説明

滅菌のための、特に吸着器の滅菌のための方法および装置

本発明は、滅菌のための、特に、吸着剤が充填される吸着器ハウジングを有する吸着器の滅菌のための方法および装置に関する。本発明に係る方法および装置は、吸着剤を充填した吸着器ハウジング(1A)が滅菌されるのではなく、吸着剤がその中で薄い層に広がるような寸法にされる別個の容器(2)の中で吸着剤が滅菌される。吸着器ハウジング(1A)と共に、吸着剤を滅菌するための容器(2)が、無菌環境の必要性なしに吸着剤を吸着器ハウジングの中に移すことができるような閉じた系を形成する。容器(2)は、平面上に平らに置かれるときに、その中で吸着剤が薄い層に広がる、好ましくはバッグ(2)である。バッグ(2)の中の吸着剤が薄い層に広がるので、滅菌は、吸着剤を損傷することができない比較的ほんの僅かな線量の放射線を必要とする。バッグ(2)は、高エネルギー放射線、特に電離放射線を照射される。次いで、吸着剤がバッグ(2)から吸着器ハウジング(1A)の中に移される。吸着器ハウジングの中への吸着剤の移送中に、吸着器ハウジングの中に存在する空気および/または過剰の液体が、吸着器ハウジングから好ましくは1つまたは複数の空のバッグの中に除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌のための、特に、エンド・オブ・ライン・パック(end−of−line pack)の、特に吸着剤が充填される吸着器ハウジングを有する吸着器の滅菌のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着器を利用する種々の治療手順が公知である。吸着療法は、体外で患者の血液から病原性物質を除去する革新的な治療手順である。LDLコレステロールは、例えば、LDLアフェレーシスで全血から除去することができる。免疫吸着は、例えば、患者の血液から抗体が除去されることを可能にする。
【0003】
公知の吸着器は、吸着剤が高密度にパックされた吸着器ハウジングを有する。吸着器ハウジングは、一般に、上端部および下端部で閉鎖される中空円筒形のハウジングである。ハウジングは、上端部における入口と下端部における出口とを有する。出口の上流に配置されたスクリーンは、ハウジングから吸着剤が流出しないようにする。
【0004】
吸着剤が充填された吸着器ハウジングの滅菌は、α、β、またはγ放射線のような高エネルギー電離放射線によって行われ、β放射線による滅菌が好ましい。しかしながら、この高エネルギー放射線は、強度の高すぎるものである場合、吸着剤を損傷することがある。したがって、放射線の強度は、滅菌するのに十分なだけのものであるが、放射線は、吸着剤が損傷されるのを防止するために、エネルギーが高すぎるものではないことが重要である。β放射線の強度は、吸着剤での吸収によって減少され、ビーム経路が長くなっていくにつれて、放射線の強度はかなり低下する。経路が粒子によって覆われている間の単位波長当たりの粒子放射線のエネルギー損失は、最初に増加し、次いで、最大の後に急低下する。単位波長当たりのエネルギー損失は、ブラッグ曲線によって説明される。
【0005】
実際には、公知の吸着器ハウジングは、その幾何学的寸法のため、ハウジングの最も内側の領域においてでさえも吸着剤が滅菌されることを保証するためには比較的高い放射線強度を要求するのが欠点となることが分かっている。しかしながら、ブラッグ曲線の最大付近の層深度での過度に高い放射線強度が原因で、吸収剤の少なくとも一部が損傷する恐れがある。今日まで、この問題は、電離β放射線の透過深度は湿った材料よりも乾燥した材料の方が大きいことから、吸着剤を乾燥させることによって解決されている。しかしながら、この手順は、該手順における付加的な乾燥ステップを必要とし、これはまた、付加的なエネルギーの消費にも関係する。
【0006】
英国特許第655198号明細書から公知であるのは、液体の薄い膜の照射のための方法および装置である。公知の装置は回転シリンダを備え、該回転シリンダの壁の上を、照射されるべき液体が流れる。放射線による薄い層の滅菌の原理はまた、国際公開第2007/075931号から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国特許第655198号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/075931号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の問題は、吸着器ハウジングの中での吸着剤の滅菌においてのみではなく、例えば輸液のための薬剤、または栄養素のような、容器の中で利用可能にされる放射線に敏感な他の材料の滅菌においても生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の根底にある目的は、特に吸着剤であり得る滅菌される材料を損傷させる恐れのない、簡略化された滅菌方法を明らかにすることである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、特に吸着剤であり得る滅菌される材料が損傷される如何なる恐れもなしに、それによって滅菌が簡略化される、滅菌のための装置を提供することである。
