定基準第二条第一項第一号から第二号までの規定により行う測定をいう。
また、上記した表2に記載される「B測定」は、作業環境測定基準第二条第一項第二号の二の規定により行う測定をいう。
【0036】
<A測定>
本実施例では、図5に示すように、13.5m×19.0mの取鍋の解体作業場Gに隣接する作業場所(以下、単位作業場所という)(単位作業場所の広さ:67.5m(13.5m×5.0m))Fにおいて、5つの測定点A1〜A5でA測定を行った。なお、上記した測定点及び単位作業場所は、作業環境測定基準第二条第一項第一号により規定されている。また、このA測定は、作業が定常的に行われている時間に行われる(同項第二号)。
【0037】
<B測定>
土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの発散源に近接する場所において作業が行われる単位作業場所にあっては、上記したA測定の他に、当該作業が行われる時間のうち、空気中の土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの濃度が最も高くなると思われる時間に、当該作業が行われる位置において測定を行うこと(同項第二号の二)、とする。この実施例では、図5に示すように、上記した単位作業場所Fにおいて、1つの測定点B1でB測定を行った。
【0038】
なお、解体作業場Gにおける取鍋は、図5に示すように、平面的に見て取鍋の右端が解体作業場Gの右辺から1.2m離間して配置されると共に、取鍋の底部が解体作業場Gの下辺から1.4m離間して配置されている。そして、当該取鍋の開口部は、作業場所Fの上辺に向くように配置されている。取鍋と噴霧ノズルとの位置関係は、上記したとおりである。
【0039】
また、上記したA測定及びB測定における各測定点における試料空気の採取時間は、十分間以上の継続した時間であって(同項第三号)、その測定方法は、「分粒装置を用いるろ過捕集方法及び重量分析方法」である(同項第四号イ)。ここで、上記した測定方法の詳細を紹介しておく。
サンプラー名称と型式:Gilin Air Con2 H.V.A Sampler
分析装置名称及び型式:慣性衝突式分粒装置NW-354
吸引流量:20L/min
補修時間:45分間
天秤の機器名及び型式:分析用電子天秤 HR-202i
ろ過材の種類:グラスファイバーろ紙 T60A20
【0040】
また、上記した遊離珪酸含有率の測定条件を紹介しておく。
この遊離珪酸含有率の測定は、エックス線回折分析方法又は重量分析方法によらなければならない(作業環境測定基準第二条の二)。
測定方法:エックス線回折分析方法
資料種類:堆積粉塵
粒度調整方法:再発じん法
【0041】
上記した条件において、噴霧ノズルの水量、空気量及び空気圧を調整して、水の粒子径を60μm〜150μmにした試験No.1〜No.16の測定結果を、以下の表3に示す。なお、比較例として、噴霧を実施しない試験No.17の測定結果も、表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
表3に示されるように、噴霧を実施しない試験No.17では、作業環境の評価が第三管理区分であったところ、水量、水圧、空気圧を各々調整して粒子径が60μm以上150μm以下の霧を噴霧することによって、作業環境の評価を第一管理区分又は第二管理区分にすることが出来た。これは、噴霧される水の粒子径を60μm以上にすることによって、空気中を浮遊する耐火物に係る粉塵を、当該粒子径の水で捕捉できるからだと考えられる。そこで、空気中に浮遊する耐火物に係る粉塵の粒子径を測定したところ、図6に示すように、54μm未満の粒子が80%以上であることが分かった。従って、噴霧される水の粒子径を60μm以上にしておけば、空気中に浮遊する耐火物に係る粉塵のほとんどを当該粒子径の水粒子で捕捉することが可能であることが確認できた。
【0044】
また、噴霧される水の粒子径を150μm以下にすることによって、67.5mの広さを有する単位作業場所Fの略全域において、霧が噴霧されるために、上記した評価を得ることができたと考えられる。
【0045】
<本実施形態の特徴>
本実施形態では、上記のように、水のみの散水とは異なり、水と空気とを加圧混合して霧を噴霧しているので、耐火物の解体に係る粉塵の飛散範囲が広い場合でも、所望の範囲まで霧を噴霧することができる。
