説明

滑り止め機能付きパワーネット

【課題】滑り止め機能の付いた縦横両方向伸びるパワーネットを提供することである。
【解決手段】パワーネット地の裏側に、滑り止め用スパンデックス糸を4コースから50コースごとに同一ウェールまたは1ウェールあるいは2ウェール移動させて挿入し、パワーネット伸縮用スパンデックス糸に前記滑り止め用スパンデックス糸よりも強い張力をかけることによって前記滑り止め用スパンデックス糸をパイル状に突出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、滑り止め機能付きパワーネットに関する。
【背景技術】
【背景技術】
【0002】
例えばパワーネットの裏に滑り止めの樹脂、例えばシリコンを線状又は帯状に接着した商品が開発された。しかしこれは、シリコン樹脂の触感に違和感をとなえる人やかぶれをおこす人の苦情が多かった。また洗濯するにつれて滑り止め効果がおちたり、コスト高になる不利があった。
【0003】
また裏面にパイルを形成する技術としては特許第2735783号があるが、スパンデックスの様な高伸縮糸ではパイルを形成することが出来なかった。ましてやパイルを同じ大きさに統一させることは不可能なことであった。またパイルの傾く方向を統一させることもできなかった。
【0004】
またパイルを形成する技術としては特許第4056219号があるが、この地組織はレース組織の為、縦方向にしか伸びず、縦横両方向に伸びる滑り止め機能の付いた素材が求められていた。
またレース組織だとコストが高くなる為、コストダウンが求められていた。
【発明の概要】