【0011】
これらの目的は、請求項1および請求項13の特徴によって本発明に従って達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題を成すものである。
【0012】
容器の中で利用可能にされる材料の滅菌のための本発明に係る方法は、材料が滅菌される容器と閉じた系を形成し、且つ滅菌される材料が充填されている、別個の格納手段に基づいており、該滅菌のための別個の格納手段は、滅菌される材料が格納手段の中で薄い膜または層状に自己分散するようなサイズのものである。次いで、滅菌される材料を保持している少なくとも別個の格納手段は、高エネルギー放射線が照射される。閉じた系全体が照射されることが好ましい。材料が滅菌される容器と滅菌のための格納手段とが閉じた系を形成するので、滅菌された材料を、材料が利用可能にされる容器の中に無菌状態で移すことができる。これは、非滅菌環境において、材料が利用可能にされる容器の如何なる無菌充填の必要性も存在しないという利点を有する。本発明に係る方法による滅菌は、それにより簡略化される。
【0013】
本発明に係る方法と本発明に係る装置は、吸着剤が充填される吸着器ハウジングを有する吸着器の滅菌のために特に有利であることが分かった。本発明に係る方法と本発明に係る装置は、吸着剤を充填した吸着器ハウジングが滅菌されるのではなく、吸着剤が薄い膜または層状に自己分散するようなサイズのものである別個の格納手段の中で、吸着器ハウジングなしに吸着剤が滅菌されることに基づいている。この場合に薄い膜または層が意味するのは、30mmまでの厚さ、好ましくは20mm未満の厚さ、特に好ましくは5から10mmまでの間の厚さの膜または層である。これに適するものは、吸着剤の体積に関連して適切な寸法の任意の格納手段である。たとえ幅および長さに対して高さが非常に小さい浅い格納手段でさえ適している。
【0014】
格納手段の中の滅菌される材料は薄い層に分散されるので、薄い層内部の放射線の強度は、無視できる程度にのみ変化する。放射線強度の一様分布により、材料は、原則的に表面での滅菌のために要求される放射線強度で照射することができる。これは、一方では、材料全体が適切な強度で照射され、他方では、より深い層の個々の領域における過度に高い放射線強度のために吸着剤の少なくとも一部が損傷する恐れが存在しないことを保証する。
【0015】
しかしながら、本発明に係る方法はまた、例えば、エンド・オブ・ライン・パックの中で利用可能にされる輸液のための材料または栄養素のような、すべての他の放射線に敏感な材料にも用いることができる。これらの材料は、それらが滅菌のための格納手段から、それらが利用可能にされる容器の中に移されることを可能にするために、流動する、または注ぐことができるべきである。
【0016】
特に好ましい実施形態において、吸着剤を受け入れるための格納手段は、平面上に平らに置かれるときに、その中で吸着剤が薄い膜または層状に自己分散するバッグである。バッグは、好ましくは、一方が他方の上に位置する2枚フィルムから、またはフィルムのチューブから作製されたフィルムバッグである。医療液体/流体を受け入れるためのこの種のバッグは、一般に良く知られている。剛性の容器ではないバッグはまた、バッグから吸着剤を容易に移すことができるという利点を有する。結果として、バッグは、容易にかつ完全に空にすることができる。
【0017】
吸着剤が格納手段の中で薄い層に自己分散するので、薄い層内部の放射線の強度は、ほんの僅かしか変化しない。格納手段に、高エネルギーの、特に電離性の、例えば、α、β、またはγ放射線のような放射線、好ましくはβ放射線が照射される。次いで、吸着剤が、格納手段から吸着器ハウジングに移される。吸着剤を保持している格納手段のみが、照射されることが可能である。しかしながら、照射されることが好ましいのは、閉じた系として、吸着器ハウジングと吸着剤を受け入れるための格納手段とを備える装置全体である。
【0018】
吸着剤が吸着器ハウジングの中に移されるとき、吸着器ハウジングの中に位置する空気および/または過剰の液体/流体が、好ましくは吸着器ハウジングの外に排出される。
【0019】
好ましい態様形態では、空気および/または過剰の液体/流体は、1つまたは複数の別個の格納手段の中に移される。しかしながら、これがなされるとき、吸着器ハウジングと、吸着剤を受け入れるための格納手段と、任意のさらなる格納手段が、同様に、閉じた系を形成することが保証されなければならない。好ましくは、同様にバッグである、空気および/または液体/流体を受け入れるための格納手段は、好ましくは1つまたは複数の可撓管路を介して吸着器ハウジングに接続される。
【0020】