【0046】
また、本実施形態では、噴霧ノズル20a〜20dにおける水量、空気量及び空気圧を調整して、水の粒子径を150μm以下の霧を噴霧することにより、耐火物12の解体に係る粉塵の飛散範囲を広範囲にカバーすることができると共に、水の粒子径を60μm以上にすることにより、飛散する粉塵の大部分を当該粒子径の霧で捕捉することができる。その結果、耐火物12を解体する際に発生する粉塵の飛散を防止することができ、作業環境の評価を第一管理区分又は第二管理区分にすることができる。即ち、作業環境の環境改善の対策として一般的な集塵機を設置することなく、所定の環境基準を満たすことが可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、噴霧ノズル20a〜20dを取鍋10の外側に設けて、取鍋10の開口部13の外側に霧を噴霧することによって、耐火物12に直接霧を吹き付けることなく、粉塵の飛散を防止することができる。従って、取鍋10の耐火物12が、永久張りの煉瓦11と張替えが必要な耐火物12との2層張りの場合など、永久張りの煉瓦11を濡らすことなく、粉塵の飛散を防止することができる。
【0048】
また、本実施形態では、噴霧ノズル20a〜20dを取鍋10の開口部13の開口面Sから所定の距離(600mm)だけ離間した位置に配置し、且つ、当該噴霧ノズル20a〜20dの噴霧方向を開口面Sに平行にすることによって、耐火物12に直接霧を吹き付けることなく、粉塵の飛散を防止することができる。
【0049】
また、本実施形態では、傾倒した取鍋10の開口部13の高さ方向(Z方向)の中心(C2)より上側及び下側のそれぞれに噴霧ノズル20d及び20a〜20cを配置することによって、取鍋10の内部から飛散する粉塵に対して、開口部13の上側及び下側の両方から霧を吹き付けることが可能となる。これにより、効果的に粉塵が飛散するのを防止することができる。
【0050】
また、本実施形態では、傾倒した取鍋10の開口部13の高さ方向(Z方向)の中心より上側に複数の噴霧ノズル20b〜20dを設けることによって、取鍋10の開口部13から上方に向かって飛散する粉塵を、複数の噴霧ノズル20a〜20dから噴霧される霧によって確実に捕捉することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態および実施例に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明を利用すれば、広範囲に霧を噴霧することにより、耐火物を解体する際に発生する粉塵の飛散を防止し、作業環境における環境基準を労働安全衛生法に規定される作業環境評価基準を満たすことができる。
【符号の説明】
【0053】
10 取鍋(溶鋼容器)
12 耐火物
13 開口部
20 噴霧ノズル
S 開口面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鋼を運搬する溶鋼容器の内部に施工される耐火物を解体する際に発生する粉塵の飛散防止方法であって、
水と空気とを混合する噴霧ノズルを用いて、粒子径が60μm以上150μm以下の霧を噴霧することを特徴とする、粉塵飛散防止方法。
【請求項2】
前記噴霧ノズルは、前記溶鋼容器の外側に設けられ、前記溶鋼容器の開口部の外側に前記霧を噴霧することを特徴とする、請求項1に記載の粉塵飛散防止方法。
【請求項3】
前記噴霧ノズルは、前記溶鋼容器の開口部の開口面から所定の距離だけ離間した位置に配置されており、且つ、当該噴霧ノズルの噴霧方向は、前記開口面に平行であることを特徴とする、請求項2に記載の粉塵飛散防止方法。
【請求項4】
前記溶鋼容器は、傾倒した状態で解体され、
当該傾倒した溶鋼容器の開口部の高さ方向の中心より上側及び下側のそれぞれに前記噴霧ノズルが配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉塵飛散防止方法。
【請求項5】
前記傾倒した溶鋼容器の開口部の高さ方向の中心より上側に設けられる噴霧ノズルは、複数であることを特徴とする、請求項4に記載の粉塵飛散防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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