説明

滅菌流路へのセンサの接続システム及び方法

非滅菌センサを滅菌流路に接続するためのシステム及び方法が提供される。代表的には、センサは流路のその他コンポーネントと同一態様下に滅菌できない。これにより、滅菌済みセンサを複雑な手順を介して滅菌した流路に組み込んでいる。分離膜を導入することで、所望のセンサを滅菌流路に接続し得る。かくして、センサは滅菌する必要が無く、単に十分清潔であればよい。膜は、センサを機能状態に許容しつつ、センサから流路内の滅菌環境を分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ここに参照することにより本明細書の一部とする、2008年3月26日付で提出された米国特許出願番号第12/079,323の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオ成分の製造及びプロセス処理に際して最も必要なものは滅菌環境である。当該目的達成にはシステム自体の滅菌が必要であることは明らかである。滅菌法にはオートクレーブ、ストリームインプレース(SIP)、ガンマ線照射及びその他の方法が含まれる。残念なことに、システム内の全コンポーネントに対して1つの滅菌法を用いることは出来ない。例えば、ガンマ線照射法は、使い捨て式のバッグ、チューブ、ガラス、その他類似のパーツ等を滅菌する優れた方法である。しかし、この方法は電子装置には有害で、デリケートな半導体構造をしばしば破壊することが知られている。
【0003】
結局のところ、複雑な手順を踏まなければシステムを所望水準に滅菌することは出来ない。ここで言う“滅菌”とは、微生物の存在しない環境を定義するものとする。しかしながら、“滅菌”環境では微生物または異物が完全に存在しないわけではない。むしろ“滅菌”環境は所定最大数の微生物または異物が存在する環境を意味し得る。“滅菌”環境は当該環境内に最大所定サイズの微生物または異物が存在する環境をも意味し得る。
【0004】
前記手順では、別個のコンポーネントを、夫々入手し得る最も好適な方法で滅菌する必要が生じる場合がある。滅菌した各コンポーネントはクリーンルーム環境内で組み立てられる。残念なことにこの手順は、特にコンポーネントの多くが使い捨て性のものであることを考慮するとプロセス上の時間及びコスト増となる。
米国出願公開第2007/0185472にはこの問題に対する第2の解決法となり得るものが記載される。当該米国出願公開によれば、センサを相補コネクタを用いて流れ用コンポーネントに接続する。各相補コネクタには移動可能な滅菌カバーを被せる。つまりこのカバーが、各相補コネクタが滅菌環境に維持されることを保証する。カバーは相補コネクタが相互係合する際にスライドして外れ、各相補コネクタ間に流路を形成させる。かくして、相補コネクタの各側に取り付けた装置を別個に滅菌し、滅菌環境を必要とせずに組み立て得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第12/079,323号
【特許文献2】米国出願公開第2007/0185472号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来システムではクリーンルーム環境の必要性が排除されるが、尚、システムの種々のコンポーネントのための別個の滅菌プロセスが必要である。かくして、より簡易な滅菌法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、非滅菌センサを滅菌流路に接続するシステム及び方法が提供される。上述した如く、各センサは、滅菌流路に関するその他の各コンポーネントにおけると同一態様下には滅菌処理できない。従って、センサを滅菌流路に組み込む複雑なプロセスが必要となる。
本発明では、所望のセンサを滅菌等級膜を利用して滅菌流路に接続する。これにより、センサは十分に清潔でさえあれば滅菌する必要がない。前記膜は流路内で滅菌環境をセンサから分離し、かくしてセンサを滅菌流路に接続する必要時間を低減させ、また、センサ自体を滅菌する時間及びコストを低減させる。
【発明の効果】
【0008】
センサを滅菌流路に接続する必要時間及びセンサ自体を滅菌する時間及びコストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の代表的例示図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施例の例示図である。