代替の実施態様では、吸着器ハウジングの中の1つまたは複数の通気開口部を無菌方式で封鎖する、疎水性の、すなわち、空気を通すことができるが液体/流体を通すことはできない、1つまたは複数の滅菌障壁、特に滅菌膜を有する、閉じた系が生み出される。しかしながら、この実施態様においては、吸着器ハウジングは、空気のみが通気されるが過剰の液体/流体は排出されないことが可能である。
【0021】
別の好ましい実施態様において、吸着器ハウジングの中の空気および/または過剰の液体/流体は、1つまたは複数の別個の格納手段の中にではなく、空にされている、吸着剤を受け入れるための容器の中に移される。
【0022】
吸着器ハウジングの使用にあたって、可撓管路が用いられる。可撓管路は、種々の設計の遮断デバイスで閉鎖されてもよい。しかしながら、可撓管路が溶着され無菌状態に閉ざされることも可能である。基本的に、それによって可撓管路を滅菌状態に断つまたは閉鎖することができるすべての公知のデバイスおよび方法に可能性がある。
【0023】
特に好ましい実施態様において、吸着器ハウジングの中の空気および/また過剰の液体/流体は、吸着器ハウジングの2つの対向する端部または側部で、好ましくは、使用位置にあるときに吸着器ハウジングの上端部および下端部から排出される。空気および/または液体/流体は、この場合、1つの別個の格納手段または2つの別個の格納手段の中に移すことができる。好ましくはバッグである格納手段は、多チャンバのバッグの別個のバッグまたは別個のチャンバであってもよい。特に好ましい実施形態は、吸着剤を受け入れるためのバッグと、空気および/または液体/流体を受け入れるための2つのバッグとが、多チャンバのバッグ、すなわち3チャンバのバッグを形成することを規定するものである。
【0024】
吸着剤を受け入れるための格納手段は、好ましくは、それを介して格納手段に吸着剤を充填することができる入口を有する。入口に接続される可撓管路または可撓管路上に接続するためのコネクタが存在してもよい。
【0025】
格納手段には、液体/流体材料、または乾燥しているが注ぐことができる材料、特に吸着剤が充填されてもよい。滅菌後に、液体/流体材料、特に吸着剤が、容器、特に吸着器ハウジングの中に、懸濁液として移されてもよい。乾燥した材料、特に、粉末形態の乾燥した材料は、滅菌後に、乾燥状態で移されるか、または液体/流体中に溶解されまたは懸濁され、次いで液体/流体状態で移されるかのいずれであってもよい。液体/流体は、同様に、格納手段、特にバッグの中で利用可能にすることができる。
【0026】
特に好ましい別の実施態様は、吸着剤を受け入れるための格納手段のフラッシングを規定するものである。この実施態様において、本発明に係る装置は、フラッシング液体/流体を受け入れるためのさらなる格納手段を備え、吸着剤が吸着器ハウジングの中に移されると、フラッシング液体/流体が、吸着剤を受け入れるための空にされた格納手段の中に移される。格納手段がフラッシングされた後で、フラッシング液体/流体は、次いで、吸着剤の残りと一緒に吸着器ハウジングの中に移され、このとき過剰の液体/流体および/または空気は、同様に吸着器ハウジングの外に排出される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】吸着器ハウジングの中の空気および/または過剰の液体/流体が2つの空のバッグの中に移される、吸着剤の滅菌のための本発明に係る装置の第1実施形態の非常に簡略化された概略図である。
【図2】吸着器ハウジングの中の空気および/または過剰の液体/流体が1つの空のバッグの中に移される、本発明に係る装置の第2実施形態を示す図である。
【図3】吸着剤を受け入れるためのバッグと空気および/または液体/流体を受け入れるためのバッグとが1つの多チャンバのバッグを形成する、本発明に係る装置のさらなる実施形態を示す図である。
【図4】吸着器ハウジングの中の空気が周囲に排出される、本発明に係る装置のさらなる実施形態を示す図である。
【図5】吸着剤を受け入れるためのバッグのフラッシングを可能にする、本発明に係る装置のさらなる実施形態を示す図である。
【図6】吸着器ハウジングの中の空気が吸着剤を受け入れるためのバッグの中に移される、本発明に係る装置の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の種々の実施形態が、図面を参照することによって以下で詳細に解説される。
【0029】
図1は、吸着器の滅菌のための本発明に係る装置の第1実施形態の非常に簡略化された概略図である。しかしながら、吸着器ではなく、本発明に係る方法によって同じく滅菌されてもよいものは、放射線に敏感な材料が充填されなければならない、あらゆる他のエンド・オブ・ライン・パックである。
【0030】