【発明の課題】
【0005】
上記の問題を解決した滑り止め機能付きパワーネットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明においては、パワーネット伸縮用スパンデックス糸を挿入したパワーネット地の裏側に、滑り止め用スパンデックス糸を4コースから50コースごとに同一ウェールまたは1ウェールあるいは2ウェール移動させて挿入し、前記パワーネット伸縮用スパンデックス糸に前記滑り止め用スパンデックス糸よりも強い張力をかけることによって前記滑り止め用スパンデックス糸をパイル状に突出させたのである。
また、前記滑り止め用スパンデックス糸を、4コースから50コース毎に1ウェール右方向に移動しながら1コース挿入させ、その後1ウェール左方向に移動しながら1コース挿入させるという動作を繰り返し全てのパイル状突出を左方向に統一して傾かせることができる。
さらに、前記滑り止め用スパンデックス糸を、4コースから50コース毎に1ウェール左方向に移動しながら1コース挿入させ、その後1ウェール右方向に移動しながら1コース挿入させるという動作を繰り返し全てのパイル状突出を右方向に統一して傾かせることができる。
【実施の形態】
【0008】
以下、この発明の実施形態の1例を添付図面に基づいて説明する。図1がこの発明の滑り止め機能付パワーネットの組織図である。L1、L2でパワーネットの地組織を作る。L1、L2に使用されるのは、ナイロン糸やポリエステル糸が使用される。L3、L4で地組織に伸縮性を出す。L3、L4に使用されるのはパワーネットの伸縮性を出す為のスパンデックス糸である。L1、L2、L3、L4で通常の6コースパワーネットが完成する。図2がL5の滑り止め用スパンデックス糸の組織図である。滑り止め用スパンデックス糸滑り止め用スパンデックス糸は滑り止め効果をもたらす為に挿入されている。L3、L4のパワーネット伸縮用のスパンデックス糸の張力を強く、L5の滑り止め挿入糸(スパンデックス糸)の張力を弱くすることで、編地にパイルを形成する。L1、L2、L3、L4、L5はラッセル機の筬のことであり、筬の動きはL1が24/42/46/42/24/20//、L2が42/24/20/24/42/46//、L3が00/22//、L4が22/00//、L5が00/22/22/22/22/22/22/22/22/22/22/22//というように動かせる。糸の通し方は、L1,L2,L3,L4は1in1outで通し、L5はall inで通す。
【0009】
しかし従来の技術では、パワーネット地に伸縮性のない糸を挿入することでパイル状に形成することは可能であったが、高伸縮糸でパイルを形成することは不可能であった。なぜなら通常パイルを形成する場合、パワーネット伸縮用のスパンデックス糸とパイル形成糸は同じ張力で挿入するか、パイル形成糸を消極的に挿入する方法しかなかったからである。しかしこの発明で使用される滑り止め用スパンデックス糸は高伸縮糸である為、滑り止め用スパンデックス糸の糸長が上記方法で挿入すると部分部分で極端に変化する。つまり4滑り止め挿入糸(スパンデックス糸)が伸びている時に挿入された部分の糸の長さと、縮んだときに挿入された部分の糸の長さが極端に異なる為、一定のパイルの大きさに統一することが不可能である為である。
【0010】
よってこの発明のパワーネットではL3、L4の筬に挿入されるパワーネット伸縮用のスパンデックス糸、L5の筬に挿入される滑り止め用スパンデックス糸の糸の供給部分にそれぞれ積極送り装置を取り付けることにより、それぞれの糸の張力をコントロールすることを可能にした。滑り止め用スパンデックス糸の張力を弱く、3パワーネット伸縮用のスパンデックス挿入糸の張力を強く、常に一定に管理することにより高伸縮糸によるパイル地の形成が可能になった。
【0011】
図1の場合、経糸に挿入された3滑り止め挿入糸は11コース後、1ウェール右に挿入され、1コース後、元に戻るという動作をくり返している。滑り止め用スパンデックス糸にはスパンデックス糸等の高伸縮糸が使用される。挿入糸の太さは70デニールから900デニールまで可能だが、特に420デニール以上から840デニールまでが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0012】
この発明のパワーネットを取り付けたウエストニッパーを着用した。このウエストニッパーは縦、横両方向に伸び、しかも人体と接する面全体に滑り止め用のスパンデックスが出てる為、滑りにくく、素材が縦横両方向に伸びる為、フィット感も良く、体を曲げたりしてもずれない商品が出来た。また滑り止め用スパンデックス糸が一方向に傾いてる為、滑り止め効果の方向性も出すことが出来た。通常ウエストニッパーは着用後、体の上部の方へずれようとするが、このパワーネットの滑り止めが方向性を持っている為、付け方次第で、体の下部方向にはズレるが、上部方向にはズレないというウエストニッパーを作る事もできる。またストッキング、サポーター、ブラジャー、ガードル等の女性下着、伸縮性を必要とする生地を使用した衣類やファンデーション、サポーターに使用することにより、着用後のズレ落ちを軽減する商品を作ることが出来る。
【発明の効果】
【0013】
この発明の滑り止めパワーネットによればかぶれにくく、低コストで、左右両方向に伸縮する素材で、しかも洗濯しても滑り止め効果が落ちない滑り止めパワーネットができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の滑り止め機能付パワーネットの組織図。
【図2】この発明の滑り止め機能付パワーネットを生地方向にカットした断面図。
【図3】この発明の滑り止め機能付パワーネットの裏面図。
【図4】この発明の滑り止め機能付パワーネットを使用したウエストニッパーの図。
【符号の説明】
【0015】
1 パワーネットの地組織を形成する糸
2 パワーネットの伸縮性を出す為のスパンデックス糸
3 滑り止め用スパンデックス糸
4 この発明の滑り止め機能付パワーネット
5 この発明の滑り止め機能付パワーネットを使用したウエストニッパー
6 人体のウエスト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーネット地の裏側に、滑り止め用スパンデックス糸を4コースから50コースごとに同一ウェールまたは1ウェールあるいは2ウェール移動させて挿入し、パワーネット伸縮用スパンデックス糸に前記滑り止め用スパンデックス糸よりも強い張力をかけることによって前記滑り止め用スパンデックス糸をパイル状に突出させた滑り止め機能付パワーネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−63919(P2011−63919A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238738(P2009−238738)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(395007705)クロス工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】