【図3】図3は、図2の拡大図である。
【図4】図4は、本発明の第2実施例の例示図である。
【図5】図5は、図4の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
滅菌流路内の色々の特性及びパラメータに対する計測要求がある。この要求により、一般に電子的性質を持つセンサに対する必要性が高まった。上述した如く、電子部品を滅菌する好ましい方法は残余の流路に対するそれとは異なる。ガンマ線照射法はチューブ、バッグその他の流路コンポーネントには好適であるが、その滅菌形態はエレクトロニクスには有害である。
【0011】
本発明では滅菌分離膜で流路内のセンサポートを被覆する。滅菌分離膜は流路に恒久的に固定され、且つ、残余の各流路コンポーネントと共に滅菌され得る。
図1には本発明の代表的実施例が示される。管100は滅菌流路10の一部である。管100は1つ以上のセンサポート110を含む。センサポートはセンサ装置120を然るべく受け且つ保持するようにした受け部を有する。センサ装置120を保持する手段は様々なものであり得る。例えば、センサ装置120をネジ溝付き受け部上に螺着し得る。あるいはセンサ装置を受け部上に押し嵌めし得る。他の実施例ではセンサ装置は受け部内の相当する溝内に横滑進入する突出部を含む。他の実施例ではセンサ装置は締め具を用いて然るべく保持され得る。三葉クローバー型クランプまたはラディッシュ型クランプまたはバンド式クランプ等のクランプを使用できる。更に他の実施例では、センサ装置を接着剤またはヒートシールまたは振動溶接による等してポートに接着し得、またはセンサ装置120及びポート110の界面部分の周囲にリテーナをオーバーモールドして両者を相互錠止し得る。センサを受け部に固定するために使用し得る種々の方法は例示に過ぎず、それら方法の全てを完全列挙したものではない。当業者には本発明の範囲内におけるその他の固定方法が既知である。
未滅菌のセンサ装置120は、分離膜130が存在することで流路10からの物理的離状態に維持される。分離膜は異物通過を防止することで流路の滅菌環境維持を保証する。分離膜130は恒久的に装着され、その内側面(流路10に面する側の)は残余の流路10と共に滅菌される。
【0012】
流路10は図1ではチューブとして表されている。しかし、本発明では流路はチューブに限定されない。流路はフィルタ、バッグ、またはその他好適な容器から構成され得る。“流路”とは、滅菌流路と直接連通する任意のコンポーネントを意味するものとする。センサポートは、これに限定しないが、入口管、出口管、またはバイオリアクタバッグ内、を含む流路内のどこかに位置付け得る。
【0013】
例えば、図2にはバイオリアクタバッグ200と共に使用する本発明の使用状況が例示される。バイオリアクタバッグ200は入口導管160及び出口導管150を有する。ある実施例ではバイオリアクタバッグは周囲構造部170により支持される。この実施例では周囲構造部170は、センサ装置120をその内部に配置し得る通路を有する。先に説明した如く、センサ装置120は分離膜130によりバイオリアクタバッグ200の内側部分から分離される。分離膜130は、センサ装置120の取り付け、使用、及び取り外しの間滅菌分離状態に維持されるよう、バイオリアクタバッグ内に一体化される。分離膜は、熱溶接または接着剤あるいはその他手段等によりバイオリアクタバッグに装着する。センサ装置は任意手段により装着され得る。例えば、整合スリーブ及び四半分廻動式の錠止機構またはネジ穴及びネジ溝付きセンサ胴部を、また同様に、クランプその他を使用し得る。前記各実施例はバイオリアクタバッグ及び膜のアセンブリにセンサ装置を位置付けまたは装着する手段を提示したものに過ぎず、本発明の請求の範囲を限定するものではない。図3には本実施例の拡大図が示され、同様のパーツは共通の参照番号で示される。
あるいは、プラスチック製のバイオリアクタバッグ内に、図1に示したと同様に、受け部を組み込み得る。
【0014】