本発明に係る装置は、吸着器1と、懸濁液の形態の吸着剤を受け入れるための格納手段2と、吸着器ハウジングの中の空気および/または過剰の液体/流体を受け入れるための第1および第2格納手段3、4とを備える。吸着剤並びに空気および/または液体/流体を受け入れるための格納手段は、それぞれ、医療技術で一般に用いられる従来のバッグである。この種のバッグは、一方が他方の上に位置し、且つ周囲溶着によって縁部領域で互いに溶着される2枚のフィルムから作製される。しかしながら、バッグは、溶着によってその端部で互いに溶着されるフィルムのチューブから作製されてもよい。この種のバッグは従来技術の一部であるので、それらの何らかのさらなる説明の必要はない。
【0031】
本発明の目的のために重要なのは、吸着剤を受け入れるためのバッグが吸着剤の体積に関連して十分なサイズのものであることである。バッグが平面上に平らに置かれる場合、吸着剤は、バッグ内で薄い層または膜状に自己分散する。吸着器1は、吸着剤が充填される従来の吸着器である。吸着器は、カバー部1Bと床部1Cによって端部で閉鎖される中空円筒形の吸着器ハウジング1Aを有する。この種の吸着器は、例えば、欧州特許第0507245号明細書から公知である。こうした吸着器は従来技術の一部であるので、ここで説明するのは本発明に該当する部分のみである。例えば、処理されるべき血液を送り込むための吸着器の入口とそれを外に送り出すための出口は、図示されていない。
【0032】
吸着剤を受け入れるためのバッグ2は、バッグ2に懸濁液の形態の吸着剤を充填するための入口開口部2Aと、バッグを空にするための出口開口部2Bとを有する。入口開口部2Aまで延びるのは、遮断デバイス2Dによって閉鎖される可撓管路2Cである。出口開口部2Bに接続されるのは、可撓管路5の一方の端部であり、その他方の端部は、吸着器ハウジング1Aの入口開口部1Dに接続される。可撓管路5を開閉するための遮断デバイス5Aが提供される。しかしながら、基本的には、バッグ2が管路5を介して充填されること、および、その後、バッグが吸着器ハウジングに接続されることも可能である。この実施形態において、管路2と入口開口部2Aは省かれることがある。
【0033】
吸着器ハウジング1Aは、カバー部1Bの上側通気開口部1Eと床部1Cの下側通気開口部1Fとを有する。中空円筒形の吸着器ハウジング1Aにおいて、上側通気開口部1Eよりも下に上側フィルタリングスクリーン1Gが配置され、下側通気開口部1Fよりも上に下側フィルタリングスクリーン1Hが配置され、これらのフィルタリングスクリーンは、吸着剤を保持することを意図される。空気および/または液体/流体を受け入れるための第1バッグ3は、可撓管路6を介して下側通気開口部1Fに接続され、空気および/または液体/流体を受け入れるための第2バッグ4は、可撓管路7を介して上側通気開口部1Eに接続される。
【0034】
本事例において重要なのは原理のみなので、より明瞭にするために、可撓管路をバッグに接続するための当業者に良く知られている部品は図示されていない。
【0035】
以下では、本発明に係る装置を用いることによって吸着器を滅菌する方法を例として取り上げることにより、本発明に係る方法が説明される。
【0036】
吸着剤を送り込むための可撓管路2Cの遮断デバイス2Dが最初に開かれ、吸着剤がリザーバ(図示せず)から可撓管路2Cを介してバッグ2の中に搬送される。これがなされるとき、バッグ2は平面上に平らに置かれており、これは、吸着剤がバッグの中で薄い膜状に自己分散することを意味する。次いで、遮断デバイス2Dが閉じられる。
【0037】
次いで、装置全体に、例えば、α、β、またはγ放射線、好ましくはβ放射線のような電離放射線が照射される。しかしながら、吸着剤を保持しているバッグ2のみが照射されることも可能である。このとき、照射強度は、強度が滅菌に適しているような方法で調節されなければならない。バッグの中の薄い層内部の放射線の強度はほとんど変化しないため、放射線の強度は、一般に表面での滅菌のために十分な強度よりも高くまたは低く調節される必要はない。次いで、吸着器ハウジング1Aに充填することができる。個々の格納手段が依然として可撓管路に接続されているので、滅菌後に存在するのは、依然として閉じた系である。したがって、無菌環境の必要性なしに吸着剤を閉じた系内でバッグ2から吸着器ハウジング1Aの中に移すことができる。これがなされるとき、滅菌が保証される。
【0038】
照射後に、可撓管路5の遮断デバイス5Aが開かれる。次いで、バッグ2の中の吸着剤が吸着器ハウジング1Aの中に移される。これは、懸濁液が重力によって吸着器ハウジングの中に流れるようにバッグ2を吸着器ハウジングよりも上に配置することによってなされてもよい。しかしながら、バッグ2はまた、懸濁液を移すために押しつぶされてもよいし、または可撓管路が可撓チューブポンプ内に挿入されてもよい。これはバッグが完全に空にされることを可能にするため、いずれも望ましい。バッグが空にされると、遮断デバイス5Aが再び閉じられる。
【0039】
吸着剤が移されているとき、吸着器ハウジング1Aの中の空気と過剰の液体/流体が、吸着器ハウジング1Aを出て可撓管路6および7を介して2つの空のバッグ3、4の中に流れる。吸着器ハウジング1A内に設けられたフィルタリングスクリーン1G、1Hは、如何なる固体物質が空のバッグの中へ進むのをも阻止する。
【0040】
吸着器ハウジングに吸着剤が完全に充填されると、可撓管路5、6、および7が溶着され無菌状態に閉ざされ、したがって吸着剤がバッグ2、3、4から切り離される。しかし、可撓管路を遮断するために遮断デバイスが提供されることも可能である。
【0041】
図2は、空気および/または液体/流体を受け入れるための2つの空のバッグ3、4ではなく1つのみの空のバッグ8を備える点でのみ図1に示された実施形態とは異なる、本発明に係る装置の代替の実施形態を示す。したがって、互いに対応する要素は、同じ参照番号で与えられている。この実施形態において、2つの可撓管路6、7は、単一の空のバッグ8の互いに対向する端部または側部に接続される。作動時の、2つの実施形態の間の唯一の違いは、空気および/または液体/流体が吸着器ハウジング1Aから、2つのではなく、1つのみの空のバッグ8の中に流れることである。
【0042】
図3は、吸着剤を受け入れるためのバッグ2と、空気および/または液体/流体を受け入れるためのバッグ3、4が多チャンバのバッグ9の形態である点でのみ図1に示された実施形態とは異なる、本発明に係る装置の別の実施形態を示す。したがって、互いに対応する要素は、同じ参照番号で与えられている。3チャンバのバッグ9は、吸着剤のための1つのチャンバ2’と、空気および/または液体/流体のための2つのチャンバ3’および4’と、を有する。3つのチャンバ2’、3’、4’は、横方向に延びる溶着部10A、10Bによって互いに分離される。3チャンバのバッグ9は、すべてのバッグ2、3、4が単一のユニットを形成するという点で取り扱いを簡略化する。
【0043】
図4は、空気および/または液体/流体を受け入れるためのバッグが存在しないという点でのみ図1に示された実施形態とは異なる、本発明に係る装置の別の実施形態を示す。互いに対応する要素は、同様に同じ参照番号で与えられている。この実施形態において、吸着器ハウジング1Aの上側通気管路1Eおよび下側通気管路1Fは、例えば、疎水性の、すなわち、空気を通すことができるが液体/流体を通すことはできない滅菌膜11A、11Bのような滅菌障壁によって閉鎖され、滅菌膜のみが示される。吸着器ハウジングが充填されているとき、空気は膜を通って逃げることができるが液体/流体は引き止められる。したがって、過剰の液体/流体は、この実施形態において排出することができない。その他の点では、図4に示された実施形態は、図1に示された実施形態と同じ方法で作動される。
【0044】
図5は、装置が、フラッシング溶液を受け入れるための追加のバッグ12を備える点で図1に示された実施形態とは異なる、本発明に係る装置の別の実施形態を示す。互いに対応する要素は、同様に同じ参照番号で与えられている。吸着剤を受け入れるためのバッグ2とフラッシング溶液を受け入れるためのバッグ12は、2チャンバのバッグ13の形態をとっており、吸着剤のためのチャンバ2”とフラッシング溶液のためのチャンバ12”は、横方向に延びる溶着部14によって互いに分離されている。フラッシング溶液のためのチャンバ12”は、可撓管路12Bが接続され遮断デバイス12Cによって閉鎖される、入口12Aを有する。可撓管路12Bは、フラッシング溶液のためのリザーバ(図示せず)まで延びる。遮断デバイス12Cが開かれてから、チャンバ12”にフラッシング溶液を充填することができる。次いで、遮断デバイス12Cが再び閉じられる。
【0045】
図5に示された実施形態は、図1に示された実施形態と同じ方法で作動される。しかしながら、図5に示された実施形態は、吸着剤のための空にされたチャンバ2”がチャンバ12”の中に入れられたフラッシング溶液でフラッシングされることを可能にする。この目的のために、チャンバ2”が空にされてから、フラッシング溶液がチャンバ13”からチャンバ2”の中に移される。これは、チャンバ12”とチャンバ2”との間に流体のための接続部を作ることによって行うことができる。破断可能部15によって閉鎖されるが破断可能部を破断することによって開くことができる、好ましくは通路が溶着部14に位置する。代替の実施形態は、チャンバ2”と12”との間の溶着部14がそれを開くために引き裂かれることが可能であることを規定するものである。遡及的に流体のための個々のチャンバの間に接続部を作ることができる、多チャンバのバッグは、当業者には一般に良く知られており、このため、2チャンバのバッグのさらなる説明はしない。
【0046】
チャンバ2”がフラッシング溶液でフラッシングされてから、フラッシング溶液が、吸着剤の残りと一緒に吸着器ハウジング1Aの中に移される。次いで、遮断デバイス5Aのみが閉じられる。次いで、可撓管路5、6、7が吸着器ハウジング1Aから無菌方式で同様に溶着して分離される。
【0047】