図4には、バイオリアクタバッグ300、管310、機械ポンプ320、管330、を含む流路が示される。任意の各コンポーネントにセンサポートを組み込み得るが、本実施例ではセンサ装置120はろ過要素340よりも下流側の管310内に組み込まれる。作動に際し、流体は機械ポンプ320により管330を通して移動する。次いで流体は機械ポンプ320を出て管310に入る。次いで流体はろ過要素340を通過して滅菌される。かくして、ろ過要素340を出た材料は滅菌済みであると考え得る。ろ過要素340の下流側の位置にセンサ装置120を配置する。センサ装置は任意の種々の機能を奏させるべく使用し得る。かくして、管310内にセンサ装置を配置すると、結局はバイオリアクタバッグ300に配置されるところの流体の特性を監視し得る。図5には図4の拡大図が示され、センサ装置120がろ過要素340とバイオリアクタバッグ300との間に位置付けられている。先に述べたように、センサ装置は流路内に任意方法により挿通させ得る。例えば、センサ装置を、管330内またはろ過要素340の手前で管330内に配置すれば流入する流体を監視し得る。あるいは、センサ装置をバイオリアクタバッグ300上(図2に示す如く)に配置すれば滅菌流体を監視できる。あるいは同様に、バイオリアクタ300が出口導管を有する場合はセンサ装置を当該導管内に位置付け得る。
【0015】
センサ装置は2つのカテゴリーに分類され得る。第1カテゴリーのものは非侵襲性を有する。このタイプのセンサ装置は滅菌環境を侵襲することなく要求された機能を奏し得る。非侵襲性センサ装置の1つは温度センサである。第2カテゴリーのものは侵襲製を有する。侵襲製のセンサ装置はその要求機能を奏するためには流路に露呈させる必要がある。
第1カテゴリーの非侵襲性センサ装置は本発明における適応性がある。温度や圧力等の幾つかのパラメータは流路に接近させるのみで測定し得る。温度センサは、プロセス材料の質量流れ測定または温度測定を実行するための十分な伝熱性を持つ膜さえあれば良い。同様に、圧力センサを使用し得る。圧力センサは膜に直接当てて位置付けさえすればその精度が維持される。何れの場合でも、半透性または不透性の膜を用い得る。圧力を十分正確に測定するために、膜を、差圧で撓み且つ連続性を維持し且つ破断しない、またはその滅菌分離性を維持する能力を失わないよう、十分に可撓性の材料で作製する。
例えば、ある実施例では半透性の、しかし小孔サイズが歪んで滅菌分離が損なわれることのない膜を使用する。膜を、可撓性の作用表面積及び圧力センサ面への機械的連結部を含むデザインのものと成し得る。
【0016】
第2カテゴリーの侵襲性センサは、弱侵襲性または弱貫入性のものに更にカテゴライズされる。弱侵襲性センサは流路に露呈させる必要があるが、露呈させる必要のある粒子は極めて小さいので半透性の膜を通過できる。従って、膜は、流路の汚染物がセンサ装置に入らない状態下に、流路からセンサ装置への必要とされる小粒子の流れを許容する。逆に、侵襲性のセンサ装置は流路全体に露呈させる必要がある。従って、流路に露呈させるとセンサからの汚染物が必然的に流路内に導入される。
【0017】
弱侵襲性センサは本発明の範囲内のものである。弱侵襲性センサには、導電率センサ、熔解酸素センサ、熔解水素センサ、pHセンサ、が含まれる。ある実施例では、滅菌等級膜を使用して受け部を被覆する。この膜によれば、水素または酸素分子等の小粒子の通過が許容される。しかしながら、生物的汚染物等の大型分子は膜を通過できない。かくして、このフィルタはセンサへの必要材料の通過を許容するが、汚染物の流路への逆流通過は許容しない。ある実施例では、滅菌等級膜と共に使用する非滅菌pHセンサが含まれる。滅菌流路からの、十分に小さい流体及び化合物は膜を通過してpH電極と接触し得る。塩水溶液及びその他の小分子化合物は膜を通過し、pH電極と化学的に相互作用し、かくして滅菌溶液のpH単位が検出される。ウィルス、複合バクテリア及びその他のエンドトキシンを含む大型分子は、塩と共に滅菌等級膜を横断して逆方向に送られることはない。
【0018】
膜材料は、特定の化合物は効率的に通すが、滅菌された側の内部への大きな、“不届きな”微生物の逆流は阻止する。ある実施例では、22μm Durapore(商標名)滅菌等級膜(PVDF製)を使用し得る。上述したように、膜の選択は実行決定であり、滅菌流路外に保持されるべき汚染物のサイズ、関心粒子(水素または酸素分子、塩、等の)のサイズ、膜の要求剛性、を含む幾つかの要因に基づいたものである。更には、膜の下部構造はセンサのタイプに応じて適宜選択され得る。例えば、非対称の0.1μm Millipore Express(商標名)膜は、小分子化合物の効率的移送を可能とする一方、表面目詰まりを制限する。また、UFフィルタを使用して導電率センサの適正動作上必要な流体及び塩の通過を許容させ得る。