代替の実施形態においては、チャンバ2”に懸濁液の形態の吸着剤が充填されない。この実施形態において、チャンバ2”には、粉末形態の吸着剤が既に充填されており、該粉末形態の吸着剤は、フラッシング溶液がチャンバ12”からチャンバ2”の中に移された後で、溶解された形態で吸着器ハウジング1Aの中に移される。
【0048】
図6に示された実施形態は、空気および/または流体を受け入れるための別個のバッグを備えていないという点で、図1に示された実施形態とは異なる。互いに対応する要素は、同様に同じ参照番号で与えられている。図6に示された実施形態において、吸着器ハウジング1Aの中に位置する空気および/または液体/流体は、以前は吸着剤を保持していて空にされたバッグ2の中に移される。この目的のために提供されるのは、吸着器ハウジング1Aの通気開口部17をバッグ2の第2入口開口部18に接続する可撓管路16である。可撓管路16は、遮断デバイス16Aによって閉鎖される。バッグ2が充填されているとき、遮断デバイス16Aが閉じられる。遮断デバイス16Aは、遮断デバイス5Aと一緒に開かれ、吸着剤がバッグ2から吸着器ハウジング1Aの中に移される。吸着剤がバッグ2から吸着器ハウジング1Aの中に流れている間、吸着器ハウジング内で押し退けられた空気および/または液体/流体が、可撓管路16Aを介してバッグ2内で空いた空間体積の中に流れる。
【0049】
効果的な滅菌のために、放射線の強度は、理想的には約25kGyの放射線の強度が表面での最小強度を表すように、どの点においても少なくとも約25kGyに達するべきである。50kGyの放射線強度から、吸着器材料の作用の大規模な損壊をもたらす、少なからぬ損傷が発生する。放射線の強度は、材料の如何なる層深さにおいても50kGyを超えるべきではない。35kGyを上回る放射線強度から、結合能力を低下させる吸着器材料への損傷が発生する。したがって、放射線の強度は、好ましくは材料内で35kGyの値を超えるべきではない。
【0050】
300×260mmの外寸をもつバッグを試験で照射し、バッグの充填高さは、常に15mm未満にした。平均して、照射される製品の層の厚さは、約12mmであった。放射線の強度は、27kGyおよび28kGyまでであった。製品表面および製品下で、以下の値が測定された。
【0051】
【表1】

【0052】
薄い層内部の放射線の強度はほとんど変化しないことが分かる。製品が薄い層に分散されるバッグを有する発明性のある装置と比べた違いは、以下の比較試験から明らかとなる。
【0053】
390×190×90mm(高さ=90mm)の外寸を有し、パッキングと合わせて358gの質量および0.054g/cmの密度を有する、吸着器材料が充填されて湿った吸着器カラムに、10MeVのエネルギーをもつ電子を上および下から、24.6kGyのパッキング上の表面強度で照射し、吸収器カラム上の放射線強度を、カラム上側領域、カラム下側領域およびカラム下で測定した。カラム上で41.8kGyの強度が測定され、カラム下で40.5kGyの強度が測定され、一方、カラム内上部で51.5kGy、カラム中央部で58.7kGy、カラム内下部で57.2kGyが測定された。製品における最小は40.5kGyに達し、最大は58.7kGyにあることが分かる。したがって、最大/最小比は、58.7/40.5=1.45に達する。第2測定において、カラム上で43.2kGyの強度が測定され、カラム下で40.6kGyの強度が測定され、一方、カラム内上部で55.9kGy、カラム中央部で57.9kGy、およびカラム内下部で60.3kGyが測定された。したがって、最大/最小比は、60.3/40.6=1.49に達する。本発明に係るバッグと比べて、層内部の放射線強度の比較的著しい変化が見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の中で利用可能にされる材料を滅菌する方法であって、
滅菌される前記材料を格納手段(2)に充填するステップであって、前記格納手段が、前記滅菌される材料が前記格納手段の中で薄い膜または層状に自己分散するようなサイズのものであるステップと、
前記格納手段の中の前記材料を滅菌するために前記格納手段に高エネルギー放射線を照射するステップと、
前記材料を、前記材料が利用可能にされる容器(1A)の中に移すステップと、
滅菌のための前記格納手段(2)と、前記材料が利用可能にされる前記容器(1A)とが、閉じた系を形成するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記材料が、薬剤、特に輸液のための薬剤、または栄養素であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
滅菌される前記材料が吸着剤であり、滅菌のための前記容器が、吸着剤が充填される吸着器ハウジング(1A)であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着剤の滅菌のための前記格納手段がバッグ(2)であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着剤の滅菌のための前記格納手段(2)を前記吸着器ハウジングに接続する管路(5)によって、前記吸着剤が前記吸着器ハウジング(1A)の中に移され、前記管路が前記吸着剤の移送後に閉鎖されることを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記吸着器ハウジング(1A)の中の空気および/または過剰の液体/流体が、前記吸着器ハウジングの外に排出されることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記吸着器ハウジング(1A)の中の空気および/または過剰の液体/流体が、管路(6、7)を介して前記吸着器ハウジング(1A)に接続される格納手段(3、4)の中に移されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
空気および/または液体/流体を受け入れるための前記格納手段がバッグ(3、4)であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記吸着剤の滅菌のための前記格納手段(2)に液体/流体吸着剤が充填されることを特徴とする請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記吸着剤の滅菌のための前記格納手段(2)に粉末形態の吸着剤が充填されることを特徴とする請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記吸着剤の滅菌のための前記格納手段(2)の中に液体/流体が移されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記吸着剤が前記吸着器ハウジング(1A)の中に移されると、前記吸着剤の滅菌のための前記格納手段(2)の中にフラッシング液体/流体が移され、前記吸着剤の滅菌のための前記格納手段がフラッシングされた後に、前記フラッシング液体/流体が前記吸着器ハウジングの中に移されることを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
材料が充填されるエンド・オブ・ライン・パック(1)の滅菌のための装置であって、
前記材料を受け入れるための格納手段(2)であって、前記材料が前記格納手段の中で薄い膜または層状に自己分散することができるようなサイズのものである、格納手段(2)と、
前記材料を受け入れるための前記格納手段(2)と前記エンド・オブ・ライン・パック(1)との間の流体のための接続部を作り、前記材料を受け入れるための前記格納手段と前記エンド・オブ・ライン・パックとが閉じた系を形成する手段(5)と、
を有する装置。
【請求項14】
前記材料が、薬剤、特に輸液のための薬剤、または栄養素であることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記エンド・オブ・ライン・パックが、吸着剤が充填される吸着器ハウジング(1A)を有する吸着器(1)であることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記材料を受け入れるための前記格納手段がバッグ(2)であることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記バッグ(2)が、一方が他方の上に位置する2枚のフィルムまたはフィルムのチューブから作製されるフィルムバッグであることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記吸着剤を受け入れるための前記格納手段(2)が、前記格納手段に吸着剤を充填するための入口(2A)を有し、前記入口は閉鎖されることが可能であることを特徴とする請求項15から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記吸着剤を受け入れるための前記格納手段(2)と前記吸着器ハウジング(1A)との間の流体のための接続部を作るための前記手段が、可撓管路(5)を有することを特徴とする請求項15から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記吸着剤を受け入れるための前記格納手段(2)を前記吸着器ハウジング(1A)に接続するための前記可撓管路(5)が、遮断デバイス(5A)を有することを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記吸着器ハウジング(1A)が、滅菌障壁(12A、12B)によって、特に疎水性の滅菌膜によって閉鎖される少なくとも1つの通気開口部(1E、1F)を有することを特徴とする請求項15から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