【0019】
本発明では、分離膜を流路の一体部分とすること及び、流路に面する側の膜表面を流路コンポーネントと共に滅菌すること、が要求される。この分離膜は、センサを受けるようにしたポートまたは受け部を被覆する。分離膜が存在することにより、このセンサは流路から分離した状態に維持され、かくして流路内に汚染物を導入させ得ない。
ある実施例では分離膜は放射物安定性材料の系統から選択される。膜を、膜が外れないように装着し、センサを、膜の一体性を壊さないまたは損なわない状態で装着することが更に意図される。
流路コンポーネントを、例えば放射法その他による等して滅菌した後、膜を含むポートにセンサを装着する。
【符号の説明】
【0020】
10 滅菌流路
100 管
110 センサポート
120 センサ装置
130 分離膜
150 出口導管
160 入口導管
170 周囲構造部
200、300 バイオリアクタバッグ
310 管
320 機械ポンプ
330 管
340 ろ過要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌流路への非滅菌センサの接続方法であって、
a.滅菌流路を含むコンポーネントにして、前記センサを装着する受け部を含むコンポーネントを提供すること、
b.前記受け部を分離膜で被覆すること、
c.前記各コンポーネント及び膜を滅菌すること、
d.前記分離膜を然るべく残しつつ前記センサを前記受け部に装着すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記膜が不透性を有する請求項1の方法。
【請求項3】
前記膜が半透性を有する請求項1の方法。
【請求項4】
前記膜がガンマ線滅菌に対する耐性を有する請求項1の方法。
【請求項5】
前記各コンポーネントが、フィルタ、バイオリアクタバッグ、チューブ、容器、からなる一群から選択される請求項1の方法。
【請求項6】
滅菌が、ガンマ線照射を使用して実行される請求項1の方法。
【請求項7】
前記センサが温度センサを含む請求項2の方法。
【請求項8】
前記センサが圧力センサを含む請求項2の方法。
【請求項9】
前記センサが酸素センサを含む請求項3の方法。
【請求項10】
前記センサがpHセンサを含む請求項3の方法。
【請求項11】
前記センサが導電率センサを含む請求項3の方法。
【請求項12】
滅菌流路の特性を検知するシステムであって、
a.前記滅菌流路と連通する流路と、
b.センサに装着するための、前記流路内に位置付けた受け部と、
c.前記受け部に固定した分離膜と、
d.前記受け部に装着され、前記膜により前記滅菌流路から分離された非滅菌センサと、
を含むシステム。
【請求項13】
前記センサがpHセンサを含む請求項12のシステム。
【請求項14】
前記センサが温度センサを含む請求項12のシステム。
【請求項15】
前記センサが酸素センサを含む請求項12のシステム。
【請求項16】
前記センサが圧力センサを含む請求項12のシステム。
【請求項17】
前記センサが導電率センサを含む請求項12のシステム。
【請求項18】
前記分離膜が不透性を有する請求項12のシステム。
【請求項19】
前記分離膜が半透性を有する請求項12のシステム。
【請求項20】
前記流路が、フィルタ、バイオリアクタバッグ、チューブ、容器、からなる一群から選択される請求項12のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−516836(P2011−516836A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501788(P2011−501788)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/001616
【国際公開番号】WO2009/120269
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】