記吸着器ハウジング(1A)が、前記吸着剤を受け入れるための前記格納手段(2)まで延びる可撓管路(16)が接続される、少なくとも1つの通気開口部(17)を有することを特徴とする請求項15から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記配置が、吸着器ハウジング(1A)の中の空気および/または過剰の液体/流体を受け入れるための格納手段(8)と、前記吸着器ハウジング(1A)と空気および/または液体/流体を受け入れるための前記格納手段(8)との間で空気および/または液体/流体を移すための手段(6、7)とを有することを特徴とする請求項15から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記吸着器ハウジング(1A)と空気および/または液体/流体を受け入れるための前記格納手段(3)との間で空気および/または液体/流体を移すための前記手段が、第1および第2可撓管路(6、7)を有し、前記第1可撓管路(6)の一方の端部は、前記吸着器ハウジング(1A)の第1通気開口部(1F)に接続されており、前記第1可撓管路(6)の他方の端部は、前記格納手段(3)に接続されており、前記第2可撓管路(7)の一方の端部は、前記吸着器ハウジング(1A)の第2通気開口部(1E)に接続されており、前記第2可撓管路(7)の他方の端部は、前記格納手段(3)に接続されており、前記吸着器ハウジング(1A)の前記第1および第2通気開口部(1F、1E)は、互いに前記吸着器ハウジングの対向する端部または側部に配置されていることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記第1通気開口部(1E)が、前記吸着器ハウジング(1A)の下側の端部に配置され、前記第2通気開口部(1F)が、前記吸着器ハウジング(1A)の上側の端部に配置されることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記配置が、前記吸着器ハウジング(1A)の中の空気および/または過剰の液体/流体を受け入れるための第1および第2格納手段(3、4)と、一方では前記吸着器ハウジング(1A)と他方ではそれぞれ空気および/または液体/流体を受け入れるための前記第1および第2格納手段(3、4)との間で空気および/または液体/流体を移すための手段(6、7)とを有することを特徴とする請求項15から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
空気および/または液体/流体を移すための前記手段が、第1および第2可撓管路(6、7)を有し、前記第1可撓管路(6)の一方の端部は、前記吸着器ハウジング(1A)の第1通気開口部(1F)に接続されており、前記第1可撓管路(6)の他方の端部は、前記第1格納手段(3)に接続されており、前記第2可撓管路(7)の一方の端部は、前記吸着器ハウジング(1A)の第2通気開口部(1E)に接続されており、前記第2可撓管路(7)の他方の端部は、前記第2格納手段(4)に接続されており、前記吸着器ハウジング(1A)の前記第1および第2通気開口部(1F、1E)は、互いに前記吸着器ハウジングの対向する端部または側部に配置されていることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記第1通気開口部(1F)が、前記吸着器ハウジング(1A)の下側の端部に配置され、前記第2通気開口部(1E)が、前記吸着器ハウジング(1A)の上側の端部に配置されることを特徴とする請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記吸着器ハウジング(1A)が中空円筒形のハウジングであることを特徴とする請求項15から28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記空気および/または液体/流体を受け入れるための前記格納手段がバッグ(3、4)であることを特徴とする請求項22から29のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−506269(P2012−506269A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532537(P2011−532537)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007565
【国際公開番号】WO2010/046107
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(508274323)フレゼニウス メディカル ケア ドイチュランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (8)
【Fターム(参考)】